(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990007
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】指挟み防止装置
(51)【国際特許分類】
E06B 7/36 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
E06B7/36 F
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-34188(P2012-34188)
(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公開番号】特開2013-170375(P2013-170375A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】501433619
【氏名又は名称】中西産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】相田 榮一
(72)【発明者】
【氏名】村松 道浩
(72)【発明者】
【氏名】矢田 和希
【審査官】
小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−097323(JP,A)
【文献】
特開2008−280676(JP,A)
【文献】
特開2010−196392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 5/00
E05F 7/00
E06B 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子の開閉に際し障子と枠体間に指挟み防止間隙を存して障子の移動を一旦停止させるようにした指挟み防止装置において、障子若しくは枠体のいずれか一方の部材に設けたキッカーと他方の部材に設けたベースを具備し、該ベースには、キッカーに当接する突出位置とキッカーに当接しない退避位置に進退可能に設けられ側面に係止段部を形成したストッパーと、該ベースに揺動可能に枢着され一端に上記ストッパーを突出位置と退避位置に移動させるよう回動可能に連結すると共に該ストッパーを退避位置に移動させる方向に付勢されたトリガーと、上記キッカーが該ストッパーに対向する位置を通過して上記障子が開放若しくは閉鎖方向に移動した際、トリガーを回動して該ストッパーを突出位置に移動させるよう上記キッカーに当接可能な位置に延出するトリガーの部片と、上記ストッパーが突出位置にあるとき上記係止段部に係合するようベースに枢着した爪と、上記ストッパーを該爪方向に付勢するよう付勢ばねで付勢されたプッシュピンを具備し、障子が閉鎖若しくは開放位置に戻る際キッカーに押されてストッパーが回動し上記係止段部が爪から離れて障子の移動を停止し、その後ストッパーを上記トリガーにより退避位置に後退させるようにしたことを特徴とする指挟み防止装置。
【請求項2】
上記トリガー若しくはキッカーには、障子が開放若しくは閉鎖位置に移動する際、上記キッカーによりストッパーを突出位置に移動させるようトリガーを回動し、閉鎖若しくは開放位置に戻る際、トリガーを回動位置に保持したままキッカーの復帰を許容するようエスケープが設けられている請求項1に記載の指挟み防止装置。
【請求項3】
上記ストッパーは、ベースに設けたガイド壁に沿って移動し、一方のガイド壁は上下方向に垂直な壁面を有する爪ガイドで構成され、他方の壁面は爪ガイドとの間隔が徐々に広がるよう傾斜面を設けた位置決めにより構成されている請求項1または2に記載の指挟み防止装置。
【請求項4】
上記爪は、爪ガイドに形成した対向する壁間に設けた凹部に枢着され、一方の壁に当接する方向に回動可能に付勢されている請求項3に記載の指挟み防止装置。
【請求項5】
上記キッカー側若しくはストッパー側には、キッカーとストッパーが当接する際の衝撃を緩和する衝撃緩和装置が設けられている請求項1から4のいずれかに記載の指挟み防止装置。
【請求項6】
上記請求項1〜5のいずれかに記載の指挟み防止装置を備えた障子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き違い障子、片引き障子、引き違い引戸、片引き引戸、上げ下げ窓等の障子、引戸、窓等を開閉する際に障子や引戸、窓等と枠体との間に指を挟み込まないようにした指挟み防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引き違い障子、片引き障子、引き違い引戸、片引き引戸、上げ下げ窓等(以下単に障子という)は、近年大型化、複層ガラス化により障子重量が大幅に増加した一方で、性能向上により開閉操作力は軽くなってきている。そのため、閉鎖時に指、手、特に小さな子供の場合には首、頭等を障子と戸枠等の枠体の間に挟み込んで大きな事故に繋がる危険性があり、そのような事故を防ぐための指挟み防止装置が求められていた。そこで、障子が戸枠に近づいたとき一旦障子の移動を停止させるようにした指挟み防止装置が提案されている。最近市場には種々の指挟み防止装置が提案され、投入されているが、剛性、大きさ、使い勝手、据付時の調整、経年変化や摩耗による調整等の点で種々問題があり、これらの問題点を解消できるようにした簡単な装置が望まれている。
【0003】
障子を閉じるとき若しくは開くときに、指挟みを防止できるようにした装置として、従来から提案されているものは、大別して、次の二つ方式がある。
(1)障子の閉じ(開き)速度が設定した速度より速い場合は閉鎖(全開)近くで一旦障子の移動を停止させた後、自動若しくは手動操作で停止状態を解除し、安全確認後、その位置から再び閉じ(開き)、閉鎖(全開)する。障子の閉じ(開き)速度が設定した速度より遅い場合は、そのまま閉鎖(全開)することができる装置(例えば、特許文献1参照)。
(2)障子の閉じ(開き)速度の速さに関係なく、閉鎖(全開)近くで障子の移動を一旦停止させ、自動若しくは手動操作で停止状態を解除し、安全確認後、その位置から再び閉じ(開き)、閉鎖(全開)する装置。
【0004】
例えば、上記特許文献1に記載されている指挟み防止装置は、障子の移動速度が所定速度以下のとき、磁石の反発力により戸閉成阻止ユニットが退避して障子が閉まるようにし、障子が該ユニットの退避速度を上回る速度で閉められるときは、戸閉成阻止ユニットを障子に当てて指挟みを防止しようとするものである。その他、磁石を利用した種々の指挟み防止装置が提案されているが、いずれも障子の速度が遅いときには指挟み防止装置が作動せず、一定の速度を超えて障子が閉められるときに指挟み防止装置が作動して、障子の移動を停止させるよう構成されている。したがって、従来の装置では、磁石の反発力と障子の移動速度を微妙に調整しなければならないので、現場に設置する際の調整がむずかしく、長期にわたって使用すると、狂いを生じるおそれもあり、好ましいものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−82157号公報(請求項1、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のように従来の構成を大別したときの上記(2)に分類される構成を採用し、障子の移動速度の大小によらず、指挟み防止間隙として定めた所定位置において障子の移動を停止させ、その後自動的に停止状態を解除して障子を完全に閉鎖(全開)できるようにした指挟み詰防止装置を提供することである。
なお、上述したように指挟み防止装置は障子を閉鎖する場合だけでなく、開放するときに枠体との間で指等を挟み込むおそれのある場所で使用する場合があるので、本発明はいずれの場合にも使用できる装置を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、障子の開閉に際し障子と枠体間に指挟み防止間隙を存して障子の移動を一旦停止させるようにした指挟み防止装置において、障子若しくは枠体のいずれか一方の部材にキッカーを設けると共に該キッカーに当接可能なストッパーを他方の部材に設け、該ストッパーをキッカーに当接する突出位置とキッカーに当接しない退避位置に進退可能に形成し、該ストッパーを突出位置と退避位置に移動させるよう該ストッパーをトリガーの一端に連結し該トリガーを揺動可能に枢着すると共に該ストッパーを退避位置に移動させるよう付勢し、上記キッカーが該ストッパーに対向する位置を通過して上記障子が開放若しくは閉鎖方向に移動した際、該ストッパーを突出位置に移動させるよう上記トリガーの他端をキッカーに当接可能な位置に延出させ、障子が閉鎖若しくは開放位置に戻る際キッカーがストッパーに当接して障子の移動を停止し、その後ストッパーを退避位置に後退させるようにしたことを特徴とする指挟み防止装置が提供される。
【0008】
さらに本発明によれば、上記指挟み防止装置において、上記トリガー若しくはキッカーには、障子が閉鎖若しくは開放位置に戻る際、ストッパーを突出させた位置にトリガーを保持した状態でキッカーの復帰を許容するエスケープが設けられ、上記ストッパーには該ストッパーが突出位置に移動した際、該ストッパーを突出位置で離脱可能に仮保持する保持装置が設けられている上記指挟み防止装置が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、上記指挟み防止装置において、上記キッカー側若しくはストッパー側に、キッカーとストッパーが当接する際の衝撃を緩和する衝撃緩和装置が設けられている上記指挟み防止装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記のように構成され、障子の開閉に際し障子と枠体間に指挟み防止間隙を存して障子の移動を一旦停止させるようにした指挟み防止装置において、障子若しくは枠体のいずれか一方の部材にキッカーを設けると共に該キッカーに当接可能なストッパーを他方の部材に設け、該ストッパーをキッカーに当接する突出位置とキッカーに当接しない退避位置に進退可能に形成し、該ストッパーを突出位置と退避位置に移動させるよう該ストッパーをトリガーの一端に連結し、該トリガーを揺動可能に枢着すると共に該ストッパーを退避位置に移動させるよう付勢し、上記キッカーが該ストッパーに対向する位置を通過して上記障子が開放若しくは閉鎖方向に移動した際、該ストッパーを突出位置に移動させるよう上記トリガーの他端をキッカーに当接可能な位置に延出させ、障子が閉鎖若しくは開放位置に戻る際キッカーがストッパーに当接して障子の移動を停止し、その後ストッパーを退避位置に後退させるようにしたから、キッカーがストッパーに対向する位置を通過して障子が移動した際、キッカーがトリガーに当たるとストッパーは突出位置に突出する。そして、障子が閉鎖若しくは開放位置に戻る際該ストッパーにキッカーが当接するので、障子をその位置に一旦停止させることができる。これにより枠体と障子間に指挟み防止間隙が形成され、指挟みが防止される。また、上記のように、本発明の指挟み防止装置は、主として、キッカーと、ストッパーと、該ストッパーを進退させるトリガーにより構成されているので、部品点数が少なく、経済的であり、調整箇所も少なく、経年変化により狂いを生じることもなく、動作も確実である。その上、全体の大きさを小さくできるから、サッシや障子の設計に容易に合わせて構成することができ、各部材を枠体の上枠或いは障子の上框に埋め込んだり、障子の外側に取り付けたり、取付部分の形状を適宜に変えたり、種々の構成に対応することができる。
【0011】
また、上記キッカー側若しくはストッパー側に衝撃緩和装置を設けると、障子が停止する際の衝撃が緩和され、障子が跳ね返るおそれがなく、より安全であり、開閉操作も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明の一実施例を示し、キッカーがトリガーに当接する前の状態の説明図。
【
図3】ストッパーに対向する位置を通過したキッカーがトリガーを押し上げている状態の説明図。
【
図4】キッカーがトリガーの押し上げを完了した状態の説明図。
【
図5】キッカーがトリガーを通過した状態の説明図。
【
図6】障子が最初の状態に戻る際、トリガーの先端のエスケープにキッカーが当接したときの説明図。
【
図7】エスケープを押し込んでキッカーが移動する状態の説明図。
【
図8】
図7に示す位置からさらに障子が移動しストッパーに当接した状態の説明図。
【
図9】キッカーがストッパーを押し込んでいる状態の説明図。
【
図10】ストッパーの保持装置が外れ、ストッパー、キッカー及び位置決めがロックされた状態の説明図。
【
図11】ストッパーが退避位置に移動した状態の説明図。
【
図12】エスケープをキッカー側に設けた実施例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の指挟み防止装置は、上述した障子、すなわち、引き違い障子、片引き障子、引き違い引戸、片引き引戸、上げ下げ窓等の種々の障子、引戸、窓等の各所で使用することができるが、
図1に示す実施例は、戸枠や窓枠等の枠体1と、この枠体1内で開閉可能に組み込まれた障子2間に設けられ、以下障子を閉鎖する際に、枠体の竪枠3との間に指等を挟み込まない空間(間隙)4が存する位置で障子の移動を一旦停止させ、安全確認後、完全に閉鎖できるようにした実施例につき説明する。
【0014】
図2を参照し、本発明の指挟み防止装置は、主として、障子2若しくは枠体1のいずれか一方の部材に設けられるキッカー5と、他方の部材に設けられ該キッカー5が当接可能なストッパー6と該ストッパー6を移動させるトリガー7で構成されている。図に示す実施例では、キッカー5を障子2側に設け、ストッパー6とトリガー7を枠体1側に取り付けたベース8及び該ベースを覆う蓋9内に設けてあり、キッカー5は障子2の上框から突出して設けられ、ストッパー6及びトリガー7の下端は上枠から障子方向に突出可能に設けられている。
【0015】
上記ストッパー6は、ベース8上に向い合せに設けたガイド壁に沿って突出位置と退避位置に、
図2においては上下方向に、進退可能に設けられている。実施例では、上記ガイド壁の一方は、上下方向にほぼ垂直な壁面10を有する爪ガイド11により構成され、他方の壁はストッパー6の傾動を許容するよう爪ガイド11の壁面10との間隔が、図において下方に向かって徐々に広がるよう傾斜面12を設けた位置決め13により構成されている。なお、傾斜面を爪ガイド側に設け、位置決め側の壁をほぼ垂直に形成してもよいし、両方の壁面に傾斜面を形成してもよい。
【0016】
上記爪ガイド11の壁面10に対向するストッパー6の側面には傾斜突起14を介して係止段部(鉤部)15が形成され、図においてストッパー6の上方に形成した凹み部16には横長の長孔17が設けられ、該長孔17にはベルクランク状のトリガー7の一方の部片7aに設けた連結軸18が滑動可能に挿入されている。なおトリガーに長孔を形成し、ストッパーに連結軸を設けて両者を滑動可能に連結してもよい。
【0017】
上記トリガー7の中心部は、トリガー軸19によりベース8に枢着されており、上記ストッパー6を退避位置(後退位置)に移動させるようトリガーばね20により、
図2において時計方向に回動するように付勢され、他方の部片7bが上記爪ガイド11の側面に当接する位置まで回動して停止している。該トリガーばね20の一端は、トリガーの内面に形成した段部21に当たり、他端はベース8に設けたばね止め22に当接している。なお、トリガーばね20は捩じりコイルばねを用いているが、適宜のコイルばね等を用いることもできる。また、トリガーばねに代えて、ストッパー6を退避位置に移動するよう、ストッパーを直接上方に引き上げ若しくは押し上げるよう適宜のばねを適所に設けてストッパーを直接的に付勢してもよい(図示略)。
【0018】
上記トリガー7の部片7b側には、エスケープ23が設けられている。該エスケープ23はトリガー7の先端の表面側、裏面側及び一方の側面側、
図2に示す実施例では障子の開放位置側の側面を囲むようほぼ断面コ字形に形成され、エスケープ軸24によりトリガー7に枢着され、先端にローラー25が軸支26され、該ローラー25がベース8から下方に突出している。なお、ローラー25を省略して上記エスケープを直接突出させることもできる(図示略)。該エスケープ23のエスケープ軸24の周囲にはエスケープばね27が設けられ、
図2において、エスケープ23を反時計方向に回動するようエスケープ23を付勢している。通常の状態ではエスケープ23は、側面がトリガー7の側面に当たっているので、それ以上の回動が阻止され、
図2に示すようにトリガー7の部片7
bとほぼ一直線上に並んでいる。該エスケープばね27は、捩じりコイルばねが使用され、該ばね27の一端がトリガー7の段部28に当たり、他端はエスケープ23の側面の裏側に当接している、このエスケープばねも適宜のコイルばね等で構成することができる。
【0019】
上記爪ガイド11に形成した対向する壁29、30間の凹部31には、爪32が枢着され、該爪32は枢軸33の周囲に設けた爪ばね34により一方の壁30に当接するまで、
図2において反時計方向に回動するよう付勢されている。この爪ばね34も捩じりコイルばねを用いているが、その他の適宜のばねを用いることができる。該爪32は上記ストッパー6が突出位置に移動した際、該ストッパー6の係止段部15に係合可能であり、その状態でストッパー6が後退するとき、該爪32は上記壁29に当接する位置まで従動して係合が外れないようにし、ストッパー6の後退動を阻止する。
図2に示す実施例では、係止段部15と爪32によりストッパー6を突出位置に仮保持する保持装置が形成されているが、この係止段部15を爪ガイド11側に設け爪32をストッパー6側に設けたり、その他の適宜の保持装置を設けてストッパーを仮保持できるようにしてもよい。
【0020】
上記位置決め13には、上記ストッパー6を上記爪ガイド11方向に付勢するプッシュピン35が設けられている。該プッシュピン35は、位置決め13に設けた孔36内に挿入され、プッシュピンばね37で押されている。該ばね37による押圧力は上記孔36にねじ着した調整ねじ38を操作することにより調整することができる。上記ストッパー6は該プッシュピン35の押圧力に抗して連結軸18を中心として、
図2において時計方向に僅か回動することができる。このとき、上記ばね37による押圧力を調整して、押圧力を弱くすれば、ストッパー6は軽く回動し、押圧力を大きくすれば、ストッパー6の回動を重くすることができる。この回動により上記ストッパー6の係止段部15が爪32から離れ、爪32による拘束を解除されたストッパー6は退避位置に向けて後退可能となる。
【0021】
上記構成により障子を開閉する際の作用を説明する。
図2は、障子2が閉鎖位置にあってストッパー6は退避位置に後退している最初の状態を示している。この状態から、障子2を開放するため鎖線に示すように矢印39方向に移動させると、キッカー5はストッパー6の下方を通過した後、トリガー7の先端に設けたエスケープ23に当たり、
図3に示すように、トリガー7を反時計方向に回動させてストッパー6を突出位置に向けて降下させる。
【0022】
さらに障子2を移動させてトリガー7を回動させると、ストッパー6は一層降下し、傾斜突起14が爪32の先端を越え、爪32の先端は係止段部15に対応する(
図4参照)。そして、エスケープ23からキッカー5が離れる位置まで障子2が移動すると、トリガー7はトリガーばね20の作用で時計方向に回動し、上記係止段部15に爪32の先端が係合し、該爪32の回動は壁29に当接して停止されるので、ストッパー6は突出位置に拘束される。その後、障子2を開放位置に向け移動させれば障子を完全に開放することができる(
図5)。
【0023】
図5に示す状態から、矢印40方向に移動して障子2を閉鎖しようとすると、キッカー5がエスケープ23に当たる。エスケープ23は時計方向に回動可能であるから、トリガー7を回動させることなくエスケープ23のみが回動し、キッカー5はエスケープ23を通過して閉鎖方向に移動する(
図6、
図7参照)。このとき、ストッパー6は突出位置に保持されたままの状態であるから、
図8に示すように、キッカー5はストッパー6に当接する。障子2は移動し続けているから、キッカー5に押されてストッパー6はプッシュピンばね37に抗してプッシュピン35を押しながら時計方向に回動し(
図9参照)、係止段部15が爪32から離れる。さらに障子を閉じると、キッカー5とストッパー6と位置決め13がかみ合ったロック状態となり、障子2の移動は停止する(
図10)。これにより、障子2の戸先と枠体1間には間隙4が形成され、指挟みを防止することができる。この際、ストッパー6から離れた爪32は、爪ばね34で反時計方向に付勢されているので、壁30に当たる位置まで回動し、
図10に示すように、傾斜突起14との間に間隔をあけて対向し、ストッパー6の後退動を妨げるおそれはない。
【0024】
障子2を閉じようとする力を緩めるか閉鎖力が消失すると、上記ロック状態は解放され、上記トリガー7はトリガーばね20の作用で時計方向に回動し、ストッパー6は上方に引き上げられる。したがって、障子2を閉鎖方向にさらに移動させてもキッカー5がストッパー6に当たることはないので、障子を完全に閉鎖することができる(
図11)。
【0025】
上記障子を閉じる際、指挟み防止のために閉鎖手前で一時停止させると、一旦停止した障子はキッカーとストッパーが衝突した状態で止まっているので、結果的には障子と枠体が衝突しているのと同じであり、停止状態では障子を最初に動かすための初動力以上の力が働いているものと考えられる。そのため、指挟み防止装置で一旦停止した障子は、最低でも初動力を上回った力を与えないと停止解除をすることができない。本発明の指挟み防止装置は、障子の移動方向に対してほぼ直角方向にストッパーを進退させて停止、停止解除を行う動作方式であるから、障子と枠体が衝突状態で押し合って停止している力をTとし、摩擦係数をρとすると、停止解除に要する力は、T×ρとなり、それ以上の力があれば停止を解除することができる。ρは材質によって異なるが、ρ≒0.3前後なので、Tの約3割の力で停止を解除することができ、一旦停止した後、容易に自動的に解除することができる。
【0026】
上記実施例においては、エスケープ23をトリガー7側に設けたが、キッカー5側にエスケープを設けることもできる。
図12はキッカー5側にエスケープ41を設けた一実施例を示し、トリガー7の部片7bの先端はベースから障子側に突出する略棒状体に形成されている。キッカー5には、正面から見て略L字状の凹部42が形成され、該凹部42内には、回動可能にエスケープ41が収納され、軸支43されている。この場合、エスケープ41は
図12において、反時計方向に回動するようエスケープばね44で付勢され、キッカー5の凹部42に設けた阻止壁45に当たった状態で先端がトリガー7方向に突出するよう保持されている。そして、該エスケープ41は、障子2が開放方向に移動するときは回動せずに先端がトリガー7に当たってトリガー7を反時計方向に回動させ、障子2が開放位置から閉鎖方向に移動する際には、トリガー7の先端に押されて時計方向に回動し、トリガー7を上記回動した位置に留めている。この構成により、上記実施例とほぼ同様に機能させることができる。
【0027】
上記実施例では、キッカー5がストッパー6に衝突する際、障子2を勢いよく閉めた場合、障子2が跳ね返り、跳ね返った障子が操作者や近くにいる子供、幼児等にぶつかり、怪我をさせるおそれがある。そのような事態を生じさせないためには、衝突時の衝撃を緩和できる衝撃緩和装置を適宜位置に設ければよい。衝撃緩和装置を設ければ、障子の閉じ速度が速くても、遅くても、また衝撃的に閉じられても、キッカー5とストッパー6が衝突した際の衝撃が緩和され、キッカー5とストッパー6と位置決め13のロック状態が確実に構成されて障子2の移動を安定状態で停止させることができ、
図13にはキッカー6側に衝撃緩和装置46を備えた一実施例が示されている。該衝撃緩和装置としては、
図13に示す実施例では、キッカー5を長手方向に移動可能に設け、ワンウエイクラッチ47、スパイラルロッド48、リニアダンパ49及び圧縮コイルばね50を有するリニアダンパ機構を用い、キッカー5がストッパー6に当接した際、衝撃を緩衝されながらキッカー5が相対的に図において右行し、その後圧縮コイルばねにより相対的に左行して最初の位置に復帰するよう構成されている。その他、エアダンパ、油圧ダンパ、ロータリーダンパ等を用いることができる。
【0028】
上記実施例においては、キッカーを障子側に設け、ストッパー等を枠体側に設けたが、キッカーを枠体側に設け、ストッパー等を障子側に設けることもできる。また、障子を閉鎖する際に指挟み防止間隙を障子の戸先と枠体間に形成するようにしたが、障子を開放する際に障子の戸尻と枠体間に指挟み防止間隙を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 枠体
2 障子
4 間隙
5 キッカー
6 ストッパー
7 トリガー
8 ベース
11 爪ガイド
13 位置決め
15 係止段部
19 トリガー軸
20 トリガーばね
23 エスケープ
27 エスケープばね
32 爪
34 爪ばね
35 プッシュピン
37 プッシュピンばね
41 エスケープ
46 衝撃緩和装置