特許第5990038号(P5990038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社鷺宮製作所の特許一覧

<>
  • 特許5990038-加振装置 図000002
  • 特許5990038-加振装置 図000003
  • 特許5990038-加振装置 図000004
  • 特許5990038-加振装置 図000005
  • 特許5990038-加振装置 図000006
  • 特許5990038-加振装置 図000007
  • 特許5990038-加振装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990038
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】加振装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
   G01M7/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-118707(P2012-118707)
(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公開番号】特開2013-245995(P2013-245995A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 等
(72)【発明者】
【氏名】増田 洋司
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−071605(JP,A)
【文献】 特開2007−271268(JP,A)
【文献】 実開平01−132950(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験体が載置される固定部と、
前記固定部との間で前記被試験体を挟むとともに当該固定部に対して位置姿勢が自在に変化可能に設けられた可動部と、
前記可動部に6軸方向の振動を加える加振ユニットと、を有し
前記固定部が上面に設けられたベースと、
前記ベースの上面に立設されたフレームと、を有し、
前記加振ユニットが、6つのアクチュエータユニットを有するとともに、これらアクチュエータユニットのそれぞれが、前記固定部の周囲でかつ前記ベースの上面又はその近傍に設けられた直動アクチュエータ部と、前記フレームにおける前記可動部より高い箇所にシーソー状に揺動可能に設けられたクランクアーム部と、前記直動アクチュエータ部と前記クランクアーム部の一端とを連結する連結ロッド部と、前記クランクアーム部の他端と前記可動部とを互いの距離が一定で且つ当該距離以外の位置姿勢が自在に変化可能に連結する連結アーム部と、を有していることを特徴とする加振装置。
【請求項2】
前記固定部が、荷重を計測可能なロードセルで構成されていることを特徴とする請求項に記載の加振装置。
【請求項3】
前記固定部における前記被試験体を載置する箇所を少なくとも収容する恒温槽をさらに有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の加振装置。
【請求項4】
前記可動部が、可動部本体と、前記可動部本体の下部に設けられて前記被試験体に当接される当接部と、を有し、
前記恒温槽が、前記固定部における前記被試験体を載置する箇所を少なくとも囲う周壁部と、前記周壁部の上端を密閉して覆うように設けられた蓋部と、を有し、
前記蓋部の少なくとも一部が、柔軟なシート部材で構成され、
前記当接部が、前記シート部材を貫通して配置されていることを特徴とする請求項に記載の加振装置。
【請求項5】
前記シート部材が、複数の単層シートを互いに重ねて構成されていることを特徴とする請求項に記載の加振装置。
【請求項6】
前記シート部材が、シリコーンゴムを主材料として構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の加振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車が備えるエンジンのマウントゴム等の被試験体の振動試験などに用いられる加振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンは、シャシー上にマウントゴムを介して取り付けられている。そして、従来、このようなマウントゴムの耐久性確認などのための振動試験には、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に振動を加える加振装置が用いられていた。
【0003】
しかしながら、自動車の実走行においては、上記3軸方向に加えて各軸を中心に回転する方向、つまり、6軸方向の振動が発生しており、そのため、3軸方向に振動を加える加振装置ではこのような実際の挙動に近い状態での試験を実施することができなかった。そして、特許文献1には、このような6軸方向の負荷を加えることができる技術が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されている6軸負荷装置は、図7に示すように、固定板803と、固定板803の上方に間隔をあけて対向配置された可動板802と、両端に球面軸受804が設けられ、これら球面軸受804がそれぞれ固定板803及び可動板802に取り付けられた6つのアクチュエータユニット801と、を有している。この6軸負荷装置は、可動板802の上面に被試験体を載置して、6つのアクチュエータユニットを伸縮駆動することにより、被試験体に6軸方向の負荷を加えることができた。
【0005】
そして、このような6軸負荷装置を用いたマウントゴムの加振装置として、可動板802の上方に荷重を測定可能なロードセルを下向きに配置して、可動板802に載置した被試験体としてのマウントゴムをロードセルに押しつけた状態で可動板802を6軸方向に振動させて行う構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−105706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、自動車は、シャシー重量よりエンジン重量の方が軽く、エンジン自体が動作によって振動するため、マウントゴムの下方にあるシャシーが静止状態(静止に近い状態含む)となり、マウントゴムの上方にあるエンジンが振動状態となるものであるところ、上述した6軸負荷装置を用いた加振装置では、マウントゴムの上方にある構造物(ロードセル)が固定されて静止状態となり、マウントゴムの下方にある構造物(可動板)が振動状態となるので、マウントゴムを上下に挟む構造物の状態(静止又は振動)が実際の自動車と反対になってしまい、実際の動作に近い状態を再現するという点でさらなる改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、被試験体に対して上方より実動作に近い振動を加えることができる加振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、被試験体が載置される固定部と、前記固定部との間で前記被試験体を挟むとともに当該固定部に対して位置姿勢が自在に変化可能に設けられた可動部と、前記可動部に6軸方向の振動を加える加振ユニットと、を有し、前記固定部が上面に設けられたベースと、前記ベースの上面に立設されたフレームと、を有し、前記加振ユニットが、6つのアクチュエータユニットを有するとともに、これらアクチュエータユニットのそれぞれが、前記固定部の周囲でかつ前記ベースの上面又はその近傍に設けられた直動アクチュエータ部と、前記フレームにおける前記可動部より高い箇所にシーソー状に揺動可能に設けられたクランクアーム部と、前記直動アクチュエータ部と前記クランクアーム部の一端とを連結する連結ロッド部と、前記クランクアーム部の他端と前記可動部とを互いの距離が一定で且つ当該距離以外の位置姿勢が自在に変化可能に連結する連結アーム部と、を有していることを特徴とする加振装置である。
【0011】
請求項に記載された発明は、請求項に記載された発明において、前記固定部が、荷重を計測可能なロードセルで構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記固定部における前記被試験体を載置する箇所を少なくとも収容する恒温槽をさらに有していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項に記載された発明は、請求項に記載された発明において、前記可動部が、可動部本体と、前記可動部本体の下部に設けられて前記被試験体に当接される当接部と、を有し、前記恒温槽が、前記固定部における前記被試験体を載置する箇所を少なくとも囲う周壁部と、前記周壁部の上端を密閉して覆うように設けられた蓋部と、を有し、前記蓋部の少なくとも一部が、柔軟なシート部材で構成され、前記当接部が、前記シート部材を貫通して配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項に記載された発明は、請求項に記載された発明において、前記シート部材が、複数の単層シートを互いに重ねて構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項に記載された発明は、請求項4又は5に記載された発明において、前記シート部材が、シリコーンゴムを主材料として構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された発明によれば、被試験体が載置される固定部と、この固定部との間で被試験体を挟むとともに当該固定部に対して位置姿勢が自在に変化可能に設けられた可動部と、この可動部に6軸方向の振動を加える加振ユニットと、を有しているので、固定部と当該固定部の上方に配置された可動部との間に被試験体を挟み、この状態で可動部を6軸方向に振動させることができ、そのため、被試験体に対して上方より実動作に近い振動を加えることができる。これにより、被試験体の振動試験において実際の動作に近い状態を再現することができる。
【0017】
また、加振装置が、固定部が上面に設けられたベースと、このベースの上面に立設されたフレームと、を有している。そして、加振ユニットが、6つのアクチュエータユニットを有している。これらアクチュエータユニットのそれぞれが、固定部の周囲でかつベースの上面又はその近傍に設けられた直動アクチュエータ部と、フレームにおける可動部より高い箇所にシーソー状に揺動可能に設けられたクランクアーム部と、直動アクチュエータとクランクアーム部の一端とを連結する連結ロッド部と、クランクアーム部の他端と可動部とを互いの距離が一定で且つ当該距離以外の位置姿勢が自在に変化可能に連結する連結アーム部と、を有している。これにより、可動部が、各アクチュエータユニットの連結アーム部によって構成されるパラレルリンクによって吊り下げられて支持されている。各アクチュエータユニットにおいて直動アクチュエータ部を駆動し、連結ロッド部を介してクランクアーム部の一端を上方に移動させるとクランクアーム部の他端が下方に移動して連結アーム部が可動部における連結部分を押し下げ、クランクアーム部の一端を下方に移動させるとクランクアーム部の他端が上方に移動して連結アーム部が可動部における連結部分を引き上げる。即ち、クランクアーム部によって、ベースの上面から押し上げる力を下方に向けて可動部を押し下げる力に変換し、ベースの上面に引き下げる力を上方に向けて可動部を引き上げる力に変換することができるので、ベース上面又はその近傍に直動アクチュエータ部などの重量の大きい構造物を配置して、加振装置の重心を下げることができ、そのため、加振装置の重心が高い位置にある場合に比べて、フレームなどを小さくすることができ、加振装置を小型化できる。このように、加振装置を小型化することにより、当該加振装置の共振周波数を高くすることができる。
【0018】
請求項に記載された発明によれば、固定部が、荷重を計測可能なロードセルで構成されているので、固定部を用いて計測された荷重に基づいて被試験体に加えられた振動の状態を把握することができ、そのため、当該荷重を用いて可動部の振動をフィードバック制御することで、被試験体に加える振動を精度良く制御することができる。
【0019】
請求項に記載された発明によれば、固定部における被試験体を載置する箇所を少なくとも収容する恒温槽をさらに有しているので、例えば、周囲の環境条件(温度、湿度等)によって特性が変化する材料等について様々な環境条件で振動を加えることができる。これにより、被試験体の振動試験において実際の動作により近い状態を再現することができる。
【0020】
請求項に記載された発明によれば、可動部が、可動部本体と、この可動部本体の下部に設けられて被試験体に当接される当接部と、を有し、恒温槽が、固定部における被試験体を載置する箇所を少なくとも囲う周壁部と、この周壁部の上端を密閉して覆うように設けられた蓋部と、を有し、この蓋部の少なくとも一部が、柔軟なシート部材で構成され、当接部が、前記シート部材を貫通して配置されているので、恒温槽を密閉した状態で可動部の振動を恒温槽内に伝えることができ、そのため、恒温槽における外部からの影響を抑えて、恒温槽内の結露や環境条件の変動を抑制することができる。
【0021】
請求項に記載された発明によれば、シート部材が、複数の単層シートを互いに重ねて構成されているので、恒温槽における外部からの影響をより抑えて、恒温槽内の結露や環境条件の変動をさらに抑制することができる。
【0022】
請求項に記載された発明によれば、シート部材が、シリコーンゴムを主材料として構成されているので、温度変化や可動部の振動の影響による材質の変化を抑制することができ、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態の加振装置を示す斜視図である。
図2図1の加振装置においてフレームを透視した状態を示す斜視図である。
図3図1の加振装置が備える可動部の上面図である。
図4図1の加振装置が備えるアクチュエータユニットの構成(ピストンがニュートラル位置にある状態)を説明するための側面図(一部断面図を含む)である。
図5図1の加振装置が備えるアクチュエータユニットの構成(ピストンがニュートラル位置から突出された状態)を説明するための側面図(一部断面図を含む)である。
図6図1の加振装置が備える恒温槽に設けられたシート部材の構成を説明する拡大断面図である。
図7】従来の6軸負荷装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の一実施形態の加振装置を、図1図6を参照して説明する。
【0025】
以下に説明する加振装置は、例えば、エンジンのマウントゴムなどの被試験体を荷重計測可能なロードセルで構成された固定部に載置するとともに当該固定部と可動部の間に被試験体を狭持して、可動部をX軸、Y軸、Z軸及び各軸の回転方向を含む6軸方向に振動させることにより、被試験体の振動を加える装置である。この加振装置は、被試験体における耐久性等の特性の評価などに用いられる。
【0026】
図1図2に示すように、加振装置(各図において符号1で示す)は、ベース11と、フレーム14と、固定部15と、可動部20と、加振ユニット30と、恒温槽70と、を有している。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態の加振装置を示す斜視図である。図2は、図1の加振装置においてフレームを透視した状態を示す斜視図である。なお、図2において、説明の便宜上、恒温槽を省略している。
【0028】
ベース11は、平面視略六角形の板状に形成された架台であって、工場等の建物のフロアなどに、姿勢制御及び振動吸収等のために設けられた複数のエアバネ12を介して設置されている。また、ベース上面11aの中央部分には、高さ可変の昇降テーブル13が固定して取り付けられている。
【0029】
フレーム14は、ベース上面11aに上方に向けて立設された支柱である。本実施形態において、フレーム14は、互いに等間隔に配置された3本の柱部14aと、互いに隣接する柱部14aの上端を固定して連結する3本の梁部14bと、で構成されている。
【0030】
固定部15は、その固定部上面15aに加えられた加重を検出する円柱形状の加重検出器(ロードセル)で構成されており、昇降テーブル13上に固定して取り付けられている。つまり、固定部15は、ベース上面11aに昇降テーブル13を介して設けられている。固定部上面15aには、被試験体TPが載置される。固定部15は、固定部上面15aがベース上面11aと平行になるように配置されている。
【0031】
可動部20は、ベース上面11aの中央部分の上方に配置されている。この可動部20は、図3に示すように、可動部本体21と、当接部22と、3つの連結部23と、を有している。図3は、図1の加振装置が備える可動部の上面図である。
【0032】
可動部本体21は、略正六角形柱状に形成されている。当接部22は、断面形状が前記可動部本体21の六角形の断面形状内に収まる円形となる円柱形状に形成されており、可動部本体21と同軸になるように可動部本体下面21aに取り付けられている。当接部22は、その下面である当接面22aが被試験体TPに当接される。各連結部23は、断面が二等辺三角形となる三角柱形状に形成されており、当該断面の頂角が可動部本体上面21b側を向くようにして、可動部本体21の6つの側面21cのうち一つおきに配置されている3つの側面21cに固定して取り付けられている。連結部23における上記頂角を形成する2つの側面23aには、後述する連結アーム部50が取り付けられる。可動部20は、後述する6つのアクチュエータユニット31が備えるピストン42がニュートラル位置にあるとき、当接面22a、可動部本体下面21a及び可動部本体上面21aが、固定部上面15aと平行になるように配置されている。
【0033】
加振ユニット30は、6つのアクチュエータユニット31を有している。6つのアクチュエータユニット31は、2つ一組として、フレーム14の3本の柱部14aに、それぞれ一組ずつ配設されている。
【0034】
各アクチュエータユニット31は、図4図5に示すように、直動アクチュエータ部40と、クランクアーム部43と、連結ロッド部44と、連結アーム部50と、を有している。
【0035】
図4は、図1の加振装置が備えるアクチュエータユニットの構成(ピストンがニュートラル位置にある状態)を説明するための側面図(一部断面図を含む)である。図5は、図1の加振装置が備えるアクチュエータユニットの構成(ピストンがニュートラル位置から突出された状態)を説明するための側面図(一部断面図を含む)である。
【0036】
直動アクチュエータ部40は、シリンダ41及びこのシリンダ41に収容されたピストン42を有する油圧アクチュエータで構成されている。直動アクチュエータ部40は、油圧を用いてシリンダ41に対しピストン42を直線状に移動させて、ピストン42をシリンダ41から突出させ、ピストン42をシリンダ41に没入させる。シリンダ41は、フレーム14の下端部に固定して取り付けられている。つまり、直動アクチュエータ部40は、フレーム14の下端部に取り付けられていることによって、固定部15の周囲でかつベース上面11a近傍に配置されている。6つの直動アクチュエータ40は、昇降テーブル13(即ち、固定部15)を囲むように配置されている。ピストン42は、シリンダ41によってベース上面11aの法線方向に移動(即ち、突出・没入)される。なお、油圧アクチュエータにおいては、一般的に、シリンダとピストンとがそれら軸を中心に互いに回転可能であるが、本実施形態においては、これらの回転を抑制した油圧アクチュエータその他方式のアクチュエータでも使用可能である。
【0037】
クランクアーム部43は、その一端43aがベース11の外方向に向き、その他端43bがベース11の中心方向に向くようにして、その中央付近に設けられた軸部43cがフレーム14の上端部に取り付けられている。これにより、クランクアーム部43は、シーソー状に揺動可能にフレーム14に取り付けられている。
【0038】
連結ロッド部44は、その両端にそれぞれ一軸ジョイント機構からなる第1連結部45及び第2連結部46が設けられている。第1連結部45及び第2連結部46は、それぞれクランクアーム部43の一端43a及びピストン先端42aに揺動可能に連結されている。第1連結部45の軸部45a及び第2連結部46の軸部46aは、共にクランクアーム部43の軸部43cと平行に配置されている。連結ロッド部44は、ピストン42の移動をクランクアーム部43の一端43aに伝達して、これにより、クランクアーム部43の一端43aが上下方向に移動(揺動)される。連結ロッド部44は、第2連結部46によって、クランクアーム部43の揺動による第1連結部45の水平方向への変位を吸収するように(即ち、リンクロッド状に)構成されている。
【0039】
連結アーム部50は、上腕部51と、上腕部51と同軸に配置されるとともに上腕部一端51aが内部に挿入された前腕部52と、前腕部52内部で上腕部一端51aをその軸心回りに回転可能に保持する複数のベアリングを備えた回転連結部53と、第1自在連結部54と、第2自在連結部55と、を有している。
【0040】
第1自在連結部54は、ユニバーサルジョイント機構(二軸ジョイント機構)を有しており、クランクアーム部43の他端43bと、上腕部他端51bと、を略半球全方向に揺動可能に連結している。
【0041】
第2自在連結部55は、ユニバーサルジョイント機構を有しており、前腕部52における上腕部51が挿入された前腕部一端52aと反対側の前腕部他端52bと、可動部20に設けられた連結部23の側面23aと、を略半球全方向に揺動可能に連結している。
【0042】
これにより、連結アーム部50は、クランクアーム部43の他端43bと可動部20とを互いの距離が一定で且つ当該距離以外の位置姿勢が自在に変化可能に連結している。
【0043】
恒温槽70は、昇降テーブル13上に固定して取り付けられた略六角筒形状の周壁部71と、周壁部上端71aを密閉して覆うように設けられた蓋部72と、を有している。
【0044】
周壁部71は、高断熱性の壁材で構成されており、固定部15を囲うように配置されている。周壁部71の一部は、開閉可能に設けられており、恒温槽70への被試験体TPの出し入れを可能としている。
【0045】
蓋部72は、周壁部上端71aの平面視形状と外形が略同一で且つ円形の開口73aが内側に設けられた枠部73と、枠部73の開口73aを密閉して塞ぐように設けられた柔軟なシート部材74と、を有している。
【0046】
シート部材74は、図6に示すように、例えば、シリコーンゴムなどの材料からなる薄いシート状の単層シート75を複数枚(本実施形態においては2枚)重ねて構成されている。図6は、図1の加振装置が備える恒温槽に設けられたシート部材の構成を説明する拡大断面図である。複数の単層シート75の間には空間が設けられており、これによって、シート部材74は、熱などを通しにくくなるように構成されている。
【0047】
シート部材74は、外形が枠部73の開口73aと略同一に形成されているとともに、中央部分に可動部20の当接部22の断面形状と略同一の貫通孔74aが設けられている。この貫通孔74aには、当接部22が挿通されるとともに、当該当接部22の周面22bと貫通孔74aの周縁とが、全周にわたって、例えば、接着剤などによって密着して接着されている。
【0048】
次に、上述した加振装置1の動作を、図4図5を参照して説明する。
【0049】
可動部20は、加振ユニット30に設けられた6つのアクチュエータユニット31のそれぞれが有する連結アーム部50の先端(具体的には、前腕部他端52b)に、吊り下げられた状態で取り付けられている。そして、連結アーム部50は上腕部51に対して前腕部52が軸方向に回動可能に構成されているとともに、連結アーム部50とクランクアーム部43との連結箇所である第1自在連結部54、及び、連結アーム部50と可動部20との連結箇所である第2自在連結部55が、略半球全方向に揺動可能なユニバーサルジョイント機構で構成されている。また、クランクアーム部43は、ピストン42が移動されると、連結ロッド部44を通じて揺動され、この揺動により連結アーム部50を通じて可動部20が揺動される。
【0050】
つまり、可動部20が、各アクチュエータユニット31の連結アーム部50によって構成されるパラレルリンクによって吊り下げられて支持されているので、可動部20は、その下方に配置された固定部15との間で被試験体TPを挟むとともに当該固定部15に対して位置姿勢が自在に変化可能にされている。また、各アクチュエータユニット31が備える直動アクチュエータ部40のピストン42の移動によって、可動部20における連結アーム部50との6つの連結箇所が揺動されるので、ピストン42の移動を適切に制御することで、可動部20を6軸方向に移動させて振動させることができる。
【0051】
例えば、図4に示すように、全ての直動アクチュエータ部40(図4においては、一部のみ示す)において、ピストン42がニュートラル位置(中立位置)にある状態では、可動部20は、被試験体TPの上部に当接される当接面22aをベース上面11aと平行に位置づける。
【0052】
そして、この状態から、図5に示すように、一部の直動アクチュエータ部40において、ピストン42をニュートラル位置より図中上方に移動させてシリンダ41から突出させると、当該直動アクチュエータ部40の先に接続されている連結アーム部50によって、可動部20における当該連結アーム部50が連結されている箇所が押し下げられて、これにより、可動部20の当接面22aがベース上面11aに対して傾けられる(即ち、姿勢が変化される)。
【0053】
または、図示はしていないが、一部の直動アクチュエータ部40において、ピストン42をニュートラル位置より図中上方に移動させてシリンダ41から突出させると同時に、他の直動アクチュエータ部40において、ピストン42をニュートラル位置より図中下方に移動させてシリンダ41に適宜没入させることにより、可動部20の当接面22aがベース上面11aに対して水平を保ったまま移動され(即ち、位置が変化され)たり、図5より大きく傾けられたりする。
【0054】
このように、可動部20を傾けたり移動したりすることを繰り返すことにより、被試験体TPに上方から6軸方向の振動を加えることができる。
【0055】
上述したように、本実施形態の加振装置1は、被試験体TPが載置される固定部15と、固定部15との間で被試験体TPを挟むとともに当該固定部15に対して位置姿勢が自在に変化可能に設けられた可動部20と、可動部20に6軸方向の振動を加える加振ユニット30と、を有している。
【0056】
加振装置1は、固定部15がベース上面11aに設けられたベース11と、ベース上面11aに立設されたフレーム14と、を有し、加振ユニット30が、6つのアクチュエータユニット31を有するとともに、これらアクチュエータユニット31のそれぞれが、固定部15の周囲でかつベース上面11a近傍に設けられた直動アクチュエータ部40と、フレーム14における可動部20より高い箇所にシーソー状に揺動可能に設けられたクランクアーム部43と、直動アクチュエータ部40とクランクアーム部43の一端43aとを連結する連結ロッド部44と、クランクアーム部43の他端43bと可動部20とを互いの距離が一定で且つ当該距離以外の位置姿勢が自在に変化可能に連結する連結アーム部50と、を有している。
【0057】
加振装置1は、固定部15が、荷重を計測可能なロードセルで構成されている。
【0058】
加振装置1は、固定部15を収容する恒温槽70をさらに有している。
【0059】
加振装置1は、可動部20が、可動部本体21と、可動部本体21の下部に設けられて被試験体TPに当接される当接部22と、を有し、恒温槽70が、固定部15を囲う周壁部71と、周壁部上端71aを密閉して覆うように設けられた蓋部72と、を有し、蓋部72の一部が、柔軟なシート部材74で構成され、当接部22が、シート部材74を貫通して配置されている。
【0060】
加振装置1は、シート部材74が、複数の単層シートを互いに重ねて構成されている。
【0061】
加振装置1は、シート部材74が、シリコーンゴムを主材料として構成されている。
【0062】
以上より、本実施形態によれば、被試験体TPが載置される固定部15と、この固定部15との間で被試験体TPを挟むとともに当該固定部15に対して位置姿勢が自在に変化可能に設けられた可動部20と、この可動部20に6軸方向の振動を加える加振ユニット30と、を有しているので、固定部15と当該固定部15の上方に配置された可動部20との間に被試験体TPを挟み、この状態で可動部20を6軸方向に振動させることができ、そのため、被試験体TPに対して上方より実動作に近い振動を加えることができる。これにより、被試験体TPの振動試験において実際の動作に近い状態を再現することができる。
【0063】
また、加振装置1が、固定部15がベース上面11aに設けられたベース11と、このベース上面11aに立設されたフレーム14と、を有している。そして、加振ユニット30が、6つのアクチュエータユニット31を有している。これらアクチュエータユニット31のそれぞれが、固定部15の周囲でかつベース上面11a近傍に設けられた直動アクチュエータ部40と、フレーム14における可動部より高い箇所(即ち、上端部)にシーソー状に揺動可能に設けられたクランクアーム部43と、直動アクチュエータ部40とクランクアーム部43の一端43aとを連結する連結ロッド部44と、クランクアーム部43の他端43bと可動部20とを互いの距離が一定で且つ当該距離以外の位置姿勢が自在に変化可能に連結する連結アーム部50と、を有している。これにより、可動部20が、各アクチュエータユニット31の連結アーム部50によって構成されるパラレルリンクによって吊り下げられて支持されている。各アクチュエータユニット31において直動アクチュエータ部40を駆動し、連結ロッド部44を介してクランクアーム部43の一端43aを上方に移動させるとクランクアーム部43の他端43bが下方に移動して連結アーム部50が可動部20における連結部分を押し下げ、クランクアーム部43の一端43aを下方に移動させるとクランクアーム部43の他端43bが上方に移動して連結アーム部50が可動部20における連結部分を引き上げる。即ち、クランクアーム部43によって、ベース上面11aから押し上げる力を下方に向けて可動部20を押し下げる力に変換し、ベース上面11aに引き下げる力を上方に向けて可動部20を引き上げる力に変換することができるので、ベース上面11a近傍に直動アクチュエータ部40などの重量の大きい構造物を配置して、加振装置1の重心を下げることができ、そのため、加振装置1の重心が高い位置にある場合に比べて、フレーム14などを小さくすることができ、加振装置1を小型化できる。
【0064】
また、固定部15が、荷重を計測可能なロードセルで構成されているので、固定部15を用いて計測された荷重に基づいて被試験体TPに加えられた振動の状態を把握することができ、そのため、当該荷重を用いて可動部20の振動をフィードバック制御することで、被試験体TPに加える振動を精度良く制御することができる。
【0065】
また、固定部15を収容する恒温槽70をさらに有しているので、例えば、周囲の環境条件(温度、湿度等)によって特性が変化する材料等について様々な環境条件で振動を加えることができる。これにより、被試験体TPの振動試験において実際の動作により近い状態を再現することができる。
【0066】
また、可動部20が、可動部本体21と、この可動部本体21の下部に設けられて被試験体TPに当接される当接部と、を有し、恒温槽70が、固定部15を囲う周壁部71と、この周壁部上端71aを密閉して覆うように設けられた蓋部72と、を有し、この蓋部72の一部が、柔軟なシート部材74で構成され、当接部22が、シート部材74を貫通して配置されているので、恒温槽70を密閉した状態で可動部20の振動を恒温槽70内に伝えることができ、そのため、恒温槽70における外部からの影響を抑えて、恒温槽70内の結露や環境条件の変動を抑制することができる。
【0067】
また、シート部材74が、複数の単層シート75を互いに重ねて構成されているので、恒温槽70における外部からの影響をより抑えて、恒温槽70内の結露や環境条件の変動をさらに抑制することができる。
【0068】
また、シート部材74が、シリコーンゴムを主材料として構成されているので、温度変化や可動部20の振動の影響による材質の変化を抑制することができ、耐久性を向上させることができる。
【0069】
上述した本実施形態では、連結アーム部50が有する第1自在連結部54及び第2自在連結部55が、ユニバーサルジョイント機構で構成されているものであったが、これに限定されるものではない。第1自在連結部54及び第2自在連結部55として、例えば、ボールジョイント機構などを用いてもよく、連結アーム部50が、前記クランクアーム部の他端と前記可動部とを互いの距離が一定で且つ当該距離以外の位置姿勢が自在に変化可能に連結する構成であれば、本発明の目的に反しない限り、その構成は任意である。
【0070】
また、本実施形態では、直動アクチュエータ部40が、油圧アクチュエータで構成されているものであったが、これに限定されるものでなく、例えば、電動アクチュエータなど、油圧以外の他の方式のアクチュエータで構成されていてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、直動アクチュエータ部40が、フレーム14の下端部(即ち、ベース上面11a近傍)に設けられているものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、ベース上面11aに直接設けられていてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、連結ロッド部44が、その両端にそれぞれ一軸ジョイント機構からなる第1連結部45及び第2連結部46が設けられており、第2連結部46によって、クランクアーム部43の揺動による第1連結部45の水平方向への変位を吸収するように構成されているものであったが、これに限定されるものではない。例えば、第1連結部45を一軸ジョイント機構とするとともにクランクアーム部43の一端43aに第1連結部45の軸部45aを移動可能に軸支する長孔軸受を設け、そして、第2連結部46をピストン先端42aに固定して取り付ける機構とした構成などであってもよい。つまり、連結ロッド部44は、クランクアーム部43の揺動による変位を吸収できる構成であれば、本発明の目的に反しない限り、その構成は任意である。
【0073】
また、本実施形態では、固定部15が、荷重を測定可能なロードセルで構成されているものであったが、これに限定されるものではなく、荷重測定機能のない単なる台状の構造物を設けた構成であったり、ベース上面11aの中央部分を固定部15とした構成であったりしてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、恒温槽70が設けられているものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、被試験体TPの環境条件の影響を受けにくい材料である場合などは、恒温槽70を設けない構成であってもよい。また、本実施形態では、恒温槽70は、固定部15全体を収容するものであったが、これに限定されるものではなく、固定部15における被試験体TPを載置する箇所を少なくとも収容するように構成されていればよい。
【0075】
また、本実施形態では、恒温槽70の蓋部72を、枠部73及びシート部材74で構成するものであったが、例えば、蓋部72全体をシート部材74で構成していてもよい。また、シート部材74についても、複数の単層シート75を重ねて構成されているものであったが、1枚の単層シートで構成されていてもよい。
【0076】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 加振装置
11 ベース
11a ベース上面
14 フレーム
15 固定部
20 可動部
21 可動部本体
22 当接部
23 連結部
30 加振ユニット
31 アクチュエータユニット
40 直動アクチュエータ部
41 シリンダ
42 ピストン
43 クランクアーム部
44 連結ロッド部
50 連結アーム部
51 上腕部
52 前腕部
53 回転連結部
54 第1自在連結部
55 第2自在連結部
70 恒温槽
71 周壁部
72 蓋部
73 枠部
74 シート部材
75 単層シート
TP 被試験体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7