(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990048
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 1/10 20060101AFI20160825BHJP
F24H 1/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
F24H1/10 301C
F24H1/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-146517(P2012-146517)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-9883(P2014-9883A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年11月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107490
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 鉄郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰徳
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−281146(JP,A)
【文献】
特開平06−241561(JP,A)
【文献】
特開2001−116359(JP,A)
【文献】
特開2011−153801(JP,A)
【文献】
特開2003−090605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/10
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の選択により、最大出湯量を一定量以下に制限する機能(以下、エコ機能という)を備えた給湯器と、配管を介して給湯器から給湯供給を受ける2以上の水栓と、を備えた給湯システムであって、
各水栓の出湯を検知する水栓出湯検知手段と、
予め特定した1以上の水栓(以下、特定水栓という)が単独使用されている場合に限り、前記エコ機能を有効とする手段と、
複数の特定水栓が同時使用されている場合には、エコ機能の選択に関らず水栓開度に応じた出湯量にする手段と、
をさらに備えて成ることを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
前記1以上の特定水栓に対して、それぞれ同一又は異なる最大出湯量を定めたことを特徴とする請求項1に記載の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給湯システムに係り、給湯器と各水栓をネットワーク化することにより、省エネ性を損なうことなく使用快適性を確保可能な給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯器と一又は複数の水栓を配管で結んでお湯を供給する給湯システムにおいては、台所、浴室等に設置した給湯器リモコンにより給湯温度設定を行うことが一般的である。さらに、一部の給湯器リモコンには、省エネ性向上を目的として、使用者の選択により水栓開度に関わらず最大出湯量を一定量(例えば10L/min以下)以下に制限する、いわゆる「エコ機能SW」が搭載されている。また、最大出湯量を設定変更可能(例えば12L/min、8L/min 等)とする給湯器もある。
【0003】
しかしながら、給湯器側からはいずれの水栓が使用状態かを判別できないため、エコ機能SWが選択されている場合には、例えば台所と浴室で同時使用していても、給湯量が例えば10L/minに絞られてしまうという不都合が生じる。
【0004】
また、混合水栓が設置されているケースでは、たとえ給湯器側で給湯量が10L/minに絞ったとしても、水栓側が湯水混合で使用すれば10L/min以上のお湯が出湯されてしまうという問題もある。
【0005】
末端側の温水使用機器(水栓等)を特定する技術として、特許文献1の技術が提案されている。この技術は、給湯機と温水使用機器との間でお互いの設定温度や水量データなどの運転データを送受信する。給湯機は受信した温水使用機器の水量データと自身の水量データとから温水使用機器の単独使用か、他機器との同時使用か判断し、単独使用であれば給湯機の設定温度を温水使用機器の設定温度に変更する。温水使用機器は給湯機から他機器との同時使用であるというデータを受信した場合には、温水の供給を停止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−090605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記技術によれば単独使用又は同時使用の判別は可能となるが、同文献にはエコSW選択時の対応については開示がない。
本発明は、エコSW選択時において、単独水栓使用又は複数水栓使用に関わらず、省エネ性向上と使用快適性確保を両立させる給湯システム制御技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の内容を要旨とする。すなわち、本発明に係る給湯システムは、
(1)使用者の選択により、最大出湯量を一定量以下に制限する機能(以下、エコ機能という)を備えた給湯器と、配管を介して給湯器から給湯供給を受ける2以上の水栓と、を備えた給湯システムであって、
各水栓の出湯を検知する水栓出湯検知手段と、
予め特定した1以上の水栓(以下、特定水栓という)が単独使用されている場合に限り、前記エコ機能を有効とする手段と、
をさらに備えて成ることを特徴とする。
【0009】
(2)前記1以上の特定水栓に対して、それぞれ同一又は異なる最大出湯量を定めたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
各発明によれば、特定水栓を単独使用する場合のみ出湯量が制限され、複数水栓使用の場合には出湯量制限が解除されるため、利用者の使用快適性を損なうことなく、省エネ性を向上させることができるという効果がある。
また、(2)の発明によれば、例えば台所水栓と浴室水栓とでそれぞれ異なる最大出湯量に設定できるため、必要給湯量に対応した最大出湯量制限が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一の実施形態に係る給湯システム1の構成を示す図である。
【
図2】第一の実施形態の給湯制御フローを示す図である。
【
図3】第二の実施形態の給湯制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る給湯システムの各実施形態について、
図1乃至3を参照してさらに詳細に説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0013】
<第一の実施形態>
図1を参照して本実施形態に係る給湯システム1は、給湯器2、給水配管W1の分岐部P1で分岐して給湯器2に給水する給水配管W2、給湯器2で加熱されたお湯を水栓3側に供給するための給湯配管H1、給水配管W1及び給湯配管H1から分岐する端末側に水栓3、4、5を備えている。このうち、水栓3は浴室内に配置されるシャワー付き混合水栓、水栓4は台所に配置される混合水栓、水栓5は洗面室に配置される単水栓である。シャワー付き混合水栓3には切替つまみ3bが設けられており、つまみ操作によりシャワー3a側又は水栓3c側に切り替え可能に構成されている。
【0014】
給湯器2は筐体2a内部にバーナ2b,熱交換器2cを備えている。給水配管W2は器内配管W2’に連なり、さらに熱交換器2c入側に接続している。また、熱交換器2c出側は器内配管H1’を経由して給湯配管H1と接続している。給水管W2’と給湯管H1’間にはバイパス管W2”が設けられており、給水が熱交換器2cをバイパスするように構成されている。バイパス管W2”経路内には流量制御弁2dが介装されている。
給水管W2’経路内には水量センサS1、入水温度センサS2が介装されている。器内配管部H1’には出湯温度センサS3、流量制御弁2eが介装されている。また、水栓3、4、5の給湯管側にはそれぞれ流量センサS4乃至S6が介装されており、開栓検知を可能に構成されている。また、混合水栓3には切替つまみ3bには切替検知センサS7が配設されており、シャワー使用検知可能に構成されている。
【0015】
次に、給湯システム1の制御系統は、給湯器2内に搭載され、本システムの運転制御及び出湯温度制御を司る制御部6、後述の給湯温度の設定等を行うリモコン6b、及び、上述の各センサS1乃至S7により構成されている。リモコン6bにはエコSW6cが付設されており、利用者がこのSWを押すことによりエコ機能が働き、後述する出湯量制御を可能とするように構成されている。
【0016】
なお、制御部6はCPU、ROM、RAM等を主要構成とするマイコン、記憶部、I/F部等(いずれも不図示)を備えており、各センサから送られる検出値及びリモコン6b側からの要求に基づいて、流量制御弁2d、流量制御弁2eの開度調整及びバーナ2bの燃焼量調整により、出湯量、給湯温度を任意に制御可能に構成されている。
【0017】
次に
図2を参照して水栓3乃至5開栓時における給湯器出湯量制御フローについて説明する。初期状態において、給湯設定温度は標準温度(例えば42℃)に設定されているものとする。この状態からいずれかの水栓の開栓を検知した段階で(S101)、エコSW6cがON状態にあるか否かが判定される(S102)。OFF状態にある場合には(S102においてNO)、出湯流量制限なし、すなわち使用状態の水栓の開度に応じた流量のお湯が給湯器2から出湯される(S108)。
【0018】
S102においてYES、すなわち、エコSW6cがON状態にある場合には、次に同時使用の有無(複数の水栓が開栓されているか否か)が判定される(S103)。同時使用されている場合には(S103においてYES)、出湯量は成り行き、すなわち水栓開度に応じた流量のお湯が給湯器2から出湯される(S108)。
【0019】
S103においてNO、すなわちいずれかの水栓の単独使用の場合には、さらに当該水栓が台所水栓4であるか否かが判定される(S104)。これに該当する場合には(S104においてYES)、水栓開度に関わらず出湯流量は最大5L/minに制限される(S106)。
【0020】
S104においてNO、すなわち当該水栓が台所水栓4ではない場合には、次いで当該水栓が浴室水栓
3のシャワー側か否かが判定される(S105)。これに該当する場合には(S105においてYES)、水栓開度に関わらず出湯流量は最大10L/minに制限される(S107)。また、シャワー使用ではない場合には(S105においてNO)、水栓の開度に応じた流量のお湯が給湯器2から出湯される(S108)。
その後、すべての水栓が使用終了に至るまでは(S109においてNO)、上記出湯量条件により給湯が継続される。すべての水栓が使用終了に至ったときは(S109においてYES)、S101に戻って上述の出湯量制御が繰り返し行われることになる。
【0021】
なお、本実施形態では水栓3、4、5の給湯管側にそれぞれ流量センサを備える例を示したが、流量センサに限らず通水(湯)を検知できるセンサや、各水栓の開栓を検知できるセンサであれば足りる。以下の実施形態においても同様である。
【0022】
また、各水栓の最大出湯量は例示であり、適宜、使用実態に対応した最大出湯量に設定することができる。
さらに、本実施形態では2以上の水栓同時使用の場合には出湯量制限を設けない態様としたが、特定の水栓同時使用の場合(例えば台所と洗面 等)には出湯量制限を設ける態様としてもよい。
【0023】
<第二の実施形態>
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態はいずれかの水栓開栓中に、他の水栓が開栓した場合の形態に係る。本実施形態の構成は第一の実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
次に、
図3を参照して本実施形態における給湯器出湯量制御フローについて説明する。S201からS208については上述の実施形態のS101からS108と同一である。次に、S209においてYES、すなわち出湯中の水栓以外の水栓の使用開始を検知した場合には、複数水栓同時使用条件となるため、S208に移行して出湯量は成り行き、すなわち水栓開度に応じた流量のお湯が給湯器2から出湯される。
その後、すべての水栓が使用終了に至ったときは(S210においてYES)、S201に戻って上述の出湯制御が繰り返し行われることになる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、エネルギー源、加熱方式(瞬間式、貯湯式)を問わず、給湯配管を介してお湯を供給する給湯器に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1・・・・・給湯システム
2・・・・・給湯器
3、4,5・・・・・水栓
6・・・・・制御部
6b・・・・リモコン
6c・・・・エコSW
S1・・・・水量センサ
S2・・・・入水温度センサ
S3・・・・出湯温度センサ
S4〜S6・・・・流量センサ
S7・・・・切替検知センサ