(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術は、加熱1系統(1個の加熱アクチュエータ)に冷却1系統(1個の冷却アクチュエータ)の組合せを前提とする制御技術である。しかし、エネルギー効率に影響するアクチュエータは必ずしも2個とは限らない。例えば
図12に示すように、加熱処理炉100内に加熱したいゾーン106−1〜106−4が複数あって、ゾーン106−1〜106−4毎にヒータ101−1〜101−4が設けられ、さらに加熱処理炉100内の空気を冷却する1個の冷却器102が設けられている場合、すなわち加熱複数系統に冷却1系統の組合せという場合もある。
【0008】
図12の構成は、加熱を目的とする通常制御の系統が複数あれば、複数の制御量(温度)を制御可能であるので、エネルギー効率を考慮しなければ、問題なく成り立つ構成である。また、この構成は、製造装置の製造コストの面で見れば、むしろ合理的な構成である。このように、制御の主目的のための主制御系が複数系統であり、主制御の整定状態での望ましい操作量出力である平衡点を調整するための副制御系が1系統のみという構成に対しては、特許文献1に開示された技術を適用することはできない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、主制御系が複数系統であり、主制御の整定状態での望ましい操作量出力である平衡点を調整するための副制御系が1系統のみというマルチループ制御系において、省エネルギーを実現することができる協調動作装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の協調動作装置は、複数の主制御系に対応して設けられ、主制御の設定値と主制御の制御量を入力として制御演算により第1の操作量を算出する複数の第1の制御演算手段と、主制御系毎に設けられ、対応する主制御系の前記第1の制御演算手段によって算出された第1の操作量を対応する主制御系のアクチュエータに出力する複数の第1の操作量出力手段と、主制御系毎に設けられ、対応する主制御の整定状態での望ましい操作量出力である平衡点を示す所定の操作量設定値を入力とすると共に、対応する主制御系の前記第1の制御演算手段によって算出された第1の操作量を制御量入力として、制御演算により第2の操作量を算出する複数の第2の制御演算手段と、前記複数の第2の制御演算手段によって算出された複数の第2の操作量に対して加重演算を行なうことにより前記複数の第2の操作量を合成して第3の操作量を出力する合成手段と、前記合成手段から出力された第3の操作量を、前記平衡点を調整するための1つの副制御系のアクチュエータに出力する第2の操作量出力手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の協調動作装置の1構成例において、前記第1の制御演算手段と前記第2の制御演算手段が行なう制御演算は、PID制御演算であり、前記第2の制御演算手段の各々に予め設定されているPIDパラメータである積分時間は、対応する第1の制御演算手段に予め設定されている積分時間以上の値である。
また、本発明の協調動作装置の1構成例において、前記第1の制御演算手段と前記第2の制御演算手段が行なう制御演算は、PID制御演算であり、前記第2の制御演算手段の各々に予め設定されているPIDパラメータである微分時間は、対応する第1の制御演算手段に予め設定されている微分時間以下の値である。
また、本発明の協調動作装置の1構成例において、前記第1の制御演算手段と前記第2の制御演算手段が行なう制御演算は、PID制御演算であり、主制御系毎に設けられ、対応する第2の制御演算手段に設定されるPIDパラメータである積分時間を、対応する第1の制御演算手段に予め設定されている積分時間以上の値に制限する複数の積分時間リミッタをさらに備えることを特徴とする。
また、本発明の協調動作装置の1構成例において、前記第1の制御演算手段と前記第2の制御演算手段が行なう制御演算は、PID制御演算であり、主制御系毎に設けられ、対応する第2の制御演算手段に設定されるPIDパラメータである微分時間を、対応する第1の制御演算手段に予め設定されている微分時間以下の値に制限する複数の微分時間リミッタをさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の協調動作装置の1構成例において、前記第1の制御演算手段と前記第2の制御演算手段が行なう制御演算は、PID制御演算であり、前記第2の制御演算手段の各々に予め設定されているPIDパラメータである積分時間は、全ての第1の制御演算手段に予め設定されている積分時間以上の値である。
また、本発明の協調動作装置の1構成例において、前記第1の制御演算手段と前記第2の制御演算手段が行なう制御演算は、PID制御演算であり、前記第2の制御演算手段の各々に予め設定されているPIDパラメータである微分時間は、全ての第1の制御演算手段に予め設定されている微分時間以下の値である。
また、本発明の協調動作装置の1構成例において、前記第1の制御演算手段と前記第2の制御演算手段が行なう制御演算は、PID制御演算であり、主制御系毎に設けられ、対応する第2の制御演算手段に設定されるPIDパラメータである積分時間を、全ての第1の制御演算手段に予め設定されている積分時間以上の値に制限する複数の積分時間リミッタをさらに備えることを特徴とする。
また、本発明の協調動作装置の1構成例において、前記第1の制御演算手段と前記第2の制御演算手段が行なう制御演算は、PID制御演算であり、主制御系毎に設けられ、対応する第2の制御演算手段に設定されるPIDパラメータである微分時間を、全ての第1の制御演算手段に予め設定されている微分時間以下の値に制限する複数の微分時間リミッタをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の協調動作装置の1構成例は、さらに、前記複数の第2の制御演算手段によって算出された複数の第2の操作量を小さい順あるいは大きい順に並び替える整列手段を備え、前記合成手段は、前記整列手段によって並び替えられた複数の第2の操作量に対して加重演算を行なうことにより前記複数の第2の操作量を合成することを特徴とするものである。
また、本発明の協調動作装置の1構成例において、前記合成手段は、前記第2の操作量の最小値あるいは最大値を選択する加重演算を行なうことを特徴とするものである。
また、本発明の協調動作装置の1構成例において、前記合成手段が行なう加重演算の加重は、前記第2の操作量の数値に連動する可変的な加重である。
また、本発明の協調動作装置の1構成例はさらに、前記平衡点に直接影響する状態量を監視し、前記第3の操作量の操作に制限を与える管理手段を備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の協調動作方法は、主制御の設定値と主制御の制御量を入力として制御演算により第1の操作量を主制御系毎に算出する第1の制御演算ステップと、前記第1の制御演算ステップで算出した複数の第1の操作量をそれぞれ対応する主制御系のアクチュエータに出力する第1の操作量出力ステップと、主制御の整定状態での望ましい操作量出力である平衡点を示す所定の操作量設定値を入力とすると共に、前記第1の制御演算ステップで算出した第1の操作量を制御量入力として、制御演算により第2の操作量を主制御系毎に算出する第2の制御演算ステップと、前記第2の制御演算ステップで算出した複数の第2の操作量に対して加重演算を行なうことにより前記複数の第2の操作量を合成して第3の操作量を得る合成ステップと、前記合成ステップで得られた第3の操作量を、前記平衡点を調整するための1つの副制御系のアクチュエータに出力する第2の操作量出力ステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、望ましい平衡点を示す操作量設定値と第1の制御演算手段によって算出された第1の操作量に基づいて第2の操作量を算出し、第2の操作量を合成して第3の操作量を副制御系のアクチュエータに出力することにより、平衡点を望ましい値に調整することができ、省エネルギーを実現することができる。本発明では、加熱と冷却のマルチループ制御系に限らず、他のマルチループ制御系にも適用することができる。また、本発明では、複数の主制御系において、それらの調整されるべき平衡点が共通しているものに限らず、平衡点が異なるマルチループ制御系にも適用することができる。
【0016】
また、本発明では、第2の制御演算手段の各々に予め設定されているPIDパラメータである積分時間を、対応する第1の制御演算手段に予め設定されている積分時間以上の値とすることにより、安定した主制御系からの操作量の選択・組合せで動作させることができる。
【0017】
また、本発明では、第2の制御演算手段の各々に予め設定されているPIDパラメータである微分時間を、対応する第1の制御演算手段に予め設定されている微分時間以下の値とすることにより、安定した主制御系からの操作量の選択・組合せで動作させることができる。
【0018】
また、本発明では、第2の制御演算手段に設定されるPIDパラメータである積分時間を、対応する第1の制御演算手段に予め設定されている積分時間以上の値に制限する積分時間リミッタを設けることにより、安定した主制御系からの操作量の選択・組合せで動作させることができる。
【0019】
また、本発明では、第2の制御演算手段に設定されるPIDパラメータである微分時間を、対応する第1の制御演算手段に予め設定されている微分時間以下の値に制限する微分時間リミッタを設けることにより、安定した主制御系からの操作量の選択・組合せで動作させることができる。
【0020】
また、本発明では、第2の制御演算手段の各々に予め設定されているPIDパラメータである積分時間を、全ての第1の制御演算手段に予め設定されている積分時間以上の値とすることにより、安定した主制御系からの操作量の選択・組合せで動作させることができる。
【0021】
また、本発明では、第2の制御演算手段の各々に予め設定されているPIDパラメータである微分時間を、全ての第1の制御演算手段に予め設定されている微分時間以下の値とすることにより、安定した主制御系からの操作量の選択・組合せで動作させることができる。
【0022】
また、本発明では、第2の制御演算手段に設定されるPIDパラメータである積分時間を、全ての第1の制御演算手段に予め設定されている積分時間以上の値に制限する積分時間リミッタを設けることにより、安定した主制御系からの操作量の選択・組合せで動作させることができる。
【0023】
また、本発明では、第2の制御演算手段に設定されるPIDパラメータである微分時間を、全ての第1の制御演算手段に予め設定されている微分時間以下の値に制限する微分時間リミッタを設けることにより、安定した主制御系からの操作量の選択・組合せで動作させることができる。
【0024】
また、本発明では、複数の第2の制御演算手段によって算出された複数の第2の操作量を小さい順あるいは大きい順に並び替え、整列手段によって並び替えられた複数の第2の操作量に対して加重演算を行なうことにより、第2の操作量を優先順位に応じて合成することができる。
【0025】
また、本発明では、合成手段が行なう加重演算の加重を、第2の操作量の数値に連動する可変的な加重とすることにより、状況対応的な合成処理を行なうことができる。
【0026】
また、本発明では、平衡点に直接影響する状態量を監視し、第3の操作量の操作に制限を与える管理手段を設けることにより、状態量が下限値を下回ったり上限値を上回ったりしないように第3の操作量を制限することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[発明の原理1]
複数の主制御系において、それらの調整されるべき平衡点が共通しているとは限らない対象を想定して、まず特許文献1に開示された処理(操作量の調整)を各主制御系に適用(副制御系の処理として適用)し、その後で各主制御系における操作量の調整結果である副制御系における各操作量をセレクタにより合成することを、基本原理とする。この基本原理によれば、複数の主制御の動特性が各々で大きく異なる場合でも、主制御系の操作量を調整する副制御系の各動特性演算部分を個別調整することで対応できる。基本原理によれば、平衡点条件の優先度の高い副制御系における各操作量を選択するセレクタを備えることで、安定した副制御系からの操作量の選択方法・組合せ方法を決定する操作になるので、扱いやすい。そして、優先度の高いものに対応できるのであれば、実用価値の高いマルチループ制御系適用方法になる。
【0029】
[発明の原理2]
制御演算としてPID制御演算を採用し、そのPIDパラメータの設定状態を規定したり、PIDパラメータの設定状態をリミッタで制限したりすることで、安定した主制御系からの操作量の選択・組合せで動作させることが、より確実に実現できるようになる。例えば、操作量を個別に調整する副制御系のPIDパラメータの各々と、対応する主制御系のPIDパラメータとが、特定の大小関係で設定された状態になるようにすればよい。以下、この状態を設定状態Aと呼ぶ。また、このような設定状態Aになるリミッタを備えていてもよい。
【0030】
また、より好ましくは、操作量を個別に調整する副制御系のPIDパラメータの各々と、複数の全ての主制御系のPIDパラメータとが、特定の大小関係で設定された状態になるようにすればよい。以下、この状態を設定状態Bと呼ぶ。また、このような設定状態Bになるリミッタを備えていてもよい。
【0031】
[発明の原理3]
副制御系における各操作量を優先順位に応じてセレクタで合成する場合、予め優先順位が決まっているケースよりも、セレクタへの入力値の大小関係で、優先順位が決まるケースが多い。例えば、単純に副制御系における各操作量の最小値や最大値を選択するというケースがある。特に複数の主制御系の中で、最も不利な制御状態にあるものを優先すべきであり、そのような主制御系に対応する副制御系の各操作量は最小値か最大値を示すことになる。つまり、副制御系における複数の操作量のうち最小値か最大値を選択するのが極めて合理的である。したがって、副制御系における各操作量を大小関係順で並び替えた後に、操作量を加重演算などで合成するセレクタを備えることが好ましい。このような状況対応的な動作をするセレクタにより、操作量の現実的な優先順位決定ができる。
【0032】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態は、上記発明の原理1、発明の原理2、発明の原理3に対応するものであり、特に上記設定状態Aに対応するものである。
図1は本実施の形態に係る制御装置である協調動作装置の構成を示すブロック図、
図2は本実施の形態に係る制御系のブロック線図である。協調動作装置は、n(nは2以上の整数)個の主制御部1−1〜1−nと、主制御部1−1〜1−n毎に設けられたn個の操作量調整制御部2−1〜2−nと、セレクタ3とから構成される。
【0033】
各主制御部1−i(i=1〜n)は、それぞれ設定値SP_Aiを入力する設定値入力部10−iと、制御量PV_Aiを入力する制御量入力部11−iと、設定値SP_Aiと制御量PV_Aiに基づいて操作量MV_Ai(第1の操作量)を算出する制御演算部12−i(第1の制御演算手段)と、操作量MV_Aiを対応する主制御系のアクチュエータに出力する操作量出力部13−i(第1の操作量出力手段)とを備えている。
【0034】
各操作量調整制御部2−iは、それぞれ対応する主制御の整定状態での望ましい操作量出力である平衡点を示す操作量設定値SP_Biを入力する操作量設定値入力部20−iと、主制御部1−i毎に設けられた操作量取得部21−iと、操作量設定値SP_Biと操作量MV_Aiに基づいて調整操作量MV_Bi(第2の操作量)を算出する調整制御演算部22−i(第2の制御演算手段)と、調整制御演算部22−iによる調整操作量MV_Biをセレクタ3に出力する調整操作量出力部23−iと、調整制御演算部22−iに設定されるPIDパラメータである積分時間TI_Biを、対応する1つの制御演算部12−iに予め設定されているPIDパラメータである積分時間TI_Ai以上の値に制限する積分時間リミッタ24−iと、調整制御演算部22−iに設定されるPIDパラメータである微分時間TD_Biを、対応する1つの制御演算部12−iに予め設定されているPIDパラメータである微分時間TD_Ai以下の値に制限する微分時間リミッタ25−iとを備えている。
【0035】
セレクタ3は、操作量調整制御部2−i毎に設けられた調整操作量取得部30−iと、n個の調整操作量MV_Biを小さい順あるいは大きい順に並び替える整列部31と、整列部31によって並び替えられた調整操作量MV_Biに対して加重演算を行なうことにより調整操作量MV_Biを合成する合成部32と、合成部32による合成操作量MV_BS(第3の操作量)を副制御系のアクチュエータに出力する合成操作量出力部33(第2の操作量出力手段)とを備えている。
【0036】
図2はn=4の場合の制御系の構成を示している。
図2における4−1〜4−4は主制御系のアクチュエータ、5は副制御系のアクチュエータ、6−1〜6−4は制御対象である。主制御部1−1とアクチュエータ4−1と制御対象6−1とが第1の主制御系を構成し、主制御部1−2とアクチュエータ4−2と制御対象6−2とが第2の主制御系を構成し、主制御部1−3とアクチュエータ4−3と制御対象6−3とが第3の主制御系を構成し、主制御部1−4とアクチュエータ4−4と制御対象6−4とが第4の主制御系を構成している。また、操作量調整制御部2−1〜2−4とセレクタ3とアクチュエータ5とが副制御系を構成している。
【0037】
以下、本実施の形態の協調動作装置の動作を
図3を参照して説明する。各主制御部1−i(i=1〜n)の設定値SP_Aiは、オペレータなどによって設定され、設定値入力部10−iを介して制御演算部12−iに入力される(
図3ステップS100)。
各主制御部1−iの制御量PV_Aiは、センサなど(
図12の例では温度センサ103−1〜103−4)によって計測され、制御量入力部11−iを介して制御演算部12−iに入力される(
図3ステップS101)。
【0038】
各主制御部1−iの制御演算部12−iは、設定値SP_Aiと制御量PV_Aiに基づいて、以下の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MV_Aiを算出する(
図3ステップS102)。
MV_Ai=(100/PB_Ai){1+(1/TI_Ais)+TD_Ais}
×(SP_Ai−PV_Ai) ・・・(1)
式(1)において、PB_Aiは比例帯、TI_Aiは積分時間、TD_Aiは微分時間、sはラプラス演算子である。
【0039】
各主制御部1−iの操作量出力部13−iは、制御演算部12−iによって算出された操作量MV_Aiを対応する主制御系のアクチュエータ4−iに出力する(
図3ステップS103)。設定値入力部10−iと制御量入力部11−iと制御演算部12−iと操作量出力部13−iとは主制御部1−i毎に設けられているので、ステップS100〜S103の処理は主制御部1−i毎に個別に実施されることになる。
【0040】
次に、各操作量調整制御部2−iの積分時間リミッタ24−iは、調整制御演算部22−iに設定されている積分時間TI_Biを、対応する主制御部1−iの制御演算部12−iに設定されている積分時間TI_Aiと比較し(
図3ステップS104)、積分時間TI_Biが積分時間TI_Aiよりも小さい値の場合は(ステップS104においてYES)、次式のように積分時間TI_Biを積分時間TI_Aiに置換する(
図3ステップS105)。
IF TI_Bi<TI_Ai THEN TI_Bi=TI_Ai ・・・(2)
【0041】
すなわち、積分時間TI_Biは、積分時間TI_Ai以上の値に規定されることになる。このような積分時間TI_Biのリミット処理により、主制御系と副制御系の協調動作は、安定的な制御系として動作しやすくなるように規定される。
【0042】
一方、各操作量調整制御部2−iの微分時間リミッタ25−iは、調整制御演算部22−iに設定されている微分時間TD_Biを、対応する主制御部1−iの制御演算部12−iに設定されている微分時間TD_Aiと比較し(
図3ステップS106)、微分時間TD_Biが微分時間TD_Aiよりも大きい値の場合は(ステップS106においてYES)、次式のように微分時間TD_Biを微分時間TD_Aiに置換する(
図3ステップS107)。
IF TD_Bi>TD_Ai THEN TD_Bi=TD_Ai ・・・(3)
【0043】
すなわち、微分時間TD_Biは、微分時間TD_Ai以下の値に規定されることになる。このような微分時間TD_Biのリミット処理により、主制御系と副制御系の協調動作は、安定的な制御系として動作しやすくなるように規定される。
【0044】
次に、調整されるべき平衡点を示す操作量設定値SP_Biは、オペレータなどによって設定され、操作量設定値入力部20−iを介して調整制御演算部22−iに入力される(
図3ステップS108)。平衡点は、主制御の整定状態での望ましい操作量出力であり、エネルギー効率等を考慮して予め決定されている。なお、本実施の形態では、上記のとおり、複数の主制御系の平衡点が共通しているとは限らない場合を想定している。
【0045】
各操作量調整制御部2−iの操作量取得部21−iは、それぞれ対応する主制御部1−iの操作量出力部13−iから操作量MV_Aiを取得する(
図3ステップS109)。
続いて、各操作量調整制御部2−iの調整制御演算部22−iは、操作量設定値SP_Biと操作量MV_Aiに基づいて、以下の伝達関数式のようなPID制御演算を行って調整操作量MV_Biを算出する(
図3ステップS110)。
MV_Bi=(100/PB_Bi){1+(1/TI_Bis)+TD_Bis}
×(SP_Bi−MV_Ai) ・・・(4)
式(4)において、PB_Biは比例帯、TI_Biは積分時間、TD_Biは微分時間、sはラプラス演算子である。なお、式(4)では、積分演算の部分と微分演算の部分は制御の動特性を演算している部分に該当し、積分時間TI_Biと微分時間TD_Biにより、個別に動特性を調整可能になる。
【0046】
各操作量調整制御部2−iの調整操作量出力部23−iは、調整制御演算部22−iによって算出された調整操作量MV_Biをセレクタ3に出力する(
図3ステップS111)。操作量設定値入力部20−iと操作量取得部21−iと調整制御演算部22−iと調整操作量出力部23−iと積分時間リミッタ24−iと微分時間リミッタ25−iとは操作量調整制御部2−i毎に設けられているので、ステップS104〜S111の処理は操作量調整制御部2−i毎に個別に実施されることになる。
【0047】
次に、セレクタ3の各調整操作量取得部30−iは、それぞれ対応する操作量調整制御部2−iの調整操作量出力部23−iから調整操作量MV_Biを取得する(
図3ステップS112)。
整列部31は、調整操作量MV_Biを小さい順あるいは大きい順に並び替えて、並び替え後の調整操作量MV_BXj(j=1〜n)を得る(
図3ステップS113)。
【0048】
合成部32は、整列部31により並び替えられた調整操作量MV_BXjに対して次式のような加重演算(加重平均演算)を行ない、合成操作量MV_BSを得る(
図3ステップS114)。これにより、合成部32は、実質的に調整操作量MV_Biを選択的に合成する。
【0050】
式(5)において、αjは予め定められた加重であり、加重αj(j=1〜n)の合計は1.0である。例えば、整列部31が調整操作量MV_Biを大きい順に並び替えたとして、最も大きい調整操作量MV_BX1に対応する加重α1を1.0、その他の調整操作量MV_BX2〜MV_BXnに対応する加重α2〜αnを0とすれば、合成部32は最大値選択部として機能する。また、整列部31が調整操作量MV_Biを小さい順に並び替えたとして、最も小さい操作量MV_BX1に対応する加重α1を1.0、その他の調整操作量MV_BX2〜MV_BXnに対応する加重α2〜αnを0とすれば、合成部32は最小値選択部として機能する。
【0051】
なお、整列部31による処理は必須ではない。調整操作量MV_Biが、例えば0%〜100%の数値を取り得るのであれば、0%〜19.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには1.0の加重βi、20.0%〜39.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには1.5の加重βi、40.0%〜59.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには2.0の加重βi、60.0%〜79.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには2.5の加重βi、80.0%〜100.0%の範囲にある調整操作量MV_Biには3.0の加重βiというように、調整操作量MV_Biの値に連動する可変的な加重βiを与えて、調整操作量MV_Biの加重平均を算出するようにしてもよい。この場合の合成部32の演算式は以下のようになる。なお、加重βi(i=1〜n)の合計は1.0とは限らない。
【0053】
合成操作量出力部33は、合成部32によって算出された合成操作量MV_BSを副制御系のアクチュエータ5に出力する(
図3ステップS115)。
以上のようなステップS100〜S115の処理が、例えばオペレータからの指令によって制御が終了するまで(
図3ステップS116においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
【0054】
次に、
図4(A)〜
図4(C)、
図5(A)〜
図5(C)に本実施の形態の効果を示すシミュレーション結果を示す。ここでは、主制御系の数をn=4とし、
図12に示したように加熱のための4個の主制御系と平衡点を調整するための1個の副制御系である冷却制御系とを想定し、加熱処理炉内の4個のゾーンの温度を100℃から200℃へ昇温する場合の数値をシミュレーションにより求めた。
【0055】
図4(A)〜
図4(C)は
図1に示した構成において合成操作量MV_BSを固定した場合の動作を示しており、通常の制御装置に相当する動作を示している。
図4(A)は設定値SP_A1〜SP_A4=200℃のステップ入力が加わったときの温度PV_A1〜PV_A4(制御量)の変化を示し、
図4(B)はこのステップ入力時に主制御部1−1〜1−4から出力される操作量MV_A1〜MV_A4の変化を示し、
図4(C)は合成操作量MV_BSを示している。
【0056】
合成操作量MV_BSの値は、加熱処理炉の温度を昇温前の100℃に維持する際に操作量MV_A1〜MV_A4の最小値が整定時に約25%を維持できるようにするため、MV_BS=30.0%としている。合成操作量MV_BSが固定されているので、200℃に昇温した後では操作量MV_A1〜MV_A4が全体的に高くなり、最小の操作量MV_A4が整定時に約25%を大きく上回っている。すなわち、エネルギー的には効率の悪い状態が継続している。
【0057】
図5(A)〜
図5(C)は本実施の形態の協調動作装置の動作を示しており、
図5(A)は設定値SP_A1〜SP_A4=200℃のステップ入力が加わったときの温度PV_A1〜PV_A4(制御量)の変化を示し、
図5(B)はこのステップ入力時に主制御部1−1〜1−4から出力される操作量MV_A1〜MV_A4の変化を示し、
図5(C)はセレクタ3から出力される合成操作量MV_BSの変化を示している。
【0058】
操作量設定値SP_B1〜SP_B4の値は、操作量MV_A1〜MV_A4の最小値が整定時に約25%を維持できるようにするために、SP_B1〜SP_B4=25.0%の共通の値としている。セレクタ3については、最大値選択部として機能するように設定した。本実施の形態により、合成操作量MV_BSが可変になり、加熱処理炉の温度を200℃に昇温した後でも操作量MV_A1〜MV_A4が
図4(B)の場合と比較して全体的に低くなり、最小の操作量MV_A4が整定時に約25%を維持できていることが分かる。すなわち、エネルギー的には効率の良い状態が継続している。また、昇温時には合成操作量MV_BSがほとんどの時間帯において0%であり、副制御系の冷却器が動作していないことになるので、昇温動作自体もエネルギー的に効率が良いことが分かる。
【0059】
以上のように、本実施の形態では、望ましい平衡点を示す操作量設定値SP_B1〜SP_Bnと主制御部1−1〜1−nによって算出された操作量MV_A1〜MV_Anに基づいて調整操作量MV_B1〜MV_Bnを算出し、調整操作量MV_B1〜MV_Bnを合成して合成操作量MV_BSを副制御系のアクチュエータに出力することにより、平衡点を望ましい値に調整することができ、省エネルギーを実現することができる。本実施の形態では、加熱と冷却のマルチループ制御系に限らず、他のマルチループ制御系にも適用することができる。また、本実施の形態では、複数の主制御系において、それらの調整されるべき平衡点が共通しているものに限らず、平衡点が異なるマルチループ制御系にも適用することができる。
【0060】
なお、調整制御演算部22−iにて調整操作量MV_Biを算出後に、セレクタ3により合成操作量MV_BSを求めて冷却系に出力することになるので、積分ワインドアップが発生しないように留意する必要がある。具体的には、PID演算を速度型演算にして、合成操作量MV_BSを各調整制御演算部22−iでの前回操作量とするなどの方法がある。
【0061】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記発明の原理1、発明の原理2、発明の原理3に対応するものであり、特に上記設定状態Bに対応するものである。本実施の形態においても、協調動作装置の構成の概要は第1の実施の形態と同様であるので、
図1、
図2の符号を用いて説明する。
【0062】
本実施の形態では、各操作量調整制御部2−i(i=1〜n)の積分時間リミッタ24−iが、調整制御演算部22−iに設定されるPIDパラメータである積分時間TI_Biを、全ての制御演算部12−iに予め設定されているPIDパラメータである積分時間TI_Ai以上の値に制限する点と、各操作量調整制御部2−iの微分時間リミッタ25−iが、調整制御演算部22−iに設定されるPIDパラメータである微分時間TD_Biを、全ての制御演算部12−iに予め設定されているPIDパラメータである微分時間TD_Ai以下の値に制限する点が、第1の実施の形態と異なる。
【0063】
以下、本実施の形態の協調動作装置の動作を説明する。本実施の形態においても、協調動作装置の処理の流れは第1の実施の形態と同様であるので、
図3を用いて説明する。
各主制御部1−iの動作(
図3ステップS100〜S103)は、第1の実施の形態と同じである。
【0064】
次に、各操作量調整制御部2−iの積分時間リミッタ24−iは、調整制御演算部22−iに設定されている積分時間TI_Biを、複数ある全ての制御演算部12−iに設定されている積分時間TI_Aiと比較し(
図3ステップS104)、積分時間TI_Biが少なくとも1つの積分時間TI_Aiよりも小さい値の場合は(ステップS104においてYES)、次式のように積分時間TI_Biを積分時間TI_Aiのうちの最大値TI_Amaxに置換する(
図3ステップS105)。
IF TI_Bi<TI_Ai THEN TI_Bi=TI_Amax
・・・(7)
【0065】
すなわち、積分時間TI_Biは、全ての積分時間TI_Ai以上の値に規定されることになる。このような積分時間TI_Biのリミット処理により、主制御系と副制御系の協調動作は、安定的な制御系として動作しやすくなるように規定される。
【0066】
一方、各操作量調整制御部2−iの微分時間リミッタ25−iは、調整制御演算部22−iに設定されている微分時間TD_Biを、複数ある全ての制御演算部12−iに設定されている微分時間TD_Aiと比較し(
図3ステップS106)、微分時間TD_Biが少なくとも1つの微分時間TD_Aiよりも大きい値の場合は(ステップS106においてYES)、次式のように微分時間TD_Biを微分時間TD_Aiのうちの最小値TD_Aminに置換する(
図3ステップS107)。
IF TD_Bi>TD_Ai THEN TD_Bi=TD_Amin
・・・(8)
【0067】
すなわち、微分時間TD_Biは、全ての微分時間TD_Ai以下の値に規定されることになる。このような微分時間TD_Biのリミット処理により、主制御系と副制御系の協調動作は、安定的な制御系として動作しやすくなるように規定される。
【0068】
図3のステップS108〜S111の処理は、第1の実施の形態と同じである。操作量設定値入力部20−iと操作量取得部21−iと調整制御演算部22−iと調整操作量出力部23−iと積分時間リミッタ24−iと微分時間リミッタ25−iとは操作量調整制御部2−i毎に設けられているので、ステップS104〜S111の処理は操作量調整制御部2−i毎に個別に実施されることになる。
【0069】
セレクタ3の動作(
図3ステップS112〜S115)は、第1の実施の形態と同じである。
こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図6は本実施の形態に係る加熱装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、4個の主制御系である加熱制御系と1個の副制御系である冷却制御系とで構成される加熱装置に第1、第2の実施の形態の協調動作装置を適用した例を示すものである。トンネル型リフロー炉200には、加熱したいゾーン205−1〜205−4が4個あって、ゾーン205−1〜205−4毎にヒータ201−1〜201−4が設けられ、さらにリフロー炉200内の空気を冷却する1個の冷却器202(冷却アクチュエータ)が設けられている。ヒータ201−1〜201−4は、SSR(Solidstate Relay)204−1〜204−4と共に主制御系の加熱アクチュエータを構成している。
【0071】
主制御部1−1〜1−4は、リフロー炉200内の循環空気を加熱して温度制御を行なう。リフロー炉200内の各ゾーン205−1〜205−4の温度PV_A1〜PV_A4(制御量)は、温度センサ203−1〜203−4によって個別に計測される。SSR204−1〜204−4は、主制御部1−1〜1−4から出力される操作量MV_A1〜MV_A4に応じてヒータ201−1〜201−4に供給する電力を調整する。循環空気は、各ゾーン205−1〜205−4を通過した後に4ゾーン共通の循環経路に収集され、ウォータージャケット等からなる冷却器202で冷却された後に、各ゾーン205−1〜205−4に供給される。主制御系での制御可能な最低必要な操作量MV_A1〜MV_A4が、個別の操作量設定値SP_B1〜SP_B4、すなわち調整対象の平衡点になる。操作量設定値SP_B1〜SP_B4は例えば20%である。
【0072】
主制御系の操作量MV_A1〜MV_A4を増加させるためには冷却器202に供給する調整操作量MV_B1〜MV_B4を上昇させる必要があり、逆に主制御系の操作量MV_A1〜MV_A4を減少させるためには冷却器202に供給する調整操作量MV_B1〜MV_B4を下降させる必要がある。したがって、各操作量調整制御部2−1〜2−4の調整制御演算部22−1〜22−4には、逆動作の制御演算が適用される。
【0073】
4個の主制御系の中で、最も不利な制御状態にあるものは、対応する調整操作量MV_B1〜MV_B4が最大値を示すものである。よって、セレクタ3は、4個の調整操作量MV_B1〜MV_B4のうちの最大値を選択して合成操作量MV_BSとして出力すればよい。ただし、制御性能の必要性に応じて、加重αj,βiを適宜調整してもよい。
【0074】
図6に示した構成に第1の実施の形態の協調動作装置を適用する場合、各調整制御演算部22−iに設定される積分時間TI_Biは、対応する制御演算部12−iに設定される積分時間TI_Ai以上に設定される。また、各調整制御演算部22−iに設定される微分時間TD_Biは、対応する制御演算部12−iに設定される微分時間TD_Ai以下に設定される。例えば、制御演算部12−iに設定される積分時間TI_Aiを、TI_A1=40.0sec.、TI_A2=44.0sec.、TI_A3=48.0sec.、TI_A4=52.0sec.とし、制御演算部12−iに設定される微分時間TD_Aiを、TD_A1=10.0sec.、TD_A2=11.0sec.、TD_A3=12.0sec.、TD_A4=13.0sec.とする。この場合、各調整制御演算部22−iに設定される積分時間TI_Biは、TI_B1≧40.0sec.、TI_B2≧44.0sec.、TI_B3≧48.0sec.、TI_B4≧52.0sec.となり、各調整制御演算部22−iに設定される微分時間TD_Biは、TD_B1≦10.0sec.、TD_B2≦11.0sec.、TD_B3≦12.0sec.、TD_B4≦13.0sec.となる。
【0075】
図6に示した構成に第2の実施の形態の協調動作装置を適用する場合、各調整制御演算部22−iに設定される積分時間TI_Biは、4個の主制御部1−iの制御演算部12−iに設定される積分時間TI_Aiのうちの最大値TI_Amax以上に設定される。また、各調整制御演算部22−iに設定される微分時間TD_Biは、4個の主制御部1−iの制御演算部12−iに設定される微分時間TD_Aiのうちの最小値TD_Amin以下に設定される。例えば、制御演算部12−iに設定される積分時間TI_Aiを、TI_A1=40.0sec.、TI_A2=44.0sec.、TI_A3=48.0sec.、TI_A4=52.0sec.とし、制御演算部12−iに設定される微分時間TD_Aiを、TD_A1=10.0sec.、TD_A2=11.0sec.、TD_A3=12.0sec.、TD_A4=13.0sec.とする。この場合、各調整制御演算部22−iに設定される積分時間TI_Biは、TI_B1≧52.0sec.、TI_B2≧52.0sec.、TI_B3≧52.0sec.、TI_B4≧52.0sec.となり、各調整制御演算部22−iに設定される微分時間TD_Biは、TD_B1≦10.0sec.、TD_B2≦10.0sec.、TD_B3≦10.0sec.、TD_B4≦10.0sec.となる。
【0076】
なお、本実施の形態の協調動作装置の場合、平衡点に直接影響する状態量である冷却器出口の循環空気温度が、監視され管理されるように、管理部(不図示)を備える構成にするのが好ましい。具体的には、管理部は、冷却器出口の循環空気温度が所定の下限値以下になり過剰な冷却状態になる場合は、合成操作量MV_BSを上昇させないように制限し、逆に、冷却器出口の循環空気温度が所定の上限値以上になり不十分な冷却状態になる場合は、合成操作量MV_BSを下降させないように制限する。すなわち、管理部は、冷却器出口の循環空気温度が下限値を下回ったり上限値を上回ったりしないように合成操作量MV_BSを制限する。
【0077】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図7は本実施の形態に係る加熱装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、4個の主制御系である加熱制御系と1個の副制御系である加熱制御系とで構成される加熱装置に第1、第2の実施の形態の協調動作装置を適用した例を示すものである。均熱ホットプレート300には、加熱したい均熱対象ゾーン305−1〜305−4が4個あり、さらに均熱補助のための周囲ゾーン305−5があって、ゾーン305−1〜305−4毎に埋め込み式のヒータ301−1〜301−4が設けられ、周囲ゾーン305−5に埋め込み式のヒータ301−5が設けられている。ヒータ301−1〜301−4は、SSR304−1〜304−4と共に主制御系の加熱アクチュエータを構成し、ヒータ301−5は、SSR304−5と共に副制御系の加熱アクチュエータを構成している。
【0078】
主制御部1−1〜1−4は、ゾーン305−1〜305−4を加熱して温度制御を行なう。各ゾーン305−1〜305−4の温度PV_A1〜PV_A4(制御量)は、温度センサ303−1〜303−4によって個別に計測される。SSR304−1〜304−4は、主制御部1−1〜1−4から出力される操作量MV_A1〜MV_A4に応じてヒータ301−1〜301−4に供給する電力を調整する。また、周囲ゾーン305−5もゾーン305−1〜305−4と同様に加熱される。SSR304−5は、セレクタ3から出力される合成操作量MV_BSに応じてヒータ301−5に供給する電力を調整する。主制御系での制御可能な最低必要な操作量MV_A1〜MV_A4が、個別の操作量設定値SP_B1〜SP_B4、すなわち調整対象の平衡点になる。操作量設定値SP_B1〜SP_B4は例えば20%である。
【0079】
主制御系の操作量MV_A1〜MV_A4を増加させるためには周囲ゾーン305−5の調整操作量MV_B1〜MV_B4を下降させる必要があり、逆に主制御系の操作量MV_A1〜MV_A4を減少させるためには周囲ゾーン305−5の調整操作量MV_B1〜MV_B4を上昇させる必要がある。したがって、各操作量調整制御部2−1〜2−4の調整制御演算部22−1〜22−4には、正動作の制御演算が適用される。
【0080】
4個の主制御系の中で、最も不利な制御状態にあるものは、対応する調整操作量MV_B1〜MV_B4が最小値を示すものである。よって、セレクタ3は、4個の調整操作量MV_B1〜MV_B4のうちの最小値を選択して合成操作量MV_BSとして出力すればよい。ただし、制御性能の必要性に応じて、加重αj,βiを適宜調整してもよい。
【0081】
図7に示した構成に第1の実施の形態の協調動作装置を適用する場合、各調整制御演算部22−iに設定される積分時間TI_Biは、対応する制御演算部12−iに設定される積分時間TI_Ai以上に設定される。また、各調整制御演算部22−iに設定される微分時間TD_Biは、対応する制御演算部12−iに設定される微分時間TD_Ai以下に設定される。
【0082】
図7に示した構成に第2の実施の形態の協調動作装置を適用する場合、各調整制御演算部22−iに設定される積分時間TI_Biは、4個の主制御部1−iの制御演算部12−iに設定される積分時間TI_Aiのうちの最大値TI_Amax以上に設定される。また、各調整制御演算部22−iに設定される微分時間TD_Biは、4個の主制御部1−iの制御演算部12−iに設定される微分時間TD_Aiのうちの最小値TD_Amin以下に設定される。
【0083】
なお、本実施の形態の協調動作装置の場合、平衡点に直接影響する状態量である周囲ゾーン305−5の温度が、監視され管理されるように、管理部(不図示)を備える構成にするのが好ましい。具体的には、管理部は、周囲ゾーン305−5の温度が所定の上限値以上になり過剰な加熱状態になる場合は、合成操作量MV_BSを上昇させないように制限し、逆に、周囲ゾーン305−5の温度が所定の下限値以下になり不十分な加熱状態になる場合は、合成操作量MV_BSを下降させないように制限する。すなわち、管理部は、周囲ゾーン305−5の温度が上限値を上回ったり下限値を下回ったりしないように合成操作量MV_BSを制限する。
【0084】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。
図8は本実施の形態に係るセントラル空調システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態は、4個の主制御系である給気風量制御系と1個の副制御系である給気温度制御系とで構成されるセントラル空調システムに第1、第2の実施の形態の協調動作装置を適用した例を示すものである。部屋400には、温度制御したいゾーン405−1〜405−4が4個あり、ゾーン405−1〜405−4毎に給気ダンパ402−1〜402−4(給気風量アクチュエータ)が設けられている。空調機401は、副制御系の給気温度アクチュエータを構成している。
【0085】
主制御部1−1〜1−4は、各ゾーン405−1〜405−4に対して給気風量による室内温度制御を行なう。各ゾーン405−1〜405−4の温度PV_A1〜PV_A4(制御量)は、温度センサ403−1〜403−4によって個別に計測される。4ゾーン共通の空調機401は、冷房の場合は指定された温度に給気を冷却し、暖房の場合は指定された温度に給気を加熱する。以下では、冷房の場合についてのみ説明する。
【0086】
空調機401から送り出された給気は、ダクト406を通って吹出口407−1〜407−4から各ゾーン405−1〜405−4に供給される。給気温度は、給気温度センサ404によって計測される。給気ダンパ402−1〜402−4は、主制御部1−1〜1−4から出力される操作量MV_A1〜MV_A4に応じて、各ゾーン405−1〜405−4に供給される給気の風量を調節する。空調機401は、セレクタ3から出力される合成操作量MV_BSに応じて、空調機内部の熱交換機を流れる熱媒の量を調節することにより、給気温度を調節する。部屋400から戻される還気は、ダクト408および還気ダンパ409を通り、取入口410から導入された外気と混合されて空調機401に戻される。主制御系での制御可能な最低必要な操作量MV_A1〜MV_A4(風量)が、個別の操作量設定値SP_B1〜SP_B4、すなわち調整対象の平衡点になる。操作量設定値SP_B1〜SP_B4は例えば10m
3/min.である。
【0087】
主制御系の操作量MV_A1〜MV_A4を増加させるためには調整操作量MV_B1〜MV_B4である給気温度を上昇させる必要があり、逆に主制御系の操作量MV_A1〜MV_A4を減少させるためには調整操作量MV_B1〜MV_B4である給気温度を下降させる必要がある。したがって、各操作量調整制御部2−1〜2−4の調整制御演算部22−1〜22−4には、逆動作の制御演算が適用される。一般的には、風量を少なくすれば、搬送動力を小さくすることができるので、省エネルギーに繋がることが知られている。
【0088】
4個の主制御系の中で、最も不利な制御状態にあるものは、対応する調整操作量MV_B1〜MV_B4が最大値(最高の給気温度)を示すものである。よって、セレクタ3は、4個の調整操作量MV_B1〜MV_B4のうちの最大値を選択して合成操作量MV_BSとして出力すればよい。ただし、制御性能の必要性に応じて、加重αj,βiを適宜調整してもよい。
【0089】
空調の場合、各ゾーン405−1〜405−4に存在する人やコンピュータのような発熱物、あるいは各ゾーン405−1〜405−4における窓の有無のような放熱条件が異なり、結果的に調整操作量MV_B1〜MV_B4が、ゾーン間で大きく異なる数値になる可能性が高い。ゆえに、調整操作量MV_B1〜MV_B4の最大値に加重を集中させるのではなく、調整操作量MV_B1〜MV_B4の数値に連動して、式(6)に示した加重βiを変えた方が好ましいこともある。具体的には、調整操作量MV_Bi(i=1〜4)が、例えば0%〜100%の数値を取り得るのであれば、0%〜19.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには1.0の加重βi、20.0%〜39.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには1.5の加重βi、40.0%〜59.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには2.0の加重βi、60.0%〜79.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには2.5の加重βi、80.0%〜100.0%の範囲にある調整操作量MV_Biには3.0の加重βiというような値にすればよい。
【0090】
図8に示した構成に第1の実施の形態の協調動作装置を適用する場合、各調整制御演算部22−iに設定される積分時間TI_Biは、対応する制御演算部12−iに設定される積分時間TI_Ai以上に設定される。また、各調整制御演算部22−iに設定される微分時間TD_Biは、対応する制御演算部12−iに設定される微分時間TD_Ai以下に設定される。
【0091】
図8に示した構成に第2の実施の形態の協調動作装置を適用する場合、各調整制御演算部22−iに設定される積分時間TI_Biは、4個の主制御部1−iの制御演算部12−iに設定される積分時間TI_Aiのうちの最大値TI_Amax以上に設定される。また、各調整制御演算部22−iに設定される微分時間TD_Biは、4個の主制御部1−iの制御演算部12−iに設定される微分時間TD_Aiのうちの最小値TD_Amin以下に設定される。
【0092】
なお、本実施の形態の協調動作装置の場合、平衡点に直接影響する状態量である給気温度を管理する管理部(不図示)を備える構成にするのが好ましい。具体的には、管理部は、給気温度が所定の上限値以上になる場合は、合成操作量MV_BSを下降させないように制限し、逆に、給気温度が所定の下限値以下になる場合は、合成操作量MV_BSを上昇させないように制限する。すなわち、管理部は、給気温度が上限値を上回ったり下限値を下回ったりしないように合成操作量MV_BSを制限する。
【0093】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。
図9は本実施の形態に係るビルマル空調システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態は、4個の主制御系である給気温度制御系と1個の副制御系である熱媒温度制御系とで構成されるビルマル空調システムに第1、第2の実施の形態の協調動作装置を適用した例を示すものである。部屋500には、温度制御したいゾーン504−1〜504−4が4個あり、ゾーン504−1〜504−4毎に空調機501−1〜501−4(給気温度アクチュエータ)が設けられている。室外機502は、副制御系の熱媒温度アクチュエータを構成している。
【0094】
主制御部1−1〜1−4は、各ゾーン504−1〜504−4に対して給気温度による室内温度制御を行なう。各ゾーン504−1〜504−4の温度PV_A1〜PV_A4(制御量)は、温度センサ503−1〜503−4によって個別に計測される。4台の空調機501−1〜501−4に共通の室外機502は、冷房の場合は指定された温度に熱媒を冷却し、暖房の場合は指定された温度に熱媒を加熱する。以下では、冷房の場合についてのみ説明する。
【0095】
室外機502は、セレクタ3から出力される合成操作量MV_BSに応じて、室外機内部の熱交換機を流れる熱媒の量を調節することにより、熱媒温度を調節する。室外機502によって冷却された熱媒は、配管508を通って各空調機501−1〜501−4に供給される。使用された熱媒は、配管509を通って室外機502に戻される。空調機501−1〜501−4は、主制御部1−1〜1−4から出力される操作量MV_A1〜MV_A4に応じて、空調機内部の熱交換機を流れる熱媒の量を調節することにより、給気温度を調節する。空調機501−1〜501−4から送り出された給気は、ダクト505−1〜505−4を通って吹出口506−1〜506−4から各ゾーン504−1〜504−4に供給される。部屋500から戻される還気は、ダクト507−1〜507−4を通って空調機501−1〜501−4に戻される。主制御系での制御可能な最低必要な操作量MV_A1〜MV_A4(熱媒バルブ開度)が、個別の操作量設定値SP_B1〜SP_B4、すなわち調整対象の平衡点になる。操作量設定値SP_B1〜SP_B4は例えば20%である。
【0096】
主制御系の操作量MV_A1〜MV_A4を増加させるためには調整操作量MV_B1〜MV_B4である熱媒温度を上昇させる必要があり、逆に主制御系の操作量MV_A1〜MV_A4を減少させるためには調整操作量MV_B1〜MV_B4である熱媒温度を下降させる必要がある。したがって、各操作量調整制御部2−1〜2−4の調整制御演算部22−1〜22−4には、逆動作の制御演算が適用される。室外機502の種類によっては、熱媒流量を少なくすれば、搬送動力を小さくすることができるので、省エネルギーに繋げることができる。
【0097】
4個の主制御系の中で、最も不利な制御状態にあるものは、対応する調整操作量MV_B1〜MV_B4が最大値(最高の熱媒温度)を示すものである。よって、セレクタ3は、4個の調整操作量MV_B1〜MV_B4のうちの最大値を選択して合成操作量MV_BSとして出力すればよい。ただし、制御性能の必要性に応じて、加重αj,βiを適宜調整してもよい。
【0098】
空調の場合、各ゾーン504−1〜504−4に存在する人やコンピュータのような発熱物、あるいは各ゾーン504−1〜504−4における窓の有無のような放熱条件が異なり、結果的に調整操作量MV_B1〜MV_B4が、ゾーン間で大きく異なる数値になる可能性が高い。ゆえに、調整操作量MV_B1〜MV_B4の最大値に加重を集中させるのではなく、調整操作量MV_B1〜MV_B4の数値に連動して、式(6)に示した加重βiを変えた方が好ましいこともある。具体的には、調整操作量MV_Bi(i=1〜4)が、例えば0%〜100%の数値を取り得るのであれば、0%〜19.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには1.0の加重βi、20.0%〜39.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには1.5の加重βi、40.0%〜59.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには2.0の加重βi、60.0%〜79.9%の範囲にある調整操作量MV_Biには2.5の加重βi、80.0%〜100.0%の範囲にある調整操作量MV_Biには3.0の加重βiというような値にすればよい。
【0099】
図9に示した構成に第1の実施の形態の協調動作装置を適用する場合、各調整制御演算部22−iに設定される積分時間TI_Biは、対応する制御演算部12−iに設定される積分時間TI_Ai以上に設定される。また、各調整制御演算部22−iに設定される微分時間TD_Biは、対応する制御演算部12−iに設定される微分時間TD_Ai以下に設定される。
【0100】
図9に示した構成に第2の実施の形態の協調動作装置を適用する場合、各調整制御演算部22−iに設定される積分時間TI_Biは、4個の主制御部1−iの制御演算部12−iに設定される積分時間TI_Aiのうちの最大値TI_Amax以上に設定される。また、各調整制御演算部22−iに設定される微分時間TD_Biは、4個の主制御部1−iの制御演算部12−iに設定される微分時間TD_Aiのうちの最小値TD_Amin以下に設定される。
【0101】
なお、ビルマル空調システムの場合、トレードオフとなる操作量の組合せは、空調機501−1〜501−4や室外機502が備える機能などに応じて、上記以外にも適宜設計可能である。また、本実施の形態の協調動作装置の場合、平衡点に直接影響する状態量である熱媒温度を管理する管理部(不図示)を備える構成にするのが好ましい。具体的には、管理部は、熱媒温度が所定の上限値以上になる場合は、合成操作量MV_BSを下降させないように制限し、逆に、熱媒温度が所定の下限値以下になる場合は、合成操作量MV_BSを上昇させないように制限する。すなわち、管理部は、熱媒温度が上限値を上回ったり下限値を下回ったりしないように合成操作量MV_BSを制限する。
【0102】
第1〜第6の実施の形態で説明した協調動作装置は、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第6の実施の形態で説明した処理を実行する。