特許第5990131号(P5990131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990131
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】包装材用の積層フィルムおよび包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20160825BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160825BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B32B27/32 Z
   B32B27/00 H
   B65D65/40 D
【請求項の数】3
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-104013(P2013-104013)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2014-223752(P2014-223752A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】朝重 直樹
(72)【発明者】
【氏名】永井 直
(72)【発明者】
【氏名】中井 一宙
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健悟
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−283446(JP,A)
【文献】 特開2011−026448(JP,A)
【文献】 特開昭61−016839(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/148586(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B65D 65/00− 65/46
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
C08F301/00
C08G 77/00− 77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ーラント層と、前記シーラント層に隣接する基材層とを有する包装材用の積層フィルムであって、
前記シーラント層に隣接する前記基材層が、ポリオレフィンフィルムであり、
前記シーラント層が、
熱可塑性樹脂、100重量部と、
式(1)で表される構造単位を含有するケイ素含有化合物と、GPC法で求めた数平均分子量が100以上500,000以下であるビニル基含有化合物との反応(ただし、前記ケイ素含有化合物として1分子に2個以上のSiH基を有するものを用い、かつ前記ビニル基含有化合物として1分子あたり平均2.0個以上のビニル基を有するものを用いる場合は除く)によって得られる、シリル化ポリオレフィンもしくはその誘導体、またはこれらの混合物、0.01〜50重量部と、
を含有する組成物から形成される層である、包装材用の積層フィルム。
−Si(R)H−Y− (1)
(式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、
はO、SまたはNR30(R30は、水素原子または炭化水素基である)である。)
【請求項2】
請求項1に記載の包装材用の積層フィルムのシーラント層同士を向かい合わせ、必要部位をヒートシールして得られる包装材。
【請求項3】
請求項1に記載の包装材用の積層フィルムのシーラント層に、他の基材を向かい合わせ、必要部位をヒートシールして得られる包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材用の積層フィルム、さらにはその積層フィルムを用いた包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、積層プラスチックフィルム製の包装材は、軽量で気密性に優れ、高強度で取り扱いに便利であるほか、ヒートシールで密封しうるため、液状、粉末状、ペースト状、固体状の食品、薬品など多岐に渡る商品の包装材に使用されている。
練り餡やショートニング等の粘稠物は、プラスチック製フィルムを用いて製袋された包装材へ充填包装されて、市場に供給されている。
【0003】
しかし、この包装材に詰められた粘稠物は、使用に際しての取り出しにあっては、該粘稠物の持つ粘り気により包装材の内面へベタベタと付着して、該包装材内の流動性が悪く、かつ、この包装材の内面に接していた部分の粘稠物は、該内面に残って取り出しにくくその作業は甚だ面倒であった。また、前記粘稠物を取り出した後の包装材内に残った粘稠物は、この包装材と共に廃棄されてしまうもので、この廃棄量も比較的多く生ずることがあって、粘稠物の取出歩留りを大きく低下させると共に、前記廃棄物の処理にあっても、環境面から問題点を有するものであった。
【0004】
特許文献1、2には、上記課題を解決するため、粘稠物が接するシーラント層に界面活性剤を配合することや、包装材の内面に予め界面活性剤を塗工して膜を形成することが記載されている。
しかし、
(1)界面活性剤はシーラント層の表面からブリードアウトしやすいため、粘稠物の付着防止効果が小さくなる、或いは効果が長続きしにくい、
(2)界面活性剤のヒートシール部へのブリードアウトのため、シーラント層同士の接着強度が低下し、容器の密封性が低下する、或いは密封性が長続きしにくい、
(3)包装材には、ガスバリアー性、防湿性、強度などの様々な機能を付与するために、通常は、複数の材質のフィルムを組み合わせた積層フィルムが用いられるが、シーラント層からの界面活性剤のブリード過多により積層フィルムのラミネート強度が不足する、
等が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−355362号公報
【特許文献2】特開2001−48229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の技術的背景を考慮してなされたものであって、内容物が粘稠物であっても、容器から内容物を取り出しやすく、必要なヒートシール強度が確保でき、しかもそれらの優れた特性が長期間維持される包装材と、その包装材用の積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の包装材用の積層フィルムは、
基材層とシーラント層とを有する包装材用の積層フィルムであって、
前記シーラント層は、
熱可塑性樹脂、100重量部と、
式(1)で表される構造単位を含有するケイ素含有化合物と、GPC法で求めた数平均分子量が100以上500,000以下であるビニル基含有化合物との反応(ただし、前記ケイ素含有化合物として1分子に2個以上のSiH基を有するものを用い、かつ前記ビニル基含有化合物として1分子あたり平均2.0個以上のビニル基を有するものを用いる場合は除く)によって得られる、シリル化ポリオレフィンもしくはその誘導体、またはこれらの混合物、0.01〜50重量部と、
を含有する組成物から形成される層である。
−Si(R)H−Y− (1)
式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、
はO、SまたはNR30(R30は、水素原子または炭化水素基である)である。
【0008】
本発明の容器としては、前記の包装材用の積層フィルムのシーラント層同士を向かい合わせ、必要部位をヒートシールして得られる包装材、あるいは、
前記の包装材用の積層フィルムのシーラント層に、他の基材を向かい合わせ、必要部位をヒートシールして得られる包装材が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容器から内容物を取り出しやすく、密封に必要なヒートシール強度が確保でき、しかもそれらの優れた特性が長期間維持される包装材と、その容器が得られる包装材用の積層フィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る積層フィルムおよび包装材について具体的に説明する。
なお、本明細書においてフィルムとは、薄膜に限らず、厚手の所謂シートも意味するものである。また、明細書中においてフィルムをフィルム又はシートと記載する場合もある。
【0011】
シーラント用組成物
本発明の包装材用の積層フィルムのシーラント層は、
熱可塑性樹脂、100重量部と、
式(1)で表される構造単位を含有するケイ素含有化合物と、GPC法で求めた数平均分子量が100以上500,000以下であるビニル基含有化合物との反応(ただし、前記ケイ素含有化合物として1分子に2個以上のSiH基を有するものを用い、かつ前記ビニル基含有化合物として1分子あたり平均2.0個以上のビニル基を有するものを用いる場合は除く)によって得られる、シリル化ポリオレフィンもしくはその誘導体、またはこれらの混合物、0.01〜50重量部と、
を含有する組成物から形成される。
【0012】
前記の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0013】
ポリエチレン系樹脂は、エチレンを主成分とする樹脂であり、たとえば、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレン等のいずれのエチレン単独重合体を使用することができる他に、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1などのα−オレフィン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーとの結晶性、あるいは、低結晶性ないし非結晶性のランダムもしくはブロック共重合体、あるいは、これらの混合物などを用いることができる。
【0014】
また、ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを主成分とする樹脂であり、たとえば、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1などのα−オレフィンとのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
【0015】
本発明のシリル化ポリオレフィンもしくはその誘導体、またはこれらの混合物は、
式(1)で表される構造単位を含有するケイ素含有化合物と、GPC法で求めた数平均分子量が100以上500,000以下でありかつビニル基を含有するビニル基含有化合物との反応(ただし、上記ケイ素含有化合物として1分子に2個以上のSiH基を有するものを用い、かつ上記ビニル基含有化合物として1分子あたり平均2.0個以上のビニル基を有するものを用いる場合は除く)によって得られる。
−Si(R)H−Y− (1)
式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、
はO、SまたはNR30(R30は、水素原子または炭化水素基である)である。
【0016】
シリル化ポリオレフィンの構造は定かではないが、例えば式(1)の構造単位を含有するケイ素含有化合物中の−Si−Hと、ビニル基含有化合物中の−CH=CH(ビニル基)とが反応して生成する、−Si−C−C−構造を含むのではないかと考えられる。
ただし、上記ケイ素含有化合物として1分子に2個以上のSiH基を有するものを用い、かつ上記ビニル基含有化合物として1分子あたり平均2.0個以上のビニル基を有するものを用いる場合は、得られるシリル化ポリオレフィンは、例えば網目構造を有する可能性が高いと考えられ、本発明ではこのような場合を除いている。
【0017】
本発明で用いられるケイ素含有化合物は、式(1)で表される構造単位を有するヒドロシラン化合物である。
−Si(R)H−Y− (1)
式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、
はO、SまたはNR30(R30は、水素原子または炭化水素基である)である。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられる。
【0018】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等の直鎖状または分岐状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0019】
アリール基としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0020】
また上記の炭化水素基は、1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、これらの基の少なくとも一つの水素が、ハロゲン原子、酸素、窒素、ケイ素、リン、イオウを含む基で置換された基が挙げられる。
【0021】
一実施形態において、ケイ素含有化合物は、式(2)で表される構造を有する。
22−(Si(R21)H−Y21−Z−(Y22−Si(R23)H)−R24 (2)
式(2)中、R21およびR23はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、
22およびR24はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、または炭化水素基であり、
21およびY22はそれぞれ独立して、O、SまたはNR30(R30は、水素原子または炭化水素基である)であり、
mは0または1であり、
nは0または1であり、
21、R23、Y21およびY22が複数存在する場合、各基は同一であっても異なっていてもよく、
Zは、式(3)で表される2価の基である:
−Si(R41)(R41)−(Y23−Si(R41)(R41))− (3)
【0022】
式(3)中、R41は水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、各R41はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Y23はそれぞれ独立して、O、SまたはNR30(R30は、水素原子または炭化水素基である)であり、
lは0〜10,000の整数である。
ただし、上記式(2)において、m=n=0の場合、式(3)において、少なくとも1つのR41は水素原子である。
【0023】
なお、式(2)および式(3)におけるハロゲン原子および炭化水素基の定義は、上記式(1)における定義と同様である。
【0024】
また、式(1)、(2)、(3)における炭化水素基として、炭素原子と水素原子とのみからなるものであることも1つの典型的な実施態様である。
【0025】
一実施形態において、ケイ素含有化合物は、好ましくは、3個以上、より好ましくは5個以上、さらに好ましくは10個以上のケイ素原子を有する。またケイ素含有化合物は好ましくは10,000個以下、より好ましくは1,000個以下、特に好ましくは300個以下、さらに好ましくは50個以下のケイ素原子を有することが好ましい。このようなケイ素含有化合物を用いたシリル化ポリオレフィンを用いることにより、得られた包装体は、高粘度液体の液切れ性、粘稠物の身離れ性が発現する。
【0026】
一実施形態において、上記式(3)におけるlは、0〜10,000の整数であるが、好ましい上限および下限としては、式(2)のmとnの値と上記好ましいケイ素原子の個数とから定まる数を挙げることができる。
【0027】
一実施形態において、上記式(2)においてm=n=1、すなわち両末端にSiH基を有するケイ素含有化合物が好ましく用いられる。
【0028】
一実施形態において、上記式(2)においてm=1であり、n=0、すなわち片末端にSiH基を有するケイ素含有化合物が好ましく用いられる。
【0029】
特に好ましいケイ素含有化合物としては、上記式(2)および式(3)において、m=n=1であり、R21、R23およびR41は全て炭化水素基である化合物が挙げられる。
特に好ましい別のケイ素含有化合物としては、上記式(2)および式(3)において、m=1、n=0であり、R21およびR41は全て炭化水素基である化合物が挙げられる。
【0030】
本発明で用いられるケイ素含有化合物の具体例を以下に示す。本発明のケイ素含有化合物としては、SiH基を1個有する化合物が挙げられる。
【0031】
SiH基を1個有するケイ素含有化合物の例としては、例えば、式(2a)で表される化合物、式(2a)においてメチル基の一部または全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換された化合物などが挙げられる。
HSi(CHO−(−Si(CH−O−)−Si(CH (2a)
(式(2a)中、dは1以上の整数であり、上限は例えば1000、好ましくは300、さらに好ましくは50である。)
このような化合物として、より具体的には、以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
−((CHSiO)−(CHSiH
−((CHSiO)65−(CHSiH
【0032】
SiH基を1個有するケイ素含有化合物の別の例としては、例えば、式(2b)で表されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、式(2b)においてメチル基の一部または全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換された化合物などが挙げられる。
Si(CHO−(−Si(CH−O−)−(−SiH(CH)−O−)−Si(CH (2b)
(式(2b)中、eは、0以上の整数であり、上限は例えば1000、好ましくは300、さらに好ましくは50である。)
なお、−Si(CH−O−単位と−SiH(CH)−O−単位とが並ぶ順序には特に制限はなく、ブロック的であっても無秩序であっても統計的ランダム的であっても良い。
【0033】
このような化合物として、より具体的には、以下に示す化合物が挙げられるが、これに限定されない。
Si(CHO−SiH(CH)−O−Si(CH
本発明のケイ素含有化合物としてはまた、SiH基を2個以上有する化合物が挙げられる。
【0034】
SiH基を2個以上有するケイ素含有化合物の例としては、例えば、式(2c)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン、式(2c)においてメチル基の一部または全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換されたた化合物などが挙げられる。
(CHSiO−(−SiH(CH)−O−)−Si(CH (2c)
(式(2c)中、fは2以上の整数であり、上限は例えば1000、好ましくは300、さらに好ましくは50である。)
【0035】
SiH基を2個以上有するケイ素含有化合物の別の例としては、例えば、式(2d)で表されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、式(2d)においてメチル基の一部または全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換された化合物などが挙げられる。
(CHSiO−(−Si(CH−O−)−(−SiH(CH)−O−)−Si(CH (2d)
(式(2d)中、gは1以上の整数であり、hは2以上の整数であり、gとhとの合計の上限は、例えば1000、好ましくは300、さらに好ましくは50である。)
【0036】
また、式(2d)において、−Si(CH−O−単位と−SiH(CH)−O−単位とが並ぶ順序には特に制限はなく、ブロック的であっても無秩序であっても統計的ランダム的であっても良い。
このような化合物として、より具体的には、以下に示す化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0037】
【化1】
【0038】
SiH基を2個以上有するケイ素含有化合物のさらに別の例としては、例えば、式(2e)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン、式(2e)においてメチル基の一部または全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換された化合物などが挙げられる。
HSi(CHO−(−Si(CH−O−)−Si(CHH (2e)
(式(2e)中、iは1以上の整数であり、上限は例えば1000、好ましくは300、さらに好ましくは50である。)
【0039】
このような化合物として、より具体的には、その数平均分子量に相当する構造が以下に示す構造に該当する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
HSi(CHO−(−Si(CH−O−)−Si(CH
HSi(CHO−(−Si(CH−O−)−Si(CH
HSi(CHO−(−Si(CH−O−)18−Si(CH
HSi(CHO−(−Si(CH−O−)80−Si(CH
HSi(CHO−(−Si(CH−O−)230−Si(CH
【0040】
SiH基を2個以上有するケイ素含有化合物のさらに別の例としては、例えば、式(2f)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン、式(2f)においてメチル基の一部または全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換された化合物などが挙げられる。
HSi(CHO−(−SiH(CH)−O−)−Si(CHH (2f)
(式(2f)中、jは1以上の整数であり、上限は例えば1000、好ましくは300、さらに好ましくは50である。)
【0041】
SiH基を2個以上有するケイ素含有化合物のさらに別の例としては、例えば、式(2g)で表されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、式(2g)においてメチル基の一部または全部がエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換された化合物などが挙げられる。
【0042】
HSi(CHO−(−Si(CH−O−)−(−SiH(CH)−O−)−Si(CHH (2g)
(式(2g)中、kおよびlは、それぞれ1以上の整数であり、kとlとの合計の上限は例えば1000、好ましくは300、さらに好ましくは50である。)
また、−Si(CH−O−単位と−SiH(CH)−O−単位とが並ぶ順序には特に制限はなく、ブロック的であっても無秩序であっても統計的ランダム的であっても良い。
【0043】
本発明のビニル基含有化合物のGPC法により求めた数平均分子量は、100以上500,000以下であり、500以上300,000以下であることがより好ましい。さらに好ましくは1,500以上100,000以下である。数平均分子量が上記下限値より低い場合、得られたシリル化ポリオレフィンが樹脂中よりブリードしてくる場合があり、上記上限値より高い場合、樹脂中におけるシリル化ポリオレフィンの分散性が悪くなり、得られた包装体の取り扱いが困難となる場合がある。なお本発明では後述するように数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)およびMw/Mnはポリエチレン換算の値とした。
【0044】
以下にビニル基含有化合物について説明する。
ビニル基含有化合物は、通常炭素数2〜50のオレフィンから選ばれる1種以上を重合又は共重合して得られるものである。
【0045】
炭素数2〜50のオレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ペンテン、3−エチル−4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘプテン、3,4−ジメチル−1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキサンなどのα−オレフィン;シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、などの内部二重結合を含むオレフィン;イソブテン、2−メチル−1−ペンテン、2,4−ジメチル−1−ペンテン、2,4−ジメチル−1−ヘキセン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2,4−ジメチル−1−ヘプテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、2−メチル−1−オクテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2,3−ジメチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−オクテン、2,3,3−トリメチル−1−ブテン、2,3,3−トリメチル−1−ペンテン、2,3,3−トリメチル−1−ヘキセン、2,3,3−トリメチル−1−オクテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ヘキセン、2,3,4−トリメチル−1−オクテン、2,4,4−トリメチル−1−ヘキセン、2,4,4−トリメチル−1−オクテン、2−メチル−3−シクロヘキシル−1−プロピレン、ビニリデンシクロペンタン、ビニリデンシクロヘキサン、ビニリデンシクロオクタン、2−メチルビニリデンシクロペンタン、3−メチルビニリデンシクロペンタン、4−メチルビニリデンシクロペンタンなどのビニリデン化合物;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレンなどのアリールビニル化合物;α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、2−メチル−3−フェニルプロピレンなどのアリールビニリデン化合物;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−tert−ブチル、2−シアノプロピレン、2−アミノプロピレン、2−ヒドロキシメチルプロピレン、2−フルオロプロピレン、2−クロロプロピレンなどの官能基置換ビニリデン化合物;シクロブテン、シクロペンテン、1−メチル−1−シクロペンテン、3−メチル−1−シクロペンテン、2−メチル−1−シクロペンテン、シクロヘキセン、1−メチル−1−シクロヘキセン、3−メチル−1−シクロヘキセン、2−メチル−1−シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン、3a,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−1Hインデン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−4−エン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどの内部二重結合を含む脂肪族環状オレフィン;シクロペンタ−2−エニルベンゼン、シクロペンタ−3−エニルベンゼン、シクロヘキサ−2−エニルベンゼン、シクロヘキサ−3−エニルベンゼン、インデン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,4−ジヒドロナフタレン、1,4−メチノ1,4,4a,9aテトラヒドロフルオレンなどの芳香環を含有する環状オレフィン;ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,4−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンなどの、二個以上の二重結合を有する環状ポリエンおよび二個以上の二重結合を有する鎖状ポリエンなどが挙げられる。
【0046】
また、炭素数2〜50のオレフィンは、酸素、窒素、硫黄等の原子を含んだ官能基を有していてもよい。例えばアクリル酸、フマル酸、イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの不飽和カルボン酸金属塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、などの不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステルなどの不飽和グリシジルエステル;
塩化ビニル、フッ化ビニル、フッ化アリルなどのハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、2−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エンなどの不飽和シアノ化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどの不飽和エーテル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等の不飽和アミド;
メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0047】
好ましい実施形態において、ビニル基含有化合物は、式(4)で表される構造を有し、数平均分子量が100以上500,000以下の化合物である。
【0048】
A−CH=CH (4)
ここで、式(4)中、Aは1種以上の炭素数2〜50のαオレフィン由来の構成単位を含む重合鎖である。
【0049】
式(4)において、好ましくは、ビニル基含有化合物のA部は、エチレン重合鎖、プロピレン重合鎖または炭素数2〜50のα−オレフィンからなる群から選択される2種以上のオレフィンの共重合鎖である。また上記α−オレフィンは、炭素数が2〜20のα−オレフィンであることが好ましい。
【0050】
好ましい実施形態において、式(4)で表されるビニル基含有化合物のAは、炭素数2〜50のα−オレフィンのみから構成される重合鎖である。さらに好ましくはビニル基含有化合物のAは炭素数2〜20のα−オレフィンのみから構成される重合鎖である。さらに好ましくは、ビニル基含有化合物のAは、エチレン単独重合鎖、プロピレン単独重合鎖、またはエチレン・炭素数3〜20のα−オレフィン共重合鎖である。
【0051】
式(4)で表されるビニル基含有化合物は、エチレン由来の構成単位が81〜100mol%、炭素原子数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位が0〜19mol%の範囲にあるエチレン・α−オレフィン共重合体であることが望ましい。より好ましくは、エチレン由来の構成単位が90〜100mol%、炭素原子数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位が0〜10mol%の範囲にあるエチレン・α−オレフィン共重合体であることが望ましい。とりわけエチレン由来の構成単位が100モル%であることが好ましい。
【0052】
また、式(4)で表されるビニル基含有化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比、Mw/Mn)が1.1〜3.0の範囲にあることが好ましい。
【0053】
また、式(4)で表されるビニル基含有化合物は、数平均分子量(Mn)が100以上500,000以下の範囲にあることが望ましく、500以上300,000以下がより好ましく、1,500以上100,000以下がさらに好ましい。
【0054】
また、式(4)で表されるビニル基含有化合物は、融点が70℃以上130℃以下であることが好ましい。
【0055】
さらに好ましくは、式(4)で表されるビニル基含有化合物のビニル基は、主鎖の末端に存在することが好ましく、ビニル基が主鎖の末端のみに存在することがより好ましい。
【0056】
なお、ビニル基が主鎖の末端に存在することの確認は、例えば13CNMR、HNMRを利用することで可能である。例えばAがエチレン単独重合体である場合、13CNMRにより3級炭素が検出されず、かつHNMRでビニル基の水素が検出されることで確認する方法が挙げられる。HNMRのみにおいても、検出された各プロトンのピークを帰属することにより、構造の確認が可能である。例えば、合成例1で合成した化合物においては、プロトン積分値が3であるケミカルシフト0.81ppmのピークが片末端のメチル基であり、ケミカルシフト1.10−1.45ppmのピークは主鎖のメチレン基、プロトン積分値が2であるケミカルシフト1.93ppmのピークは末端ビニル基に隣接するメチレン基、プロトン積分値がそれぞれ1である4.80、4.86、5.60−5.72ppmのピークが末端ビニル基と帰属され、他に帰属不明のピークが存在しないことから、Aがエチレン単独重合体であり末端のみにビニル基を含有する構造であることを確認することができる。また、別の方法として、主鎖末端に存在するビニル基の水素の方が、側鎖に存在するビニル基の水素よりもHNMR測定における緩和時間が短いことを利用して、例えば側鎖にビニル基を有するポリマーの当該ビニル基の水素と緩和時間を比較する方法で決めることも可能である。
【0057】
側鎖のビニル基のHNMRにおけるケミカルシフトが、末端に存在するビニル基よりも低磁場シフトすることを利用して判別することができる場合もある。
【0058】
また、式(4)で表されるビニル基含有化合物が、主鎖の末端のみにビニル基を含有する場合、H−NMRにより計算される末端不飽和率(後述するVE)が60モル%以上100モル%以下であることが望ましい。さらに好ましい態様の一つは、H−NMRにより計算される末端不飽和率が80モル%以上99.5モル%以下、より好ましくは90モル%以上99モル%以下であるものである。
【0059】
本発明の式(4)で表されるビニル基含有化合物は、公知の方法、例えば特開2003-73412記載の方法で得ることができる。
【0060】
〔シリル化ポリオレフィンの製造方法〕
本発明で用いられるシリル化ポリオレフィンは、どのような方法によって製造されたものでも使用できるが、好ましくは遷移金属触媒の存在下で、ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させ(ただし、上記ケイ素含有化合物として1分子に2個以上のSiH基を有するものを用い、かつ上記ビニル基含有化合物として1分子あたり平均2.0個以上のビニル基を有するものを用いる場合は除く)ることにより得られたシリル化ポリオレフィンもしくはその誘導体、またはこれらの混合物である。
【0061】
以下、上記ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させる工程について詳述する。
【0062】
本工程では、遷移金属触媒の存在下で、ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させ(ただし、上記ケイ素含有化合物として1分子に2個以上のSiH基を有するものを用い、かつ上記ビニル基含有化合物として1分子あたり平均2.0個以上のビニル基を有するものを用いる場合は除く)、シリル化ポリオレフィンを得る。
【0063】
遷移金属触媒としては、例えば白金の単体(白金黒)、ハロゲン化遷移金属、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたものなどが挙げられる。
【0064】
ハロゲン化遷移金属としては、元素周期表第3族〜第12族の遷移金属のハロゲン化物であり、入手の容易さや経済性の点から好ましくは元素周期表第8族〜第10族の遷移金属のハロゲン化物であり、より好ましくは白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、パラジウムのハロゲン化物である。さらに好ましくは白金のハロゲン化物である。また、二種以上のハロゲン化遷移金属の混合物であっても構わない。
【0065】
ハロゲン化遷移金属のハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、これらのうちでは取扱いの容易さの点で塩素が好ましい。
【0066】
また、特開2010−37555号記載の方法に従い、ハロゲン化遷移金属とケイ素含有化合物をあらかじめ混合撹拌して得られる遷移金属触媒組成物を触媒として用いてもよい。このような遷移金属触媒組成物を触媒として用いるとビニル基含有化合物とケイ素化合物との反応が効率よく進行する。このため、ビニル基含有化合物の二重結合の反応率が通常80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上であり、副生物であるビニレン誘導体の生成量は、シリル化ポリオレフィンに対して、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。
【0067】
ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させる際の量比は、目的によって異なるが、ビニル基含有化合物中のビニル基とケイ素含有化合物中のSi−H結合との当量比として0.01〜10当量倍の範囲であり、好ましくは0.1〜2当量倍の範囲である。
【0068】
ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物との反応は、上記遷移金属触媒の存在下で行う。遷移金属触媒とビニル基含有化合物との量比は、ビニル基含有化合物中のビニル基と遷移金属触媒中の遷移金属分との当量比として、10−10〜10−1当量倍の範囲であり、好ましくは10−7〜10−3当量倍の範囲である。
【0069】
ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物との反応における反応方法としては、最終的に反応すればよく、その方法は限定されるものではないが、例えば以下のように行う。反応容器中にビニル基含有化合物を装入し、窒素雰囲気下、ケイ素含有化合物と遷移金属触媒を装入する。予め内温をビニル基含有化合物の融点以上に昇温しておいた油浴中に、上記反応器をセットし攪拌する。反応後油浴を除いて室温に冷却し、得られた反応混合物をメタノールまたはアセトンなどの貧溶媒中に取り出し2時間攪拌する。その後、得られた固体をろ取し、上記貧溶媒で洗浄し、乾燥させ、目的物を得ることができる。
【0070】
ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物との反応は、反応温度を100〜200℃の範囲とすることが好ましく、反応させるビニル基含有化合物の融点より高い温度で行うことがより好ましい。反応温度が100℃より低いと、反応効率が低下することがあるので好ましくない。また圧力は、通常は常圧で行うことができるが、必要に応じて加圧下または減圧下で行うこともできる。
【0071】
必要に応じて溶媒を使用することもできる。使用する溶媒は、原料のケイ素含有化合物およびビニル基含有化合物に対して不活性なものが使用できる。使用できる溶媒の具体例は、例えばn−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、パークロロエタン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらのうち、特にトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が好ましい。
【0072】
溶媒を使用する場合は溶媒の使用量は原料の溶解性に作用するが、原料に対し100重量倍以下が好ましく、より好ましくは20重量倍以下である。本発明では、無溶媒で実施することが最も好ましい。
【0073】
以上のように、遷移金属触媒の存在下、ビニル基含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させることにより、式(1)で表される構造単位を含むシリル化ポリオレフィンを含む反応混合物が得られる。
【0074】
シリル化ポリオレフィンは、上記反応混合物をそのまま乾燥して取りだしても良いが、貧溶媒への再沈殿、またはスラッジングにより取り出すことができる。貧溶媒はシリル化ポリオレフィンの溶解度が小さいものであればよく、適宜選択することができ、好ましくは上記不純物が除けるものが良い。貧溶媒として具体的には、アセトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アセトニトリル、酢酸エチル、n−ヘキサン、n−ヘプタン等が挙げられ、これらのうちではアセトン、メタノール、n−ヘプタンが好ましい。
【0075】
本発明で用いられるビニル基含有化合物としては、前述したように具体的には、式(4)で表される化合物が挙げられる。
A−CH=CH (4)
(式(4)中、Aは1種以上の炭素数2〜50のαオレフィン由来の構成単位を含む重合鎖である。)
【0076】
ビニル基含有化合物が式(4)で表される化合物である場合、Aが炭素数2〜20のα−オレフィンのみからなる構造(構造4−1)が好ましい。
【0077】
さらに好ましくは、ビニル基含有化合物は、−CH=CHがポリマー主鎖の末端に存在する構造(構造4−2)を有する。
【0078】
なおさらに好ましくは、ビニル基含有化合物は、−CH=CHがポリマー主鎖の末端のみに存在する構造(構造4−3)を有する。
【0079】
なおさらに好ましくは、ビニル基含有化合物は、Aが炭素数2〜20のα−オレフィンのみからなり、−CH=CHがポリマー主鎖の末端に存在する構造(構造4−4)(構造4−1と構造4−2との組み合わせ)を有する。
【0080】
なおさらに好ましくは、ビニル基含有化合物は、Aが炭素数2〜20のα−オレフィンのみからなり、さらに−CH=CHがポリマー主鎖の末端のみに存在する構造(構造4−5)(構造4−1と構造4−3との組み合わせ)を有する。
【0081】
本発明のケイ素含有化合物は、前述したように、具体的には式(2)の構造を有するものが望ましい。そのうちでもビニル基含有化合物が式(4)で表される場合、ケイ素含有化合物としては、式(2)においてm=n=1である構造(構造2−1)が好ましく、さらには式(2)中のZにおけるR41が全て炭化水素基およびハロゲンから選ばれるものである構造(構造2−2)がより好ましい(すなわちR41はいずれも水素原子ではないことが望ましい。)。
【0082】
また、ビニル基含有化合物が1分子に平均して2個未満のビニル基を有する場合は、ケイ素含有化合物としては、式(2)においてm=1、n=0であり、かつ式(2)中のR41が全て炭化水素基およびハロゲンから選ばれる構造(構造2−3)、式(2)においてm=0、n=0であり、かつ式(2)中のR41のうち1つだけが水素原子である構造(構造2−4)のようなSiH基を1分子に1個有する化合物に加えて、Si−H結合が1分子に2個以上有する化合物を使用することも可能であり、例えば前述の構造2−1、構造2−2をとっても良い。
【0083】
シリル化ポリオレフィンは、たとえば、式(5)〜(8)で表されるような構造を有していると推定される。もちろんそのケイ素含有化合物やビニル基含有化合物の組合せは、これらの例示になんら限定されるものではない。
【0084】
【化2】
【0085】
【化3】
【0086】
【化4】
【0087】
【化5】
【0088】
(上記各式中のm,n,o,p,qは1以上の整数を表す。)
【0089】
以下に、特に好ましい態様とその推定理由とを述べる。以下ではビニル基含有化合物由来の部分のことを、「ポリオレフィン鎖」、ケイ素含有化合物由来の部分のことを、「ケイ素含有化合物鎖」ということがある。ビニル基含有化合物が式(4)で表される構造、中でも構造(4−5)をとり、ケイ素含有化合物が構造(2−2)をとる場合、シリル化ポリオレフィンは、(ポリオレフィン鎖)−(ケイ素含有化合物鎖)−(ポリオレフィン鎖)の順に結合したブロック共重合体のような構造をとると考えられる。具体的には上記した式(5)のような推定構造を有する化合物が例示できる。
【0090】
ビニル基含有化合物が構造(4−5)をとり、ケイ素含有化合物が構造(2−1)をとった場合であって、ケイ素含有化合物がSiH基を3個以上有する場合には、シリル化ポリオレフィンには、(ポリオレフィン鎖)−(ケイ素含有化合物鎖)−(ポリオレフィン鎖)の順に結合しているブロック構造において、さらにケイ素含有化合物鎖からポリオレフィン鎖がグラフト的に結合したような構造が含まれ得ると考えられる。
【0091】
またビニル基含有化合物が構造(4−5)をとり、ケイ素含有化合物が構造(2−3)、構造(2−4)である場合、シリル化ポリオレフィンは、具体的に例示すれば、上記式(6)、式(8)のような構造をとっているのではないかと考えられる。
【0092】
またビニル基含有化合物が構造(4−5)をとり、ケイ素含有化合物が、式(2)においてm=0、n=0、Zが(−SiH(CH)O−)−Si(CHO−Si(C−である場合、式(7)のような形をとるのではないか考えられる。
【0093】
またビニル基含有化合物が(Z)であり、ケイ素含有化合物が構造(2−3)をとる場合、シリル化ポリオレフィンは、(ポリオレフィン鎖)に(ケイ素含有化合物鎖)がグラフトした、式(9)のような構造をとるのではないかと考えられる。
【0094】
(ポリオレフィン鎖)−(ケイ素含有化合物鎖)−(ポリオレフィン鎖)のブロック共重合体の構造をとると推定されるような、たとえば式(5)の推定構造をとると推定されるようなビニル基含有化合物とケイ素含有化合物との組み合わせから得たシリル化ポリオレフィンが、ケイ素含有化合物鎖からグラフト鎖としてポリオレフィン鎖を有すると推測されるシリル化ポリオレフィンや、ポリオレフィン鎖がグラフト鎖としてケイ素含有化合物鎖を有すると推測されるシリル化ポリオレフィンよりも分子運動をしやすいと考えられ、そのため例えば溶融成形により当該シリル化ポリオレフィンが包装体表面に、より集まりやすいのではないかと考えられる。また、上記構造であれば、ケイ素含有化合物鎖の両末端にポリオレフィン鎖が存在するため、包装材表面からブリードアウトすることが少ないのではないかと考えられる。
【0095】
本発明のシーラント用組成物は、熱可塑性樹脂(A)とシリル化ポリオレフィンもしくはその誘導体、またはこれらの混合物(B)とを含み、その混合割合は、(A)が100重量部に対して、(B)が0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜40重量部、より好ましくは0.3〜30重量部である。
【0096】
本発明においては、本発明のシーラント組成物としての性能を損なわない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、結晶核剤等の添加物を含んでいてもよい。
【0097】
また、前記各成分および必要に応じて各種添加剤を、例えばヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、タンブラーミキサー等の混合機でブレンドした後、一軸ないしは二軸の押出機を用いてペレット状としてフィルム成形に使用することも可能であるが、前記成分をブレンドした状態でフィルム成形機に供することも可能である。
【0098】
シーラント層
本発明の樹脂組成物からフィルム成形することによって、包装材のシーラントフィルムを製造することができる。フィルムの成形法は特に限定されず、例えば樹脂温度110〜200℃の条件で均一膜厚の良好なフィルムを製造することができる。フィルムの厚みは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは3〜80μmの範囲である。
【0099】
積層体
本発明の積層フィルムは、シーラント層にさらに少なくとも1種の他の基材フィルム(Y)に積層した積層体の構成で、一般に包装フィルムまたは包装シートとして使用される。
【0100】
基材フィルム(Y)としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、スチレン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルのフィルム、ナイロン6やナイロン6,6のようなポリアミドのフィルム、またはこれらの延伸フィルム、ポリオレフィンフィルムとポリアミドフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムのようなガスバリヤー性のある樹脂フィルムとの積層フィルム、アルミニウム等の金属箔、あるいはアルミニウムやシリカ等を蒸着させた蒸着フィルムや紙等が、包装材の使用目的に応じて適宜選択使用される。この基材フィルム(Y)は、1種類のみならず、2種類以上を組み合わせて積層して使用することもできる。
【0101】
シーラント層に隣接する基材フィルムは、前記シリル化ポリオレフィンを含まないことが好ましい。
また、シーラント層に隣接する基材フィルムは、ポリオレフィンフィルムであることが好ましい。
【0102】
上記基材フィルム(Y)にシーラントフィルムを積層する方法としては、基材フィルム(Y)上に前記基材層樹脂およびシーラント層樹脂を共押出して積層(3層)する共押出ラミネーション法、基材フィルム(Y)上にシーラント層樹脂のみを押出して積層(2層)する押出ラミネーション法、(前記基材層樹脂およびシーラント層樹脂を共押出して積層(2層)する共押出法、基材フィルム(Y)とシーラントフィルムとをドライラミネーションする方法等を採用することができる。これらの中で、生産性の点から共押出法または押出ラミネーション法が好ましい。
【0103】
本発明のシーラントフィルム層(X)と他の基材フィルム層(Y)とをより強固に接着するために、シーラントフィルム層(X)/接着層/他の基材フィルム層(Y)の構成にすることができる。接着層としては、ウレタン系やイソシアネート系接着剤のようなアンカーコート剤を用いたり、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンのような変性ポリオレフィンを接着性樹脂として用いると、隣接層を強固に接合することができる。
【0104】
積層体の厚みに特に制限はないが、積層体を蓋材等のフィルムとして使用する場合は、好ましくは10〜200μm、カップやトレー用シートとして使用する場合は好ましくは200〜1000μmである。
【0105】
本発明のシリル化ポリオレフィンは、界面活性剤に比べてシーラント層からブリードアウトしにくいため、シーラント層と基材フィルム層とのラミネート強度が高いことが期待できる。
【0106】
包装材
前記した積層体のシーラントフィルム層(X)同士を向かい合わせ、あるいは積層体のシーラントフィルム層(X)と他の基材フィルムとを向かい合わせ、その後、外表面側から所望容器形状になるようにその周囲の少なくとも一部をヒートシールすることによって、容器を製造することができる。また周囲を全てヒートシールすることにより、密封された袋状容器を製造することができる。この袋状容器の成形加工を内容物の充填工程と組み合わせると、すなわち、袋状容器の底部および側部をヒートシールした後内容物を充填し、次いで上部をヒートシールすることで包装体を製造することができる。従って、この積層体は、スナック菓子等の固形物、粉体、あるいは液体材料の自動包装装置に利用することができる。
【0107】
また、真空成形や圧空成形によりカップ状に成形した容器、射出成形やブロー成形で得られた容器、あるいは紙基材から形成された容器等に内容物を充填し、その後本発明の積層体を蓋材として被覆し、ヒートシールすることによっても、内容物を包装した容器が得られる。
【0108】
さらには、本発明の積層体をシート状にし、予め真空成形や圧空成形等によりカップ状に成形した容器に、内容物を充填し市販のヒートシール用蓋材を用いてヒートシールすることにより、内容物を包装した容器が得られる。この容器は、即席麺、豆腐、ゼリー、プリン、スナック菓子、その他、電子レンジ用食品、レトルト用食品の包装に好適に利用される。またこの容器は、チーズ、ケチャップ、マヨネーズ、クリーム、チョコレート、ジャム、味噌、カレー、ミートソース、シチュー、フラワーペースト、ヨーグルト、バターなどの粘稠物、接着剤、塗料などのペースト、粘稠性の医薬・農薬などの充填・包装に特に優れている。
【0109】
離型性と接着性は相反する性質であり、従来は、界面活性剤等の添加剤をシーラント層に大量に配合することにより離型性(粘稠性内容物の液切れ性、身離れ性)を多少は向上できたとしても、シーラント層のヒートシール強度が著しく低下してしまった。
しかしながら、本発明のシリル化ポリオレフィンをシーラント層に特定量配合し、しかも他の基材と積層することにより、予想外にも、高い離型性と高いヒートシール強度を両立したシーラント層が得られる。
【0110】
その理由は定かでないが、本発明のシリル化ポリオレフィンはシーラント層の表面に偏在しやすいがブリードアウトしにくく、かつ、ヒートシールした際にシーラント層のみでなくシーラント層に隣接した基材層が接着に関与するからではないかと推察される。
従って本発明の包装材は、粘稠性内容物を包装するためのヒートシール包装材として特に好適である。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0112】
(測定および計算方法)
分子量、融点(Tm)、収率、転化率および異性化率、メルトマスフローレイト(MFR)は以下に記載の方法で測定・計算した。
【0113】
[m1]分子量の測定方法
数平均分子量Mn、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、ミリポア社製GPC−150を用い以下のようにして測定した。すなわち、分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径7.5mm、長さ300mmのものを使用した。カラム温度は140℃とし、移動相にはオルトジクロロベンゼン(和光純薬)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025質量%を用い、1.0ml/分で移動させた。試料濃度は0.1質量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとした。検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、常法に従ってポリエチレン換算の値に換算した。
なお、以下の合成例にて、原料ポリマーのモル数はすべてMnに基づいた値で表している。
【0114】
[m2]融点の測定方法
融点(Tm)はDSCを用い測定して得られたピークトップ温度を採用した。装置は島津製作所製DSC−60Aを使用した。対照セルはアルミナを使用し、窒素流量は50ml/分の設定で行った。また10℃/分で30℃から300℃までの昇温条件で測定した。この昇温測定の前に、一旦、樹脂を200℃程度まで昇温し、5分間保持した後、20℃/分で常温(25℃)まで降温する操作を行い、樹脂の熱履歴を統一することが望ましい。
【0115】
[m3]NMR解析による収率、転化率、異性化率、末端不飽和率、炭素千個あたりの二重結合数の測定・計算方法
シリル化ポリオレフィンの収率、転化率、異性化率、末端不飽和率、炭素千個あたりの二重結合数はH−NMRによって決定される。収率は原料のビニル基含有化合物のモル数に対して得られたシリル化ポリオレフィンのモル数の割合、転化率は原料のビニル基含有化合物のモル数に対する同消費モル数の割合、異性化率は原料のビニル基含有化合物のモル数に対して生成したビニレン体のモル数の割合、末端不飽和率は原料であるビニル基含有化合物の主鎖末端ビニル基と末端メチル基の合計に対する主鎖末端ビニル基の割合、炭素千個あたりのビニル基数はプロトン数から導き出される炭素数に対するビニル基数の割合を炭素千個あたりのビニル基数に補正したものと定義される。なお、末端不飽和率および炭素千個あたりのビニル基数は一般的には原料であるビニル基含有化合物に対して適用するが、ヒドロシリル化が十分でない場合などには未反応原料の残存量の指標としてシリル化ポリオレフィンにも適用することがある。
【0116】
例えば、エチレンのみからなる主鎖末端ビニル基含有化合物をトリエトキシシランでヒドロシリル化して得られたシリル化ポリオレフィンのエトキシ基メチレンの6プロトン分のピーク(C)が3.8ppm、異性化したビニレン基の2プロトン分のピーク(D)が5.4ppmに観測される。ヒドロシリル化が十分でない場合は、未反応ビニル基の2プロトン分のピーク(E)が4.8〜5.1ppmに、1プロトン分のピーク(F)が5.6〜5.8ppmに観測される。原料のビニル基含有化合物については、2プロトン分の主鎖メチレン(G)が1.0〜1.5ppmに観測され、主鎖末端にビニル基を持たないものは3プロトン分の末端メチル(H)が0.8ppmに観測される。さらに二重結合に隣接した炭素上の2プロトン分のピーク(I)が1.9ppmに観測される。
各ピーク(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)および(I)のピーク面積を各々SC、SD、SE、SF、SG、SHおよびSIとすれば、収率(YLD(%))、転化率(CVS(%))、異性化率(ISO(%))、末端不飽和率(VE(%))、炭素千個あたりの二重結合数(VN(個/1000C))は下記式にて算出される。
YLD(%)=(SC/3)/(SC/3+SD+SE)×100
CVS(%)={1−SE/(SC/3+SD+SE)}×100
ISO(%)=SD/(SC/3+SD+SE)×100
VE(%)=SE/(SE/2+SH/3)×100
VN(個/1000C)=(SE+SF)/3×1000/{(SD+SE+SF+SG+SH+SI)/2}
【0117】
[m4]メルトマスフローレイト(MFR)の測定方法
ビニル基含有化合物としてのポリエチレンのメルトマスフローレイト(MFR)は、東京精機社製メルトインデキサー T−111を用い、190℃、2.16kg荷重で測定した。また、熱可塑性樹脂としてのポリプロピレンのMFRは、東京精機社製メルトインデキサー T−111を用い、230℃、2.16kg荷重で測定した。
【0118】
(樹脂組成物の製造)
ポリプロピレン(プライムポリマー社製ポリプロピレン F107、MFR6.6g/10分)90重量部に下記のシリル化ポリオレフィン(A−1)10重量部をドライブレンドし、東芝機械製TEM−26SS 2軸押出機(L/D=60)にてシリンダー温度200℃で溶融混合し、樹脂組成物(D−1)を得た。
【0119】
(積層体の製造)
サーモ・プラスティックス工業社製3種3層フィルム成形装置を用いてTダイ温度210℃にて、以下の層構成を有する2層の積層体を製造した。
層構成
第1層(シーラント層) :
厚み 5μm
原料樹脂 樹脂組成物(D−1)
第2層 (他の基材フィルム):
厚み 45μm
原料樹脂 ポリプロピレン(プライムポリマー社製ポリプロピレン F107)
【0120】
(液切れ性および密封性試験)
得られた積層体をシーラント層同士が向かい合うように二つ折にし、内容量約500mlの袋状になるようにヒートシールした後、液体100mlを充填し、窒素で袋を膨らませた後充填口をヒートシーラーでヒートシールして密封した。得られた包装体内面に植物油が均一に広がるようにしたあと静置し、液切れおよび液漏れや内封ガス漏れの様子を観察した。
【0121】
液切れおよび密封性評価は包装体内面に対象液体が均一に広がるようにしたあと、静置して液漏れの様子を観察した。評価結果について、液切れ性については、それぞれの比較例による液切れ性の×評価に対して、極めて改善されている(液切れ速度が比較例の10倍以上);◎、改善されている(液切れ速度が比較例の10倍未満2倍以上);○、同程度(液切れ速度が比較例の2倍未満);△とし、密封性についてはシール部分から内封ガスや液が漏れれば×、漏れなければ○とした。
【0122】
(ヒートシール強度試験)
前記(積層体の製造)の方法で得られた積層体を用いて幅15mm、長さ125mmの短冊状試験片を2枚作成し、それらのシーラント層同士を重ね合わせ、180℃のヒートシール温度、圧力0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールを行った。その後、ヒートシール部の層間を180°方向に300mm/分の速度で剥離させ、その時の剥離強度の最大値を測定し、その値を初期ヒートシール強度(N/15mm)とした。
【0123】
[合成例1]
国際公開2012/098865公報の合成例2に記載の方法により合成した。この片末端ビニル基含有エチレン重合体(P−2)(単体)の物性は以下の通りであった。
融点(Tm)123℃
Mw=4770、Mw/Mn=2.25(GPC)
末端不飽和率 97%
【0124】
[合成例2]
(白金触媒組成物(C−1)の調製)
マグネットスターラーチップを入れた50mlサンプル管中、塩化白金(II)0.50gを、下記構造のヒドロシランA(HS(A)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、品番:XF40−C2195)(10ml)中に懸濁し、窒素気流下、室温で攪拌した。190時間攪拌した後、シリンジにて反応液を約0.4ml採取し、0.45μmPTFEフィルターを用いて濾過して10mlサンプル管中に濾液を採取し、白金濃度が3.8重量%の白金触媒組成物(C−1)を得た。
ヒドロシランA(HS(A)):HSi(CHO−(−Si(CH−O−)18−Si(CH
【0125】
[合成例3]
(末端ビニル基を有するポリエチレンのヒドロシランへの導入)
300mlの2ツ口フラスコに[合成例1]で得た 片末端ビニル基含有エチレン重合体(Mw=4770、Mw/Mn=2.25(GPC)、末端不飽和率 97%)25.1g(11.8mmol)を装入し、窒素雰囲気下、ヒドロシランA(HS(A))8.7g(5.9mmol;Si−H基として11.8mmol相当)と、[合成例2]で調製した白金触媒組成物(C−1)をヒドロシランA(HS(A))で200倍希釈したもの(C−1a)150μl(Pt換算で1.4×10−6mmol)を装入した。予め内温130℃に昇温しておいた油浴中に、上記反応器をセットし、攪拌した。約3分後ポリマーは融解した。次いで6時間後に冷却し、メタノール約200mlを加え、300mlビーカーに内容物を取り出し2時間攪拌した。その後、固体をろ取しメタノールで洗浄し、60℃、2hPa以下の減圧下で乾燥させることにより、白色固体のシリル化ポリオレフィン(A−1)33.1gを得た。NMR解析の結果、得られたシリル化ポリオレフィン(A−1)は収率98%、オレフィン転化率100%、異性化率2%であった。MFRは測定上限値以上(MFR>100g/10min)であり、分子式より計算される(A−1)中のポリジメチルシロキサン含量は26重量%であった。
【0126】
[実施例1]
シリル化ポリオレフィン(A−1)を前記(液切れ性および密封性試験)に従い評価した結果、内封ガスおよび液の漏れはなく、液切れは比較例に対して良好だった。室温(20-25℃)湿度(20-50%RH)の環境下で90日間保管したが内封ガスおよび液の漏れはなかった。
【0127】
なお、液切れ性試験に用いる液体として、OilBLACK860(オリエント化学工業社製)0.1g添加で着色した植物油(BOSCO社製 エキストラバージンオリーブオイル)即ち着色油を用いた。
また、シリル化ポリオレフィン(A−1)を前記(ヒートシール強度試験)に従い評価した結果、18N/15mmのシール強度だった。
【0128】
[比較例1]
シリル化ポリオレフィン(A−1)を添加せず実施例1と同様に操作した結果、内封ガスおよび液の漏れはなく、液切れは不良だった。室温(20-25℃)湿度(20-50%RH)の環境下で90日間保管したが内封ガスおよび液の漏れはなかった。
また、得られたフィルムを前記(ヒートシール強度試験)に従い評価した結果、で19N/15mmのシール強度だった。
【0129】
[比較例2]
樹脂組成物(D−1)において、シリル化ポリオレフィン(A−1)に変えてシリコーンオイル(信越化学社製:KF96H−6000)を使用し、実施例1と同様に操作した。
前記(液切れ性および密封性試験)に従い操作した結果、シールできず実施できなかった。
また、前記(ヒートシール強度試験)に従い評価した結果、圧着できず測定不可だった。
【0130】
[比較例3]
樹脂組成物(D−1)において、シリル化ポリオレフィン(A−1)に変えてラウリン酸ナトリウム(和光純薬製)を使用し実施例1と同様に操作した結果、内封ガスおよび液の漏れはなかったが、室温(20-25℃)湿度(20-50%RH)の環境下で3日間保管したが内封ガスおよび液の漏れがあった。
また、得られたフィルムを前記(ヒートシール強度試験)に従い評価した結果、<1N/15mmのシール強度だった。
【0131】
【表1】
【0132】
[実施例2〜5]
実施例1の着色油の代わりに種々の液体を適用して同様に操作した。
【0133】
[比較例4〜7]
比較例1の着色油の代わりに種々の液体を適用して同様に操作した。
【0134】
[比較例8]
樹脂組成物(D−1)において、シリル化ポリオレフィン(A−1)に変えて界面活性剤ラウリル硫酸ナトリウムを使用し、実施例1と同様に操作した。
【0135】
[比較例9〜12]
比較例8の着色油の代わりに種々の液体を適用して同様に操作した。
【0136】
(身離れ性)
[実施例6]
実施例1で得られた積層体を二つ折にし、内容量約500mlの袋状になるようにヒートシールした後、500gの練り餡を充填した。圧迫して、フィルムと内容物を均一に行き渡らせ、充填口をヒートシールした。得られた包装体を室温下24時間放置した後、包装体の前述の充填口を切開して逆さにし、内容物を取り出して観察した。
【0137】
身離れ評価は包装体内面に内容物が密着するようにしてシールし、24時間室温で放置した後、開封、逆さにして内容物を取り出して身離れの様子を観察した。評価結果はそれぞれの比較例による残留物量の×評価に対して、改善されている(残留付着物重量が比較例の70%以下);○、同程度(残留付着物重量が比較例の70%を超える);△とした。
【0138】
比較例13に用いたポリプロピレンのみの包装体に比較して明らかに包装体への付着物量が少なかった。
【0139】
[実施例7〜9]
実施例6の練り餡の代わりに種々の粘性物を適用して同様に操作した。
【0140】
[比較例13]
実施例6の樹脂組成物(D−1)に変えてポリプロピレン(プライムポリマー社製ポリプロピレン F107、MFR6.6g/10分)のみを使用し、同様に操作した。身離れの様子を観察した結果、ある程度の包装体への付着量が観察された。
【0141】
[比較例14〜16]
比較例13の練り餡の代わりに種々の粘性物を適用して同様に操作した。
【0142】
[比較例17]
樹脂組成物(D−1)において、シリル化ポリオレフィン(A−1)に変えて界面活性剤ラウリル硫酸ナトリウムを使用し、比較例13と同様に操作した。
【0143】
[比較例18〜20]
比較例17の練り餡の代わりに種々の粘性物を適用して同様に操作した。
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】
【0146】
【表4】
【0147】
【表5】
【0148】
本発明の包装材は液切れ性および粘性物に対する身離れ性に優れている。(実施例1〜9参照。)本発明の包装材はヒートシール強度、密封強度が十分である。(実施例1参照。)さらに、これらの優れた特性が長期間維持されている。(実施例1参照。)
これに対し、シーラント層に本発明のシリル化ポリオレフィンを含まない包装材は、ヒートシール強度、密封強度が十分であるものの、液切れ性および粘性物に対する身離れ性が劣っている。(比較例1、4〜7、13〜16参照。)
【0149】
また、シーラント層にシリル化ポリオレフィンではなく界面活性剤を含む包装材は、初期の液切れ性および粘着物に対する身離れ性は対照の比較例と有意差がない。(比較例8〜12、17〜20参照。)
【0150】
また、初期のヒートシール強度、密封強度が不十分であり、包装材を長期間保管後はヒートシール強度、密封強度がさらに低下する。(比較例3参照。)
また、シーラント層にシリル化ポリオレフィンではなくシリコーンオイルを含む包装材は、ヒートシール強度が非常に低く、密封性が不良であった。(比較例2参照。)