特許第5990135号(P5990135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5990135-無人搬送車用非接触充電システム 図000002
  • 特許5990135-無人搬送車用非接触充電システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990135
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】無人搬送車用非接触充電システム
(51)【国際特許分類】
   B60M 7/00 20060101AFI20160825BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160825BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20160825BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20160825BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20160825BHJP
   B65G 54/02 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B60M7/00 X
   H02J7/00 301D
   H02J50/40
   H02J7/00 P
   H02J7/00 301E
   B60L5/00 B
   B60L11/18 C
   B65G54/02
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-129576(P2013-129576)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-3610(P2015-3610A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀夫
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−72539(JP,A)
【文献】 特開平11−127505(JP,A)
【文献】 特開昭63−1611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 7/00,
B60L 5/00,11/18,
H02J 7/00,50/40,
B65G 54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と外部から電力を受信して蓄電装置に電力を供給する受電コイルとを含み、蓄電装置に蓄えられた電力によって定められた搬送路上を走行可能な無人搬送車と、
搬送路に設けられ、受電コイルに非接触で電力を送信する複数の給電コイルと、
無人搬送車によって搬送路上を牽引される貨車と、
を備える無人搬送車用非接触充電システムであって、
貨車は、給電コイルから非接触で電力を受信して蓄電装置に電力を供給し、無人搬送車の走行方向に沿って密に設けられた複数の受電コイルを含み、
給電コイルは、無人搬送車の受電コイルから無人搬送車に牽引される貨車の尾端の受電コイルまでの長さに対して少なくとも1つ設けられている無人搬送車用非接触充電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無人搬送車用非接触充電システムであって、
貨車に設けられる複数の受電コイルは、下端が無人搬送車よりも高い退避位置と給電コイルからの電力を受信できる受信位置との間を上下移動可能に設けられていることを特徴とする無人搬送車用非接触充電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無人搬送車用非接触充電システムであって、
無人搬送車は、貨車を牽引するために貨車に連結する際、貨車の下部を走行しつつ連結場所へ移動する潜り込み牽引式の無人搬送車であり、
貨車に設けられる複数の受電コイルは、無人搬送車と貨車とが連結していないときは、退避位置に移動していることを特徴とする無人搬送車用非接触充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車用非接触充電システムに関し、特に、貨車を牽引して搬送する無人搬送車の非接触充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送路上を走行する無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)の蓄電装置を充電するシステムとして、無人搬送車に設けられて蓄電装置に電力を供給する受電コイルと、搬送路に沿って設けられて受電コイルに非接触で電力を送信する給電コイルとを備えるシステムが知られている。
【0003】
上述のシステムに関し、給電コイルの配置について、たとえば、車両の走行路上に給電コイルを密に並べたり、給電コイルの間隔をあけて並べたりする配置が用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−244532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、走行路上に給電コイルを密に並べた場合は、多くの給電コイルを設置する必要があり、大量のコイル線材を必要とする。また、給電コイルの間隔をあけて並べた場合は、給電コイルの設置数を削減できるが、受電コイルが給電コイルからの電力を受信できない区間が生じたり、受電コイルが給電コイルからの電力を受信する効率が低下したりすることによって、蓄電装置への充電が十分にできない可能性がある。
【0006】
本発明は、蓄電装置への充電を十分に行いつつ、搬送路に沿って設けられる給電コイルを減らすことができ、システム全体としてコイル線材の使用を削減できる無人搬送車用非接触充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無人搬送車用非接触充電システムは、蓄電装置と外部から電力を受信して蓄電装置に電力を供給する受電コイルとを含み、蓄電装置に蓄えられた電力によって定められた搬送路上を走行可能な無人搬送車と、搬送路に設けられ、受電コイルに非接触で電力を送信する複数の給電コイルと、無人搬送車によって搬送路上を牽引される貨車とを備える無人搬送車用非接触充電システムであって、貨車は、給電コイルから非接触で電力を受信して蓄電装置に電力を供給し、無人搬送車の走行方向に沿って密に設けられた複数の受電コイルを含み、給電コイルは、無人搬送車の受電コイルから無人搬送車に牽引される貨車の尾端の受電コイルまでの長さに対して少なくとも1つ設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の無人搬送車用非接触充電システムにおいて、貨車に設けられる複数の受電コイルは、下端が無人搬送車よりも高い退避位置と給電コイルからの電力を受信できる受信位置との間を上下移動可能に設けられていても好適である。
【0009】
本発明の無人搬送車用非接触充電システムにおいて、無人搬送車は、貨車を牽引するために貨車に連結する際、貨車の下部を走行しつつ連結場所へ移動する潜り込み牽引式の無人搬送車であり、貨車に設けられる複数の受電コイルは、無人搬送車と貨車とが連結していないときは、退避位置に移動していても好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、無人搬送車用非接触充電システムにおいて、蓄電装置への充電を十分に行いつつ、搬送路に沿って設けられる給電コイルを減らすことができ、システム全体としてコイル線材の使用を削減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の無人搬送車用非接触充電システムを示す図である。
図2】本発明の他の実施形態の無人搬送車用非接触充電システムにおいて、無人搬送車と貨車とが連結していない場合と連結している場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態の無人搬送車用非接触充電システム10を示している。無人搬送車用非接触充電システム10は、定められた搬送路20の上を走行可能な無人搬送車30と、無人搬送車30によって搬送路20の上を牽引される貨車40とを含んでいる。図1に示すように、無人搬送車30は、蓄電装置である二次電池31と、外部から電力を受信して二次電池31を充電するための受電コイル32とを備えている。受電コイル32は、無人搬送車30の下部に設けられ、軸心が搬送路20面に対して直交する方向に延びるように設けられている。また、図1に示すように、無人搬送車30の後方には連結器33が備えられている。無人搬送車30は、二次電池31に蓄えられた電力によって図示しないモータを動作して駆動輪を駆動することによって走行可能にされている。
【0013】
図1に示すように、貨車40は、複数の貨物41が棚に載せられており、無人搬送車30に牽引されて貨物41を目的地へ移動するために用いられる。図1に示すように、貨車40は、外部から非接触で電力を受信する受電コイル42を複数備えている。受電コイル42は、無人搬送車30の走行方向(図1の左右方向)に密に設けられ、軸心が搬送路20面に対して直交する方向に延びるように設けられ、貨車40の最下段で支持台43によって支持されている。貨車40は、無人搬送車30の連結器33によって無人搬送車30に連結され、図示しない導電ケーブルによって無人搬送車30と電気的に接続されている。貨車40は、駆動力を有さず、無人搬送車30に牽引されることによって搬送路20を走行することができる。また、図1に示すように、貨車40同士は、連結器44によって連結されており、図示しない導電ケーブルによって電気的に接続されている。
【0014】
図1に示すように、搬送路20には、受電コイル32および受電コイル42に非接触で電力を送信する給電コイル21が設けられている。給電コイル21は、図示しない交流電源に接続されており、受電コイル32、42に交流電力を送信する。給電コイル21は、軸心が搬送路20面に直交する方向に延びるように設けられ、搬送路20面に近い位置に設けられている。図1に示すように、給電コイル21は、連結されている無人搬送車30と貨車40において、無人搬送車30の受電コイル32から貨車40の尾端の受電コイル42までの長さに対して1つ設けられており、図示しない場所においても搬送路20に等間隔で配置されている。
【0015】
図1に示すように、受電コイル32、42は、受電コイル32から受電コイル42の尾端までの間に無人搬送車30の走行方向に密に設けられ、給電コイル21上を通過する際に給電コイル21からの電力を受信できる受信位置に設けられている。受電コイル32、42が給電コイル21から受信する電力は交流電力である。そこで、無人搬送車30には交流電力を直流電力に変換して二次電池31を充電するための整流器34が備えられている。
【0016】
以上のように、本実施形態に係る無人搬送車用非接触充電システム10には、連結されている無人搬送車30と貨車40において、給電コイル21は、受電コイル32から貨車40の尾端の受電コイル42までの間に1つ設けられ、受電コイル32、42は無人搬送車30の走行方向に密に設けられている。その結果、受電コイル32、42のいずれかが給電コイル21からの交流電力を受信することができるため、無人搬送車30の二次電池31を常時充電可能にすることができ、搬送路20に設けられる給電コイル21の数量を減らすことができ、システム全体としてコイル線材の使用を削減することができる。
【0017】
また、貨車40の受電コイル42で受信した交流電力は、無人搬送車30の整流器34に送られ、直流電力に変換して二次電池31を充電するため、貨車40に整流器や二次電池を設けなくても無人搬送車用非接触充電システム10を運用することができる。
【0018】
次に、図2を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。上述の実施形態と同様の働きをする構成については、同じ参照番号を付し、説明を省略する。
【0019】
図2は、本実施形態の無人搬送車用非接触充電システム50を示す概要図であり、図2(a)は無人搬送車60と貨車70とが連結していない場合を示し、図2(b)は無人搬送車60と貨車70とが連結したとき又は連結を解除するときを示し、図2(c)は無人搬送車60と貨車70とが連結している場合を示している。なお、図2は説明のため、無人搬送車60の高さや貨車70の下段棚の位置などが、実際とはバランスが異なって記載されている。
【0020】
図2に示すように、無人搬送車用非接触充電システム50は、搬送路20を走行可能な無人搬送車60と、無人搬送車60によって牽引可能な貨車70とを含んでいる。本実施形態の無人搬送車60は、潜り込み牽引式の無人搬送車であり、貨車70を牽引するために貨車70に連結する際、図2の右から左に向かって貨車70の下部を走行しつつ連結場所へ移動する。
【0021】
図2に示すように、貨車70は、複数の貨物41が棚に載せられ、無人搬送車60の搬送路20の上に配置されている。図2に示すように、貨車70に設けられた支持台71は、下部が無人搬送車60よりも高い退避位置と、受電コイル42が給電コイル21からの電力を受信できる受信位置との間を移動可能にされている。
【0022】
図2(a)に示すように、無人搬送車60と貨車70とが連結していない場合は、貨車70の受電コイル42が支持された支持台71は退避位置に移動されている。
【0023】
図2(b)、(c)に示すように、無人搬送車60は、無人搬送車60から上下方向へ伸縮可能に設けられた連結ピン61を備えている。図2(b)、(c)に示すように、貨車70は、伸長された連結ピン61を受ける凹部を形成し、連結ピン61と連結可能な連結部72を備えている。図2(b)、(c)に示すように、連結場所へ移動した無人搬送車60は、連結ピン61を上方へ伸長させて連結部72と連結して貨車70を牽引可能にする。
【0024】
図2(b)に示すように、無人搬送車60と貨車70とが連結したとき、換言すると連結した直後は、支持台71は退避位置に移動された状態で維持されている。無人搬送車60と貨車70とが連結されると、無人搬送車60と貨車70とは図示しない導電ケーブルによって電気的に接続され、支持台71を駆動する図示しないモータと貨車70に設けられた図示しないセンサへ二次電池31から電力が供給可能になる。貨車70のセンサは、各支持台71の下方に無人搬送車60が存在するか検出するために設けられている。電力が供給されて動作可能となった貨車70のセンサは、各支持台71の下に無人搬送車60が存在するか検出する。たとえば、図2(b)に示すように、貨車70の左端から1番目と2番目の支持台71の下に無人搬送車60が存在することを貨車70のセンサは検出する。センサの検出結果に基づき、無人搬送車60が下に無い支持台71を退避位置から受信位置に移動するようにモータが駆動される。
【0025】
図2(c)に示すように、無人搬送車60が下にある支持台71は退避位置に移動した状態に維持され、無人搬送車60が下に無い支持台71はモータが駆動されることによって受信位置に移動される。図2(c)に示すように、受信位置に配置された受電コイル32、42が受電コイル32から貨車70の尾端の受電コイル42までの間で密に設けられ、この間に給電コイル21が1つ設けられている。つまり、受電コイル32、42は、いずれかが給電コイル21からの交流電力を受信可能にされている。
【0026】
無人搬送車60は、貨車70を牽引して目的地へ移動した後、貨車70との連結を解除する。無人搬送車60と貨車70との連結を解除した後、貨車70の支持台71が受信位置に移動したままであると、再度無人搬送車60によって貨車70を牽引しようとする場合に無人搬送車60が貨車70の下部を走行できなくなってしまう。そこで、連結を解除するときには、二次電池31から電力を受けてモータを駆動して受信位置に移動されている支持台71を図2(b)の退避位置へ移動させる。その後、無人搬送車60は、連結ピン61を収納して貨車70との連結を解除し、次の作業場所へ移動する。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る無人搬送車用非接触充電システム50によれば、上述した実施形態における効果に加え、無人搬送車60と貨車70との連結状態にあわせて支持台71を退避位置と受信位置とに移動するので、無人搬送車が潜り込み式の場合であっても、無人搬送車60の移動を妨げることなく、受電コイル42が給電コイル21から電力を適切に受信することができる。
【0028】
上述した実施形態では無人搬送車に二次電池と整流器とをまとめて設けているが、貨車に電源装置を設けてもよい。貨車に電源装置を設けることにより、無人搬送車の通過にあわせて支持台を移動することができ、無人搬送車と貨車との連結解除後であっても支持台を受信位置から退避位置に移動することができ、無人搬送車と貨車との連結、解除の自由度を上げることができる。
【0029】
上述した各実施形態では、給電コイルは、無人搬送車の受電コイルから貨車の尾端の受電コイルまでの長さに1つ設けられているが、2つ以上設けられてもよい。長さ当たりの給電コイルの数を増やすことにより、たとえば無人搬送車がより多くの貨車を牽引し、電力消費が多くなる場合であっても、必要な電力を供給することができ、二次電池が充電不足にならないようにすることができる。
【0030】
上述した各実施形態において、図1図2には貨車が2両連結されたものが示されているが、貨車は1両以上の範囲で数量を変更してもよい。貨車の数が変更される場合は無人搬送車の受電コイルから貨車の尾端の受電コイルまでの長さも変更されるので、変更された受電コイル間の長さにあわせて給電コイルの間隔も変更することによって、無人搬送車の二次電池を常時充電可能にすることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 無人搬送車用非接触充電システム、20 搬送路、21 給電コイル、30 無人搬送車、31 二次電池、32 受電コイル、33 連結器、34 整流器、40 貨車、41 貨物、42 受電コイル、43 支持台、44 連結器。
図1
図2