特許第5990168号(P5990168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990168
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】ペンタエリスリトールのテトラエステル
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/33 20060101AFI20160825BHJP
   C10M 105/38 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20160825BHJP
【FI】
   C07C69/33CSP
   !C10M105/38
   C10N20:02
   C10N30:00 C
   C10N30:02
   C10N30:08
   C10N30:10
   C10N40:30
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-523842(P2013-523842)
(86)(22)【出願日】2012年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2012054187
(87)【国際公開番号】WO2013008487
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2011-154910(P2011-154910)
(32)【優先日】2011年7月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】312004880
【氏名又は名称】KHネオケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日吉 聡
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】稲山 俊宏
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−53090(JP,A)
【文献】 特開平9−25492(JP,A)
【文献】 特開2000−104085(JP,A)
【文献】 特開2008−208261(JP,A)
【文献】 特開2002−193882(JP,A)
【文献】 特開平6−41575(JP,A)
【文献】 特許第5150790(JP,B2)
【文献】 国際公開第2012/026303(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/00−69/96
C10M 101/00−177/00
C10N 10/00−80/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JCHEM(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンタエリスリトールとカルボン酸との混合エステルであり、前記カルボン酸が、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、および炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸からなるペンタエリスリトールのテトラエステル。
【請求項2】
前記炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸が、酪酸である請求項に記載のペンタエリスリトールのテトラエステル。
【請求項3】
前記炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸が、ペンタン酸である請求項に記載のペンタエリスリトールのテトラエステル。
【請求項4】
100℃の動粘度が、4.6〜8.2mm/秒の範囲にある請求項1〜のいずれかに記載のペンタエリスリトールのテトラエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機油等の工業用潤滑油等に用いられるペンタエリスリトールのテトラエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍機油等の工業用潤滑油に使用される潤滑油は、冬季または寒冷地などの低温の環境下で使用するための優れた低温流動性や、各種安定性の向上が要求されている。該安定性としては、熱安定性、酸化安定性、酸化・加水分解安定性等が挙げられる。また、該潤滑油を使用する機器においては、耐摩耗性、疲労防止性等の各種耐久性向上、省エネルギー性能の向上等が要求されている。
【0003】
特許文献1には、ペンタエリスリトールと3,5,5−トリメチルヘキサン酸とイソ酪酸とアジピン酸とを1:1:2.5:0.25のモル比で反応させて得たエステルを含有する液状組成物が、冷蔵庫およびエアコンディショナーの冷却液体として有用であると記載されているが、該エステルの低温流動性および安定性等は満足するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−25690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた低温流動性および優れた安定性等をバランスよく有する冷凍機油等に用いられるペンタエリスリトールのテトラエステルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]〜[5]を提供する。
[1]ペンタエリスリトールとカルボン酸との混合エステルであり、前記カルボン酸が、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、および炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸を含有するペンタエリスリトールのテトラエステル。
[2]前記カルボン酸が、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、および炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸からなる[1]に記載のペンタエリスリトールのテトラエステル。
[3]前記炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸が、酪酸である[1]又は[2]に記載のペンタエリスリトールのテトラエステル。
[4]前記炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸が、ペンタン酸である[1]又は[2]に記載のペンタエリスリトールのテトラエステル。
[5]100℃の動粘度が、4.6〜8.2mm2/秒の範囲にある[1]〜[4]のいずれかに記載のペンタエリスリトールのテトラエステル。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、優れた低温流動性および優れた安定性等をバランスよく有する冷凍機油等に用いられるペンタエリスリトールのテトラエステルを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、ペンタエリスリトールと、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸および炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸を含有するカルボン酸との混合エステルである。ここで、ペンタエリスリトールのテトラエステルとは、ペンタエリスリトールに対してエステルを形成するカルボン酸を複数種用いてエステル化して得られる化合物を意味する。
【0009】
また、本発明でいう「混合エステル」には、下記(i)〜(vi):
(i)同一分子における構成カルボン酸がイソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、および炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸を含むペンタエリスリトールのテトラエステル
(ii)同一分子における構成カルボン酸がイソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、および炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸の群から選ばれる2つを含むペンタエリスリトールのテトラエステル
(iii)ペンタエリスリトールとイソ酪酸を含有するカルボン酸とのテトラエステル
(iv)ペンタエリスリトールと3,5,5−トリメチルヘキサン酸を含有するカルボン酸とのテトラエステル
(v)ペンタエリスリトールと炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸を含有するカルボン酸とのテトラエステル
(vi)上記(i)〜(v)の群から選ばれる2つ以上のテトラエステルの混合物
の各態様が包含される(ただし混合エステルを構成するカルボン酸は、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、および炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸を含む)。
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステル中にペンタエリスリトールのトリエステル等が不純物として含まれていてもよい。
【0010】
混合エステルを構成するカルボン酸には、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、および炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸以外のその他のカルボン酸が含まれていてもよい。その他のカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸等の直鎖の脂肪族モノカルボン酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、2,2,−ジメチルプロパン酸、2−エチル酪酸、2−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチル−2−メチル酪酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、2−エチル−2−メチルペンタン酸、2−メチルオクタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、イソトリデカン酸、イソステアリン酸等の分岐状の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
【0011】
前記のイソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸および炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸を含有するカルボン酸中のその他のカルボン酸の含量は、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルが低温流動性、安定性またはジフルオロメタン冷媒等に対する相溶性等の優れた特性を損なわない範囲であればよい。イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸との和に対するその他のカルボン酸のモル比[その他のカルボン酸/(イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸および炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸)比]は、0/100〜5/100の範囲にあるのが好ましい。
【0012】
本発明においては、混合エステルを構成するカルボン酸が、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、および炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸からなるものであるのがより好ましい。
【0013】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを構成する炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸としては、具体的には、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸が挙げられ、中でも、酪酸またはペンタン酸が好ましい。炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸が酪酸またはペンタン酸であるとき、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、ジフルオロメタン冷媒に対する幅広い濃度での相溶性、粘度−温度特性、低温流動性、低温特性、安定性等の優れた特性を特にバランスよく有する。
【0014】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを構成する炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸が酪酸またはペンタン酸であるとき、イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸との和に対する酪酸またはペンタン酸のモル比[(酪酸またはペンタン酸)/(イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸)比]が、10/100〜300/100の範囲であるのが好ましい。
【0015】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを構成する炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸がヘプタン酸であるとき、イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸との和に対するヘプタン酸のモル比[ヘプタン酸/(イソ酪酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸)比]が、20/100〜100/100の範囲であるのが好ましい。
【0016】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを構成するすべてのカルボン酸の和に対するイソ酪酸の割合(モル%)は、低温特性と安定性において、5〜55モル%の範囲であるのが好ましく、9〜40モル%の範囲であるのがより好ましく、15〜40モル%の範囲であるのがさらにより好ましい。
【0017】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、例えば、ペンタエリスリトールと、イソ酪酸と、3,5,5−トリメチルヘキサン酸と、炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸と、所望によりその他のカルボン酸とを120〜250℃で、5〜60時間反応させることにより製造することができる。
【0018】
前記反応において触媒を用いてもよく、触媒としては、例えば、鉱酸、有機酸、ルイス酸、有機金属、固体酸等が挙げられる。鉱酸の具体例としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等が挙げられる。有機酸の具体例としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ブタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、エタンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。ルイス酸の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化スズ、四塩化チタン等が挙げられる。有機金属の具体例としては、例えば、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン等が挙げられる。固体酸の具体例としては、例えば、陽イオン交換樹脂等が挙げられる。
【0019】
イソ酪酸の使用量と3,5,5−トリメチルヘキサン酸の使用量と炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸の使用量とその他のカルボン酸の使用量との和が、使用するペンタエリスリトールの水酸基に対して、1.1〜1.4倍モルであるのが好ましい。
【0020】
前記反応において溶媒を用いてもよく、溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、イソヘキサン、イソオクタン、イソノナン、デカン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0021】
反応により生成する水を反応混合物から取り除きながら反応を行うことが好ましい。反応により生成する水を反応混合物から取り除くとき、同時にイソ酪酸および/または炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸も反応混合物から取り除いてしまうことがある。
【0022】
また、ペンタエリスリトールに対する、イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸との反応性の差から、得られたテトラエステルを構成するイソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸のモル比が、テトラエステルの製造に使用した量におけるそれとは異なることがある。
【0023】
反応後、必要に応じて、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを有機合成化学で通常用いられる方法(水および/またはアルカリ水溶液を用いた洗浄、活性炭、吸着剤等による処理、各種クロマトグラフィー法、蒸留法等)で精製してもよい。
【0024】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、優れた低温流動性、優れた安定性、優れた低温特性、優れた粘度−温度特性、優れたジフルオロメタン溶媒に対する相溶性、優れた潤滑性等を有する。
【0025】
粘度−温度特性とは、潤滑油などの油剤の温度変化に対する動粘度の変化のことである。粘度−温度特性が良好なものとは、温度変化に対して粘度変化が小さく、一方不良なものとは、低温域での急激な増粘や、高温域で動粘度が想定以上に低くなるようなものである。一般にこの特性は粘度指数として表わされ、数値が高い方が粘度−温度特性が良好であると言える。また、低温域での粘度特性は低温流動性とも言われ、流動点や凝固点、チャンネル点などで表わされる。
【0026】
流動点は、日本工業規格(JIS)K2269の方法に準じて潤滑油などの油剤を冷却したときに、油剤が流動する最低の温度をいう。流動点が低い油剤は、冬季または寒冷地などの低温の環境下や、冷凍機油として使用する場合において冷凍機内の蒸発器などが低温となる運転条件であっても流動性が悪化しないため、油剤を使用する機器の作動不良を生じない等の点で好ましい。
【0027】
また、潤滑油などの油剤を温度差が大きい場所で長期間保管するまたは使用する場合には、高温域では揮発性等が無く、低温域では固化や析出等のない油剤が好ましい。温度範囲としては特に制限は無いが、高温側では150℃程度、低温側では−20℃程度で安定して使用できる油剤が好ましい。低温域で、固化や析出物が出ない特性を低温特性と定義する。本発明では、カルボン酸として炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸を用いることにより、低温時に析出物が発生するのを抑えることができる。
【0028】
安定性には、例えば潤滑油用途では熱安定性、酸化安定性、酸化・加水分解安定性、せん断安定性などが挙げられる。
【0029】
潤滑性には、摩擦低減性や摩耗低減性、極圧性などが挙げられる。
【0030】
また、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、従来のジフルオロメタン混合溶媒(R−410A、R−407C)に対してだけでなく、ジフルオロメタン冷媒単独に対する相溶性に優れている。冷凍機用の冷媒としては、近年、ジフルオロメタン冷媒(HFC−32)が注目されている。ジフルオロメタン冷媒は、オゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数(GWP)が現在用いられている冷媒[R−410A(ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物)、R−407C(ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンと1,1,1,2−テトラフルオロエタンとの混合物)等]の約1/3〜1/4と低く、かつ成績係数(COP)もR−410A、R−407C等に対して約5〜13%向上するため省エネルギー化の観点からも好ましい冷媒である(「潤滑経済」,2004年6月号(No.460),p.17)。しかし、従来の潤滑油基油ではジフルオロメタン冷媒に対する相溶性が十分でなく、相溶性が優れた潤滑油基油が求められている(特開2002−129177号公報)。
【0031】
ジフルオロメタン冷媒に対する相溶性は、一般に二層分離温度を用いて表す。低温側での相溶性は二層分離温度が低いものほど良好であると言える。また、冷媒に対するエステルの相溶性は、該エステルの性質と相関がある。本発明では、カルボン酸としてイソ酪酸を用いているので、ジフルオロメタン溶媒に対する相溶性がよい。
【0032】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを冷凍機油に用いるときの該テトラエステルの100℃における動粘度は、4.6〜8.2mm2/秒の範囲にあるのが好ましく、5.0〜7.0mm2/秒の範囲にあるのがより好ましい。
また、該エステルの粘度指数は、89以上であることが好ましい。
【0033】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを冷凍機油に用いるとき、該テトラエステルの水酸基の残存量が多いと、冷凍機油が低温で白濁し、冷凍サイクルのキャピラリー装置を閉塞させる等、好ましくない現象が起こるため、該混合エステルの水酸基価は10mgKOH/g以下であるのが好ましく、5mgKOH/g以下であるのがより好ましい。
【0034】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、冷凍機油に用いられる他、エンジン油、ギア油、ハイブリッド車や電気自動車に利用されるモーター油、グリース、金属部品の洗浄剤、可塑剤等にも用いることができる。
【0035】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを用いた冷凍機油としては、例えば、ペンタエリスリトールのテトラエステルと、潤滑油用添加剤とを含有する冷凍機油等が挙げられる。本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルを用いた冷凍機油において、該テトラエステルは潤滑油基油として用いられる。
【0036】
潤滑油用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、摩耗低減剤(耐摩耗剤、焼付き防止剤、極圧剤など)、摩擦調整剤、酸捕捉剤、金属不活性化剤、消泡剤等の、通常潤滑油添加剤として用いられているもの等が挙げられる。これらの添加剤の含有量は、冷凍機油中、それぞれ、0.001〜5重量%であるのが好ましい。
【0037】
本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルと、その他の潤滑油基油とを併用して用いてもよい。その他の潤滑油基油としては、例えば、鉱物油、合成基油などが挙げられる。
【0038】
鉱物油としては、例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油、ナフテン基系原油等が挙げられる。また、これらを蒸留などにより精製した精製油も使用可能である。
【0039】
合成基油としては、例えば、ポリ−α−オレフィン(ポリブテン、ポリプロピレン、炭素数8〜14のα−オレフィンオリゴマー等)、本発明のテトラエステル以外の脂肪族エステル(脂肪酸モノエステル、多価アルコールの脂肪酸エステル、脂肪族多塩基酸エステル等)、芳香族エステル(芳香族モノエステル、多価アルコールの芳香族エステル、芳香族多塩基酸エステル等)、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、カーボネート、合成ナフテン等が挙げられる。
【0040】
また、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、ベンゾトリアゾール等の金属不活性剤、シリコーン系消泡剤等の潤滑油用添加剤を溶解する能力に優れる。該潤滑油用添加剤は、例えば、潤滑油、潤滑油を用いる機器等の寿命を長くするために潤滑油に溶解して用いられる。該潤滑油用添加剤は、一般的にペンタエリスリトールエステルに対する溶解性が低い(特開平10−259394号公報)。また、ベンゾトリアゾールは、鉱油および/または合成油に対する溶解度が低い(特開昭59−189195号公報)。しかし、例えば、本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルであるテトラエステル4(後述の実施例4)およびテトラエステル10(後述の実施例10)におけるベンゾトリアゾールの溶解度(25℃)は、0.031g/gおよび0.024g/gであり、いずれのペンタエリスリトールのテトラエステルにおいてもベンゾトリアゾールの高い溶解度を示す。本発明のペンタエリスリトールのテトラエステルは、ベンゾトリアゾールを溶解させたときにおいて、優れた低温流動性、優れた耐摩耗性を有する。
【実施例】
【0041】
以下、実施例、比較例および試験例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。
核磁気共鳴スペクトルは、以下の測定機器、測定手法により測定した。
測定機器;日本電子社製GSX−400(400MHz)
測定手法;1H−NMR、標準物(テトラメチルシラン)、溶媒(CDCl3
【0042】
以下の実施例1〜12において製造したペンタエリスリトールのテトラエステルのそれぞれについて、核磁気共鳴スペクトルを測定し、ペンタエリスリトールのテトラエステルにおけるイソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸とのモル比を以下の式により算出した。
【0043】
イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸=ピークXの積分値/ピークYの積分値/(ピークZの積分値/2)
ここでピークXはイソ酪酸におけるメチン基上の水素原子のピークに相当し、ピークYは3,5,5−トリメチルヘキサン酸におけるメチン基上の水素原子に相当し、ピークZは炭素数4〜7の直鎖脂肪族モノカルボン酸におけるカルボニル基のα位のメチレン基上の水素原子のピークに相当する。
【0044】
以下の比較例1において製造したペンタエリスリトールのエステルについて、核磁気共鳴スペクトルを測定し、ペンタエリスリトールのエステルにおけるイソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とアジピン酸とのモル比を以下の式により算出した。
イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/アジピン酸=ピークXの積分値/ピークYの積分値/(ピークWの積分値/4)
ここでピークXおよびピークYは前記と同義であり、ピークWはアジピン酸におけるカルボニル基のα位のメチレン基上の水素原子のピークに相当する。
【0045】
[実施例1]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と酪酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/酪酸比)が71/29/33であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル1)の製造]
吸着剤としては、協和化学工業社製キョーワード500を用いた。
活性炭としては、日本エンバイロケミカルズ社製白鷺Pを用いた。
ディーンスタークトラップの付いた反応器にペンタエリスリトール327g(2.4モル、広栄パーストープ社製)、イソ酪酸650g(7.4モル、東京化成社製)、3,5,5−トリメチルヘキサン酸365g(2.3モル、協和発酵ケミカル社製)、および酪酸162g(1.8モル、和光純薬社製)を仕込み、混合物を攪拌しながら室温で30分間窒素バブリングを行うことにより混合物を脱気した。
次いで、窒素バブリングを行いながら混合物を138〜230℃で30時間攪拌した。反応後、反応生成物を0.7kPaの減圧下、218℃で1時間攪拌することにより、反応生成物中の未反応のカルボン酸を留去した。反応生成物を、該反応生成物の酸価に対して2倍モルの水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液400mLで、85℃で1時間洗浄した。次いで、反応生成物を、水400mLで88℃で1時間、3回洗浄した。次いで、窒素バブリングを行いながら反応生成物を1.1kPaの減圧下、106℃で1時間攪拌することにより反応生成物を乾燥した。
反応生成物に吸着剤5.0g(反応生成物の重量0.5%に相当する)および活性炭9.9g(反応生成物の重量1.0%に相当する)を添加し、窒素バブリングを行いながら反応生成物を1.1kPaの減圧下、104℃で2時間攪拌した後、濾過助剤を用いて濾過することにより、テトラエステル1を822g得た。
【0046】
[実施例2]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と酪酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/酪酸比)が62/38/57であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル2)の製造]
ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸および酪酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/酪酸比)を1/1.80/1.20/1.80にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル2を得た。
【0047】
[実施例3]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と酪酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/酪酸比)が34/66/95であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル3)の製造]
ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸および酪酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/酪酸比)を1/0.72/1.68/2.40にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル3を得た。
【0048】
[実施例4]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と酪酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/酪酸比)が34/66/41であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル4)の製造]
ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸および酪酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/酪酸比)を1/1.20/2.00/1.60にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル4を得た。
【0049】
[実施例5]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と酪酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/酪酸比)が24/76/42であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル5)の製造]
ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸および酪酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/酪酸比)を1/0.90/3.00/0.90にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル5を得た。
【0050】
[実施例6]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とペンタン酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)が30/70/259であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル6)の製造]
酪酸の代わりにペンタン酸を用い、ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸およびペンタン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)を1/0.38/0.96/3.46にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル6を得た。
【0051】
[実施例7]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とペンタン酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)が69/31/74であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル7)の製造]
酪酸の代わりにペンタン酸を用い、ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸およびペンタン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)を1/1.92/0.96/1.92にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル7を得た。
【0052】
[実施例8]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とペンタン酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)が32/68/104であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル8)の製造]
酪酸の代わりにペンタン酸を用い、ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸およびペンタン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)を1/0.72/1.68/2.40にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル8を得た。
【0053】
[実施例9]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とペンタン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)が35/65/42であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル9)の製造]
酪酸の代わりにペンタン酸を用い、ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸およびペンタン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)を1/1.20/2.00/1.60にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル9を得た。
【0054】
[実施例10]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とペンタン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)が40/60/11であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル10)の製造]
酪酸の代わりにペンタン酸を用い、ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸およびペンタン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)を1/1.73/2.59/0.48にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル10を得た。
【0055】
[実施例11]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とペンタン酸とのモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)が26/74/22であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル11)の製造]
酪酸の代わりにペンタン酸を用い、ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸およびペンタン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ペンタン酸比)を1/0.90/3.00/0.90にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル11を得た。
【0056】
[実施例12]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とヘプタン酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ヘプタン酸比)が65/35/72であるペンタエリスリトールのテトラエステル(テトラエステル12)の製造]
酪酸の代わりにヘプタン酸を用い、ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸およびヘプタン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/ヘプタン酸比)を1/1.92/0.96/1.92にする以外は、実施例1と同様に操作して、テトラエステル12を得た。
【0057】
[比較例1]
[イソ酪酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とアジピン酸のモル比(イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/アジピン酸比)が69/31/7であるペンタエリスリトールのエステル(エステルA)の製造]
酪酸の代わりにアジピン酸を用い、ペンタエリスリトール、イソ酪酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸およびアピジン酸の使用量のモル比(ペンタエリスリトール/イソ酪酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸/アジピン酸比)を1/2.50/1.00/0.25にする以外は、実施例1と同様に操作して、エステルAを得た。
【0058】
(試験例1)流動点の測定
自動流動点測定器RPC−01CML(離合社製)を用い、JIS K2269−1987の方法に準じてテトラエステル1〜12およびエステルAの流動点を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0059】
(試験例2)動粘度の測定
キャノン−フェンスケ粘度計を用い、JIS K2283:2000の方法に準じてテトラエステル1〜12およびエステルAの40℃および100℃における動粘度を測定した。また、同方法に準じて粘度指数を算出した。結果を表1〜3に示す。
【0060】
(試験例3)二層分離温度の測定
JIS K2211:2009の方法に準じてテトラエステル1〜4および6〜8の二層分離温度を測定した。テトラエステル1〜4および6〜8のそれぞれ0.4gとジフルオロメタン冷媒3.6gを耐圧ガラス管に封入し、混合物を30℃から毎分0.5℃の速度で冷却し、混合物が二層分離または白濁する温度を二層分離温度とした。結果を以下に示す。
【0061】
(試験例4)−20℃での固化、析出物有無の確認(低温特性の評価)
テトラエステル2〜12をそれぞれ1.0gガラス容器に入れ、−20℃に設定した恒温器中で96時間静置した。静置後の固化、析出物有無を目視にて確認した。結果を以下に示す。
【0062】
(試験例5)RBOT寿命の測定(酸化・加水分解安定性、酸化安定性の評価)
「条件1」
回転ボンベ式酸化安定度試験器RBOT−02(離合社製)を用い、JIS K2514−1996の方法に準じて酸化安定度試験を行った。テトラエステル1〜12およびエステルAのそれぞれ49.50gと、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)(東京化成工業社製)0.25gと、IRGANOX L57(チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製)0.25gと、水5mLと、紙やすり#400で磨いた電解銅線(直径1.6mm、長さ3m)を耐圧容器に入れた。次いで、該耐圧容器に酸素を620kPaまで圧入し、該耐圧容器を150℃の恒温槽に入れ、毎分100回転で回転させた。該耐圧容器の圧力が最高になったときから175kPaの圧力降下をするまでに要する時間(RBOT寿命)を測定した。結果を表1〜3に示す。
表1〜3において、RBOT寿命が長いほどテトラエステルの酸化・加水分解安定性が優れていることを表わす。
【0063】
「条件2」
4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)とIRGANOX L57と水を耐圧容器に入れず、それ以外は条件1と同様の操作を行い、テトラエステル3および8において、該耐圧容器の圧力が最高になったときから175kPaの圧力降下をするまでに要する時間(RBOT寿命)を測定した。ここで、RBOT寿命が長いほどテトラエステルの酸化安定性が優れていることを表わす。
【0064】
(試験例6)重量減少温度の測定(熱安定性の評価)
熱重量/示差熱量計Tg−DTA6200(セイコー・インスツルメント社製)を用い、以下の条件で、テトラエステル5、6および9〜12の5%重量減少温度を測定した。結果を表4に示す。
測定温度;40〜420℃、昇温速度;10℃/分、雰囲気;窒素通気(300mL/分)、試料容器;アルミニウム製15μl(開放)、サンプル量;3mg
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
表1〜3より、テトラエステル1〜12は、100℃における動粘度が4.6〜8.2mm2/秒であって、粘度指数が89以上であり、流動点が−42.5℃以下と優れた低温流動性を有し、条件1におけるRBOT寿命が756分間以上と優れた酸化・加水分解安定性を有することがわかる。
【0070】
表4より、テトラエステル5、6および9〜12は、Tg−DTAの測定において、5%重量減少温度が221.8℃以上であった。本発明のテトラエステルは優れた熱安定性を有することがわかる。
【0071】
試験例3において、テトラエステル1〜4および6〜8は、二層分離温度が−32℃以下であり、中でもテトラエステル1〜3および7は−50℃以下であった。本発明のテトラエステルは、ジフルオロメタン冷媒に対する優れた相溶性を有することがわかる。
【0072】
試験例4において、テトラエステル2〜12は、固化せず、また析出物も確認されなかった。テトラエステル2〜12は、低温域で長期間保管するまたは使用する場合にも、好ましく使用できることがわかる。
【0073】
試験例5の「条件2」において、テトラエステル3はRBOT寿命が217分間であり、テトラエステル8はRBOT寿命が247分間であった。本発明のテトラエステルは、高い酸化安定性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明により、優れた低温流動性および優れた安定性等をバランスよく有する冷凍機油等に用いられるペンタエリスリトールのテトラエステルを提供できる。