特許第5990235号(P5990235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990235
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】リニア駆動を利用した極低温冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/14 20060101AFI20160825BHJP
   F25B 9/10 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   F25B9/14 530Z
   F25B9/14 520F
   F25B9/10 Z
【請求項の数】36
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-208337(P2014-208337)
(22)【出願日】2014年10月9日
(62)【分割の表示】特願2011-510674(P2011-510674)の分割
【原出願日】2009年5月20日
(65)【公開番号】特開2015-4509(P2015-4509A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】61/128,380
(32)【優先日】2008年5月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505047094
【氏名又は名称】ブルックス オートメーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144082
【弁理士】
【氏名又は名称】林田 久美子
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】モリス・ロナルド・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】アンディーン・ブルース・アール
(72)【発明者】
【氏名】バートレット・アレン・ジェイ
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−332215(JP,A)
【文献】 特開2007−205607(JP,A)
【文献】 特開平07−071834(JP,A)
【文献】 特開平02−213655(JP,A)
【文献】 特開昭61−017867(JP,A)
【文献】 特開平06−193989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/10
F25B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一段と、
第二段と、
前記第一段および第二段に高圧のガスを導入し、前記第一段および第二段から当該ガスを排出するガス制御バルブと、
を備え、
前記第一段の第1のディスプレーサに接続された第1のリニアモータと、前記第二段の第2のディスプレーサに接続された第2のリニアモータとによって、前記第一段および第二段が互いに独立して制御され、
前記第1のリニアモータが、前記第一段の第1のディスプレーサを第1のストローク変位プロファイルで駆動し、前記第2のリニアモータが、前記第二段の第2のディスプレーサを第1のストローク変位プロファイルと異なる第2のストローク変位プロファイルで駆動し、
前記第1のリニアモータおよび前記第2のリニアモータが前記第1ディスプレーサおよび前記第2ディスプレーサと同軸に配置され、
前記第2のリニアモータが第2の出力シャフトによって前記第2ディスプレーサに接続され、
前記第2の出力シャフトが、前記第1のリニアモータと同軸であって、前記第1のリニアモータを前記第1のディスプレーサに接続する第1の出力シャフトの内部を同軸で通り抜けて、前記第1のディスプレーサの内部を同軸で通る、極低温冷凍機。
【請求項2】
請求項1において、前記リニアモータが、(i)前記第一段の第1のディスプレーサを第1のストロークで動作させ、(ii)前記第二段の第2のディスプレーサを第2のストロークで動作させる、極低温冷凍機。
【請求項3】
請求項1において、前記第一段および第二段に高圧のガスを導入する第1のガス制御バルブと、前記第一段および第二段から当該ガスを排出する第2のガス制御バルブとを備える、極低温冷凍機。
【請求項4】
請求項1において、前記リニアモータが、前記第一段の第1のディスプレーサを第1のストローク長さで駆動し、前記第二段の第2のディスプレーサを第2のストローク長さで駆動する、極低温冷凍機。
【請求項5】
請求項1において、前記リニアモータが、前記第一段の第1のディスプレーサを第1のストローク速度で駆動し、前記第二段の第2のディスプレーサを第2のストローク速度で駆動する、極低温冷凍機。
【請求項6】
請求項1において、さらに、第1のリニアモータと第2のリニアモータとによって生じる振動を除去する、前記極低温冷凍機に固定された錘を有する防振装置を備える、極低温冷凍機。
【請求項7】
請求項1において、さらに、相殺して振動を除去する補償振動を引き起こす能動型の防振装置を備える、極低温冷凍機。
【請求項8】
請求項1において、さらに、前記それぞれのリニアモータを制御するために前記第1のディスプレーサおよび前記第2のディスプレーサのうちの少なくとも1つの位置を測定する位置センサ、を備える、極低温冷凍機。
【請求項9】
請求項1において、さらに、前記第一段から導入される作動流体を備え、
前記第一段の作動流体が前記第二段の作動流体に対して遮断されている、極低温冷凍機。
【請求項10】
請求項1において、前記第1のリニアモータおよび前記第2のリニアモータが電磁式のモータである、極低温冷凍機。
【請求項11】
請求項1において、ギフォード−マクマホン方式の二段式冷凍機である、極低温冷凍機。
【請求項12】
第一段の冷凍シリンダと、
前記第一段の冷凍シリンダ内で往復動し、前記第一段の冷凍シリンダの両端部の間で冷媒ガスを往復させる第1のディスプレーサと、
前記往復される冷媒ガスを冷却する第1の蓄冷材と、
前記第1のディスプレーサに動作可能に接続され、前記第1のディスプレーサを往復動に駆動する第1のリニアモータと、
第二段の冷凍シリンダと、
前記第二段の冷凍シリンダの両端部の間で冷媒ガスを往復させる第2のディスプレーサと、
前記冷媒ガスを冷却する第2の蓄冷材と、
前記第2のディスプレーサに動作可能に接続され、前記第2のディスプレーサを往復動に駆動する第2のリニアモータと、
前記第1のディスプレーサの位置または前記第2のディスプレーサの位置を測定する少なくとも1つの位置センサと、
前記第一段の冷凍シリンダおよび第二段の冷凍シリンダに高圧のガスを導入し、前記第一段の冷凍シリンダおよび第二段の冷凍シリンダから当該冷媒ガスを排出する複数のガス制御バルブと、
前記少なくとも1つの位置センサ、前記第1のリニアモータおよび前記第2のリニアモータに動作可能に接続され、前記第1のリニアモータおよび前記第2のリニアモータを互いに独立して制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記第1のリニアモータが、前記第一段の第1のディスプレーサを第1のストローク変位プロファイルで駆動するように制御し、前記第2のリニアモータが、前記第二段の第2のディスプレーサを第1のストローク変位プロファイルと異なる第2のストローク変位プロファイルで駆動するように制御し、
前記第1のリニアモータおよび前記第2のリニアモータが前記第1ディスプレーサおよび前記第2ディスプレーサと同軸に配置され、
前記第2のリニアモータが、第2の出力シャフトによって前記第2ディスプレーサに接続され、
前記第2の出力シャフトが、前記第1のリニアモータと同軸であって、前記第1のリニアモータを前記第1のディスプレーサに接続する第1の出力シャフトの内部を同軸で通り抜けて、前記第1のディスプレーサの内部を同軸で通る、極低温冷凍機。
【請求項13】
請求項12において、前記コントローラが、前記位置センサからの出力に応答して、往復動中の前記第1のディスプレーサおよび前記第2のディスプレーサのストロークのパラメータを制御する、極低温冷凍機。
【請求項14】
請求項12において、前記コントローラが、前記位置センサからの出力に応答して、往復動中の前記第1のディスプレーサおよび前記第2のディスプレーサのストロークのパラメータを互いに独立して制御する、極低温冷凍機。
【請求項15】
請求項12において、前記第2のリニアモータが、前記第1のディスプレーサに隣接して配置された出力シャフトによって前記第2のディスプレーサに接続されている、極低温冷凍機。
【請求項16】
請求項12において、前記コントローラが、前記第1のリニアモータを制御することによって第一段の温度を制御する、極低温冷凍機。
【請求項17】
請求項12において、前記コントローラが、前記第一段と独立して前記第2のリニアモータを制御することによって第二段の温度を制御する、極低温冷凍機。
【請求項18】
請求項12において、前記コントローラが、前記第1のリニアモータと独立して前記第2のリニアモータのストロークプロファイルおよびストローク長さを可変することにより、第二段の温度を制御する、極低温冷凍機。
【請求項19】
請求項12において、さらに、第1のリニアモータと第2のリニアモータとによって生じる振動を除去する、前記極低温冷凍機に固定された錘を有する、振動を除去する防振装置を備える、極低温冷凍機。
【請求項20】
請求項12において、さらに相殺して振動を除去する補償振動を引き起こす能動型の防振装置を備える、極低温冷凍機。
【請求項21】
請求項12において、前記コントローラが、前記第1のディスプレーサまたは前記第2のディスプレーサの、ストローク長さ、ストローク速度およびストローク位相の少なくとも1つを変化させる、極低温冷凍機。
【請求項22】
請求項12において、前記第1のリニアモータおよび前記第2のリニアモータが電磁式のモータである、極低温冷凍機。
【請求項23】
請求項22において、ギフォード−マクマホン方式の二段式冷凍機である、極低温冷凍機。
【請求項24】
二段の極低温冷凍機を動作させる方法であって、
第一段の第1のディスプレーサと第二段の第2のディスプレーサを、互いに同一のまたは異なる冷凍シリンダ内に備え、前記第1のディスプレーサに接続された第1のリニアモータで第1のディスプレーサを、前記第2のディスプレーサに接続された第2のリニアモータで第2のディスプレーサを駆動する過程と、
前記第1のディスプレーサと前記第2のディスプレーサとにバルブでガスを導入したりガスを排出したりする過程と、
前記第1のディスプレーサに接続された前記第1のリニアモータリニアモータと前記第2のディスプレーサに接続された前記第2のリニアモータとを互いに独立して制御することで温度を制御する過程と、
前記第1のリニアモータが、前記第一段の第1のディスプレーサを第1のストローク変位プロファイルで駆動し、前記第2のリニアモータが、前記第二段の第2のディスプレーサを第1のストローク変位プロファイルと異なる第2のストローク変位プロファイルで駆動する過程と、
を含み、
前記第1のリニアモータおよび前記第2のリニアモータが前記第1ディスプレーサおよび前記第2ディスプレーサと同軸に配置され、
前記第2のリニアモータが、第2の出力シャフトによって前記第2ディスプレーサに接続され、
前記第2の出力シャフトが、前記第1のリニアモータと同軸であって、前記第1のリニアモータを前記第1のディスプレーサに接続する第1の出力シャフトの内部を同軸で通り抜けて、前記第1のディスプレーサの内部を同軸で通る、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項25】
請求項24において、さらに、前記二段の極低温冷凍機に由来する振動または前記二段の極低温の冷凍機に生じる振動を前記極低温冷凍機に固定された錘で除去する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項26】
請求項24において、さらに、二段の極低温の冷凍機によって生じる振動を、相殺して除去する補償振動を引き起こし、能動的に除去する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項27】
請求項24において、さらに、少なくとも1つのディスプレーサのストロークのパラメータが別のディスプレーサと異なるように、当該少なくとも1つのディスプレーサを当該別のディスプレーサとは独立して制御する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項28】
請求項24において、さらに、少なくとも1つのディスプレーサの速度が別のディスプレーサと異なるように、当該少なくとも1つのディスプレーサを当該別のディスプレーサとは独立して制御する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項29】
請求項24において、さらに、少なくとも1つのディスプレーサの位相が別のディスプレーサと異なるように、当該少なくとも1つのディスプレーサを当該別のディスプレーサとは独立して制御する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項30】
請求項24において、さらに、少なくとも1つのディスプレーサの往復動のパラメータを別のディスプレーサとは独立して変化させて、前記二段の温度を互いに独立して制御する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項31】
請求項24において、さらに、前記2つのディスプレーサのうちの少なくとも1つのディスプレーサの位置を検出する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項32】
請求項31において、さらに、前記ディスプレーサのうちの少なくとも1つのディスプレーサの位置に応答して、前記二段を互いに独立して制御する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項33】
請求項24において、前記冷凍機が極低温排気面を冷却する、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項34】
請求項24において、前記冷凍機が半導体を冷却する、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項35】
請求項24において、前記ディスプレーサが電磁式のモータによって制御される、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【請求項36】
請求項24において、前記極低温の冷凍機が、ギフォード−マクマホン方式の二段式冷凍機である、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2008年5月21日付出願の米国仮特許出願第61/128,380号の優先権を主張するものである。
【0002】
上記米国仮特許出願の全教示内容は、参照によって本願に組み入れたものとする。
【技術分野】
【0003】
従来の種類の極低温冷凍機では、冷凍シリンダ内に導入されたヘリウムなどの作動流体がピストンまたはディスプレーサの一端部側で膨張することにより、シリンダが冷却される。また、ギフォード−マクマホン方式の冷凍機では、冷凍機の高温側端部にバルブを介して導入された高圧の作動流体が、ディスプレーサの移動に伴って蓄冷材を通過するように構成されている。そして、蓄冷材を通過することで冷却された作動流体は、ディスプレーサの低温側端部において膨張する。なお、ディスプレーサは回転モータで駆動される。
【0004】
極低温冷凍機は一段式および二段式のものが知られている。典型的に、第一段には第1のディスプレーサが含まれる。第1のディスプレーサは作動流体を圧縮と膨張との往復運動をさせる。第二段には第2のディスプレーサが含まれる。第2のディスプレーサも作動流体を圧縮と膨張との往復運動をさせる。典型的に、第1のディスプレーサおよび第2のディスプレーサは相互接続されており、かつ、共通の回転モータで駆動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
極低温冷凍機を実際に使用すると、第一段の負荷と第二段の負荷とが異なる場合が多い。そのため、第1のディスプレーサのストローク長さ、ストローク速度、ストローク変位プロファイルおよびストローク位相を、第2のそれらと異なるように作動するのが望ましい。これは、極低温冷凍機の製作・実施後に判明することが多い。なお、一般的な冷凍機では、機械的な回転駆動装置が第一段と第二段の両方を駆動する。そして、その機械的な回転駆動装置が、両段を同一のストローク長さ、ストローク速度、ストローク変位プロファイルおよびストローク位相で駆動する。機械的な回転駆動装置の動作パラメータを変化させることによって極低温冷凍機の効率の向上を図るのは困難である。多くの場合、極低温冷凍機の全体効率を上げようとして回転駆動装置の動作パラメータを少し変化させてみるが失敗に終わり、結局、異なるストロークパラメータに基づいた極低温冷凍機を新たに製作することになる。
【0006】
極低温冷凍機の冷却段の効率を決める一般的なパラメータとして、ストローク速度、シリンダ容積、作動流体の温度などが挙げられる。冷却段の効率を図るには、適切なバルブタイミングの圧力波を発生させることで、好適な時間にバルブが確実に開くようにする必要がある。なお、当該技術分野における一般的な問題は、第二段が第一段に完全に依存し、第二段のディスプレーサストロークが第一段の動作に関連付けられているためである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一方、本発明にかかる極低温冷凍機は、第二段の動作が第一段に影響されないので、従来技術の冷凍機よりも優れた効率を有する。本発明にかかる極低温冷凍機は、各段ごとに、異なる動作パラメータ(例えば、ストローク長さ、ディスプレーサの変位プロファイル、ディスプレーサの位相、その他のディスプレーサの往復動パラメータなど)を設定したり、動作パラメータを変化させたりすることができる。この各段の互いに独立した動作により、冷凍機を完全に製作し直すことなく、第一段と第二段の互いに異なる負荷に対応することができる。つまり、本発明にかかる極低温冷凍機は、第一段と第二段とを互いに独立して動作させることにより、優れた温度制御を行うことができる。
【0008】
本発明のある実施形態では、第一段と、第二段と、各段に対応したリニアモータを備える極低温冷凍機である。各段に対応してリニアモータが設けられていることにより、両段の互いに独立した制御が行える。リニアモータは、ディスプレーサに動作可能に接続されている。この冷凍機の別の段には、第2のリニアモータに動作可能に接続された第2のディスプレーサが設けられている。ディスプレーサは、各段ごとに設けられ、冷凍シリンダ内で往復動するピストン状の部材である。リニアモータは、各ディスプレーサのストロークを制御する。
【0009】
他の実施形態において、リニアモータは、第一段のディスプレーサを第1のストローク長さで駆動し、第二段のディスプレーサを第2のストローク長さで駆動する。第1のストローク長さは第2のストローク長さと互いに異なっていてもよいし、互いに同一であってもよい。
【0010】
この冷凍機は、ギフォード−マクマホン方式の冷凍機であってもよく、また、ガス制御バルブを備えていてもよい。第1のバルブが高圧の作動ガス(冷媒ガス)であるヘリウムを冷凍シリンダに導入し、第2のバルブが当該作動ガスを冷凍シリンダから排出させる。バルブは、電気式のバルブであっても、機械式のバルブであっても、スプールバルブであってもよい。このバルブは、ディスプレーサの運動に従って所定の動作を行うものではなく、コントローラによって制御された動作を行うものである。
【0011】
好ましくは、この極低温冷凍機は、第一段のディスプレーサに動作可能に接続されたリニアモータと、第二段のディスプレーサに動作可能に接続されたリニアモータとの2つのリニアモータを備えている。これらリニアモータは制御され、任意で、第一段のディスプレーサを、第二段と異なるストローク速度、ストローク長さ、ストローク変位プロファイル、サイクル速度またはストローク位相で駆動する。必要に応じて、これらストローク速度、ストローク長さ、ストローク位相、ストロークプロファイルまたはサイクル速度を、同一にしてもよい。
【0012】
この極低温冷凍機は、さらに、振動を除去する防振装置を備えていてもよい。この防振装置は、リニアモータによって生じる望ましくない振動、またはディスプレーサの往復動に伴う振動を除去する。この防振装置は、能動型の防振装置であっても受動型の防振装置であってもよい。また、第1のディスプレーサの位置または第2のディスプレーサの位置を測定してフィードバック信号を供給するための位置センサを、ディスプレーサに配置してもよいし、極低温冷凍機のそれ以外の他の場所に設けてもよい。このフィードバック信号に基づいて、第一段および第二段の互いに独立した制御が行われてもよい。さらなる実施形態において、システムは開ループで動作される。本発明のさらなる他の実施形態において、作動流体は第一段に導入され、かつ、当該第一段に導入された作動流体は、第二段の作動流体に対して熱力学的に遮断される。効率を上げるために、各段ごとに異なる作動流体が使用されてもよい。
【0013】
冷凍機の1つのサイクルで生成する総冷却量は、PVグラフ(圧力−体積グラフ)の面積から定量することができる。冷凍機のどの段の総冷却量も同様に定量できる。
【0014】
冷却レート、すなわち、単位時間あたりの冷却量は、上記PV面積を1つのサイクルの所要時間で割った数値である。すなわち、各段の総冷却量は下記(1)式となる。
【0015】
【数1】
【0016】
理想気体の法則によると、下記(2)式となる。
【0017】
【数2】
【0018】
したがって、圧縮器(コンプレッサ)が行う仕事、つまり、圧縮器の入力仕事率は、当該圧縮器が供給するガスのマスフロー流量に比例する。
【0019】
【数3】
【0020】
利用される実際の冷却量、すなわち、純冷却量は、上記総冷却量から、冷凍機内の様々な損失メカニズムによる損失量を引いたものである。冷凍機のコールドヘッドにおける損失メカニズムの例として、ストロークおよび/またはサイクル速度の作用が挙げられる。ストロークまたは速度を減少させると、損失メカニズムの影響を軽減することができるが、総冷却量も低下する。ユーザは、所望の具体的な極低温冷却要件を持っている。この所望の極低温冷却要件は、極低温冷凍機の各段の特定の温度における負荷(例えば、ワット(watt))で表すことができる。なお、従来の二段式極低温冷凍機では、二段とも互いに運動学的に結合しているので、各段のストロークおよびサイクル速度は同一である。
【0021】
従来、膨大な数のユーザの所望の冷却量、ならびに第一段ヘッドの負荷および第二段ヘッドの負荷の多種多様な冷却要件に応えるには、必要以上に大きい寸法の極低温冷凍機を使用しなければならなかった。このような過剰の冷却容量によって、必要以上に温度が低下したり、所望の温度に保持するためのヒータによってその過剰の冷却容量が無駄になったりする。いずれの場合も非効率である。過度に大きい冷凍機は、ガスの処理量が必要以上に多くなるので、それに応じて圧縮器のサイズも必然的に大きくなる。しかしながら、1つ以上の冷却段の冷却容量を一時的に増加させたいときもある。冷却容量は、ストロークを増やすか、またはサイクル速度を上昇させることによって増加させることができる。したがって、ストロークのパラメータおよび冷却段の速度を独立に制御することにより、多種多様な冷却要件を満たすことができるだけでなくシステムの効率を上昇させることもできる。さらに、このような独立の制御により、冷凍動作の一時的な向上も可能になる。
【0022】
冷凍対象は、例えば、極低温排気面、超伝導体、基板、検出器、医療装置などである。どの冷却対象も、作動流体を介して冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】2つのディスプレーサおよびバルブがギフォード−マクマホンサイクルで駆動される様子を示す概略図である。
図1B】2つのディスプレーサおよびバルブがギフォード−マクマホンサイクルで駆動される様子を示す他の概略図である。
図1C】2つのディスプレーサおよびバルブがギフォード−マクマホンサイクルで駆動される様子を示すさらなる概略図である。
図1D】2つのディスプレーサおよびバルブがギフォード−マクマホンサイクルで駆動される様子を示すさらなる他の概略図である。
図1E】第1のディスプレーサを制御する第1のリニアモータと、第2のディスプレーサを前記第1のディスプレーサとは独立して制御する第2のリニアモータとを備えた、本発明の一実施形態の極低温冷凍機を示す概略図である。
図1F】受動型のダイナミックバランサーを備える冷凍機を示す概略図である。
図2】本発明の他の実施形態の極低温冷凍機を示す概略図である。
図3】本発明のさらなる実施形態の極低温冷凍機を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前述の内容は、添付の図面を用いて行う本発明の実施形態についての以下の詳細な説明から、より明らかになる。異なる図をとおして、同一の符号は同一の構成要素または部位を指すものとする。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、むしろ、本発明の実施形態を示すことに重点を置いている。
【0025】
本発明の例示的な実施形態を以下に説明する。
【0026】
図1A図1Dに、ガス制御バルブとして高圧バルブ10および低圧バルブ20を備え、冷凍シリンダ50内に第1のディスプレーサ30および第2のディスプレーサ40を有する多段式の極低温冷凍機を示す。好ましくは、図1Aに示す状態では、高圧バルブ10は開いており、蓄冷材(図示せず)を含むディスプレーサ30,40の位置は、図示のフェーズ1において最低温の体積空間を形成する最下位置である下死点にある。冷凍シリンダ50には、高圧の作動流体(例えば、ガスなど)が充填される。図1Bの状態では、作動流体はディスプレーサ30,40に含まれる蓄冷材(図示せず)を通過することで冷却され、ディスプレーサ30,40は下死点から上死点に移動する。図1Cの状態では、高圧バルブ10は閉じられ、低圧バルブ20が開かれる。作動流体は膨張し、冷却効果をもたらす。図1Dの状態では、低圧になった作動流体が、ディスプレーサ30,40に含まれる蓄冷材を逆方向に通過し、ディスプレーサ30,40が下死点に戻り、作動流体が低圧バルブ20を介してシリンダ50から排出される。なお、それぞれの冷凍機のPVグラフ(圧力−体積グラフ)および冷却性能は、ディスプレーサの変位とバルブ位置との関係をずらしながら調節することによって最適化される。よって、高圧バルブ及び低圧バルブの開閉動作は上死点および下死点と完璧に整合していなくともよい。
【0027】
図1Eに、本発明にかかる極低温冷凍機100の一実施形態を示す。この実施形態では、極低温冷凍機100は、第1のモータ140aおよび第2のモータ140bを備え、これら第1のモータ140aおよび第2のモータ140bは、互いに独立して、それぞれ、第1のディスプレーサ150、第2のディスプレーサ155を制御する。これにより、第1のディスプレーサ150のストローク長さと、第2のディスプレーサ155のストローク長さとを、互いに独立して異ならせることができる。さらに、コントローラ195により、各ディスプレーサ150,155のストローク速度、ストロークプロファイルまたはストローク位相を互いに独立して制御することで、特定のシステムに依存する第一段130の温度および第二段135の温度を互いに独立して制御することができる。
【0028】
モータ140a,140bには、任意の形態のモータが使用されてよいが、ここでは、永久磁石138a,138bおよびコイル199a,199bを備えた可動磁石型のリニアモータとする。他の実施形態において、リニアモータ140a,140bは、第一段のディスプレーサ150と第二段のディスプレーサ155とにガス(冷媒ガス)を供給するエアバルブ(空気弁)及び圧縮器を含むシステム(図示せず)であってもよい。第1のディスプレーサ150のストロークのパラメータおよび第2のディスプレーサ155のストロークのパラメータは、エアバルブの開閉のタイミング(バルブタイミング)を調節することによって制御してもよい。有利なことに、リニアモータをそれぞれ独立してリアルタイムで変化させることによって各段の温度を互いに独立して制御できるという利点があり、よって、極低温冷凍機100を新たに製作し直す必要がない。これにより、有利なことに、極低温冷凍機100は、種々の負荷および条件に対応することができる。さらに、この冷凍機のコトローラは、リニアモータ140a,140bによって様々な冷凍負荷を選択的に制御できるので、動作時に、第一段の最低温の部分を所望の動作温度に達成するにあたって熱を当該第一段に印加しなくてもよく、また、第一段の負荷容量と第二段の負荷容量との比を調節することもできる。
【0029】
なお、本発明は上記の構成に限定されず、上記の構成を逆にしてもよいし、同軸のシャフトをさらに設けて追加の段のディスプレーサを駆動するようにしてもよいし、モータ140a,140bを互いに並んで配置させてもよいし、またはそれ以外の構成によって少なくとも2つのディスプレーサ150,155を駆動させてもよい。第1のモータ140aは第1の出力シャフト145aを備え、出力シャフト145aは第一段のディスプレーサ150に接続されている。これにより、第1のリニアモータ140aは、ディスプレーサ150を下死点から上死点への往復動により第1のディスプレーサ150のストロークを制御することができる。(ここでいう下死点および上死点とは、コントローラによって決定されるストロークの長さにおける下死点および上死点であり、ストローク可能な最大限の下死点および上死点ではない。)
【0030】
第2のモータ140bは第2の出力シャフト145bを備える。第2の出力シャフト145bはピンジョイント145cによって第二段のディスプレーサ155に接続されている。第2の出力シャフト145bは、有利なことに、第1の出力シャフト145aの内部に同軸に配置され、かつ、当該第1の出力シャフト145aおよび第1のディスプレーサ150に対して密封状態で延設されている。このようにして、第2のリニアモータ140bは第2のディスプレーサ155のストロークを制御することができる。第2の出力シャフト145bは、第1のディスプレーサ150の内部を通って、当該第1のディスプレーサ150と同軸な第2のディスプレーサ155を下死点から上死点へ往復動させる。
【0031】
好ましくは、図1Eに示すように、極低温冷凍機100は、ギフォード−マクマホンサイクルで動作される。さらに、極低温冷凍機100は、高圧バルブ110によって冷凍シリンダ105に導入され、低圧バルブ115によって冷凍シリンダ105から排出される作動流体を備える。しかしながら、本発明はこの実施形態に限定されず、公知の他の冷凍サイクルで動作されてもよく、ギフォード−マクマホンサイクルは本発明の例示的な一実施形態に過ぎない。極低温冷凍機100は、さらに、当該極低温冷凍機100と導管160,162によって連通する圧縮器120を備える。導管160は高圧バルブ110に接続され、導管162は低圧バルブ115に接続される。低圧バルブ115から排出された低圧ガスは、導管162を介して圧縮器120に戻り、圧縮されて導管160によって高圧バルブに送られる。図示の圧縮器は単一の圧縮部からなるが、この圧縮器は、例えば、平列に連結された複数の圧縮部を有するものであってもよいし、圧縮ガス(加圧ガス)の可変供給が可能なものであってもよい。
【0032】
冷凍シリンダ105は、第1の部位105aおよび第2の部位105bを有する。第1の部位105aは、上方の高温側のチャンバ165と下方の低温側の膨張空間(第1の膨張空間)170とを形成する。上方の高温側のチャンバ165と下方の低温側の膨張空間170とは、ディスプレーサ150内に含まれる蓄冷材マトリックス175によって互いに流体連通している。変形例として、マトリックス175は、ディスプレーサ150の外側に固定配置されてもよい。
【0033】
冷凍シリンダの第2の部位105bの下方にも、低温側の膨張空間(第2の膨張空間)185が設けられる。なお、この第2の膨張空間は、極低温冷凍機100における最低温の部分であり、その温度は最低約4K(ケルビン)にまで達する。冷凍シリンダの第2の部位105bの、第2のディスプレーサ155の下方に位置する体積空間が、前記第2の膨張空間185を形成する。第2のディスプレーサ155に関して述べると、第1の膨張空間170と第2の膨張空間185とは、第2のディスプレーサ155内に含まれる蓄冷材マトリックス190によって互いに流体連通している。変形例として、マトリックス190は、第2のディスプレーサ155の外側で離れて固定配置されてもよい。図1Eの極低温冷凍機100の動作を以下に説明する。
【0034】
動作時において、第1のリニアモータ140aはリード線140cを介してコントローラ195に動作可能に接続されている。コントローラは冷凍シリンダと一体であってもよいし、冷凍シリンダと別体であってもよい。コントローラ195は第1のリニアモータ140aを制御することにより、第1のディスプレーサ150のストローク往復動を制御する。コントローラ195は、さらに、高圧バルブ110および低圧バルブ115の開閉動作を制御し、作動流体を適切な時間間隔で導入する。高圧バルブ110および低圧バルブ115は電子バルブであってもよいし、スプールバルブであってもよい。さらに、高圧バルブ110および低圧バルブ115には、電子バルブの代わりに機械式のバルブが用いられてもよい。コントローラ195は、さらに、リード線140dを介して第2のモータ140bに動作可能に接続されており、これにより、第2のモータ140bと第2のディスプレーサ155のストロークとを制御する。
【0035】
動作時には、高圧バルブ110が開かれる。このとき、第1のディスプレーサ150および第2のディスプレーサ155はいずれも最下位置である下死点に位置しており、圧縮器120から、高圧バルブ110を介してヘリウムまたは他の適切な作動流体が上方の高温側のチャンバ165に導入される。高圧力の作動流体は上方の高温側のチャンバ165を満たし、蓄冷材マトリックス175に進入する。作動流体のガスは、引き続き、第2のディスプレーサ155の上方の空間、第2の蓄冷材マトリックス190および第2の膨張空間185を含む第二段のガス空間を加圧し続ける。次に、コントローラ195が第1のモータ140aを制御して出力シャフト145aを往復動させる。これによって第一段の出力シャフト145aは移動し、第1のディスプレーサ150が下死点から上死点の位置に向かって第1のモータ140aによって駆動される。ディスプレーサが移動することにより、作動流体は、上方のチャンバ165から、蓄冷材マトリックス175を経て、シリンダの第1の部位105aの下方のチャンバ、すなわち、膨張空間170に向かう。このとき、作動流体は比較的低温であるマトリックス175に熱を放出する。作動流体が冷却される間、流体の導管160によって高圧状態が維持される。
【0036】
第一段のディスプレーサ150が上死点の位置に達すると、コントローラ195が第二段のディスプレーサ155を制御する。例えば、コントローラ195は、第二段のディスプレーサ155を、第1のディスプレーサ150とは異なるストローク長さおよび/またはストローク速度および/またはストローク変位プロファイルおよび/またはストローク往復動位相で制御する。これにより、第一段130とは別に、第二段135にとって望ましい温度制御または第二段135に必要な温度制御を行うことができる。コントローラ195は第2のモータ140bを制御し、出力シャフト145bによって第2のディスプレーサ155を移動させる。作動流体のガスは、第一段130を通過した後、前記第2のディスプレーサ155の移動に伴い、第2の蓄冷材マトリックス190を通って第二段の膨張空間185に送られる。
【0037】
なお、各ディスプレーサのサイクルレート(単位時間あたりのサイクル数)は互いに同一であってもよいが、ディスプレーサ150,155の各サイクルにおける速度は異なり得る。高圧バルブ110は、ディスプレーサが高温側の端部に向かう間の少なくともある期間は開かれている。これにより、十分な量のガスを膨張させることができる。
【0038】
第1のディスプレーサ150および第2のディスプレーサ155が上死点の位置に近付くかまたは上死点の位置に達すると、高圧バルブ110が閉じられる。その後、低圧バルブ115が開かれることにより、第1および第2の膨張空間170,185内のガスが膨張し、冷却効果をもたらす。
【0039】
低圧バルブ115が開かれると、コントローラ195が第1のリニアモータ140aおよび第2のリニアモータ120bを制御し、第1のディスプレーサ150および第2のディスプレーサ155を、それぞれ、互いに独立して上死点から下死点に向かって位動させる。これにより、膨張空間170,185からの作動流体が、低圧バルブ115を介して導管162に排出される。そして、上記のサイクルが繰り返される。前述したように、冷凍機のPVグラフ(圧力−体積グラフ)および冷却性能を最適化するために、高圧バルブ及び低圧バルブの開閉動作は、ディスプレーサの変位が上限に達する時間および下限に達する時間と正確に合致するように行われなくてもよい。
【0040】
なお、第1のディスプレーサ150と第2のディスプレーサ155との互いに独立した動作により、第一段130および第二段135の互いに独立した温度制御が可能になる。しかしながら、動作時には、第1のモータ140aと第2のモータ140bとの互いに独立した往復動作(ならびに互いに独立して互いに異なるタイミングで往復動する、同軸に配置された出力シャフト145a,145b)により、冷凍シリンダ105や近くのその他の構造体に望ましくない振動が伝達されるという問題が生じる。したがって、好ましくは、本発明にかかる極低温冷凍機100は、ディスプレーサ150,155の往復動、および/または第1のモータ140a及び第2のモータ140bの動作が部分的な要因となって生じる、望ましくない振動を除去または減衰するための防振装置105cであるダイナミックバランサー装置を備える。
【0041】
好ましくは、防振装置105cは、冷凍シリンダ105またはそれ以外の適切な場所に動作可能に接続される。防振装置105cは、能動型の防振装置であっても受動型の防振装置であってもよい。能動型の防振装置105cである場合、当該防振装置105cは、好ましくは、望ましくない振動を相殺する第2の補償振動を引き起こすことができる。これにより、望ましくない振動が能動的に相殺されるので、取付用フランジ148に対する総体的な振動を除去または減衰することができる。受動型の防振装置105cである場合、当該防振装置105cは、好ましくは、冷凍シリンダ105の所望の部分に調整された錘を固定しており、これによって望ましくない振動を除去する。好ましくは、防振装置105cは、冷凍シリンダ105または冷凍シリンダ105の一部を同軸に取り囲む、重い錘である。
【0042】
さらに、第1のディスプレーサ150および第2のディスプレーサ155の一方または両方を監視し、それぞれのフィードバック信号をコントローラ195に通信する位置センサ147a,147bが設けられてもよい。位置センサを構成するトランスデューサは、出力シャフト、ディスプレーサ、上下に運動する任意の構成品またはこのような運動を感知する任意の要素に配置されてよい。位置センサは、リニアモータ内に設けられてもよい。位置の感知は、モータ、例えば、モータの電力、モータの逆起電力(back EMF)を監視することによって行われてもよい。コントローラ195は、第一段130および第二段135の温度制御または温度補償のためのフィードバック信号を受けて、第一段130および第二段を互いに独立して制御するように構成されてもよい。一実施形態において、位置センサは、ホール効果に基づいて位置検出を行うトランスデューサを有する。
【0043】
図1Fに、防振装置105c(図2では符号205c、図3では符号305c)を備えた極低温冷凍機100を示す。図1Fの防振装置105cは受動型の防振装置であり、可撓性のジョイント105eで互いに接続された複数の錘105dを有し、リニアモータの振動と逆位相で振動することによって振動を相殺する。図1Fには、さらに、冷凍シリンダ105に冷媒(ヘリウム)を高圧バルブ115を介して導入するための管105g、および冷凍シリンダ105から冷媒(ヘリウム)を低圧バルブ110を介して排気するための管105fが示されている。図1Fには、さらに、極低温真空ポンプ(クライオポンプ)の極低温冷却排気面が示されている。第一段は輻射シールド187を冷却し、第二段は低温凝縮及び低温吸着を行う極低温パネル(クライオパネル)189を冷却する。この冷凍機により、どの従来の極低温パネル構成も冷却することができる。また、この冷凍機は、超伝導体の冷却など、あらゆる公知の極冷温用途に適用可能である。図2に、本発明の他の実施形態を示す。この実施形態でも、極低温冷凍機200は、高圧バルブ210および低圧バルブ215を備えたギフォード−マクマホン方式の冷凍機である。高圧バルブ210は、圧縮器220に通じる導管260と連通する。圧縮器220は、ヘリウムなどの作動流体を、高圧バルブ210を介して極低温冷凍機200に供給する。しかしながら、本発明はギフォード−マクマホンサイクルに限定されず、本発明には当該技術分野の公知の他のサイクルも適用可能である。
【0044】
図2の実施形態では、第2のリニアモータ240bの位置が図1Eの実施形態と異なる。詳細には、第2のリニアモータ240bは第1のリニアモータ240aに隣接して配置される。また、第2のリニアモータ240bに接続された出力シャフト245bが、第1のディスプレーサ250と同軸に配置されることなく第2のディスプレーサ255に接続されている。この実施形態において、(第2のリニアモータ240bに接続された)第2の出力シャフト245bは、第1のディスプレーサ250に隣接して配置される。
【0045】
好ましくは、この実施形態の極低温冷凍機200において、第1のリニアモータ240aに接続された第1のディスプレーサ250は、第1の冷凍シリンダ205aに収容される。第1の冷凍シリンダ205aは、上方の高温側のチャンバ265と低温側の膨張空間(第1の膨張空間)270とを有する。前述の実施形態と同様に、第1のディスプレーサ250は蓄冷材275を含む。好ましくは、膨張空間270は、第一段のヒートステーション290a内に形成された流路288に連通し、当該流路288は、第二段の冷凍シリンダ205bおよび第2のディスプレーサ255と連通する。
【0046】
極低温冷凍機200は、さらに、第2のリニアモータ240bを備える。第2のリニアモータ240bは、第2の出力シャフト245bにより、第2の冷凍シリンダ205bに収容された第2のディスプレーサ255に接続されている。第2の冷凍シリンダ205bは第一段のヒートステーション290aと接続されている。第2の冷凍シリンダ205bは、空間280と低温側の膨張空間285とを形成している。低温側の膨張空間285は第2のディスプレーサ255の下に位置する。前述の実施形態と同様に、第2のディスプレーサ255は蓄冷材290を含む。
【0047】
動作時には、高圧バルブ210が開かれる。このとき、第1のディスプレーサ250および第2のディスプレーサ255はいずれも最下位置である下死点に位置しており、高圧バルブ210からヘリウムまたは他の適切な作動流体が導入される。圧縮器220を出た作動流体は、第1の冷凍シリンダ205aの上方の高温側のチャンバ265に到達する。
【0048】
高圧の作動流体が、上方の高温側のチャンバ265、第1のディスプレーサ250に含まれる蓄冷材マトリックス275、ヒートステーション内の流路288、第2の冷凍シリンダ205bの空間280、第2のディスプレーサ255に含まれる蓄冷材マトリックス290、および膨張空間285を満たす。作動流体は、低温の蓄冷材マトリックス275,290に熱を放出する。作動流体が冷却される間、流体の導管260によって高圧が維持される。次に、コントローラ295が、第1のモータ240aを制御して、第1のディスプレーサ250に接続された第1の出力シャフト245aを往復動させる。第1のモータ240aは、第1のディスプレーサ250を下死点から上死点の位置に向かって駆動させる。作動流体のガスは、加圧され、蓄冷材の両方のマトリックスを通過し、当該マトリックスと熱交換して冷却される。
【0049】
次に、第二段について説明する。第2のディスプレーサ255は、第1の冷凍シリンダ205aに隣接して配置された出力シャフト245bにより、第2のリニアモータ240bと接続されている。第2のリニアモータ240bは、第2のディスプレーサ255を下死点から上死点まで移動させる。例えば、第2のリニアモータ240bは、第2のディスプレーサ255を、当該第2のディスプレーサ255が下死点から上死点まで移動するあいだ、第1のディスプレーサ250とは異なるストローク速度、ストローク長さ、ストロークプロファイルまたはストローク往復動位相で制御する。
【0050】
第1のディスプレーサ250および第2のディスプレーサ255が上死点の位置に近付くと、高圧バルブ210が閉じられ、そして低圧バルブ215が開かれることでガスが膨張する。第1のディスプレーサ250が上死点の位置に達すると、それと同時に、コントローラ295が、第二段をその所望の温度に応じて制御する。例えば、コントローラ295は、第二段を、その所望の温度に応じて、第一段とは異なるストローク長さ、ストローク速度、ストロークプロファイルまたはストローク位相で制御する。コントローラ295は、第一段のリニアモータ240aに隣接して配置された第2のモータ240bを制御して、第2のディスプレーサ255を移動させる。
【0051】
低温側の膨張空間285,270内の作動流体は、低圧バルブ215が開かれることで膨張し、冷却効果をもたらす。そして、冷凍シリンダ205a,205bの排気が開始される。コントローラ295が第1のリニアモータ240aおよび第2のリニアモータ240bを制御し、第1のディスプレーサ250および第2のディスプレーサ255を上死点から下死点に向かって移動させる。これにより、膨張空間270,285からの作動流体が、ディスプレーサを通過し、導管262を介して圧縮器220に戻される。なお、第1のディスプレーサ250と第2のディスプレーサ255との互いに独立した動作により、第一段および第二段の互いに独立した温度制御が可能になる。
【0052】
図3に示す他の実施形態では、好ましいことに、第二段の冷凍シリンダ305bへのガス流路として機能する図2の第一段のヒートステーション290aの代わりに、第二段の冷凍シリンダ305bと流体連通しない第一段のヒートステーション390aが設けられ、さらに、第一段と第二段との間で流体が行き来しないように流体分離しながら両段を熱的に接続する伝熱ブロック390cが、冷凍シリンダ305a,305bの間に設けられる。この実施形態において、極低温冷凍機300は、第2の冷凍シリンダ305bに作動流体を導入する第2の高圧バルブ310bと、第2の冷凍シリンダ305bから作動流体を排出する第2の低圧バルブ315bとを備えており、これにより、第一段の流体と第二段の流体とは互いに遮断することができる。有利なことに、この構成は、各シリンダの互いに独立したバルブ動作を実行でき、さらには、任意で、各シリンダの互いに独立したサイクル速度を実現できるので、両段の温度制御を高効率で行える。
【0053】
本発明を、実施形態に基づいて詳細に図示かつ説明したが、当業者であれば本発明の範囲を逸脱することなく形態や細部に対して様々な変更が可能であり、そのような変更は、添付の特許請求の範囲に包含される。
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
[態様1]
第一段と、第二段と、前記第一段および第二段に対して互いに独立した制御を行う手段と、を備える、極低温冷凍機。
[態様2]
態様1において、前記互いに独立した制御が、ストローク長さ、当該冷凍機のサイクルレート、ディスプレーサの速度、および前記ディスプレーサの位置に対するバルブ動作のタイミングのうちの少なくとも1つの変数を制御することを含む、極低温冷凍機。
[態様3]
第一段と、
第二段と、
前記第一段および第二段に高圧のガスを導入し、前記第一段および第二段から当該ガスを排出するガス制御バルブと、
を備え、
前記第一段の第1のディスプレーサに接続された第1のリニアモータと、前記第二段の第2のディスプレーサに接続された第2のリニアモータとが、前記第一段および第二段の互いに独立して制御する、極低温冷凍機。
[態様4]
態様3において、前記リニアモータが、(i)前記第一段の第1のディスプレーサを第1のストロークで動作させ、(ii)前記第二段の第2のディスプレーサを第2のストロークで動作させる、極低温冷凍機。
[態様5]
態様3において、前記第一段および第二段に高圧のガスを導入する第1のガス制御バルブと、前記第一段および第二段から当該ガスを排出する第2のガス制御バルブとを備える、極低温冷凍機。
[態様6]
態様3において、前記リニアモータが、前記第一段の第1のディスプレーサを第1のストローク長さで駆動し、前記第二段の第2のディスプレーサを第2のストローク長さで駆動する、極低温冷凍機。
[態様7]
態様3において、前記リニアモータが、前記第一段の第1のディスプレーサを第1のストローク変位プロファイルで駆動し、前記第二段の第2のディスプレーサを第2のストローク変位プロファイルで駆動する、極低温冷凍機。
[態様8]
態様3において、前記リニアモータが、前記第一段の第1のディスプレーサを第1のストローク速度で駆動し、前記第二段の第2のディスプレーサを第2のストローク速度で駆動する、極低温冷凍機。
[態様9]
態様3において、さらに、第1のリニアモータと第2のリニアモータとによって生じる振動を除去する防振装置を備える、極低温冷凍機。
[態様10]
態様9において、前記防振装置が能動型の防振装置である、極低温冷凍機。
[態様11]
態様3において、さらに、前記それぞれのリニアモータを制御するために前記第1のディスプレーサおよび前記第2のディスプレーサのうちの少なくとも1つの位置を測定する位置センサ、を備える、極低温冷凍機。
[態様12]
態様3において、さらに、前記第一段から導入される作動流体を備え、
前記第一段の作動流体が前記第二段の作動流体に対して遮断されている、極低温冷凍機。
[態様13]
態様3において、前記第1のリニアモータおよび前記第2のリニアモータが電磁式のモータである、極低温冷凍機。
[態様14]
態様3において、ギフォード−マクマホン方式の二段式冷凍機である、極低温冷凍機。[態様15]
第一段の冷凍シリンダと、
前記第一段の冷凍シリンダ内で往復動し、前記第一段の冷凍シリンダの両端部の間で冷媒ガスを往復させる第1のディスプレーサと、
前記往復される冷媒ガスを冷却する第1の蓄冷材と、
前記第1のディスプレーサに動作可能に接続され、前記第1のディスプレーサを往復動に駆動する第1のリニアモータと、
第二段の冷凍シリンダと、
前記第二段の冷凍シリンダの両端部の間で冷媒ガスを往復させる第2のディスプレーサと、
前記冷媒ガスを冷却する第2の蓄冷材と、
前記第2のディスプレーサに動作可能に接続され、前記第2のディスプレーサを往復動に駆動する第2のリニアモータと、
前記第1のディスプレーサの位置または前記第2のディスプレーサの位置を測定する少なくとも1つの位置センサと、
前記第一段の冷凍シリンダおよび第二段の冷凍シリンダに高圧のガスを導入し、前記第一段の冷凍シリンダおよび第二段の冷凍シリンダから当該冷媒ガスを排出する複数のガス制御バルブと、
前記少なくとも1つの位置センサ、前記第1のリニアモータおよび前記第2のリニアモータに動作可能に接続され、前記第1のリニアモータおよび前記第2のリニアモータを互いに独立して制御するコントローラと、
を備える、極低温冷凍機。
[態様16]
態様15において、前記コントローラが、前記位置センサからの出力に応答して、往復動中の前記第1のディスプレーサおよび前記第2のディスプレーサのストロークのパラメータを制御する、極低温冷凍機。
[態様17]
態様15において、前記コントローラが、前記位置センサからの出力に応答して、往復動中の前記第1のディスプレーサおよび前記第2のディスプレーサのストロークのパラメータを互いに独立して制御する、極低温冷凍機。
[態様18]
態様115において、前記第2のリニアモータが、前記第1のディスプレーサを同軸で通り抜けて配置されている前記第2のディスプレーサに接続されている、極低温冷凍機。[態様19]
態様15において、前記第2のリニアモータが、前記第1のディスプレーサに隣接して配置された出力シャフトによって前記第2のディスプレーサに接続されている、極低温冷凍機。
[態様20]
態様15において、前記コントローラが、前記第1のリニアモータを制御することによって第一段の温度を制御する、極低温冷凍機。
[態様21]
態様15において、前記コントローラが、前記第一段と独立して前記第2のリニアモータを制御することによって第二段の温度を制御する、極低温冷凍機。
[態様22]
態様15において、前記コントローラが、前記第1のリニアモータと独立して前記第2のリニアモータのストロークプロファイルおよびストローク長さを可変制御することにより、第二段の温度を制御する、極低温冷凍機。
[態様23]
態様15において、さらに、振動を除去する防振装置を備える、極低温冷凍機。
[態様24]
態様23において、前記防振装置が能動型の防振装置である、極低温冷凍機。
[態様25]
態様15において、前記コントローラが、前記第1のディスプレーサまたは前記第2のディスプレーサの、ストローク長さ、ストローク速度およびストローク位相の少なくとも1つを変化させる、極低温冷凍機。
[態様26]
態様15において、前記第1のリニアモータおよび前記第2のリニアモータが電磁式のモータである、極低温冷凍機。
[態様27]
態様26において、ギフォード−マクマホン方式の二段式冷凍機である、極低温冷凍機。
[態様28]
二段の極低温冷凍機を動作させる方法であって、
少なくとも2つのディスプレーサを、互いに同一のまたは異なる冷凍シリンダ内に備え、前記それぞれのリニアモータでディスプレーサを駆動する過程と、
前記少なくとも2つのディスプレーサにバルブでガスを導入したりガスを排出したりする過程と、
前記少なくとも2つのディスプレーサの前記それぞれのリニアモータを互いに独立して制御することで温度を制御する過程と、
を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様29]
態様28において、さらに、前記二段の極低温冷凍機に由来する振動または前記二段の極低温の冷凍機に生じる振動を除去する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様30]
態様29において、さらに、前記振動を能動的に除去する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様31]
態様29において、さらに、前記振動を受動的に除去する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様32]
態様28において、さらに、少なくとも1つのディスプレーサのストロークのパラメータが別のディスプレーサと異なるように、当該少なくとも1つのディスプレーサを当該別のディスプレーサとは独立して制御する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様33]
態様28において、さらに、少なくとも1つのディスプレーサの速度が別のディスプレーサと異なるように、当該少なくとも1つのディスプレーサを当該別のディスプレーサとは独立して制御する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様34]
態様28において、さらに、少なくとも1つのディスプレーサの位相が別のディスプレーサと異なるように、当該少なくとも1つのディスプレーサを当該別のディスプレーサとは独立して制御する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様35]
態様28において、さらに、少なくとも1つのディスプレーサの往復動のパラメータを別のディスプレーサとは独立して変化させて、前記二段の温度を互いに独立して制御する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様36]
態様28において、さらに、前記2つのディスプレーサのうちの少なくとも1つのディスプレーサの位置を検出する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様37]
態様36において、さらに、前記ディスプレーサのうちの少なくとも1つのディスプレーサの位置に応答して、前記二段を互いに独立して制御する過程、を含む、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様38]
態様28において、前記冷凍機が極低温排気面を冷却する、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様39]
態様28において、前記冷凍機が半導体を冷却する、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様40]
態様28において、前記ディスプレーサが電磁式のモータによって制御される、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
[態様41]
態様28において、前記極低温の冷凍機が、ギフォード−マクマホン方式の二段式冷凍機である、二段の極低温の冷凍機の動作方法。
【符号の説明】
【0054】
130 第一段
135 第二段
10,20,110,115,210,215,310b,315b ガス制御バルブ
30,150,250 第1のディスプレーサ
140a,240a 第1のリニアモータ
40,155,255 第2のディスプレーサ
140b,240b 第2のリニアモータ
100,200,300 極低温冷凍機
50,105,205a,205b,305a,305b 冷凍シリンダ
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3