特許第5990263号(P5990263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許5990263車両に搭載されたSCR排気ガス後処理システムの監視方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990263
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】車両に搭載されたSCR排気ガス後処理システムの監視方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20160825BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20160825BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20160825BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   F01N3/20 C
   F01N3/08 B
   F02D45/00 345L
   F02D43/00 301T
   F02D43/00 301Y
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-513917(P2014-513917)
(86)(22)【出願日】2011年12月10日
(65)【公表番号】特表2014-518985(P2014-518985A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2011006251
(87)【国際公開番号】WO2012167810
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2014年2月6日
(31)【優先権主張番号】102011103699.0
(32)【優先日】2011年6月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・シャンクラ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・リヒター
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−147118(JP,A)
【文献】 特表2007−522370(JP,A)
【文献】 特開2006−177317(JP,A)
【文献】 特開2009−067091(JP,A)
【文献】 特開2010−248963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/01−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関の排気ガスに含まれる窒素酸化物の還元のためのSCR排気ガス後処理システムの監視のための方法であって、
前記車両は診断装置を備え、
前記診断装置は、前記SCR排気ガス後処理システムの還元剤消費減少によるシステムエラーの発生およびエラー除去のチェックを行い、
前記診断装置は、一定時間あたりの前記システムエラーの発生の回数および一定時間あたりの前記エラー除去の回数を検出し、
前記診断装置は、一定時間あたりの前記システムエラーの発生の回数および一定時間あたりの前記エラー除去の回数の検出結果に基づき、前記システムエラーの発生およびエラー除去が誤対応に基づくものであるか否かを検出する誤対応評価を行い、
前記システムエラーの発生が検出された場合、車両の制限駆動モードが実施されるか、車両の制限駆動モードが継続され、
前記車両の制限駆動モードにおいて、前記車両の運転性は、前記システムエラーの除去が検出されることなくあらかじめ規定された運転距離が経過した後に制限され、
前記システムエラーの除去が検出された場合、前記誤対応評価において誤対応がないと判断された場合にのみ、前記車両の運転操作の制限が解除され、
前記システムエラーの除去が検出された場合、前記誤対応評価において誤対応があると判断された場合、前記検出されたシステムエラーの除去は有効ではないとされる
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の前段による、車両に搭載されたSCR排気ガス後処理システムの監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、冷却システム、潤滑剤システム、乗員拘束システム、又はその他の安全システム及びこれに類するシステムのような、車両に搭載されているサブシステムは、多くの場合は、正常機能、換言すればシステムエラーを監視するものである。通常は、このシステムエラーは、車両の運転者に表示されて、運転者はエラーを除去することを求められる。
【0003】
このような方法は、例えば、特許文献1に示されており、この場合、内燃機関を有する車両の、排気ガスに関連したエラー探知機能は、乗車時のセンサー装置によって捕捉され、記録され、回路ユニットで評価されて、場合によっては警報ランプが点灯することで、表示されるようになっている。
【0004】
幾つかのエラーの場合には、法令上又は保証上の理由により、システムエラー除去を保証することが不可欠となっている。このことは、システムエラー除去が見かけ上であれ、また事実であれ、例えば、特に故意の方法でシステムエラーの原因が取り除かれることなく、一時的にシステムエラーの表示が停止するような、監視されるサブシステムにおける容認できない干渉が起こったとしても、やはりまた適用されるのである。そのような干渉は、許容すべきではない誤対応と見なされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第195 48 684 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、不適切なシステム誤対応を可能な限り確実に検出する、車両に搭載されたサブシステムの監視方法を提供することである。この課題は、請求項1の特徴を備えた方法によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による方法では、ある診断装置が、少なくとも車両の走行サイクルの間、監視サブシステムを、システムエラーとの関係で検査し、特に、システムエラーの発生および除去についての検査を実行する。この場合、診断装置は、システムエラーの発生及び/又は除去の検出回数に基づいて誤対応評価を行い、システムエラーの検出された発生及び/又は検出された除去が、誤対応に基づくものであるか否かの判定をする。システムエラーの発生が検出されると制限駆動モードが起動するか、又は起動した制限駆動モードが継続する。この場合、車両の運転性は、予め設定可能な走行サイクル数の推移に従って、又は予め設定可能な走行距離の推移に従って、システムエラーの除去を検出することなく制限される。
【0008】
本発明は、信頼できる誤対応検出がまず可能ではないような具体的事例における、システムエラー発生またはシステムエラー除去の検出イベントにおける知見に基づいている。これに対して、多くのシステムエラーの発生又は除去のイベントにおいて、ある一定の時間の長さの、走行距離の、又は特に連続する多くの走行サイクルの範囲内で、これらのイベントの回数を評価することによって、誤対応を高い確度を以て検出し、又は排除することができる。誤対応を判断するために、有利にはまた、統計的な方法を応用することができ、この方法は、検出されたイベントの回数を、システムエラーの発生の回数及び/又は除去に関して、評価するというものである。この場合、この回数は、絶対的な回数の意味で、即ちシステムエラーの発生及び/又は除去に関するイベントの数として、ある一定の時間の長さの、走行距離の、又は特に連続する多くの走行サイクルの範囲内で、誤対応評価のための基準として用いられる。しかしながら、また、相対的な回数を利用することができる。この相対的な回数にあっては、システムエラーの発生及び/又は除去に関する検出されたイベントの数が、他の走行サイクル、特に走行サイクルの全数又はエラー検出のされない走行サイクルに関するとみなされる。システムエラーの発生又は除去が、車両の利用者によって、信頼されない方法によって行われ、特に意図的に実行されたサブシステム内の操作が原因である場合には、誤対応があったと判断される。そのような誤対応の例を挙げれば、監視機能の又はシステム構成要素の意図的な遮断をするということがある。
【0009】
本発明によれば、予め備えられた診断装置が、少なくとも車両の走行サイクルの間、サブシステムを検査している。この場合、一個の走行サイクルの下では、特に不断の時間の長さが、エンジンの始動とその後に続くエンジンの遮断との間にあると考えられ、この時間の長さは、車両の走行駆動を包括している。車両、即ちエンジン又はサブシステムのための駆動準備体勢(点火“ON”)の状態はこの場合、好ましくは含まれている。
【0010】
システムエラーの発生又は除去の検出のために、診断装置は、車両またはエンジンの、センサーまたは作動の状態変化からの信号を検出して処理する。システムエラーの発生が検出されると、制限駆動モードが起動し、又はこのモードが既に起動している場合には継続して稼働する。制限駆動モードは、予め設定可能な走行サイクルの数の推移に従って、又は予め設定し得る走行距離の推移に従って、システムエラーの除去を検出することなく、車両の運転性に制限を掛けることを提供する。好ましくは、このことは、車両の利用者に提示されるようになっている。運転操作の制限は、例えば、エンジン性能または走行速度の制限、又はエンジンを遮断した後の新たなエンジンの起動の防止を含む。制限駆動モードが起動した場合にも、システムエラーが適正なタイミングで除去されることがない場合には、走行駆動の制限を自動的に有効にしてもよい。
【0011】
監視される車両のサブシステムには、例えば、冷媒システム、潤滑剤システム、乗客拘束システム、又はその他の安全システムがある。車両の過積載、車両ドアの自動閉鎖及びこれに類するものに対して機能検査を実行するサブシステムもまた監視される。
【0012】
本発明の具体例においては、監視されるサブシステムは、車両の内燃機関に配置された排気ガス後処理システムである。この排気ガス後処理システムは、排気ガス浄化触媒、粒子フィルター及びそれらの適切な操作をするための構成要素、例えば排気ガスセンサー、バルブ等を含む。
【0013】
本発明の特に有利な具体例は、この監視されるサブシステムが、内燃機関の排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元させるためのSCR排気ガス後処理システムであり、そして、診断装置が、SCR排気ガス後処理システムを、消費に関連したシステムエラーについて検査するものであり、このシステムエラーは、エラーの無いSCR排気ガス後処理システムに比較して、窒素酸化物還元のために提供されるSCR還元剤の消費が顕著に減少するというものである。
【0014】
典型的には、SCR排気ガス後処理システムは、いわゆるSCR触媒を含む。この触媒は、酸素が過剰な場合に、還元剤を使って、窒素酸化物の還元を触媒作用で実現するものである。この還元剤は、車両の側縁にある貯蔵容器の中に蓄えられており、窒素酸化物還元のために投与システムによってSCR触媒から上流の排気ガスに供給される。還元剤としては、典型的には、水性の尿素溶液が投入される。
しかしながら、また他の、特にアンモニアを含む還元剤、例えば固形の尿素、カルバミン酸塩、アミン、アンモニアを含む複合体、又はその類のものが、応用される。
この場合、投与システム、貯蔵容器、触媒、そして更にSCR排気ガス後処理システムの適切な操作に用いられる構成要素が、SCR排気ガス後処理システムの一部として含まれる。SCR排気ガス後処理システムの構成要素の機能は、診断装置によって、少なくとも部分的に監視又は検査される。
【0015】
還元剤の消費は、運転コストと関係している。それ故に、診断装置によって、この運転コストの回避又は減少に役立つ誤対応を検出することができる。還元剤の消費が、特定の駆動状態にとって通常である量に対して、顕著に減少する場合には、意図された又は定められた窒素酸化物の還元に実際影響しており、又はそれを妨げていることになる。この理由から、SCR排気ガスシステムにおいて認識されたエラーは認識され、そして好ましくは表示される。顕著な消費の減少は、エラーの無いSCR排気ガス後処理システムの働きによって提供される量と比較して、少なくとも20%の減少が、好ましくは少なくとも30%またはそれ以上の減少があると理解される。特に、顕著な減少は、少なくともゼロに近く減少したSCR還元剤の消費があると理解することができる。エラー除去を、ある程度確実に行おうとするためには、好ましくは同時に、エラーの検出と共に制限駆動モードが起動され、又は継続して実行されることになる。この場合、信頼できない遅延又はエラー除去の回避が結果として起きる誤対応を排除しなければならない。同様に排除し、又は検出しなければならないのは、その原因となっている顕著な還元剤消費減少なしに運転性制限へのプロセスを妨げる誤対応である。
【0016】
このために、本発明の特に有利な更なる具体例において予め備えているのは、次のことである。即ち、診断装置にとっては、記憶装置が予め備えられており、この記憶装置は、少なくとも走行サイクルにおいて判定された状態情報のための記録場所を備えている。この状態情報は、少なくとも消費に関連するシステムエラーの発生及び/又は除去、及び/又は制限駆動モードの起動化に関係しており、複数の連続した走行サイクルについての状態情報が記憶装置に記録され、少なくとも部分的に誤対応評価のために利用される。本発明により提供される状態情報のための記録場所が複数あることにより、特にシステムエラーの検出又は除去の回数が信頼性を以て検出され、評価され、そしてそれによって、誤対応が特に信頼性を以て認識されるのである。有利には、複数の走行サイクルにわたって記録された状態情報の統計的な評価もまた、可能となる。
【0017】
本発明の他の具体例においては、制限駆動モードが起動した場合に、正常車両駆動のために許可されている残りのエンジン起動のプロセスの数、又は残りのその他の走行距離の大きさが、予め設定可能な開始値から始まって、減少させられる。この場合、正常車両駆動のために許可されたエンジン開始のプロセスのもとでは、特に、次のようなエンジンの開始となり、そのエンジンの開始は、例を挙げると、その後に続く最低走行距離又は最低エンジン駆動時間を含む、予め与えられた境界条件を満たす。これによって、走行駆動の早めの制限を回避することができ、車両利用者が実際に間違うことがなくなる。制限駆動モードの起動及び進行は、好適には、運転者に表示される。また、運転者は、一方では、検出されたシステムエラーの存在について、他方では、そのエラーが除去されていないことの結果について、知らされる。
【0018】
エンジン開始のプロセスの数又は残りの走行距離がゼロにまで減少した場合には、車両利用者が、正常な状態で新たにエンジン開始を図ることも、新たな走行を開始することも、もはや不可能となる。しかし、特にとりわけ、このための認可を受けたサービスマンのために、好適には次のものが提供される。即ち、診断装置へのアクセスによって、一回以上のエンジン開始、又は特に予め設定可能な走行距離を以て走行することを許可する選択肢である。この方法によって、柔軟に、緊急事態に対応して管理をすることができる。システムエラーが、許可された残りの開始のプロセス、又は残りの走行距離がゼロにまで減少する前の適切なタイミングで除去された場合には、一般的には、制限駆動モードは、診断装置によって自動的に解除され、開始値は、予め設定可能な開始値にリセットされる。
【0019】
他方で、本発明の他の具体例においては、正常駆動にあって、システムエラーの除去が検出された場合には、起動した制限駆動モードの解除が、誤対応が存在しないという結果になった場合にのみ許可される。代替又は追加の手段として、検出されたエラー除去は、誤対応評価の結果、誤対応が存在するとなった場合には、無効とされる。これによって保証されることは、システム監視が、特に繰り返された誤対応又は連続した誤対応によっては、無効にはならないということである。この場合、正常駆動とは、通常の、車両の利用者のための車両駆動である。これには、好適には、認可されたサービスマンによるシステム構成要素の交換または置き換え、また、技術的な故障により妨げられる正常な運転性の回復は含まれない。
【0020】
特に安全マージンを可能にするために、また、間違った解釈を又は解決への間違った影響を、運転性の制限に関して、出来るだけ排除するために、本発明の他の具体例においては、次のことが提供される。即ち、制限駆動モードの起動及び/又は進行及び/又は解除に関連した検査は、消費に関連したシステムエラーに応じ、予め設定可能な次の値を持ち、有効と評価された走行サイクルの存在を、一個の走行サイクルにおいて及び/又は二個の走行サイクルの間で、必要とする。ここで、予め設定可能な値とは、少なくとも最低走行時間及び/又は最低走行距離及び/又は車両速度及び/又はエンジン静止時間のための値である。この場合、更に付加的な条件が定義され、照会されなければならず、この条件は、有効と評価された走行サイクルが存在しなければならない、というものである。一個の走行サイクルが有効ではないと評価される限り、本発明のこの具体例によれば、特に、残っている開始のプロセスの数又は残っているその他の走行距離の数の減少は起こらない。
【0021】
誤対応に関係するシステムエラーの発生及び/又は除去の検出のための回数の評価のために、本発明の他の具体例においては、次のことが予め考えられている。即ち、診断装置の記憶装置に記録された状態情報が、有効な走行サイクルの存在との関係で及び/又は残っている走行サイクルの大多数の制限駆動モードの起動化との関係で、誤対応評価のために、利用されるのである。このようにして、誤対応に関係する決定または評価は統計的に実証される。
【0022】
本発明の他の具体例においては、誤対応評価のために、識別数が提供される。この識別数とは、少なくとも、有効な走行サイクルそれぞれについて再判定され、そして、識別数が予め設定可能な限界値に達するか又はこれを超えた場合には、誤対応があったとみなされる。これによって、誤対応評価の一層改善された更なる信頼性が可能となる。この場合、本発明の他の具体例においては、識別数が、システムエラーの発生及び除去に関して、検出されたイベントの数と関係がある場合には、特に有利となる。これによって特に、監視されたサブシステムへの許可されていないアクセスに関して繰り返される改ざんを信頼性を以て検出することが可能となる。
【0023】
この関係において、次の場合には、信頼性の一層の改善が可能となる。それは、本発明の他の具体例においては、少なくとも有効な走行サイクルのそれぞれについて判定された識別数が、診断装置の記憶装置の、特定の走行サイクルと対応付けられた記録場所に記録され、そして、特定の走行サイクルに対応付けられた識別数を判定するために、先行する走行サイクルの識別数の値が利用される場合である。
識別数を、継続中、特に有効な走行サイクルを更新することは、目的に適っており、これによって、意図的なシステム干渉を、偶然又は適切な状態変更と、信頼性を以て判別することができる。
【0024】
本発明の更なる利点、特徴及び詳細については、以下の好ましい典型的な具体例の説明により明らかにする。この説明における上述の特徴及び特徴の組合せ、また後述の特徴及び特徴の組合せは、その都度述べられる組合せにおいてのみならず、その他の組合せ又は単独でも本発明の要旨を逸脱することなく応用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
有利な手順については、表1に記載の診断装置のエラー記憶装置に登録される状態情報と合わせて説明される。この場合、一般性の制限を受けることなく、次のことが仮定される。即ち、診断装置は、車両内燃機関のSCR排気ガス後処理システムを、特にシステムエラーとの関係で検査するということ、そのシステムエラーは、窒素酸化物還元のために提供された尿素溶液の消費量の顕著な減少を結果としてもたらすということである。そのようなシステムエラーは、例えば、尿素溶液投与のための投与モジュール又は投与制御装置のエネルギー供給を中断する場合がある。
【0026】
【表1】
【0027】
表1は、専ら例として、特に多数の記憶場所を備えている診断装置のメモリへの記録部分を示している。この場合、最初の一行が直接連続する走行サイクルFの数に割り当てられており、この数は、ここでは連続した番号によって付番されている。第二行では、特定の走行サイクルFに対するエラービットBが登録され、このエラービットBは、一個のシステムエラーが存在するかどうか、を示している。第三行では、特定の走行サイクルFに対するモードビットMが登録され、このモードビットMは、制限駆動モードが起動しているかどうかを示すものであり、この場合、この制限駆動モードは、決定されたエラービットBをリセットすることのない正常な走行駆動のために、許可されたエンジン開始の残数を制限する。
【0028】
第四行では、関連する走行サイクルFの推移に従って更に実行されることのできる残りの開始の数が登録される。最後の第五行では、誤対応識別数kが登録され、この識別数は、実際の走行サイクルFのために、診断装置によって実行される誤対応評価の結果を、量的に示すものである。
【0029】
エンジン開始又は電気的動作電圧の準備状態(点火“ON”)により車両利用者によって導入され、そして、エンジンを切ることによって、或いは電気的動作電圧(点火“OFF”)を切ることによって終了する走行サイクルF=n及びF=n+1においては、システムエラーの発生は認められなかった。それ故、ここでは各々の場合、エラービットBはゼロを示している。それ故、エラー通知又は制限駆動モードの起動のための契機はない。従って、モードビットMについてはゼロの値が登録され、そして、走行サイクルF=n及びF=n+1における車両については、その都度、許可された未来の開始プロセスの予め設定可能な同じだけの数Rが用意されている。この場合、障害表示は非活性化されたままである。
【0030】
走行サイクルF=n+2においては、システムエラーが検出され、そして、その結果、エラービットBが設定され、制限駆動モードが起動し、モードビットMが設定される。また、エラー除去が促される車両利用者に、エンジン開始の残数、またその数によって制限駆動モードの起動表示される次の走行サイクルFにおいてエラー除去が検出されないのであれば、そしてそれ故に、エラービットB及びモードビットMが設定されたままであれば、継続している走行サイクルFのための許可されたエンジン開始の数は、走行サイクルF=n+m+1において、開始値Rから始まって数がゼロに達するまで減少される。
【0031】
x番目の走行サイクルFにおける誤対応識別数kに関しては、少なくとも、システムエラーの発生及び除去の検出回数の従属変数として定義され、したがって、好ましくは、設定されたエラービットB又はモードビットMの登録数の従属変数として定義される。特に、各々の先行している走行サイクルFにおける誤対応識別数kx−1の値、及び割当てられた走行サイクルFの数も、同様に考慮される。従って、誤対応識別数kについては、特に次の一般的な形式的従属変数が適用される。
kx=f(kx−1,F,Σ(M),Σ(B))
【0032】
ここで、Fは、誤対応評価のために利用される走行サイクルの数を表し、Σ(M)は、設定されたモードビットMを持つ、割り当てられた記録場所の数を表し、Σ(B)は、設定されたエラービットBを持つ、割り当てられた記録場所の数を表す。また、kx−1,F,Σ(M),Σ(B)の一個又はそれ以上の変数を考慮せずに、或いは、更なる、ここでは特に詳述しない状態登録を変数として考慮することができる。様々な関数の従属変数f()は、特に考慮された変数kx−1,F,Σ(M),Σ(B)の結合のために提供される。これらの変数は、特にシステムエラーの発生及び/又は除去の検出回数の評価に基づき、従って、これらの変数は、設定されたエラービットB又はモードビットMの登録回数を考慮している。これは、変数Σ(M)またはその関連する変数の誤対応識別数kの従属変数によって、目的を達する。誤対応識別数kが、予め設定可能な又は予め設定された限界値に達するか又はこれを超えた場合には、誤対応があったと見なされる。これによって、有利な方法で、次の検出が利用される。即ち、比較的高い数、またはエラー登録回数の場合、通常の技術的エラーについては比較的起こることが少ないと推定されるのに対して、容認できない誤対応的な操作については、むしろ起こり得る可能性が高くなる。
【0033】
可能なエンジン開始プロセスの数がゼロにまで減少した走行サイクルF=n+m+1に続いて、様々な更なる処理が提供される。その処理は、誤対応識別数kが、この走行サイクルの間又はその前に、誤対応検出のための臨界的な限界値に既に到達していたかどうか、又は超えていたかどうかにかかっている。いずれにせよ、走行サイクルF=n+m+1直後にエンジンを開始するという試みは、少なくとも、エラー除去が検出されなかった場合、又はエラービットBが設定されている場合には、失敗したままだということである。例えば、外部から実行される認可された診断装置へのサービス出張によって、開始値Rの残りをリセットすることができ、これによって、少なくともRは、エンジン開始プロセスを再び可能とする。また、特に、継続する走行サイクルの間に再度エラーが検出される場合、比較的小さな開始値R’<Rもまたリセットすることができる。そのような、特に例外の場合又は緊急事態のために用意されている認可されたサービス出張によって、エラービットがまたゼロにリセットされることが許可され得る。そのようなサービス出張は、この目的のために認可されたサービスマンによることが望ましい。
【0034】
走行サイクルF=n+m+1において、誤対応識別数kが、誤対応検出のために臨界的な限界値に既に達したか、又はこれを超えた場合には、Rと比較して減少する開始値R’<Rのみに対して、又は更に減少した開始値R’’<R’に対して、診断装置において特に認可されたサービス介入により、残りの開始のリセットを許可することが望ましい。特に、ゼロに減少した残りの開始値の前に、誤対応識別数kが、臨界的な限界値に既に達したか、又はこれを超えたかした場合に、エラー除去が検出され、エラービットBがリセットされることも望ましい。
【0035】
制限駆動モードが起動した場合に、残りの開始値がゼロに減少する前にエラー除去が検出され、場合によっては、エラービットBがリセットされ、そして、誤対応識別数kが、臨界的限界値に達しないか、又はこれを超えない場合には、残りの開始値が開始値Rに対してリセットされモードビットMがリセットされる。望ましくは、誤対応識別数kをリセットせず、更新することであり、それによって、以後の状態変化を、履歴を考慮に入れて、より信頼性を以て判断することができる。
【0036】
記憶装置は、更なる状態情報のために更なるメモリを備えることができるということは自明であり、これについては特に詳述しない。特に、状態情報のための記録セルを、実際の走行サイクル及び/又は実行されたシステム検査等の有効性評価との関係で用いることができる。これらの記録セルは、誤対応評価のために、また誤対応識別数kの判定に用いることができる。
【0037】
更に自明であることは、ゼロに減少した残りの開始値の結果として認可されたサービスの間、システム構成要素の分析が、技術的な原因による事実としてのエラーに関して行われるということである。エラーの技術的な原因が確定する場合には、望ましくは認可されたサービスプロセスに則って、誤対応評価のために利用される診断登録のリセットが行われる。この場合、誤対応識別数kのリセットが行われることもまた望ましい。