【文献】
石原産業株式会社,安全データシート(ランマンフロアブル),[online],2001年 5月 8日,[平成28年4月12日検索]、インターネット,URL,http://ibj.iskweb.co.jp/product/index.cgi?c=zoom&pk=69
【文献】
環境省 ,水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準の設定に関する資料(イミダクロプリド),水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準について,[online],2008年11月25日,[2016年4月12日検索]、インターネット,URL,http://www.env.go.jp/water/sui-kaitei/kijun.html#list04-ta
【文献】
安全データシート(チオファネートメチル),[online],2009年 3月30日,[平成28年4月12日検索]、インターネット,URL,http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/23564-05-8.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
顆粒状水和剤は、水に添加したときに短時間で顆粒が崩壊し、且つ水に均一に分散することが求められる。従来の顆粒状水和剤は製造直後において崩壊性および分散性に優れていても、長期間保存した後において崩壊性および分散性が低下することがあった。
本発明の目的は、初期活性と残効活性がいずれも高く、長期間保存した後においても優れた崩壊性と分散性を保つ顆粒状水和剤及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の態様の本発明を完成するに至った。
【0007】
[
1]体積基準累積粒度分布における50%粒子径が0.1〜5μmである農薬活性成分の微粉末と、
体積基準累積粒度分布における50%粒子径が2〜20μmである上記農薬活性成分と同一の農薬活性成分の粗粉末と、
担体と
を含有する凝集塊からなる顆粒状水和剤であって、
前記担体は低吸湿水溶性粉末のみからなり、
前記低吸湿水溶性粉末が、吸湿によって潮解、風解、あるいは固化しない水溶性化合物からなる粉末であり、
前記低吸湿水溶性粉末が、硫酸アンモニウムまたは硫酸カリウムの粉末であ
り、
前記農薬活性成分が、{6−{[(Z)−(1−メチル−1H−5−テトラゾリル)フェニルメチレン]アミノオキシメチル}−2−ピリジル}カルバミン酸tert−ブチルである顆粒状水和剤。
【0008】
[
2]一種の農薬活性成分を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が0.1〜5μmである微粉末を得、
上記農薬活性成分と同一の農薬活性成分を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が2〜20μmである粗粉末を得、
前記微粉末と前記粗粉末
と担体とを含有する混合物を得、
次いで該混合物を造粒することを含む、[
1]に記載の顆粒状水和剤の製造方法
であって、前記担体は低吸湿水溶性粉末のみからなる製造方法。
【0009】
[
3]一種の農薬活性成分および低吸湿水溶性粉末を混合し、該混合物を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が0.1〜5μmである混合微粉末を得、
上記農薬活性成分と同一の農薬活性成分を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が2〜20μmである粗粉末を得、
前記混合微粉末と前記粗粉末とを含有する混合物を得、
次いで該混合物を造粒することを含む、[
1]に記載の顆粒状水和剤の製造方法。
【0010】
[
4]一種の農薬活性成分を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が0.1〜5μmである微粉末を得、
上記農薬活性成分と同一の農薬活性成分および低吸湿水溶性粉末を混合し、該混合物を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が2〜20μmである混合粗粉末を得、
前記微粉末と前記混合粗粉末とを含有する混合物を得、
次いで該混合物を造粒することを含む、[
1]に記載の顆粒状水和剤の製造方法。
【0011】
[
5]一種の農薬活性成分および低吸湿水溶性粉末を混合し、該混合物を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が0.1〜5μmである混合微粉末を得、
上記農薬活性成分と同一の農薬活性成分および低吸湿水溶性粉末を混合し、該混合物を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が2〜20μmである混合粗粉末を得、
前記混合微粉末と前記混合粗粉末とを含有する混合物を得、
次いで該混合物を造粒することを含む、[
1]に記載の顆粒状水和剤の製造方法。
【0012】
[
6]造粒を押出造粒法で行う[
2]〜[
5]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[
7]造粒の後に解砕することをさらに含む[
2]〜[
6]のいずれかひとつに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の顆粒状水和剤は、初期活性と残効活性とがいずれも高く、長期保存後にも水中において優れた崩壊性と分散性を保つ。本発明の製造方法によれば、簡便な粒径管理によって、効率よく、本発明に係る顆粒状水和剤を製造することができる。本発明の顆粒状水和剤が含有している低吸湿水溶性微粉末は、人体に安全であり、特に硫酸アンモニウムや硫酸カリウムは、肥料として機能することが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る顆粒状水和剤は、一種の農薬活性成分粉末と担体とを含有する凝集塊からなるものである。
【0015】
本発明に用いられる担体は低吸湿水溶性粉末のみからなるものである。低吸湿水溶性粉末は、吸湿によって潮解、風解、あるいは固化しない水溶性化合物からなる粉末であれば特に制限されない。低吸湿水溶性粉末としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸カリウムおよび炭酸水素カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つからなる粉末が好ましく、人体に安全であり且つ肥料としても機能するという観点から、硫酸アンモニウムおよび硫酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つからなる粉末がより好ましい。
【0016】
本発明の顆粒状水和剤に含有する低吸湿水溶性粉末の量は、好ましくは10〜99質量%、より好ましくは30〜90質量%、さらに好ましくは60〜80質量%である。
低吸湿水溶性粉末の粒度は特に制限されない。低吸湿水溶性粉末の体積基準累積粒度分布における50%粒子径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。なお、後述するように低吸湿水溶性粉末を農薬活性成分に混ぜ合わせ、その混合物を粉砕する場合には、後述する粒度に調整される。
【0017】
本発明に用いられる農薬活性成分粉末は、特に限定されるものではないが、その融点が好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上である。また農薬活性成分粉末は、水に難溶であることが好ましく、具体的には、20℃における水に対する溶解度が好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。
【0018】
本発明に好ましく用いられる農薬活性成分として、式(I)
【化3】
[式(I)中、Xは、水素原子、C1〜6アルキル基、C1〜6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはC1〜6アルキルスルホニル基を表す。
YはC1〜6アルキル基を表す。
Zはアミノ基または−NHC(=O)−Qで示される基を表す。
Qは無置換の若しくは置換基を有するC1〜8アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜8アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜8アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC3〜6シクロアルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜8アルコキシ基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜8アルケニルオキシ基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜8アルキニルオキシ基または無置換の若しくは置換基を有するC3〜6シクロアルキルオキシ基を表す。
Rは水素原子またはハロゲン原子を表す。]
で表される化合物またはその塩が挙げられる。該化合物またはその塩は、農薬活性が優れており、また乾式粉砕および湿式粉砕のいずれかの方法によって所望の粒度に調整することができる。
【0019】
〔 X 〕
式(I)中、Xは、水素原子、C1〜6アルキル基、C1〜6アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはC1〜6アルキルスルホニル基を表す。
【0020】
Xにおける、C1〜6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
【0021】
Xにおける、C1〜6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0022】
Xにおける、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
Xにおける、C1〜6アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、i−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、s−ブチルスルホニル基、i−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基等が挙げられる。
これらのうち、Xは、水素原子またはハロゲン原子が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0023】
〔 Y 〕
前記式(I)中、Yは、C1〜6アルキル基を表す。
YにおけるC1〜6アルキル基としては、XにおけるC1〜6アルキル基として記述したものと同じものを挙げることができる。
これらのうち、Yは、メチル基が好ましい。
【0024】
〔 Z 〕
前記式(I)中、Zはアミノ基または−NHC(=O)−Qで示される基を表す。
Qは無置換の若しくは置換基を有するC1〜8アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜8アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜8アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC3〜6シクロアルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜8アルコキシ基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜8アルケニルオキシ基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜8アルキニルオキシ基または無置換の若しくは置換基を有するC3〜6シクロアルキルオキシ基を表す。
【0025】
QにおけるC1〜8アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
【0026】
QにおけるC2〜8アルケニル基としては、アリル基、i−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。
【0027】
QにおけるC2〜8アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−メチル−2−ブチニル基等が挙げられる。
【0028】
QにおけるC3〜6シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0029】
QにおけるC1〜8アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、1,1−ジメチル−n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、i−ペンチルオキシ基、1−メチルブトキシ基、2−メチルブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0030】
QにおけるC2〜8アルケニルオキシ基としては、アリルオキシ基、i−プロペニルオキシ基、1−ブテニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、2−ペンテニルオキシ基、5−ヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0031】
QにおけるC2〜8アルキニルオキシ基としては、エチニルオキシ基、1−プロピニルオキシ基、プロパルギルオキシ基、1−ブチニルオキシ基、2−ブチニルオキシ基、3−ブチニルオキシ基、1−メチル−2−プロピニルオキシ基、2−メチル−3−ブチニルオキシ基、1−ペンチニルオキシ基、1−メチル−2−ブチニルオキシ基等が挙げられる。
【0032】
QにおけるC3〜6シクロアルキルオキシ基としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0033】
QにおけるC1〜8アルキル基、C2〜8アルケニル基、C2〜8アルキニル基、C3〜6シクロアルキル基、C1〜8アルコキシ基、C2〜8アルケニルオキシ基、C2〜8アルキニルオキシ基、C3〜6シクロアルキルオキシ基は置換基を有していてもよい。置換基としては、化学的に許容されるものであれば特に限定されない。例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子; メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基等のC1〜6アルコキシ基; メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、i−プロピルスルホニル基等のC1〜6アルキルスルホニル基; フェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するフェニル基; ニトロ基;シアノ基;アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等の無置換若しくは置換基を有するアミノ基;等が挙げられる。
【0034】
これらのうち、Qは、無置換のC1〜8アルコキシ基、無置換のC2〜8アルケニルオキシ基または無置換のC2〜8アルキニルオキシ基が好ましい。
【0035】
〔 R 〕
前記式(I)中、Rは、水素原子;または、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子:を表す。
これらのうち、Rは、水素原子が好ましい。
【0036】
前記式(I)で表される化合物の塩としては、農園芸学上許容される塩であれば、特に制限されない。例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩;酢酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩等の有機酸の塩;等が挙げられる。
【0037】
前記式(I)で表される化合物には、炭素−窒素二重結合に基づく、(E)体および(Z)体の立体異性体が存在する。これら2つの立体異性体およびこれらの混合物はいずれも本発明に含まれる。通常、合成物は、(Z)体のみ、もしくは(E)体と(Z)体との混合物として得られる。(E)体と(Z)体との混合物を、シリカゲルカラムクロマグラフィー等の公知の手法により分離精製することにより、2つの異性体をそれぞれ単離することができる。
【0038】
本発明に用いられる式(I)で表される化合物およびその塩においては、一般的に、(Z)体が(E)体よりも植物病害の防除効果に優れる。しかしながら、(Z)体は自然環境下で、光等の作用により、その一部が(E)体に変化し、(E)体と(Z)体との混合物として、ある一定比率で安定化する傾向にあるので、両方の化合物およびそれらの混合物も有用である。なお、(E)体と(Z)体との安定比率は、各々の化合物により異なるため、一概に特定することはできない。
【0039】
上記の化合物またはその塩のうち、特に好ましく用いられる農薬活性成分としては、{6−{[(Z)−(1−メチル−1H−5−テトラゾリル)フェニルメチレン]アミノオキシメチル}−2−ピリジル}カルバミン酸tert−ブチルが挙げられる。
【0040】
本発明の顆粒状水和剤に含有する農薬活性成分粉末の量は、農薬活性成分の種類によって異なるが、好ましくは0.02〜90質量%、より好ましくは0.02〜70質量%、さらに好ましくは1〜30質量%である。
【0041】
本発明の顆粒状水和剤に含有する低吸湿水溶性粉末と農薬活性成分粉末との合計量は、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%である。
【0042】
一種の農薬活性成分粉末は、体積基準粒度分布において単一のまたは複数のピークを有する。一種の農薬活性成分粉末は、例えば、異なる粒径分布を有する同一種の農薬活性成分粉末を混ぜ合わせることによって得られる。体積基準累積粒度分布における50%粒子径の差が小さい、少なくとも2つの同一種農薬成分粉末を混ぜ合わせることにより、体積基準粒度分布において単一のピークを有する一種の農薬活性成分粉末が得られやすい。また、それぞれの粒度分布範囲が広い、少なくとも2つの同一種農薬成分粉末を混ぜ合わせることにより、体積基準粒度分布において単一のピークを有する一種の農薬活性成分粉末が得られやすい。一方、体積基準累積粒度分布における50%粒子径の差が大きい、少なくとも2つの同一種農薬成分粉末を混ぜ合わせることにより、体積基準粒度分布において複数のピークを有する一種の農薬活性成分粉末が得られやすい。また、それぞれの粒度分布範囲が狭い、少なくとも2つの同一種農薬成分粉末を混ぜ合わせることにより、体積基準粒度分布において複数のピークを有する一種の農薬活性成分粉末が得られやすい。
【0043】
本発明の好ましい実施形態に係る顆粒状水和剤は、農薬活性成分の微粉末と、該農薬活性成分と同一の農薬活性成分の粗粉末と、低吸湿水溶性粉末のみからなる担体とを含有する凝集塊からなるものである。なお、粗粉末は微粉末よりも50%粒子径が相対的に大きいものである。
農薬活性成分微粉末は、体積基準累積粒度分布における50%粒子径が好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.5〜3μm、更に好ましくは0.6〜2μmである。
農薬活性成分粗粉末は、体積基準累積粒度分布における50%粒子径が好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜10μm、更に好ましくは3.5〜7μmである。
【0044】
農薬活性成分粉末の粒度分布は、粉砕または粉砕と分級との組み合わせによって調整することができる。粉砕方式には、乾式粉砕、湿式粉砕などがある。乾式粉砕は、乾燥状態において固体に外力を加えて粒度を小さくする操作である。乾式粉砕機としては、ハンマーミル、ピン式粉砕機、衝撃式粉砕機、ローラ式粉砕機、ジェットミルなどが挙げられる。ジェットミルには粉砕機能と分級機能とを兼ね備えたものがあり、本発明においては好ましく用いられる。湿式粉砕は、ペースト状態またはスラリー状態において固体に外力を加えて粒度を小さくする操作である。湿式粉砕機としては、ボールミル、ビーズミルなどのメディア式粉砕機が挙げられる。粉砕機は求められる粒度に応じて適宜選択することができる。粗粉末は一般に乾式粉砕によって得ることができる。微粉末は一般に乾式粉砕または湿式粉砕によって得ることができる。
【0045】
本発明に係る顆粒状水和剤は、体積基準粒度分布において単一のまたは複数のピークを有する一種の農薬活性成分粉末と低吸湿水溶性粉末のみからなる担体とを含有する混合物を造粒することを含む方法によって得ることができる。造粒はその手法において特に制限されないが、押出造粒法によって行うことが好ましい。
【0046】
押出造粒法は、前記混合物を混練し、所定の大きさの穿孔に混練された混合物を通過させてストランド状に成形し、必要に応じて該ストランドをカッターで所定の大きさに切断し、乾燥させることを含む方法である。穿孔の直径は好ましくは0.5〜2.0μmである。穿孔は一つであってもよいし、二つ以上であってもよい。
また、農薬活性成分およびその他の成分の物理的あるいは化学的性質に応じて、その他の造粒法を用いることもできる。他の造粒法としては、流動層造粒法、撹拌造粒法、スプレードライヤー法などを例示することができる。
【0047】
流動層造粒法は、乾式粉砕した農薬活性成分を含有する前記混合物を気流中に浮遊流動させながら、結合剤等を含有する水溶液または粉砕した農薬活性成分を含有してもよいスラリー状混合物を噴霧することによって造粒する方法である。
撹拌造粒法は、乾式粉砕した農薬含有成分を含有する前記混合物を撹拌しながら、結合剤等を含有する水溶液または粉砕した農薬活性成分を含有してもよいスラリー状混合物を噴霧することによって造粒する方法である。
スプレードライヤー法は、前記混合物を水に分散させ、必要に応じて高温とした気流中に噴霧して乾燥させることによって造粒する方法である。
【0048】
本発明に係る好適な顆粒状水和剤の製造方法としては、以下のような形態の方法が挙げられる。
【0049】
第一実施形態に係る製造方法は、一種の農薬活性成分を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が0.1〜5μmである微粉末A1を得、上記農薬活性成分と同一の農薬活性成分を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が2〜20μmである粗粉末A2を得、微粉末A1と粗粉末A2と低吸湿水溶性粉末のみからなる担体とを含有する混合物Aを得、次いで該混合物Aを造粒することを含むものである。混合物Aは、微粉末A1と粗粉末A2と低吸湿水溶性粉末のみからなる担体とを所定の質量比で順不同に混ぜ合わせることによって得ることができる。なお、粗粉末A2は微粉末A1よりも50%粒子径が相対的に大きいものである。
【0050】
第二実施形態に係る製造方法は、一種の農薬活性成分および低吸湿水溶性粉末を混合し、該混合物を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が0.1〜5μmである混合微粉末B1を得、上記農薬活性成分と同一の農薬活性成分を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が2〜20μmである粗粉末A2を得、混合微粉末B1と粗粉末A2を含有する混合物Bを得、次いで該混合物Bを造粒することを含むものである。混合物Bは、混合微粉末B1と、粗粉末A2と、必要に応じて第一実施形態における微粉末A1および/または低吸湿水溶性粉末のみからなる担体とを所定の質量比で順不同に混ぜ合わせることによって得ることができる。混合微粉末B1に含有する低吸湿水溶性粉末の量は好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。なお、粗粉末A2は混合微粉末B1よりも50%粒子径が相対的に大きいものである。
【0051】
第三実施形態に係る製造方法は、一種の農薬活性成分を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が0.1〜5μmである微粉末A1を得、上記農薬活性成分と同一の農薬活性成分および低吸湿水溶性粉末を混合し、該混合物を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が2〜20μmである混合粗粉末B2を得、微粉末A1と混合粗粉末B2とを含有する混合物Cを得、次いで該混合物Cを造粒することを含むものである。混合物Cは、微粉末A1と、混合粗粉末B2と、必要に応じて第一実施形態もしくは第二実施形態における粗粉末A2および/または低吸湿水溶性粉末のみからなる担体とを所定の質量比で順不同に混ぜ合わせることによって得ることができる。混合粗粉末B2に含有する低吸湿水溶性粉末の量は好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。なお、混合粗粉末B2は微粉末A1よりも50%粒子径が相対的に大きいものである。
【0052】
第四実施形態に係る製造方法は、一種の農薬活性成分および低吸湿水溶性粉末を混合し、該混合物を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が0.1〜5μmである混合微粉末B1を得、上記農薬活性成分と同一の農薬活性成分および低吸湿水溶性粉末を混合し、該混合物を粉砕して体積基準累積粒度分布における50%粒子径が2〜20μmである混合粗粉末B2を得、混合微粉末B1と混合粗粉末B2とを含有する混合物Dを得、次いで該混合物Dを造粒することを含むものである。混合物Dは、混合微粉末B1と、混合粗粉末B2と、必要に応じて第一実施形態もしくは第三実施形態における微粉末A1、第一実施形態もしくは第二実施形態における粗粉末A2および/または低吸湿水溶性粉末のみからなる担体とを所定の質量比で順不同に混ぜ合わせることによって得ることができる。混合微粉末B1および/または混合粗粉末B2に含有する低吸湿水溶性粉末の量は、それぞれ、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。なお、混合粗粉末B2は混合微粉末B1よりも50%粒子径が相対的に大きいものである。
【0053】
各粉末の混合はニーダーなどの混合機または二軸押出機などのような混練機を用いて行うことができる。
前記製造方法の各段階における混合物には、分散補助剤、消泡剤、水などが必要に応じて配合されていてもよい。
【0054】
湿式粉砕で粉末を調製する場合に使用される分散補助剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのブロックコポリマー、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンが付加したアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンが付加した脂肪族アミン、ポリオキシエチレンが付加した脂肪族アルコール、ポリオキシエチレンが付加したソルビタンモノオレエートあるいはソルビタントリオレエート等のツイーン系界面活性剤、ソルビタンモノオレエートあるいはソルビタントリオレエート等のスパン系界面活性剤、ポリオキシエチレンが付加したヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンが付加したトリあるいはジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンが付加したジスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンが付加したアルコールエーテル、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、フェノールスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸の共重合体、ポリカルボン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組あわせて用いることができる。
【0055】
乾式粉砕で粉末を調製する場合に使用される分散補助剤としては、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム及びアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、フェノールスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸の共重合体、ポリカルボン酸ナトリウム、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。顆粒状水和剤に含有させることができる分散補助剤の量は好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0056】
消泡剤を使用すると、湿式粉砕時の泡立ちや、水和剤を水で希釈する時の泡立ちを少なくすることができる。消泡剤としては、シリコン系の界面活性剤、高級脂肪酸のナトリウム塩やカルシウム塩、アセチレン系の界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。顆粒状水和剤に含有させることができる消泡剤の量は好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0057】
また、本発明に係る製造方法には、造粒工程の後に造粒物を解砕することをさらに含んでもよい。解砕によって所定の顆粒径に整粒することができる。解砕は、通常、乾式粉砕機によって行われる。本発明に係る顆粒状水和剤は、農薬活性成分の種類、希釈方法等に応じて、その粒径及び形状を任意に変更することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜に変更を加えて実施することが勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下の実施例及び比較例において「部」は質量部を表す。また、粒度分布は、水中に懸濁させた状態で、光散乱式測定機を用いて測定した。
【0059】
実施例1
3インチウルマックス(4/3kg;日曹エンジニアリング社製)を用いて、農薬活性成分である{6−{[(Z)−(1−メチル−1H−5−テトラゾリル)フェニルメチレン]アミノオキシメチル}−2−ピリジル}カルバミン酸tert−ブチル(以下、原体と表記する。)100gを粉砕して50%粒子径1.48μmの微粉末を得た。
別に、ピンミル(18000rpm×3回;ツカサ工業社製)を用いて、原体100gを粉砕して50%粒子径3.98μmの粗粉末を得た。
微粉末10.5部、粗粉末0.5部、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物2.5部、リグニンスルホン酸金属塩1.0部、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩0.5部、及び低吸湿水溶性粉末として大きくても20μmの硫酸アンモニウム75.0部を混合した。該混合物に水10.4部を加え、次いでニーダー(PAUDAL製)で混練した。該混練物をバスケットリューザー(不二パウダル(株)製)で直径0.7mmに成形して造粒湿品を得た。造粒湿品を50℃の流動層乾燥機にて20分間乾燥させ、振動篩機((株)ダルトン製、マイクロシフター、303H型)を用いて粒度範囲500〜1400μmに整粒して、顆粒状水和剤を得た。
【0060】
実施例2
硫酸アンモニウム75.0部を硫酸カリウム75.0部に替えた以外は実施例1と同じ手法にて、顆粒状水和剤を製造した。
【0061】
実施例3
原体4g、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物0.525g、リグニンスルホン酸金属塩0.2g、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩0.1g、及びシリコン系消泡剤0.1gを混ぜ合わせた。これに蒸留水5.25gを加えて均一に混ぜ合わせた。該混合物を、直径0.71〜1.00mmのユニビーズを入れた遊星ミルで湿式粉砕して50%粒子径0.80μmの微粉末を得た。
ピンミル(18000rpm×3回)を用いて、原体100gを乾式粉砕して50%粒子径4.04μmの粗粉末を得た。
微粉末10.5部、粗粉末26部、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物1.25部、リグニンスルホン酸金属塩0.5部、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩0.25部、及び低吸湿水溶性粉末として大きくても20μmの硫酸アンモニウム75.0部を混合し、ベンチ・ニーダー(入江商会(株)製))で混練した。該混練物をミクロ形顆粒製造機(筒井理化学器械(株)製)で直径0.7mmに成形して造粒湿品を得た。造粒湿品を50℃の流動層乾燥機で20分間乾燥させて顆粒を得た。該顆粒を卓上用ミル(FUJIELECTRIC、ニュースピードミル、TYPE RCo480−2e)に投入し、解砕した。その後、振動篩い機((株)ダルトン、マイクロシフター、303H型)を用いて顆粒径範囲を105〜710μmに整粒して、顆粒状水和剤を得た。
【0062】
比較例1
3インチウルマックス(4/3kg;日曹エンジニアリング社製)を用いて、原体100gを粉砕して50%粒子径1.13μmの微粉末を得た。
別に、ピンミル(18000rpm×3回;ツカサ工業社製)を用いて、原体100gを粉砕して50%粒子径4.00μmの粗粉末を得た。
微粉末10.2部、粗粉末10.2部、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物2.5部、ポリカルボン酸金属塩2.5部、ラウリル硫酸ナトリウム0.5部、尿素7.5部、及び大きくても20μmの無水硫酸ナトリウム66.6部を混合した。無水硫酸ナトリウムは脱水剤などとして使用される高吸湿水溶性物質である。該混合物に水14.4部を加え、ベンチ・ニーダーで混練した。該混練物をミクロ形顆粒製造機で直径0.7mmに成形して造粒湿品を得た。造粒湿品を50℃の流動層乾燥機にて20分間乾燥させ、振動篩機((株)ダルトン製、マイクロシフター、303H型)を用いて粒度範囲500〜1400μmに整粒して、顆粒状水和剤を得た。
【0063】
比較例2
原体100gと大きくても20μmの無水硫酸ナトリウム100gとを混ぜ合わせた。該混合物を3インチウルマックス(4/3kg;日曹エンジニアリング社製)を用いて粉砕して50%粒子径1.71μmの混合微粉末を得た。
別に、原体100gと無水硫酸ナトリウム100gとを混ぜ合わせた。該混合物をピンミル(18000rpm×3回;ツカサ工業社製)を用いて、50%粒子径4.25μmの混合粗粉末を得た。
混合微粉末10.5部、混合粗粉末10.5部、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物2.5部、ポリカルボン酸金属塩2.5部、ラウリル硫酸ナトリウム0.5部、尿素7.5部、及び大きくても20μmの無水硫酸ナトリウム66.0部を混ぜ合わせた。この混合物に水9.2部を加え、それをベンチ・ニーダーで混練し、ミクロ形顆粒製造機で顆粒径0.7mmのそうめん状の造粒湿品を得た。造粒湿品を50℃の流動層乾燥機にて20分間乾燥させ、振動篩機((株)ダルトン製、マイクロシフター、303H型)を用いて粒度範囲500〜1400μmに整粒して、顆粒状水和剤を得た。
【0064】
試験例
(1)上記の実施例及び比較例で得られた顆粒状水和剤(製造直後品)を用意した。
(2)上記の実施例及び比較例で得られた顆粒状水和剤をアルミラミネート袋に入れて、54℃で2週間保存したもの(高温保管品)を用意した。
(3)上記の実施例及び比較例で得られた顆粒状水和剤をポリボトルに入れた。温度40℃、相対湿度75%で1ヶ月間保存したもの(高湿保管品)を用意した。
【0065】
100mLスピッチ管に3度硬水を100mL入れ、これに上記の顆粒状水和剤(1)〜(3)をそれぞれ0.1g投入した。スピッチ管に空気が侵入しない様に栓をして30秒間静置した。その後、1分間に30回の速度でスピッチ管を倒立した。水和剤の顆粒が完全に崩壊し、分散するまでに行った倒立回数を崩壊転倒回数として記録した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示したとおり、本発明の顆粒状水和剤は、高温高湿環境で長期間保存した後でも崩壊性が高く、分散性に優れている。
これに対して、低吸湿水溶性粉末の代わりに、無水硫酸ナトリウムを用いて製造した顆粒状水和剤は、高温高湿環境で長期間保管していると崩壊性や分散性が極度に低下する。