(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990278
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】液圧式の端部ストッパーを有する振動ダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 9/49 20060101AFI20160825BHJP
F16F 9/36 20060101ALI20160825BHJP
F16F 9/58 20060101ALI20160825BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
F16F9/49
F16F9/36
F16F9/58 A
F16J15/18 A
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-547804(P2014-547804)
(86)(22)【出願日】2012年11月21日
(65)【公表番号】特表2015-500970(P2015-500970A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2012073209
(87)【国際公開番号】WO2013092084
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年9月30日
(31)【優先権主張番号】102011089140.4
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】バールマン・ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・ペーター
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−196432(JP,A)
【文献】
特表平11−507430(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2302252(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/49
F16F 9/36
F16F 9/58
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)であって、この振動ダンパー(1)が、
制振メディアで満たされたシリンダー室(31)を放射方向で境界づけ、その際シリンダー室(31)は、少なくとも一方の側を閉鎖要素(5)によって軸方向で境界づけられているシリンダー(3)を有し、
制振メディアによって満たされたシリンダー室(31)内に軸方向に案内されている、ピストンロッド(4)であって、
その際、ピストンロッド(4)が、シリンダー端部(32)を閉じるピストンロッド案内部(51)内へと貫通しており、および
その際、ピストンロッド(4)がピストン(6)と接続されており、このピストンが、シリンダー室(31)を、ピストン(6)とピストンロッド案内部(51)の間に配置された第一の作動室(31a)と、ピストン(6)の反対側に位置する側に配置された第二の作動室(31b)とに細分されている、ピストンロッド(4)を有し、
シリンダー(3)の一方の端部に形成された制御室(71)を有し、
その際、液圧式の端部ストッパー(2)が、端部ストッパーリング(8)を有し、
その際、端部ストッパーリング(8)が、ピストンロッド(4)に軸方向で固定されており、およびピストンロッド(4)を放射方向で取り囲んでおり、および
端部ストッパー(2)が、ピストンの端部ストローク領域において、制御室(71)内へと没入し、およびこれを一方の側で軸方向で境界づけるので、制御室(71)内に、一方で閉鎖要素(5)によりそして他方で端部ストッパー(2)により軸方向で境界づけられる制御チャンバー(71a)が生じ、
その際、制御チャンバー(71a)のボリュームが、制御室(71)内での端部ストッパー(2)の軸方向位置に応じて変更可能である振動ダンパー(1)において、
液圧式の端部ストッパー(2)が、一つのシールリング(9)を有し、このシールリング(9)が端部ストッパーリング(8)および閉鎖要素(5)の間に配置されており、一方の側にて軸方向で端部ストッパーリングに支持されており、ピストンロッド(4)を放射方向で取り囲み、ピストンロッド(4)に滑らかに支承されており、およびその外側の周囲面(91)で制御室(71)の内壁に放射方向で当接しており、
その際、シールリング(9)が、少なくとも一つの放射方向の絞り溝(92)を有し、この絞り溝が、シールリング(9)と端部ストッパー(2)の入り込みの際、制御室(71)内で作用状態となり、制御チャンバー(71a)と第一の作動室(31a)の間の所定の制振媒体流を確保し、および、
その際、シールリング(9)が、複数のばね舌部(93)を有し、これらのばね舌部がピストンロッド側支持面(42)に支持されていることを特徴とする振動ダンパー(1)。
【請求項2】
シールリング(9)が、その放射方向内側の面に形成された少なくとも一つの空所部(94)を有し、その際、空所部(94)が、軸方向でシールリング(9)の全高さにわたって延在していることを特徴とする請求項1に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項3】
空所部(94)が絞り溝(92)によって接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項4】
支持面(42)が、リング溝(43)として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)
【請求項5】
リング溝(43)の軸方向の延在が、ばね舌部(93)の高さよりも大であることを特徴とする請求項1または4に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項6】
シールリング(9)が少なくとも一つの外側斜面部(95)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項7】
シールリング(9)の外側斜面部(95)が、組立状態で端部ストッパーリング(8)と反対の側に形成されていることを特徴とする請求項1から3、または6のいずれか一項に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項8】
シールリング(9)が、かみ合い構造(100)を、そこに形成されたロック舌部(101;102)と共に有することを特徴とする請求項1から3、6または7のいずれか一項に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項9】
シールリング(9)が、弾性的特性を有するプラスチックから形成されていることを特徴とする請求項1から3、6、7、または8のいずれか一項に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項10】
制御室(71)が、制御管(7)によって放射方向で境界づけられていることを特徴とする請求項1に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項11】
制御管(7)が、その、組込み状態でピストンロッド案内部(5)の方を向いた端部に、固定部分(72)を有することを特徴とする請求項10に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項12】
固定部分(72)が、他の制御管(7)の直径よりも大きな直径を有することを特徴とする請求項10または11に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項13】
固定部分(72)が、頭頂ロック部材(103)を有することを特徴とする請求項11または12に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項14】
制御管(7)が、その固定部分(72)内で、頭頂ロック部材(103)を使って、振動ダンパー(1)の別の部材とともにロック構造(104)を形成することを特徴とする、請求項13に記載の液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項15】
制御管(7)が、その、固定部分(72)と反対の側の端部に内側斜面部(73)を有することを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【請求項16】
制御管(7)が、少なくとも一つの軸方向のバイパス溝(74)を有することを特徴とする請求項10から15のいずれか一項に記載の、液圧式の端部ストッパー(2)を有する振動ダンパー(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の液圧式の端部ストッパーを有する振動ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
液圧式の端部ストッパーを有する振動ダンパーは、自動車産業界で長年使用されてきた。快適性の理由から、振動ダンパーの制振力は、任意に高く設定されることは不可能である。これによって制振力は、極端な車線の動きにおいては、車体運動を制振するのに必ずしも十分でない。これは、軸または振動ダンパーが高い速度により反動限界へと入る可能性があるという結果を有する。衝撃エネルギーを受け入れるために、弾性的な材料からなる弾性的な端部ストッパーが通常は使用される。しかし、これら部材のエネルギーの受け入れは、材料上の制約から著しく制限されている。液圧式に作用する端部ストッパーは、これと反対に明らかに高い衝撃エネルギーを吸収することが可能である。
【0003】
特許文献1は、機械式・液圧式の端部ストッパーを有する振動ダンパーを記載する。そこに開示される機械式・液圧式の端部ストッパーは、複数部材から形成され、および複数の材料から形成されるばね要素および端部ストッパーリングの複雑な組合せを意図している。
【0004】
特許文献2に記載される2管式振動ダンパーは、液圧式の端部ストッパーを位置に保持し、および衝撃エネルギーに反作用するねじばねを使用することのメリットを見ている。
【0005】
特許文献3からは一つの振動ダンパーが公知である。この振動ダンパーは、一つの補助ピストンを液圧式の端部ストッパーとして使用する。この端部ストッパーは作動ピストンに支持されている。これは、ピストンロッドがシリンダーから外に連れ出される際に、シリンダー内に挿入された補助シリンダー内へと入り込み、そしてそこに存在する制振媒体を押し退ける。この制振媒体は、特にこの為に補助ピストン内に形成されたチャネルを通じて漏れ出すことができる。
【0006】
特許文献4は、一つの端部ストッパーを有する液圧式の振動ダンパーを開示する。これは、シリンダー内に挿入された管形状の部材とストッパーピストンを有する。その際、ストッパーピストンは少なくとも一つの薄いストッパーディスクを有しており、このストッパーディスクが担持ディスクにより担持されている。リバウンド過程において、ストッパーディスクは管形状の部材内に入り込み、そしてそこに存在する制振媒体を押し退ける。その際、ストッパーディスクは、管形状の部材の内壁とストッパーピストンの間の残余制振媒体量のための間隙を形成し、そして少ない公差を有する必要がある。
【0007】
特許文献5は、同様に、振動ダンパーの為の液圧式端部ストッパーの一つの特に複雑な構造を開示する。この構造は、少なくとも5つの部材から成っており、およびロック構造を有している。このロック配列は、リバウンドフェーズで互いにかみ合い、これによって制振媒体を一つのチャンバー内に閉じ込め、その後、規定された態様でリリースする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願第28 53 914 A1号明細書
【特許文献2】独国実用新案登録出願第81 30 523 U1号明細書
【特許文献3】独国特許出願第18 02 720 A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願第42 12 228 C2号明細書
【特許文献5】独国特許出願第101 05 101 C1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明の課題は、簡単かつコスト面で安価に製造可能であり、および高い衝撃エネルギーを減衰することが可能である、液圧式の端部ストッパーを有する振動ダンパーの開発である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に係る一つの液圧式端部ストッパーを有する振動ダンパーを提供することにより解決される。
【0011】
本発明に係る振動ダンパーは、液圧式の端部ストッパーがシールリングを有し、このシールリングが端部ストッパーリングと閉鎖要素の間に配置されており、一方の側で軸方向で端部ストッパーリングに支持されており、ピストンロッドを放射方向で取り囲んでおり、ピストンロッドに滑らかに支承されており、およびその外側の周囲面でもって制御室の内壁に放射方向で当接し、その際、シールリングが、少なくとも一つの放射方向の絞り溝を有しており、この絞り溝が、端部ストッパーの入り込みの際に、シールリングと共に制御室内に作用状態となり、および制御チャンバーと第一の作動室の間の所定の制振媒体流を確保し、およびその際、シールリングが、複数のばね舌部を有し、このばね舌部がピストンロッド側支持面に支持されている点で際立っている。
【0012】
液圧式の端部ストッパーを有する本発明に係る振動ダンパーの別の有利な形態は、従属請求項内に記載されている。
【0013】
有利なバリエーションに従い、シールリングは、その放射方向内側の面に形成された少なくとも一つの空所部を有している。その際、空所部は、これらが軸方向でシールリングの全高さにわたって延在するよう寸法決めされている。これによってより多くの材料節約が可能となる。その上、これによって、シールリング上に放射方向で作用する制振媒体圧と、これにともにシールリングおよび制御管の内壁の間の押圧力の一様な分配が達成される。これによって制御チャンバーからの制振媒体流が追加的に制御されることが可能である。
【0014】
空所部が、絞り溝によって接続されるとき、一つのチャネルが生じる。このチャネルは、制振媒体流の制御の為に追加的に使用されることが可能である。
【0015】
有利な別の形態は、支持面が、リング溝としてピストンロッドに形成されていることを意図する。リング溝の軸方向の延在が、ばね舌部の高さよりも大であるとき、シールリングは、ピストンの端部ストローク領域を去る際に、リング溝に沿って閉鎖要素の方向へと滑り、端部ストッパーリングから持ち上げられ、そして制振媒体流を第一の作動チャンバーから制御チャンバー内へとリリースする。
【0016】
シールリングが、例えば組込み状態で端部ストッパーリングと反対の側に形成されている少なくとも一つの外側斜面部を有するとき、これによって、制御管内に押し込められる際の制御リングの傾きが防止されることができる。この為、シールリングの外側斜面部を、組込み状態で端部ストッパーリングと反対の側に形成することは同様に有利である。同じ目的で制御管は、有利な方式で固定部分と反対の端部に内側斜面部を有することが可能である。
【0017】
シールリングの柔軟性を高める為に、シールリングは、その周囲部において中断されて形成されていることが可能である。これによって形状相違と、起こり得る放射方向でのオフセットが良好に相殺される。シールリングの周囲方向への拡張は、別の有利な実施例に従い、これに形成されたロック舌部によるかみ合い構造によって制限されることが可能である。
【0018】
シールリングが、別の利点に従い弾性的な特性を有するプラスチックから形成されているとき、ダンパーの完全なリバウンドの際の衝撃ノイズが、明らかに減少されることが可能である。
【0019】
有利には、制御室がシリンダー内部で放射方向において制御管により境界づけられていることが可能である。制御管は、その際、シリンダーの端部でこれに挿入されており、そこで固定されていることが可能である。制御管の、組込み状態で閉鎖要素の方を向いた端部に形成されて固定部分は、制御管の他の部分の直径よりも大きな直径を有し、シリンダー室における制御管の固定を簡単にする。これに対する代替として、固定部分に頭頂ロック部材が形成されることが可能である。これは、振動ダンパーの他の部材とロック構造を形成する。
【0020】
別の有利なバリエーションに従い、制御管は、少なくとも一つの軸方向のバイパス溝を有する。溝の長さおよび選択された断面によって、リバウンドフェーズ中に規定された制振力推移が達成されることが可能である。同じ効果は、異なる長さおよび異なる断面を有する複数のバイパス溝の使用によっても達成される。
【0021】
本発明の更なる詳細および長所は、図面と関連する実施例の以下の記載からも生ずる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】液圧式の端部ストッパーを有する、発明にかかる振動ダンパーの長手方向断面図
【
図2a】
図1の振動ダンパーの長手方向断面図。引張り段階における制振媒体流の描写を含む。
【
図2b】
図1の制振ダンパーの長手方向断面図。圧縮段階における制振媒体流の描写を含む。
【
図4】液圧式の端部ストッパーを有する発明にかかる振動ダンパーの代替的実施形の長手方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1および4は、液圧式の端部ストッパー2を有する本発明に係る振動ダンパー1の一つの実施バリエーションを示す。その際、これは引張ストッパーとして実施されている。押圧ストッパーとしての実施は、図には特に表されていないが、当然、同様に可能である。
【0024】
図1において示された振動ダンパー1は、二管式ダンパーであり、一つのシリンダー3を含んでいる。このシリンダーは外管11により取り囲まれている。シリンダー室31は、流体の制振媒体によって完全に満たされている。外管11とシリンダー3の間には、バランス室120が放射方向に境界を成されている。このバランス室は、所定量の制振媒体によって満たされている。バランス室120の残りのボリュームは、ガスによって満たされている。シリンダー室31とバランス室120は、ここには示されていない底部バルブによって接続されている。この底部バルブは、両室の間の制振媒体流を定める。本発明の適用は、しかし2管式ダンパーに制限されない。むしろ、1管式ダンパーにおいてもその使用は行われることが可能である。
【0025】
図1および4に表されているように、シリンダー3はその一つの側において閉鎖要素5によって軸方向の境界を成されている、または閉じられている。示された実施バリエーションは、引張ストッパーであるので、ピストンロッド案内部51が、閉鎖要素5の役割を担う。
【0026】
シリンダー室31の内部には、ピストンロッド4が軸方向で案内されている。ピストンロッド4は、シリンダー端部32を閉じるピストンロッド案内部51に貫通している。ピストンロッド案内部51は、
図1および4には象徴的に表されている。使用されるべきピストンロッドシール部の図示は、見通し上の理由から断念されている。ピストンロッド4は、ピストンロッド端部41においてピストン6と接続されている。ピストン6は内のシリンダー室31を、ピストン6とピストンロッド案内部51の間に配置された第一の作動室31aと、ピストン6の反対側に配置される第二の作動室31bに細分する。
【0027】
更に、発明に係る振動ダンパー1の
図1に示された実施バリエーションは、一つの制御室71を有する。この制御室は、シリンダー3よりもわずかに小さい有効直径を有している。これは、シリンダー管の直径縮小または狭小化により達成されることができる。これに対する代替として、制御管がシリンダー3内に挿入されることが可能である。この実施バリエーションは、
図1,2a,2bおよび4に表されている。そこには、制御管7が、シリンダー3のピストンロッド案内部側の端部において、この中に挿入され、およびそこで固定されていることが表されている。制御管7は、制御室71を放射方向で境界づけ、およびその中に存在するピストンロッド4を取り囲む。制御管7は、表された実施例においては、これが、その放射方向外側の全表面でもって、シリンダー3の放射方向内側の面に当接するよう寸法決めされている。制御管7内の制御室71の直径は、これによって、本質的でない程度だけシリンダー室31の直径よりも小さい。両室の直径差は、制御管7の壁厚のみによって定められる。これにより生じる最大限可能な制御室71の大きさが、液圧式の端部ストッパー2の使用を可能とする。この端部ストッパーは比較的大きな圧力で付勢される端面を有している。これによって極度の負荷が、容易かつ材料に優しい態様で鎮められる。本発明に係る制御管7の表された実施バリエーションにおいては、複数のバイパス溝74が設けられている。バイパス溝74の異なる軸方向の延在によって、およびその異なる断面によって、定義された一様な力推移が端部ストローク領域に生じる。
【0028】
端部ストローク領域は、その際、引張ストッパーにおける引張段階の最終フェーズに相当する、または押圧ストッパーにおける押圧段階の最終フェーズに相当する。
【0029】
液圧式端部ストッパー2は、二部品式に形成されており、一つの端部ストッパーリング8と一つのシールリング9を含む。引張段階では、端部ストッパー2は制御管7内に没入し、制御管7のピストンロッド案内部51と反対側の面で、軸方向で制御室71を境界づけるので、制御管7内に、軸方向で一方がピストンロッド案内部51により境界づけられ、他方が端部ストッパー2により境界づけられた制御チャンバー71aが生じる。制御チャンバー71aのボリュームは、制御管7内の端部ストッパー2の軸方向位置に依存して変更可能である。
【0030】
端部ストッパーリング8は、ピストンロッド7を放射方向で取り囲み、およびピストンロッド4において、ピストン6とピストンロッド案内部51の間に固定されている。端部ストッパーリング8は、シールリング9に軸方向で支持されており、および衝撃力をピストンロッド4へと導く。この為、端部ストッパーリング8は、ピストンロッド4と摩擦結合的に(独語でいう“kraftschluessig”に)接続されている。
図1においては、端部ストッパーリング8は、ピストンロッド4に形成された周回する溝内に押し込まれている。この固定バリエーションは、しかし唯一問題にならない。一般的に端部ストッパーリング8は、溶接、はんだ付け、かしめ、リベット留め、または更に別の担当当業者にとって公知の固定手段によってピストンロッド4に固定されることが可能である。
【0031】
シールリング9は、端部ストッパーリング8とピストンロッド案内部51の間に配置されている。さらに、シールリング9は、ピストンロッド4を放射方向で取り囲んでおり、ピストンロッド4に滑らかに支承されている。ピストンロッド4が、シリンダー3から完全に外に連れ出されると、シールリング9は従来式の端部ストッパーとして使用され、
図1および2においてピストンロッド案内部51として表されているダンピング・閉鎖要素に当接するに至る。その際生ずる衝撃ノイズの減少の為に、シールリング9は通常、弾性的特性を有するプラスチック、またはゴムから形成される。
【0032】
シールリング9は、引張段階において端部ストッパーリング8にあてがわれている。制御管7内への没入の際に、シールリング9はその外側の周囲面でもって制御管7の内壁を押圧し、そして制御チャンバー71bをこれにより少なくとも部分的にシールする。これによって公差により引き起こされる、制御管7の形状の相違と、場合によっては発生するピストンロッド4の制御管7に対する同軸性の相違が相殺される。この影響を強めるために、およびシールリング9の柔軟性を高める為に、シールリング9はその周囲部において中断されて形成されており、およびピストンロッド4に放射方向で浮遊状態で支承されている。これによって、形状変形、場合によっては起こり得る放射方向のオフセットが相殺される。シールリング9の周囲方向への拡張は、互いにかみ合う二つのロック舌部101;102を有するシールリング9に形成される閉鎖部100によって制限されている。シールリング9に形成された閉鎖部100は、
図3a−cに特に良好に見て取れる。
【0033】
シールリング9は、端部ストッパーリング8の方を向いた面に形成される放射方向の絞り溝92を有している。この絞り溝は、制御チャンバー71aと他の制御室71の間の、特に引張段階において定義された制振媒体流を可能とする。
【0034】
更にシールリング9は、複数のばね舌部93を有している。これらばね舌部は、シールリング9と一体に、その内側周囲面に形成されており、ピストンロッド4に支持されている。ばね舌部93は、シールリング9の所定の押圧力を制御管7に作用させる。同様に、ばね舌部93がシールリング9と一体式に形成されておらず、一つの別体の要素として形成することも、または複数の要素として形成することも意図され得る。この場合、ばね舌部93およびシールリング9の製造の為に、同じ材料または異なる材料からなる組合せが使用されることが可能である。
【0035】
表された実施例においては、複数の空所部94が見て取れる。これら空所部は、シールリング9の放射方向内側の面に、ばね舌部93の間に分配されており、およびシールリング9の全高さにわたって延在している。特に、絞り溝92と接続されている空所部94は際立つといえる。これによって、絞りチャネルが生じる。この絞りチャネルは、制御チャンバー71aと残りの制御室71を互いに接続する。シールリング9の内側で空所部94が一様に分配されていることにより、引張段階において制御チャンバー71a内の制振媒体圧力が上昇する際に、シールリング9と制御管7の間の定義された一様な押圧力の上昇が達成される。
【0036】
シールリング9は、これに形成されたばね舌部93および空所部94と共に
図3aおよび3bに詳細に表されている。
【0037】
図1;2a;2bおよび4には、制御管7に形成された内側斜面部73が明確に見て取れる。シールリング9の外側斜面部95は、全ての図に表されている。表された実施バリエーションにおいて、外側斜面部95はシールリング9の両端面に形成されている。製造コストを更に減少するために、両方の外側傾斜部95が、または少なくとも端部ストッパーリングの方を向いたシールリング9の端面の外側傾斜部95が、または制御管7の内側傾斜部73が省略されることが可能である。
【0038】
図1;2a;2bおよび4に見て取れるように、ピストンロッド4はリング溝42を有している。このリング溝は、ばね舌部93の支持に使用される。ピストンロッドに形成されるリング溝42の、ピストンロッド4の長手方向軸Aに関し軸方向の軸方向の延在が、ばね舌部93の高さよりも大であるので、シールリング9は押圧段階において、リング溝42に沿ってピストンロッド案内部51の方向に滑り、端部ストッパーリング8から持ち上がり、そして制振媒体流を第一の作動チャンバー31aから制御チャンバー71aへとリリースする。
【0039】
図1および4は制御管7が、その組込み状態でピストンロッド案内部51の方を向いた端部に、一つの固定部分72を有することを示す。
図1においては、固定部分72を有する実施バリエーションが表されている。この固定部分は、残りの制御管7の直径よりも大きな直径を有している。これら実施バリエーションは、ピストンロッド案内部51の方を向いたシリンダー端部が、同様に拡大された直径を有していることも意図している。制御管7は、シリンダー3内に導入され、そして固定部分72でもって、より小さなシリンダー直径の領域においてシリンダー3の内部で軸方向にこれに支持されている。最終的に、制御管7はピストンロッド案内部51によりシリンダー3内で挟み込まれている。
【0040】
図4は、制御管7およびシリンダー3の簡易バージョンを示す。この実施バリエーションにおいて、シリンダーは一貫して同じ直径を有している。制御管7は、この固定部分72内に複数の頭頂ロック部材103を有する。この頭頂ロック部材は、ピストンロッド案内部51とともにロック構造104を形成する。もちろんこの為に、ピストンロッド案内部5の代わりに、閉鎖部に付設された他のダンピング部材またはダンピング・閉鎖要素が使用されることも可能である。ダンピング・閉鎖要素は、
図4にピストンロッド案内部51として表されている。このピストンロッド案内部は、ピストン3の方を向いたその端部部分に制御管7の頭頂ロック部材103のための対向輪郭部を有しており、この中に頭頂ロック部材103がかみ込んでいる。対向輪郭部は、周回する溝としても、中断する一つの溝または複数のくぼみとしても形成可能である。最後に記載した両実施形は、軸方向の安全機構としてのみならず、制御管7のための回転防止安全機構としての意味も有しうる。
【符号の説明】
【0041】
1 振動ダンパー
2 端部ストッパー
3 シリンダー
31 シリンダー室
31a 第一の作動室
31b 第二の作動室
32 シリンダー端部
4 ピストンロッド
41 ピストンロッド端部
42 支持面
43 リング溝
5 閉鎖要素
51 ピストンロッド案内部
6 ピストン
7 制御管
71 制御室
71a 制御チャンバー
72 固定部分
73 内側斜面部
74 バイパス溝
8 端部ストッパーリング
9 シールリング
91 周囲面
92 絞り溝
93 ばね舌部
94 空所部
95 外側斜面部
100 かみ合い構造
101 ロック舌部
102 ロック舌部
103 ロック舌部
104 ロック構造
110 外管
120 バランス室
A ピストンロッドの長手方向軸