特許第5990310号(P5990310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5990310
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】ONU検知装置およびONU検知方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/075 20130101AFI20160901BHJP
   H04B 10/272 20130101ALI20160901BHJP
【FI】
   H04B9/00 175
   H04B9/00 272
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-156675(P2015-156675)
(22)【出願日】2015年8月7日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小山 良
(72)【発明者】
【氏名】池田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕介
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−58916(JP,A)
【文献】 特開2008−139271(JP,A)
【文献】 特開2008−148272(JP,A)
【文献】 特開2008−145410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ONU(Optical Network Unit)を検知するONU検知装置であって、
光ケーブルを変形させ、変形部分から漏れる光を受光し、電気信号を生成する受光部と、
前記受光部で生成された電気信号に基づいて前記受光部における光強度を測定する光強度測定部と、
前記光強度測定部で測定された光強度が適切な光強度となるまで前記受光部より局内装置側で前記光ケーブルに曲げを付与する曲げ付与部と、
前記受光部で生成された電気信号に含まれるONUからの送信光の波形的特徴の強度を検知するONU検知部と、
前記光強度測定部で測定された光強度が適切な光強度である場合に前記ONU検知部で検知された波形的特徴の強度が一定以上であればONUが接続されていると判定する判定部と
を備えることを特徴とするONU検知装置。
【請求項2】
前記適切な光強度の下限として、下部線路損失が最大の場合でも、所定の最小光強度の下り光がONUに到達する値が設定されることを特徴とする請求項1に記載のONU検知装置。
【請求項3】
前記適切な光強度の下限として、前記光ケーブルの上下方向を誤って当該ONU検知装置を設置した場合でも、所定の最小光強度の下り光がONUに到達する値が設定されることを特徴とする請求項2に記載のONU検知装置。
【請求項4】
前記適切な光強度の上限として、前記受光部において所定のS/N比の上り光が受光される値が設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のONU検知装置。
【請求項5】
ONU検知装置がONUを検知するONU検知方法であって、
光ケーブルを変形させ、変形部分から漏れる光を受光部で受光し、電気信号を生成する受光ステップと、
前記受光ステップで生成された電気信号に基づいて前記受光部における光強度を測定する光強度測定ステップと、
前記光強度測定ステップで測定された光強度が適切な光強度となるまで前記受光部より局内装置側で前記光ケーブルに曲げを付与する曲げ付与ステップと、
前記受光部で生成された電気信号に含まれるONUからの送信光の波形的特徴の強度を検知するONU検知ステップと、
前記光強度測定ステップで測定された光強度が適切な光強度である場合に前記ONU検知ステップで検知された波形的特徴の強度が一定以上であればONUが接続されていると判定する判定ステップと
を含むことを特徴とするONU検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ONU(Optical Network Unit)を検知するONU検知装置およびONU検知方法に関し、特に、PON(Passive Optical Network)構成のアクセスネットワークにおいて、光ファイバ網の保守運用の際に、保守しようとする光ケーブル下部にONUが接続されているかどうかを判定する光アクセスネットワークの保守技術に関する。
【背景技術】
【0002】
PON構成の光アクセスネットワークでは、1台の局内装置に光分岐器を介して複数台のONUが接続される。このため、局内装置とは接続され、ONUとは接続されていない光ケーブルにおいても、他のユーザ向けの信号光が導通している。
【0003】
光アクセスネットワークの保守運用においては、光ケーブルを切断し、繋ぎかえるなどの光ケーブルに対する作業が発生するが、この際に光ケーブルがサービス提供中でないこと、すなわち下部にONUが接続されていないことを検知する必要がある。
【0004】
PON構成の光アクセスネットワークでは、下部にONUが接続されていない光ケーブルにも信号光が導通している。このため、光ケーブルに導通している信号光の中からONUからの送信光を検知して、ONUの接続有無を検知する必要がある(特許文献1、2参照)。
【0005】
図9は、従来技術(特許文献1)の概要を説明するための図である。この図に示すように、1台の局内装置10に光分岐器20を介して複数台のONU30が接続されている。曲げ部400において光ケーブル70に曲げを加え、光ケーブル70から漏洩する光(以下、漏洩光)を曲げ部400の上部側、下部側それぞれに配置された受光器401,402で受光して電気信号を生成している。この電気信号に基づいて、ONU30からの送信光がもつ波形的特徴(間欠波形)を電気的に検知することでONU30の接続有無を検知するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−205284号公報
【特許文献2】特開2012−060290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術では、光ケーブル70の上り光60と下り光50をそれぞれ分けて検知するために曲げ部400の上部側と下部側のそれぞれに受光器401,402を配置し、電気信号を生成している。しかしながら、上り光60と下り光50を完全に分離して受光することは難しく、上部側、下部側の受光器401,402にそれぞれある割合の下り光50,上り光60が意図せず受光されてしまう。このため、曲げ部400において、局内装置10からの下り光50がONU30からの上り光60に比して大きい場合は、下り光50の受光により上り光60の電気信号のS/N比が劣化し、正しくONU30の接続を検知できないという課題がある。
【0008】
本発明は、上述した従来の技術に鑑み、S/N比劣化による検知失敗や誤検知が生じないONU検知装置およびONU検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の態様に係る発明は、ONU(Optical Network Unit)を検知するONU検知装置であって、光ケーブルを変形させ、変形部分から漏れる光を受光し、電気信号を生成する受光部と、前記受光部で生成された電気信号に基づいて前記受光部における光強度を測定する光強度測定部と、前記光強度測定部で測定された光強度が適切な光強度となるまで前記受光部より局内装置側で前記光ケーブルに曲げを付与する曲げ付与部と、前記受光部で生成された電気信号に含まれるONUからの送信光の波形的特徴の強度を検知するONU検知部と、前記光強度測定部で測定された光強度が適切な光強度である場合に前記ONU検知部で検知された波形的特徴の強度が一定以上であればONUが接続されていると判定する判定部とを備えることを要旨とする。
【0010】
第2の態様に係る発明は、第1の態様に係る発明において、前記適切な光強度の下限として、下部線路損失が最大の場合でも、所定の最小光強度の下り光がONUに到達する値が設定されることを要旨とする。
【0011】
第3の態様に係る発明は、第2の態様に係る発明において、前記適切な光強度の下限として、前記光ケーブルの上下方向を誤って当該ONU検知装置を設置した場合でも、所定の最小光強度の下り光がONUに到達する値が設定されることを要旨とする。
【0012】
第4の態様に係る発明は、第1〜第3のいずれかの態様に係る発明において、前記適切な光強度の上限として、前記受光部において所定のS/N比の上り光が受光される値が設定されることを要旨とする。
【0013】
第5の態様に係る発明は、ONU検知装置がONUを検知するONU検知方法であって、光ケーブルを変形させ、変形部分から漏れる光を受光部で受光し、電気信号を生成する受光ステップと、前記受光ステップで生成された電気信号に基づいて前記受光部における光強度を測定する光強度測定ステップと、前記光強度測定ステップで測定された光強度が適切な光強度となるまで前記受光部より局内装置側で前記光ケーブルに曲げを付与する曲げ付与ステップと、前記受光部で生成された電気信号に含まれるONUからの送信光の波形的特徴の強度を検知するONU検知ステップと、前記光強度測定ステップで測定された光強度が適切な光強度である場合に前記ONU検知ステップで検知された波形的特徴の強度が一定以上であればONUが接続されていると判定する判定ステップとを含むこと要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、S/N比劣化による検知失敗や誤検知が生じないONU検知装置およびONU検知方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態におけるONU検知装置を利用するシステムの全体構成および利用シーンを示す図である。
図2】本発明の実施の形態におけるONU検知装置の機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態におけるONU検知装置を利用し、光ケーブル下部にONUが接続されているかどうかを判定する動作を示すフローチャートである。
図4】従来技術における光強度を説明するための図である。
図5】本発明の実施の形態におけるONU検知装置を利用した場合の光強度を説明するための図である。
図6】本発明の実施の形態におけるONU検知装置を利用した場合の光強度を説明するための図である。
図7】本発明の実施の形態における曲げ付与部により調整される適切な光強度の範囲を説明するための図である。
図8】本発明の実施の形態における曲げ付与部を示す図である。
図9】従来技術の概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するためのONU検知装置を例示するものであり、装置の構成やデータの構成等は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
(システム構成)
図1は、本発明の実施の形態におけるONU検知装置40を利用するシステムの全体構成および利用シーンを示す図である。図1(a)に示すように、PON構成のアクセスネットワークにおいて、光ファイバ網の保守運用の際にONU検知装置40が利用される。
【0018】
PON(Passive Optical Network)は、1台の局内装置10と複数台のONU30が光分岐器20と光ケーブル70を介して接続された光通信ネットワークである。以下、局内装置10からONU30に向けた方向を「下り方向」と呼び、ONU30から局内装置10に向けた方向を「上り方向」と呼ぶ。また、下り方向に流れる光を「下り光50」と呼び、上り方向に流れる光を「上り光60」と呼ぶ。更に、局内装置10側を「上部側」と呼び、ONU30側を「下部側」と呼ぶ。
【0019】
局内装置(OLT、光回線終端局装置)10は、PONで使用される通信局舎側の回線終端装置である。一般に、数台のスイッチやルータを介して通信事業者のコアネットワークと接続される。局内装置10の送信光(下り光50)は、図1(b)に示すように、揺らぎはあるが常に光り続けている定常光である。
【0020】
光分岐器(光スプリッタ)20は、1本の光ケーブル70と複数本の光ケーブル70を接続する分岐器である。光信号を合分岐するが、分岐数に応じて信号強度は弱まる。
【0021】
ONU(光回線終端装置)30は、PONで使用されるユーザ側の回線終端装置である。一般に、ユーザ宅内に設置され、ホームゲートウェイやユーザPC端末と接続される。ONU30の送信光(上り光60)は、図1(c)に示すように、明滅を繰り返す間欠光である。
【0022】
ONU検知装置40は、ONU30を検知する装置である。保守しようとする光ケーブル70に取り付けられ、その下部にONU30が接続されているかどうかを判定する。
【0023】
(ONU検知装置)
図2は、本発明の実施の形態におけるONU検知装置40の機能ブロック図である。この図に示すように、ONU検知装置40は、曲げ付与部41と、受光部42と、光強度測定部43と、ONU検知部44と、判定部45とを備える。
【0024】
受光部42は、光ケーブル70を変形させ、変形部分から漏れる光を受光器42Aで受光し、電気信号を生成する。例えば、特許文献1に開示されているように、凸状の部分と凹状の部分で光ケーブル70を挟むことで光ケーブル70を変形させることができる。
【0025】
光強度測定部43は、受光部42で生成された電気信号に基づいて受光部42における光強度を測定する。具体的には、受光部42に入射した光(上り光60と下り光50の合計)の強度を一定時間測定し、時間平均値に基づいて表示をする。この表示内容は特に限定されるものではない。例えば、数字など何らかの情報を表示し、光強度が適切であるかどうかを作業者が判定するようにしてもよい。あるいは、光強度の適切または不適切を光強度測定部43が判定し、その判定結果を表示するようにしてもよい。
【0026】
曲げ付与部41は、光強度測定部43で測定された光強度が適切な光強度となるまで受光部42の近傍で光ケーブル70に曲げを付与する。正しくONU検知装置40を設置した場合は受光部42の上部側(局内装置10側)で曲げを付与することになるが、誤ってONU検知装置40を設置した場合は受光部42の下部側(ONU30側)で曲げを付与することになる。ファイバガイドと調整ネジの組み合わせなどにより、意図した量だけ曲げの強さを調整することが可能となっている(後述する)。
【0027】
ONU検知部44は、受光部42で生成された電気信号に含まれるONU30からの送信光の波形的特徴の強度を検知する。具体的には、受光部42で受光した光強度の時間変動を一定時間観測し、ONU30からの上り光60の特徴点(間欠光)を抽出する。特徴点の抽出に当たっては変動バラつきの偏差を測定してもよいし、電気信号に周波数フィルタを適用してもよい。
【0028】
判定部45は、光強度測定部43で測定された光強度が適切な光強度である場合にONU検知部44で検知された波形的特徴の強度が一定以上であればONU30が接続されていると判定する。具体的には、ONU検知部44で抽出された特徴点(間欠光)の強度を観測し、一定以上であればONU30を検知したことを表示する。
【0029】
以上のように、本発明の実施の形態では、S/N比の高い上り光60を受光するために、受光器を上下2つ配置して上り光60、下り光50を分離するのではなく、受光部42Aの上部で光ケーブル70に曲げを付与し、その曲げにより下り光50を損失させる。このようにすれば、下り光50が小さくなり、上り光60のS/N比に悪影響を及ぼさないため、S/N比の高い上り光60を受光することが可能となる。
【0030】
(動作)
図3は、本発明の実施の形態におけるONU検知装置40を利用し、光ケーブル70下部にONU30が接続されているかどうかを判定する動作を示すフローチャートである。
【0031】
まず、光ケーブル70にONU検知装置40を取り付け、曲げ付与部41により光ケーブル70に曲げを付与しない状態で光強度を検知(測定)する(S1)。
【0032】
この状態で、光強度が適切である場合は、ONU検知結果を確認する(S2→S3)。その結果、ONU30が検知されていれば、「ONU有り」と判定し(S3→S5)、ONU30が検知されていなければ、「ONU無し」と判定する(S3→S4)。
【0033】
一方、光強度が適切でない場合は、曲げ付与部41により光ケーブル70に曲げを付与し、適切になるまで曲げの強さを調整する(S2→S6)。光強度が適切となれば、この状態でONU検知結果を確認する(S7)。その結果、ONU30が検知されていれば、「ONU有り」と判定し(S7→S8)、ONU30が検知されていなければ、光ケーブル70の上下(左右)を入れ替えて、ONU検知結果を確認する(S7→S9→S10)。その結果、ONU30が検知されていれば、「ONU有り」と判定し(S10→S11)、それでもONU30が検知されていなければ、「ONU無し」と判定する(S10→S12)。
【0034】
以上のように、本発明の実施の形態では、光ケーブル70の上下を入れ替えながらONU30の検知作業を行うことができる。そのため、光ケーブル70の上下の見分けがつかない場合でも、最終的にはONU30の有無を検知することが可能である。
【0035】
なお、ここでは、光ケーブル70の上下を入れ替えることとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、光ケーブル70の上下を入れ替える代わりに、受光部42の両側(上下)に曲げ付与部41を備える実施形態もある。
【0036】
また、こういった実施形態において、ワイヤーなどにより上下の曲げ付与部41を連動させ、ワンタッチで上下の曲げを切り替える実施形態もある。
【0037】
また、こういった実施形態において、測定方法の適切な曲げ付与部41による曲げ付与後の測定をONU検知装置40が自動で実施する実施形態もある。例えば、上下の曲げ付与部41それぞれの測定値について、予め設定された閾値を超える強度の信号が存在するかどうかを判定してもよい。この場合、予め設定された閾値を超える強度の信号が存在するときは、適切な曲げ付与部41による曲げ付与後の測定と判定することが可能である。
【0038】
また、モータなどで曲げ付与を自動で行なう機能をONU検知装置40が備えることで、検知方法の手順全てをONU検知装置40が自動で実施する実施形態もある。
【0039】
(比較例)
図4は、従来技術における光強度を説明するための図であり、(a)は従来技術で検知できる例、(b)は従来技術で検知できない例を示している。局内、検知場所、ONU設置場所の3箇所において、下り光50の光強度(局内装置10の送信光強度)と、上り光60の光強度(ONU30の送信光強度)がどのように変化するかを示している。
【0040】
この図に示すように、局内装置10からの下り光50の光強度は線路損失により徐々に弱くなり、同様に、ONU30からの上り光60の光強度も線路損失により徐々に弱くなる。ここで、図4(a)に示すように、局内〜検知場所間の線路損失が十分大きい場合、検知場所における下り光50の光強度は上り光60の光強度と比して十分に小さいため、ONU30を検知するのに適切な光強度となっている。一方、図4(b)に示すように、局内〜検知場所間の線路損失が小さい場合、下り光50の光強度が大きくなり、これがノイズ増となってS/N比が劣化し、正しくONU30の接続を検知できない。
【0041】
(実施例)
図5は、本発明の実施の形態におけるONU検知装置40を利用した場合の光強度を説明するための図である。ここでは、従来技術で検知できない例において、ONU検知装置40を正しく設置した場合について説明する。
【0042】
この図に示すように、局内〜検知場所間の線路損失が小さい場合でも、光強度測定部43の測定結果に応じて曲げ付与部41で曲げ損失を生じさせることにより、適切な光強度とすることができるため、ONU30を検知することが可能となる。また、光強度測定部43の測定結果に応じて適切な光強度となるように曲げ付与することにより、上り光60、下り光50がそれぞれ対向装置に届く状態でONU30の検知作業を行うことが可能である。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態におけるONU検知装置40を利用した場合の光強度を説明するための図である。ここでは、従来技術で検知できない例において、ONU検知装置40を誤って設置した場合について説明する。
【0044】
この図に示すように、光ケーブル70の上下方向を誤ってONU検知装置40を設置した場合でも、光強度測定部43の測定結果に応じて適切な光強度となるように曲げ付与することにより、上り光60、下り光50がそれぞれ対向装置に届く状態でONU30の検知作業を行うことが可能である。この場合は、S/N比の劣化によりONU30の検知はできないが、上下方向を入れ替えて再度検知作業を行うことにより、最終的にはONU30を検知可能である。
【0045】
(適切な光強度の範囲)
図7は、曲げ付与部41により調整される適切な光強度の範囲を説明するための図である。ここでは、局内装置10の設置場所を地点A、ONU検知装置40の設置場所を地点C、ONU30の設置場所を地点Bとする。地点A〜B間の最大線路損失はxdB、地点C〜B間の最大線路損失はydBとする。下り光50の送信強度は最大a1dBm〜最小a2dBmとし、変動率はw%以下とする。下り光50の送信強度が最小a2dBmであっても、ONU30まで信号が届くよう設計されていることを前提とする。上り光60の送信強度は最大b1dBm〜最小b2dBmとする。ONU検知装置40において必要なS/N比はN%以上とする。
【0046】
まず、適切な光強度の下限を説明する。地点Cにおいて必要な光強度は、下り(a2−x+y)dBm、上り(b2−y)dBmである。これを満たすための地点Cでの光強度は、ADD[(a2−x+y),b1−y]、ADD[(a1−x+y),b2−y]である。ゆえに、下限値は、ADD[(a2−x+y),b1−y]とADD[(a1−x+y),b2−y]の大きい方となる。ADD[p,q]は、次式に示す通りである。
【0047】
【数1】
次に、適切な光強度の上限を説明する。地点Cにおいて上り光強度は、次式のようになる。
【0048】
【数2】
S/N比がN%のときのノイズ強度は、次式のようになる。
【0049】
【数3】
変動率がw%のときの下り光強度は、次式のようになる。
【0050】
【数4】
S/N比がN%以上となるためには、光強度の上限値は、次式のようになる。
【0051】
【数5】
このように算出された適切な光強度の範囲は光強度測定部43に設定される。これにより、光強度測定部43は、測定した光強度の適切または不適切を自動で判定することができる。
【0052】
(曲げ付与部)
図8は、本発明の実施の形態における曲げ付与部41を示す図であり、(a)は弱い曲げを付与する場合を示し、(b)は強い曲げを付与する場合を示している。
【0053】
この図に示すように、ファイバガイド41A,41Bに光ケーブル70を挿通している。ファイバガイド41A,41Bの間に設けられた調整ネジ41Cにより、ファイバガイド41Dの位置を調整することができる。調整ネジ41Cを締めるほどファイバガイド41Dの位置が下がり、光ケーブル70に強い曲げを付与することができる。最も強い曲げを付与した場合でも光ケーブル70は折れないが、通信は切断されるようになっている。もちろん、ファイバガイド41A,41B,41Dや調整ネジ41Cの位置・大きさ・数などは適宜変更することが可能である。
【0054】
以上説明したように、本発明の実施の形態におけるONU検知装置40は、ONU30を検知する装置であって、光ケーブル70を変形させ、変形部分から漏れる光を受光し、電気信号を生成する受光部42と、受光部42で生成された電気信号に基づいて受光部42における光強度を測定する光強度測定部43と、光強度測定部43で測定された光強度が適切な光強度となるまで受光部42より局内装置10側で光ケーブル70に曲げを付与する曲げ付与部41と、受光部42で生成された電気信号に含まれるONU30からの送信光の波形的特徴の強度を検知するONU検知部44と、光強度測定部43で測定された光強度が適切な光強度である場合にONU検知部44で検知された波形的特徴の強度が一定以上であればONU30が接続されていると判定する判定部45とを備える。すなわち、受光部42の近傍に設けた曲げ付与部41を用いて光ケーブル70の受光部42より局内装置10側を曲げるようにしているため、下り光50を損失させることができる。これにより、受光部42より局内装置10側で下り光50を損失させることができるため、受光部42に到達する下り光50の光強度が弱まり、S/N比劣化による検知失敗や誤検知が生じない。
【0055】
ここで、適切な光強度の下限として、下部線路損失が最大の場合でも、所定の最小光強度の下り光50がONU30に到達する値が設定される。これにより、上り光60、下り光50がそれぞれ対向装置に届く状態でONU30の検知作業を行うことが可能である。
【0056】
また、適切な光強度の下限として、光ケーブル70の上下方向を誤ってONU検知装置40を設置した場合でも、所定の最小光強度の下り光50がONU30に到達する値が設定される。これにより、光ケーブル70の上下方向を誤ってONU検知装置40を設置した場合でも、上り光60、下り光50がそれぞれ対向装置に届く状態でONU30の検知作業を行うことが可能である。
【0057】
また、適切な光強度の上限として、受光部42において所定のS/N比の上り光60が受光される値が設定される。これにより、S/N比の高い上り光60を受光することができるため、精度よくONU30を検知することが可能である。
【0058】
また、本発明の実施の形態におけるONU検知方法は、ONU検知装置40がONU30を検知する方法であって、光ケーブル70を変形させ、変形部分から漏れる光を受光部42で受光し、電気信号を生成する受光ステップと、受光ステップで生成された電気信号に基づいて受光部42における光強度を測定する光強度測定ステップと、光強度測定ステップで測定された光強度が適切な光強度となるまで受光部42より局内装置10側で光ケーブル70に曲げを付与する曲げ付与ステップと、受光部42で生成された電気信号に含まれるONU30からの送信光の波形的特徴の強度を検知するONU検知ステップと、光強度測定ステップで測定された光強度が適切な光強度である場合にONU検知ステップで検知された波形的特徴の強度が一定以上であればONU30が接続されていると判定する判定ステップとを含む。これにより、受光部42より局内装置10側で下り光50を損失させることができるため、受光部42に到達する下り光50の光強度が弱まり、S/N比劣化による検知失敗や誤検知が生じない。
【0059】
なお、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0060】
10…局内装置
20…光分岐器
30…ONU
40…ONU検知装置
41…曲げ付与部
42…受光部
42A…受光器
43…光強度測定部
44…ONU検知部
45…判定部
50…下り光
60…上り光
70…光ケーブル
【要約】      (修正有)
【課題】S/N比劣化による検知失敗や誤検知が生じないONU検知装置および検知方法を提供する。
【解決手段】ONU(Optical Network Unit)検知装置40は、ONU30を検知する装置であって、光ケーブル70を変形させ、変形部分から漏れる光を受光し、電気信号を生成する受光部42と、受光部で生成された電気信号に基づいて受光部における光強度を測定する光強度測定部43と、光強度測定部で測定された光強度が適切な光強度となるまで受光部より局内装置10側で光ケーブルに曲げを付与する曲げ付与部41と、受光部で生成された電気信号に含まれるONUからの送信光の波形的特徴の強度を検知するONU検知部44と、光強度測定部で測定された光強度が適切な光強度である場合にONU検知部で検知された波形的特徴の強度が一定以上であればONUが接続されていると判定する判定部45とを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9