特許第5990322号(P5990322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5990322圧力下のガスのシリンダーの真の含有量を測定するための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990322
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】圧力下のガスのシリンダーの真の含有量を測定するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 9/00 20060101AFI20160901BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   G01N9/00 E
   F17C13/02 301A
【請求項の数】14
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2015-513200(P2015-513200)
(86)(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公表番号】特表2015-526694(P2015-526694A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】EP2013060689
(87)【国際公開番号】WO2013174957
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2015年1月21日
(31)【優先権主張番号】12169387.3
(32)【優先日】2012年5月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ニール アレクサンダー ダウニー
(72)【発明者】
【氏名】クレイトン マシュー ルディク
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05421190(US,A)
【文献】 米国特許第05900534(US,A)
【文献】 特表平07−509777(JP,A)
【文献】 特開昭60−010148(JP,A)
【文献】 特開2004−286514(JP,A)
【文献】 特表2005−506495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 9/00
F17C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスシリンダーの固定内部容積を定めるガスシリンダー本体およびバルブ設備を含む前記ガスシリンダー内における圧力下のガスの物理的特性を測定するためのセンサーアセンブリーであって、前記センサーアセンブリーは、筐体、前記ガスシリンダー内の前記ガス中に浸漬させるための圧電発振器、および前記圧電発振器が共振周波数で共振するように前記圧電発振器を駆動するように作動可能である駆動回路を含み、前記センサーアセンブリーは、前記ガス中に浸漬された際の前記圧電発振器の前記共振周波数から、前記ガスシリンダー内の前記ガスの密度を特定するように構成されており、ここで、使用時、前記筐体は、前記ガスシリンダーの前記固定内部容積内に配置され、第一のチャンバーおよび第二のチャンバーを含み、前記第一のチャンバーは、前記第二のチャンバーと流体連結され、前記圧電発振器を実質的に封入しており、前記第二のチャンバーは、前記ガスシリンダーの内部と流体連結されている、センサーアセンブリー。
【請求項2】
前記センサーアセンブリーが、前記密度測定および前記ガスシリンダーの前記内部容積から、前記ガスシリンダー内の前記ガスの質量を特定するように構成されるプロセッサーをさらに含む、請求項1に記載のセンサーアセンブリー。
【請求項3】
前記プロセッサーが、前記ガスシリンダー内の前記ガスの前記質量の測定を別々の時間間隔で繰り返し行って複数の測定値を取り、前記複数の測定値から、前記別々の時間間隔の過程での前記ガスシリンダーへの/からのガスの質量流量を特定するようにさらに構成された、請求項2に記載のセンサーアセンブリー。
【請求項4】
前記プロセッサーが、秒のオーダーとして前記別々の時間間隔を定めるように構成された、請求項3に記載のセンサーアセンブリー。
【請求項5】
前記プロセッサーが、前記測定値に数値フィルタリングを適用するように構成された、請求項3または4に記載のセンサーアセンブリー。
【請求項6】
前記第一のチャンバーが、前記第一および第二のチャンバーの間の流体連結を可能とする第一の開口部を含む壁部を有し、前記第二のチャンバーが、前記第二のチャンバーと前記ガスシリンダーの前記内部容積との間の流体連結を可能とする第二の開口部を含む壁部を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサーアセンブリー。
【請求項7】
前記第一および/または第二の開口部が0.35mm以下の寸法を有する、請求項6に記載のセンサーアセンブリー。
【請求項8】
前記第一および/または第二の開口部が0.22mm以下の寸法を有する、請求項7に記載のセンサーアセンブリー。
【請求項9】
前記筐体が実質的に円柱形状である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のセンサーアセンブリー。
【請求項10】
前記筐体が230mm以下の長さを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のセンサーアセンブリー。
【請求項11】
前記筐体が80mm以下の長さを有する、請求項10に記載のセンサーアセンブリー。
【請求項12】
前記圧電発振器が石英水晶発振器を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のセンサーアセンブリー。
【請求項13】
圧力下のガスを収容するためのガスシリンダーであって、前記ガスシリンダーは、
固定内部容積を定めるガスシリンダー本体、
前記ガスシリンダー本体に接続され、前記ガスシリンダーへのガスの充填、または前記ガスシリンダーからのガスの分配を選択的に可能とするように構成されたバルブ設備、ならびに
請求項1〜12のいずれか一項に記載のセンサーアセンブリー
を含む、ガスシリンダー。
【請求項14】
前記センサーアセンブリーが、前記ガスシリンダーの前記固定内部容積内に完全に配置された、請求項13に記載のガスシリンダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力下のガスのシリンダーの真の含有量を測定するための方法および装置に関する。より詳細には、本発明は、圧電発振器および遮蔽筐体を用いて、ガスのシリンダーの真の含有量、または真の含有量の変化率を正確に測定するための方法および装置に関する。
【0002】
本明細書で述べる方法および装置は、比較的高圧(例:約10バールもしくはそれ以上)のガスが存在する系に適用することができ、例えば、高圧シリンダーでの流体の供給、または高圧流体を用いる製造プラントなどである。本発明は、特に、「清浄な」ガス、すなわち、水蒸気もしくはダストなどの不純物または汚染物をほとんどまたはまったく含まないガスに関する。
【背景技術】
【0003】
圧縮ガスシリンダーは、高圧、すなわち、大気圧よりも非常に高い圧力のガスを収容するように設計された圧力容器である。圧縮ガスシリンダーは、低コストの一般的工業分野の市場から、医療分野の市場、さらには高純度の腐食性、毒性、または発火性特殊ガスを用いる電子製造分野などのより高コストの用途まで、幅広い範囲の市場で用いられる。一般的に、圧縮ガス容器は、鋼鉄、アルミニウム、またはコンポジットを含み、ほとんどのガスについては450バールg(ここで、バールgは、大気圧を超える圧力(バール単位)の尺度である)までの、水素およびヘリウムなどのガスについては900バールgまでの最大充填圧力で、圧縮、液化、または溶解ガスを保存することができる。
【0004】
本発明は、特に、永久ガスに適用可能である。永久ガスとは、圧力単独によっては液化することのできないガスであり、例えば、最大450バールgまでの圧力で、シリンダーとして供給され得る。例としては、アルゴンおよび窒素である。しかし、これは限定的に解釈されるべきではなく、ガスの用語は、永久ガスおよび液化ガスの蒸気の両方を例とするより広範囲のガスを包含するものとして見なされ得る。液化ガスの蒸気は、圧縮ガスシリンダー中の液体上に存在する。シリンダー中に充填するために圧縮されるに従って圧力下で液化するガスは、永久ガスではなく、圧力下での液化ガスまたは液化ガスの蒸気としての記述がより正確である。例として、亜酸化窒素は、液体の形態でシリンダーとして供給され、平衡蒸気圧は15℃で44.4バールgである。そのような蒸気は、それらが周囲条件付近の圧力または温度によって液化可能であることから、永久ガスまたは真のガス(true gases)ではない。
【0005】
多くの場合、任意のシリンダーまたは圧力容器の含有量をモニタリングして残留するガスの量を特定することが必要である。これは、医療での適用などの状況で特に極めて重要である。
【0006】
気体法則に従って、シリンダー内のガスの圧力の情報から、シリンダーの真の含有量を算出することは知られている。圧力測定は、公知の技術であり、圧力を測定するように機能する様々なデバイスが存在する。最も従来からのタイプは、歪ゲージ素子を備えた弾性ダイアフラムを用いる。しかし、現在作製される最も低コストの圧力センサーの1つではあるが、これらのセンサーは、サイズが比較的大きく、大量生産フォトリソグラフィ法で製造可能ではあるが、それでも比較的複雑で作製コストが高い機械的構造を有する傾向にある。それらはまた、ある程度の脆弱性を有し、ならびにそれらが使用可能となる前に、較正および温度補償が必要である。
【0007】
別の一般的に用いられる圧力ゲージは、ブルドンゲージである。そのようなゲージは、測定されるべき流体圧力を含む固定管にその中空末端で接続された脆弱な扁平薄肉末端封止管(fragile flattened thin-wall, closed-ended tube)を有する。圧力の上昇により、管の封止末端が弧を描く。そのようなゲージは、例えば高圧への暴露からの損傷を受けやすい繊細なコンポーネントを含む。
【0008】
ガス容器中のガスの量を正確に測定することを困難とする1つの問題は、シリンダー内に収容されたガスの温度−圧力の関係である。気体法則によると、任意の量のガスによって及ぼされる圧力は、一定体積下にて、その温度に正比例する。従って、ガスの温度が上昇するに従って、ガスの圧力も上昇する。
【0009】
従って、ブルドンゲージなどの圧力ゲージを用いた圧力の測定は、例えば、20℃の初期温度から、例えば日照環境中の50℃まで、絶対温度に比例して上下し、ブルドンゲージの指示圧力は10%高くなってしまう。
【0010】
さらなる課題としては、圧力測定を用いてシリンダーの含有量を特定するためには、圧力ゲージを、ガスの圧縮性に応じて補正する必要がある。これは、理想気体の挙動に追随しない高圧のガスの挙動により、複雑である。
【0011】
ガスの物理的特性を測定するために用いられる別の選択肢としてのデバイスの種類は、石英水晶などの圧電デバイスである。石英水晶は、圧電挙動を示し、すなわち、それに電圧を印加することで、固体の僅かな収縮または伸長が引き起こされ、逆も同様である。
【0012】
"A Precise And Robust Quartz Sensor Based On Tuning Fork Technology For (SF6) - Gas Density Control" Zeisel et al, Sensors and Actuators 80 (2000) 233-236には、低ガス圧力での高および中電圧電気機器中のSF6ガスの密度測定に石英水晶センサーを用いる設備が開示されている。SF6ガスの密度の測定は、装置の安全性にとって極めて重要である。この文書は、最大8バールgまでの圧力が用いられる石英センサー技術の低圧力での適用について記載している。
【0013】
米国特許第4,644,796号には、ベローズ設備(bellows arrangement)を含む可変容積筐体内に収容された石英水晶発振器を用いて流体の圧力を測定するための方法および装置が開示されている。筐体の内部容積は、外部流体圧力によるベローズの圧縮/膨張によって変化する。従って、筐体の内部容積の変化に応じて、筐体内の流体の密度も変化する。筐体内の密度は、石英水晶発振器を用いて測定することができる。
【0014】
上記の設備は、石英水晶発振器などのソリッドステートセンサーの使用について述べるものである。しかし、上記設備および方法のいずれも、ガスシリンダーなどの圧力容器中のガスの質量の正確な測定には適していない。
【0015】
ガスシリンダー中に収容されたガスの物理的特性の測定に関するさらなる問題は、シリンダー内でのガスの動きである。例えば、ガスシリンダーの上部が冷たい場合、ガスの物理的特性の測定を乱し得る激しい対流が発生する場合がある。
【0016】
グラスホフ数(Gr)は、流体に作用する粘性力に対する浮力の比を近似する無次元数である。Grの値は、特定の流体における対流の発生しやすさの指標を提供し、Grの値が高い程、対流が発生する可能性が高くなる。
【0017】
例えば、ガスシリンダー内の圧力300バールgのアルゴンガスのGr値は、非常に大きい。そのような高い圧力のアルゴンは、水の密度に近い密度を有するが、粘度は水よりも非常に低い(水よりもおよそ50倍低い)。加えて、アルゴンは、加熱された場合に膨張する傾向が、水よりも非常に大きい。その結果として、小さい負の温度勾配であっても(すなわち、シリンダーの上部の方が冷たい)、ガスシリンダー内でのガスの強い対流を引き起こし得る。
【0018】
シリンダーの長さ方向に沿った温度勾配は、使用時のいくつかの状況で発生し得る。例えば、シリンダーが充填されたばかりである場合、温度の異なる環境間を移動される場合、またはシリンダーに取り付けられたバルブから流量が抜き取られる状況において、シリンダーの上部は、シリンダー全体よりも非常に冷たくなり得る。温度勾配は、多くの場合、10℃を超え得るものであり、30℃の大きさもあり得る。現時点では、圧力低下装置内蔵バルブ(integrated pressure reduction valve)(VIPR)が、次第に一般的となりつつある。
【0019】
しかし、そのようなバルブは、ガスを保存圧力から膨張させるために、特に冷たくなる。従って、このような温度差の結果として、シリンダー中で対流が発生することが多い。対流は、乱流の形で発生し、ρ〜1/Tとなるような密度および温度のランダムな変化に対して、圧力はほとんど変化しない。
【0020】
一般的に、シリンダー内のガスの物理的特性を測定するための1つの手法は、ガスシリンダー自体の内部にセンサーを配置することである。これにより、センサーは、シリンダーの中央部でガスの特定をモニタリングすることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、VIPRを有するシリンダーを用いてガスシリンダーから流量が抜き取られる場合、強い対流が発生する。対流は、シリンダーの質量含有量の変化率などのガス特性を測定する際に過剰なノイズを引き起こし、測定結果を不正確に、または無意味とさえしてしまう。従って、公知の測定設備は、対流を起こしやすいガスシリンダーなどの密閉容器中のガスの物理的特性の正確な測定を提供することができないという技術的問題点を抱えている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第一の態様によると、ガスシリンダーの固定内部容積を定めるガスシリンダー本体およびバルブ設備を含むガスシリンダー内における圧力下のガスの物理的特性を測定するためのセンサーアセンブリーが提供され、センサーアセンブリーは、筐体、ガスシリンダー内のガス中に浸漬させるための圧電発振器、および圧電発振器が共振周波数で共振するように圧電発振器を駆動するように作動可能である駆動回路を含み、センサーアセンブリーは、前記ガス中に浸漬された際の圧電発振器の共振周波数から、ガスシリンダー内のガスの密度を特定するように構成されており、ここで、使用時、筐体は、ガスシリンダーの固定内部容積内に配置され、第一のチャンバーおよび第二のチャンバーを含み、第一のチャンバーは、第二のチャンバーと流体連結され、前記圧電発振器を実質的に封入しており、第二のチャンバーは、ガスシリンダーの内部と流体連結されている。
【0023】
本発明の設備は、センサーアセンブリーに関する。センサーアセンブリーは、筐体内に封入された圧電発振器を含む。筐体は、少なくとも2つのチャンバーを含む独立型構造であり、ガスシリンダーなどの圧力容器内に配置されるように構成される。これにより、圧力容器内でのセンサーアセンブリーの最適な配置が可能となり、ここで、それは、例えば、温度の変動または境界層流が例えば密度測定に影響を与え得る容器の壁部から離れて配置することができる。
【0024】
実施形態によると、圧力容器内における圧力下のガスの物理的特性を測定するためのセンサーアセンブリーが提供され、センサーアセンブリーは、筐体、および圧力容器内のガス中に浸漬させるための圧電発振器を含み、圧電発振器は、前記ガス中に浸漬された際に、圧力容器内のガスの密度を測定するように構成され、ここで、筐体は、第一のチャンバーおよび第二のチャンバーを含み、第一のチャンバーは、第二のチャンバーと流体連結され、前記圧電発振器を実質的に封入しており、第二のチャンバーは、圧力容器の内部と流体連結されている。
【0025】
そのような設備を提供することにより、シリンダーなどの圧力容器中の流体の真の含有量(すなわち、質量)を、温度または圧縮性などの因子についての補正を行う必要性なしに、直接測定することができる。本発明の筐体は、ガスシリンダー内の対流によって引き起こされるノイズおよび誤差を軽減し、それによって、シリンダー中のガスの密度からの直接誘導を介して、質量または質量の変化率を正確に特定することが可能となる。
【0026】
さらに、圧電発振器は、高圧または圧力の急変に対する耐久性を有するソリッドステートデバイスであり、従って、圧力「クリープ」またはその他の環境因子によって損傷を受ける可能性が低減される。圧電発振器の構造により、圧電発振器をガス中に完全に浸漬させることが可能となり、これは、機能するために圧力差を必要とする従来のゲージ(ブルドンゲージなど)とは対照的である。
【0027】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、圧電発振器が共振周波数で共振するように圧電発振器を駆動するように作動可能であり、および予め定めた継続時間にわたって前記共振周波数を測定して前記圧力容器中のガスの密度を特定するように作動可能である駆動回路をさらに含む。
【0028】
1つの実施形態では、圧力容器は、固定内部容積を有し、センサーアセンブリーは、密度測定および前記圧力容器の内部容積から、圧力容器内のガスの質量を特定するようにさらに構成される。
【0029】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、圧力容器内のガスの質量測定を別々の時間間隔で繰り返し行って複数の測定値を取り、前記複数の測定値から、別々の時間間隔の過程での圧力容器への/からのガスの質量流量を特定するようにさらに構成される。
【0030】
1つの実施形態では、別々の時間間隔は、秒のオーダーである。
【0031】
1つの実施形態では、前記測定値に対して、数値フィルタリングが適用される。
【0032】
1つの実施形態では、第一のチャンバーは、第一および第二のチャンバーの間の流体連結を可能とする第一の開口部を含む壁部を有し、第二のチャンバーは、第二のチャンバーと圧力容器の内部容積との間の流体連結を可能とする第二の開口部を含む壁部を有する。
【0033】
1つの実施形態では、第一および/または第二の開口部は、0.35mm以下の寸法を有する。
【0034】
1つの実施形態では、第一および/または第二の開口部は、0.22mm以下の寸法を有する。
【0035】
1つの実施形態では、筐体は、実質的に円柱形状である。
【0036】
1つの実施形態では、筐体は、230mm以下の長さを有する。
【0037】
1つの実施形態では、筐体は、80mm以下の長さを有する。
【0038】
1つの実施形態では、前記圧電発振器は、石英水晶発振器を含む。
【0039】
本発明の第二の態様によると、圧力下のガスを収容するためのガスシリンダーが提供され、ガスシリンダーは:固定内部容積を定めるガスシリンダー本体;前記ガスシリンダー本体に接続され、ガスシリンダーへのガスの充填、または前記ガスシリンダーからのガスの分配を選択的に可能とするように構成されるバルブ設備;ならびに第一の態様のセンサーアセンブリーを含む。
【0040】
実施形態によると、圧力下のガスを収容するための圧力容器が提供され、圧力容器は、固定内部容積を有し:固定内部容積を定める圧力容器本体;前記容器本体に接続され、圧力容器へのガスの充填、または前記容器からのガスの分配を選択的に可能とするように構成されるバルブ設備;ならびに第一の態様のセンサーアセンブリーを含む。
【0041】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、圧力容器の固定内部容積内に完全に配置される。
【0042】
1つの実施形態では、圧力容器は、ガスシリンダーの形態である。
【0043】
本発明の第三の態様によると、圧電発振器および筐体を含むセンサーアセンブリーを用いて圧力下のガスの質量を測定する方法が提供され、前記ガスは、固定内部容積を有する圧力容器内に収容されており、圧電発振器は、圧力容器内のガス中に浸漬されており、筐体は、第一のチャンバーおよび第二のチャンバーを含み、第一のチャンバーは、第二のチャンバーと流体連結され、前記圧電発振器を実質的に封入しており、ならびに第二のチャンバーは、圧力容器の内部と流体連結されており、この方法は:a)前記圧電発振器を用いて、高圧容器内のガスの密度を測定すること;b)密度測定および前記圧力容器の内部容積から、圧力容器内のガスの質量を特定すること、を含む。
【0044】
そのような方法を提供することにより、シリンダーなどの圧力容器中のガス(永久ガスなど)の真の含有量(すなわち、質量)を、温度または圧縮性などの因子についての補償を行う必要性なしに、直接測定することができる。これにより、シリンダー中のガスの密度からの直接誘導を介して質量を特定することが可能となり、追加のセンサー、または複雑な補償および近似を行う必要性が低減される。さらに、圧電発振器は、高圧、圧力の急変、またはその他の環境因子に対する耐久性を有するソリッドステートデバイスである。圧電発振器は、ガス中に完全に浸漬されて作動可能であり、これは、機能するために圧力差を必要とする従来のゲージ(ブルドンゲージなど)とは対照的である。
【0045】
1つの実施形態では、工程a)は:駆動回路により、圧電発振器が共振周波数で共振するように圧電発振器を駆動すること;および予め定めた継続時間にわたって前記共振周波数を測定して前記圧力容器中のガスの密度を特定することを含む。
【0046】
1つの実施形態では、工程a)およびb)は、継続時間にわたる圧力容器内のガス密度の一連の測定値が得られるように、1回以上繰り返され、前記一連の測定値を用いて、前記継続時間の過程での圧力容器内のガスの質量変化が特定される。
【0047】
1つの実施形態では、前記圧電発振器は、石英水晶発振器を含む。
【0048】
実施形態では、石英水晶は、少なくとも1つのタイン部(tine)を含む。変更では、石英水晶は、1対の平面型タイン部を含む。
【0049】
実施形態では、石英水晶は、ATカットまたはSCカットである。
【0050】
変更では、石英水晶の表面は、ガスに直接暴露される。
【0051】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、駆動回路を含む。変更では、センサーアセンブリーは、共通のエミッタ増幅器からのフィードバックコンフィギュレーション(feedback configuration)で構成されるダーリントンペアを有する駆動回路を含む。
【0052】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、電力源を含む。1つの設備では、電力源は、リチウムイオン電池を含む。
【0053】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、プロセッサーを含む。
【0054】
1つの実施形態では、圧力容器は、高圧容器を含む。高圧容器は、おおよそ10バール超の内圧に耐えるように構成される容器である。
【0055】
変更では、圧力容器は、ガスシリンダーを含む。
【0056】
変更では、前記圧電発振器は、石英水晶発振器を含む。
【0057】
変更では、ガスは、永久ガスである。
【0058】
1つの設備では、高圧容器は、ガスシリンダーである。
【0059】
実施形態では、センサーアセンブリーは、駆動回路を含む。実施形態では、センサーアセンブリーは、共通のエミッタ増幅器からのフィードバックコンフィギュレーションで構成されるダーリントンペアを有する駆動回路を含む。
【0060】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、電力源を含む。1つの設備では、電力源は、リチウムイオン電池を含む。
【0061】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、プロセッサーを含む。
【0062】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、圧電発振器が共振周波数で共振するように圧電発振器を駆動するように、および予め定めた継続時間にわたって前記共振周波数を測定して前記圧力容器中のガスの密度を特定するように構成される。
【0063】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、圧力容器内のガスの質量測定を別々の時間間隔で繰り返し行って複数の測定値を取り、前記複数の測定値から、別々の時間間隔の過程での圧力容器への/からのガスの質量流量をより多くの回数特定するようにさらに構成され、それによって、ある継続時間にわたる圧力容器内のガス密度の一連の測定値が得られ、前記一連の測定値を用いて、前記継続期間の過程での圧力容器内のガスの質量の変化が特定される。
【0064】
本発明の第四の態様によると、第一の態様のセンサーアセンブリーを含むバルブ設備が提供され、バルブ設備は、圧力容器本体と接続されて固定内部容積を有する圧力容器を形成するためのものであり、バルブ設備は、圧力容器へのガスの充填、または前記容器からのガスの分配を選択的に可能とするように構成される。
【0065】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、駆動回路を含む。1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、電力源を含む。変更では、電力源は、リチウムイオン電池を含む。
【0066】
1つの実施形態では、センサーアセンブリーは、圧力容器の固定内部容積内に完全に配置される。
【0067】
1つの設備では、圧力容器本体は、ガスシリンダーを含む。
【0068】
本発明の第五の実施形態によると、プログラム可能な処理装置によって実行可能であり、第三の態様の工程を実施するための1つ以上のソフトウェア部分を含むコンピュータープログラム製品が提供される。
【0069】
発明の第六の実施形態によると、記憶された第五の態様に従うコンピュータープログラム製品を有する、コンピューターが使用可能である記憶媒体が提供される。
【0070】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、ガスシリンダーアセンブリーの概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態に従うガスシリンダーアセンブリーの上側部分を示す概略図である。
図3a図3aは、図2の実施形態のセンサーアセンブリー筐体を示す概略図である。
図3b図3bは、図2の実施形態のセンサーアセンブリーでの使用に適する筐体の別の選択肢としての変更を示す概略図である。
図3c図3cは、図2の実施形態のセンサーアセンブリーでの使用に適する筐体の別の選択肢としての変更を示す概略図である。
図3d図3dは、図2の実施形態のセンサーアセンブリーでの使用に適する筐体の別の選択肢としての変更を示す概略図である。
図3e図3eは、図2の実施形態のセンサーアセンブリーでの使用に適する筐体の別の選択肢としての変更を示す概略図である。
図3f図3fは、図2の実施形態のセンサーアセンブリーでの使用に適する筐体の別の選択肢としての変更を示す概略図である。
図4図4は、本発明の実施形態で用いられる駆動回路の概略図である。
図5図5は、本発明の実施形態で用いられる別の選択肢としての駆動回路を示す概略図である。
図6図6は、本発明の実施形態で用いられるさらに別の選択肢としての駆動回路を示す概略図である。
図7図7は、いくつかの異なるガスに対する、密度(kg/m3)の関数としての石英水晶周波数(kHz)をY軸とするグラフを示す。
図8図8は、アルゴン、酸素、およびアルゴン:二酸化炭素混合物に対する、X軸の圧力(バールg)の関数としてのガス質量(kg)をY軸とするグラフを示す。
図9図9は、図7で示されるものと同じ3種類のガス(アルゴン、酸素、およびアルゴン:二酸化炭素混合物)に対する、X軸の密度(kg/m3)の関数としてのガス質量(kg)をY軸とするグラフを示す。
図10図10は、100バールgの圧力での50リットルガスシリンダーからの12L/分の流速に対する、X軸の時間(分)の関数としての周波数(kHz)をY軸とするグラフを示す。
図11図11は、100バールgの圧力での50リットルシリンダーに対する、X軸の時間(分)の関数としての算出流速(1分間あたりのリットル)をY軸とするグラフを示す。
図12図12は、典型的なガスシリンダーに対する、X軸のガスシリンダー質量(kg)の関数としての周波数(kHz)をY軸とするグラフを示す。
図13図13は、筐体なしの石英水晶発振器を用いた流速測定に対する、秒での時間(X軸)の関数としての流速(リットル/分を2で除した単位)のグラフである。
図14図14は、第一の実施形態に従う筐体で囲われた石英水晶発振器を用いた流速測定に対する、秒での時間(X軸)の関数としての流速(リットル/分を2で除した単位)のグラフである。
図15図15は、第一の実施形態に従う筐体で囲われた石英水晶発振器を用いた流速測定に対する(四角)、および数値フィルターを通した同じデータに対する(ひし形)、秒での時間(X軸)の関数としての流速(リットル/分を2で除した単位)のグラフである。
図16図16は、記載した実施形態に従う方法を示すフローチャートである。
図17図17は、異なる種類の水晶の周波数挙動のグラフを示す。
図18図18は、2つの石英水晶を含む別の選択肢としてのセンサーアセンブリーを示す概略図である。
図19図19は、リモート電子データユニットを用いた別の選択肢としての設備を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、本発明の実施形態に従うガスシリンダーアセンブリー10の概略図を示す。
【0073】
ガスシリンダーアセンブリー10は、ガスシリンダー本体102およびバルブ104を有するガスシリンダー100を含む。ガスシリンダー本体102は、ガスシリンダーアセンブリー10が平面上で支持なしに自立可能であるように構成された平面基部102aを有する概略円柱形状の容器を含む。
【0074】
ガスシリンダー本体102は、鋼鉄、アルミニウム、および/またはコンポジット材料から形成され、最大およそ900バールgまでの内圧に耐えるように適合され、構成される。開口部106は、基部102aの反対側のガスシリンダー本体102の近位端部に配置され、バルブ104を受けるように適合されたねじ山(図示せず)を含む。
【0075】
ガスシリンダー本体102およびバルブ104は、内部容積Vを有する圧力容器(本実施形態では、ガスシリンダー100の形態)を定める。内部容積Vは、固定である。これは、ガスシリンダー100の構造が、使用時、保存時、または温度、圧力、もしくは湿度などの環境条件に応じてその内部容積Vを(同時にその中に収容されているガスの体積を)著しい度合いで変化させることがないと仮定することができるようなものであることを意味する。ガスシリンダー100の内部容積Vは、ガスシリンダー本体102およびバルブ104内の全容積を含むことを意図している。言い換えると、内部容積Vは、ガスが圧力下で保持されるガスシリンダーアセンブリー10内の全内部容積である。
【0076】
ガスシリンダーアセンブリー100内には、適切ないかなる流体が収容されてもよい。しかし、本実施形態は、それだけに限定されないが、ダストおよび/または水分などの不純物を含まない精製された永久ガスに関する。網羅的ではないそのようなガスの例は:酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、メタン、三フッ化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、クリプトン、ネオン、またはこれらの混合物(例えば、アルゴンと二酸化炭素)であってよい。
【0077】
バルブ104は、筺体108、出口部110、バルブ本体112、およびバルブシート114を含む。筺体108は、ガスシリンダー本体102の開口部106とかみ合わせるための相補的ねじ山を含む。出口部110は、ガスシリンダー100を、ホース、管、またはさらなる圧力バルブもしくはレギュレーターを例とするガスアセンブリーの他のコンポーネントと接続することを可能とするように適合され、構成される。バルブ104は、所望に応じて、VIPR(圧力低下装置内蔵バルブ(Valve with Integrated Pressure Reduction))を含んでよい。
【0078】
バルブ本体112は、選択的に出口部110を開または閉とするために、握ることのできるハンドル116の回転によって、バルブシート114に向かって、またはそれから遠ざかるように、軸方向に調節することができる。言い換えると、バルブ本体112のバルブシート112に向かう、またはそれから遠ざかる動きにより、ガスシリンダー本体102の内部と出口部110との間の連結経路の領域が選択的に制御される。そしてこれは、ガスシリンダーアセンブリー100の内部から外部環境へのガスの流量を制御する。
【0079】
出口部110の下流の筐体108に、貫通孔部118が形成される。この貫通孔部118は、コンポーネント(ワイヤなど)をガスシリンダー100の外部からガスシリンダー100の内部へ送り込むことを可能とするフィードスルー(feed through)120によって閉じられる。フィードスルー120は、ガスシリンダー100の完全性を維持する高圧シールとして機能する。
【0080】
ガスシリンダーアセンブリー10は、センサーアセンブリー200を備える。センサーアセンブリー200は、ガスシリンダー100の内部容積V内のガスの密度を測定するように構成される。センサーアセンブリー200は、図2に示され、適切なワイヤリングによって駆動回路204および電池206と接続された石英水晶発振器202を含む。プロセッサー220(図2には示さず)が、完全に分離されて、または駆動回路204の一部として提供されてもよい。これについては後述する。
【0081】
図2の実施形態では、センサーアセンブリー200の全体が、ガスシリンダー100の内部容積V内に配置される。従って、石英水晶発振器202、駆動回路204(および、提供される場合は、プロセッサー220)、および電池206は、すべてガスシリンダー100の内部容積V内に配置される。センサーアセンブリー200のコンポーネントは、完全にガスに浸漬され、ガスシリンダー100内の均衡ガス圧力下にある。従って、センサーアセンブリー200は、ガスシリンダー100内のガスの全ガス圧力を受ける。
【0082】
図2に示されるように、センサーアセンブリー200は、例えばベースステーションとのリモート通信のためのアンテナ230と接続されてよい。これについては以降で考察する。この場合、アンテナ230は、ガスシリンダー100の外側に配置され、ワイヤまたは同等のコネクターによってセンサーアセンブリーと接続されてよい。ワイヤは、アンテナ230とセンサーアセンブリー200との間の接続を行うために、フィードスルー120を通して送り込むことが可能である。
【0083】
アンテナ230自体は、適切ないかなる通信プロトコルを用いるように適合、構成されてもよく;例えば、非網羅的なリストとしては、RFID、ブルートゥース、赤外(IR)、802.11ワイヤレス、周波数変調式(FM)送信、またはセルネットワークであってよい。
【0084】
別の選択肢として、ワンワイヤ通信が実行されてもよい。ワンワイヤ通信の場合、通信に必要であるのは単一の金属導電体のみであり、回路の「戻り」経路は、通信デバイス間の空気を通した容量結合によって提供される。当業者であれば、本明細書で考察する実施形態で用いることが可能である別の選択肢としてのアンテナ230(および関連する送信用ハードウェア)を容易に認識するであろう。
【0085】
発明者らは、高圧の影響を受けやすいのは、センサーアセンブリー200の少数のコンポーネントのみであることを見出した。特に、電池などのより大きいコンポーネントが、高圧に弱いものであり得る。しかし、リチウムイオン電池が、ガスシリンダー100内で遭遇する高圧下で特に良好に機能することが見出された。従って、電池206は、リチウムイオンセルを含む。しかし、当業者によれば、別の選択肢としての適切な電力源が容易に考慮される。
【0086】
センサーアセンブリー200を完全にガスシリンダー100内に配置することにより、ガスシリンダー100の設計の際にさらなる柔軟性が得られる。特に、比較的脆弱な電子コンポーネントを、ガスシリンダー100の強い金属またはコンポジット壁内に完全に配置することにより、環境または不慮の損傷からの高い保護が得られる。このことは、例えば、ガスシリンダー100が、他のガスシリンダー100、重機械、または粗い表面に隣接して配置される保管領域または倉庫において特に重要である。
【0087】
さらに、センサーアセンブリーの電子コンポーネントをガスシリンダー100の内部容積内に完全に配置することにより、そうでなければシリンダー100の外面での使用に適さない場合のあるより大きいコンポーネントを配置することが可能となる。例えば、センサーアセンブリー200の作動寿命を延ばす目的で、より大きい電池が提供され得る。
【0088】
さらに、センサーアセンブリー200が内部に配置されることにより、塩分、水分、およびその他の汚染物などの環境条件から電子コンポーネントが保護される。このことにより、例えば、塩分および水分による損傷を非常に受けやすい高インピーダンス回路を、センサーアセンブリー200の一部分として用いることが可能となる。
【0089】
しかし、図2では、センサーアセンブリー200がシリンダーの内部に配置されて示されるが、その他の配置も適切であることは理解されたい。例えば、センサーアセンブリー200は、フィードスルー120に隣接してバルブ104に搭載されるか、またはバルブ104の別のセクションを形成してよい。重要なことは、石英水晶発振器202が、ガスシリンダー100の内部容積V中のガスに暴露されることである。
【0090】
さらなる変更が、本発明の範囲内である。例えば、石英水晶発振器202が、ガスシリンダー100の内部容積V内に配置され、駆動回路204が、ガスシリンダー100の外部に配置されてよい。従って、センサーアセンブリー200の少なくとも一部が、貫通孔部118中に配置される。石英水晶発振器202および駆動回路204は、その場合、高圧フィードスルー120を通されるワイヤリング208によって接続される。
【0091】
さらなる変更では、センサーアセンブリーの他の部分が、ガスシリンダー100の内部容積V内に配置されてよく、1つの部分が、その外部に配置されてよい。例えば、駆動回路212およびプロセッサー220が、ガスシリンダー100内に配置されてよく、一方電池206が、ガスシリンダー100の外側に配置されてよい。この設備により、センサーアセンブリーのより脆弱なコンポーネントを、損傷および汚染から保護することが可能となり、一方電池206は、メンテナンスおよび交換のために容易に接触可能である。
【0092】
外部との通信に関して、1つの設計では、外部エアリアルまたはアンテナ(アンテナ230など)が明確に必要というわけではない。例えば、通信は、シリンダー100内部からの音響送信によって行われてよい。音響送信は、ガスシリンダー100内に配置された送信機によって行われてよい。送信機は、例えば、単純な固定周波数圧電共振器を含んでよい。
【0093】
相補的な受信機も必要であり、このコンポーネントは、シリンダー100から離れて配置されてよく、例えばマイクロホンと一体化された位相同期ループ式トーン検出器(phase-locked loop tone detector)などのハードウェアを含んでよい。そのような音響設備は、フィードスルーを必要としないこと(アンテナ230の場合のようには)、および電子コンポーネントのすべてを完全にシリンダー100内に配置することができることという利点を提供する。
【0094】
別の選択肢として、センサーアセンブリー200は、ガスシリンダー自体に搭載されるディスプレイデバイス(図示せず)に接続されてもよい。これは、シリンダー100に残留するガスの質量、または例えばガスの使用率を表示するように作動可能であるデジタルディスプレイの形態を取ってよい。
【0095】
本設備では、石英水晶発振器202は、常にガスシリンダー100の内部容積V内の均衡圧力下にあり、圧力勾配を受けることはない。言い換えると、ガスシリンダー100の内部容積Vと外部環境との間の圧力差に起因するいかなる機械的ストレスも、フィードスルー120に掛かっている。
【0096】
センサーアセンブリー200が内部に配置されることによる有益性は、石英水晶発振器210などのソリッドステートセンサーデバイスに特有である。例えば、ブルドンゲージなどの従来の圧力センサーは、この方法で配置することができない。水晶系センサーが、一定圧力のガス中に完全に浸漬された状態で作動することができるのに対し、従来の圧力センサーは、均衡圧力を測定することができず、機能するためには、圧力勾配が必要である。従って、従来の圧力ゲージは、測定すべき高圧と大気との間に配置される必要がある。このことにより、従来の圧力ゲージをガスシリンダー100内に完全に配置することはできない。
【0097】
ここで、センサーアセンブリー200について、図2、および3aから3fを参照してより詳細に記載する。石英水晶発振器202は、石英カット品の小さく薄いセクションを含む。石英は、圧電挙動を示し、すなわち、水晶全体にわたって電圧を印加することで、水晶に形状の変化が引き起こされ、機械的な力が発生する。逆に、水晶に機械的な力が加えられると、電荷が発生する。
【0098】
石英水晶発振器202の2つの平行な表面は、水晶の塊全体にわたって電気接続を提供する目的で、金属化される。その金属接点によって電圧が水晶全体に印加されると、水晶は形状を変化させる。交流電圧を水晶に印加することにより、水晶に発振を引き起こすことができる。
【0099】
石英水晶の物理的サイズおよび厚さが、石英水晶の特性、または共振周波数を決定する。実際、水晶202の特性、または共振周波数は、2つの金属化表面間の物理的厚さに逆比例する。
【0100】
石英水晶の共振振動周波数は、水晶が配置される環境に依存して様々となる。真空下では、水晶は、特定の周波数を有する。しかし、この周波数は、異なる環境中では変化する。例えば、流体中では、水晶の振動は、周囲の流体分子によって減衰されることになり、このことが、共振周波数、および任意の振幅での水晶の発振に必要とされるエネルギーに影響を与える。
【0101】
さらに、水晶上へのガスの吸着または周囲の物質の堆積により、振動する水晶の質量が影響を受け、共振周波数が変化する。これは、一般的に用いられる選択性ガス分析器の基礎を形成するものであり、そこでは、水晶上に吸収層が形成され、吸収層上にガスが吸収されるに従って、その質量が増加する。しかし、本発明の場合、石英水晶発振器202にコーティングは適用されない。実際、石英水晶発振器202上への物質の吸着または堆積は、測定の精度が影響を受けかねないことから、本発明の場合は望ましくない。
【0102】
本実施形態の石英水晶発振器202は、音叉の形状をしており、本実施形態では32.768kHzの共振周波数で発振するように構成された長さがおよそ5mmである1対のタイン部202a(図3a)を含む。音叉形状のタイン部202aは、通常、その基本モードで発振し、その場合、それらは、共振周波数で同期して、互いに向かう方向に、および互いから離れる方向に動く。
【0103】
加えて、ATカットまたはSCカットである石英を用いることが望ましい。言い換えると、石英の平面セクションは、発振周波数の温度係数が、室温近辺での広いピークを有する放物線状として構成され得るように、特定の選択された角度でカットされる。従って、水晶発振器は、ピークトップの傾きが精密にゼロとなるように構成され得る。
【0104】
そのような水晶は、一般的に、比較的低コストで入手可能である。真空下で用いられる大部分の石英水晶発振器とは対照的に、本実施形態では、石英水晶発振器202は、ガスシリンダー100の内部容積V中にて、圧力下のガスに暴露される。
【0105】
センサーアセンブリー200は、筐体250をさらに含む。筐体250は、石英水晶発振器202を封入するように作動可能であり、使用時、ガスシリンダー100の内部容積V中に配置される。筐体250は、センサーアセンブリー200によって行われる測定に対するガスシリンダー100内の対流による影響を低減するように作動可能である。図2の筐体250を、より詳細に図3aに示す。
【0106】
図3aを参照すると、筐体250は、本実施形態では、第一の筐体部分252および第二の筐体部分254を含む。第一の筐体部分252は、実質的円柱形状側壁部256、遠位端壁部258、ならびに石英水晶発振器202に隣接し、筐体250の近位端部を封止する近位端壁部260を有する。第一の筐体部分252の壁部は、第一のチャンバー262を定める。第一のチャンバー262は、石英水晶発振器202を実質的に封入し、筐体250の近位端部に隣接して配置される。
【0107】
第一の筐体部分254は、石英水晶センサーに一般的に利用可能である従来の圧力筐体を含んでよい。これによって、製造コストを削減することができる。しかし、別の選択肢としての設計が用いられてもよく、そのいくつかの考え得る変更を、図3bから3fに示す。
【0108】
第二の筐体部分254は、実質的円柱形状側壁部264、遠位端壁部266、および近位端壁部268を有する。第二の筐体部分254の壁部は、第二のチャンバー270を定める。本実施形態では、第二の筐体部分254は、直径がおよそ6mmおよび長さがおよそ80mmの円柱形状である。しかし、これは、限定的に解釈されるべきではなく、寸法および断面形状は、必要に応じて変更されてよい。
【0109】
第二のチャンバー270は、第一のチャンバー262に隣接して配置され、第一の筐体部分252の遠位端壁部258の貫通孔部272によってそれと流体連結されている。本実施形態では、貫通孔部272は、およそ0.35mmの直径を有する。しかし、貫通孔部のその他の形状および寸法が必要に応じて用いられてよい。加えて、必要とされる場合は、複数の貫通孔部272が提供されてよい。
【0110】
さらなる貫通孔部274が、第二の筐体部分254の側壁部264に形成され、それによって、第二のチャンバー270は、ガスシリンダー100の内部容積V中のガスと、および筐体250の外部と流体連結される。本実施形態では、さらなる貫通孔部274は、0.22mmの直径を有する。しかし、別の選択肢としてのサイズである0.35mmの貫通孔部274でも、良好な結果を得られることが見出された。当業者であれば、本発明で用いられ得る貫通孔部の設計、寸法、および形状を容易に認識するであろう。加えて、複数の貫通孔部274が提供されてよい。
【0111】
筐体250は、第一および第二のチャンバー262、270が、直列状態で互いに、およびガスシリンダー100の内部容積Vと流体連結される構造である。言い換えると、石英水晶発振器202が暴露されるガスは、石英水晶発振器202に到達する前に、ガスシリンダー100の内部容積Vから第二のチャンバー270を通って第一のチャンバー262まで送られる必要がある。
【0112】
図2および3aに示す実施形態では、筐体250によって形成される第一および第二のチャンバー262、270は、別々の構造として形成される。しかし、こうである必要はなく、単一の共通の筐体が用いられてもよい。
【0113】
図3bから3fは、本発明の範囲内の筐体250の別の選択肢としての実施形態を示す。分かりやすくするために、図3aの実施形態と共通する特徴を表す符号は省略した。
【0114】
図3bは、筐体250の第二の実施形態を示す。第二の実施形態は、第一の実施形態と構造的に類似ているが、但し、貫通孔部274が、第二の筐体部分254の遠位端壁部266に形成される。
【0115】
図3cは、筐体250の第三の実施形態を示す。図3cの実施形態は、筐体250の第一および第二の実施形態と構造的に類似ているが、但し、第二の筐体部分254の長さが延長されている。本実施形態では、第二の筐体部分254は、およそ230mmの長さを有する。図3cは、貫通孔部274が遠位端部にあるものとして示されるが、貫通孔部274は、同様に、第二の筐体部分254の側壁部264に形成されてもよい。
【0116】
図3dから3fの実施形態は、筐体250の異なる構造を示す。図3dに示される筐体250の第四の実施形態は、筐体250が単体部分であり、円柱形状外側壁部276、遠位端壁部276、および近位シール280を含む。
【0117】
壁部276、278、280は、筐体250の内部の境界を定める。筐体250は、筐体250の内部を第一および第二のチャンバー284、286に分割する内側壁部282をさらに含む。第一のチャンバー284は、石英水晶発振器202を実質的に封入し、筐体250の近位端部に隣接して配置される。
【0118】
第二のチャンバー286は、第一のチャンバー284に隣接して配置され、内側壁部282の貫通孔部288によってそれと流体連結されている。本実施形態では、貫通孔部288は、およそ0.35mmの直径を有する。しかし、必要に応じて、その他の形状および寸法の貫通孔部が用いられてもよい。加えて、必要とされる場合、複数の貫通孔部288が提供されてよい。
【0119】
第二のチャンバー286とガスシリンダー100の内部容積Vとの間の流体連結を可能とするために、さらなる貫通孔部290が提供される。第一の実施形態と共通して、貫通孔部290は、筐体250の側壁部276に提供される。
【0120】
筐体250の第五の実施形態を図3eに示す。筐体250の第五の実施形態は、第四の実施形態と構造的に類似しているが、貫通孔部290は、筐体250の遠位端壁部278に提供されており、および筐体250は、第二のチャンバー286の内部容積が大きくなるように、長さが長くなっている(本実施形態では、230mm)。これらの変更のいずれかが、第五の実施形態に適用されてよい。
【0121】
筐体250の第六の実施形態を図3fに示す。筐体250の第六の実施形態は、第五の実施形態と構造的に類似しているが、第二の内側壁部292が提供されている。第二の内側壁部292は、そこに形成された貫通孔部294を有し、筐体250の内部を、第一のチャンバー284、第二のチャンバー286、および第三のチャンバー296の3つのチャンバーに分割する。
【0122】
第一、第二、および第三のチャンバー284、286、296は、直列状態で互いに、および筐体250の外部のガスシリンダー100の内部と流体連結される。言い換えると、石英水晶発振器202が暴露されるガスは、石英水晶発振器202に到達する前に、ガスシリンダー100の内部容積Vから、第三のチャンバー296、第二のチャンバー286を通って第一のチャンバー284まで、順に連続して送られる必要がある。
【0123】
上述した筐体250の第一から第六の実施形態で示されるように、一連のチャンバーを提供することにより、ガスシリンダー100内の対流の気圧力学的抑制が可能となる。上述のように、シリンダー100内の温度差の結果として、対流がシリンダー中で発生することが多い。対流は乱流の形で発生し、密度および温度の変化(ρ〜1/Tとなるように)に対して、圧力の変化はほとんど得られない。
【0124】
発明者らは、筐体250の作動原理を以下のように理解する。筐体250は、密度および温度の変化を平滑化する傾向にあるガスの内部容積を定める。原理上、圧力が変化しないことから、筐体250の貫通孔部を通る流れは存在しない。従って、この系は、そのすぐ外側での密度および温度の変化に従って、一定の圧力での一定の出力を提供する。筐体250の温度が変化した場合にのみ、測定される密度が変化する。しかし、筐体250の内部におけるガスの体積の熱質量が大きいことから、これは実際には限定的である。
【0125】
しかし、発明者らは、筐体250が、例えばガスシリンダー100から流量が抜き取られる場合にみられる圧力変動に関して、異なった応答を見せることを見出した。この場合、貫通孔部が充分に大きいため、対応する圧力変化が、貫通孔部を通る流体流を介して、ほとんど瞬時に伝達される。
【0126】
上述の有益性を得るためには、少なくとも2つのチャンバーを含む筐体250が必要であることが見出された。単一チャンバー設備は、シリンダー内の対流によってもたらされる密度および温度の変化からの充分な隔離性を提供するには非効果的であることが見出された。
【0127】
石英水晶発振器202を駆動するための駆動回路204を図4に示す。駆動回路20は、いくつかの特定の基準を満たす必要がある。第一に、本発明の石英水晶発振器202は、様々なガス圧に暴露される可能性があり;可能性として、その圧力は、大気圧(ガスシリンダー100が空である場合)から、ガスシリンダーが水素などの圧縮ガスを含有する場合の約900バールgまで様々であり得る。従って、石英水晶202は、広範囲に及ぶ圧力下で作動(およびある非使用期間後に再作動)することが要求される。
【0128】
従って、石英水晶発振器202の特性値(Q)は、使用の過程で大きく変動することになる。Q値は、発振器または共振器の減衰率に関連する無次元のパラメーターである。換言すれば、それは、その中心周波数に対する共振器のバンド幅を特徴づけ得る。
【0129】
一般的に、発振器のQ値が高いほど、発振器に蓄えられたエネルギーに対するエネルギー喪失率が低くなる。言い換えると、Q値の高い発振器の発振は、外部力の非存在下において、振幅の低下がより遅い。より高いQ値を有する正弦波で駆動される共振器(sinusoidally driven resonators)は、共振周波数にてより大きい振幅で共振するが、それが共振するその周波数近辺の周波数のバンド幅はより小さい。
【0130】
駆動回路204は、Q値の変化に関わらず、石英水晶発振器202を駆動することが可能である必要がある。ガスシリンダー100中の圧力が上昇すると、石英水晶発振器202の発振は次第に減衰され、Q値は低下する。Q値の低下により、駆動回路204の増幅器によってより高いゲインが提供されることが必要となる。しかし、提供される増幅が高過ぎると、駆動回路204、石英水晶発振器202からの応答を区別することが難しくなり得る。この場合、駆動回路204は、単に、関連しない周波数にて、または石英水晶発振器202の非基本モードの周波数にて発振し得る。
【0131】
さらなる制限として、駆動回路204は、光起電力セルなどの補給電力有りまたは無しで、長期間にわたって小型低電力電池で運転する目的で、低電力である必要がある。
【0132】
ここで、駆動回路204について、図4を参照して記載する。石英水晶発振器202を駆動するために、駆動回路204は、本質的に、石英水晶発振器202からの電圧シグナルを取り、それを増幅し、そのシグナルを逆に石英水晶発振器202へ供給する。石英水晶発振器202の基本共振周波数は、本質的に、石英の膨張および収縮率の関数である。これは、一般的には、水晶のカットおよびサイズによって決定される。
【0133】
しかし、外部因子も、共振周波数に影響を及ぼす。発生された出力周波数のエネルギーが、回路のロスと合致する場合、発振を維持することができる。駆動回路204は、この発振周波数を検出し、維持するように構成される。次に、周波数がプロセッサー220によって測定され、これを用いて、ユーザーが求めるガスの適切な特性を算出し、必要である場合は、適切な表示手段へ出力することができる(以降で述べるように)。
【0134】
駆動回路204は、6V電力源206によって電力供給される。電力源206は、本実施形態において、リチウムイオン電池を含む。しかし、当業者であれば、別の選択肢としての電力源も容易に明らかであり;例えば、充電式および非充電式の両方のその他のタイプの電池、ならびにソーラーセル設備である。
【0135】
駆動回路204は、ダーリントンペア共通エミッタ増幅器210をさらに含む。ダーリントンペアは、第一のトランジスターによって増幅された電流が、第二のトランジスターによってさらに増幅されるように設計された2つのバイポーラNPNトランジスターから成る複合構造を含む。この設計により、各トランジスターが別々に用いられることと比較して、より高い電流ゲインを得ることが可能となる。別の選択肢として、PNPバイポーラトランジスターが用いられてもよい。
【0136】
ダーリントンペア210は、シングルトランジスター(T1)共通エミッタ増幅器212からのフィードバックコンフィギュレーションで構成される。NPNバイポーラ接合トランジスターを図4に示す。しかし、当業者であれば、バイポーラ接合PNPトランジスターまたは酸化金属半導体電界効果トランジスター(MOSFET)を例とする、用いることができる別の選択肢としてのトランジスター設備を認識するであろう。
【0137】
駆動回路204は、バッファー増幅器214として作用するさらなるNPNエミッタフォロワートランジスターT2を含む。バッファー増幅器214は、回路と外部環境との間のバッファーとして機能するように構成される。
【0138】
キャパシター216は、石英水晶発振器202と直列に配置される。この例では、キャパシター216は、100pFの値を有し、水晶が例えば塩またはその他の堆積物によって汚染された状況において、駆動回路204が石英水晶発振器202を駆動することを可能とする。
【0139】
ここで、別の選択肢としての駆動回路240について、図5を参照して記載する。駆動回路240は、上述の駆動回路204の代わりに用いることができる。上述の駆動回路204とは対照的に、駆動回路240は、図6の回路のダーリントンペアの代わりに、共通ドレイン酸化金属半導体電界効果トランジスター(MOSFET)増幅器242を含む。MOSFET242は、増幅器ステージの入力インピーダンスが石英水晶発振器202の高インピーダンスと合致可能とする高インピーダンス入力として機能する。言い換えると、MOSFET242は、石英水晶発振器202上の電気的負荷を低減するために、高入力インピーダンスのユニティゲインを提供する。
【0140】
共通ドレインMOSFET増幅器242の出力は、2つの連続するシングルトランジスター(Q2、Q3)共通エミッタ増幅器244に供給される。抵抗器R6およびR8は、これらのトランジスターのためのネガティブフィードバックおよびバイアス電流の両方を提供する。共通エミッタ増幅器244は、高ゲインを提供して石英水晶発振器202の発振を増幅し、本実施形態では、NPNバイポーラ接合トランジスターを含む。しかし、当業者であれば、バイポーラ接合PNPトランジスターまたはMOSFETを例とする、用いることができる別の選択肢としてのトランジスター設備を認識するであろう。
【0141】
キャパシター246は、石英水晶発振器202とアースとの間に接続される。キャパシター246は、本実施形態において、石英水晶発振器202への駆動を増加させるように作動可能である。
【0142】
抵抗器248は、石英水晶発振器202と直列に接続される。抵抗器248は、本実施形態において、56kΩの値を有し、広範囲の圧力にわたって、波形の緩やかな変化のみで回路の発振を可能とする目的で、石英水晶発振器202の発振を減衰する。
【0143】
駆動回路240は、3V電池249によって電力供給される。電池249は、本実施形態において、リチウム電池を含む。しかし、当業者であれば、別の選択肢としての電力源も容易に明らかであり;例えば、充電式および非充電式の両方のその他のタイプの電池、ならびにソーラーセル設備である。別の選択肢として、電気幹線供給設備(mains supply arrangement)が、DC整流および適切な電圧低下後に用いられてもよい。
【0144】
ここで、さらなる別の選択肢としての駆動回路300について、図6を参照して記載する。図6に示される駆動回路は、ピアス発振器に類似して設計される。ピアス発振器は、デジタルICクロック発振器から知られている。本質的に、駆動回路300は、シングルデジタルインバーター(トランジスターの形態で)T、3つの抵抗器R1、R2、およびRS、2つのキャパシターC1、C2、ならびに石英水晶発振器202を含む。
【0145】
本設備において、石英水晶発振器202は、高選択性フィルター素子として機能する。抵抗器R1は、トランジスターTのための負荷抵抗器として作用する。抵抗器R2は、フィードバック抵抗器として作用し、作動のその直線領域にて、インバーターTにバイアスをかける。このことにより、インバーターTが、高ゲイン反転増幅器として作動することが実質的に可能となる。別の抵抗器RSは、インバーターTの出力と石英水晶発振器202との間に用いられて、ゲインを制限し、回路中の望ましくない発振を減衰する。
【0146】
石英水晶発振器202は、C1およびC2と組み合わされて、Piネットワークバンドパスフィルターを形成する。これにより、180度の位相偏移、および石英水晶発振器のおよそ共振周波数での出力から入力への電圧ゲインが可能となる。上述の駆動回路300は、信頼性が高く、それが比較的少数のコンポーネントを含むことから、安価に製造される。
【0147】
上記で考察したように、センサーアセンブリー200は、石英水晶発振器202からの入力を受けるプロセッサー220、および駆動回路204を含む。プロセッサー220は、特定用途向け集積回路(ASIC)またはプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの適切な設備を含んでもよい。プロセッサー220は、シリンダー100のユーザーにとって有用であるパラメーターを算出、表示、および通信するようにプログラム可能である。
【0148】
石英水晶発振器202と共に用いられる場合、プロセッサー220は、駆動回路204からのシグナルの周波数fまたは周期を測定するように設計されてよい。これは、例えば、一定時間にわたって発振をカウントし、アルゴリズムまたはルックアップテーブルを用いてその周波数を密度値に変換することによって達成することができる。この値は、供給された入力に基づいて計算を実施して、ガスシリンダー100中のガスの質量を特定するように設計されるプロセッサー220に送られる。
【0149】
プロセッサー220は、所望に応じて、すべてのシリンダーにおいて同一となるように大量生産され、異なるガスに対してソフトウェアおよびハードウェアの異なる機能が可能となるように設計されてよい。
【0150】
加えて、プロセッサー220は、プロセッサー220、ならびに駆動回路204および石英水晶発振器202などのさらなるコンポーネントに適用されてよいスタンドバイまたは「スリープ」モードを実装することで、電力消費量を最小限に抑えるように設計されてもよい。
【0151】
種々のスキームが実装されてよく;例えば、プロセッサー220は、毎11秒のうちの10秒間がスタンドバイ状態であってよい。さらに、プロセッサー220は、石英水晶発振器202および駆動回路204の制御を、これらのコンポーネントが大部分の時間はスタンドバイ状態に置かれ、これらのより電力を消費するコンポーネントが30秒ごとに1/2秒間だけスイッチが入った状態となるように行ってよい。別の選択肢として、または追加として、アンテナ230などの通信コンポーネントが、必要に応じてスイッチが切られてよく、またはセンサーアセンブリー200の起動に用いられてもよい。
【0152】
センサーアセンブリー200の理論および作動について、ここで、図7から14を参照して記載する。
【0153】
石英水晶発振器210は、それが配置されている流体の密度に依存する共振周波数を有する。発振する音叉型の平面水晶発振器をガスに暴露することにより、水晶の共振周波数の偏移および減衰が引き起こされる(真空中の水晶の共振周波数と比較した場合)。これにはいくつかの理由がある。水晶の発振に対するガスの減衰効果が存在する一方で、音叉型水晶発振器210の振動するタイン部210aに隣接するガスは、発振器の有効質量を増加させる。このことは、片側固定弾性棒(one-sided, fixed elastic beam)の運動に従って、石英水晶発振器の共振周波数の低下を引き起こすものであり:
【数1】
ここで、fは、発振の周波数であり、f0は、真空中での発振の周波数であり、ρは、ガス密度であり、M0は、定数である。
【0154】
密度ρは、ほとんどすべての場合において、M0と比較して小さく、従って、この式は、以下の一次方程式によって近似することができ:
【数2】
これは、f0からの周波数偏移Δfに関して再度表すことができ、方程式3)で示される。
【数3】
【0155】
従って、良好な近似として、周波数の変化は、石英水晶発振器が暴露されるガスの密度の変化に比例する。図7は、いくつかの異なるガス/ガス混合物に対して、石英水晶発振器210の共振周波数が、密度の関数として直線的に変化することを示している。
【0156】
一般的に、石英水晶発振器202の感度は、大気圧と比較した場合に、例えば250バールの酸素ガス(原子質量数32を有する)で、周波数の5%の変化が見られる感度である。そのような圧力およびガス密度は、永久ガスに用いられる保存シリンダーに典型的なものであり、通常、ほとんどのガスの場合、137から450バールgであり、ヘリウムおよび水素の場合、700または900バールgまでである。
【0157】
石英水晶発振器202は、商業的に供給されるガスのための密度センサーとしての使用に特に適している。第一に、ガスの密度を正確に検知するために、ガスがダストおよび液滴を含まないことが必要であり、これは、商業的に供給されるガスでは保障されるが、空気または大多数の圧力モニタリングの状況ではそうではない。
【0158】
第二に、シリンダー内のガス圧力は、通常の使用時(すなわち、ガスが出口部110を通して排出される場合)にはゆっくり変化することしかできないことから、石英水晶発振器202が読み取りに少しの時間(およそ1秒間)を要することは、測定の精度に影響を与えるものではない。およそ1秒間という時間は、発振のカウントのための必要性、および石英水晶発振器202が新しいガス圧力で平衡に達するための必要性のために、必要とされる。
【0159】
この方法は、ガスシリンダー100中のガスが均一でない場合、例えば、ガスが、部分的に液体が充填されたシリンダー内にて起こり得るか、または作製されたばかりで、混合が不充分である軽質および重質ガスの混合物の場合など、不均一混合物である場合に、精度が下がる場合がある。しかし、ほとんどのパッケージガス用途では、これが発生する可能性は低い。
【0160】
既述のように、ガスシリンダー100内の内部容積Vは、固定である。従って、ガスシリンダー100の内部容積V内のガス密度ρがセンサーアセンブリー200による測定から得られると、シリンダー中のガスの質量Mは、以下の方程式から得ることができる:
【数4】
【0161】
従って、ガス密度ρの直接測定から、ガスシリンダー100中に残留するガスの質量を算出することができる。
【0162】
この方法によるガス質量の測定は、公知の設備と比較していくつかの利点を有する。例えば、本発明の実施形態に従って測定される質量は、本質的に温度補正されている。対照的に、例えばブルドンゲージを用いる圧力測定は、絶対温度に比例して変動する。従って、本設備は、公知の設備の場合のような温度の測定および/または補正を必要としない。
【0163】
さらに、本発明の実施形態に従って測定されるガスの質量は、本質的に圧縮性Zに対する補正が成されている。例えば、圧力からガス内容量を得るためにブルドンゲージを用いる従来の設備では、ガスの圧縮性に対する補正が必要である。これは、圧縮性Zが理想気体で期待される形でガス圧力と比例しない高圧力の場合に特に重要である。
【0164】
圧縮性に対する自動的な補償を、図8および9を参照して示す。図8は、アルゴン、酸素、およびアルゴン:二酸化炭素混合物に対する、圧力(バールg)の関数としてのガス質量(kg)をY軸とするグラフを示す。図8に示されるように、異なるガスの質量は、圧力の上昇と共に異なっている。さらに、250バールgを超える高圧では、質量と圧力との間に直線関係が存在しなくなる。
【0165】
図9は、図8と同じ3種類のガス(アルゴン、酸素、およびアルゴン:二酸化炭素混合物)に対する、密度(kg/m3)の関数としてのガス質量(kg)をY軸とするグラフを示す。図8とは対照的に、密度の関数としてのガスの質量は、各ガス/ガス混合物において同一であることが分かる。さらに、高密度においても、関係は依然として直線である。従って、石英水晶発振器202は、高分解能、および密度との高直線性を兼ね備えることができる。
【0166】
上記で概説するように、本発明の設備では、百万分率の分解能の非常に高い精度での質量測定が可能である。高い密度および圧力での石英密度センサー202の直線応答と合わせて(図8および9に示すように)、高精度であることにより、H2およびHeなどの非常に軽質であるガスを正確に測定することが可能となる。
【0167】
多くの実際の状況では、ガスシリンダー100への、またはそこからの質量流量を測定することは重要である。これは、例えばシリンダーが空になるまでの残り時間を算出するために、ガスシリンダー100からのガスの使用率が必要とされる状況において有用であり得る。別の選択肢として、または加えて、ガスの精密な量を管理する目的で、質量流量をモニタリングすることもできる。
【0168】
大気圧でのガス密度は、僅かに1g/リットルのオーダーであり、通常のガス使用率は、多くの場合、1分間あたり僅かに数リットルである。発明者らは、石英水晶発振器202が、指示密度の変化によってガスシリンダー100から出るガスの質量流量の測定を可能とするのに充分な安定性および精度を有することを見出した。質量流量
【数5】
は、方程式5)から算出され、
【数6】
ここで、Vは、容積であり、Δρは、時間間隔Δtにわたって示される密度の変化である。この場合、センサーアセンブリー200の作動には、石英水晶発振器202のいくつかの発振サイクルにわたって積分を行うことが駆動回路204に必要となる。
【0169】
従って、時間に対する密度の瞬間的な変化率
【数7】
を得ることは不可能である。しかし、時間に対する密度の変化率は、通常作動下のガスシリンダー100では、比較的小さい。従って、センサーアセンブリー200を用いて得られる測定値は、通常の使用では充分に正確である。
【0170】
図10および11は、質量流量検出の実験データを示す。図10は、指示圧力約100バールでの50リットルシリンダーからの1分間あたり12リットルの流速の場合の、X軸の時間(分)の関数としてのY軸の周波数(kHz)のグラフを示す。図11は、圧力約100バールでの50リットルシリンダーの場合の、X軸の時間(分)の関数としてのY軸の算出流速(1分間あたりのリットル)のグラフを示す。
【0171】
これらの図は、ほとんどの通常使用において、ガスシリンダー100からのガスの質量流速を、時間に対する密度の変化の測定から特定することができることを示している。従って、質量流速は、石英水晶発振器202および駆動回路204を用いて、充分な精度および時間分解能で算出することができる。
【0172】
図12は、本発明の作動を示すさらなる実験データを示す。図12は、X軸の全シリンダー質量(kg)の関数としてのY軸の周波数(kHz)のグラフを示す。分かるように、グラフは、高い精度で、ほぼ直線である。従って、図12は、ガスシリンダー100内のガスの質量を、石英水晶発振器202を用いて正確に測定することができることを示している。
【0173】
しかし、上述のように、シリンダーから流量が抜き取られる場合、シリンダーの上部は、シリンダーの他の部分よりも非常に冷たくなる場合があり、シリンダー内に強い対流を発生させる。図13は、ガス流が10分間にわたって抜き取られたシリンダーからのガス流量の測定に対する対流の影響を示す。
【0174】
この実験設定では、筐体250は省略され、石英水晶発振器202は、ガスシリンダー100の内部に、カバーを外されて、シリンダー100中のガスに直接暴露されて配置される。
【0175】
図13から、対流は、流れの停止後の流量シグナルに著しいノイズを引き起こすことが分かる。Y軸は、リットル/分の流量を2で除したものを示し、一方X軸は、時間であり、1秒あたり1データポイントである。対流に起因するノイズレベルは、誤った流速が検出される可能性があり、ほとんど意味を成さない情報が収集される恐れがあることを意味している。特に、ノイズの変動は、+10リットル/分から−10リットル/分までの振動する流速の誤った測定値をもたらし得る。これは、高い精度の商業的使用にとって、明らかに容認できないものである。
【0176】
図14は、類似の測定を示す。しかし、この場合、実験設備は、第一の実施形態の筐体250を含み、これは、石英水晶発振器202の周囲に配置されて、気圧ダンパー(pneumatic damper)として作用する。図14に示されるように、データは、バルブが開けられてガスが流れている場合(およそ12リットル/分の流速で)、およびバルブが閉じられている場合の両方において、図13に示される測定よりも著しくノイズが少ないことを示している。
【0177】
示されるように、本発明の実施形態に従う筐体250は、シリンダー100内の対流に起因するデータノイズ(およびその結果としての測定誤差)を大きく低減する。
【0178】
発明者らは、電子フィルタリング単独を用いることでは、このノイズの低減を効果的に達成することができないことを見出した。例えば、RCフィルターまたは指数関数デジタルフィルター(exponential digital filter)を適用すると、ある程度のシグナルのスムージングは得られるが、実験から、許容される結果を得るためには、およそ30秒の時定数が必要とされることが見出された。この遅い応答時間は、ほとんどの典型的な商業的用途において、許容されない。
【0179】
しかし、筐体250(対流に起因するノイズを大きく低減する)および電子フィルタリングの組み合わせにより、良好な結果を得ることができることが見出された。ノイズは、筐体250を用いることによって大きく低減されることから、より短い時間にわたる平滑化を行う電子フィルタリングを提供することで、応答を改善することができる。
【0180】
指数関数平滑化モデルを、方程式6)の式を用いて適用し:
【数8】
ここで
【数9】
は、これまでに算出された
【数10】
の値(または平均値)であり、
【数11】
は、現在記録されている
【数12】
の値であり、γは、指数関数減衰定数(exponential decay constant)である(0から<1)。
【0181】
しかし、指数関数フィルタリング(exponential filtering)は、報告される値にタイムラグを誘導する。この遅延は、方程式7)を用いて算出することができ:
【数13】
ここで、
【数14】
は、読み取り間の時間である。
【0182】
図15は、減衰定数γ0.9のフィルタリングの効果を示す実験測定を示す。フィルターが、シグナルのノイズをさらにスムージングする効果を有することが明らかに分かる。
【0183】
以下の表1は、本発明の実施形態に従う筐体の設備に対して行った測定の概要を示す。以下に示すように、筐体250の種々の実施形態の使用により、シリンダー100内の対流の結果としてのノイズの低減が、最大で1桁分改善される結果となる。さらに、数値フィルタリングは、流量の幅(flow spread)(すなわち、測定シグナル上のノイズの結果としての流量の測定される変動)をなおさらに低減することができる。しかし、数値平滑化は、応答時間という代償を払うことになる。従って、実際には、トレードオフが必要とされる。
【0184】
【表1】
【0185】
ここで、本発明の実施形態に従う方法を、図16を参照して記載する。以下に記載する方法は、上述した実施形態の各々に適用可能である。
【0186】
[工程400:測定初期化]
工程400において、ガスシリンダー100中のガスの質量の測定が初期化される。これは、例えば、ガスシリンダー100の外側にあるボタンをユーザーが押すことによって起動されてよい。別の選択肢として、測定は、リモート接続によって開始されてもよく、例えば、ワイヤレスネットワークを通してシグナルが送信され、アンテナ230を通してセンサーアセンブリー200によって受信される(図2参照)。
【0187】
さらなる別の選択肢として、または追加として、センサーアセンブリー200は、リモートで、またはタイマーで初期化されるように設計されてよい。方法は、工程402へ進む。
【0188】
[工程402:石英水晶発振器の駆動]
初期化されると、駆動回路204を用いて石英水晶発振器202が駆動される。初期化の過程で、駆動回路204は、水晶202全体にランダムノイズAC電圧を印加する。そのランダム電圧の少なくとも一部は、水晶202に発振を引き起こすのに適する周波数である。水晶202は、次に、そのシグナルと同期して発振を開始する。
【0189】
次に、圧電効果により、石英水晶発振器202の運動が、石英水晶発振器202の共振周波数バンドの電圧を発生させる。次に、駆動回路204は、石英水晶発振器202によって発生されたシグナルを、石英水晶共振器202の周波数バンドで発生されたシグナルが駆動回路204の出力中で支配的となるように増幅する。石英水晶の狭い共振バンドにより、不要な周波数がすべて選別除去され、次に、駆動回路204は、基本共振周波数fで石英水晶発振器202を駆動する。石英水晶発振器202が特定の共振周波数で安定化すると、方法は、工程304へ進む。
【0190】
[工程404:石英水晶発振器の共振周波数測定]
共振周波数fは、ガスシリンダーの内部容積V内の条件に依存する。本実施形態では、共振周波数の変化Δfは、ガスシリンダー100内のガスの密度の変化に対してその大きさが比例し、密度の増加と共に減少する。
【0191】
測定を行うために、石英水晶発振器202の周波数は、およそ1秒間にわたって測定される。これにより、読みの安定化、および正確な測定値を特定するために充分な発振のカウントが可能となる。周波数の測定は、プロセッサー220で行われる。プロセッサー220は、測定が開始された時間T1の記録も行ってよい。
【0192】
石英水晶発振器202は、既述の実施形態のうちの1つの筐体250内に配置される。従って、測定時間の間、筐体250は、シリンダー100内の対流に起因する密度および温度の変動から石英水晶発振器202を保護する。この状況は、例えば、ガスが所定の時間にわたってシリンダー100から抜き取られ、シリンダー100の上部が冷たくなった場合に発生し得る。
【0193】
周波数が測定されると、方法は、工程406へ進む。
【0194】
[工程406:ガスシリンダー中のガスの質量の特定]
石英水晶発振器202の周波数が工程303で満足の行く形で測定されると、次にプロセッサー220は、ガスシリンダー100中のガスの質量を算出する。
【0195】
これは、上記の方程式5)を用いて行われ、ここで、ガスの質量を、工程304で特定された密度、およびガスシリンダー100の既知の内部容積Vから直接算出することができる。方法は続いて、工程408へ進む。
【0196】
[工程408:測定結果の記憶]
ガスの質量が算出されると、質量は、後に取り出すために、センサーアセンブリー200のプロセッサー220に付随する内部メモリーに単に記録されてよい。なおさらなる別の選択肢として、時間T1でのガスの質量が、前記プロセッサー220のローカルメモリーに記憶されてもよい。
【0197】
方法は続いて、工程410へ進む。
【0198】
[工程410:結果の通信]
所望に応じて行ってよい工程として、ガスの質量を、いくつかの方法で表示させてよい。例えば、ガスシリンダー100またはバルブ104に取り付けられたスクリーンが、ガスシリンダー100内に含有されるガスの質量を表示してよい。別の選択肢として、ガス質量測定値は、ベースステーションへ、または隣接する付属備品上に配置されるメーターへ、リモート通信されてもよい。
【0199】
方法は続いて、工程412へ進む。
【0200】
[工程412:センサーアセンブリーの電源オフ]
センサーアセンブリー200を常時作動状態に保持しておく必要はない。逆に、非使用時にセンサーアセンブリー200のスイッチを切ることによって電力消費を低減することは有益である。これにより、電池206の寿命が長くなる。
【0201】
駆動回路204の設計により、ガスシリンダー100中のガス圧力に関係なく、石英水晶発振器202の再スタートが可能である。従って、センサーアセンブリー200は、電池の電力を節約するために、必要である限り、シャットダウンされてよい。
【0202】
上述の方法は、シリンダー100の内容量の単一測定に関する。本発明の筐体250は、最も顕著に質量流量測定に影響を与える対流を遮断するように構成される一方で、筐体250は、定常状態内容量測定(すなわち、単一測定)も補助する。これは、ユーザーが、残留ガス質量を特定することができるように、特定の流量が抜き取られた後にシリンダー100の真の内容量の定常状態測定を必要とする場合があるからである。
【0203】
しかし、流量が抜き取られた後、シリンダー100の上部が他の部分よりも冷たくなり、中での対流を発生させる場合がある。筐体250は、シリンダー100内の対流に関係なく、真の質量内容量の正確な測定を可能とする。これにより、定常状態測定の精度および速度が改善される。
【0204】
本発明の実施形態の動作方法を、定常状態測定に関連して、上記工程400から412を参照して上述した。しかし、シリンダー100からの質量流量を測定するために、以下の追加の工程も、所望に応じて行ってよい。
【0205】
[工程414−418:質量のさらなる特定]
ガスシリンダー100からの/へのガスの質量流量を算出することが所望される場合がある。T1の後の時間T2において、工程414、416、および418が実施される。工程414、416、および418は、それぞれ、時間T2において実施される工程405、406、および408に対応する。工程414、416、および418から得られる値は、時間T2におけるガスの質量として、プロセッサー220の内部メモリーに記憶される。
【0206】
1とT2との間の時間間隔は、図9に示されるように、秒のオーダーの非常に短いものであってよい。別の選択肢として、流速が遅い場合、または、例えば漏えいに起因するガスシリンダー100内の喪失量を測定することが所望される場合、T1とT2との間の時間間隔は、分、時間、もしくは日のオーダーを例とする非常に長いものであってもよい。
【0207】
方法は続いて、工程420へ進む。
【0208】
[工程420:数値フィルタリングの適用]
本工程は、上述のように、所望に応じて行ってよいものである。数値フィルタリングは、非常に正確な流速が必要とされるが、測定装置の応答時間はそれほど重要ではない状況で選択され得る。そのような状況は、例えば、長期間にわたって低流速が測定される場合に生じ得る。
【0209】
数値フィルタリングが選択される場合、それは、プロセッサー220の一部を形成する専用のコンピューターハードウェアによって行われてよく、または別の選択肢として、プロセッサー220上で実行されるソフトウェア中にコード化されてもよい。
【0210】
上述のように、数値フィルタリングは、工程406で行われる(そして工程408で記憶される)測定を、工程416で行われる(そして工程418で記憶される)その後の測定と共に用いる指数関数フィルターを含んでよい。
【0211】
方法は続いて、工程422へ進む。
【0212】
[工程422:質量流量の算出]
1とT2との時間差、およびこれらの時間におけるガスシリンダー100中のガスの質量が分かることで、プロセッサー220は、方程式6)から、T1からT2までの時間にわたる質量流量を算出することができる。
【0213】
方法は続いて、所望される場合、工程314から320までを繰り返して、さらに質量流量を算出してよい。別の選択肢として、方法は、工程312に移ってよく、センサーアセンブリー200の電源が切られてよい。
【0214】
上記実施形態の変更は、当業者には明らかである。ハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントの厳密な設計は異なっていてもよく、それでも、本発明の範囲内に含まれる。当業者であれば、用いられてよい別の選択肢としての設計を、容易に認識するであろう。
【0215】
例えば、上述の実施形態では、基本周波数32.768kHzを有する石英水晶発振器を用いた。しかし、別の選択肢としての周波数で作動する水晶が用いられてもよい。例えば、60kHzおよび100kHzで作動する石英水晶発振器が、上述の実施形態で用いられてよい。異なる水晶における、密度に応じた周波数変化を示すグラフを図17に示す。さらなる例として、1.8MHzの周波数で作動する水晶発振器が用いられてもよい。
【0216】
より高い周波数で作動することにより、任意のサイクル数あたりのサンプリングに要する時間が短くなることから、より高い頻度でモニタリングすることが可能となる。加えて、より高い周波数の水晶により、水晶の「スリープ」モードにおいて、より小さいデューティサイクルを用いることが可能となる。説明として、ほとんどの場合、水晶および駆動回路は、ほんとんどの時間がスイッチオフで費やされ、測定が必要とされる時に1秒程度スイッチオンとされるだけである。例えば、これは、1分間に1回行われてよい。より高周波数の水晶が用いられる場合、圧力をより早く測定することができる。従って、水晶が作動中である時間を短縮することができる。これにより、電力消費が抑えられ、同時に電池の寿命が改善され得る。
【0217】
加えて、石英水晶発振器の絶対周波数を測定することによる上記実施形態について記載してきた。しかし、ガスシリンダー付随レギュレーターに組み込まれた独立型電子機器の場合、その周波数を、同一の型ではあるが真空または圧力パッケージ中に封入された参照水晶と比較することにより、センサーの周波数の偏移を測定することが有利であり得る。圧力パッケージは、選択された密度でのガスを含有するか、大気条件下のガスを含有するか、またはガスシリンダー100の外部大気に開放されていてよい。
【0218】
適切なセンサーアセンブリー500を図18に示す。センサーアセンブリー500は、第一の石英水晶発振器502および第二の石英水晶発振器504を含む。第一の石英水晶発振器502は、真空下の密封容器506内に配置される参照水晶である。第一の石英水晶発振器502は、駆動回路508によって駆動される。
【0219】
第二の石英水晶発振器504は、先の実施形態で述べた水晶202に類似の水晶である。第二の石英水晶発振器504は、ガスシリンダー100の内部容積内のガス環境に暴露される。第二の石英水晶発振器504は、駆動回路510によって駆動される。
【0220】
この比較は、2つの周波数シグナルを組み合わせ、2つの水晶間の差異に等しい周波数の出力を発生させる電子ミキサー回路512を用いて行うことができる。この設備により、例えば温度に起因する小さい変化を打ち消すことが可能となる。
【0221】
さらに、差異周波数の測定が必要とされるだけであることから、ガスシリンダー100で用いられる回路網を単純化することができる。さらに、この手法は、水晶周波数を直接測定することが困難であり得る高周波数(MHz)水晶発振器での使用に特に適している。
【0222】
加えて、密度、質量、または質量流量の測定および表示に必要とされる電子機器のすべてが、ガスシリンダー上またはガスシリンダー中に搭載されている必要はない。例えば、電子機能は、シリンダー上に恒久的に搭載されるユニットと、顧客用ステーションに搭載されるユニットか、または従来の流量メーターに通常は用いられる位置などのシリンダーの出口部に一時的に搭載されるユニットとに分割されてよい。
【0223】
本設備の例を、図19を参照して示す。この設備は、ガスシリンダー600およびセンサーアセンブリー602を有するガスシリンダーアセンブリー50を含む。ガスシリンダーアセンブリー50、ガスシリンダー600、およびセンサーアセンブリー602は、先の実施形態に関連してこれまでに述べたガスシリンダーアセンブリー10、ガスシリンダー100、およびセンサーアセンブリー200に非常に類似している。
【0224】
本実施形態では、センサーアセンブリー602は、先の実施形態の石英水晶発振器202および駆動回路204に類似する石英水晶発振器および駆動回路(図示せず)を含む。適切ないずれかのリモート通信プロトコルを介する通信のためのアンテナ604が提供され;例えば、ブルートゥース、赤外(IR)、またはRFIDである。別の選択肢として、ワンワイヤ通信が用いられてもよい。
【0225】
さらなる別の選択肢として、音響通信法が用いられてもよい。そのような方法の利点は、外部アンテナを必要とせずにリモート通信を行うことができることである。
【0226】
接続管606が、ガスシリンダー600の出口部に接続される。接続管は、クイックコネクト接続部(quick connect connection)608が末端に接続されている。このクイックコネクト接続部508は、接続配管またはコンポーネントとガスシリンダー600との接続および分離を、容易に素早く行うことを可能とするものである。
【0227】
クイックコネクトユニット650は、ガスシリンダー600との接続のために提供される。コネクター508との接続のために、相補的なクイックコネクトコネクター610が提供される。さらに、クイックコネクトユニット650は、データユニット652を備える。データユニット652は、ディスプレイ654、およびガスシリンダーアセンブリー50のアンテナ604との通信のためのアンテナ656を含む。ディスプレイ654は、ディスプレイの電力消費を最小限に抑え、最大限の視認性を得るために、例えばE‐inkディスプレイを含んでよい。
【0228】
データユニット652は、ガスシリンダーアセンブリー50のセンサーアセンブリー602によって測定される種々のパラメーターを記録してよい。例えば、データユニット652は、時間に対する流速を記録してよい。そのようなログは、例えば、重要なコンポーネントへの時間の掛かるガス溶接手順の間にガス流が存在し、それが正しかったことを確認したいと考える溶接施工業者にとって、または特定の顧客の使用に関するデータを提供するために、有用であり得る。
【0229】
加えて、ガスシリンダー600から得られたデータを用いて、ランアウトタイム、すなわち、シリンダー500中のガスが使い切られるまでの時間に関するデータを提示することもできる。これは、病院間の患者移送中に用いられる医療機関用酸素シリンダーなどの用途において特に不可欠である。そのような時間(Tro)は、流速(上記で考察)、シリンダー500の質量含有量、および現在時間(Tc)の知見から、以下の方程式8)を介して算出することができる:
【数15】
【0230】
別の選択肢として、データユニット652からのデータを、コンピューター操作可能溶接機(溶接用途の場合)、またはその他のガス使用機器へ出力して、警告メッセージと共に、誘導されるパラメーターの算出を可能とすることもできる。この非網羅的な例は:単位アーク時間あたりに用いられるガス、溶接ワイヤ1kgあたりに用いられるガス(例:溶接部の多孔性に関する警告と共に)、標準サイズバルーンの数(または非標準サイズのバルーンの測定およびそれに対する較正)、残りの溶接時間数、圧力の表示(既知のガスデータを用いて、測定された密度値を圧力へ変換することにより)であり得る。
【0231】
加えて、データユニット652は、以下の機能:ガスレベルが特定のレベルまたは流速を下回った際に聞こえる、または見える形でのアラームを提供すること;シリンダーの寿命(例:ゆっくり変化する混合物の場合)またはシリンダーの使用期限を出力すること;ガスの使用に関するデータ、すなわち、溶接の種類、溶接される金属の種類、を含有し、表示すること、または携帯電話もしくはコンピューターによって詳細なデータを拾うことができるようにリンクを提供すること;マルチモードの作動を提供すること、例えば、供給業者/充填業者用モードおよび顧客用モード;シリンダーを充填するガス会社によって表示される量と異なる量を顧客に表示すること;データの入力を可能とすること;シリンダー番号、ガスの種類、分析証明書、顧客歴(誰がどの期間にわたってシリンダーを保有していたか)、安全データなどのデータを提供すること、を提供するように構成されてもよく、ならびにシリンダーは、まとめた形での操作に関する情報を有していてもよい。
【0232】
別の選択肢として、上記の例のすべては、所望に応じて、センサーアセンブリー200、602に関して考察したように、全体がガスシリンダー600上(または内)に配置されるシステムによって処理され、保存され、またはそこから得られてもよい。
【0233】
加えて、本発明の実施形態は、漏えい検出を行うために用いることもできる。石英水晶発振器は、そのようなセンサーとしての感度が良好であることから、この作業に特に適している。加えて、石英水晶発振器は、圧力ゲージを用いて漏えいを検知する場合のようにシリンダーの温度変化によって圧力変化を不正確に読み取るようなこともない。加えて、本発明の実施形態は、残圧バルブ損傷の検出を例とする損傷の検出に用いることもできる(例:3バールgより低い圧力の使用済みシリンダーの場合)。
【0234】
上記実施形態を、石英水晶発振器の使用に関連して記載したが、当業者であれば、やはり用いることが可能である別の選択肢としての圧電材料を容易に認識するであろう。例えば、非網羅的なリストとしては、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ホウ酸リチウム、ベルリナイト、ガリウムヒ素、四ホウ酸リチウム、リン酸アルミニウム、酸化ビスマスゲルマニウム、多結晶チタン酸ジルコニウムセラミック、高アルミナセラミック、ケイ素‐酸化亜鉛コンポジット、または酒石酸二カリウムを含む水晶発振器が挙げられ得る。
【0235】
加えて、上記実施形態を、ガスシリンダーに関連して説明したが、本発明のその他の適用も用いることができる。例えば、石英水晶発振器は、自動車、オートバイ、またはトラックなどの車両のタイヤ内に配置することができる。車両のタイヤの形状は、負荷またはスピード下で変化し得るが、本出願の発明者らは、タイヤの内部容積は、使用時に大きく変化しないことを示した。例えば、本文脈において、内部容積の変化が全内部容積の2〜3%未満である場合、本発明は、車両のタイヤ内のガス質量を信頼性高く算出するように作動可能である。
【0236】
さらに、多くの適用において、空気が車両タイヤ内のガスとして用いられるが、窒素などのガスも次第に使われつつある。本発明の設備は、そのような適用に対して特に適している。さらに、質量の測定が、本質的に温度に依存しないことから、本発明の設備は、環境条件が測定に影響を与えかねない状況において特に有用である。
【0237】
さらなる例として、本発明はまた、車両用エアサスペンションシステムにも適用可能であり得る。
【0238】
本発明の実施形態を、例示した例に特に関連して記載した。特定の例を図面で示し、本明細書にて詳細に記載したが、図面および詳細な記載は、開示した特定の形態に本発明を限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。本発明の範囲内にて、記載の例に変更および改変を施してよいことは理解されるであろう。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図4
図5
図6
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図18
図19
図7
図17