(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリプロピレンフィルムからなる誘電体膜の少なくとも一つと複数の金属蒸着膜とが交互に積層されてなる積層体の積層方向両側の面に対して、それぞれ、保護フィルムが更に積層されていると共に、該積層体の積層方向に対して直交する方向において対応する二つの側面に、メタリコン電極がそれぞれ形成されて、構成されたフィルムコンデンサにおいて、
前記メタリコン電極がそれぞれ形成された側面を除く前記積層体の残余の側面に対して、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂からなるカバーフィルムが、該残余の側面の全面を覆い、且つ該残余の側面において露呈する前記誘電体膜の端部に融着して、形成されていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
前記カバーフィルムが、前記誘電体膜を構成するポリプロピレンの融点以上で、且つ該ポリプロピレンの熱分解温度未満の範囲内の融点と、160〜180℃の温度領域で860〜340000mPa・sの範囲内の溶融粘度とを有している請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
前記積層体の積層方向に対して直交する方向において対応する二つの側面に、外方に開口して、前記金属蒸着膜の一部を外部に露呈させる隙間が、それぞれ設けられていると共に、前記メタリコン電極が、その一部を該隙間内に侵入させた状態で、該対応する側面にそれぞれ形成されており、そして、該対応する側面のうちの一方のものに設けられた該隙間内に侵入した該メタリコン電極部分が、該隙間を通じて外部に露呈する前記金属蒸着膜の露呈部分と、該一方の側面に形成された該メタリコン電極とを接続する第一の接続部とされている一方、該対応する側面のうちの他方のものに設けられた該隙間内に侵入した該メタリコン電極部分が、該隙間を通じて外部に露呈する前記金属蒸着膜の露呈部分と、該他方の側面に形成された該メタリコン電極とを接続する第二の接続部とされ、更に、それら第一の接続部と第二の接続部とが、前記積層体の積層方向において交互に位置するように配置されている請求項1又は請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の電子機器や電気機器には、コンデンサが使用されており、近年では、電子機器や電気機器に対する小型化の要求に対応すべく、かかるコンデンサとして、フィルムコンデンサが多く用いられるようになってきている。
【0003】
そのようなフィルムコンデンサには、各種の構造のものがあり、その中の一種として、例えば、特開平9−153434号公報(特許文献1)等に明らかにされるような積層型のフィルムコンデンサが、知られている。このフィルムコンデンサは、誘電体膜としての樹脂フィルムの片面又は両面に金属蒸着膜が設けられて構成された金属化フィルムを、樹脂フィルムと金属蒸着膜とが交互に位置するように積層した積層体を用い、この積層体における金属化フィルムの積層方向両側の面に対して、保護フィルムをそれぞれ更に積層して、フィルムコンデンサ素子を形成する一方、かかるフィルムコンデンサ素子における積層体の積層方向に直交する方向において対応する二つの側面に、メタリコン電極をそれぞれ形成することによって、構成されている。
【0004】
また、例えば、特開2011−181885号公報(特許文献2)等には、ナノオーダーの膜厚で成膜が可能な蒸着重合膜からなる誘電体膜と金属蒸着膜との積層体を用い、この積層体の両側端面に保護フィルムをそれぞれ積層して、フィルムコンデンサ素子を形成する一方、かかるフィルムコンデンサ素子の対応する二つの側面に、メタリコン電極をそれぞれ形成することによって構成された、更なる小型化が可能なフィルムコンデンサも、提案されている。
【0005】
要するに、従来の積層型フィルムコンデンサは、一般に、少なくとも一つの樹脂製の誘電体膜と複数の金属蒸着膜とを交互に積層した積層体からなるフィルムコンデンサ素子の誘電体膜と金属蒸着膜の積層方向両側の面に対して、保護フィルムが、それぞれ更に積層されている一方、かかるフィルムコンデンサ素子の一対の側面に対して、メタリコン電極がそれぞれ形成されて、構成されているのである。
【0006】
ところで、かかる従来の積層型フィルムコンデンサでは、メタリコン電極が形成された二つの側面を除く残余の二つの側面、つまり、メタリコン電極が形成された二つの側面と隣り合う別の二つの側面が、外部に露出している。そのため、そのような積層型フィルムコンデンサをそのまま使用すると、外部に露出した側面から、多くの漏れ電流が生ずるだけでなく、かかる側面から水蒸気等のガスがフィルムコンデンサ内部に侵入して、誘電体膜や金属蒸着膜等が劣化してしまい、その結果、コンデンサ性能が低下する恐れがあった。また、近年では、積層型フィルムコンデンサの小型化を実現するために、誘電体膜が、より薄肉化されてきている。それ故、そのような積層型フィルムコンデンサでは、誘電体膜を介して互いに隣り合う金属蒸着膜間の沿面距離が短くなり、それによって、それら互いに隣り合う金属蒸着膜間で導電し易くなって、耐電圧が低下する傾向があった。
【0007】
そこで、例えば、特開2003−338424号公報(特許文献3)等に明らかにされるように、これまでは、上記の如き問題の発生を未然に防止するために、フィルムコンデンサを、コンデンサケース内に収容し、そして、かかるフィルムコンデンサとコンデンサケースの内面との間に、エポキシ樹脂等の電気絶縁性を有する樹脂を充填することによって、メタリコン電極が形成された側面と隣り合う側面を外部から遮断する対策が講じられていた。しかしながら、そのようなフィルムコンデンサが充填樹脂と共にフィルムコンデンサケース内に収容された、所謂ケース付きフィルムコンデンサは、コンデンサケースを有している分だけ、大型なものとなり、また、余分なコストが掛かることが避けられなかった。
【0008】
かかる状況下、例えば、特公平5−63094号公報(特許文献4)には、メタリコン電極が形成される二つの側面を除くフィルムコンデンサ素子(金属化フィルムの積層体)の残余の二つの側面に対して、それら残余の二つの側面の全面を被覆するカバーフィルムをそれぞれ形成したフィルムコンデンサが、明らかにされている。かくの如き構造によれば、フィルムコンデンサをコンデンサケース内に収容することなく、メタリコン電極が形成された側面と隣り合う側面を外部から遮断することが可能となる。
【0009】
ところが、そのような構造を有するフィルムコンデンサ、つまり、剥き出しの側面にカバーフィルムを形成してなる、所謂カバーフィルム付きフィルムコンデンサについて、本発明者が様々な角度から検討を行ったところ、かかるカバーフィルム付きフィルムコンデンサには、以下の如き問題が内在していることが判明した。
【0010】
すなわち、従来のカバーフィルム付きフィルムコンデンサにおいては、誘電体膜が、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂にて構成されている一方、カバーフィルムが、誘電体膜の構成樹脂とは全く種類の異なるエポキシ系の熱硬化性樹脂にて構成されている。そのため、フィルムコンデンサのカバーフィルム形成面に対応した誘電体膜の端部に位置する側面とカバーフィルムとの間の密着性を十分に確保することができずに、それら誘電体膜の側面とカバーフィルムとの間に、微細な隙間が、不可避的に形成されていた。そして、それ故に、かかる従来のカバーフィルム付きフィルムコンデンサでは、誘電体膜の側面とカバーフィルムとの間に形成された微細な隙間内に、水蒸気や空気等が侵入してしまい、結局、誘電体膜や金属蒸着膜の水蒸気との接触による劣化の問題や、金属蒸着膜間での放電による耐電圧の低下の問題の発生を確実に防止することが、極めて困難であったのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に従う構造を有するフィルムコンデンサの一実施形態を示す斜視説明図である。
【0020】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0021】
先ず、
図1には、本発明に従う構造を有するフィルムコンデンサの一実施形態として、自動車等の車両に搭載される車載用フィルムコンデンサが、その斜視形態において示されている。かかる
図1から明らかなように、本実施形態のフィルムコンデンサ10は、フィルムコンデンサ素子12を有し、このフィルムコンデンサ素子12の幅方向両側に位置する二つの側面に対して、メタリコン電極14a,14bが形成される一方、長さ方向両側に位置する、メタリコン電極14a,14b形成面を除いた残余の二つの側面に対して、カバーフィルム16a,16bが形成されて、構成されている。
【0022】
より具体的には、
図2及び
図3に示されるように、フィルムコンデンサ素子12は、複数枚(ここでは、8枚)の金属化フィルム18が相互に積層された積層体20を有している。そして、かかる積層体20の厚さ方向(金属化フィルム18の積層方向)一方側の端面(下端面)に、保護フィルム22aが、また、他方の端面(上端面)に、保護フィルム22bが、それぞれ更に積層されて、フィルムコンデンサ素子12が構成されている。なお、フィルムコンデンサ素子12(積層体20)における金属化フィルム18の積層枚数が、何等これに限定されるものではないことは勿論である。
【0023】
また、フィルムコンデンサ素子12を構成する金属化フィルム18は、誘電体膜としての樹脂フィルム24の一方の面に金属蒸着膜26が積層形成されてなっている。このような金属化フィルム18の幅方向(
図2の左右方向)の一端部には、樹脂フィルム24に金属蒸着膜26が積層されていないマージン部28が設けられている。
【0024】
金属化フィルム18の樹脂フィルム24は、ここでは、ポリプロピレン製の二軸延伸フィルムにて構成され、金属蒸着膜26は、例えば、アルミニウムや亜鉛等からなっている。なお、樹脂フィルム24は、ポリプロピレンにて構成されている必要があるものの、必ずしも二軸延伸フィルムでなくとも良い。金属蒸着膜26を構成する金属材料は、十分な導電性を有し、且つPVDやCVDの範疇に属する、従来から公知の蒸着法を実施することによって、樹脂フィルム24上に積層形成可能な金属材料であれば、その種類が、特に限定されるものではない。
【0025】
保護フィルム22a,22bは、ここでは、ポリプロピレン製の二軸延伸フィルムにて構成されている。この保護フィルム22a,22bを構成する材料は、電気絶縁性を有するものであれば、その種類が、特に限定されるものではないものの、一般には、金属化フィルム18の樹脂フィルム24と同じ樹脂材料からなる樹脂製フィルムにて構成される。
【0026】
金属化フィルム18の樹脂フィルム24と金属蒸着膜26と保護フィルム22a,22bのそれぞれの厚さは、特に限定されるものではないものの、一般に、樹脂フィルム24の厚さが2.0〜4.0μm程度とされ、また、金属蒸着膜26の厚さが100〜300Å程度とされ、保護フィルム22a,22bの厚さが7.0〜30μm程度とされる。なお、
図2及び
図3においては、フィルムコンデンサ10の構造の理解を容易とするために、金属化フィルム18の樹脂フィルム24及び金属蒸着膜26の厚さや、保護フィルム22a,22bの厚さ、更にはカバーフィルム16a,16bとメタリコン電極14a,14bの厚さが、それぞれ、誇張した大きな寸法で示されており、また、フィルムコンデンサ素子12における金属化フィルム18の積層枚数も、実際の数よりも極端に少ない数において例示されていることが、理解されるべきである。
【0027】
そして、複数枚の金属化フィルム18の積層体20と2枚の保護フィルムフィルム22a,22bとの積層構造を有するコンデンサ素子12では、複数枚の金属化フィルム18が、各金属化フィルム18の樹脂フィルム24と金属蒸着膜26とを交互に1枚ずつ位置させるように積層されていると共に、各金属化フィルム18のマージン部28が、フィルムコンデンサ素子12の幅方向(
図2の左右方向)において互い違いに位置するように配置されている。
【0028】
また、かかるフィルムコンデンサ素子12では、互いに隣り合う金属化フィルム18が、それらのうちの一方の金属化フィルム18の幅方向端部を、他方の金属化フィルム18のマージン部28側の幅方向の側面から側方に突出させるように、相互に重ね合わされている。即ち、全ての金属化フィルム18が、幅方向に互い違いにずらされて、積層されている。これにより、1枚の金属化フィルム18を間に挟んで、その両側に位置する2枚の金属化フィルム18の幅方向端部同士の間に、フィルムコンデンサ素子12の幅方向両側の側面30a,30bにおいて側方に向かって開口する隙間32が、それぞれ形成されている。また、かかる隙間32を形成する2枚の金属化フィルム18,18のうちの下側に位置する金属化フィルム18の金属蒸着膜26の幅方向端部が、それら2枚の金属化フィルム18,18のうちの上側に位置する金属化フィルム18が積層されていない非積層部分とされて、この非積層部分が、かかる隙間32を通じて、外部に露呈するように配置されている。
【0029】
なお、
図3から明らかなように、互いに積層される金属化フィルム18は、長さ方向には、何等ずらされておらず、全ての金属化フィルム18が、長さ方向の側面を、各金属化フィルム18の厚さ方向において一定の位置に揃えて、積層配置されている。
【0030】
そして、そのようなフィルムコンデンサ素子12(積層体20)の幅方向両側に位置した、前記隙間32が形成された互いに対向する二つの側面30a,30bに対して、メタリコン電極14a,14bが、溶射により、それぞれ形成されている。また、そのような二つのメタリコン電極14a,14bは、それらが形成される各フィルムコンデンサ素子12の幅方向両側の側面30a,30bにおいて側方に開口する隙間32内に侵入し、かかる隙間32に露出する金属蒸着膜26の一端部からなる前記非積層部分に固着されている。そして、側面30aに設けられた各隙間32内へのメタリコン電極14aの侵入部分が、第一の接続部33aとされている。一方、側面30bに設けられた各隙間32内へのメタリコン電極14bの侵入部分が、第二の接続部33bとされている。また、それら第一の接続部33aと第二の接続部33bは、二つの側面30a,30bに、それぞれ、複数個(ここでは、4個)設けられて、樹脂フィルム24と金属蒸着膜26の積層方向において互い違いに位置するように配置されている。なお、それら二つのメタリコン電極14a,14bの構成材料は、特に限定されるものではなく、亜鉛やアルミニウム等、従来より一般に使用されるものが、二つのメタリコン電極14a,14bの構成材料として用いられる。
【0031】
かくして、二つのメタリコン電極14a,14bが、フィルムコンデンサ素子12(積層体20)の幅方向両側に位置する二つの側面30a,30bに対して、それらの全面をそれぞれ被覆し、且つ各金属化フィルム18の金属蒸着膜26の非積層部分に対して、第一及び第二の接続部33a,33bにより確実に接続された状態で形成されているのである。なお、それら二つのメタリコン電極14a,14bには、必要に応じて、図示しない端子等が、それぞれ接続される。
【0032】
そして、
図1乃至
図3に示されるように、本実施形態のフィルムコンデンサ10においては、特に、フィルムコンデンサ素子12(積層体20)の四つの側面30a,30b,30c,30dのうち、メタリコン電極14a,14bが形成される二つの側面30a,30bと隣り合うように、フィルムコンデンサ素子12の長さ方向(
図3の左右方向)両側に位置する別の二つの側面30c,30dの全面が、カバーフィルム16a,16bにて、それぞれ覆われて、外部から遮断されている。また、そのような二つのカバーフィルム16a,16bが、かかる二つの側面30c,30dにおいて露呈する各金属化フィルム18の樹脂フィルム24の側面に融着(溶融接着)されている。
【0033】
かくして、本実施形態のフィルムコンデンサ10では、二つの側面30c,30dからの漏れ電流の発生防止が図られていると共に、金属化フィルム18の金属蒸着膜26間の沿面距離が長くされて、それら金属蒸着膜26間での放電による短絡が有利に防止され、それによって、耐電圧の向上が図られている。また、それら二つの側面30c,30dにおいて露呈する金属化フィルム18の樹脂フィルム24の側面とカバーフィルム16a,16bとが完全に密着して、それら樹脂フィルム24の側面(ひいては金属化フィルム18の側面)とカバーフィルム16a,16bとの間への水分や空気の侵入が阻止されているのである。
【0034】
そのような二つのカバーフィルム16a,16bは、金属化フィルム18の樹脂フィルム24を構成するポリプロピレンと同系で、ポリプロピレンに対する熱融着性(溶融接着性)に優れたポリオレフィン系ホットメルト樹脂からなるフィルム、所謂ポリオレフィン系ホットメルトフィルムにて構成されている。また、本実施形態では、かかるポリオレフィン系ホットメルトフィルムとして、ポリプロピレンのオレフィン系共重合体と固定パラフィンを主成分とするポリオレフィン系ホットメルト樹脂を用いて形成されたフィルムが用いられている。このような樹脂材料からなる二つのカバーフィルム16a,16bを用いることによって、かかる二つのカバーフィルム16a,16bが、フィルムコンデンサ素子12の二つの側面30c,30dにおいて露呈する各金属化フィルム18の樹脂フィルム24の側面に対して、確実に、且つ強固に融着されるようになっているのである。
【0035】
なお、二つのカバーフィルム16a,16bは、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂からなるフィルムである必要があるが、そのような二つのカバーフィルム16a,16bを構成するポリオレフィン系ホットメルト樹脂は、その具体的な種類や組成等が、特に限定されるものではない。つまり、従来より公知のポリオレフィン系ホットメルト樹脂の各種のものが、二つのカバーフィルム16a,16bの形成材料として使用可能なのである。
【0036】
そして、そのようなポリオレフィン系ホットメルト樹脂からなる二つのカバーフィルム16a,16bを、フィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dに対して、その全面を被覆するように積層形成する際には、例えば、以下の如き方法が採用される。
【0037】
すなわち、第一の方法として、例えば、加熱により溶融状態とされた、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂を、フィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dの全面に、ノズルを用いて吹き付けたり、或いはローラ等を用いて塗布したりして、所定の厚さで成膜すると共に、かかる溶融状態のポリオレフィン系ホットメルト樹脂の熱で、フィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dに露呈する、各金属化フィルム18の樹脂フィルム24の側面を含む端部を溶融状態とした後、それらを冷却固化する方法が採用される。これによって、ポリオレフィン系ホットメルトフィルムからなる二つのカバーフィルム16a,16bが、フィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dに対して、その全面を被覆し、且つ樹脂フィルム24の側面に融着して、積層形成されることとなる。
【0038】
また、第二の方法として、例えば、ポリオレフィン系ホットメルトフィルムを、フィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dに対して、その全面を覆うように積層配置した状態で、かかるポリオレフィン系ホットメルトフィルムを加熱溶融させると共に、フィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dに露呈する、各金属化フィルム18の樹脂フィルム24の側面を含む端部を溶融させた後、それらを冷却固化する方法も、採用可能である。これによっても、二つのカバーフィルム16a,16bを、フィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dに対して、その全面を被覆し、且つ樹脂フィルム24の側面に融着して、積層形成することができる。なお、フィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dに積層配置されるポリオレフィン系ホットメルトフィルムには、通常のフィルム形態を有するものの他、例えば、所定のダイス等を通じて押出成形された半溶融状態の押出成形品等も用いられ得る。
【0039】
そして、そのようにしてフィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dに積層形成されたカバーフィルム16a,16bの厚さは、特に限定されるものではないものの、好ましくは2.0〜4.0μm程度とされる。何故なら、カバーフィルム16a,16bの厚さが2.0μm未満であると、余りに薄過ぎて、金属化フィルム18の金属蒸着膜26の沿面距離を十分に長くすることが難しくなって、かかる沿面距離の増大による耐電圧の向上効果を十分に得ることが困難となる可能性があるからである。また、カバーフィルム16a,16bの厚さを4.0μmを超える厚さとしても、カバーフィルム16a,16bの形成によって奏される効果の更なる向上を望むことが困難で、却って、カバーフィルム16a,16bの形成コストが嵩むといった弊害が生ずる恐れがある。それ故、カバーフィルム16a,16bの厚さは、4.0μm以下とされていることが、好ましいのである。
【0040】
ところで、二つのカバーフィルム16a,16bを構成するポリオレフィン系ホットメルト樹脂は、各金属化フィルム18の樹脂フィルム24の側面に対するカバーフィルム16a,16bの融着に際して、かかる側面部分を加熱溶融させるために、樹脂フィルム24を構成するポリプロピレンの融点と、少なくとも同じ融点を有している必要があるが、ここでは、二つのカバーフィルム16a,16bを構成するポリオレフィン系ホットメルト樹脂として、樹脂フィルム24を構成するポリプロピレンの融点よりも高く、且つかかるポリプロピレンの熱分解温度よりも低い融点を有するものが、好適に用いられる。これは、以下の理由による。
【0041】
すなわち、フィルムコンデンサ素子12を製造する際には、一般に、長尺な金属化フィルム18の複数を、幅方向に互い違いにずらしながら積層してなる長尺な積層体20の両側端面に、長尺な保護フィルム22a,22bを更に積層して、長尺なフィルムコンデンサ素子母材を形成し、そして、この長尺なフィルムコンデンサ素子母材を、その長さ方向に一定の距離を隔てた複数箇所で、例えば、回転鋸刃等の切断刃を用いて幅方向に切断することにより、複数のフィルムコンデンサ素子12を一挙に製造する作業が行われる。そして、そのようにして得られたフィルムコンデンサ素子12の幅方向両側の側面30a,30bが、二つのメタリコン電極14a,14bの形成面とされる一方、フィルムコンデンサ素子母材の切断面からなる、フィルムコンデンサ素子12の長さ方向両側の側面30c,30dが、二つのカバーフィルム16a,16bの形成面とされる。
【0042】
このため、上記のようにして得られたフィルムコンデンサ素子12では、カバーフィルム16a,16bの形成面となる、長さ方向両側の側面30c,30dや、かかる側面30c,30dにおいて露呈する各金属化フィルム18の樹脂フィルム24の側面が、切断刃による切断跡等によって、凹凸が多数存在する粗面となる場合が多い。そのような樹脂フィルム24の側面30に多数存在する凹部の深さや凸部の高さが大きいと、樹脂フィルム24の側面にカバーフィルム16a,16bが融着する際に、溶融状態とされた、カバーフィルム16a,16bの構成樹脂が、樹脂フィルム24の側面の凹部の最深部にまで侵入できずに、かかる凹部の底部側に、微小な隙間(空気溜まり)が形成される恐れがある。そして、そのような隙間が樹脂フィルム24の側面とカバーフィルム16a,16bとの間に存在していると、カバーフィルム16a,16bが、フィルムコンデンサ10の環境温度の変化等による樹脂フィルム24の熱収縮に追従できない。そのため、かかる隙間が、環境温度の変化の繰返しにより徐々に大きくなって、樹脂フィルム24の側面、ひいてはフィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dに対するカバーフィルム16a,16bの密着性の低下が惹起される可能性がある。しかも、樹脂フィルム24の側面とカバーフィルム16a,16bとの間に存在する隙間内に、水分や空気等が侵入して、樹脂フィルム24や金属蒸着膜26が劣化したり、耐電圧が低下したりする危惧さえも生ずる。
【0043】
そこで、カバーフィルム16a,16bを構成するポリオレフィン系ホットメルト樹脂は、カバーフィルム16a,16bを各金属化フィルム18の樹脂フィルム24の側面に融着する際(カバーフィルム16a,16bをフィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dに形成する際)に、溶融状態とされた、カバーフィルム16a,16bの構成材料たるポリオレフィン系ホットメルト樹脂が有する熱にて、樹脂フィルム24の側面に存在する凸部を溶融させ得るように、樹脂フィルム24の構成樹脂材料たるポリプロピレンの融点よりも高い融点を有していることが、好ましい。そのような融点を有するポリオレフィン系ホットメルト樹脂にて、カバーフィルム16a,16bが構成されていると、樹脂フィルム24の側面に対するカバーフィルム16a,16bの融着時に、樹脂フィルム24の側面に存在する凸部が、溶融状態とされたポリオレフィン系ホットメルト樹脂の熱にて溶融し、かかる凸部の高さが小さくされて、樹脂フィルム24の側面に存在する凹部の深さも小さくされる。それにより、溶融状態とされたポリオレフィン系ホットメルト樹脂が、樹脂フィルム24の側面の凹部の最深部まで侵入し、以て、樹脂フィルム24の側面とカバーフィルム16a,16bの間に、隙間が、何等形成されることなく、かかる凹部内が、溶融状態とされたポリオレフィン系ホットメルト樹脂にて充填される。そして、その結果、樹脂フィルム24の側面、ひいてはフィルムコンデンサ素子12の側面30c,30dとカバーフィルム16a,16bとの十分に高い密着性が、安定的に確保され得ると共に、樹脂フィルム24の側面とカバーフィルム16a,16bの間への水分や空気の侵入に起因した樹脂フィルム24や金属蒸着膜26の劣化や耐電圧の低下の問題の発生が、未然に且つ極めて確実に防止され得るのである。
【0044】
しかしながら、カバーフィルム16a,16bの構成材料たるポリオレフィン系ホットメルト樹脂の融点が、樹脂フィルム24を構成するポリプロピレンの融点よりも余りに高いと、樹脂フィルム24の側面に対するカバーフィルム16a,16bの融着時に、溶融状態とされたポリオレフィン系ホットメルト樹脂の熱によって、樹脂フィルム24の構成樹脂たるポリプロピレンが熱分解され、その結果、コンデンサ性能が低下する可能性がある。
【0045】
従って、本実施形態では、カバーフィルム16a,16bの構成樹脂材料として、樹脂フィルム24の構成樹脂たるポリプロピレンの融点以上で、且つかかるポリプロピレンの熱分解温度未満の範囲内の融点を有するポリオレフィン系ホットメルト樹脂が、好適に用いられるのである。具体的には、ここでは、カバーフィルム16a,16bを構成するポリオレフィン系ホットメルト樹脂として、ポリプロピレンの融点である136℃以上で、且つポリプロピレンの熱分解温度である220℃未満の範囲内の融点を有するものが、有利に用いられているのである。
【0046】
要するに、そのような樹脂材料からなるカバーフィルム16a,16bを用いることによって、樹脂フィルム24の熱分解によるコンデンサ性能の低下を惹起させることなく、樹脂フィルム24の側面とカバーフィルム16a,16bとの十分に高い密着性が安定的に確保され得ると共に、樹脂フィルム24の側面とカバーフィルム16a,16bの間への水分や空気の侵入に起因した樹脂フィルム24や金属蒸着膜26の劣化や耐電圧の低下の問題の発生が、未然に且つ極めて確実に防止され得るのである。
【0047】
また、前記したように、各金属化フィルム18の樹脂フィルム24の側面(フィルムコンデンサ素子12の側面30c,30d)とカバーフィルム16a,16bとの融着時には、樹脂フィルム24とカバーフィルム16a,16bとの密着性の向上や、樹脂フィルム24や金属蒸着膜26の劣化や耐電圧の低下の問題の発生の防止を図る上で、溶融状態とされたポリオレフィン系ホットメルト樹脂が、樹脂フィルム24の側面に存在する各凹部内に充填されることが重要となる。そして、溶融状態とされたポリオレフィン系ホットメルト樹脂の各凹部内への充填率を高めるには、カバーフィルム16a,16bの構成樹脂として用いられるポリオレフィン系ホットメルト樹脂の融点が高いことの他に、かかるポリオレフィン系ホットメルト樹脂が、溶融状態での粘度が低く、高い流動性を有していることも、大きな要素となる。
【0048】
従って、カバーフィルム16a,16bを構成するポリオレフィン系ホットメルト樹脂としては、160〜180℃で860〜34000mPa・s程度の範囲内の溶融粘度を有するものが、好適に用いられるのである。何故なら、かかる樹脂材料の160〜180℃での溶融粘度が34000mPa・sを超える値であると、溶融粘度が高過ぎるために、溶融状態とされた、カバーフィルム16a,16bの構成樹脂の流動性が低くなり、それによって、かかる構成樹脂が、各金属化フィルム18の樹脂フィルム24の側面に存在する各凹部内に十分に充填されなくなって、各凹部の底部側に隙間が形成され、以て、樹脂フィルム24とカバーフィルム16a,16bとの密着性の低下や、樹脂フィルム24や金属蒸着膜26の劣化、耐電圧の低下等の問題が生ずる恐れがあるからである。また、カバーフィルム16a,16bを構成する樹脂材料の160〜180℃での溶融粘度が860Pa・s未満である場合には、溶融状態とされた、カバーフィルム16a,16bの構成樹脂の流動性が極端に大きくなり、それによって、フィルムコンデンサ素子12の側面30c,30d上に、溶融状態とされた、カバーフィルム16a,16bの構成樹脂を、それが固化するまで、所定の厚さで維持しておくことが困難となって、カバーフィルム16a,16bの厚さが、所望の厚さよりも薄くなってしまう可能性があるからである。なお、カバーフィルム16a,16bの厚さが薄過ぎると、前記した如き不具合が生ずる恐れがある。
【0049】
以上の説明から明らかなように、本実施形態のフィルムコンデンサ10にあっては、二つのカバーフィルム16a,16bが、メタリコン電極14a,14bの形成面たる側面30a,30bを除く残余の二つの側面30c,30dに対して、それらの全面を被覆するように形成されていることによって、二つの側面30c,30dからの漏れ電流の発生が実質的に防止されていると共に、各金属化フィルム18の金属蒸着膜26間の沿面距離が有利に長くされている。しかも、二つのカバーフィルム16a,16bがポリオレフィン系ホットメルト樹脂にて構成されて、かかる二つのカバーフィルム16a,16bが、二つの側面30c,30dにおいて露呈する、各金属化フィルム18の、ポリプロピレンからなる樹脂フィルム24の側面に融着しているため、それら樹脂フィルム24の側面とカバーフィルム16a,16bとが、それらの間に微細な隙間が何等形成されないように、完全に密着している。これによって、水蒸気や空気が樹脂フィルム24の側面とカバーフィルム16a,16bとの間に侵入することが極めて効果的に且つ確実に防止され、また、金属蒸着膜26間の沿面距離の増大が図られていることも相俟って、樹脂フィルム24や金属蒸着膜26の水蒸気との接触による劣化が有利に防止され得ると共に、金属蒸着膜26間での放電が阻止されて、耐電圧が効果的に高められ得る。
【0050】
しかも、かかるフィルムコンデンサ10では、単に、樹脂製フィルムからなる薄肉のカバーフィルム16a,16bを、二つの側面30c,30dに形成するだけで、上記の如き優れた特徴が発揮され得る。それ故、上記の特徴を確保するために、フィルムコンデンサ10全体が大型化するようなことがなく、また、コスト負担が大きくなることもない。
【0051】
従って、かくの如き本実施形態に係るフィルムコンデンサにあっては、大型化や製造コストの高騰を何等招くことなく、漏れ電流の発生が実質的に防止され得ると共に、所期のコンデンサ性能が、より長期に亘って安定的に維持され、しかも、耐電圧の向上が、極めて有利に図られ得るのである。
【0052】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0053】
例えば、誘電体膜としてのポリプロピレンフィルムの両方の面に、金属蒸着膜をそれぞれ積層してなる金属化フィルムと、金属蒸着膜が何等積層されていない、ポリプロピレンフィルム、或いはポリプロピレンフィルム以外の樹脂フィルムとを、それらポリプロピレンフィルムや樹脂フィルムと金属蒸着膜とが交互に位置するように積層して、積層体を構成しても良い。
【0054】
また、積層体は、ポリプロピレンからなる少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも二つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなるものであれば、誘電体膜の数と金属蒸着膜の数は、何等限定されるものではない。
【0055】
さらに、前記実施形態では、カバーフィルム16a,16bが、フィルムコンデンサ素子12(積層体20)の二つの側面30c,30dに対して、それらの全面と共に、かかる二つの側面30c,30dにおいて露呈する各メタリコン電極14a,14bの両側側面の全面をも被覆するように形成されていたが、各メタリコン電極14a,14bの両側側面は、必ずしも、カバーフィルム16a,16bにて被覆されている必要はない。
【0056】
加えて、前記実施形態では、本発明を、車載用フィルムコンデンサに適用したものの具体例を示したが、本発明は、車載用以外の各種のフィルムコンデンサの何れに対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。
【0057】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。