(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5990346
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/04 20060101AFI20160901BHJP
H02K 9/22 20060101ALI20160901BHJP
H02K 11/21 20160101ALI20160901BHJP
【FI】
H02K5/04
H02K9/22 Z
H02K11/21
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-6424(P2016-6424)
(22)【出願日】2016年1月15日
【審査請求日】2016年2月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100153903
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明
(72)【発明者】
【氏名】堀内 学
(72)【発明者】
【氏名】宮下 利仁
【審査官】
沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−261935(JP,A)
【文献】
実開昭64−020053(JP,U)
【文献】
特開2015−106970(JP,A)
【文献】
特開平08−111966(JP,A)
【文献】
特開2014−165986(JP,A)
【文献】
特開2015−177653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
H02K 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心を有するモータであって、
前記固定子鉄心を収容するフレーム、
筒状に形成された筒状部を有するフランジ、
を備え、
前記フレームの外周は、前記モータの回転軸が延伸する方向に沿って、前記固定子鉄心を収容する固定子収容部、および前記フランジと嵌合する嵌合部を有し、
前記筒状部は、前記固定子収容部が前記固定子鉄心を収容している部分のうち少なくとも半分を覆っており、
前記筒状部は、前記フレームの一端を収容し、
前記モータはさらに、前記フレームの他端に取り付けられたブラケットを備え、
前記筒状部と前記ブラケットは、互いに直接接触しないようにそれぞれ前記フレームに対して取り付けられている
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記筒状部は、前記固定子収容部が前記固定子鉄心を収容している範囲を全て覆っている
ことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記モータはさらに、前記モータの回転位置を検出する回転検出部を備え、
前記回転検出部は、前記ブラケットのうち前記フレームと接触しない側の端部に対して取り付けられている
ことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項4】
前記モータはさらに、前記筒状部と前記フレームが嵌合する箇所に充填された充填材を備える
ことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項5】
前記フランジは、前記筒状部の中心軸方向に対して直交する面内に形成された鍔部を備え、
前記鍔部は、前記鍔部を貫通する穴を備え、
前記穴は、前記穴に対して取付部材を挿入したとき前記取付部材が前記筒状部に対して接触しない位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的小型のモータは一般に、当該モータの固定子鉄心を収容するケース(フレームと呼ぶ場合もある)と、ケースの少なくとも一端を覆うフランジとを備えている。ケースの端部のうちモータの回転力を出力する側に設けられたフランジは、出力側フランジと呼ぶ場合もある。ケースの反対側を覆う部材は、反出力側ブラケットと呼ぶ場合もある。
【0003】
下記特許文献1は、モータとその周辺のフランジやブラケットなどの部材の構造について記載している。同文献の
図1は、固定子鉄心(15)を収容するモータケース(11)のフレームエンド(14)(出力側フランジに相当)がモータケース(11)の一端を覆う構造について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5316469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータの固定子鉄心とその内部のコイルは、熱を発生させる。この熱によりモータ温度が上昇すると様々な不具合を生じさせるので、発生した熱を放熱する手段が求められる。
【0006】
上記特許文献1の
図1記載のモータにおいては、固定子鉄心(15)から発生する熱はモータケース(11)〜フレームエンド(14)に至る経路を放熱経路として放熱されると考えられる。しかし同図記載の構成においては、熱発生源からフレームエンド(14)までの距離が比較的長いので、モータケース(11)における温度飽和が起こりやすい傾向があると想定される。そうすると、熱抵抗が上昇して熱流が流れにくくなり、放熱性能が不十分となる可能性が懸念される。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、放熱効果の高いモータの構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るモータにおいて、出力側フランジは、モータフレームのうち固定子鉄心を収容している部分をその長さ方向における少なくとも半分以上覆う。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るモータによれば、放熱経路を効果的に形成して充分な放熱効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係るモータ100の構成部品を分解した様子を示す斜視図である。
【
図2】モータ100の構成部品を組み立てた様子を示す斜視図である。
【
図6】実施形態2に係るモータ100の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係るモータ100の構成部品を分解した様子を示す斜視図である。モータ100は、フレーム110、出力側フランジ120、反出力側ブラケット130、回転検出部140、取付ねじ150を備える。
【0012】
フレーム110は、後述の
図3で説明する固定子鉄心161を収容するケースである。出力側フランジ120は、フレーム110のモータ出力側の端部を覆う部材であり、円筒部121と鍔部122を有する。反出力側ブラケット130は、フレーム110の他端を覆う部材である。回転検出部140は、例えばエンコーダなどの回転位置検出素子を用いて構成される。回転検出部140は、反出力側ブラケット130のうちフレーム110と接していない側の端部に配置されており、モータの回転位置を検出してその結果を出力する。取付ねじ150は、鍔部122が備えるねじ穴に対して嵌合することにより出力側フランジ120を固定するための部材である。
【0013】
図2は、モータ100の構成部品を組み立てた様子を示す斜視図である。フレーム110は円筒形状を有し、円筒部121と嵌合するように構成されている。フレーム110と円筒部121を嵌合することにより、円筒部121はフレーム110の外壁の少なくとも一部を覆うようにしてフレーム110を収容する。
【0014】
図3は、モータ100の側断面図である。部品の構造を見やすくするため、一部の構成要素については記載を省略した。フレーム110の内部には、モータの固定子鉄心161が配置されている。フレーム110は、その先端部(
図3における左端)において出力側フランジ120と嵌合する部位を有するとともに、固定子鉄心161を収容する部位を有する。固定子鉄心161およびその内部のコイルから発生した熱は、フレーム110から円筒部121に至る伝熱経路を介して、出力側フランジ120へ向かって伝搬する。
【0015】
円筒部121は、その筒状空洞内にフレーム110を収容するので、フレーム110はその大部分が円筒部121によって覆われることになる。
図3においては、固定子鉄心161の軸方向に沿った長さのうち半分以上が円筒部121によって覆われているが、より多くの部分を覆うこともできる(例えば固定子鉄心161の全長を覆うことができる)。これにより、伝熱経路が効果的に形成され、放熱性能を高めることができる。
【0016】
回転検出部140は、その内部に検出素子141を収容している。円筒部121は、反出力側ブラケット130と直接接触しないように配置されている。すなわち、固定子鉄心161から発生した熱が円筒部121に向かって伝搬したとしても、さらに円筒部121から反出力側ブラケット130に対してその熱が伝搬する量は少ないと考えられる。したがって、特に検出素子141などのような熱による影響を受けやすい部品を反出力側ブラケット130側に配置している場合、熱による不具合を抑制することができる。
【0017】
図4は、モータ100の側断面図である。ここでは
図3のうち円筒部121近辺を拡大した図を示した。円筒部121とフレーム110との間の空間は、フレーム110と出力側フランジ120との間の嵌合強度が充分であれば空洞にすることもできるし、あるいはこれら部材間の接着を強固にするための接着剤123によって埋めることもできる。接着剤123を充填する場合、接着剤123の材料として熱伝導性のよいものを用いることが望ましい。例えば高熱伝導性樹脂を用いた接着剤が候補として挙げられるが、これに限られるものではない。
【0018】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係るモータ100において、出力側フランジ120は円筒部121を備え、円筒部121はフレーム110のうち固定子鉄心161を収容している部位を少なくとも半分以上覆う。これにより、固定子鉄心161から発生する熱を、出力側フランジ120を介して効果的に伝搬させることができる。実機評価においては、モータの連続定格出力を従来の20Wから28Wに向上させることができた。
【0019】
<実施の形態2>
図5は、従来のモータ200の斜視図である。モータ200は、フレーム210と出力側フランジ220を備える。ただし出力側フランジ220は、本発明に係るモータ100とは異なり円筒部を備えていない。
【0020】
モータ200を取り付ける手法として、
図5(a)に示すようにモータ軸を貫通させる穴とねじ穴を備えた取付板251に対して、取付ねじ252を出力側フランジ220の端部から挿入することにより、出力側フランジ220を取付板251に対して固定することが考えられる。しかしこの取付手法は、取付板251から見てモータ200の反対側の空間において作業スペースが必要なので、特に作業場所が狭い場合は取付作業を実施しにくい難点がある。
【0021】
図5(b)に示すように、取付板251から見てモータ200と同じ側から取付ねじ252を挿入することも考えられる。しかしこの手法においては、特にモータ200が比較的小型である場合、取付ねじ252の頭部がフレーム210に対して接触し、取付ねじ252をねじ穴に対して垂直に挿入することができない可能性がある。一般にねじの頭部径は軸径よりも大きいからである。そうすると、モータ200を取り付ける現実的な手段としては
図5(a)に示す方法しかなく、モータ200を含む周辺機材の省スペース化を阻害する要因となっていた。
【0022】
図6は、本発明の実施形態2に係るモータ100の斜視図である。本実施形態2において、モータ100は概ね実施形態1と同様の構成を備えるが、取付ねじ252を用いて出力側フランジ120を取付板251に対して取り付けることに関連して、以下に説明する構成を備える。
【0023】
図6(a)は、モータ100を出力側フランジ120の端部から取り付ける様子を示す図である。鍔部122は、取付ねじ252を挿入するためのねじ穴124を備える。ねじ穴124の表面にはねじ溝が形成されている。ねじ穴124は、例えば鍔部122の表面の対角上に2つ設けることができるが、ねじ穴124の個数や位置はこれに限られるものではない。鍔部122と取付ねじ252によって取付板251を挟み、ねじ穴124に対して取付ねじ252を嵌合させることにより、反出力側ブラケット130の反対側からモータ100を取り付けることができる。
【0024】
図6(b)は、モータ100を反出力側ブラケット130の側から取り付ける様子を示す図である。鍔部122の平面サイズは、円筒部121の平面サイズよりも大きく形成されている。ねじ穴124は、取付ねじ252を挿入したとき取付ねじ252の頭部が円筒部121に対して接触しない程度に、円筒部121の側面から充分に離れた位置に配置されている。したがって
図5(b)とは異なり、反出力側ブラケット130の側からモータ100を取付板251に対して取り付けることができる。
【0025】
<本発明の変形例について>
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について他の構成の追加・削除・置換をすることができる。
【0026】
以上の実施形態において、出力側フランジ120はフレーム110を収容する構造として円筒部121を備えることを説明したが、フレーム110を収容する部分は必ずしも円筒でなくともよく、何らかの筒形状であればよい。例えば四角柱状の筒形状であってもよい。フレーム110の形状についても同様である。
【0027】
以上の実施形態において、フレーム110と出力側フランジ120との間に接着剤123を充填してもよいことを説明したが、具体的な製品仕様によってはその他充填材を充填することもできる。例えば高熱伝導性グリスを充填することが考えられる。
【0028】
以上の実施形態において、取付板251に対して取付ねじ252を挿入することによりモータ100を取り付けることを説明したが、その他取付部材を用いてモータ100を取り付けることもできる。例えば棒状の取付部材を用いるとともに、その取付部材を挿入する通し穴を取付板251上に設けることができる。いずれの場合であっても、取付部材の頭部が円筒部121に対して接触しない位置に穴を設けることが望ましい。
【符号の説明】
【0029】
100:モータ、110:フレーム、120:出力側フランジ、121:円筒部、122:鍔部、123:接着剤、124:ねじ穴、130:反出力側ブラケット、140:回転検出部、161:固定子鉄心。
【要約】 (修正有)
【課題】放熱効果の高いモータの構造を提供する。
【解決手段】固定子鉄心161を有するモータであって、前記固定子鉄心を収容するフレーム110、筒状に形成された筒状部を有するフランジ120、を備え、前記フレームの外周は、前記モータの回転軸が延伸する方向に沿って、前記固定子鉄心を収容する固定子収容部、および前記フランジと嵌合する嵌合部を有し、前記筒状部は、前記固定子収容部が前記固定子鉄心を収容している部分のうち少なくとも半分を覆っていることを特徴とする。
【選択図】
図3