【実施例1】
【0020】
先ず、
図1及び
図2を用いて本発明に係る換気部材の第1実施形態について説明する。
図1及び
図2において、建物の屋根を支持する垂木(たるき)1の上部に野地板2が固定され、該野地板2の軒先側の端部に断面J字形状の広小舞カバー3が嵌合して取り付けられる。広小舞カバー3の外側には換気部材4の野地板上面当接片4aと野地板下面対向片4gとが当接して嵌装され、該野地板上面当接片4aに略直交して接続され垂下された野地板小口面対向片4bが不燃断熱材5を介在させて野地板2の小口面2aに固定部材となる釘6により固定される。尚、換気部材4の野地板2への固定は、野地板上面当接片4a、野地板下面対向片4g、野地板小口面対向片4bのうちの少なくとも1つの片を釘6やビス等の固定部材により固定することが出来る。
【0021】
換気部材4の野地板上面当接片4aの上部には断面くの字形状の水切り材7が取り付けられ、その上部に屋根葺き材8が載置されて野地板2に固定される。水切り材7を建物の全周に設けることで屋根面の排水が良好に出来る。
【0022】
換気部材4は、軒先の野地板2の上面に当接する野地板上面当接片4aと、該野地板上面当接片4aに略直交して接続されて垂下され、複数のスリット形状の外部通気口11が形成されると共に、該野地板2の小口面2aに不燃断熱材5を介在して当接する野地板小口面対向片4bと、該野地板小口面対向片4bに略直交して接続され、該野地板上面当接片4aと略平行に配置されると共に、該野地板2の下方に設けられる外壁9の外装材10の上面10aに当接する外装材当接片4cと、該外装材当接片4cに略直交して接続される起立片4dと、該起立片4dに略直交して接続され、複数のスリット形状の小屋裏通気口12が形成された通気片4eと、該通気片4eに略直交して接続される起立片4fと、該起立片4fに略直交して接続され、野地板2の下面に当接する野地板下面対向片4gと、該野地板下面対向片4gに略直交して接続されて垂下される水返し片4hとを有して構成されている。
【0023】
本実施形態の換気部材4は一枚の金属板の所定位置に複数のスリット形状の外部通気口11及び小屋裏通気口12をプレス加工により形成し、更に折り曲げ加工により成形したものである。尚、換気部材4はアルミニウム製や合成樹脂製を採用することも出来る。
【0024】
本実施形態では、外部通気口11は野地板小口面対向片4bと外装材当接片4cとの間で外気側(
図1の左側)に設けられ、野地板下面対向片4gと外装材当接片4cとの間に設けられる通気空間13と外気とを連通する。外部通気口11は、野地板小口面対向片4bと外装材当接片4cとが接続される角隅部に設けられる。本実施形態では野地板小口面対向片4bの下部に外部通気口11を設けた場合の一例である。また、小屋裏通気口12は野地板下面対向片4gと外装材当接片4cとの接続部となる通気片4eに設けられ、通気空間13と小屋裏空間とを連通する。尚、小屋裏通気口12は起立片4d、通気片4e、起立片4fのうちの少なくとも1つに設けることでも良いが、比較的面積が大きくとれる通気片4eに小屋裏通気口12を設けることで大きな換気風量を確保することが出来る。
【0025】
野地板小口面対向片4bの上部内面側にはロックウールフェルト等により構成される不燃断熱材5が接着剤や粘着テープ等により取り付けられており、野地板2の端部に野地板上面当接片4aと野地板下面対向片4gとを嵌装して嵌合すると該野地板2の小口面2aに該不燃断熱材5が当接する。換気部材4の野地板2に当接する部分に不燃断熱材5を設けることで、火炎や熱気を受けた換気部材4の熱伝導による野地板2の炭化を軽減することが出来る。
【0026】
本実施形態では野地板上面当接片4aの野地板小口面対向片4b側の下方には野地板下面対向片4gが存在しないため野地板2の端部に野地板上面当接片4aと野地板下面対向片4gとを嵌装して嵌合する作業が容易である。
【0027】
また、野地板下面対向片4gの下面と、水返し片4hの外面(
図1及び
図2の左側面)には、
図2(c)に示すように、通気空間13内で熱により膨張して外部通気口11から小屋裏通気口12への通気路を塞ぐ不燃性体積膨張材14が接着剤や粘着テープ等により取り付けられている。不燃性体積膨張材14は、膨張性グラファイト系の防炎、防煙用シール材であって、通過熱風温度が約180℃で膨張し始め、十数倍に膨張する性質を有している。不燃性体積膨張材14としては、例えば、オーストリア ケミー・リンツ社製の「インツメックス(商品名)」や種々の不燃性体積膨張材が適用可能である。
【0028】
野地板下面対向片4gに略直交して接続されて垂下される水返し片4hにより外部通気口11から吹き込んだ雨水を止めて小屋裏空間への雨水の浸入を防止することが出来る。
【0029】
図1において、17は外装材10を取り付ける外装下地材である。また、水切り材7及び外部通気口11の直下には図示しない支持部材により支持された雨樋15が設けられている。
【0030】
上記構成によれば、野地板上面当接片4aと野地板下面対向片4gとにより野地板2の端部上下面を挟持すると共に、釘6により野地板小口面対向片4bを野地板2の小口面2aに固定することで、換気部材4を野地板2の端部に一体的に固定することが出来る。これにより、換気部材4を取り付けるための専用下地材が不要である。また、軒先部分まで野地板2が存在したままで換気部材4を取り付けることが出来るので、軒先部分まで屋根葺き材8を野地板2に安定して固定できる。
【0031】
また、野地板2の傾斜角度に対応して換気部材4が一体的に傾斜する。これにより、野地板小口面対向片4bと外装材当接片4cとが接続される角隅部に設けられる外部通気口11が換気部材4の最下部に位置し、換気部材4の通気空間13内に吹き込んだ雨水の排水口を兼ねることが出来る。また、野地板2の傾斜角度に対応して多種類の換気部材4を用意する必要が無い。
【0032】
また、外壁9の外装材10の上面10aを外装材当接片4cに当接して設置することで、野地板2の下面と、外壁9の上面との間に、小屋裏通気口12と小屋裏空間とを連通する通気路16を形成することが出来る。また、建物全周において換気部材4を設置しない箇所が存在する場合には、外装材10の上面10aを野地板2の下面に当接するだけで良く、換気部材4を設置した箇所と、換気部材4を設置しない箇所とで外装材10の取り合いが容易である。
【0033】
また、通気空間13内で熱により膨張して外部通気口11から小屋裏通気口12への通気路を塞ぐ不燃性体積膨張材14を設けたことで、
図2(c)に示すように、火災等で発生する熱により不燃性体積膨張材14が通気空間13内で膨張して外部通気口11から小屋裏通気口12への通気路を塞ぎ、小屋裏空間への火炎の進入を防止することが出来る。
【実施例2】
【0034】
次に
図3を用いて本発明に係る換気部材の第2実施形態について説明する。前記第1実施形態では、野地板小口面対向片4bの下部に外部通気口11を設けた場合の構成について説明したが、本実施形態では、外装材当接片4cの野地板小口面対向片4b側に複数のスリット形状の外部通気口11を設けたものである。また、野地板下面対向片4gの下面と、野地板小口面対向片4bの下部内面(
図3(b)の右側面)には、
図3(c)に示すように、通気空間13内で熱により膨張して外部通気口11から小屋裏通気口12への通気路を塞ぐ不燃性体積膨張材14が接着剤や粘着テープ等により取り付けられている。
【0035】
本実施形態の外部通気口11も野地板小口面対向片4bと外装材当接片4cとの間で外気側(
図1及び
図3の左側)に設けられ、野地板下面対向片4gと外装材当接片4cとの間に設けられる通気空間13と外気とを連通する。本実施形態の小屋裏通気口12も野地板下面対向片4gと外装材当接片4cとの接続部となる通気片4eに設けられ、通気空間13と小屋裏空間とを連通する。外部通気口11は外装材当接片4cに設けられる。
【0036】
尚、図示しないが、野地板小口面対向片4bの下部と、外装材当接片4cの野地板小口面対向片4b側との両方に独立した複数のスリット形状の外部通気口11を設けても良いし、野地板小口面対向片4bの下部から外装材当接片4cの野地板小口面対向片4b側に亘って連続した複数のスリット形状の外部通気口11を設けても良い。他の構成は、前記第1実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることが出来る。
【実施例3】
【0037】
次に
図4及び
図5を用いて本発明に係る換気部材の第3実施形態について説明する。
【0038】
本実施形態の換気部材4は、外側部材4Aと内側部材4Bとの二部材から構成され、互いの軒先の野地板2の上面に当接する野地板上面当接片4aと、該野地板2の小口面2aに不燃断熱材5aを介在して固定される野地板小口面対向片4bとが接着剤や粘着テープ、或いはスポット溶接等により一体的に取り付けられている。外側部材4Aは、軒先の野地板2の上面に当接する野地板上面当接片4aと、該野地板上面当接片4aに略直交して接続されて垂下され、該野地板2の小口面2aに不燃断熱材5aを介在して固定される野地板小口面対向片4bと、該野地板小口面対向片4bに所定の傾斜角度で接続され、断面く字形状の水切り片4iとを有して構成される。
【0039】
一方、内側部材4Bは、軒先の野地板2の上面に当接する野地板上面当接片4aと、該野地板上面当接片4aに略直交して接続されて垂下され、該野地板2の小口面2aに不燃断熱材5を介在して当接する野地板小口面対向片4bと、該野地板小口面対向片4bに略直交して接続され、該野地板上面当接片4aと略平行に配置されると共に、野地板2の下面に不燃断熱材5bを介在して当接する野地板下面対向片4gと、該野地板下面対向片4gに略直交して接続される起立片4fと、該起立片4fに略直交して接続され、複数のスリット形状の小屋裏通気口12が形成された通気片4eと、該通気片4eに略直交して接続される起立片4dと、該起立片4dに略直交して接続され、該野地板2の下方に設けられる外壁9の外装材10の上面10aに当接する外装材当接片4cと、該外装材当接片4cに所定の傾斜角度で接続され、開閉弁18の台座18aを挿入して保持する断面U字形状のクリップ片4jとを有して構成される。
【0040】
尚、本実施形態では、換気部材4を外側部材4Aと内側部材4Bとの二部材から構成した一例について説明するが、一枚の金属板や樹脂板等を軒先の野地板2の上面に当接する野地板上面当接片4aの端部で折り返して該野地板上面当接片4aと野地板小口面対向片4bとを二枚重ねて構成しても良い。
【0041】
本実施形態の換気部材4も金属板からなる内側部材4Bに小屋裏通気口12をプレス加工により形成し、更に金属板からなる外側部材4Aと内側部材4Bとを折り曲げ加工により成形したものである。尚、外側部材4A及び内側部材4Bはアルミニウム製や合成樹脂製を採用することも出来る。
【0042】
本実施形態では、外装材当接片4cの延長線上に外部通気口19が設けられる。即ち、外側部材4Aの野地板小口面対向片4bに接続される水切り片4iと、内側部材4Bの外装材当接片4cに接続されるクリップ片4jとの間に形成される開口部が外部通気口19として構成される。
【0043】
断面U字形状のクリップ片4jに台座18aが挿入して保持された開閉弁18は、
図5(c)に示すように、外部通気口19から野地板下面対向片4gと外装材当接片4cとの間に設けられる通気空間13に吹き込む風力によって作動し、該外部通気口19から小屋裏通気口12への通気路を塞ぐ。外側部材4Aの野地板小口面対向片4bに接続される水切り片4iの内面で開閉弁18に対向する位置には、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)発泡体等により構成されるクッション材20が設けられており、開閉弁18が作動すると、該開閉弁18の先端がクッション材20に接触して衝撃が緩和され、衝撃音の発生を防止する。
【0044】
本実施形態においても、
図4に示すように、野地板2の傾斜角度に対応して換気部材4が一体的に傾斜する。これにより、外装材当接片4cの延長線上に設けられる外部通気口19が換気部材4の最下部に位置し、該換気部材4内に吹き込んだ雨水の排水口を兼ねることが出来る。また、野地板2の傾斜角度に対応して多種類の換気部材を用意する必要が無い。
【0045】
また、外部通気口19から通気空間13に吹き込む風力によって作動し、該外部通気口19から小屋裏通気口12への通気路を塞ぐ開閉弁18を設けたことで、台風等の吹き込みにより開閉弁18が作動して外部通気口19から小屋裏通気口12への通気路を塞ぎ、小屋裏空間への雨水の浸入を防止することが出来る。開閉弁18により止められた雨水は外装材当接片4cの延長線上に設けられる外部通気口19から排水される。他の構成は、前記各実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることが出来る。