特許第5990393号(P5990393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990393
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】保持シール材、及び、排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20160901BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20160901BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20160901BHJP
   B01D 53/88 20060101ALI20160901BHJP
   D01F 9/08 20060101ALI20160901BHJP
   D04H 1/4209 20120101ALI20160901BHJP
   D04H 1/413 20120101ALI20160901BHJP
   D04H 1/488 20120101ALI20160901BHJP
【FI】
   F01N3/28 311N
   F01N3/28 311P
   B01J35/04 301F
   B01D53/94 241
   B01D53/94 300
   B01D53/88
   D01F9/08 A
   D04H1/4209
   D04H1/413
   D04H1/488
【請求項の数】7
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2012-84991(P2012-84991)
(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-213463(P2013-213463A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】熊野 圭司
【審査官】 永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−501016(JP,A)
【文献】 特表2008−506886(JP,A)
【文献】 特開2002−206421(JP,A)
【文献】 特表2008−505276(JP,A)
【文献】 特表2009−508044(JP,A)
【文献】 特開2013−204462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38,
B01D 46/00,53/73,53/86−53/96,
B01J 33/00,35/04,
D01F 9/08,
D04H 1/413,1/4209,1/488,
B32B 1/08,5/06,5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維及び前記無機繊維の表面に付着した無機粒子を含み、第1の主面及び第2の主面を備える保持シール材であって、
前記保持シール材の厚さ方向中央近傍、前記第1の主面近傍、及び、前記第2の主面近傍では無機繊維の表面に無機粒子が付着しており、
前記保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、前記第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、前記第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の少なくとも一方よりも小さく、
前記第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、前記第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の少なくとも一方は、0.1〜1μmであり、
前記無機粒子はアルミナ粒子又はシリカ粒子であることを特徴とする保持シール材。
【請求項2】
前記保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、前記第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、前記第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の両方よりも小さい請求項1に記載の保持シール材。
【請求項3】
前記保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、0.005〜0.1μmである請求項1又は2に記載の保持シール材。
【請求項4】
さらに有機バインダーを含む請求項1〜のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項5】
1枚のマットからなり、
前記1枚のマットは、ニードルパンチング処理が施された無機繊維からなるマットである請求項1〜のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項6】
複数枚のマットからなり、
前記複数枚のマットの少なくとも1枚は、ニードルパンチング処理が施された無機繊維からなるマットである請求項1〜のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項7】
排ガス処理体と、
前記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、
前記排ガス処理体と前記金属ケーシングの間に配設され、前記排ガス処理体を保持する保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、請求項1〜のいずれかに記載の保持シール材であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持シール材、及び、排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境及び人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、CO、HC又はNOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境及び人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素又はコージェライト等の多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、排ガス処理体と金属ケーシングとの間に配設される保持シール材とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材は、自動車の走行等により生じる振動又は衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆う金属ケーシングと接触して破損するのを防止すること、及び、排ガス処理体と金属ケーシングとの間から排気ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。
【0004】
ここで、内燃機関については、燃費の向上を目的として理論空燃比に近い条件で運転するため、排ガスが高温化、高圧化している傾向にある。排ガス浄化装置に高温、高圧の排ガスが到達すると、排ガス処理体と金属ケーシングとの熱膨張率の差によってこれらの間の間隔が変動することもあることから、保持シール材には多少の間隔の変動によっても変化しない排ガス処理体の保持力が要求される。
【0005】
保持シール材の保持性能を向上させるため、特許文献1及び特許文献2には、無機繊維の表面に無機粒子を付着させることが記載されている。また、特許文献3及び特許文献4には、保持シール材の表面に無機粒子を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−206421号公報
【特許文献2】特表2008−505276号公報
【特許文献3】特表2009−508044号公報
【特許文献4】特表2008−506886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された技術では、保持シール材の面圧の経時劣化が起こりにくくなるように、無機繊維の表面に無機粒子を付着させている。また、特許文献2に記載された技術では、保持シール材の面圧を向上させるために、無機繊維の表面に無機粒子を付着させている。しかしながら、無機繊維の表面に無機粒子を多く付着させた場合、保持シール材が硬くなり、保持シール材を曲げにくくなるため、排ガス処理体の周囲に保持シール材を巻き付ける作業が行いにくくなる。
また、排ガス処理体の周囲に保持シール材を巻き付けた際に、保持シール材の内周側(排ガス処理体側)に巻きジワが発生したり、保持シール材の外周側(金属ケーシング側)に割れが発生したりすることがある。
【0008】
特許文献3及び特許文献4に記載された技術では、保持シール材の表面の摩擦係数を向上させるために、保持シール材の表面に無機粒子を付与している。しかしながら、特許文献3及び特許文献4では、保持シール材の面圧の向上について言及されておらず、保持シール材の面圧について改良の余地がある。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、保持シール材の面圧の向上効果、及び、保持シール材の表面の摩擦係数の向上効果を有し、かつ、曲げやすい保持シール材を提供することを目的とする。
また、保持シール材が排ガス処理体に巻きジワ又は割れがない状態で巻き付けられており、かつ、排ガス処理体が高い保持力で保持されてなる排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の保持シール材は、無機繊維及び上記無機繊維の表面に付着した無機粒子を含み、第1の主面及び第2の主面を備える保持シール材であって、
上記保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、上記第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、上記第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の少なくとも一方よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
まず、請求項1に記載の保持シール材では、無機粒子が無機繊維の表面に付着しているため、保持シール材の面圧を向上させることができる。
【0012】
また、請求項1に記載の保持シール材では、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が、保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の少なくとも一方よりも小さい。
【0013】
保持シール材の表面に無機粒子が付着していると、保持シール材の表面の摩擦係数を向上させることができる。
ここで、保持シール材の表面における無機粒子の平均粒子径が大きいと、保持シール材の表面の凹凸が大きくなるため、保持シール材の表面の摩擦係数をより大きくすることができる。
【0014】
その一方で、平均粒子径の大きい無機粒子が保持シール材全体に付着していると、保持シール材が硬くなり、保持シール材を曲げにくくなる。
そこで、請求項1に記載の保持シール材では、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径を、保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の少なくとも一方よりも小さくすることにより、保持シール材を曲げやすくすることができる。
これは、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が小さいと、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機繊維間の摩擦力が小さくなる結果、無機繊維が折れにくくなり、保持シール材の柔軟性が向上しやすくなるためと考えられる。
【0015】
このように、保持シール材の厚さ方向にわたって無機粒子の平均粒子径を変化させることによって、保持シール材の面圧の向上効果、及び、保持シール材の表面の摩擦係数の向上効果を有し、かつ、曲げやすい保持シール材とすることができる。
【0016】
なお、「第1の主面近傍」とは、保持シール材の主面のうちの一方の主面から厚さ方向に1mmの領域を切断した領域を示す。
また、「厚さ方向中央近傍」とは、保持シール材をその厚さが半分になるように切断する線を「厚さ方向の中央線」とし、その中央線の上下0.5mmずつ、計1mmの領域を切断した領域を示す。
また、「第2の主面近傍」とは、保持シール材の主面のうち、第1の主面とは反対の主面から厚さ方向に1mmの領域を切断した領域を示す。
これらの領域の詳細は、図面を用いて追って説明する。
【0017】
また、無機粒子の粒子径は、以下の方法により計測する。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、上記3つの領域に存在する無機繊維の表面の画像を撮影する。撮影した画像上で、凹凸状態となっている無機繊維の表面において、粒子状に観察される形状物を無機粒子と認定する。上記粒子状に観察される形状物の径を無機粒子の粒子径として計測する。
また、無機粒子の平均粒子径は以下の方法により算出する。
上記3つの領域に存在する無機繊維を5本ずつ抜き取って、無機粒子の粒子径を上記方法により計測する。得られた計測値の平均値(相加平均値)を計算することによって、各領域における無機粒子の平均粒子径を算出する。
無機粒子の粒子径の測定方法の詳細については、図面を用いて追って説明する。
【0018】
請求項2に記載の保持シール材では、上記保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、上記第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、上記第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の両方よりも小さい。
この場合、保持シール材の第1の主面及び第2の主面の両方において高い摩擦係数を確保しつつ、曲げやすい保持シール材とすることができる。
【0019】
請求項3に記載の保持シール材では、上記保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、0.005〜0.1μmである。
保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が0.005μm未満であると、保持シール材を構成する無機繊維間の摩擦力が小さくなりすぎるため、保持シール材の面圧が高くなりにくくなる。
一方、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が0.1μmを超えると、保持シール材が硬くなりやすくなるため、保持シール材の柔軟性が低下しやすくなる。
【0020】
請求項4に記載の保持シール材では、上記第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、上記第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の少なくとも一方は、0.1〜1μmである。
保持シール材の第1の主面近傍又は第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、保持シール材の主面の凹凸が小さくなりすぎるため、保持シール材の主面の摩擦係数が高くなりにくくなる。
一方、保持シール材の第1の主面近傍又は第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径が1μmを超えると、保持シール材が硬くなりやすくなるため、保持シール材の柔軟性が低下しやすくなる。
【0021】
請求項5に記載の保持シール材は、さらに有機バインダーを含む。
有機バインダーを無機繊維に付着させることによって、無機繊維同士の交絡構造をより強固なものとすることができるとともに、保持シール材の嵩高さを抑えることができる。
【0022】
請求項6に記載の保持シール材は、1枚のマットからなり、上記1枚のマットは、ニードルパンチング処理が施された無機繊維からなるマットである。
また、請求項7に記載の保持シール材は、複数枚のマットからなり、上記複数枚のマットの少なくとも1枚は、ニードルパンチング処理が施された無機繊維からなるマットである。
ニードルパンチング処理を行うことによって、繊維同士を交絡させ、保持シール材の嵩を適度に減少させることができる。その結果、キャニングにおける作業効率を上げることができるとともに、無機繊維の絡み合いに起因して保持シール材の面圧を高くすることができる。
【0023】
請求項8に記載の排ガス浄化装置は、排ガス処理体と、
上記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、
上記排ガス処理体と上記金属ケーシングとの間に配設され、上記排ガス処理体を保持する保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、
上記保持シール材は、本発明の保持シール材であることを特徴とする。
【0024】
上述のように、本発明の保持シール材は、保持シール材の面圧の向上効果、及び、保持シール材の表面の摩擦係数の向上効果を有し、かつ、曲げやすいという効果を有している。
そのため、保持シール材が排ガス処理体に巻きジワ又は割れがない状態で巻き付けられており、かつ、排ガス処理体が高い保持力で保持されてなる排ガス浄化装置とすることができる。
また、請求項8に記載の排ガス浄化装置では、従来の保持シール材のみでは保持することができなかった大型の排ガス処理体を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2(a)は、保持シール材に存在する無機繊維を模式的に示す斜視図である。図2(b)は、無機繊維表面の一部を拡大して模式的に示す図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示す斜視図である。
図6図6(a)は、保持シール材に存在する無機繊維の表面の一部をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて撮影した写真の一例である。図6(b)は、図6(a)の一部を拡大した無機繊維表面の画像である。
図7図7は、摩擦係数の測定装置を模式的に示す側面図である。
図8図8(a)は、押し抜き荷重測定の手順を模式的に示す斜視図である。図8(b)は、押し抜き荷重測定機を模式的に示す正面図である。
図9図9は、本発明の第二実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一実施形態)
以下、本発明の保持シール材、及び、排ガス浄化装置の一実施形態である第一実施形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明の第一実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示す保持シール材1は、所定の長手方向の長さ(以下、図1中、矢印Lで示す)、幅(以下、図1中、矢印Wで示す)及び厚さ(以下、図1中、矢印Tで示す)を有する、平面視形状略矩形のマットである。また、保持シール材1は、第1の主面11と、第1の主面11と反対側の主面である第2の主面12を備えている。
【0028】
図1に示す保持シール材1では、保持シール材1の長さ方向側の端部のうち、一方の端部には凸部17が形成されており、他方の端部には凹部18が形成されている。保持シール材1の凸部17及び凹部18は、後述する排ガス浄化装置を組み立てるために排ガス処理体に保持シール材1を巻き付けた際に、ちょうど互いに嵌合するような形状となっている。
【0029】
図1に示す保持シール材1は、所定の厚さTを有する。
保持シール材1の厚さTの向きは、第1の主面11及び第2の主面12に対して垂直な方向である。
【0030】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材は、保持シール材を所定の厚さになるように切断した領域である、「第1の主面近傍」、「厚さ方向中央近傍」、及び、「第2の主面近傍」の3つの領域を有する。
【0031】
図1において、「第1の主面近傍」とは、第1の主面11から厚さ方向に1mmの領域で切断した領域(図1で14で示す領域)のことを意味する。図1におけるTは第1の主面近傍の厚さを示し、T=1mmである。
「厚さ方向中央近傍」とは、保持シール材をその厚さが半分になるように切断する線を「厚さ方向の中央線(図1で13で示す線)」とし、その中央線の上下0.5mmずつ、計1mmの領域を切断した領域(図1で15で示す領域)のことを意味する。図1におけるTは厚さ方向中央近傍の厚さを示し、T=1mmである。
「第2の主面近傍」とは、第2の主面12から厚さ方向に1mmの領域で切断した領域(図1で16で示す領域)のことを意味する。図1におけるTは第2の主面近傍の厚さを示し、T=1mmである。
【0032】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材は、無機繊維及び無機粒子を含んでいる。無機繊維の表面には無機粒子が付着している。
無機繊維としては、特に限定されず、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維であることが望ましい。耐熱性又は耐風蝕性等、保持シール材に要求される特性等に応じて変更すればよい。
この中でも、低結晶性アルミナ質の無機繊維が望ましく、ムライト組成の低結晶性アルミナ質の無機繊維がより望ましい。
【0033】
無機粒子としては、アルミナ粒子又はシリカ粒子が望ましい。保持シール材には、無機粒子として、1種の粒子が含まれていてもよく、2種以上の粒子が含まれていてもよい。
アルミナ粒子は、アルミナゾルの形態で、いわゆる無機バインダーとして無機繊維に付着する。なお、無機バインダーは、無機粒子を含む水溶液である。
そして、無機繊維ごと加熱されることにより、アルミナ粒子となって無機繊維同士を強固に接着する。
一方、シリカ粒子を付着させるためにシリカゾルを用いる場合には、カチオン系のシリカゾルを用いることが好ましい。
【0034】
また、無機粒子がアルミナ粒子である場合、アルミナ粒子として、水溶液中(無機バインダー中)の二次粒子の形状が鎖状であるものを用いることが望ましい。
形状が鎖状であるアルミナ粒子とは、水に分散した状態で板状アルミナ一次粒子(数十nm)が連なっており、さらに立体的な分岐で連なり凝集した二次粒子(数百nm)を形成したアルミナ粒子である。
鎖状のアルミナ粒子を用いると、二次粒子同士の絡みが大きく、粒子同士が接合しながら無機繊維の表面に付着する。そのため、無機粒子が均一に無機繊維の表面に付着しやすくなるため、保持シール材の面圧がより向上すると考えられる。
さらに、水溶液中に分散したアルミナ粒子のゼータ電位は正の電荷を有する一方、無機繊維が負の電荷を有するアルミナ繊維又はガラス繊維が用いられた場合、アルミナ粒子が無機繊維の表面に強固に付着する。その結果、スラリー中で攪拌しながら無機繊維の表面に均一に無機繊維を付着させる抄造法と同様に、マットに少量かつ低濃度の無機粒子を分散した無機バインダーを含浸した含浸法においても、無機繊維の表面に均一に無機粒子が付着する。
また、繊維状のアルミナ二次粒子、柱状のアスペクト比を有する線状形態のアルミナ二次粒子、又は、羽毛状に凝集したアルミナ二次粒子も好ましい。
【0035】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材では、第1の主面近傍、第2の主面近傍、及び、厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が異なっている。
具体的には、厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の両方よりも小さくなっている。
第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径と第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
このことを図面を用いて以下に詳しく説明する。
【0036】
図2(a)は、保持シール材に存在する無機繊維を模式的に示す斜視図である。図2(b)は、無機繊維表面の一部を拡大して模式的に示す図である。
図2(b)は、図2(a)に示す無機繊維21の破線で囲まれた無機繊維表面の一部22の拡大図である。図2(b)に示すように、無機繊維21の表面には、無機粒子23が付着している。無機粒子23の粒子径は、図2(b)におけるXで表される大きさである。
【0037】
無機粒子の平均粒子径は、以下の方法により算出する。
保持シール材の第1の主面近傍に存在する無機繊維21を5本抜き取って、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、無機繊維の表面の画像を撮影する。撮影した画像上で、凹凸状態となっている無機繊維表面の一部22において、粒子状に観察される形状物を無機粒子23と認定する。上記粒子状に観察される形状物の径を無機粒子23の粒子径Xとして計測する。1本の無機繊維あたり、無機繊維表面の面積が合計1.1μmとなる範囲において無機粒子23の粒子径Xの計測を任意の30個の無機粒子に対して行う。この作業を5本の無機繊維に対して行う。上記方法により計測された全ての無機粒子23の粒子径Xの平均値(相加平均値)を計算することによって、第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径を算出する。なお、図2(b)には、粒子径を計測する30個の無機粒子のみを示している。
保持シール材の第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径についても、上記と同様の方法により算出する。
【0038】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、0.005〜0.1μmであることが望ましく、0.01〜0.08μmであることがより望ましい。
保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が0.005μm未満であると、保持シール材を構成する無機繊維間の摩擦力が小さくなりすぎるため、保持シール材の面圧が高くなりにくくなる場合がある。
一方、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が0.1μmを超えると、保持シール材が硬くなりやすくなるため、保持シール材の柔軟性が低下しやすくなる場合がある。
【0039】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径は、0.1〜1μmであることが望ましく、0.12〜0.8μmであることがより望ましい。
保持シール材の第1の主面近傍又は第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、保持シール材の主面の凹凸が小さくなりすぎるため、保持シール材の主面の摩擦係数が高くなりにくくなる場合がある。
一方、保持シール材の第1の主面近傍又は第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径が1μmを超えると、保持シール材が硬くなりやすくなるため、保持シール材の柔軟性が低下しやすくなる場合がある。
【0040】
後述するように、本発明の第一実施形態に係る保持シール材は、排ガス浄化装置を構成する保持シール材として使用されることが好ましく、その場合、第1の主面が金属ケーシング側、第2の主面が排ガス処理体側になるように配置されていることがより好ましい。
保持シール材の第1の主面が金属ケーシング側、第2の主面が排ガス処理体側になるように配置されている場合、保持シール材の第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径は、0.15〜1.0μmであることが望ましい。また、保持シール材の第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径は、0.1〜0.8μmであることが望ましい。
なお、保持シール材の第1の主面が金属ケーシング側、第2の主面が排ガス処理体側になるように配置されている場合、保持シール材の第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径は、保持シール材の第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。
【0041】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材において、無機繊維単位重量当たりの無機粒子の付着量は、固形分換算で0.2〜5重量%であることが望ましく、0.5〜3重量%であることがより望ましい。
【0042】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材において、保持シール材の第1の主面近傍、保持シール材の厚さ方向中央近傍、及び、保持シール材の第2の主面近傍における無機粒子の種類は、各領域で同じであってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0043】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材には、有機バインダーが含まれていることが望ましい。有機バインダーによって、保持シール材を構成する無機繊維同士を互いに固着することができる。
【0044】
有機バインダーとしては、アクリル系ラテックス又はゴム系ラテックス等を水に分散させたエマルジョンを用いることができる。
【0045】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材において、無機繊維単位重量当たりの有機バインダーの付着量は、固形分換算で0.2〜12重量%であることが望ましく、0.5〜6重量%であることがより望ましい。
【0046】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材には、無機繊維同士の絡み合いを形成するためのニードルパンチング処理が施されていることが望ましい。
ニードルパンチング処理を行うことによって、繊維同士を交絡させ、保持シール材の嵩を適度に減少させることができる。その結果、キャニングにおける作業効率を上げることができるとともに、無機繊維の絡み合いに起因して保持シール材の面圧を高くすることができる。
【0047】
ニードルパンチング処理とは、ニードル等の繊維交絡手段を無機繊維前駆体のシート状物に抜き差しすることをいう。図1に示す保持シール材1では、比較的、平均繊維長の長い無機繊維がニードルパンチング処理により3次元的に交絡している。すなわち、図1に示す保持シール材1は、長手方向に垂直な幅方向でニードルパンチング処理され、無機繊維同士が絡み合っている。無機繊維前駆体については、後述する保持シール材の製造方法において説明する。
【0048】
このニードルパンチング処理により、保持シール材の嵩を適度に減少させることができ、キャニングにおける作業効率を上げることができるとともに、無機繊維の絡み合いに起因して保持シール材の面圧を高くすることができる。
なお、無機繊維の平均繊維長は、交絡構造を呈するためにある程度の長さが必要となる。例えば、無機繊維の平均繊維長は、50μm〜100mmであることが望ましい。また、無機繊維の平均直径は、2〜10μmであることが望ましい。
【0049】
次に、本発明の第一実施形態に係る保持シール材の製造方法の一例について説明する。
【0050】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材の製造方法は、ニードルパンチング処理が施された無機繊維からなる保持シール材用のマットを準備するマット準備工程と、上記マットを、無機粒子を含む無機バインダーと接触させ、上記マットに無機バインダーを含浸させる含浸工程と、上記無機バインダーが付着したマットを脱水処理する脱水工程と、マットに付着した水分を乾燥させる乾燥工程と、上記水分を乾燥させたマットの表面に、さらに無機粒子を付着させる付着工程とを含むことを特徴とする。
上記の製造方法では、含浸工程及び付着工程における無機粒子の粒子径を変更することによって、本発明の第一実施形態に係る保持シール材を製造することができる。
【0051】
(a)マット準備工程
まず、ニードルパンチング処理が施された無機繊維からなる保持シール材用のマットを準備するマット準備工程を行う。
本発明の第一実施形態に係る保持シール材を構成するマットは、種々の方法により得ることができるが、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、まず、例えば、塩基性塩化アルミニウム水溶液とシリカゾル等とを原料とする紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して3〜10μmの平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製する。続いて、上記無機繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、これにニードルパンチング処理を施し、その後、焼成処理を施すことにより保持シール材用のマットの準備が完了する。
【0052】
(b)含浸工程
次に、上記マットを、無機粒子を含む無機バインダーと接触させ、上記マットに無機バインダーを含浸させる含浸工程を行う。
含浸工程において、マットを無機粒子を含む無機バインダーと接触させる方法は、特に限定されない。例えば、マットを無機粒子を含む無機バインダーに浸漬することにより、マットに無機バインダーを含浸させてもよく、カーテンコート法等の方法で無機粒子を含む無機バインダーをマット上に落下させることにより、マットに無機バインダーを含浸させてもよい。
【0053】
上記含浸工程に用いる無機粒子の粒子径については、特に限定されないが、本実施形態の保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が0.005〜0.1μmとなるように調整することが望ましい。
【0054】
無機バインダーとしては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、及び、それらのコロイド分散液等を用いることができる。しかし、市販されている原液では濃度が高すぎることがあるので、無機粒子の濃度が固形分換算で0.5〜5重量%程度になるように薄めた液を無機バインダーとして使用することが望ましい。
また、無機バインダーとしてアルミナゾルを使用する場合、水溶液中(無機バインダー中)の二次粒子の形状が鎖状であるアルミナ粒子を含むアルミナゾル(例えば、日産化学工業株式会社製AS550)を使用することが望ましい。
鎖状のアルミナ粒子を用いると、二次粒子の絡みが大きく、粒子同士が接合しながら無機繊維の表面に付着する。そのため、無機粒子が均一に無機繊維の表面に付着しやすくなるため、保持シール材の面圧がより向上すると考えられる。
【0055】
(c)脱水工程
次に、無機バインダーが付着したマットを脱水処理する。
この工程では、無機バインダーが付着したマットを吸引脱水することにより、無機バインダーの付着量をおおまかに調整することができる。
【0056】
(d)乾燥工程
この後、無機バインダーが付着したマットを、110〜140℃程度の温度で乾燥させる乾燥工程を行い、水分を蒸発させて、無機粒子が付着したマットとする。
乾燥方法としては、加熱熱風乾燥を用いることができる。
【0057】
(e)付着工程
次に、上記無機粒子が付着したマットの第1の主面及び第2の主面に、さらに無機粒子を付着させる付着工程を行う。
付着工程において、マットの第1の主面及び第2の主面に無機粒子を付着させる方法は、特に限定されない。例えば、マットの第1の主面側及び第2の主面側から、無機粒子を含む無機バインダーを噴霧して吹き付けるスプレーコーティング法が挙げられる。他には、ロールコーティング法、フィルム転写法及びディップコーティング法等が挙げられる。
【0058】
上記付着工程に用いる無機粒子の粒子径を調整することにより、本実施形態の保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径が0.1〜1μmとなるように調整することが望ましい。
【0059】
なお、マットの第1の主面に付着させる無機粒子の粒子径と、第2の主面に付着させる無機粒子の粒子径とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
マットの第1の主面に付着させる無機粒子の粒子径と、第2の主面に付着させる無機粒子の粒子径との間で差を設けることにより、保持シール材の第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径と、第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径との間で差を設けることができる。
【0060】
無機バインダーとしては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、及び、それらのコロイド分散液等を用いることができる。しかし、市販されている原液では濃度が高すぎることがあるので、無機粒子の濃度が固形分換算で0.5〜5重量%程度になるように薄めた液を無機バインダーとして使用することが望ましい。
また、無機バインダーとしてアルミナゾルを使用する場合、水溶液中(無機バインダー中)の二次粒子の形状が鎖状であるアルミナ粒子を含むアルミナゾル(例えば、日産化学工業株式会社製AS550)を使用することが望ましい。
【0061】
上記付着工程に用いる無機粒子の種類は、含浸工程に用いる無機粒子と同じ種類であってもよく、異なる種類であってもよい。さらに、マットの第1の主面に付着させる無機粒子の種類と、マットの第2の主面に付着させる無機粒子の種類とは、同じ種類であってもよく、異なる種類であってもよい。
【0062】
これまでの工程までを経たマットは、本発明の第一実施形態に係る保持シール材となる。
また、図1に示すような凸部と凹部を備えた形状の保持シール材とするためには、保持シール材を所定の形状に切断する切断工程を更に行えばよい。
【0063】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材の製造方法には、有機バインダーを無機繊維に付着させる工程が含まれていてもよい。
有機バインダーを無機繊維に付着させる方法及び手順は特に限定されるものではないが、例えば、(c)脱水工程の後に、マットの第1の主面側及び第2の主面側から、有機バインダーを含む液を噴霧して吹き付ける方法が挙げられる。
その後、無機バインダー及び有機バインダーに含まれる水分を乾燥させるための(d)乾燥工程を行えばよい。
【0064】
(排ガス浄化装置)
本発明の第一実施形態に係る保持シール材は、排ガス浄化装置の保持シール材として使用される。
以下、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置について説明する。
図3は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示す排ガス浄化装置100は、金属ケーシング120と、金属ケーシング120に収容された排ガス処理体130と、排ガス処理体130及び金属ケーシング120の間に配設された保持シール材1とを備えている。
排ガス処理体130は、多数のセル131がセル壁132を隔てて長手方向に並設された柱状のものである。なお、金属ケーシング120の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることになる。
【0065】
なお、図3に示す排ガス浄化装置100では、排ガス処理体130として、各々のセルにおけるいずれか一方が封止材133によって目封じされた排ガスフィルタ(ハニカムフィルタ)を用いているが、いずれの端面にも封止材による目封じがなされていない触媒担体を用いてもよい。
【0066】
図3に示す排ガス浄化装置100では、保持シール材として、図1に示した保持シール材1が用いられている。
保持シール材1は、第1の主面11が金属ケーシング側、第2の主面12が排ガス処理体側になるように配置されていることが好ましい。
【0067】
保持シール材の第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径が、保持シール材の第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径よりも大きい場合、保持シール材の第2の主面近傍は、第1の主面近傍と比べて柔らかく曲げやすい。そのため、保持シール材の第1の主面が金属ケーシング側、第2の主面が排ガス処理体側になるように配置することにより、保持シール材の第2の主面を、急な角度で曲がることになる排ガス処理体側に配置しやすくなる。
【0068】
また、保持シール材の第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径が、保持シール材の第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径よりも大きい場合、保持シール材の第1の主面においては、第2の主面よりも表面の凹凸が大きい、すなわち、表面粗さが大きい。ここで、金属ケーシングの表面粗さは、排ガス処理体の表面の表面粗さよりも小さい。そのため、保持シール材の第1の主面が金属ケーシング側、第2の主面が排ガス処理体側になるように配置することにより、保持シール材の第1の主面と金属ケーシングとの摩擦力が向上すると考えられる。その結果、保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体は、金属ケーシングから脱落しにくくなる。
【0069】
上述した構成を有する排ガス浄化装置100を排ガスが通過する場合について、図3を参照して以下に説明する。
図3に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置100に流入した排ガス(図3中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)130の排ガス流入側端面130aに開口した一のセル131に流入し、セル131を隔てるセル壁132を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁132で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面130bに開口した他のセル131から流出し、外部に排出される。
【0070】
次に、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体(ハニカムフィルタ)及び金属ケーシングについて説明する。
なお、排ガス浄化装置を構成する保持シール材の構成については、本発明の第一実施形態に係る保持シール材として既に説明しているので省略する。
【0071】
まず、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体について説明する。
図4は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
図4に示すように、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)130は、主に多孔質セラミックからなり、その形状は略円柱状である。また、ハニカムフィルタ130の外周には、ハニカムフィルタ130の外周部を補強したり、形状を整えたり、ハニカムフィルタ130の断熱性を向上させたりする目的で、外周コート層134が設けられている。
なお、ハニカムフィルタ130の内部の構成については、上述した本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の説明で既に述べた通りである(図3参照)。
【0072】
次に、排ガス浄化装置を構成する金属ケーシングについて説明する。
金属ケーシング120は、主にステンレス等の金属からなり、その形状は、図3に示すように、両端部の内径が中央部の内径よりも小さい略円筒状であってもよいし、また、図5に示すように、内径が一定である略円筒状であってもよい。
金属ケーシングの内径(排ガス処理体を収容する部分の内径)は、排ガス処理体の端面の直径と排ガス処理体に巻付けられた状態の保持シール材の厚さとを合わせた長さより若干短くなっていることが好ましい。
【0073】
続いて、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法について説明する。
図5は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示す斜視図である。図5では、内径が一定である略円筒状の金属ケーシングを用いた例を示している。
【0074】
まず、図1に示した保持シール材1を排ガス処理体(ハニカムフィルタ)130の周囲に巻き付けることにより、巻付体(保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体)150を作製する巻き付け工程を行う。
巻き付け工程では、従来公知の方法により作製した略円柱形状の排ガス処理体130の外周に、保持シール材1を凸部17と凹部18とが嵌合するようにして巻き付ける。
その結果、保持シール材1が巻き付けられた排ガス処理体130である巻付体150を作製することができる。
【0075】
次に、作製した巻付体150を、所定の大きさを有する略円筒状であって、主に金属等からなる金属ケーシング120に収容する収容工程を行う。
収容後に保持シール材が圧縮して所定の反発力(すなわち、排ガス処理体を保持する力)を発揮するために、金属ケーシング120の内径は、保持シール材1を巻き付けた排ガス処理体130の保持シール材1の厚さを含めた最外径より少し小さくなっている。
以上の方法により、図3に示した排ガス浄化装置100を製造することができる。
【0076】
収容工程に関し、巻付体を金属ケーシングに収容する方法としては、例えば、金属ケーシングの内部の所定の位置まで巻付体を圧入する圧入方式(スタッフィング方式)、巻付体を金属ケーシングの内部に挿入した後、金属ケーシングの内径を縮めるように外周側から圧縮するサイジング方式(スウェージング方式)、並びに、金属ケーシングを、第1の金属ケーシング及び第2の金属ケーシングの2つの部品に分離可能な形状としておき、巻付体を第1の金属ケーシング上に載置した後に第2の金属ケーシングを被せて密封するクラムシェル方式等が挙げられる。
【0077】
以下に、本発明の第一実施形態に係る保持シール材及び排ガス浄化装置の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態の保持シール材では、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の両方よりも小さい。
まず、本実施形態の保持シール材では、無機粒子が無機繊維の表面に付着しているため、保持シール材の面圧を向上させることができる。
【0078】
(2)また、本実施形態の保持シール材では、保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径が、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径よりも大きいので、保持シール材の表面の凹凸が大きくなる。従って、保持シール材の表面の摩擦係数が大きくなる。
【0079】
(3)また、本実施形態の保持シール材では、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が、保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径よりも小さいので、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機繊維間の摩擦力が小さくなる。その結果、無機繊維が折れにくくなり、保持シール材の柔軟性が向上する。
【0080】
(4)このように、保持シール材の厚さ方向にわたって無機粒子の平均粒子径を変化させることによって、保持シール材の面圧の向上効果、及び、保持シール材の表面の摩擦係数の向上効果を有し、かつ、曲げやすい保持シール材とすることができる。
特に、本実施形態の保持シール材では、保持シール材の第1の主面及び第2の主面の両方において高い摩擦係数を確保しつつ、曲げやすい保持シール材とすることができる。
【0081】
(5)本実施形態の排ガス浄化装置は、排ガス処理体と、
上記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、
上記排ガス処理体と上記金属ケーシングとの間に配設され、上記排ガス処理体を保持する保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、
上記保持シール材は、本実施形態の保持シール材である。
保持シール材として本実施形態の保持シール材が用いられていると、保持シール材が排ガス処理体に巻きジワ又は割れがない状態で巻き付けられており、かつ、排ガス処理体が高い保持力で保持されてなる排ガス浄化装置とすることができる。
また、本実施形態の排ガス浄化装置では、従来の保持シール材のみでは保持することができなかった大型の排ガス処理体を保持することができる。
【0082】
(実施例)
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
(実施例1)
(a)マット準備工程
まず、以下の手順により保持シール材用のマットを準備した。
(a−1)紡糸工程
Al含有量が70g/lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して平均繊維径が5.1μmである無機繊維前駆体を作製した。
【0084】
(a−2)圧縮工程
上記工程(a−1)で得られた無機繊維前駆体を圧縮して、連続したシート状物を作製した。
【0085】
(a−3)ニードルパンチング工程
上記工程(a−2)で得られたシート状物に対して、以下に示す条件を用いて連続的にニードルパンチング処理を行ってニードルパンチング処理体を作製した。
まず、ニードルが21個/cmの密度で取り付けられたニードルボードを準備した。次に、このニードルボードをシート状物の一方の表面の上方に配設し、ニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って一回上下させることによりニードルパンチング処理を行い、ニードルパンチング処理体を作製した。この際、ニードルの先端部分に形成されたバーブがシート状物の反対側の表面に完全に貫出するまでニードルを貫通させた。
【0086】
(a−4)焼成工程
上記工程(a−3)で得られたニードルパンチング処理体を最高温度1250℃で連続して焼成し、アルミナとシリカとを72重量部:28重量部で含む無機繊維からなる焼成シート状物を製造した。無機繊維の平均繊維径は、5.1μmであり、無機繊維径の最小値は、3.2μmであった。このようにして得られた無機繊維は、嵩密度が0.15g/cmであり、目付量が1400g/mであった。
【0087】
(a−5)切断工程
上記工程(a−4)で得られた焼成シート状物を切断し、切断シート状物(マット)を準備した。
【0088】
(b)含浸工程
アルミナゾル(日産化学工業株式会社製 アルミナゾル溶液AS550(固形分濃度:15重量%、粒子径0.04μm))を水で希釈することにより固形分濃度1重量%として、無機粒子を含む無機バインダーを調整した。この無機バインダーをカーテンコート法によりマットと接触させ、マットに無機バインダーを含浸させた。
【0089】
(c)脱水工程
無機バインダーが付着したマットを脱水機で吸引脱水することにより、無機バインダーが無機繊維の重量100重量%に対して100重量%付着した状態となるように調整した。
無機バインダー中の無機粒子の固形分濃度が1重量%であるので、無機粒子の無機繊維単位重量当たりの付着量は固形分換算で1重量%となる。
【0090】
(d)乾燥工程
次に、無機バインダーが付着したマットを130℃で加熱熱風乾燥することにより、無機粒子が付着されたマットが得られた。
【0091】
(e)付着工程
シリカ粒子(日産化学工業株式会社製、製品名MP−2040、粒子径0.2μm)を水で希釈することにより固形分濃度1重量%として、無機粒子を含む無機バインダーを調整した。
この無機バインダーを用いて、無機繊維の単位重量当たりの無機粒子の付着量が固形分換算で1重量%となるように、マットの第1の主面及び第2の主面にスプレーコーティングした。
【0092】
(f)裁断処理
このようにして得られたマットを、平面視寸法が全長776mm×幅290mmであって、一端に、長さLが40mm、幅Wが100mmの凸部が形成され、他端にこの凸部と嵌合する凹部が成形されるように裁断することにより、保持シール材の製造を完了した。
なお、保持シール材の厚さは、8.2mmであった。
【0093】
(実施例2)
上述した実施例1における(a)マット準備工程、(b)含浸工程、及び、(c)脱水工程までを実施例1と同様に行った。
続いて、アクリルゴムを水に分散させたラテックス(日本ゼオン株式会社製 LX−874)を用い、水で希釈することにより、固形分濃度が1重量%の有機バインダー含有液を調製し、無機繊維の単位重量当たりの有機バインダーの付着量が固形分換算で1重量%となるように、有機バインダー含有液をマットの第1の主面及び第2の主面にスプレーコーティングした。
このようにして得られた、無機バインダーと有機バインダーが付着したマットに対して、実施例1と同様にして(d)乾燥工程、(e)付着工程、及び、(f)裁断処理を行うことにより、保持シール材を作製した。
【0094】
(比較例1)
上述した実施例1における(e)付着工程を行わない他は実施例1と同様にして保持シール材を作製した。
【0095】
(比較例2)
上述した実施例1における(b)含浸工程を行わない他は実施例1と同様にして保持シール材を作製した。
【0096】
(比較例3)
上述した実施例2における(b)含浸工程、及び、(e)付着工程を行わない他は実施例2と同様にして保持シール材を作製した。
【0097】
各実施例及び各比較例において作製した保持シール材について、以下の評価を行った。
【0098】
(無機粒子の粒子径の計測)
本発明の第一実施形態の保持シール材の説明において記載したように、保持シール材の第1の主面近傍、保持シール材の厚さ方向中央近傍、及び、保持シール材の第2の主面近傍のそれぞれの領域に存在する無機繊維の表面を観察して無機粒子の粒子径を計測した。
図6(a)は、保持シール材に存在する無機繊維の表面の一部をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて撮影した写真の一例である。図6(b)は、図6(a)の一部を拡大した無機繊維表面の画像である。
図6(b)は、図6(a)に示す無機繊維21の破線で囲まれた無機繊維表面の一部22の拡大図である。図6(b)に示す画像上で、凹凸状態となっている無機繊維表面の一部22において、粒子状に観察される形状物を無機粒子23と認定し、無機粒子23の粒子径Xを計測した。次に、図6(b)に示す画像上で、上記無機粒子23とは別の粒子状に観察される各形状物についても同様の計測を行った。その後、1本の無機繊維あたり、無機繊維表面の面積が合計1.1μmとなる範囲において無機粒子23の粒子径Xの計測を任意の30個の無機粒子に対して行った。各領域において、この作業を5本の無機繊維に対して行った。
上記方法により計測された各領域における全ての無機粒子の粒子径Xの平均値(相加平均値)を計算することにより、各領域における無機粒子の平均粒子径を算出した。その結果を下記の表1に示す。
【0099】
(面圧試験)
各実施例及び各比較例で得られた保持シール材について、以下の方法により、面圧を測定した。
面圧を測定するサンプルとして、保持シール材を50mm×50mmの大きさに切断したものを用いた。
なお、面圧の測定には、マットを圧縮する板の部分に加熱ヒーターを備えた熱間面圧測定装置を使用した。
【0100】
まず、室温状態で、サンプルの嵩密度(GBD)が0.4g/cmとなるまで圧縮し、10分間保持した。なお、サンプルの嵩密度は、「嵩密度=サンプルの重量/(サンプルの面積×サンプルの厚さ)」で求められる値である。
【0101】
次に、サンプルを圧縮した状態で40℃/minで片面900℃、片面650℃まで昇温しながら、嵩密度を0.273g/cmまで開放した。そして、サンプルを温度片面900℃、片面650℃、嵩密度0.273g/cmの状態で5分間保持した。
【0102】
その後、1inch(25.4mm)/minで嵩密度が0.3g/cmとなるまで圧縮し、その時の荷重を測定した。得られた荷重をサンプルの面積で除算することにより、面圧(kPa)を求めた。その結果を下記の表1に示す。
【0103】
(摩擦係数の測定)
各実施例及び各比較例で得られた保持シール材について、以下の方法により、摩擦係数を測定した。
【0104】
図7は、摩擦係数の測定装置を模式的に示す側面図である。
まず、作製した保持シール材を平面視寸法全長30mm×幅50mmに裁断し、摩擦係数測定用サンプル60とした。次に、常温のホットプレート50の上に、ステンレス板51、摩擦係数測定用サンプル60、及び、重さ5kgの錘52を順に載せ、この状態で10分間保持した。
【0105】
その後、錘52に取り付けたワイヤー53を、滑車54を経由させて万能試験機55により10mm/minの速度で引っ張り、そのピーク荷重Fを測定した。なお、錘52と摩擦係数測定用サンプル60との界面でずれが生じないように、錘52に突起を設け、両者を固定して測定を行った。得られたピーク荷重F(N)と、ステンレス板51と摩擦係数測定用サンプル60との接触面で働く垂直方向の力N(N)とから、「μ=F/N」の関係式により摩擦係数μを算出した。その結果を下記の表1に示す。
【0106】
(押し抜き荷重の測定)
各実施例及び各比較例で得られた保持シール材を用いて以下の手順により排ガス浄化装置を作製し、各排ガス浄化装置の押し抜き荷重を測定した。
【0107】
(a)巻付体の作製
主に多孔質セラミックからなり、直径90mmで全長120mmの円柱状の排ガス処理体を用意するとともに、ステンレス製の内径98mmで全長150mmの円筒状の金属ケーシングを用意した。
【0108】
(b)次いで、各実施例及び各比較例の保持シール材の端部の凸部と凹部が互いに勘合し合うように、用意した排ガス処理体の外周に隙間なく巻き付けることにより巻付体を作製した。
【0109】
(c)巻付体の金属ケーシングへの圧入
金属ケーシングの内部の所定の位置まで巻付体を圧入することにより、各実施例及び各比較例の保持シール材を用いた排ガス浄化装置を作製した。
【0110】
(d)押し抜き荷重の測定
上記手順により得られた各排ガス浄化装置について、以下の方法により押し抜き荷重の測定を行った。
【0111】
図8(a)は、押し抜き荷重測定の手順を模式的に示す斜視図である。図8(b)は、押し抜き荷重測定機を模式的に示す正面図である。
図8(a)及び図8(b)に示すように、排ガス浄化装置100を台81の上に載置した後、排ガス処理体130に直径30mmのアルミ製の治具80で押し抜き荷重(加圧速度1mm/min)をかけて、巻付体150(保持シール材1が巻き付けられた排ガス処理体130)が金属ケーシング120から押し抜かれた時点までの押し抜き荷重(N)の最大値を測定し、その結果を、保持シール材と金属ケーシングとの間の保持力としての押し抜き荷重とした。なお、押し抜き荷重の測定には、インストロン万能試験機(5582型)を用いた。その結果を下記の表1に示す。
【0112】
各実施例及び各比較例の保持シール材の特性及び評価結果を表1にまとめて示した。
【0113】
【表1】
【0114】
実施例1及び実施例2で作製した保持シール材では、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が、保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の両方よりも小さいという関係が成り立っていた。また、面圧、摩擦係数、及び、押し抜き荷重がすべて好適な値であり、排ガス処理体の保持力に優れる保持シール材となっていた。
【0115】
比較例1で作製した保持シール材では、(e)付着工程を経ていないので、保持シール材の無機粒子の平均粒子径が各領域で同じ程度の大きさであった。すなわち、保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の粒子径が、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径よりも大きくない。そのため、保持シール材の表面の凹凸が大きくない。その結果、摩擦係数及び押し抜き荷重の値が低く、排ガス処理体の保持力に劣る保持シール材となっていた。
【0116】
比較例2で作製した保持シール材では、(b)含浸工程を経ていないので、保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍を除いて、無機繊維に無機粒子が付着していない。そのため、保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍を除いた箇所での無機繊維間の摩擦力が小さくなる。その結果、面圧及び押し抜き荷重の値が低く、排ガス処理体の保持力に劣る保持シール材となっていた。
【0117】
比較例3で作製した保持シール材では、(b)含浸工程及び(e)付着工程を経ていないので、無機繊維に無機粒子が付着していない。そのため、面圧、摩擦係数及び押し抜き荷重の値が低く、各実施例及び各比較例の中で最も排ガス処理体の保持力に劣る保持シール材となっていた。
【0118】
(第二実施形態)
以下、本発明の保持シール材、及び、排ガス浄化装置の一実施形態である第二実施形態について説明する。
本発明の第二実施形態では、保持シール材が3枚のマットからなる点が本発明の第一実施形態と異なる。
【0119】
図9は、本発明の第二実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
図9に示す保持シール材2は、図1に示した保持シール材1と同様、所定の長手方向の長さ、幅及び厚さを有する、平面視形状略矩形のマットである。また、保持シール材2は、第1の主面211と、第1の主面211と反対側の主面である第2の主面212を備えている。
さらに、保持シール材2では、第1のマット250、第2のマット260、及び、第3のマット270が順に積層されている。
第1のマット250は、第1の主面211側に位置し、第3のマット270は、第2の主面212側に位置している。第2のマット260は、第1のマット250と第3のマット270の間に位置している。
【0120】
図9に示す保持シール材2は、図1に示した保持シール材1と同様に、保持シール材を所定の厚さになるように切断した領域である、第1の主面近傍214、厚さ方向中央近傍215及び第2の主面近傍216の3つの領域を有する。
なお、図9中、線213は、保持シール材2の厚さ方向の中央線である。
【0121】
本発明の第二実施形態に係る保持シール材は、無機繊維及び無機粒子を含んでいる。無機繊維の表面には無機粒子が付着している。
本発明の第二実施形態に係る保持シール材では、本発明の第一実施形態に係る保持シール材と同様、第1の主面近傍、第2の主面近傍、及び、厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が異なっている。
具体的には、厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の両方よりも小さくなっている。
第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径と第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0122】
無機繊維の種類、及び、無機粒子の種類は、本発明の第一実施形態で説明したものと同様である。
また、各領域における無機粒子の平均粒子径の算出方法は、本発明の第一実施形態で説明した方法と同じであるので、その詳細な説明は省略する。
【0123】
本発明の第二実施形態に係る保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、0.005〜0.1μmであることが望ましく、0.01〜0.8μmであることがより望ましい。
【0124】
本発明の第二実施形態に係る保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径は、0.1〜1μmであることが望ましく、0.12〜0.8μmであることがより望ましい。
【0125】
図9に示す保持シール材2において、第1のマット250内、第2のマット260内、及び、第3のマット270内における無機粒子の平均粒子径は、均一であってもよい。
この場合、第2のマット260内における無機粒子の平均粒子径を、第1のマット250内における無機粒子の平均粒子径、及び、第3のマット270内における無機粒子の平均粒子径の両方よりも小さくすることにより、厚さ方向中央近傍215における無機粒子の平均粒子径を、第1の主面近傍214における無機粒子の平均粒子径、及び、第2の主面近傍216における無機粒子の平均粒子径の両方よりも小さくすることができる。
【0126】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材と同様、本発明の第二実施形態に係る保持シール材は、排ガス浄化装置を構成する保持シール材として使用されることが好ましく、第1の主面が金属ケーシング側、第2の主面が排ガス処理体側になるように配置されていることがより好ましい。
保持シール材の第1の主面が金属ケーシング側、第2の主面が排ガス処理体側になるように配置されている場合、保持シール材の第1の主面近傍における無機粒子の望ましい平均粒子径、及び、保持シール材の第2の主面近傍における無機粒子の望ましい平均粒子径は、本発明の第一実施形態で説明した通りである。
【0127】
本発明の第二実施形態に係る保持シール材において、無機繊維単位重量当たりの無機粒子の付着量は、固形分換算で0.2〜5重量%であることが望ましく、0.5〜3重量%であることがより望ましい。
【0128】
本発明の第二実施形態に係る保持シール材では、第1のマット250内、第2のマット260内、及び、第3のマット270内における無機粒子の種類は、各マットで同じであってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0129】
本発明の第一実施形態に係る保持シール材と同様、本発明の第二実施形態に係る保持シール材には、有機バインダーが含まれていることが望ましい。
有機バインダーについては、本発明の第一実施形態で説明した通りである。
【0130】
図9に示す保持シール材2を構成する第1のマット250、第2のマット260、及び、第3のマット270には、それぞれ、無機繊維同士の絡み合いを形成するためのニードルパンチング処理が施されていることが望ましい。
ニードルパンチング処理については、本発明の第一実施形態で説明した通りである。
【0131】
次に、本発明の第二実施形態に係る保持シール材の製造方法の一例である第1の製造方法について説明する。
【0132】
本発明の第二実施形態に係る保持シール材の第1の製造方法は、ニードルパンチング処理が施された無機繊維からなる保持シール材用の第1のマット、第2のマット、及び、第3のマットを準備するマット準備工程と、上記各マットを、無機粒子を含む無機バインダーと接触させ、上記各マットに無機バインダーを含浸させる含浸工程と、上記無機バインダーが付着した各マットを脱水処理する脱水工程と、各マットに付着した水分を乾燥させる乾燥工程と、上記水分を乾燥させた各マットを積層する積層工程とを含むことを特徴とする。
第1の製造方法では、含浸工程において、各マットに付着させる無機粒子の粒子径を変更する。これにより、第1の主面近傍、第2の主面近傍、及び、厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径を変化させることができるため、本発明の第二実施形態に係る保持シール材を製造することができる。
【0133】
(a)マット準備工程
まず、ニードルパンチング処理が施された無機繊維からなる保持シール材用の第1のマット、第2のマット、及び、第3のマットを準備するマット準備工程を行う。
各マットは、本発明の第一実施形態で説明した方法と同様の方法により製造することができる。
【0134】
(b)含浸工程
次に、上記各マットを、無機粒子を含む無機バインダーと接触させ、上記各マットに無機バインダーを含浸させる含浸工程を行う。
【0135】
上記含浸工程に用いる無機粒子の粒子径については、保持シール材の厚さ方向中央近傍が位置する第2のマットに含浸させる無機粒子の粒子径を、保持シール材の第1の主面近傍が位置する第1のマット、及び、第2の主面近傍が位置する第3のマットに含浸させる無機粒子の粒子径よりも小さくなるように調整すればよく、各マットに含浸させる無機粒子の粒子径は特に限定されない。
【0136】
なお、第2のマットに含浸させる無機粒子の粒子径を調整することにより、本実施形態の保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が0.005〜0.1μmとなるように調整することが望ましい。
また、第1のマット、及び、第3のマットに含浸させる無機粒子の粒子径を調整することにより、本実施形態の保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径が0.1〜1μmとなるように調整することが望ましい。
なお、第1のマットに含浸させる無機粒子の粒子径と、第3のマットに含浸させる無機粒子の粒子径とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
また、第1のマットに含浸させる無機粒子の種類と、第2のマットに含浸させる無機粒子の種類と、第3のマットに含浸させる無機粒子の種類とは、同じ種類であってもよく、異なる種類であってもよい。
含浸工程における他の条件等は、本発明の第一実施形態で説明した通りである。
【0137】
(c)脱水工程
次に、無機バインダーが付着した各マットを脱水処理する。
【0138】
(d)乾燥工程
この後、無機バインダーが付着した各マットを、110〜140℃程度の温度で乾燥させる乾燥工程を行い、水分を蒸発させて、無機粒子が付着したマットとする。
【0139】
(e)積層工程
第1のマット、第2のマット、及び、第3のマットを順に積層して一体化させ、積層体を作製する。
一体化の方法は特に限定されるものではなく、糸縫い、粘着テープによる接合、又は、接着剤による接着等の方法が挙げられる。
【0140】
これまでの工程までを経たマットは、本発明の第二実施形態に係る保持シール材となる。
また、図9に示すような凸部と凹部を備えた形状の保持シール材とするためには、保持シール材を所定の形状に切断する切断工程を更に行えばよい。
【0141】
第1の製造方法では、第1のマットに保持シール材の第1の主面近傍が位置し、第2のマットに保持シール材の厚さ方向中央近傍が位置し、第3のマットに保持シール材の第2の主面近傍が位置する。従って、各マットの厚さは、それぞれ1mm以上であることが望ましいが、各マットの厚さは特に限定されない。
【0142】
次に、本発明の第二実施形態に係る保持シール材の製造方法の別の一例である第2の製造方法について説明する。
第2の製造方法では、マット準備工程、含浸工程、脱水工程、乾燥工程及び積層工程を行う点は第1の製造方法と同様である。一方、積層工程の後に、積層されたマット表面にさらに無機粒子を付着させる付着工程を行う点が第1の製造方法と異なる。
また、第2の製造方法では、本発明の第一実施形態に係る保持シール材の製造方法と同様、含浸工程及び付着工程における無機粒子の粒子径を変更することによって、本発明の第二実施形態に係る保持シール材を製造することができる。
【0143】
以下に、第2の製造方法における含浸工程及び付着工程について説明する。
【0144】
(b)含浸工程
第1の製造方法の含浸工程においては、第2のマットに含浸させる無機粒子の粒子径を、第1のマット及び第3のマットに含浸させる無機粒子の粒子径よりも小さくなるように調整していた。一方、第2の製造方法の含浸工程においては、各マットに含浸させる無機粒子の粒子径は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。ただし、第2の製造方法の含浸工程では、保持シール材の厚さ方向中央近傍が位置するマット(第2のマットに限らない)に含浸させる無機粒子の粒子径は、付着工程における無機粒子の粒子径よりも小さくする必要がある。
上記の他は、第1の製造方法における含浸工程と同様である。
【0145】
(f)付着工程
積層工程を経て積層されたマットの第1の主面及び第2の主面に、さらに無機粒子を付着させる付着工程を行う。
付着工程において、マットの第1の主面及び第2の主面に無機粒子を付着させる方法は、本発明の第一実施形態で説明した通りである。
【0146】
上記付着工程に用いる無機粒子の粒子径を調整することにより、本実施形態の保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径が0.1〜1μmとなるように調整することが望ましい。
付着工程における他の条件等は、本発明の第一実施形態で説明した通りである。
【0147】
これまでの工程までを経たマットは、本発明の第二実施形態に係る保持シール材となる。
また、図9に示すような凸部と凹部を備えた形状の保持シール材とするためには、保持シール材を所定の形状に切断する切断工程を更に行えばよい。
【0148】
第2の方法では、付着工程によって、各領域における無機粒子の平均粒子径を変化させるため、どのマットに保持シール材の厚さ方向中央近傍が位置してもよい。そのため、各マットの厚さは、それぞれ1mm以上である必要はなく、特に限定されない。
【0149】
本発明の第二実施形態に係る排ガス浄化装置は、本発明の第二実施形態に係る保持シール材を使用している他は本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0150】
本発明の第二実施形態に係る保持シール材及び排ガス浄化装置では、本発明の第一実施形態に記載した(1)〜(5)の効果を奏する。
【0151】
(第三実施形態)
以下、本発明の保持シール材、及び、排ガス浄化装置の一実施形態である第三実施形態について説明する。
本発明の第三実施形態では、保持シール材を構成するマットが抄造されたマットである点が本発明の第一実施形態と異なる。
【0152】
本発明の第三実施形態に係る保持シール材は、本発明の第一実施形態に係る保持シール材とほぼ同じ構成を有しているため、その詳細な説明は省略する。
【0153】
本発明の第三実施形態に係る保持シール材の製造方法の一例について説明する。
【0154】
本発明の第三実施形態に係る保持シール材の製造方法は、無機繊維及び上記無機繊維の表面に付着した無機粒子を含むマットを準備するマット準備工程と、上記マットの表面に、さらに無機粒子を付着させる付着工程とを含むことを特徴とする。
上記の製造方法では、後述するマット準備工程における混合液準備工程、及び、付着工程における無機粒子の粒子径を変更することによって、本発明の第三実施形態に係る保持シール材を製造することができる。
【0155】
(a)マット準備工程
まず、抄造されたマットを準備するマット準備工程を行う。
本発明の第三実施形態に係る保持シール材を構成するマットは、種々の方法により得ることができるが、例えば、以下の方法により製造することができる。
(a−1)混合液準備工程
アルミナ繊維と、シリカ繊維と、無機粒子を含む無機バインダーと、水とを原料液中の無機繊維(アルミナ繊維及びシリカ繊維)の含有量が所定の値となるように混合し、攪拌機で攪拌することで混合液を調製する。混合液には、必要に応じて、有機バインダーが含まれていてもよい。
なお、上記調整では、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が0.005〜0.1μmとなるように調整することが望ましい。
【0156】
無機バインダーとしては、例えば、本発明の第一実施形態で説明した含浸工程において用いる無機バインダーを用いることができる。
【0157】
(a−2)抄造工程
次に、底面にろ過用のメッシュが形成された成形槽に混合液を流し込んだ後に、混合液中の水をメッシュを介して脱水することによりマット前駆体を作製する。
【0158】
(a−3)加熱圧縮工程
マット前駆体を所定の条件で加熱圧縮して所定の嵩密度を有するマットを作製する。この工程を経ることにより、アルミナ繊維とシリカ繊維とが、無機バインダーを介して互いに固着され、マットの形状が保持されることになる。
このようにして作製されたマットに含まれる無機繊維の表面には、無機バインダー由来の無機粒子が付着している。
【0159】
(b)付着工程
次に、上記マット準備工程で準備したマットの第1の主面及び第2の主面に、さらに無機粒子を付着させる付着工程を行う。
付着工程において、マットの第1の主面及び第2の主面に無機粒子を付着させる方法は、本発明の第一実施形態で説明した通りである。
【0160】
上記付着工程に用いる無機粒子の粒子径を調整することにより、本実施形態の保持シール材の第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径が0.1〜1μmとなるように調整することが望ましい。
なお、マットの第1の主面に付着させる無機粒子の粒子径と、第2の主面に付着させる無機粒子の粒子径とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
また、上記付着工程に用いる無機粒子の種類は、混合液準備工程に用いる無機粒子と同じ種類であってもよく、異なる種類であってもよい。さらに、マットの第1の主面に付着させる無機粒子の種類と、マットの第2の主面に付着させる無機粒子の種類とは、同じ種類であってもよく、異なる種類であってもよい。
付着工程における他の条件等は、本発明の第一実施形態で説明した通りである。
【0161】
これまでの工程を経たマットは、本発明の第三実施形態に係る保持シール材となる。
また、凸部と凹部を備えた形状の保持シール材とするためには、保持シール材を所定の形状に切断する切断工程を更に行えばよい。
【0162】
本発明の第三実施形態に係る排ガス浄化装置は、本発明の第三実施形態に係る保持シール材を使用している他は本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0163】
本発明の第三実施形態に係る保持シール材及び排ガス浄化装置では、本発明の第一実施形態に記載した(1)〜(5)の効果を奏する。
【0164】
(その他の実施形態)
本発明の第一実施形態に係る保持シール材において、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径は、第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の両方よりも小さかった。しかし、本発明の保持シール材には、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が、第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径のいずれか一方よりも小さい保持シール材も含まれる。
【0165】
上記のような保持シール材は、本発明の第一実施形態で説明した(a)マット準備工程、(b)含浸工程、(c)脱水工程、及び、(d)乾燥工程までを同様に行った後、(e)付着工程において、マットの第1の主面及び第2の主面のいずれか一方に無機粒子を付着させることにより製造することができる。
【0166】
本発明の保持シール材では、保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が、第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の少なくとも一方よりも小さい限り、その他の部分における無機粒子の平均粒子径は特に限定されない。
しかし、保持シール材の柔軟性の観点からは、第1の主面近傍及び第2の主面近傍以外の部分における無機粒子の平均粒子径は、第1の主面近傍及び第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径よりも小さいことが望ましい。
【0167】
本発明の第二実施形態では、保持シール材は、3枚のマットからなっていたが、本発明の保持シール材には、2枚のマットからなる保持シール材、又は、4枚以上のマットからなる保持シール材も含まれる。
【0168】
上記2枚のマットからなる保持シール材は、本発明の第二実施形態における保持シール材の第2の製造方法により製造することができる。
また、上記4枚以上のマットからなる保持シール材は、本発明の第二実施形態における保持シール材の第1の製造方法、又は、第2の製造方法により製造することができる。
【0169】
本発明の第二実施形態では、保持シール材を構成するマットは、すべてニードルパンチング処理が施された無機繊維からなるマットであった。しかし、本発明の保持シール材には、ニードルパンチング処理が施された無機繊維からなるマットと抄造されたマットとが任意に積層してなる保持シール材も含まれる。
【0170】
本発明の第二実施形態では、保持シール材は、第1のマット、第2のマット、及び、第3のマットからなっており、第2のマットに保持シール材の厚さ方向中央近傍が位置していた。しかし、本発明の保持シール材においては、保持シール材の厚さ方向中央近傍は必ずしも第2のマットに位置していなくてもよい。
【0171】
本発明の保持シール材において、保持シール材が複数枚のマットからなる場合、各マットの厚さは同じでもよく、互いに異なっていてもよい。
【0172】
無機バインダー中での無機粒子の二次粒子の形状は、上述した鎖状のもののほか、繊維状、棒状、数珠状、羽毛状、又は、塊状のものであってもよい。
【0173】
アルミナ繊維には、アルミナ以外に、例えば、CaO、MgO、又は、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
アルミナシリカ繊維の組成比としては、重量比で、Al:SiO=60:40〜80:20であることが望ましく、Al:SiO=70:30〜74:26であることがより望ましい。
【0174】
シリカ繊維には、シリカ以外に、例えば、CaO、MgO、又は、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
生体溶解性繊維は、例えば、シリカ等のほかに、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び、ホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含む無機繊維である。
【0175】
これらの化合物からなる生体溶解性繊維は、人体に取り込まれても溶解しやすいので、これらの無機繊維を含んでなるマットは人体に対する安全性に優れている。
【0176】
生体溶解性繊維の具体的な組成としては、シリカ60〜85重量%、並びに、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物15〜40重量%を含む組成が挙げられる。上記シリカとは、SiO又はSiOのことをいう。
【0177】
上記アルカリ金属化合物としては、例えば、Na及びKの酸化物等が挙げられ、上記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、Mg、Ca、及び、Baの酸化物等が挙げられる。上記ホウ素化合物としては、Bの酸化物等が挙げられる。
【0178】
生体溶解性繊維の組成において、シリカの含有量が60重量%未満では、ガラス溶融法で作製しにくく、繊維化しにくい。
また、シリカの含有量が60重量%未満では、柔軟性を有するシリカの含有量が少ないために構造的にもろく、また、生理食塩水に溶けやすい、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の割合が相対的に高くなるので生体溶解性繊維が生理食塩水に溶け易くなりすぎる傾向にある。
【0179】
一方、シリカの含有量が85重量%を超えると、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の割合が相対的に低くなるので生体溶解性繊維が生理食塩水に溶けにくくなりすぎる傾向にある。
なお、シリカの含有量は、SiO及びSiOの量をSiOに換算して算出したものである。
【0180】
また、生体溶解性繊維の組成においてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の含有量が、15〜40重量%であることが望ましい。アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の含有量が15重量%未満であると、生体溶解性繊維が生理食塩水に溶けにくくなる。
【0181】
一方、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の含有量が40重量%を超えると、ガラス溶融法では作製しにくく、繊維化しにくい。また、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の含有量が40重量%を超えると構造的にもろく、生体溶解性繊維が生理食塩水に溶け易くなりすぎる。
【0182】
上記生体溶解性繊維の生理食塩水に対する溶解度は、30ppm以上であることが望ましい。生体溶解性繊維の溶解度が30ppm未満では、無機繊維が体内に取り込まれた場合に、体外へ排出されにくく、健康上好ましくないからである。
【0183】
ガラス繊維は、シリカとアルミナとを主成分とし、アルカリ金属のほかに、カルシア、チタニア、及び、酸化亜鉛等含むガラス状の繊維である。
【0184】
本発明の実施形態に係る保持シール材の目付量(単位面積あたりの重量)は、特に限定されないが、200〜4000g/mであることが望ましく、1000〜3000g/mであることがより望ましい。保持シール材の目付量が200g/m未満であると、保持力が充分ではなく、保持シール材の目付量が4000g/mを超えると、保持シール材の嵩が低くなりにくい。そのため、このような保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、排ガス処理体が金属ケーシングから脱落しやすくなる。
【0185】
また、本発明の実施形態に係る保持シール材の嵩密度(キャニングの前の保持シール材の嵩密度)についても、特に限定されないが、0.10〜0.50g/cmであることが望ましい。保持シール材の嵩密度が0.10g/cm未満であると、無機繊維の絡み合いが弱く、無機繊維が剥離しやすいため、保持シール材の形状を所定の形状に保ちにくくなる。
また、保持シール材の嵩密度が0.50g/cmを超えると、保持シール材が硬くなり、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。
【0186】
本発明の実施形態に係る保持シール材の厚さは、特に限定されないが、3.0〜20mmであることが望ましく、6.0〜20mmであることがより望ましい。
保持シール材の厚さが3.0mm未満であると、保持力が充分ではない。そのため、このような保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、排ガス処理体が金属ケーシングから脱落しやすくなる。また、保持シール材の厚さが20mmを超えると、保持シール材が厚すぎるため、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。
【0187】
有機バインダーを使用する場合、その種類は特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ゴム系樹脂、及び、スチレン系樹脂等が挙げられる。
上記有機バインダーのなかでは、ゴム系樹脂(ラテックス)等が好ましい。有機バインダーを含有する有機バインダー含有液としては、例えば、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体を溶解させた溶液、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はスチレン−ブタジエンゴムを水に分散させたラテックス等が挙げられる。
【0188】
本発明の保持シール材は、無機繊維及び上記無機繊維の表面に付着した無機粒子を含み、第1の主面及び第2の主面を備えており、
上記保持シール材の厚さ方向中央近傍における無機粒子の平均粒子径が、上記第1の主面近傍における無機粒子の平均粒子径、及び、上記第2の主面近傍における無機粒子の平均粒子径の少なくとも一方よりも小さいことを必須の構成要件としている。
係る必須の構成要素に、本発明の第一実施形態、及び、本発明のその他の実施形態で詳述した種々の構成(例えば、無機粒子の平均粒子径の分布、無機繊維の種類、有機バインダーの有無、マットの製造方法等)を適宜組み合わせることにより所望の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0189】
1、2 保持シール材
11、211 第1の主面
12、212 第2の主面
14、214 第1の主面近傍
15、215 保持シール材の厚さ方向中央近傍
16、216 第2の主面近傍
21 無機繊維
22 無機繊維表面の一部
23 無機粒子
100 排ガス浄化装置
120 金属ケーシング
130 排ガス処理体
250 第1のマット
260 第2のマット
270 第3のマット
図1
図2
図3
図4
図5
図7
図8
図9
図6