(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の車載用電子制御装置において、前記枠部材は、弾性率10GPa以上の繊維強化樹脂により形成され、前記取付部は、前記枠部材の外周に4箇所以上設けられていることを特徴とする車載用電子制御装置。
請求項1に記載の車載用電子制御装置において、前記枠部材は、弾性率25GPa以上の材料により形成され、前記取付部は、前記枠部材の外周に2〜4箇所設けられていることを特徴とする車載用電子制御装置。
請求項1に記載の車載用電子制御装置において、前記枠部材は、弾性率70GPa以上の金属により形成され、前記取付部は、前記枠部材の外周に2箇所または3箇所設けられていることを特徴とする車載用電子制御装置。
請求項1に記載の車載用電子制御装置において、さらに放熱板を有し、前記放熱板は、一面を表出した状態で前記封止材に埋設されていることを特徴とする車載用電子制御装置。
請求項1に記載の車載用電子制御装置において、さらに別のコネクタを有し、前記別のコネクタは、少なくとも一部が、前記封止材により覆われていることを特徴とする車載用電子制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して、本発明に係る車載用電子制御装置の実施形態を説明する。
−実施形態1−
[車載用電子制御装置の構造]
図1は、本発明の車載用電子制御装置の一実施の形態を示し、
図1(A)は車載用電子制御装置の断面図、
図1(B)は、
図1(A)における車載用電子制御装置を下方から観た平面図である。また、
図2は、
図1(A)、
図1(B)に図示された車載用電子制御装置を、上下反転した状態の分解斜視図である。
車載用電子制御装置1は、枠部材10と、樹脂容器20と、回路基板(基板)30と、コネクタ40と、封止材50と、を備える。
枠部材10は、FRP(繊維強化樹脂)により形成され、矩形状の本体部11と、各側辺の中央部外周に設けられた4つの取付部12を有する。本体部11には、矩形状に開口された開口部11aが形成され、各取付部12には、中央部に貫通孔12aが形成されている。各取付部12に形成された貫通孔12aには、後述するが、締結部材が挿通され、車両のシャーシ、ブラケット等の支持部材に固定される。本体部11および取付部12は、弾性率が10GPa以上の材料により形成されている。枠部材10の弾性率は、樹脂容器20および封止材50の弾性率よりも大きいものとなっている。
【0010】
樹脂容器20の上方は開放されており、底部21から上面22(
図2参照)側に向かって拡大する傾斜側面を有し、樹脂容器20の内部には、底部21側から上面22側に向かって拡大する角錐台形状の凹部23が形成されている。凹部23には、底部21から立ち上げられ、凹部23の深さの中間まで延出された基板支持部24が設けられている。基板支持部24は、底部21の一つの対角線上の角部に一対設けられており、他の対角線上には設けられていない。
【0011】
回路基板30は、例えば、両面回路基板であり、両面に制御用の複数の電子部品31、32が搭載されている。回路基板30に搭載された制御用電子部品には、マイコンやパワー半導体素子が含まれており、ECU(電子制御ユニット)が構成される。図示の例では、電子部品32はパワー半導体素子であり、回路基板30における樹脂容器20の底部21とは反対側の面上に搭載されている。回路基板30は、電子部品31、32が搭載された状態で樹脂容器20の凹部23内に収容され、一対の基板支持部24により支持されている。
なお、
図1(B)では、回路基板30は、図示を省略されている。
【0012】
コネクタ40は、複数の接続ピン42と、この接続ピン42の外周を覆う樹脂製の本体部41を有する。接続ピン42の一端42aは、回路基板30に設けられた貫通孔に挿通され、回路基板30に設けられた接続パッド(図示せず)に半田付されている。接続ピン42の他端42bは、樹脂容器20に設けられた貫通孔に挿通され、外部に突出されている。
【0013】
樹脂容器20の凹部23内には、封止材50が充填されており、電子部品31、32の外表面および回路基板30の表裏両面は、封止材50により覆われている。
封止材50は、樹脂により形成されており、耐熱性、防水性の他、耐振性、耐塩水性等の信頼性を確保する。回路基板30に搭載された電子部品31の上面と樹脂容器20の底部21の内面とは、少なくとも0.5mmの間隙を形成することが好ましい。間隙が0.5mm以下であると、電子部品31の上面と樹脂容器20の底部21との間隙に回り込む封止材50の厚さが薄くなり、強度不足のため、クラックが生じやすい。
なお、
図2においては、封止材50は図示を省略されている。
【0014】
電子部品31、32または接続ピン42が回路基板30に半田付けされている場合、封止材50により半田ひずみが低減され、半田付けの信頼性が向上する。また、樹脂は空気よりも熱伝導度が大きいため、封止材50により電子部品31、32が搭載された回路基板30を覆うことにより放熱性が向上する。
さらに、本実施形態においては、封止材50は、回路基板30を基板支持部24に当接した状態に保持する機能を兼用している。
【0015】
コネクタ40は、本体部41の底面と樹脂容器20の底部21との間に設けられた接着剤61により樹脂容器20に接着されている。
樹脂容器20は、接着剤62により枠部材10に接着されている。つまり、コネクタ40、樹脂容器20および枠部材10は、接着により一体化されている。
接着剤61、62としては、例えば、シリコーン系接着剤、エポキ樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ビスマレイミド系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤等を用いることができる。
樹脂容器20を熱可塑性樹脂により形成した場合、超音波振動等による振動熱またはレーザ照射による加熱を利用して樹脂容器20を溶融し、この溶融層により枠部材10および/またはコネクタ40に接合することが可能である。この場合には、接着剤61および/または接着剤62は不要となる。
【0016】
[車載用電子制御装置の製造方法]
図3(A)〜(D)を参照して、上記一実施の形態の車載用電子制御装置の製造方法の一例を説明する。
図3(A)に図示されるように、樹脂容器20の凹部23の開口側を枠部材10側に対面させ、接着剤62により樹脂容器20を枠部材10に接着する。接着に際しては、樹脂容器20の凹部23の開口縁を枠部材10の開口部11aに位置合せして行う。
【0017】
また、コネクタ40の接続ピン42を樹脂容器20の底部21に設けた貫通孔に挿通し、接着剤61により、本体部41を樹脂容器20の底部21の上面に接着する。この状態では、各接続ピン42の一端42aは、樹脂容器20の凹部23内の深さ方向における所定の位置に配置される。接着の強度を向上するために、樹脂容器20の底部21におけるコネクタ40との接着部に凹部が形成されている。凹部を省略してもよい。
【0018】
枠部材10、樹脂容器20、コネクタ40を一体化した後、
図3(B)に図示されるように、この組立体を上下反転する。
電子部品31、32が搭載された回路基板30には接続ピン42が挿通される貫通孔が形成されており、この貫通孔を接続ピン42の一端42aから挿通して、回路基板30を樹脂容器20の基板支持部24に当接させる。基板支持部24は、回路基板30の1つの対角線上の各角部に対応する位置に設けられており、回路基板30は、この一対の基板支持部24により保持される。
この状態で、各接続ピン42を、回路基板30の接続パッド(図示せず)に半田付けする。
【0019】
半田付けは、半田付け箇所にレーザビームを照射する局所接合とすることができる。電子部品31、32が回路基板30に半田付けにより搭載されている場合、局所接合を行うことにより、半田の溶融を防ぐことができる。半田付けされた箇所の半田が溶融すると、電子部品31、32の位置がずれたり、接合力が低下したりする。局所接合により、半田の再溶融を防止し、電気的接続の信頼性を確保することができる。基板支持部24を、回路基板30との位置合せ用に用いてもよい。このようにすれば、回路基板30に半田付けする際、半田接続箇所の自動認識を行うことができる。
【0020】
また、半田付けに替えて、接続ピン42を回路基板30のビアホールに圧入することによって、コネクタ40と回路基板30との電気的接続を行うようにしてもよい。この場合、接続ピン42は、軸方向に、弾性変形により径を縮小するためのスリットが形成されているタイプを用いてもよい。
【0021】
コネクタ40と回路基板30との電気的接続は、リフローによって行うこともできる。リフローによる場合には、チップ部品等の小型の電子部品31を、回路基板30における樹脂容器20の底部21側(下面側)に配置し、マイコン等の大型の電子部品32を回路基板30における樹脂容器20の凹部23の開口部側(上面側)に配置するようにすることが好ましい。このようにすることにより、回路基板30の下面側に配置された大型の電子部品32の落下を防ぐことができる。また、リフローによる場合には、コネクタ40の接続ピン42の半田付け時に、回路基板30の上面側に配置された電子部品32の半田付けを行うこともできる。
【0022】
回路基板30とコネクタ40との電気的接続を行った後は、樹脂容器20の凹部23内に封止材50を形成する。
図3(C)は、ポッティング法により封止材50を形成する方法を示している。
ノズル55から流動性を有する樹脂50aを吐出し、樹脂容器20の凹部23内に注入する。回路基板30は、樹脂容器20の凹部23内における、回路基板30の一対角線上の各角部に対応する位置に設けられた一対の基板支持部24により支持されており、この基板支持部24により支持された部分を除く領域では回路基板30と凹部23の周縁部との間には間隙が形成されている。このため、樹脂50aは、この間隙から、回路基板30の下面側に回り込み、回路基板30と樹脂容器20の底部21との間の凹部23内にも充填される。
【0023】
上述したが、回路基板30に搭載された電子部品31の上面と樹脂容器20の底部21の内面との間に、少なくとも0.5mmの間隙が設けられていれば、この部分への樹脂50aの回り込みも確実となり、信頼性が確保できる。
樹脂50aは、回路基板30の上面側に搭載された電子部品32の上面を覆うまで凹部23内に充填される。また、樹脂50aは、枠部材10の開口部11a内において、枠部材10の厚さの中間に達するまで充填することが好ましい。このようにすることにより、樹脂50aにより樹脂容器20と枠部材10の密着強度を向上することができる。
【0024】
樹脂容器20の凹部23内に、流動性を有する樹脂50aを所定量充填したら、加熱などを行って樹脂50aを硬化することにより封止材50を形成する。
これにより、
図1(A)に図示される車載用電子制御装置1が作製される。
車載用電子制御装置1は、例えば、エンジンルーム内の車両部材に固定される。
図3(D)に図示されるように、ボルト等の締結部材56を、取付部12の貫通孔12aに挿通し、締結により車載用電子制御装置1を車両部材(支持部材)91に固定する。
【0025】
上記一実施の形態によれば、枠部材10、樹脂容器20、コネクタ40は一体化され、樹脂容器20の凹部23が、封止材50の容器とされる。回路基板30は、予め、電子部品31、32が搭載された状態で、樹脂容器20の凹部23内に収容されて組み立てられる。
このように、電子部品の集合体と、容器とは、別々に準備されたうえ組立てられるため、温度、湿度、空気クリーン度等の管理が必要な電子部品のメンテナンスが容易となる。また、回路基板30を、基板支持部24により支持してコネクタ40の接続ピン42を回路基板30の接続パッドに接続し、この状態で封止材50により固定する簡単なプロセスで組立が完了するため、量産性に優れている。
【0026】
枠部材10は、回路基板30が挿通される大きさの開口部11aを有するため、軽量となり、かつ、材料を削減して価格を低減することができる。枠部材10として、高弾性率のFRPを用いることにより、金属材料の場合より軽量化することができる。
枠部材10には開口部11aが形成されるため、耐振性が低下する。しかし、枠部材10に一体化される樹脂容器20の凹部23内に封止材50が充填されるため、剛性が大きくなり、耐振性を改善することができる。
【0027】
枠部材10の共振周波数は、枠部材10の弾性率と、取付部12を支持部材に固定する箇所の数(固定数)により変化する。
図19に、共振周波数と、枠部材10の弾性率および固定数との関係を図示する。
図19に示されるように、共振周波数は、弾性率が大きくなるのに伴って高くなる。また、固定数との関係では、固定数が多いほど、共振周波数が高くなる。つまり、固定数が多くなるほど、枠部材10の剛性が大きくなり、共振周波数は高くなる。
【0028】
エンジンルームにおいては、共振周波数を2KH
Zより大きくすると、振動の程度が問題とはならないことが確認されている。
図19を参照すると、一実施の形態に示した取付部12を4つとした、4点固定の場合には、弾性率が3GPa程度を超えると、共振周波数は2KH
Zを超え、少なくとも、弾性率が10GPa以上であれば、共振は問題とはならない。
同様に、3点固定の場合には、弾性率が20GPa以上であれば、共振は問題とはならない。2点固定の場合には、3点固定の場合とほぼ同程度であるが、弾性率が20GPa程度では、共振が問題となるか否か微妙であり、25GPa以上であれば、問題とならないことが明確である。
【0029】
[実施形態1の変形例]
図4(A)〜(C)および
図5(A)〜(C)に、実施形態1に示した車載用電子制御装置の変形例を示す。
以下に、変形例に示す車載用電子制御装置1の構造および製造方法を説明する。但し、以下の説明では、
図3(A)〜(D)に示す車載用電子制御装置1に対する相違点を主体として説明することとし、同様な構成については、対応する部材に同一の符号を付して説明を省略する。
変形例1に示す車載用電子制御装置1では、樹脂容器20の凹部23内に設けられた基板支持部24には、その上端に、凹部23の開口部側に向かって突出された柱状部25が形成されている。また、回路基板30には、柱状部25に対応する位置に貫通孔33が形成されている。樹脂容器20は熱可塑性樹脂により形成されており、また、柱状部25は、その高さが、回路基板30の厚さよりも大きく形成されている。
【0030】
枠部材10、樹脂容器20およびコネクタ40を、接着剤61、62を用いて一体化し、
図4(A)に図示されるように、一体化された組立体を上下反転する。そして、回路基板30の貫通孔33と柱状部25との位置合せを行う。
【0031】
図4(B)に図示されるように、回路基板30の貫通孔33を樹脂容器20の柱状部25に挿通し、回路基板30を押し下げて基板支持部24に当接させる。このとき、コネクタ40の接続ピン42は、回路基板30に設けた貫通孔(図示せず)に挿通される。
回路基板30が基板支持部24に当接した状態では、柱状部25の上端部は、回路基板30から突き出す。
【0032】
図4(c)に図示されるように、回路基板30から突き出した柱状部25の上部を、熱圧着具58により熱圧着する。これにより、柱状部25の上部が溶融して大径部25aが形成され、冷却されると、この大径部25aにより、回路基板30が柱状部25から抜け出ないように保持される。
【0033】
図5(A)に図示されるように、この状態の組立体を上下反転し、コネクタ40の接続ピン42と回路基板30とを、スポットフロー(局所半田付け)により半田付けする。樹脂容器20に設けられた基板支持部24は、底部21の一対角線上の各角部に設けられており、柱状部25は各基板支持部24に形成されている。
図5(A)に示す状態では、回路基板30は、一対の柱状部25の大径部25aに支持され、落下することはない。
スポットフローでは、噴流ガイド部材59を設けて、半田付け領域の周囲が半田噴流57に接触しないようにして、接続ピン42の一端42aと回路基板30の接続パッド(図示せず)とを半田噴流57に浸漬して半田付けを行う。
従って、回路基板30の上部から突き出した接続ピン42の一端42a全体が半田に覆われる。これにより、半田付けの信頼性を高いものとすることができる。
【0034】
この後は、
図5(B)に図示されるように、実施形態1の場合と同様、ポッティング法により流動性を有する樹脂50aを樹脂容器20の凹部23内に充填し、樹脂50aを硬化して、封止材50を形成する。これにより、変形例の車載用電子制御装置1が作製される。
変形例の車載用電子制御装置1も、
図5(C)に図示されるように、ボルト等の締結部材56により、車両部材91に固定される。
【0035】
変形例に示す車載用電子制御装置1においても、実施形態1の場合と同様な効果を奏する。また、変形例では、コネクタ40の接続ピン42と回路基板30の接続パッドとを半田付けの信頼性が高いスポットフローにより接続することができる。スポットフローにおいても、回路基板30に半田付けされている電子部品31、32の半田の再溶融を防ぐことができる。
【0036】
本発明の車載用電子制御装置1は、種々の実施形態を採用することが可能である。
以下に、実施形態2乃至8について説明する。
そして、各実施形態に対して行った各種の試験によって得られた試験結果を、比較例と比較して示し、本発明による効果を具体的に説明することとする。
【0037】
-実施形態2-
実施形態2の車載用電子制御装置1は、実施形態1における枠部材10を、弾性率100GPaのCFRP(カーボン繊維強化樹脂)により作製したものである。
また、車載用電子制御装置1は2点固定とした。
図6は、実施形態2の車載用電子制御装置1を、
図1(B)と同様に、下方から観た平面図である。
図6に図示された車載用電子制御装置1が、
図1(B)に図示されたものと相違する点は、枠部材10に設けられた取付部12が、2つとされている点である。
各取付部12は、矩形形状の枠部材10の、一対の短側辺の外周側縁に設けられている。実施形態2の車載用電子制御装置1は、一対の取付部12の各貫通孔12aに挿通される2つの締結部材56により車両部材91に固定される。
【0038】
-実施形態3-
実施形態3の車載用電子制御装置1は、実施形態1における枠部材10を、弾性率70GPaのアルミニウムにより作製したものである。
また、車載用電子制御装置1は、実施形態2と同様、2点固定とした。つまり、
図6に図示された車載用電子制御装置1と同じである。
【0039】
-実施形態4-
図7に本発明の実施形態4の断面図を示す。
実施形態4の車載用電子制御装置1は、コネクタ部40Aが、樹脂容器20Aに、例えば、射出成型により一体化して形成されている。
図8(A)、
図8(B)は、実施形態4の車載用電子制御装置の製造方法を説明するための断面図である。
コネクタ部40Aが一体成型された樹脂容器20Aを、接着剤62を用いて、枠部材10に接着しておく。コネクタ部40Aには、接続ピン42が取り付けられる貫通孔44が形成されている。コネクタ40Aの貫通孔44は、成型時に形成しておくことが好ましいが、成型後に機械加工により形成してもよい。
【0040】
各接続ピン42には、長さ方向の中間部に、径大とされたストッパ部42cが設けられており、接続ピン42は、ストッパ部42cがコネクタ部40Aに当接するまで押し込まれる。接続ピン42は、貫通孔44への圧入により径方向に縮小する弾性を有するタイプが好ましい。
予め、チキソ性が強いエポキシ樹脂、シリコ―ン樹脂等により貫通孔44をシールしておくことで、封止材50を形成する際の樹脂漏れを完全に防ぐことができる。
これにより、
図8(B)に図示される組立体が作製される。この組立体は、実施形態1の
図3(A)に図示される組立体に対応する。従って、以降は、
図3(B)以降の工程と同じ工程により実施形態4の車載用電子制御装置1を作製することができる。
なお、実施形態4の車載用電子制御装置1は、枠部材10をアルミニウムにより形成し、2点固定構造として作製した。
【0041】
実施形態4の車載用電子制御装置1は、コネクタ部40Aが樹脂容器20Aに一体成型されているので、価格を低減することができる。また、コネクタ40と樹脂容器20とを接合する工程を削減することができるため量産性がよい。上記実施形態では、接続ピン42にストッパ部42cを設け、コネクタ部40Aに密着させ、且つ、貫通孔44をチキソ性が強い樹脂によりシールするので、ポッティング時の樹脂50aが、コネクタ部40Aから漏れるのを防止することができる。
【0042】
-実施形態5-
図9は、本発明の車載用電子制御装置の実施形態5を示し、
図9(A)は断面図であり、
図9(B)および
図9(C)は、
図9(A)に図示された車載用電子制御装置の製造方法を説明するための断面図である。
実施形態5に示す車載用電子制御装置1の特徴は、実施形態1における枠部材10、樹脂容器20およびコネクタ40が一体化された枠体容器100として形成されている点である。
枠体容器100は、実施形態4として、
図8(A)に図示されたコネクタ部40Aが一体化された樹脂容器20Aを射出成型により形成する際に、金型内に枠部材10をインサートして成型する。
【0043】
枠体容器100を作製した後は、実施形態4の場合と同様の方法で作製される。
コネクタ部40Aを有する樹脂容器20Aと枠部材10とがインサート成型により一体化された枠体容器100は、
図9(B)に図示されるように、コネクタ部40Aに、接続ピン42が取り付けられる貫通孔44が形成されている。
この状態で、各接続ピン42を、
図9(C)に図示されるように、ストッパ部42cがコネクタ部40Aに当接する深さまで貫通孔44に圧入する。
以降は、実施形態4と同一の工程を行うことにより、実施形態5の車載用電子制御装置1が作製される。
なお、実施形態5の車載用電子制御装置1は、枠部材10をアルミニウムにより形成し、2点固定構造として作製した。
【0044】
実施形態5の車載用電子制御装置1は、コネクタ部40A、樹脂容器20Aと共に枠部材10が一体成型された枠体容器100を用いている。従って、実施形態4の場合よりも、さらに、価格を低減することができる。また、実施形態4に対して、樹脂容器20Aと枠部材10とを接合する工程を削減することができるので、さらに量産性に優れている。
【0045】
−実施形態6-
図10は、本発明の車載用電子制御装置の実施形態6を示し、
図10(A)はその断面図であり、
図10(B)は、
図10(A)における車載用電子制御装置を下から観た平面図である。
実施形態6の車載用電子制御装置1は、封止材50の上面(
図10(A)においては下方に位置している)に放熱板71が配置されている点で、実施形態5とは相違している。
【0046】
樹脂容器20Aには、枠部材10側に、段部28が設けられており、放熱板71は、段部28上に配置されている。回路基板30には、樹脂容器20Aの凹部23の開口部側にパワー半導体素子等、発熱量が大きい電子部品32を配置し、封止材50として熱伝導率が大きい材料を用いる。このようにすることにより、電子部品31、32から放射される熱が、放熱板71から効率よく放熱されるようにすることができる。
実施形態6の車載用電子制御装置1は、枠部材10をアルミニウムにより形成し、2点固定構造として作製した。
【0047】
-実施形態7-
図11は、本発明の車載用電子制御装置の実施形態7を示し、トランスファーモールドにより作際する方法を説明するための図である。
実施形態7の車載用電子制御装置1は、実施形態6の車載用電子制御装置1における封止材50を、トランスファーモールドにより形成したことを特徴とする。その他は、すべて、実施形態6の車載用電子制御装置1と同一である。
【0048】
図11に図示されるように、コネクタ部40Aを有する樹脂容器20Aに枠部材10が一体成型された枠体容器100をチャンバ81内に収容し、上型82と下型83とにより枠部材10をクランプして、加熱軟化した樹脂50bをチャンバ81内に圧入する。上型82と下型83によりクランプする枠部材10の弾性率が低いと、樹脂漏れが起こる可能性が高くなる。
実施形態7では、枠部材10を弾性率70GPaのアルミニウムとしたので、樹脂漏れを防止できる効果がある。また、封止材50を、トランスファーモールドにより形成するので、成型サイクルが速く、寸法精度を高くすることができる。
【0049】
-実施形態8-
図12は、本発明の車載用電子制御装置の実施形態8の断面図である。
実施形態8の車載用電子制御装置1は、複数のコネクタを備える点に特徴を有する。
図12に図示されるように、実施形態8の車載用電子制御装置1は、
図9(A)に図示された車載用電子制御装置1に対し、第2のコネクタ45を備えている点で相違している。
第2のコネクタ45は、回路基板30におけるコネクタ部40Aとは反対面側に配置されている。第2のコネクタ45は根元側が封止材50内に埋没し、先端側が封止材50の上面から外方に突き出している。
【0050】
電子部品31、32が搭載れた回路基板30に、例えば、エンジン制御および自動変速機制御の制御回路を備える構成とすれば、コネクタ部40Aをエンジンに、第2のコネクタ45を自動変速機に接続することができる。このように、複数の制御機能を一体化することができ、車両のスペース削減と価格の低減を図ることができる。
【0051】
実施形態8の車載用電子制御装置1を作製するには、回路基板30に電子部品31、32と共に、第2のコネクタ45を実装しておく。このようにしておけば、実施形態1の
図3(B)において、回路基板30に第2のコネクタ45が追加して搭載された状態となるから、この後は、
図3(C)以降の工程を行えばよい。
【0052】
[実施形態8の変形例1]
図13は、本発明の車載用電子制御装置の実施形態8の変形例1を示す。
変形例1が、
図12の車載用電子制御装置1と相違する点は、電子部品32上に放熱板72が配置されている点である。放熱板72の効果は、実施形態6に関して説明された通りである。
【0053】
[実施形態8の変形例2]
図14は、本発明の車載用電子制御装置の実施形態8の変形例2を示す。
変形例2では、車両部材91の下方に、別の車両部材92が配置されている。
変形例2における車載用電子制御装置1は、
図13に図示される車載用電子制御装置1と、基本的な構造の相違はない。変形例2では、第2のコネクタ45の接続ピン46が、車両部材91に設けられた貫通孔に挿通されるケーブル47を介して、別の車両部材92に接続さている。
【0054】
[実施形態8の変形例3]
図15は、本発明の車載用電子制御装置の実施形態8の変形例3を示す。
変形例3では、コネクタ部40Aとコネクタ部40Bとが、並置して設けられている点に特徴を有する。すなわち、枠体容器100は、コネクタ部40A、40Bを、樹脂容器20Aとして一体に成型した後、インサート成型により枠部材10を一体化して形成されている。このような構造とすることにより、第2のコネクタ45の部品価格を低減し、また、回路基板30への実装作業を能率化することが可能となる。
【0055】
[実施形態8の変形例4]
図16は、本発明の車載用電子制御装置の実施形態8の変形例4を示す。
変形例4は、基本的には、変形例3と同様である。変形例3との相違点は、コネクタ部40Aとコネクタ部40Bが備える接続ピンのピッチが相違する点である。
すなわち、コネクタ部40Aの接続ピン42のピッチよりも、コネクタ部40Bの接続ピン48のピッチが小さい。コネクタ部40Aと40Bとは、接続ピン42、48のピッチ以外に、本数、長さ等が異なるものとしてもよい。
【0056】
図17は、本発明の車載用電子制御装置の実施形態8の変形例5を示す。
変形例5が
図16に示す変形例4と相違する点は、コネクタ部40Aと40Bの向きが異なる点である。
図17において、コネクタ部40Aの接続ピン42は、回路基板30に接続された一端42aから回路基板30に対して垂直に延出され、他端42b側で左方向に90度屈曲されている。一方、コネクタ部40Bの接続ピン48は、回路基板30に接続された一端48aから回路基板30に対して垂直に延出され、他端48b側で右方向に90度屈曲されている。
【0057】
このような構造とすることにより、コネクタ部40A、40Bが接続される車両部材が、異なる方向に配置されている場合において、コネクタ部40A、40Bと車両部材とを接続するケーブルの接続を容易にすることができる。
【0058】
[試験評価]
上述した実施形態1〜8として示す車載用電子制御装置1を、各種試験を行って、比較例と比較した評価結果を
図20に示す。
図20において、実施形態1は、
図1および
図3に図示された両方の構造に対するものであり、実施形態8は、
図13に図示された構造に対するものである。
【0059】
比較例は
図18に図示する構造を有する。
比較例の電子制御装置200は、周囲に枠201aが形成されたベース201を有し、このベース201の上面に電子部品202が搭載された回路基板203が載置されている。ベース201はアルミニウムにより形成されている。ベース201には貫通孔が形成されており、この貫通孔を介して、回路基板203の裏面側にコネクタ204が実装されている。コネクタ204の接続ピン205は、回路基板203を貫通して回路基板203の表面側で半田付けされている。ベース201の枠201aの内側には封止材206が充填されている。封止材206は、トランスファーモールドにより成型した。ベース201の固定部201bは2箇所である。
【0060】
図20において、評価欄の重量に関しては、比較例に対して、同等の場合を×、軽量化が10%未満の場合を△、軽量化が10%以上50%未満の場合を○、軽量化が50%以上の場合を◎で示した。
はんだ信頼性に関しては、―40℃から125℃の温度サイクルを行う評価したが、すべて比較例と同等であるため、すべての実施形態に〇を付した。
放熱性に関しては、120℃の恒温槽中において動作試験を実施して評価した。
量産性に関しては、回路基板搭載後の工程長さが比較例と同等の場合を〇、比較例よりも短縮された場合を◎で示した。
コストに関しては、比較例と同等の場合を△、比較例よりも低減した場合を〇、比較例よりも大幅に低減した場合を◎で示した。
【0061】
図20を参照すると、放熱性に関しては、実施形態1〜5が比較例よりも劣る点を除けば、他の評価事項に関しては、すべての実施形態が、比較例よりも良好または同等であることを確認することができる。
特に、重量とコストに関しては、実施形態1〜8のすべてが比較例よりも良好である。
【0062】
このように、本発明の実施形態1〜8によれば、車載用電子制御装置1の軽量化および価格の低減化を図ることができるという効果を奏する。
また、放熱性に関して、実施形態5〜8は比較例と同等であるという評価結果から、放熱板を用いれば、開口部が形成されていない、全面がべた状の金属ベースとした場合と同等の放熱性を持たせることが可能であることが判った。しかも、放熱板を備えた場合においても、軽量化と価格の低減化を達成することができる。
【0063】
耐振性に関しては、共振周波数が2KH
Zであれば、4点固定であれば、弾性率10GPa以上であれば問題がないことが判明した。また、
図19から、弾性率25GPa以上であれば、2点〜4点固定でも問題がないことも判明した。
【0064】
樹脂容器20の凹部23内に封止材50を充填することにより剛性が大きくなり、共振周波数を高くすることができる。封止材50を充填する際、樹脂容器20に設けた一対角線上の各角部に設けた基板支持部24により回路基板30を支持する構造を採用したので、流動性を有する樹脂50aの回路基板30の裏面側への回り込みを確実にすることができる。
封止材50をトランスファーモールドにより形成する際、枠部材10として高弾性率材料を用い、上・下型82、83により枠部材10をクランプするようにしたので、樹脂漏れを防止することができる。
【0065】
上記各実施形態においては、枠部材10の弾性率を、樹脂容器20および封止材50の弾性率よりも大きくした。このため、共振周波数が高くなり、耐振性に関して、エンジンルーム内等振動が大きい車載用電子制御装置として適するものとなった。
【0066】
コネクタ40の接続ピン42と回路基板30とを局所半田付とすることにより、回路基板30に半田付けされている電子部品31、32の接合の信頼性を確保することができる。
【0067】
コネクタ部40Aを樹脂容器20Aに一体成型したので、部品コストを削減すると共に、コネクタ40と樹脂容器20とを接合する工程が不要となり、量産性を向上することができる。また、封止材50を形成する工程において、コネクタ40から樹脂漏れを防止することができる。
【0068】
コネクタ部40Aが一体化された樹脂容器20Aと枠部材10とをインサート成型により一体化して枠体容器100を作製したので、量産性を一層向上することができる。
【0069】
回路基板30に第2のコネクタ45を実装し、複数のコネクタを備える車載用電子制御装置1としたので、複数の制御機能を一体化することができ、車両のスペース削減と価格の低減を図ることができる。
また、コネクタ部40A、40Bが一体に成型された樹脂容器20Aとしたので、複数の制御機能の一体化に加えて、量産性を向上することができる。
さらに、コネクタ部40A、40Bを、車両部材の配置に合わせて異なる方向に向けるように構成したので、ケーブルの接続が容易となり、量産性を向上することができる。
【0070】
なお、上記実施形態では、枠部材10の材料としてFRPまたはアルミニウムを用い場合で例示した。しかし、枠部材10の材料は、これに限られるものではなく、例えば、アルミニウムよりも弾性率が大きい、銅、鉄等を用いることができる。
【0071】
図20を参照して、実施形態2〜8ではすべて2点固定として例示されているが、これらの各実施形態においても、当然、3点固定、4点固定とすることができる。
【0072】
基板支持部24を一対の対角線上に形成した構造として例示したが、基板支持部24の位置、個数、形状は、適宜、変更することができる。要は、凹部23内に注入した樹脂50a、50bが回路基板の裏面側に良好に回り込むような間隔が樹脂容器20との間に形成される構造とすればよい。
【0073】
回路基板30は、単層として例示されているが、多層基板としたり、複数枚としたりすることができる。
また、コネクタの種類、構造、形状等は実施形態として図示されたものに限られるものではなく、例えば、コンタクト部が可動のもの等も含め、種々のタイプを用いることが可能である。
【0074】
本発明の車載用電子制御装置は、上述した各実施形態を、適宜、組み合わせて適用することも可能である。
その他、発明の趣旨の範囲内で、種々、変形して適用することが可能であり、要は、開口部を有する枠部材と、枠部材の開口部に対応して凹部が形成された樹脂容器と、電子部品が搭載され、凹部内に配置された基板と、基板と外部部材とを接続するためのコネクタと、電子部品と基板とを覆うように凹部内に充填された封止材とを備え、枠部材の弾性率が、樹脂容器および封止材の弾性率よりも大きいものであればよい。