特許第5990448号(P5990448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5990448-燃料電池 図000006
  • 特許5990448-燃料電池 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990448
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0202 20160101AFI20160901BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20160901BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20160901BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20160901BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20160901BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20160901BHJP
【FI】
   H01M8/02 B
   H01M8/06 R
   H01M8/04 P
   H01M8/04 T
   H01M8/04 J
   !H01M8/10
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-254061(P2012-254061)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-102969(P2014-102969A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】301060299
【氏名又は名称】東芝燃料電池システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】狩野 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】霜鳥 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】前川 全
(72)【発明者】
【氏名】松野 雄史
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−305402(JP,A)
【文献】 特表2011−523757(JP,A)
【文献】 特開2000−149968(JP,A)
【文献】 特開2005−119923(JP,A)
【文献】 特開2009−176490(JP,A)
【文献】 特開2004−071297(JP,A)
【文献】 特開2013−069605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルを間にセパレータを介して積層した燃料電池であって、
前記セパレータの少なくとも1つは多孔質体を含み、前記多孔質体の水透過係数が3×10−13[m/Pa・sec]以上、ウェットシール圧力が20kPa以上、水はい上がり速度が1.0×10−2[kg/m・t1/2]以上、吸水時間(10μL滴下時)が120秒以下、反応ガス導入部またはその近傍における吸水時間(10μL滴下時)が40秒以下であることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記セパレータは、アノードセパレータプレートとカソードセパレータプレートを積層してなり、アノードセパレータプレート及びカソードセパレータプレートの少なくとも一方が前記多孔質体であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池、原燃料を水素リッチなガスに改質し、この改質ガスを前記燃料電池に供給する改質手段、酸化剤ガスを前記燃料電池に供給する酸化剤ガス供給手段、冷却剤を前記燃料電池に供給・回収する電池冷却手段、および前記燃料電池から取り出される電気を制御する電気制御手段を具備することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の燃料電池、水素ガスを前記燃料電池に供給する水素ガス供給手段、酸化剤ガスを前記燃料電池に供給する酸化剤ガス供給手段、冷却剤を前記燃料電池に供給・回収する電池冷却手段、および前記燃料電池から取り出される電気を制御する電気制御手段を具備することを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を用いた固体高分子形燃料電池は、低温動作性や高出力密度等の特徴から、一般家庭用を視野に入れた小型コージェネレーションシステムや電気自動車用の動力源としての用途に適しており、今後、市場規模が急激に拡大することが予想される。
【0003】
このような固体高分子電解質形燃料電池は、アノードとカソードの間に、イオン交換膜からなる電解質膜を挟んで構成される単電池を、間にセパレータを挿入して複数個積層した燃料電池スタックとして構成される。
【0004】
ところで、上記のような燃料電池スタックにおいて、セパレータは水除去性能、ウェットシール性、加湿性能など多くの機能が求められる。そのため、水を透過する機能とガスシール機能の相反する物性を両立する必要がある。
【0005】
水除去性能については、アノード極およびカソード極において、凝縮反応生成水及び反応ドラック水が、アノードガス拡散基板およびカソードガス拡散基板を経由して、それと接触しているアノード側多孔質プレートのアノードリブ部およびカソード側多孔質プレートのカソードリブ部から吸収除去される。
【0006】
しかし、凝縮反応生成水及び反応ドラッグ水がアノードガス拡散基板およびカソードガス拡散基板から速やかに除去できない場合は、この凝縮反応生成水及び反応ドラック水がアノードガス拡散基板およびカソードガス拡散基板中に充満し、それによって反応ガス拡散透過が阻害され、アノード触媒層およびカソード触媒層への反応ガス供給が不十分となってしまう。このことは、反応ガス拡散抵抗の増大を引き起こし、その結果、電池特性の低下および劣化の原因となっていた。
【0007】
従来のセパレータでは、貫通方向のウェットシール性のみが配慮されているため、上記の物性をすべて満足するようなセパレータを想定しておらず、その結果得られる電池性能としては不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3515161号公報
【特許文献2】特開2005−142015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明が解決しようとする課題は、ウェットシール性を維持しつつ、反応ガスに十分な加湿を行うことを可能にするセパレータを備える燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、複数の燃料電池セルを間にセパレータを介して積層した燃料電池が提供される。
【0011】
前記セパレータの少なくとも1つは多孔質体を含み、前記多孔質体の水透過係数が3×10−13[m/Pa・sec]以上、ウェットシール圧力が20kPa以上、水はい上がり速度が1.0×10−2[kg/m・t1/2]以上、吸水時間(10μL滴下時)が120秒以下、反応ガス導入部またはその近傍の吸水時間(10μL滴下時)が40秒以下である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る固体高分子形燃料電池スタックを示す図である。
図2図1のA−A断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係る固体高分子電解質形燃料電池の平面図、図2はそのA−A断面図を示す。図2に示すように、固体高分子電解質形燃料電池1は、アノード2とカソード3の間に固体高分子電解質膜4を挟んで構成される単電池を、セパレータ5を間に介して複数個積層して構成される。アノード2はアノード触媒層8とアノードガス拡散層9からなり、カソード3はカソード触媒層10とカソードガス拡散層11からなる。
【0015】
このような燃料電池では、図1及び図2に示すように、水素を含む燃料ガスをアノード2に供給し、酸素を含む酸化剤ガスをカソード3に供給して発電を行うが、この燃料ガスと酸化剤ガスは層状のアノード2、固体高分子電解質膜4、及びカソード3に対して電気伝導性材料からなる平板であるセパレータ5の表面に設けられた反応ガス流路6及び7に沿ってそれぞれ垂直に供給される。
【0016】
反応ガス流路6及び7は、図1に示すガス供給マニホールド12,14と、ガス排出マニホールド13,15とに連通している。燃料ガスと酸化剤ガスとは、ガス供給マニホールド12,及び14を介して反応ガス流路に供給され、反応ガス流路を上流から下流へと流れ、ガス排出マニホールド13,15から外部へ排出される。また、電池反応によって燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素が消費され、反応生成物である水が水蒸気として排出される。
【0017】
固体高分子電解質膜4は、平衡する水蒸気圧により膜の含水率が変化し、電解質膜の抵抗が変化するという性質を有する。そこで、電解質膜の抵抗を小さくし、十分な発電性能を得るためには、固体高分子電解質膜に水分を加える、つまり加湿することが必要になる。この加湿する方式には、燃料ガスや酸化剤ガスに予め水蒸気を添加する外部加湿方式と、セパレータ5を介して水を直接添加する内部加湿方式とが知られている。
【0018】
セパレータ5は、セル発電に伴う発熱を除去するための冷却除熱機能と、セルを電気的に直列に接続するための導電機能とを備えている。また、セパレータ5を介して配置された一方の燃料電池セルのセパレータ側に流通するアノード反応ガス又はカソード反応ガスと、セパレータを介して配置された他方の燃料電池セルのセパレータ側に流通するカソード反応ガス又はアノード反応ガスとが、セパレータ5を貫通して混合することを防止する反応ガス遮断機能を備えている。さらに、セパレータ5は、所定の積層締付下で形状を保持する機械的強度をも有している。
【0019】
セパレータ5は、図2で例示すると、一方の面に反応ガス流路7、他方の面に冷却水流通路18を有するカソード側セパレータプレート16と、一方の面が平面で他方の面に反応ガス流路6を有するアノード側セパレータプレート17とを、カソード側セパレータプレート16の冷却水流路18形成面とアノード側セパレータプレート17の平面とを接着面として一体化して形成されるのが一般的である。
【0020】
このように、セパレータ5は、カソード側セパレータプレート16の冷却水流路18を通して水を供給することにより、反応ガス流路6及び7に導入された反応ガスに十分な水分を与える加湿機能を有している。
【0021】
また、アノード2では、アノード反応ガス流路6内において、加湿蒸気の生成凝縮水が発電消費による燃料ガス分圧低下を起因として発生するが、セパレータ5は、この生成凝縮水を内部に吸収除去することにより、凝縮水が流路を閉塞して燃料ガスの導入を阻害することを防止する機能を有する。
【0022】
カソード3においては、カソード反応ガス流路7において、生成凝縮水が、発電消費による酸化ガス分圧低下により発生するが、セパレータ5は、この凝縮水を内部に吸収除去する以外にも、重要な機能として、凝縮反応生成水及び反応ドラッグ水をカソードガス拡散層11からセパレータ5側に速やかに除去し、カソード反応部の健全性を維持する機能をも果たしている。
【0023】
また、セパレータ5は、その気孔内に水を保持することでシール性を維持(いわゆるウェットシール性)しており、燃料ガス系統圧力から冷却水系統圧力を引いた値(圧力差)および酸化剤ガス系統圧力から冷却水系統圧力を引いた値(圧力差)は、セパレータの持つウェットシール圧よりも低く設定されており、反応ガスがセパレータ5内を貫通流入することがないように構成されている。
【0024】
以上のような機能を発揮するためには、セパレータ5は、所定の特性を有する多孔質部分を含む必要がある。所定の特性とは、水透過係数、ウェットシール圧力、吸水時間、反応ガス導入部またはその近傍における吸水時間である。
【0025】
必要とするこれらの特性は、水透過係数が3×10−13[m/Pa・sec]以上、好ましくは10×10−13〜50×10−13[m/Pa・sec]であり、ウェットシール圧力が20kPa以上、好ましくは35〜70kPaであり、水はい上がり速度が1.0×10−2[kg/m・t1/2]以上、好ましくは5×10−2〜25×10−2[kg/m・t1/2]であり、吸水時間(10μL滴下時)が120秒以下、好ましくは1〜60秒であり、反応ガス導入部またはその近傍における吸水時間(10μL滴下時)が40秒以下、好ましくは1〜20秒である。
【0026】
複数枚のセパレータを用いる場合は、そのすべてが上記特性を有する多孔質セパレータである必要はなく、また、1枚のセパレータがカソード側セパレータプレートとアノード側セパレータプレートとにより構成される場合、そのいずれか一方が上記[特性を有する多孔質セパレータプレートであってもよい。
【0027】
以上説明した本実施形態に係る燃料電池によれば、少なくとも1つのセパレータが所定の特性を有する多孔質体を含んでいるため、反応ガス拡散基板からの凝縮水の吸収除去を効果的に行い、かつ面内および貫通方向のウェットシール性を維持しつつ、反応ガスに十分な加湿を行うことが可能である。
【0028】
以下に、上記特性を有する多孔質セパレータの製造例を示す。
【0029】
セパレータの製造例
多孔質セパレータを、例えば、特表2005−514745号に記載されているような方法により、以下のようにして製造した。
【0030】
37.5wt%の黒鉛粉末(製品名「KS75」;スイス、ボディオ(Bodio)のティムカル社(Timcal Company)から入手可能)と、37.5wt%の黒鉛粉末(製品名「KS150」;同様にティムカル社(Timcal company)から入手可能)と、熱硬化性結合剤として12.5wt%のフェノール樹脂粉末(製品名「VARCUM 29302」;米国テキサス州ダラスのデュレツ社(Durez Company)から入手可能)と、10wt%の粉砕された炭素繊維(製品名「PANEX 30」;米国ミズーリ州セントルイスのゾルテック社(Zoltek Company)からに入手可能)と、2.5wt%の修飾カーボンブラック電気伝導性親水性剤(製品名「等級6387−5」;米国マサチューセッツ州ボストンのキャボット社(Cabot Company)から入手可能)とを、約5分間、混合機により混合することによって、セパレータの原料混合物を調製した。
【0031】
次に、以上のようにして調製した原料混合物を、均一な厚みとなるようにプレスで予備的に成形し、その後ガス流路の形状が加工された本金型内に充填した。この本金型を、加熱される圧盤を有する液圧圧縮プレス内に配置した。本金型を、プレス内で約30分間、500p.s.i.(3,447Kpa)の圧力において400°F(204℃)の極限温度に加熱し、次いで室温に冷却した。これによって、多孔質の微小な細孔を有する、ガス流路付きのプレートが製造された。
【0032】
多孔質セパレータの親水化処理
このようにして得られた多孔質セパレータプレートについて、例えば、特表2003−508885号に記載されている方法により、以下のようにして親水化処理を行った。
【0033】
最初に、pH約0.4の四塩化スズ五水和物(SnCl4・5H2O)水溶液を調製した。親水化処理は、塩化スズ溶液の濃度を2水準とし、濃度は0.1Mと0.5Mとした。この水溶液にプレートを浸漬させる直前に、この水溶液に水酸化アンモニウムを添加し、pHを約1.0まで上昇させた。スズ1モルにつき約2.8モルのアンモニウムを添加した。この溶液に、多孔質セパレータ用プレートを真空浸漬した。
【0034】
浸漬後、プレートを取り出し、約90℃(195°F)の温度で約30分間加熱して、含浸するスズ塩を加水分解し、塩の結晶の大きさを増加させた。加熱工程中は湿度を十分に維持し、溶液が乾燥しないようにした。次に、溶液を含浸した微小な細孔を有する多孔質セパレータプレートを、約115.5℃(240°F)で乾燥し、さらに、約204.5℃(400°F)未満、好ましくは約150℃(300°F)の温度で約2時間加熱した。その後、乾燥したプレートを水で洗浄して、表面から塩化アンモニウムを取り除くことにより、多孔質セパレータの親水化処理が完了した。
【0035】
多孔質セパレータプレートは、内部に多数の気孔を有し、乾燥状態ではガスが透過し、燃料電池のセパレータの機能の一つであるガス不透過性が維持できないが、毛細管現象により燃料電池内の冷却水系統から水をセパレータ内の気孔に引き込み、維持することによって、ガスシール性が発揮される。ガスシール性を表すウェットシール圧は、気孔径、水の表面張力、セパレータ気孔表面における水の接触角によって決まる毛細管圧力により決定される。燃料電池のガス系統(燃料ガスもしくは酸化剤ガス)と冷却水系統の圧力差がこのウェットシール圧以下の場合には、反応ガスが多孔質セパレータを貫通して冷却水系統に流れることはない。
【0036】
一方、電極の加湿のために多孔質セパレータより水が蒸発した場合には、多孔質内のそれまで水が存在していた空隙に毛細管圧力により冷却水系統より水を引き込み、常に空隙に水を保持する機能を有する。また、冷却水系統の圧力を負圧(大気圧より低く)とし、ガス系統の圧力より低く維持するタイプの燃料電池においては、上記の加湿の機能に加え、反応ガス中の凝縮反応生成水及び反応ドラッグ水をガス拡散基板から多孔質セパレータ側に速やかに除去する機能を有する。これによって触媒層内のガス拡散性が良好に保たれ、電池電圧の向上に寄与する。
【0037】
以上のことから、多孔質セパレータの物性としてウェットシール性と水透過性の両方がバランスしていることが求められるが、両者の物性は基本的には二律背反であるため、多孔質セパレータの製作においては、ある範囲に気孔構造をコントロールする必要がある。また、ウェットシール性と水透過性を向上させるためには、上述したように親水性を持たせることが必要となる。従って、多孔質セパレータにおいては、気孔構造の最適化と親水性向上の二つのファクターが重要である。
【0038】
水透過係数は、多孔質セパレータを純水中に浸漬し、多孔質セパレータの気孔に水を含ませた後に、セパレータ周囲部をシール材でシールした上で、セパレータの片面より水をある圧力でかけて単位時間あたりに他面に透過する水の量を測定することによって求められる。水透過係数については、通常の流体の透過と同じように、水透過係数k(m/Pa・sec)、水透過量Q(m/sec)、セパレータ平均厚さL(m)、圧力差ΔP(Pa)、透過面積A(m)とすると、k=QL/ΔPAという式で表わされる。平均厚さLについては溝の有無があるが、凹凸を平均した場合の厚さと定義する。
【0039】
ウェットシール圧についても、水透過係数の場合と同様に、多孔質セパレータを純水中に浸漬し、多孔質セパレータの気孔に水を含ませた後に、セパレータ周囲部をシール材でシールした上で、セパレータの片面より試験ガス(通常空気もしくは窒素)をある圧力でかけて、他面よりリークするガスの圧力を測定することによって求められる。
【0040】
多孔質セパレータを組み込んだ燃料電池では、上述したように、電極の加湿のために多孔質セパレータより水が蒸発した場合には、面の貫通方向の水透過性に加え、面方向の水透過性も重要な物性となる。貫通方向については前述の水透過係数で評価できるが、面方向の水透過性については、水はい上がり速度が指標となる。
【0041】
水はい上がり速度は、次のように求めることができる。まず、十分に乾燥させた多孔質セパレータの重量を測定する。水は表面張力があるため、容器に約3mmの高さで水を張り、その容器内にセパレータを鉛直に立たせた状態で、ある決まった時間毎にセパレータの重量を測定し、初期の乾燥重量との差を計算することで吸水量を求める。吸水量m(kg)、端面の断面積S(m)、時間t(sec)とすると、水はい上がり速度α(kg/m・t1/2)は、m/S=αt1/2の関係で表わされる。吸水量は多孔質セパレータの気孔にあるレベルまで水が含浸されるまで、上記の関係が成り立つので、複数の得られたデータに対し最小二乗法にてαを求める。
【0042】
また、多孔質セパレータを組み込んだ燃料電池では、反応ガス導入部で加湿する機能と反応ガス中の凝縮反応生成水及び反応ドラッグ水をガス拡散基板から多孔質セパレータ側に速やかに除去する機能が必要であり、多孔質セパレータ全面の水透過係数や水はい上がり速度だけでなく、局所的な水透過性が重要である。局所的な水透過性の評価として、吸水試験の方法があり、例としては、多孔質セパレータのある箇所に純水を極少量(本実施例では10μL)滴下し、吸水する時間を測定する方法がある。吸水時間をある上限値を規定することで、反応ガス導入部の加湿性能やガス流路およびガス拡散層内の余剰水の除去性能を評価することができる。
【0043】
以上説明した実施形態に係る燃料電池は、水素ガスを前記燃料電池に供給する水素ガス供給手段、酸化剤ガスを前記燃料電池に供給する酸化剤ガス供給手段、冷却剤を前記燃料電池に供給・回収する電池冷却手段、および前記燃料電池から取り出される電気を制御する電気制御手段とともに、燃料電池システムを構成することができる。
【0044】
或いは、以上説明した実施形態に係る燃料電池は、原燃料を水素リッチなガスに改質し、この改質ガスを前記燃料電池に供給する改質手段、酸化剤ガスを前記燃料電池に供給する酸化剤ガス供給手段、冷却剤を前記燃料電池に供給・回収する電池冷却手段、および前記燃料電池から取り出される電気を制御する電気制御手段とともに、燃料電池システムを構成することができる。
【0045】
この場合、原燃料を水素リッチなガスに改質し、この改質ガスを燃料電池に供給する改質手段は、炭化水素系燃料から改質ガスを生成する水素生成装置とすることができる。このような水素生成装置は、例えば、改質触媒を収容する改質器と、その改質反応に必要な水蒸気を生成する蒸気発生器と、改質反応によって改質器から生ずる改質ガス中のCO濃度を低減するCO変成触媒を収容するCO変成器と、さらに空気を導入してCOを選択的に酸化燃焼させてCOにすることでCOを除去するCO選択酸化触媒を収容するCO除去器と、各反応器の動作温度を所定の温度に調整するために各種熱交換器や加温用のヒータなどを備える構成を有するものとすることができる。
【0046】
実験例1
カソード側セパレータプレートについては、特に、反応凝縮反応生成水及び反応ドラッグ水をカソードガス拡散基板9から多孔質セパレータ5側に速やかに除去し、カソード反応部の健全性、および面内および貫通方向のウェットシール性を維持することが求められるので、下記表1に示すセパレータ(試料No.1〜12)を試作し、事前に物性(水透過係数、ウェットシール性、水はい上がり速度)を測定した後に、それを組み込んだ燃料電池スタックを作成し、その評価を行った。
【0047】
なお、試料No.1〜4は、親水化処理を行わなかったカソード側セパレータプレート、試料No.5〜8は、0.1Mの塩化スズ溶液により低レベルの親水化処理を行ったカソード側セパレータプレート、試料No.9〜12は、0.5Mの塩化スズ溶液により高レベルの親水化処理を行ったカソード側セパレータプレートである。
【0048】
アノード側セパレータプレートについては、電池の性能に悪影響を与えないために、塩化スズ濃度0.5Mの条件で親水化処理を実施し、水透過係数3×10−13[m/Pa・sec]以上とし、ガスシール性を考慮して、ウェットシール圧は20kPa以上、水はい上がり速度が1.0×10−2[kg/m・t1/2]以上、面内の最大値の吸水時間120秒以下、ガス導入部の最大値の吸水時間40秒以下のものを使用した。
【0049】
燃料電池セルとしては、固体高分子膜4、およびその片面にアノード触媒層9、アノードガス拡散層10を配し、その逆面にカソード触媒層10、カソードガス拡散層11を配した構成を有するものを使用した。
【0050】
そして、12個の燃料電池セルを、間にセパレータを挟んで積層して得た燃料電池スタックについて、ガスリーク試験および発電試験を実施した。その結果を下記表2に示す。
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
上記表1及び2から以下のことがわかる。即ち、セル電圧については家庭用燃料電池の定格負荷相当でセル電圧の基準を1とした場合の相対値を示すが、水透過係数が3×10−13[m/Pa・sec]未満の試料No.4では、セル電圧が基準値を下回り、カソードのガス拡散が阻害されることが裏付けられた。
【0053】
また、燃料電池スタック製造後のガスリーク試験では、燃料電池内の反応ガス圧力と冷却水圧力(負圧)の差が最大20kPaになるように燃料電池システムが設計されているため、ウェットシール圧は20kPa以上が求められるが、ウェットシール圧が20kPa未満の試料No.1及び2では、セパレータの面を貫通する方向にリークが認められ、ウェットシール圧が低いことがわかる。
【0054】
また、発電試験後のガスリーク試験においては、水はい上がり速度が1.0×10−2[kg/m・t1/2]未満の試料No.3及び4で、セパレータの側面からのリークが認められた。これは、発電試験によりセパレータ面内の水が移動し、水はい上がり速度の小さいセパレータでは局所的にセパレータに水が維持できずにリークが発生するためと考えられる。
【0055】
実験例2
アノード側セパレータプレートについては、カソード側セパレータプレートと同様に反応凝縮反応生成水及び反応ドラッグ水をアノードガス拡散基板10から多孔質セパレータ4側に速やかに除去することが求められるが、特にアノード側は局所的な燃料欠乏により電圧が大きく変動し、電極の劣化・腐食が起こって、回復不可能な損傷を受ける。従って、局所的な水の吸水時間をセパレータ面内の複数の個所で測定し、面内の最大値の吸水時間およびガス導入部の最大値の吸水時間をそれぞれ測定した。
【0056】
即ち、下記表3に示すアノード側セパレータプレート(試料No.13〜24)を試作し、事前に物性(局所的な水の吸水時間、面内の最大値の吸水時間およびガス導入部の最大値の吸水時間)を測定した後に、それを組み込んだ燃料電池スタックを作成し、その評価を行った。
【0057】
なお、試料No.13〜16は、親水化処理を行わなかったアノード側セパレータプレート、試料No.17〜20は、0.1Mの塩化スズ溶液により低レベルの親水化処理を行ったアノード側セパレータプレート、試料No.21〜24は、0.5Mの塩化スズ溶液により高レベルの親水化処理を行ったアノード側セパレータプレートである。
【0058】
カソード側セパレータプレートについては、電池の特性に影響が出ないように、水塩化スズ濃度0.5Mの同一条件で親水化処理を実施し、水透過係数3×10−13[m/Pa・sec]以上とし、ガスシール性を考慮して、ウェットシール圧は20kPa以上、水はい上がり速度が1.0×10−2[kg/m・t1/2]以上、面内の最大値の吸水時間120秒以下、ガス導入部の最大値の吸水時間40秒以下のものを使用した。
【0059】
燃料電池セルとしては、実験例1で用いたものと同一のものを用い、12個の燃料電池セルを、間にセパレータを挟んで積層して得た燃料電池スタックについて、発電試験を実施した。その結果を下記表4に示す。
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
上記表3及び4から、以下のことがわかる。即ち、セル電圧については家庭用燃料電池の定格負荷相当で短周期(数秒以下程度)の電圧振動が見られるかどうかを評価したところ、吸水時間が120秒を超える試料No.13〜16及び20のアノード側セパレータプレートで、電圧振動が発生する結果が得られた。
【0062】
また、加湿性能の評価のために、本電池の固体高分子膜として化学耐性の低いものを組み込み、かつ加速評価として燃料ガスの流量を増やして乾燥による固体高分子膜の劣化を促進させた条件で試験を実施し、一定時間後の燃料入口部の膜厚を測定して初期からの膜厚の減少の有無を確認したところ、燃料ガス導入部の吸水時間が40秒以下の試料No.17、21〜24のアノード側セパレータプレートについて膜厚の減少が見られず、十分な加湿性能を有していた。
【0063】
実施例1
アノード側セパレータプレート、カソード側セパレータプレートともに多孔質セパレータプレートとし、すべてのセパレータについて、水透過係数が3〜50×10−13[m/Pa・sec]、ウェットシール圧が20〜100kPa、水はい上がり速度が1.0〜25×10−2[kg/m・t1/2]、面内の最大値の吸水時間が120秒、ガス導入部の最大値の吸水時間が40秒であるものを34枚、使用し、34個の燃料電池セルの間に介在させて、燃料電池スタックを製造した。
【0064】
燃料電池セルとしては、固体高分子膜4、およびその片面にアノード触媒層9、アノードガス拡散層10を配し、その逆面にカソード触媒層10、カソードガス拡散層11を配した構成を有するものを用いた。
【0065】
この燃料電池スタックについて定格相当の電流密度とガス流量で運転したところ、全セルで基準を満たす性能であり、全セルの標準偏差も2mVと均一なセル電圧が得られた。また、発電試験前後のガスリーク試験において、セパレータの貫通方向および側面からのリークは見られなかった。運転時間10,000時間後にアノードおよびカソードのガス導入部の固体高分子膜の膜厚を測定したところ、初期とほぼ同じ膜厚を維持しており、加湿性能が十分であることを確認した。
【0066】
比較例1
34枚のアノード側セパレータプレートのうちの10枚をウェットシール圧が10〜19kPaのものに変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造し、また、水はい上がり速度が、0.002〜0.007×10−2[kg/m・t1/2]のものに変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造した。
【0067】
発電試験前後にガスリーク試験を行ったところ、ウェットシール圧が低いアノード側セパレータプレートを用いた燃料電池は、セパレータの貫通方向からのリークが見られ、水はい上がり速度が小さいアノード側セパレータプレートを用いた燃料電池は、セパレータの側面からのリークが見られた。また、発電試験前後の比較では試験前より試験後のほうが、リーク量が多い結果となった。
【0068】
比較例2
34枚のカソード側セパレータプレートのうちの10枚をウェットシール圧が10〜19kPaのものに変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造し、また、水はい上がり速度が0.005〜0.007×10−2[kg/m・t1/2]のものに変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造した。
【0069】
発電試験前後にガスリーク試験を行ったところ、ウェットシール圧が低いカソード側セパレータプレートを用いた燃料電池は、セパレータの貫通方向からのリークが見られ、水はい上がり速度が小さいカソード側セパレータプレートを用いた燃料電池は、セパレータの側面からのリークが見られた。また、発電試験前後の比較では試験前より試験後のほうが、リーク量が多い結果となった。
【0070】
比較例3
34枚のアノード側セパレータプレートのうちの10枚を、燃料ガス導入部の吸水時間が42〜100秒のものに変更し、34枚のカソード側セパレータプレートの10枚を、酸化剤ガス導入部の吸水時間が49〜150秒のものに変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造した。
【0071】
運転時間10,000時間後にアノードガス導入部の固体高分子膜の膜厚を測定したところ、燃料ガス導入部の吸水時間が1〜40秒のセルについては初期とほぼ同じ膜厚を維持している一方、42〜100秒のセルについては、膜厚の減少が見られ、かつ吸水時間が長くなるにつれ膜厚の減少量が多い結果となった。また同様に、カソードガス導入部の固体高分子膜の膜厚を測定したところ、酸化剤ガス導入部の吸水時間が1〜40秒のセルについては初期とほぼ同じ膜厚を維持している一方、49〜150秒のセルについては、膜厚の減少が見られ、かつ吸水時間が長くなるにつれ膜厚の減少量が多い結果となった。
【0072】
比較例4
34枚のアノード側セパレータプレートのうちの10枚を面内の吸水時間が125〜300秒のものに変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造し、また、10枚のカソード側セパレータプレートのうちの10枚を面内の吸水時間が125〜200秒のものに変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造した。
【0073】
定格相当条件で発電試験を実施したところ、アノード側セパレータプレートの吸水時間が125〜300秒であるものについては、電圧の振動が見られた。カソード側セパレータプレートの吸水時間が125〜200秒であるものについては電圧の振動は見られないものの、空気流量を定格条件の75%の流量にした場合の定格条件からの電圧低下量を比較すると、その他のセルと比較して電圧低下量が大きくなり、長期的な耐久性に影響が出るレベルであった。
【0074】
比較例5
34枚のアノード側セパレータプレートのうちの10枚を水透過係数が0.05〜2×10−13[m/Pa・sec]のものに変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造し、また、34枚のカソード側セパレータプレートのうちの10枚を水透過係数が0.05〜2×10−13[m/Pa・sec]のものに変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造した。
【0075】
なお、上記水透過係数が低いセパレータのウェットシール圧は20kPa以上であったが、水のはい上がり速度と吸水時間が1.0×10−2[kg/m・t1/2]未満のもの、吸水時間(10μL滴下時)が120秒を超えるもの、反応ガス導入部またはその近傍の吸水時間(10μL滴下時)が40秒を超えるものが混在していた。
【0076】
定格相当条件で発電試験を実施したところ、カソード側セパレータプレートの透過係数が0.05〜2×10−13[m/Pa・sec]のものについては定格負荷相当でセル電圧の基準を1とした場合の相対値が1を下回る結果となった。また、アノード側セパレータプレートの透過係数が0.05〜2×10−13[m/Pa・sec]のものについては、定格負荷相当で電圧振動が見られるものがあり、かつ燃料ガス流量を定格条件の90%の流量にした場合の定格条件からの電圧低下量を比較すると、その他のセルと比較して電圧低下量が大きくなり、燃料ガスの拡散性に影響が出るレベルであった。
【0077】
実施例2
カソード側セパレータプレートのみを一般の緻密質セパレータに変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造した。カソード入口に加湿器を設置し、かつ空気流量を実施例の1.5倍にしたところ、実施例1と同じ性能が得られた。しかしながら、空気流量を増やしたことおよび加湿器が設置されたことにより、システム全体の効率は若干低下した。
【0078】
実施例3
カソード側セパレータプレートのみを一般の緻密質セパレータに変更し、かつ圧損を1.5倍となるように流路形状を変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造した。カソード入口に加湿器を設置したところ、実施例1と同じ性能が得られた。しかしながら、空気圧損が増加したことおよび加湿器が設置されたことにより、システム全体の効率は若干低下した。
【0079】
実施例4
アノード側セパレータプレートのみを一般の緻密質セパレータに変更したことを除いて、実施例1の同様の燃料電池を製造した。アノード入口に加湿器を設置し、かつ燃料ガス流量を実施例の1.2倍にしたところ、実施例1と同じ性能が得られた。しかしながら、燃料流量を増やしたことおよび加湿器が設置されたことにより、システム全体の効率は若干低下した。
【0080】
実施例5
アノード側セパレータプレートのみを一般の緻密質セパレータに変更し、かつ圧損を2倍となるように流路形状を変更したことを除いて、実施例1と同様の燃料電池を製造した。アノード入口に加湿器を設置したところ、実施例1と同じ性能が得られた。しかしながら、燃料圧損が増加したことおよび加湿器が設置されたことにより、システム全体の効率は若干低下した。
【0081】
多孔質セパレータについては、アノード側セパレータプレートとカソード側セパレータプレートの材料共有化やコスト低減の観点から、アノード側セパレータプレート、カソード側セパレータプレートとも材料、親水化処理方法、気孔構造は該等しくすることが望ましく、本実施例で示された物性の範囲であれば、多孔質セパレータに求められるガスシール性、水除去性能、加湿性能のすべてを満たしたセパレータを得ることが可能となる。
【0082】
また、実施例2〜5に示したようにアノード側セパレータプレートもしくはカソード側セパレータプレートのいずれか一方のみ多孔質セパレータとしても、運転条件もしくはセパレータ流路の設計を工夫することで、性能と耐久性を備えた燃料電池を提供することが可能となる。
【0083】
多孔質セパレータに関しても当然ながら、通常の緻密質セパレータで求められるレベルの電気伝導性、強度、熱伝導性の各物性が必要であり、実施例で示される通常のカーボン樹脂成形品であれば緻密質とほぼ同等のカーボン比率であることから、上記の各物性は十分達成可能なものであることは言うまでもない。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1…固体高分子電解質形燃料電池、2…アノード、3…カソード、4…固体高分子電解質膜、5…セパレータ、6,7…反応ガス流路、8…アノード触媒層、9…アノードガス拡散層、10…カソード触媒層、11…カソードガス拡散層、12,14…ガス供給マニホールド、13,15…ガス排出マニホールド、16…カソード側セパレータプレート、17…アノード側セパレータプレート、18…冷却水流路。
図1
図2