(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990452
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】雨水貯留利水システム
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20160901BHJP
E03F 5/10 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
E03F1/00 A
E03F5/10 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-268089(P2012-268089)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-114564(P2014-114564A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
(72)【発明者】
【氏名】堀 昌広
(72)【発明者】
【氏名】大石 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】荒原 隆文
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−048509(JP,A)
【文献】
特開2009−052303(JP,A)
【文献】
特開2008−253977(JP,A)
【文献】
特開2011−247024(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/142879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−5/16
E03B 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を利水用として蓄えることができる利水槽を備えた雨水貯留利水システムであって、
雨水を一時的に貯留し、一時貯留した雨水を排水先に排水することができる雨水流出抑制槽と、
雨水流入口が管壁に設けられた立管と、を備え、
さらに該立管の管壁には、前記雨水流出抑制槽に連通する雨水流出抑制槽連通口と、前記利水槽に連通する利水槽連通口と、が設けられており、
該立管における該雨水流入口、該雨水流出抑制槽連通口、及び、該利水槽連通口の各下端の互いの相対的な高さが、低い方から順に、該雨水流出抑制槽連通口、該利水槽連通口、該雨水流入口となるように設定されており、
該雨水流入口を介して該立管内に流入した雨水が該雨水流出抑制槽連通口を介して該雨水流出抑制槽へ導かれ、該雨水流出抑制槽が貯留限界を超えた状態になると、該立管内に流入した雨水が、該利水槽連通口を介して前記利水槽へ導入され始めてなり、
前記雨水流出抑制槽が、雨水を一時貯留し、一時貯留した雨水を排水先である雨水排出管に排水することができる貯留槽であり、
前記立管の管壁に、前記雨水流出抑制槽連通口の下端より低い位置に下端が設定された雨水排出口が設けられ、該雨水排出口を介して該立管と、雨水が排出される雨水排出管とが接続されており、該立管に流入した雨水は先ず該雨水排出口を介して該雨水排出管へ排出される構成であって、該立管内における該雨水排出口には、該雨水排出管内に向かう雨水の流量を抑制する流量抑制手段が配設されている
ことを特徴とする雨水貯留利水システム。
【請求項2】
雨水を利水用として蓄えることができる利水槽を備えた雨水貯留利水システムであって、
雨水を一時的に貯留し、一時貯留した雨水を排水先に排水することができる雨水流出抑制槽と、
雨水流入口が管壁に設けられた立管と、を備え、
さらに該立管の管壁には、前記雨水流出抑制槽に連通する雨水流出抑制槽連通口と、前記利水槽に連通する利水槽連通口と、が設けられており、
該立管における該雨水流入口、該雨水流出抑制槽連通口、及び、該利水槽連通口の各下端の互いの相対的な高さが、低い方から順に、該雨水流出抑制槽連通口、該利水槽連通口、該雨水流入口となるように設定されており、
該雨水流入口を介して該立管内に流入した雨水が該雨水流出抑制槽連通口を介して該雨水流出抑制槽へ導かれ、該雨水流出抑制槽が貯留限界を超えた状態になると、該立管内に流入した雨水が、該利水槽連通口を介して前記利水槽へ導入され始めてなり、
前記立管が、立管本体と、該立管本体の上端に取り付けられた上側ますと、該立管本体の下端に取り付けられた下側ますと、からなり、該上側ますに、前記雨水流入口と、前記利水槽連通口とが設けられ、該下側ますに、前記雨水流出抑制槽連通口が設けられていることを特徴とする雨水貯留利水システム。
【請求項3】
前記雨水流出抑制槽が、雨水を一時貯留して排水先である地中に浸透させることができる浸透槽である請求項2に記載の雨水貯留利水システム。
【請求項4】
前記立管の下部には、泥溜め部が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の雨水貯留利水システム。
【請求項5】
前記立管内において前記利水槽連通口には、該利水槽連通口に流入する雨水を、該立管内に蓄積されている雨水に限定する雨水流入方向限定手段が設けられている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の雨水貯留利水システム。
【請求項6】
雨水を利水用として蓄えることができる利水槽を備えた雨水貯留利水システムであって、
雨水を一時的に貯留し、一時貯留した雨水を排水先に排水することができる雨水流出抑制槽と、
雨水流入口が管壁に設けられた第1立管と、を備え、
さらに該第1立管における該雨水流入口より下方の管壁には、前記雨水流出抑制槽に連通する第1雨水流出抑制槽連通口が設けられており、
さらに、該雨水流出抑制槽に連通する第2雨水流出抑制槽連通口と、前記利水槽に連通する利水槽連通口とが管壁に設けられた第2立管を備え、
該第2立管における該第2雨水流出抑制槽連通口、及び、該利水槽連通口の各下端の互いの相対的な高さが、低い方から順に、該第2雨水流出抑制槽連通口、該利水槽連通口となるように設定されており、
該雨水流入口を介して該第1立管内に流入した雨水が、該第1雨水流出抑制槽連通口を介して該雨水流出抑制槽へ導かれ、該雨水流出抑制槽が貯留限界を超えた状態になると、該第2雨水流出抑制槽連通口を介して該第2立管内に流入した雨水が、該利水槽連通口を介して前記利水槽へ導入され始める
ことを特徴とする雨水貯留利水システム。
【請求項7】
前記利水槽は、前記雨水流出抑制槽の上方に配置されている
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の雨水貯留利水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を利水用として蓄えることができる利水槽を備えた雨水貯留利水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雨水を蓄えることができる槽を備えた施設は既に開示されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
上記特許文献1に開示された構成は、流路切換手段を介して浸透槽と貯留槽とが接続されており、流入した初期雨水を先ず該貯留槽に導き、貯留量が一定となったら、該流路切換手段によってその後の雨水を浸透槽へ導くものである。
【0004】
また、特許文献2に開示された構成は、貯留槽と浸透槽とに接続される管理桝を備えている。そして、該管理桝を介して先ず優先的に貯留槽へ雨水が流入する構成となっている。また、該管理桝には、雨水に含まれる土砂やごみの固形物を分離するための沈砂部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−048509号公報
【特許文献2】特開2011−247024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1にかかる構成は、貯留槽又は浸透槽の底部に堆積した砂泥等の異物が利水に含まれてしまう問題がある。さらに、流路切換手段を、条件の異なる設置現場に合わせてそれぞれ専用に製造する必要があるため、汎用性に欠けるという問題もある。
【0007】
上記特許文献2にかかる構成も、貯留槽に流入する雨水に含まれる懸濁物のような小さな固形物を十分除去できず、貯留される雨水の水質に問題がある。
【0008】
そこで本発明は、利水槽を備え、雨水に含まれるフィルター等では除去できない砂泥等を適切に除去して雨水を利用水として蓄えることができる雨水貯留利水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、雨水を利水用として蓄えることができる利水槽を備えた雨水貯留利水システムであって、雨水を一時的に貯留し、一時貯留した雨水を排水先に排水することができる雨水流出抑制槽と、雨水流入口が管壁に設けられた立管と、を備え、さらに該立管の管壁には、前記雨水流出抑制槽に連通する雨水流出抑制槽連通口と、前記利水槽に連通する利水槽連通口と、が設けられており、該立管における該雨水流入口、該雨水流出抑制槽連通口、及び、該利水槽連通口の各下端の互いの相対的な高さが、低い方から順に、該雨水流出抑制槽連通口、該利水槽連通口、該雨水流入口となるように設定されており、該雨水流入口を介して該立管内に流入した雨水が該雨水流出抑制槽連通口を介して該雨水流出抑制槽へ導かれ、該雨水流出抑制槽が貯留限界を超えた状態になると、該立管内に流入した雨水が、該利水槽連通口を介して前記利水槽へ導入され始め
てなり、前記雨水流出抑制槽が、雨水を一時貯留し、一時貯留した雨水を排水先である雨水排出管に排水することができる貯留槽であり、前記立管の管壁に、前記雨水流出抑制槽連通口の下端より低い位置に下端が設定された雨水排出口が設けられ、該雨水排出口を介して該立管と、雨水が排出される雨水排出管とが接続されており、該立管に流入した雨水は先ず該雨水排出口を介して該雨水排出管へ排出される構成であって、該立管内における該雨水排出口には、該雨水排出管内に向かう雨水の流量を抑制する流量抑制手段が配設されていることを特徴とする雨水貯留利水システムである。
【0010】
上記構成は、前記利水槽連通口の下端が雨水流出抑制槽連通口の下端より相対的に高い位置に配されているため、通常時の場合、前記立管内に流入した雨水は、先ず前記雨水流出抑制槽へ優先的に流入し、該雨水流出抑制槽から順次排水先へ排水されていく。一方、大雨や集中豪雨等により、該立管内へ流入する雨水の流量が増え、該雨水流出抑制槽が貯留限界になると、これに伴い該立管内の水位は上昇していく。そして、該水位が前記利水槽連通口に到達すると、該立管内の雨水が利水槽へ導入され始める。ここで、立管内の雨水は、該立管内の水位が上昇する過程でしばらくの間、該立管内に蓄積された状態となり、該雨水に含まれる砂泥等が沈降する時間が得られる。このため、利水槽に導入される雨水の大部分は、砂泥等が取り除かれた比較的良好な水質の上澄みとなる。このため、本雨水貯留利水システムは、比較的良好な水質の利水が得られる利点がある。また、上記構成は、雨水流出抑制槽が貯留限界に達しても、そこからさらに利水槽の容積、及び立管の残りの容積分だけ、さらに雨水を許容できるため、システム全体としてオーバーフローしにくい利点がある。なお、前記立管における雨水流入口の下端は、前記利水槽連通口の下端より相対的に高い位置に配されているため、立管内の水位が上昇して雨水が利水槽に導入される場合であっても、該雨水流入口を介して雨水が上流側に逆流してしまうことが防止される。
【0011】
前記雨水流出抑制槽は、雨水を一時貯留して排水先である地中に浸透させることができる浸透槽であってもよい
が、雨水を一時貯留し、一時貯留した雨水を排水先である雨水排出管に排水することができる貯留槽であ
る。
【0012】
前記雨水流出抑制槽が、貯留槽である場合、前記立管の管壁に、前記雨水流出抑制槽連通口の下端より低い位置に下端が設定された雨水排出口が設けられ、該雨水排出口を介して該立管と、雨水が排出される雨水排出管とが接続されており、該立管に流入した雨水は先ず該雨水排出口を介して該雨水排出管へ排出される構成であって、該立管内における該雨水排出口には、該雨水排出管内に向かう雨水の流量を抑制する流量抑制手段が配設されている構成が提案される。
【0013】
上記構成にあって、前記立管内に流入した雨水は、該立管内を流下し、先ず雨水排出口に向かうところ、前記雨水排出口には前記流量抑制手段が配設されているため、該雨水排出口において排出しきれない雨水が該立管内に滞留する状態が発生する。そして、該滞留した雨水の量が多くなり、その水位が雨水流出抑制槽連通口に到達すると、該雨水が雨水流出抑制槽、すなわち貯留槽へ導入され始める。すなわち、該流量抑制手段を配設することにより、該立管内に流入した雨水を、雨水排出管へ排出しつつ雨水流出抑制槽へも導入することが可能となる。また、このように雨水排出口から排出される雨水の流量が抑制されることにより、該立管内に雨水が溜まりやすくなり、好適に利水槽へ雨水を導入することが可能となる。なお、前記雨水流出抑制槽が浸透槽の場合は、該浸透槽から地中へ向けて雨水が徐々に排出されると共に、余剰分の雨水が該浸透槽内に溜まっていくことになる。
【0014】
また、前記立管の下部には、泥溜め部が設けられていることが望ましい。
【0015】
前記立管内においては、上述のように雨水流出抑制槽が貯留限界となって水位上昇する過程で、雨水に含まれる砂泥等が沈降するため、該立管の下部に泥溜め部を配置することにより、該砂泥等を好適に受け止め、一箇所に溜めておくことが可能となる。これにより、該立管内における砂泥等の拡散を防止でき、また該砂泥等の回収や廃棄のメンテンナス作業が容易となる。
【0016】
また、
本発明は、雨水を利水用として蓄えることができる利水槽を備えた雨水貯留利水システムであって、雨水を一時的に貯留し、一時貯留した雨水を排水先に排水することができる雨水流出抑制槽と、雨水流入口が管壁に設けられた立管と、を備え、さらに該立管の管壁には、前記雨水流出抑制槽に連通する雨水流出抑制槽連通口と、前記利水槽に連通する利水槽連通口と、が設けられており、該立管における該雨水流入口、該雨水流出抑制槽連通口、及び、該利水槽連通口の各下端の互いの相対的な高さが、低い方から順に、該雨水流出抑制槽連通口、該利水槽連通口、該雨水流入口となるように設定されており、該雨水流入口を介して該立管内に流入した雨水が該雨水流出抑制槽連通口を介して該雨水流出抑制槽へ導かれ、該雨水流出抑制槽が貯留限界を超えた状態になると、該立管内に流入した雨水が、該利水槽連通口を介して前記利水槽へ導入され始めてなり、前記立管が、立管本体と、該立管本体の上端に取り付けられた上側ますと、該立管本体の下端に取り付けられた下側ますと、からなり、該上側ますに、前記雨水流入口と、前記利水槽連通口とが設けられ、該下側ますに、前記雨水流出抑制槽連通口が設けられていることを特徴とする雨水貯留利水システムである。
【0017】
上記構成とすることにより、前記立管を構成する際に、従来から使用されている汎用品をそのまま適用できるため、施工コストを低く抑えることができ、また施工しやすい利点がある。
【0018】
また、前記立管内において前記利水槽連通口には、該利水槽連通口に流入する雨水を、該立管内に蓄積されている雨水に限定する雨水流入方向限定手段が設けられている構成が提案される。
【0019】
仮に前記雨水流入口に対して前記利水槽連通口がほぼ正面に対置されていた場合、該雨水流入口から勢いよく流れ込んだ雨水が即、該利水槽連通口に直接入ってしまって該立管内において砂泥等が十分に沈降する時間が確保できなくなるおそれがある。そこで、前記雨水流入方向限定手段によって該利水槽連通口に流入しようとする雨水を、該立管の下方から蓄積された雨水に限定することにより、雨水に含まれる砂泥等の沈降が十分に行われるための時間を確保することが可能となる。
【0020】
また、本発明は、雨水を利水用として蓄えることができる利水槽を備えた雨水貯留利水システムであって、雨水を一時的に貯留し、一時貯留した雨水を排水先に排水することができる雨水流出抑制槽と、雨水流入口が管壁に設けられた第1立管と、を備え、さらに該第1立管における該雨水流入口より下方の管壁には、前記雨水流出抑制槽に連通する第1雨水流出抑制槽連通口が設けられており、さらに、該雨水流出抑制槽に連通する第2雨水流出抑制槽連通口と、前記利水槽に連通する利水槽連通口とが管壁に設けられた第2立管を備え、該第2立管における該第2雨水流出抑制槽連通口、及び、該利水槽連通口の各下端の互いの相対的な高さが、低い方から順に、該第2雨水流出抑制槽連通口、該利水槽連通口となるように設定されており、該雨水流入口を介して該第1立管内に流入した雨水が、該第1雨水流出抑制槽連通口を介して該雨水流出抑制槽へ導かれ、該雨水流出抑制槽が貯留限界を超えた状態になると、該第2雨水流出抑制槽連通口を介して該第2立管内に流入した雨水が、該利水槽連通口を介して前記利水槽へ導入され始めることを特徴とする雨水貯留利水システムである。
【0021】
上記構成にあって、通常時の場合、前記第1立管内に流入した雨水は、該第1立管内を流下して前記雨水流出抑制槽へ流入し、該雨水流出抑制槽から順次排水先へ排水される。一方、大雨や集中豪雨等により、該第1立管内へ流入する雨水の流量が増え、該雨水流出抑制槽が貯留限界になると、これに伴い、該第1立管に加えて、前記第2立管内の水位も上昇していく。そして、該第2立管内の水位が前記利水槽連通口に到達すると、該第2立管内の雨水が利水槽へ導入され始める。ここで、利水槽連通口の下端が、第2雨水流出抑制槽連通口の下端より相対的に高い位置に配されているため、利水槽に導入される雨水の大部分は、該第2立管内の水位が上昇する過程で砂泥等が沈降した比較的水質の良い上澄みとなる。このため、本雨水貯留利水システムは、比較的良好な水質の利水が得られる利点がある。また、雨水流出抑制槽が貯留限界に達したとしても、そこからさらに利水槽の容積、並びに、第1立管及び第2立管における残りの容積分だけ、さらに雨水を許容できるため、システム全体としてオーバーフローしにくい利点がある。
【0022】
また、これまでに述べた構成にあって、前記利水槽は、前記雨水流出抑制槽の上方に配置されていることが望ましい。
【0023】
前記利水槽を前記雨水流出抑制槽の上方に設けて縦方向に両槽を並置することによって、狭小なスペースにおいても両槽を配設することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる雨水貯留利水システムは、良好な水質の雨水を利水槽に導入することができる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例1にかかる雨水貯留利水システムを示す説明図。
【
図2】立管内の雨水の流れを示す説明図であり、(a)は通常時を示し、(b)は雨水流出抑制槽の貯留限界時を示し、(c)は利水槽への雨水導入時を示す。
【
図3】実施例2にかかる雨水貯留利水システムを示す説明図。
【
図4】立管内の雨水の流れを示す説明図であり、(a)は雨水流出抑制槽の貯留限界時を示し、(b)は利水槽への雨水導入時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の雨水貯留利水システムを具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0027】
〔実施例1〕
図1に示すように、雨水貯留利水システム1Aは、雨水を一時貯留して排水先である地中に浸透させることができる浸透槽で構成された雨水流出抑制槽20Aと、雨水を利水用として蓄えることができる利水槽30とを備えている。なお、前記利水槽30は、前記雨水流出抑制槽20Aの上方に配置されており、該利水槽30の上面に設けられた点検口31が地表面に配されている。該雨水流出抑制槽20Aを構成する浸透槽及び該利水槽30としては、公知のものが好適に適用される。
【0028】
また、前記雨水貯留利水システム1Aは、雨水流出抑制槽20Aと利水槽30とにそれぞれ連通する立管40を備えている。さらに詳述すると、該立管40は、鉛直方向に沿って配置される直管形状の立管本体41と、該立管本体41の上端に取り付けられる上側ます42と、該立管本体41の下端に取り付けられる下側ます43とを有している。
【0029】
前記上側ます42は、上端にます蓋46が取り付けられており、該ます蓋46は地表面に配されている。該ます蓋46が設けられることにより、該ます蓋46を介して立管40内の維持管理作業が行いやすくなる。
【0030】
また、前記上側ます42の側壁(すなわち立管40の管壁)には、雨水流入口42aが設けられている。さらに、該上側ます42の側壁には、該雨水流入口42aの下端より相対的に低い位置に下端が設定された利水槽連通口42bが設けられている。
【0031】
前記上側ます42における前記雨水流入口42aには、建物等(図示省略)からの雨水が流れる雨水流入管47の下流側の管端が接続されている。なお、該雨水流入管47における該上側ます42の上流側には、枯葉等の夾雑物を除去するフィルター44aを具備する雨水フィルターます44が配設されている。
【0032】
一方、前記上側ます42における前記利水槽連通口42bには、前記利水槽30に形成された流入口32に接続される第1中継管51の上流側管端が接続され、これにより該立管40内と該利水槽30内とが連通している。なお、該立管40内における利水槽連通口42bには、一方の管端が下方に向けられたエルボ管(雨水流入方向限定手段)42cの他方の管端が接続されている。該エルボ管42cが接続されることにより、該利水槽連通口42bに流入しようとする雨水の方向が限定され、該利水槽30へ導かれる雨水は、立管40の下方から蓄積された雨水のみに制限される。すなわち、仮に前記雨水流入口42aに対して該利水槽連通口42bがほぼ正面に対置されたままであると、該雨水流入口42aから勢いよく流れ込んだ雨水が即、該利水槽連通口42bに直接入ってしまい、該立管40内で砂泥等が十分に沈降する時間が確保できなくなるおそれがある。そこで、雨水に含まれる砂泥等の沈降が十分に行われるための時間を一定以上確保すべく、上述した向きでエルボ管42cが配設されている。
【0033】
さらに、前記下側ます43の側壁(すなわち立管40の管壁)には、雨水流出抑制槽連通口43bが設けられている。また、該下側ます43の下部には、砂泥等を溜めるための泥溜め部45が形成されている。なお、該泥溜め部45は、既に良く知られている着脱自在なバケット等の周知部材が採用される。
【0034】
前記下側ます43における前記雨水流出抑制槽連通口43bには、雨水流出抑制槽20Aに形成された流入口21に接続される第2中継管52の上流側管端が接続され、これにより該立管40と該雨水流出抑制槽20Aとが連通している。
【0035】
上記構成にあって、通常時の場合、雨水フィルターます44のフィルター44aによって夾雑物等が除去された雨水は、雨水流入管47を通り、前記雨水流入口42aを介して立管40内に流入する。そして、該雨水が、
図2aに示すように、該立管40内を流下する。
【0036】
そして、下側ます43に滞留した雨水の一部が、雨水流出抑制槽連通口43bを介して雨水流出抑制槽20Aへ導入され始める。そして、該雨水は該雨水流出抑制槽20Aから徐々に地中に浸透していく。
【0037】
一方、大雨や集中豪雨等により、前記立管40内へ流入する雨水の流量が増え、前記雨水流出抑制槽20Aが貯留限界になると、
図2bに示すように、該立管40内の水位は徐々に上昇していく。そして、
図2cに示すように、該水位が該立管40の前記利水槽連通口42bに到達すると、該立管40内の雨水が利水槽30へ導入され始める。
【0038】
ここで、前記利水槽30に導入される雨水の大部分は、該立管40内の水位が上昇する過程でしばらくの間、該立管40内に蓄積されており、この間に該雨水に含まれる砂泥等が沈降している。更に、上記したように、前記エルボ管42cの管端が下方に向けられているため、雨水は該立管40内に導入されてから一定の時間が経過した後に利水槽連通口42bを通過し、該利水槽30に導入される。このため、該利水槽30に雨水が導入される際には砂泥等が取り除かれた比較的良好な水質となっている。
【0039】
なお、前記立管40内で沈降する砂泥等は、前記下側ます43の泥溜め部45に順次溜まり、該下側ます43のメンテナンス作業時に容易に回収することができる。このように、該立管40を構成する部材として、周知のますを利用することにより、メンテナンス作業が容易になると共に、該立管40の施工コストを低く抑えることが可能になる。
【0040】
ところで、
図2等に示すように、前記立管40における雨水流入口42aの下端は、前記利水槽連通口42bの下端より相対的に高い位置に配されている。このため、該立管40内の水位が上昇して利水槽30へ雨水が導入される際に、該雨水流入口42aを介して雨水が上流側へ逆流してしまう、ことがない。
【0041】
また、上述の雨水貯留利水システム1Aは、前記利水槽30を前記雨水流出抑制槽20Aの上方に設け、縦方向に両槽を並置しているため、狭小なスペースにおいても両槽を配設することができる。ただし、前記利水槽30と前記雨水流出抑制槽20Aとを横方向に並置した構成も本発明に含まれるものとする。
【0042】
〔実施例2〕
以下、実施例2の雨水貯留利水システム1Bを
図3等に従って説明するが、実施例1と共通する部分については説明を簡略又は省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0043】
図3に示すように、雨水貯留利水システム1Bは、第1立管61と、第2立管62とを備えている。
【0044】
前記第1立管61の管壁には、雨水流入口61aと第1雨水流出抑制槽連通口61bと雨水排出口43aとが設けられている。ここで、該雨水流入口61aの下端は、該第1雨水流出抑制槽連通口61bの下端より相対的に高い位置に設定される。また、該雨水排出口43aには、雨水を排出するための雨水排出管50の上流側の管端が接続されている。さらに、該雨水排出口43aには、該雨水排出管50に向かう雨水の流量を抑制する流量抑制手段としてのオリフィス43cが接続されている。なお、前記雨水流出抑制槽連通口61bの下端は、該雨水排出口43aの下端より相対的に高い位置に設定されている。
【0045】
また、前記第1雨水流出抑制槽連通口61bと、貯留槽で構成される雨水流出抑制槽20Bに形成された流入口21とが第2中継管52を介して接続されている。なお、該第1立管61は、実施例1の立管40と同様に、上側ます、立管本体、及び下側ますで構成されることが施工コストの観点から望ましい。なお、雨水流出抑制槽20Bを構成する貯留槽は、雨水を一時貯留し、一時貯留した雨水を排水先である雨水排出管(図示省略)に適宜排水することができるもので、好適に公知のものが使用できる。
【0046】
また、前記第2立管62の管壁には、第2雨水流出抑制槽連通口64aと利水槽連通口65aとが設けられている。ここで、該第2雨水流出抑制槽連通口64aの下端は、該利水槽連通口65aの下端より相対的に低い高さに設定されている。
【0047】
また、前記第2雨水流出抑制槽連通口64aが、前記雨水流出抑制槽20Bに形成された流出口22に、第3中継管66を介して接続されている。さらに、前記利水槽連通口65aが、前記利水槽30の流入口32に第1中継管51を介して接続されている。なお、該第2立管62は、実施例1の立管40と同様に、上側ます65、立管本体63、及び下側ます64で構成されることが施工コストの観点から望ましい。
【0048】
上記構成にあって、通常時の場合、前記第1立管61内に流入した雨水は、実施例1と同様に該第1立管61内を流下する。そして、第1立管61の下端の雨水排出口43aを介して雨水が雨水排出管50へ流入する。ここで、上述のように、該雨水排出口43aにはオリフィス43cが取り付けられており、前記雨水排出管50へ向かう雨水の流量が制限されているため、第1立管61の下端に滞留した雨水の一部が、雨水流出抑制槽連通口61bを介して雨水流出抑制槽20Bへ導入され始める。そして、該雨水流出抑制槽20Bに一時的に雨水が蓄えられる。
【0049】
一方、大雨や集中豪雨等により、該第1立管61内へ流入する雨水の流量が増え、該雨水流出抑制槽20Bが貯留限界になり、さらに雨水が第1立管61内に継続的に流入すると、
図4aに示すように、これに伴い第2立管62内の水位が上昇していく。そして、
図4bに示すように、該水位が前記利水槽連通口65aに到達すると、該第2立管62内の雨水が利水槽30へ導入され始める。
【0050】
ここで、前記第2立管62における前記利水槽連通口65aの下端が、前記第2雨水流出抑制槽連通口64aの下端より相対的に高い位置に配されているため、前記利水槽30に導入される雨水の大部分は、該第2立管62内の水位が上昇する過程で雨水に含まれる砂泥等が沈降し、比較的良好な水質となる。なお、前記第1立管61における雨水流入口61aでの逆流防止のため、前記利水槽連通口65aの下端は、前記第1立管61における雨水流入口61aの下端より相対的に低い位置に設定されることが望ましい。
【0051】
本発明は、上述した実施例1,2に限定されることはなく、適宜設計変更可能である。例えば、立管40又は第2立管62に泥溜め部45を設けられていなくてもよい。また、実施例2において、流量抑制手段としてのオリフィス43cは、他の部材が採用されてもよい。また、実施例2において、前記第2立管62が前記第1立管61内に配置されていてもよい。また、実施例2において、前記第1立管61に雨水排出口43aが設けられているが、第2立管62に設けられていてもよいし、両方の立管61,62に設けられていてもよい。また、実施例2において、雨水流出抑制槽20Bは、浸透槽で構成される雨水流出抑制槽20Aであってもよいし、実施例1において、雨水流出抑制槽20Aは、貯留槽で構成される雨水流出抑制槽20Bであっても勿論よい。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B 雨水貯留浸透利水システム
20A 雨水流出抑制槽(浸透槽)
20B 雨水流出抑制槽(貯留槽)
30 利水槽
40 立管
41 立管本体
42 上側ます
42a,61a 雨水流入口
42b,65a 利水槽連通口
42c エルボ管(雨水流入方向限定手段)
43 下側ます
43a 雨水排出口
43b 雨水流出抑制槽連通口
43c オリフィス(流量抑制手段)
45 泥溜め部
50 雨水排出管
61 第1立管
61b 第1雨水流出抑制槽連通口
62 第2立管
64a 第2雨水流出抑制槽連通口