(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990460
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】バルーンに被覆されたカテーテルチップ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20160901BHJP
A61M 25/04 20060101ALI20160901BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20160901BHJP
【FI】
A61M25/00 532
A61M25/00 534
A61M25/04
A61M25/10 510
A61M25/10 520
【請求項の数】33
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-536959(P2012-536959)
(86)(22)【出願日】2010年10月26日
(65)【公表番号】特表2013-508118(P2013-508118A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】US2010054120
(87)【国際公開番号】WO2011056587
(87)【国際公開日】20110512
【審査請求日】2013年10月24日
(31)【優先権主張番号】61/254,950
(32)【優先日】2009年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512109334
【氏名又は名称】ポイエシス メディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィータ グレゴリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィータ ブルース イー.
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04351342(US,A)
【文献】
米国特許第04154243(US,A)
【文献】
特表2008−529740(JP,A)
【文献】
特開平10−179751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/04
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルの遠位端部を被覆することによって感染症のリスクを最小化するカテーテルチップキャップを有するカテーテルアセンブリであって、
遠位端部と、近位端部と、前記遠位端部から前記近位端部に亘って伸びてその間に流体の流れを提供する少なくとも1つのメインルーメンと、1つ以上のバルーンに流体連通を提供するように構成された少なくとも1つのコントロールルーメンと、を有するカテーテルボディと、
遠位端部と、前記カテーテルボディの端面に固定されるように構成された近位端部と、前記少なくとも1つのメインルーメンの内側表面に係合する外側表面を有するステム部と、を有するカテーテルチップキャップと、を含み、
前記カテーテルチップキャップには前記カテーテルチップキャップに一体的に形成されたスリーブが設けられ、前記スリーブは、前記カテーテルの遠位端部と管腔部、生体組織、体腔、又は血管との間に障壁を提供するようになされた第1バルーンと、前記カテーテルを前記管腔部、体腔、又は血管内に位置決めするように構成された第2バルーンと、を形成し、
前記ステム部の前記カテーテルボディとの係合は、前記第1又は第2バルーンにおける膨張時の中心位置を保持し、
前記第1バルーンの膨張は、前記カテーテルの前記遠位端部の被覆を生じさせ、これによって前記管腔部、生体組織、体腔、又は血管を損傷させることを防止し、前記第2バルーンの膨張は、前記カテーテルの前記管腔部、生体組織、体腔、又は血管への固定を生じさせることを特徴とするカテーテルアセンブリ。
【請求項2】
前記カテーテルボディは3つ以上のルーメンを含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項3】
少なくとも1つの前記ルーメンは前記第1バルーン、前記第2バルーン、又はこれらの組合せに流体を接続していることを特徴とする請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項4】
前記第1バルーン及び前記第2バルーンは直線状、放射状、又はこれらの組合せの態様に拡張することを特徴とする請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項5】
前記カテーテルボディは流体を排出する少なくとも1つのドレナージ開口部を含み、前記開口部は前記第1バルーンの近位部及び前記第2バルーンの遠位部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項6】
カテーテルの遠位端部を被覆することによって感染症のリスクを最小化するるカテーテルチップキャップを有するカテーテルアセンブリであって、
遠位端部と、近位端部と、概して前記遠位端部から前記近位端部まで伸びる複数のルーメンと、スリーブ部に流体を接続して前記スリーブ部を膨張させることによって少なくとも第1及び第2のバルーンを形成する少なくとも1つのコントロールルーメンと、を有するカテーテルボディと、
閉じた遠位端部と、前記カテーテルボディの端面に固定されるように構成された近位端部と、概して固形化され、円筒形状を有し、前記近位端部から外側に突出し、前記複数のルーメンのうちの少なくとも1つのルーメンの内側表面に固定されたステム部と、を有するカテーテルチップキャップと、を含み、
前記複数のルーメンは、ドレナージポートに流体を接続する少なくとも1つのドレナージルーメンを含んで前記ドレナージルーメン内に流体の流れを提供し、
前記カテーテルチップキャップには、前記カテーテルチップキャップの前記遠位端部に一体的に形成された第1端部及び前記カテーテルボディに沿った複数の位置へ固定された第2端部を含むスリーブ部が設けられ、前記スリーブ部は、前記カテーテルの遠位端部と管腔部、生体組織、体腔、又は血管との間に障壁を提供するようになされた第1バルーンと、前記カテーテルを前記管腔部、体腔、又は血管内に位置決めするように構成された第2バルーンと、を形成し、
前記第1バルーンの膨張は、前記カテーテルの前記遠位端部の被覆を生じさせ、これによって前記管腔部、生体組織、体腔、又は血管を損傷させることを防止し、前記第2バルーンの膨張は、前記カテーテルの前記管腔部、生体組織、体腔、又は血管への固定を生じさせることを特徴とするカテーテルアセンブリ。
【請求項7】
前記複数のルーメンは外部環境に流体を接続する少なくとも1つのルーメンを含み、これによって、流体を前記ルーメンから外部環境へ分配するか、流体を外部環境から前記ルーメンへ吸引するか、又はこれらの組合せを行うことを特徴とする請求項6に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項8】
前記ステム部は1つ以上の固定部を含むことを特徴とする請求項6に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項9】
前記固定部はバーブであることを特徴とする請求項8に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項10】
前記キャップは、接着剤、溶剤、充填剤、高周波(RF)溶接、レーザ溶接、又はこれらの組合せを用いて、前記カテーテルボディへ固定されていることを特徴とする請求項6に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項11】
前記第1バルーンの近位部及び前記第2バルーンの遠位部に少なくとも1つのドレインポートが配置されており、当該配置部は、使用中に前記管腔部、生体組織、体腔、又は血管のライニングが前記カテーテルへ引き込まれることを防止することを特徴とする請求項6に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項12】
前記バルーンの各々のサイズは変化することを特徴とする請求項6に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項13】
前記第1バルーンは前記第2バルーンよりも大きいことを特徴とする請求項12に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項14】
前記第1バルーンは前記第2バルーンよりも小さいことを特徴とする請求項12に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項15】
前記スリーブ部の外側表面は1つ以上の厚いセクション、1つ以上の薄いセクション、又はこれらの組合せを含み、これによって、異なる膨張抵抗を有する前記バルーンに沿った異なる領域を提供することを特徴とする請求項6に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項16】
前記第1バルーン、前記第2バルーン、又はこれらの組合せは1つ以上のリブを含むことを特徴とする請求項6に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項17】
前記リブは前記バルーンに沿って円周方向に構成されていることを特徴とする請求項16に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項18】
前記リブは前記バルーンに沿って長手方向に構成されていることを特徴とする請求項16に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項19】
前記第1バルーンの外側表面、内側表面、又はこれらの組合せは、前記第2バルーンの外側表面、内側表面、又はこれらの組合せよりも、大きな膨張抵抗を有し、これによって、前記第2バルーンは前記第1バルーンに先立って膨張することを特徴とする請求項17に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項20】
前記第1バルーン、前記第2バルーン、又はこれらの組合せは1つ以上のローブを含むことを特徴とする請求項15に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項21】
前記バルーンの各々は1つ以上のローブを含み、前記第1バルーンの前記1つ以上のローブ及び前記第2バルーンの前記1つ以上のローブは、前記第1バルーン及び前記第2バルーンが正しく位置合わせされていない場合に当該正しく位置合わせされていないバルーン間に適切なスペースが提供され、前記第1バルーンが外部環境から前記ドレナージルーメンへの流体の流れを完全にブロックしないようにして前記ドレナージポートが塞がれないように位置決めされていることを特徴とする請求項20に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項22】
カテーテルに固定して前記カテーテルの端部を形成するカテーテルチップキャップであって、
カテーテルチューブの端部に固定されるようなサイズ及び形状の表面を有する閉じた遠位端部と概して固形化されたステム部を有する近位端部とを有するメインボディを有するカテーテルチップキャップと、前記メインボディの前記遠位端部に一体的に形成されたスリーブと、を有し、
前記ステム部は、前記カテーテルチューブの前記端部の内部ルーメンと協働して前記カテーテルチューブの前記端部にシールを形成するようなサイズ及び形状を有し、
前記スリーブは、前記メインボディが前記カテーテルチューブの前記端部と協働して係合した際に第1及び第2バルーンを形成するようになされていることを特徴とするカテーテルチップキャップ。
【請求項23】
カテーテルに固定して前記カテーテルの端部を形成する請求項22に記載のカテーテルチップキャップであって、
前記スリーブは、前記メインボディが前記カテーテルチューブと協働して係合した際にバルーンの形態をとった少なくとも2つの膨張部を形成するようになされており、少なくとも1つのバルーンは前記カテーテルの前記遠位端部が管腔部、体腔、又は血管の内壁に衝突しないようになされており、少なくとも1つのバルーンは前記カテーテルを前記管腔部、体腔、又は血管内に位置決めするようになされていることを特徴とするカテーテルチップキャップ。
【請求項24】
カテーテルに固定して前記カテーテルの端部を形成する請求項23に記載のカテーテルチップキャップであって、前記少なくとも1つのバルーンは前記カテーテルの前記遠位端部を越えて半径方向及び軸方向に伸びていることを特徴とするカテーテルチップキャップ。
【請求項25】
カテーテルに固定して前記カテーテルの端部を形成する請求項24に記載のカテーテルチップキャップであって、前記スリーブはリブを含むことを特徴とするカテーテルチップキャップ。
【請求項26】
カテーテルに固定して前記カテーテルの端部を形成する請求項22に記載のカテーテルチップキャップであって、前記スリーブは、所望の方向又は領域における前記バルーンの拡張の形成又は案内を与えるための異なる厚さを有する領域の組合せを含むことを特徴とするカテーテルチップキャップ。
【請求項27】
カテーテルに固定して前記カテーテルの端部を形成する請求項22に記載のカテーテルチップキャップであって、前記スリーブはドレインポートを含み、前記ドレインポートは前記カテーテルチューブのドレナージルーメンに流体を接続し、前記管腔部、体腔、又は血管から前記ドレナージルーメンへの流体の流れを提供することを特徴とするカテーテルチップキャップ。
【請求項28】
カテーテルに固定して前記カテーテルの端部を形成する請求項22に記載のカテーテルチップキャップであって、前記スリーブは、前記第1バルーンが前記第2バルーンとは異なるスピードで拡張するための異なる厚さの領域の組合せを含むことを特徴とするカテーテルチップキャップ。
【請求項29】
カテーテルに固定して前記カテーテルの端部を形成する請求項22に記載のカテーテルチップキャップであって、前記メインボディは生体適合のある弾性材料から作製されることを特徴とするカテーテルチップキャップ。
【請求項30】
カテーテルに固定して前記カテーテルの端部を形成する請求項22に記載のカテーテルチップキャップであって、前記メインボディは生体適合のある弾性材料から作製され、前記弾性材料は、前記カテーテルチューブと協働した際に、第1の膨張されていない状態と第2の膨張された状態とを有する前記少なくとも1つのバルーンとして前記メインボディの長手軸に沿って伸長することができる材料であることを特徴とするカテーテルチップキャップ。
【請求項31】
カテーテルに固定して前記カテーテルの端部を形成する請求項22に記載のカテーテルチップキャップであって、前記スリーブは生体適合のある弾性材料から作製されることを特徴とするカテーテルチップキャップ。
【請求項32】
請求項6に記載のカテーテルアセンブリであって、
前記キャップは生体適合のある弾性材料から作製され、前記弾性材料は、第1の膨張されていない状態と第2の膨張された状態とを有する前記1つ以上のバルーンとして前記カテーテルボディの長手軸に沿って伸長し、前記1つ以上のバルーンが前記第1の膨張されていない状態に戻った際にその初期形状に戻ることができる材料であることを特徴とするカテーテルアセンブリ。
【請求項33】
尿道カテーテルの遠位端部を被覆することによって感染症のリスクを最小化するカテーテルチップキャップを有する尿道カテーテルアセンブリであって、
遠位端部と、近位端部と、概して前記遠位端部から前記近位端部まで伸びる複数のルーメンと、スリーブ部に流体を接続して前記スリーブの膨張を提供することによって第1及び第2の膨張可能なバルーンを形成する少なくとも1つのコントロールルーメンと、を有する尿道カテーテルボディと、
閉じた遠位端部と、前記尿道カテーテルボディの表面に固定される少なくとも1つの表面を有する近位端部と、前記近位端部から外側に突出する概して固形化されたステム部と、からなる尿道カテーテルチップキャップと、を含み、
前記尿道カテーテルチップキャップの前記ステム部は、前記複数のルーメンの内の1つのルーメンと協働するようになされ、
前記複数のルーメンは、ドレナージポートに流体を接続する少なくとも1つのドレナージルーメンを含んで前記ドレナージルーメン内に尿の流れを提供し、
前記尿道カテーテルチップキャップには、前記尿道カテーテルチップキャップの前記遠位端部に一体的に形成された第1端部及び前記尿道カテーテルボディに沿った複数の位置へ固定された第2端部を含むスリーブ部が設けられ、前記スリーブ部は、前記尿道カテーテルチップキャップと膀胱との間に障壁を提供するようになされた第1バルーンと、前記尿道カテーテルを前記膀胱内に位置決めするようになされた第2バルーンと、を形成し、
前記第1バルーンの膨張は、前記尿道カテーテルの前記遠位端部の被覆を生じさせ、これによって前記膀胱の粘膜ライニングを損傷させることを防止し、前記第2バルーンの膨張は、前記尿道カテーテルの前記膀胱への固定を生じさせることを特徴とする尿道カテーテルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療器具に関し、特に、体腔、管腔部又は血管へ挿入するようになされているバルーンに被覆されたカテーテルチップすなわちカテーテルプラグに関する。
【0002】
本発明は、広くは、体腔、管腔部又は血管へ挿入するカテーテルに関し、特に、カテーテル用のチップ又はプラグに関する。カテーテルチップはカテーテルチューブの端部におけるシールを形成するようになされ、一方、カテーテルチップに取り付けられ又は当該チップに一体的に形成されたスリーブは、当該カテーテルチューブと協働して、当該カテーテルチップを被覆する第1バルーン及び当該カテーテルを体腔、管腔部又は血管内に位置決めする第2バルーンを形成する。本発明のよりよい理解のために、本発明は、本発明が商業的可能性を有する1の分野である尿道カテーテルに関連して説明される。
【0003】
尿道カテーテルは長年使用されてきた。特に周知の尿道カテーテルはフォーリー(Foley)カテーテルである。フォーリーカテーテルはラテックス及び/又はシリコン材料からなる可撓性チューブ及び当該チューブの長さに沿ってほぼ平行に伸びる2つの内部ルーメンを有する。当該チューブの遠位端部の近傍にはバルーンが設けられ、これによって当該カテーテルを患者の膀胱内の適切な場所に保持する。当該カテーテルは患者の内部に配置され、流体が当該ルーメンの一方を通って導入され、これによって当該バルーンを膨張させて当該カテーテルを所望の位置に保持する。当該カテーテルの遠位端部にはドレナージポートすなわちドレナージアイが設けられ、これによって、尿が当該カテーテルチューブのルーメンの一方を通過して排出されることを可能にする。しかし、フォーリーカテーテルや現在市販されている同様な他のカテーテルは同一の又は同様の欠点に悩まされており、それはこれらのカテーテルが当該バルーンを越えて伸びるチップを有しているということである。このチップは、しばしば、膀胱の裏面を押したり削ったりして膀胱ライニングに外傷を与えてしまうと共に、多くの医学的問題に関連している。さらなる問題は、ドレインポートの位置に関し、粘膜ライニングがドレインポートへ引き込まれた際に患者に不快感を与えてしまう。現在のカテーテルデバイスに関する医学的問題のいくつかの例は、不快感、けいれん、及び出血を含み、さらに、例えば尿性敗血症及び尿路感染症のような血流内の細菌などのより深刻な欠点を含む。
【0004】
従って、当該技術に要求されているのは、カテーテルのチップを被覆するように配置された第1バルーン及び当該カテーテルを尿路内に位置決めする第2バルーンを含むカテーテルチップである。第1バルーンは、カテーテルチップが体腔、管腔部、又は血管の内壁を傷つけること及び刺激することを和らげるようになされるべきである。さらに、当該バルーンは、当該チップに接続されて当該チップが当該バルーンに対して相対的に移動することを防ぐべきである。
【0005】
多くのカテーテルのタイプが従来技術において知られている。例えば、米国特許第4,022,216号は、カテーテルの近位端部から膨張させることができる一対のバルーンを遠位部に有する泌尿器カテーテルを開示している。膨張された位置において、当該バルーンの一方はカテーテルの遠位端部を完全に覆って患者の膀胱を損傷しないためのクッションとして機能し、一方、他方のバルーンは、カテーテルを固定して膀胱の排出通路を封止する働きをする。カテーテルウォール内のドレナージ開口部は当該バルーンの中間に設けられている。米国特許第4,022,216号はデュアルバルーンを開示しているが、遠位端部を囲んでいるバルーンはカテーテルボディの側部に沿ってカテーテルに接続されている。この接続は、チップがバルーンに対して相対的に移動することを許容し、かつドレナージ開口部を容易に覆って封鎖してしまうことがある。
【0006】
米国特許第4,342,316号は、細長いシャフト、当該シャフトに沿って伸びる膨張ルーメン、及び当該シャフトを通って伸びるドレナージルーメンを含むカテーテルを開示している。当該カテーテルは近位端、遠位端、及び遠位端部を有している。さらに、当該カテーテルは、当該カテーテルの遠位端部に弾性スリーブを有し、当該スリーブは両端部を有している。当該スリーブは、当該スリーブの両端部に隣接する当該遠位端部の離間した円周領域に、かつ、当該遠位端部の対向する側部の領域間における少なくとも十分な距離の長手方向の線に沿って接着されている。当該カテーテルは、膨張ルーメンに連通する膨張開口部を当該スリーブの下に有し、当該ドレナージルーメンに連通する少なくとも1つのドレナージアイを当該スリーブの付近に有している。米国特許第4,342,326号の大きな欠点の1つは、カテーテルのチップが露出されており、当該カテーテルが挿入され得る組織構造を損傷する可能性があるということである。
【0007】
米国特許第4,575,371号は、拡張可能なバルーンの形態の滞留部分を有する尿道カテーテルを開示している。当該拡張可能なバルーンはインレット開口部の下に配置され、膨張された状態において、一部が当該インレット開口部からある距離だけ当該カテーテルチップを越えて前方へ突出するように構成されている。しかし、米国特許第4,575,371号の欠点は、ドレナージ開口部が当該カテーテルの遠位端部に設けられており、その結果、使用中に膀胱の粘膜ライニングがドレナージポートに引き込まれやすい傾向があるという事実を含む。さらに、単一のバルーンのみが当該カテーテルのボディに接続されており、かつ当該カテーテルのチップが当該バルーンに対して相対的に移動することができるような態様にて当該バルーンが接続されている。
【0008】
米国特許出願公開第2009/0221992号は流体ドレナージカテーテルを開示している。当該カテーテルは、近位端部と、遠位端部と、当該近位端部から当該遠位端部に亘って伸びて流体の通過を可能にするルーメンを備えた円筒壁と、を有するカテーテルチューブを含む。当該カテーテルチューブは、当該近位端部が当該カテーテルを体腔へ挿入するための閉じたチップを有し、当該遠位端部が当該カテーテルチューブを通って体腔から流体を排出するための開口部を有するように形成されている。当該円筒壁は少なくとも1つの画定された外部流路を備えた外側表面を有し、当該外部流路は、長手方向において当該閉じたチップに近接したポイントから遠位方向のポイントに向かって概ね伸びている。当該画定された外部流路にドレナージアイが結合されており、当該ドレナージアイは当該カテーテルチューブを通過して当該外側表面から当該ルーメンまで完全に伸びており、これによって当該流路内の流体がドレナージアイを通って当該ルーメンへ通過することを可能にする。米国特許出願公開第2009/0221992号の欠点は、当該チップが完全には覆われておらず組織構造に接触するリスクが増加し、その結果、組織構造を損傷し、感染症のリスクの増加を導くことである。
【発明の概要】
【0009】
上記した背景技術の要求、欠点、及び制限は本発明によって克服される。本発明は広くはカテーテルに関し、特に、本発明は、チップを被覆して従来技術の欠点を防ぐようになされた第1バルーンと、当該カテーテルを体腔、管腔部又は血管内に位置決めする第2バルーンと、を含むカテーテルアセンブリすなわちカテーテルチップを提供する。当該カテーテルチップは、ステム部を有するキャップと、当該キャップに固定され又は当該キャップに一体的に形成されたスリーブ部と、を含む。当該チップ及びスリーブは、好ましくは、弾性的に可撓性で生体適合のある材料から作製される。当該チップの当該キャップ部はカテーテルチューブの遠位端部に取付けられるようになされ、一方、当該任意のステム部は当該カテーテルチューブのドレインルーメンへ挿入される。取付けられたスリーブ部は当該カテーテルの端部の外側表面上に伸びており、当該チューブの遠位端部において当該キャップを取り囲むように位置決めされた第1バルーンと、当該カテーテルチューブに沿って配置されて当該カテーテルを体腔、管腔部、又は血管内に保持及び/又は位置決めする少なくとも1つの第2バルーンと、を形成する態様にて当該カテーテルチューブの外側表面へ選択的に取付けられている。バルーンは、当該カテーテルチューブを通って伸びている1つ以上のコントロールルーメンを通過する好ましい無菌流体を受け入れることによって拡張可能である。当該コントロールルーメンは当該カテーテルチューブに沿って当該ドレインルーメンにほぼ平行に伸びている。好ましくは、各コントロールルーメンには、1つ以上のバルーンの領域に配置された当該カテーテルチューブの側壁を通って伸びる少なくとも1つの開口部が設けられ、これによって当該流体が当該ルーメンから当該バルーンに入ることを可能にする。好ましくは、当該チップ及びスリーブの両方は、天然ゴムラテックス、合成ゴム、プラスチック、及びシリコン(しかしこれらに限定されない)などの生体適合のある弾性材料から作製され、当該技術分野において知られているように、カテーテルバルーンを作るプロセスにおいて特に使用される又は保管時の貼り付き防止若しくは潤滑性を強化するのに使用される添加物、懸濁液、及び/又はコーティングを含んで準備され得る。さらに、当該スリーブの内側表面及び/又は外側表面は、バルーンを所望の形状に膨張させる部分、リブ、又は厚いセクション及び/若しくは薄いセクションを含んでいてもよい。当該チップ及びスリーブは任意の適切なプロセスによって作製されてもよく、当該プロセスは射出成形、浸漬、真空成形、回転成形、ブロー成形、又はこれらの適切な組合せを含むが、これらに限定されるべきではない。最も好ましい実施例において、当該スリーブは裏返して形成される。形成後、好ましくは、当該スリーブはコンドームのように巻かれる。当該チップは、当該キャップの下部表面が当該カテーテルチューブの遠位端部へ接触するまで当該プラグのステム部を当該カテーテルチューブの中央ルーメンへ挿入することによって、当該カテーテルチューブへ組付けられる。当該チップを当該チューブへ固定する及び/又は当該カテーテルチューブの遠位端部を封止するのに接着剤、溶剤、充填剤、高周波(RF)溶接、レーザ溶接、又はこれらの適切な組合せが使用されてもよい。その後、当該スリーブ材料は当該カテーテルチューブの外側表面上に巻かれ得る。接着剤の少なくとも2つの離間した円周方向に伸びるバンドが当該カテーテルチューブの端部に配置され、これによって、2つのバルーンを形成する一方で当該スリーブを当該チューブの外側表面へ固定する。様々な接着バンドの幅又は接着バンド間の距離はバルーンのサイズが変更されることを可能にする。溶剤、高周波(RF)溶接、レーザ溶接、又はこれらの適切な組合せが、当該スリーブを、2つのバルーンを形成する当該チューブの外側表面へ固定するのに使用されてもよい。さらに、当該スリーブ部は、アルコールベースの流体、ベンゼン、又は同様のもののような、当該カテーテルチューブへの取付け前又は取付け後に当該スリーブ材料を拡張する機能を果たす溶剤へ浸漬されてもよい。この拡張剤は、スリーブが当該カテーテルチューブの外側表面上において容易に巻かれること、又は展開された状態であれば当該カテーテルチューブ上を容易に滑ることを許容し得る。当該接着バンド間のスリーブの一部は除去されてもよく、又は、当該第2バルーンは本発明の範囲を離れることなく、第2のスリーブ材料から形成されてもよい。
【0010】
組立てられると、バルーンは、一方又は両方のバルーンの領域へ開口している1つ以上のコントロールルーメンを通過する流体を受け入れることによって拡張自在となってもよく、スリーブ材料は半径方向及び/又は軸方向へ拡張され、遠位バルーンはチップの遠位表面を越えて拡張し、その結果、遠位バルーンは当該チップと膀胱のライニングとの間の障壁としての機能を果たす。
【0011】
従って、本発明の目的は、カテーテルチップにおける特有の構成を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、カテーテル用のチップであって、カテーテルの遠位端部が体腔、管腔部、又は血管の内壁に衝突することを防ぐバルーンを形成するようになされているチップを提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、カテーテル用のチップであって、カテーテルチューブの側壁と協働してカテーテルの端部に沿った少なくとも1つのバルーンを形成するチップに固定された細長いスリーブを含むチップを提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、カテーテルの遠位端部に保護バルーンを含んだ体腔カテーテル、管腔部カテーテル、又は血管カテーテルを提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、カテーテルのチップを囲む第1バルーン及びカテーテルを体腔、管腔部、又は血管内に位置決めする第2バルーンを含むカテーテルを提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、カテーテルのチップを囲む第1バルーン及びカテーテルを尿路内に位置決めする第2バルーンを有する尿道カテーテルを提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、膨張された際にカテーテルの遠位端部を越えて半径方向及び軸方向に拡張するバルーンを有するカテーテル又はカテーテル用のチップを提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、所望の方向又は領域におけるバルーンの拡張の形成又は案内を提供するためのリブ又は様々な厚さの領域の組合せを含むカテーテルバルーンを提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、所望の方向又は領域におけるバルーンの拡張の形成又は案内を提供するためのローブ又は様々な厚さの領域の組合せを含むカテーテルバルーンを提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、カテーテルバルーンであって、2つのバルーン間に配置されたドレインポートを含んで使用中に粘膜ライニングがドレインポートへ引き込まれることを低減又は除去するバルーンを提供することである。
【0021】
本発明の上記した及びその他の特徴は、以下の記載及び添付した図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1Aは本発明によるカテーテルシステムの分解図であり、チップ、スリーブ、及びカテーテルチューブの一部を示している。
【0023】
図1Bは本発明によるカテーテルシステムの分解図であり、チップ、スリーブの代替実施例、及びカテーテルチューブの一部を示している。
【0024】
図2Aは本発明によるカテーテルシステムの1の実施例の斜視図である。
【0025】
図2Bは本発明によるカテーテルシステムの1の実施例の斜視図であり、様々な厚さを含み得るカテーテルボディの領域を示している。
【0026】
図3は本発明による1の実施例の斜視図であり、拡張状態のバルーンを示している。
【0027】
図4は
図2Aの4−4線に沿った断面図であり、カテーテルチューブへ組付けられたチップ及びスリーブ、並びに尿及び流体が通過するルーメンを示している。
【0028】
図5Aは
図2Aの5A−5A線に沿った断面図である。
【0029】
図5Bは
図2Bの5B−5B線に沿った断面図である。
【0030】
図6は
図3の6−6線に沿った断面図であり、拡張状態のバルーンを示している。
【0031】
図7は
図4に類似する本発明による1の実施例の断面図であり、カテーテルシステムのチップの最遠位部における開口部を示している。
【0032】
図8は
図6に類似する本発明による1の実施例の断面図であり、カテーテルシステムのチップの最遠位部における開口部を示している。
【0033】
図9は本発明によるカテーテルシステムの代替実施例の分解図であり、チップ、スリーブ、及びカテーテルチューブの一部を示している。
【0034】
図10は本発明によるカテーテルシステムの代替実施例の斜視図である。
【0035】
図11は本発明による代替実施例の斜視図であり、拡張状態のバルーンを示している。
【0036】
図12は
図10の12−12線に沿った断面図であり、カテーテルチューブへ組付けられたチップ及びスリーブ、並びに尿及び流体が通過するルーメンを示している。
【0037】
図13は
図10の13−13線に沿った断面図である。
【0038】
図14は
図11の14−14線に沿った断面図であり、拡張状態のバルーンを示している。
【0039】
図15は本発明による1の実施例の斜視図であり、拡張された最遠位バルーン上において長手方向に整列した1つのリブを示している。
【0040】
図16は本発明による1の実施例の斜視図であり、拡張された最遠位バルーン上において長手方向に整列した複数のリブを示している。
【0041】
図17は本発明による1の実施例の斜視図であり、拡張された最近位バルーン上において長手方向に整列した1つのリブを示している。
【0042】
図18は本発明による1の実施例の斜視図であり、拡張された最近位バルーン上において長手方向に整列した複数のリブを示している。
【0043】
図19は本発明による1の実施例の斜視図であり、1つ以上のローブを有する少なくとも1つのバルーンを示している。
【0044】
図20は
図19に示された本発明による実施例の斜視図であり、正しく位置合わせされていないバルーンの1つを示している。
【0045】
図21は本発明による代替実施例の斜視図であり、遠位端部、近位ベッド、又はこれらの組合せに1つ以上のローブを有するバルーンの両方を示している。
【0046】
図22は
図21に示された本発明による代替実施例の斜視図であり、正しく位置合わせされていないバルーンの1つを示している。
【0047】
図23は非膨張状態における本発明によるカテーテルチップの斜視図である。
【0048】
図24は一部膨張状態における本発明によるカテーテルチップの斜視図である。
【0049】
図25は完全膨張状態における本発明によるカテーテルチップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は限定的なカテーテルを含む好ましい実施例において記載されているものの、当該カテーテルは市販品であり、本発明はそれらに応用され、当業者であれば、本発明が、米国特許第4,351,342号等に開示されているような他のタイプのカテーテルへの有用性を有することが理解できるだろう。
【0051】
図1−
図6を参照すると、本発明はカテーテルアセンブリ100又はカテーテルチップ10を提供し、カテーテルアセンブリ100又はカテーテルチップ10は、当該カテーテルの遠位端部12を被覆して従来技術の欠点を防ぐようになされた第1バルーン13と、当該カテーテルを体腔、管腔部、又は血管(図示せず)内に位置決めする第2バルーン14と、を含む。カテーテルチップ10はキャップ16を含み、キャップ16は、好ましくは、当該キャップに固定され又は当該キャップに一体的に形成されたスリーブ部20及びステム部18を含む。チップ10及びスリーブ20は、好ましくは、弾性的に可撓性で生体適合のある材料から構成されている。チップ10のキャップ部16はカテーテルチューブ24の遠位端部12へ取付けられるようになされ、一方、任意のステム18は、カテーテルチューブ24のドレインルーメン26内へ挿入される。取付けられたスリーブ部20は、カテーテルチューブ24の端部の外側表面28上に伸び、かつカテーテルチューブ24の外側表面28へ選択的に固定され、当該チューブの遠位端部においてキャップ16を囲みかつキャップ16を越えて伸びるように配置された第1バルーン13と、カテーテルチューブ24に沿って配置されてカテーテル100を体腔、管腔部、又は血管内に保持及び/又は位置決めする少なくとも1つの第2バルーン14と、を形成する。
【0052】
図1Aは、キャップ16に取付けられる端部とほぼ同じ直径を有する未結合の側部を備えた全体的にチューブ形状を含むスリーブ部20を示している。スリーブ部20の当該チューブ形状は、静止しているキャップ16上を、遠位方向において外側に伸びる。
図1Bに示されているように、スリーブ部20は、当該未結合の部分が、取付けられた端部に比べて大きな直径を有するように構成されていてもよい。このようにして、スリーブ部20のボディは、当該スリーブボディがキャップ16に近づくにつれて先細になっている。
【0053】
図3から解るように、バルーン13及び14は、カテーテルチューブ内に伸びる1つ以上のコントロールルーメン30を通過する好ましくは無菌流体を受け入れることによって拡張可能である。コントロールルーメン30はカテーテルチューブ24に沿ってドレインルーメン26にほぼ平行に伸びている。好ましくは、コントロールルーメン30の各々には、カテーテルチューブ24の側壁を通って伸びる少なくとも1つの開口部32が設けられている。好ましくは、開口部32は1つ以上のバルーン13及び14の領域内に配置されて流体が当該ルーメンから一方又は両方のバルーンに入ることを可能にする。チェックバルブ又はこれと同様のもの(図示せず)が使用されて当該バルーン内外への流体の流れを制御してもよい。この実施例には1つのコントロールルーメンのみが示されているが、本発明の範囲を離れることなく複数のコントロールルーメンが設けられることもできる。好ましくは、チップ10及びスリーブ20の両方は、天然ゴムラテックス、合成ゴム、プラスチック、及びシリコン(しかしこれらに限定されない)などの生体適合のある弾性材料から作製され、当該技術分野において知られているように、カテーテル若しくはカテーテルバルーンを作るプロセスにおいて特に使用される又は保管時の貼り付き防止若しくは潤滑性を強化するのに使用される添加物、懸濁液、及び/又はコーティングを含んで準備され得る。さらに、スリーブ20の内側表面40及び/又は外側表面42は、バルーン13及び14を所望の形状に膨張させる部分、リブ34、厚いセクション44、又は薄いセクション46、を含んでいてもよい。当然、当該バルーンの薄い部分は、厚い部分よりも流れる水の圧力に対する抵抗(すなわち膨張抵抗)が弱く、それ故に容易に拡張する。最も好ましい実施例において、第1バルーン13は直線方向のみならず半径方向にも拡張してチップ10の遠位端部12を越えて伸びるようになされている。チップ10及びスリーブ20は任意の適切なプロセスによって作製されてもよく、当該プロセスは射出成形、浸漬、真空成形、回転成形、ブロー成形、又はこれらの適切な組合せを含むが、これらに限定されるべきではない。最も好ましい実施例において、スリーブ20は裏返して形成される。形成後、好ましくは、スリーブ20はコンドームのように巻かれる。チップ10は、キャップ16の下部表面36がカテーテルチューブ24の遠位端部22へ接触するまで当該チップのステム部18を当該カテーテルチューブのドレインルーメン26へ挿入することによって、カテーテルチューブ24へ組付けられる。当該チップを当該チューブへ固定する及び/又は当該カテーテルチューブの遠位端部を封止するのに接着剤、溶剤、充填剤、高周波(RF)溶接、レーザ溶接、又はこれらの適切な組合せが使用されてもよい。あるいは、ステム部18は、バーブ、スパイクなどの固定部(図示せず)を含み、これによって当該ステム部を当該カテーテルチューブへ固定してもよい。好ましい実施例において、遠位端部22及び/又は下部表面26は接着材料に被覆されており、これによって円周方向のシールを形成する。その後、スリーブ部20はカテーテルチューブ24の外側表面28上に巻かれ得る。接着剤の少なくとも2つの離間した円周方向に伸びるバンド38が当該カテーテルチューブの端部に配置され、これによって、2つのバルーン13及び14を形成する一方でスリーブ20を当該チューブの外側表面へ固定する。様々な接着バンド38の幅又は接着バンド間の距離はバルーンのサイズが変更されることを可能にする。好ましくは、少なくとも1つのドレインポート50が当該2つのバルーンの間、すなわちバルーン13の近位部とバルーン14の遠位部との間に設けられ、これによって使用中に膀胱ライニングが当該カテーテルへ引き込まれることを低減又は防止する。
【0054】
図10、
図12、又は
図14を参照すると、1つ以上のドレインポート250がバルーン214の下に設けられている。本発明の範囲を離れることなく、溶剤、高周波(RF)溶接、レーザ溶接、又はこれらの適切な組合せが、当該スリーブを、2つのバルーンを形成する当該チューブの外側表面へ固定するのに使用されてもよい。さらに、当該スリーブ部は、アルコールベースの流体、ベンゼン、又は同様のもののような、当該カテーテルチューブへの取付け前又は取付け後に当該スリーブ材料を拡張する機能を果たす溶剤へ浸漬されてもよい。この拡張剤は、スリーブ部20が当該カテーテルチューブの外側表面上において容易に巻かれること、又は展開された状態であれば当該カテーテルチューブ上を容易に滑ることを許容し得る。当該接着バンド間のスリーブの一部は除去されてもよく、又は、当該第2バルーンは本発明の範囲を離れることなく、第2のスリーブ材料から形成されてもよい。
【0055】
図1−
図6は閉じた端部を有するキャップを示しているが、前記カテーテルシステム又はカテーテルチップは、ステム部18及びキャップ16内に内部空洞51を含んでいてもよい。
図7及び
図8を参照すると、内部空洞51は開口部53にて終端し、外部環境とカテーテルシステム100又はカテーテルチップ10の遠位端部12との間において、その近位端部14への流体の流れを提供する。
【0056】
図9−
図14は、本発明によるカテーテルアセンブリ又はカテーテルチップの代替実施例を示している。カテーテルアセンブリ200又はカテーテルチップ210は、当該カテーテルの遠位端部212を被覆して体腔、管腔部、又は血管の損傷を防止するようになされた第1バルーン213と、当該カテーテルを体腔、管腔部、又は血管(図示せず)内に位置決めする第2バルーン214と、を含む。好ましくは、カテーテルチップ210はステム部218及びスリーブ部220を有するキャップ216を含み、ステム部218及びスリーブ部220はキャップ216に固定されているか又はキャップ216に一体的に形成されている。好ましくは、チップ210及びスリーブ220は弾性的に可撓性で生体適合のある材料から作製される。チップ210のキャップ部216はカテーテルチューブ224の遠位端部212に取付けられるようになされ、一方、任意のステム218はカテーテルチューブ224のドレインルーメン226へ挿入される。
【0057】
取付けられたスリーブ部220はカテーテルチューブ224の端部の外側表面228上に伸びており、当該チューブの遠位端部においてキャップ216を取り囲みかつキャップ216を超えて拡張するように配置された第1バルーン213と、カテーテルチューブ224に沿って配置されてカテーテル200を体腔、管腔部、又は血管内に保持及び/又は位置決めする少なくとも1つの第2バルーン214と、を形成する態様にてカテーテルチューブ224の外側表面228へ選択的に取付けられている。スリーブ部220は、キャップ216に取付けられる端部とほぼ同じ直径を有する未結合の側部を備えた全体的にチューブ形状を含み得る。スリーブ部220の当該チューブ形状は、静止しているキャップ216上を、遠位方向において外側に伸びる。
【0058】
また、スリーブ部220は、当該未結合の部分が、取付けられた端部に比べて大きな直径を有するように構成されていてもよい。このようにして、スリーブ部220のボディは、当該スリーブボディがキャップ216に近づくにつれて先細になっており、これは
図1Bに示されている態様に類似する。バルーン213及び214は、カテーテルチューブ24内に伸びる複数のコントロールルーメン230A及び230Bを通過する好ましくは無菌流体を受け入れることによって拡張可能である。コントロールルーメン230A/230Bはカテーテルチューブ224に沿ってドレインルーメン226にほぼ平行に伸びる。好ましくは、コントロールルーメン230A及び230Bには、カテーテルチューブ224の側壁を通って伸びる少なくとも1つの開口部232が設けられている。好ましくは、開口部232は1つ以上のバルーン213及び214の領域内に配置されて流体が当該ルーメンから一方又は両方のバルーンに入ることを可能にする。
【0059】
チェックバルブ233、235、又はこれらと同様のものが使用されて当該バルーン内外への流体の流れを制御してもよい。図示された実施例には当該バルーンを膨張させるためのルーメンとしてコントロールルーメン230A及び230Bが示されているが、コントロールルーメン230A及び230Bは、本発明の範囲を離れることなく、体腔、管腔部、又は血管内外へ(から)流体を分配する、吸引する、又はこれらの組合せを行うのに使用されることもできる。このようなタスクを実現するために、カテーテルチューブ224は、コントロールルーメン230A及び230Bと外部環境すなわち体腔との流体の伝送を提供するさらなる開口部を含んでいてもよい。さらに、バルブ237はメインドレナージルーメン226の内外への流体の流れを制御するのに使用される。チップ210及びスリーブ220の両方は、天然ゴムラテックス、合成ゴム、プラスチック、及びシリコン(しかしこれらに限定されない)などの生体適合のある弾性材料から作製され、当該技術分野において知られているように、カテーテル及び/若しくはカテーテルバルーンを作るプロセスにおいて特に使用される又は保管時の貼り付き防止若しくは潤滑性を強化するのに使用される添加物、懸濁液、及び/又はコーティングを含んで準備され得る。
【0060】
さらに、スリーブ220の内側表面240及び/又は外側表面242は、バルーン213及び214を所望の形状に膨張させる部分、リブ、厚いセクション、又は薄いセクションを含んでいてもよい。当然、当該バルーンの薄い部分は、厚い部分よりも流れる水の圧力に対する抵抗(すなわち膨張抵抗)が弱く、それ故に容易に拡張する。最も好ましい実施例において、第1バルーン213は直線方向のみならず半径方向にも拡張してチップ210の遠位端部212を越えて伸びるようになされている。チップ210及びスリーブ220は任意の適切なプロセスによって作製されてもよく、当該プロセスは射出成形、浸漬、真空成形、回転成形、ブロー成形、又はこれらの適切な組合せを含むが、これらに限定されるべきではない。最も好ましい実施例において、スリーブ220は裏返して形成される。
【0061】
形成後、好ましくは、スリーブ部220はコンドームのように巻かれる。チップ210は、キャップ216の下部表面236がカテーテルチューブ224の遠位端部222へ接触するまで当該チップのステム部218を当該カテーテルチューブの中央ルーメン226へ挿入することによって、カテーテルチューブ224へ組付けられる。当該チップを当該チューブへ固定する及び/又は当該カテーテルチューブの遠位端部を封止するのに接着剤、溶剤、充填剤、高周波(RF)溶接、レーザ溶接、又はこれらの適切な組合せが使用されてもよい。あるいは、ステム部218は、バーブ、スパイクなどの固定部(図示せず)を含み、これによって当該ステム部を当該カテーテルチューブへ固定してもよい。その後、スリーブ部220はカテーテルチューブ224の外側表面228上に巻かれ得る。
【0062】
接着剤の少なくとも2つの離間した円周方向に伸びるバンド238が当該カテーテルチューブの端部に配置され、これによって、2つのバルーン213及び214を形成する一方でスリーブ220を当該チューブの外側表面へ固定する。様々な接着バンド238の幅又は接着バンド間の距離はバルーンのサイズが変更されることを可能にする。好ましくは、少なくとも1つのドレインポート250が当該2つのバルーンの間、すなわちバルーン13の近位部とバルーン14の遠位部との間に設けられ、これによって使用中に膀胱ライニングが当該カテーテルへ引き込まれることを低減又は防止する。1つ以上のドレインポート250がバルーン214の下に設けられている。本発明の範囲を離れることなく、溶剤、高周波(RF)溶接、レーザ溶接、又はこれらの適切な組合せが、当該スリーブを、2つのバルーンを形成する当該チューブの外側表面へ固定するのに使用されてもよい。さらに、当該スリーブ部は、アルコールベースの流体、ベンゼン、又は同様のもののような、当該カテーテルチューブへの取付け前又は取付け後に当該スリーブ材料を拡張する機能を果たす溶剤へ浸漬されてもよい。この拡張剤は、スリーブ部220が当該カテーテルチューブの外側表面上において容易に巻かれること、又は展開された状態であれば当該カテーテルチューブ上を容易に滑ることを許容し得る。当該接着バンド間のスリーブの一部は除去されてもよく、又は、当該第2バルーンは本発明の範囲を離れることなく、第2のスリーブ材料から形成されてもよい。
【0063】
任意で、カテーテルシステム200は、
図14を参照すると、バルーン213と214との間に配置された支持部を含んでいてもよい。例えば、支持部252は、スリーブ部又は支持壁であって、バルーン213及び214の側方向の動きの影響を最小化し、バルーン213がバルーン214を乗り越えることを防止するものであり得る。
【0064】
バルーン13(213)及び14(214)の各々は、必要なサイズに膨張するように構成されている。好ましい実施例において、1のバルーン、例えばバルーン13のバルーンサイズは、膨張した際に、他のバルーン、例えばバルーン14のバルーンサイズよりも小さくなるように構成されている。2つのバルーン間のサイズの差異は、カテーテルの使用に応じて異なる。1の実施例において、バルーン13とバルーン14との間の差異は、完全に膨張したバルーンの実際のサイズ又はバルーンの各々の注入量に基づき、およそ20%から80%の範囲である。例えば、バルーン13のサイズは、当該バルーンの最大サイズが大きすぎて当該バルーンが曲げられやすくならないように決定されることができる。好ましい実施例は膀胱から流体を排出するドレナージ開口部を備えたダブルバルーンを有しているため、仮にバルーン13が大きすぎて曲がってしまった場合、当該カテーテルは非効率的になり、その結果ねじれが形成してしまうことがある。ねじれの形成は当該ドレナージ開口部を封止し、当該バルーンの膨張ルーメンをブロックしてしまう。さらに、流体が流れないため、バルーン13の収縮する機能が制限又は完全に妨げられてしまう。また、バルーン13及び14の各々は、異なる厚さ及び/又はデュロメータ値を有する材料から作製されてもよい。異なる厚さは当該バルーンの異なる変化量での膨張を結果として生じさせ得る。好ましい実施例において、各バルーンの厚さは、バルーン14がバルーン13に先立って膨張するように構成される。このような膨張態様は、強化された安全対策を提供する。例えば、尿道カテーテルとしての使用において、近位バルーン(バルーン14)が遠位バルーン(バルーン13)に先立って膨張することは、どのバルーンも尿道内では膨張しないことを保証する。
【0065】
図15−
図22は、リブ、ローブ、及び様々な形状のバルーンを形成する複数の異なる厚さの領域を有するカテーテルシステム100又はカテーテルチップ10のバルーン13及び14の様々な実施例を示している。これらの図はカテーテル100及びカテーテルチップ10の例示であり、記載された実施例の各々は、本発明によるカテーテルシステム200及びカテーテルチップ210又は他のシステム/チップへ応用可能である。バルーン13、14、又はその両方はリブ34又はローブ52を含み得る。当該バルーンの各々は任意の個数のリブ34又はローブ52を含んでいてもよく、好ましい実施例にはバルーン13に沿って長手方向に少なくとも3つのリブ34又はローブ52が設けられている。リブ34又はローブ52は最遠位端部から始まり、およそ当該バルーンの中間点で終端する。当該リブ又はローブの形成は、当該バルーンの強度を加える機能を果たし、残存する流体すなわち尿が当該バルーンの先端部から排出され、当該バルーンの膨張時に凹部領域を提供することを許容する。
【0066】
バルーン14に加えて、又はバルーン14の代わりに、リブ34又はローブ52が含まれてもよい。当該リブ及びローブは半径方向に整列していてもよいが、好ましい実施例は、長手方向に整列し、かつ遠位端部から伸びるリブ及びローブを含む。バルーン14に沿ってリブ及びローブを使用することによって、バルーンの全体又は一部を標準のバルーンよりも大きく膨張させ、バルーン13及び14の両方が完全に又は部分的に膨張した際にバルーン13及び14を互いに近接して配置することを可能にし、これによって組織のドレナージ開口部への吸引を最小化し、バルーン13が曲がること又はトップオーバ及びねじりを形成することを防止する。
図19は、バルーン14の端部に形成された複数のローブ52を有するカテーテルシステム100の実施例を示している。
図20を参照すると、仮にバルーン13が正しく位置合わせされていない場合、ローブ52は当該バルーンの完全なトップオーバを防止し、バルーン13が元の位置に戻ることを許容する。
【0067】
図21は、バルーン13及び14の両方に形成された複数のローブの使用例を示している。図示されているように、ローブ52は、遠位端部(上端)52A、近位端部(下端)52B、又はこれらの組合せに沿って配置されることができる(バルーン14参照)。
図21を参照すると、バルーン13及び14の両方に形成された当該ローブは、各バルーンが膨張し、適切に整列した場合とほぼ同じように整列し得る。
図22を参照すると、仮にバルーン13が正しく位置合わせされておらず、傾いている場合、バルーン14に設けられたローブがバルーン13のローブに接触し、これによって、トップオーバの程度を制限し、ねじり及びドレナージ開口部をブロックすることを防止する。
【0068】
好ましい実施例において、キャップ16は静止状態と伸長状態との間において変形するようになされており、好ましくは、構成されている材料のタイプによって、かつ厚さ及び/又は抵抗力を制御することによって、形状が変化する。
図23は静止状態のキャップ16を示している。この構成において、バルーンは膨張されていない。
図24を参照すると、当該バルーンが膨張流体を受けて膨張する際に、キャップ16の形状は静止状態から膨張状態へ変形する。この第2の構成において、
図25を参照すると、当該バルーンが流体を取り込み完全に膨張するとキャップ16は伸長する。当該伸長の程度は、使用される材料、当該バルーン及び/若しくはキャップのデュロメータ硬さ、又は引かれる長さによって変化することができる。好ましい実施例において、キャップ16は、当該キャップの静止状態における長さに対して、およそ10%−200%の範囲の距離だけ伸長するように構成されている。当該膨張流体が除去されて当該バルーンが収縮すると、キャップ16は当初の開始形状を保持する。
【0069】
本発明は詳細な実施例に関して図示及び記載されているが、当業者であれば、開示された本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な態様及びその詳細の変更がなされ得ることを理解するであろう。