特許第5990487号(P5990487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5990487セパレータの製造方法、セパレータ及びセパレータ付き粘着テープ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990487
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】セパレータの製造方法、セパレータ及びセパレータ付き粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20160901BHJP
   B05D 5/08 20060101ALI20160901BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20160901BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160901BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   B05D7/24 302Y
   B05D7/24 303E
   B05D5/08 Z
   B05D3/06 102C
   B32B27/00 L
   B32B27/00 101
   C09J7/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-93148(P2013-93148)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-213274(P2014-213274A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】平松 剛
(72)【発明者】
【氏名】矢田 寛
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−114285(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/131567(WO,A1)
【文献】 特開2003−80638(JP,A)
【文献】 特開2011−206997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B32B 1/00−43/00
C09J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性付加型シリコーン組成物、白金系触媒、及び多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤を含む塗工液を基材に塗工した後、加熱と紫外線照射を行い、基材の片面又は両面にシリコーン系硬化皮膜を有するセパレータを得ることを特徴とするセパレータの製造方法。
【請求項2】
前記塗工液中の前記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤の含有量が、熱硬化性付加型シリコーン組成物の固形分100質量部に対して0.01〜5質量部である請求項1記載のセパレータの製造方法。
【請求項3】
前記基材が、プラスチックフィルムである請求項1又は2記載のセパレータの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のセパレータの製造方法により製造されることを特徴とするセパレータ。
【請求項5】
粘着剤層の少なくとも片面側に、請求項4記載のセパレータを有するセパレータ付き粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータの製造方法に関する。詳しくは、粘着テープ、粘着シート、粘着ラベルなどに好適に用いることのできるセパレータの製造方法に関する。さらに、上記製造方法で製造されたセパレータ及び該セパレータを有する粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紙、プラスチックフィルムなどの基材の少なくとも片面にシリコーン系剥離剤の硬化皮膜を設けたセパレータ(剥離ライナー、剥離シート)が、粘着テープ又はシート(単に、「粘着テープ」又は「粘着シート」と称する場合がある)やラベルなどの粘着剤層表面(粘着面)を保護する目的で広く用いられている。このようなセパレータは、基材にシリコーン系剥離剤による塗布皮膜を設けてから、該塗布皮膜を硬化させて、剥離性の硬化皮膜(剥離処理層)を形成することにより製造される。
【0003】
上記シリコーン系剥離剤としては、熱硬化性付加型、熱硬化性縮合型、紫外線硬化型、電子線硬化型、熱と紫外線の併用硬化型などの種類があるが、材料コストの低減、多様な剥離力の剥離剤が入手可能である等の観点から、主に使用されているのは熱硬化性付加型シリコーンである。
【0004】
上記熱硬化性付加型シリコーンは熱によって硬化するものであるので、安定した剥離特性を発揮する硬化皮膜を有するセパレータを製造するためには、塗布皮膜を十分に硬化させる点より、十分な加熱処理が必要となる。例えば、10〜30秒程度の比較的短時間で十分な加熱処理を行うためには、130℃を超える温度で上記塗布皮膜を加熱処理する必要がある。しかし、130℃を超える温度での加熱処理は、基材が耐熱性の低いプラスチックフィルムなどの場合、製造されたセパレータにおいて加熱収縮による熱ジワが発生しやすくなるという問題があった。なお、加熱温度を低くすると、製造されたセパレータにおいて、剥離性が悪くなったり(剥離が重くなったり)、硬化皮膜の基材への密着性が悪くなるといった問題が生じた。
【0005】
上記問題に対し、熱硬化性付加型シリコーンに光増感剤を添加し、熱と紫外線を併用して硬化させる方法が知られている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平4−1769号公報
【特許文献2】特公平5−23304号公報
【特許文献3】特開2001−205746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、セパレータの製造について、高い生産性が求められるようになってきている。しかし、上記の熱硬化性付加型シリコーンに光増感剤を添加し、熱と紫外線を併用して硬化させる方法は、加熱温度が低く、かつ生産速度が大きくて加熱時間も短い場合、得られたセパレータにおいて、剥離性が十分に得られないという問題や、硬化皮膜と基材との密着性が十分に得られないという問題が生じることがある。従って、セパレータの製造方法に関して更なる改良が望まれている。
【0008】
上記の剥離性が十分に得られないという問題(剥離性が悪くなるという問題)に対しては、後処理として、製造後のセパレータを20〜50℃程度の温度で特定の期間(例えば1〜10日間)保存することで剥離力を徐々に低くさせて、剥離力を安定させることより、対応を図ることができる場合がある。しかしながら、このような後処理をしても硬化皮膜と基材との密着性に関しては改善することができない。
【0009】
従って、本発明の目的は、基材上に硬化皮膜を有するセパレータの製造方法であり、剥離性に優れ、且つ硬化皮膜と基材との密着性に優れるセパレータを得ることができ、生産性に優れるセパレータの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、さらに、基材上に硬化皮膜を有するセパレータであって、剥離性に優れ、且つ硬化皮膜と基材との密着性に優れるセパレータ、及び、該セパレータを有するセパレータ付き粘着テープを提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、熱硬化性付加型シリコーン組成物、白金系触媒、及び多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤を少なくとも含む塗工液を基材に塗工した後、加熱と紫外線照射を行うことにより、基材上に硬化皮膜を有するセパレータを製造すると、紫外線照射による硬化性を高めることができ、高い生産性を得つつ、剥離性に優れ、且つ硬化皮膜と基材との密着性に優れるセパレータを得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、熱硬化性付加型シリコーン組成物、白金系触媒、及び多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤を含む塗工液を基材に塗工した後、加熱と紫外線照射を行い、基材の片面又は両面にシリコーン系硬化皮膜を有するセパレータを得ることを特徴とするセパレータの製造方法を提供する。
【0012】
上記塗工液中の上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤の含有量は、熱硬化性付加型シリコーン組成物の固形分100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0013】
上記基材は、プラスチックフィルムであることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明は、上記のセパレータの製造方法により製造されることを特徴とするセパレータを提供する。
【0015】
さらに、本発明は、粘着剤層の少なくとも片面側に、上記セパレータを有するセパレータ付き粘着テープを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のセパレータの製造方法によれば、基材上に硬化皮膜を有するセパレータであって、剥離性に優れ、且つ硬化皮膜と基材との密着性に優れるセパレータを、高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[セパレータの製造方法]
本発明のセパレータの製造方法によれば、熱硬化性付加型シリコーン組成物、白金系触媒、及び多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤を含む塗工液を基材に塗工した後、加熱と紫外線照射を行い、基材の片面又は両面にシリコーン系硬化皮膜を有するセパレータを得ることができる。
【0018】
本発明のセパレータの製造方法では、セパレータの母材となる基材(フィルム基材、シート状基材)の片面側又は両面側に、剥離性を発揮するシリコーン系硬化皮膜(シリコーン系剥離処理層)を形成する上記塗工液を塗布し、塗布皮膜を形成する。次に、加熱と紫外線照射を行い、この塗布皮膜を硬化させてシリコーン系硬化皮膜を形成させ、基材の片面又は両面にシリコーン系硬化皮膜を有するセパレータを得る。なお、加熱と紫外線照射は、順次行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0019】
(塗工液)
上記塗工液は、熱硬化性付加型シリコーン組成物、白金系触媒、及び、多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤を少なくとも含む。
【0020】
上記熱硬化性付加型シリコーン組成物は、付加反応型のシリコーン系剥離剤(ポリシロキサン系剥離剤)であり、熱による付加反応型の架橋(硬化反応)により硬化して剥離性被膜(剥離性の硬化皮膜)を形成し、有用な剥離特性を発現することができる。付加反応型は、硬化反応が速いこと、移行量(汚染)が少ないこと、ブロッキングしにくいなどの点で縮合反応型より優れている。なお、熱硬化性付加型シリコーン組成物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記熱硬化性付加型シリコーン組成物は、特に限定されないが、分子中に官能基としてアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン(アルケニル基含有シリコーン)及び分子中に官能基としてヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサン架橋剤を必須の構成成分とする組成物であることが好ましい。さらに、反応抑制剤が混合されていることが好ましい。なお、上記熱硬化性付加型シリコーン組成物は、溶剤型のシリコーン組成物であってもよく、無溶剤型のシリコーン組成物であってもよい。また、無溶剤型のシリコーン組成物を有機溶剤に溶解した組成物であってもよい。上記熱硬化性付加型シリコーン組成物は、溶剤型のシリコーン組成物であることが好ましい。
【0022】
上記分子中に官能基としてアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサンは、官能基としてアルケニル基を有し、アルケニル基が主鎖又は骨格を形成しているケイ素原子(例えば、末端のケイ素原子や、主鎖内部のケイ素原子など)に結合している構造を有する。本明細書において、「分子中にアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン」を「アルケニル基含有ポリオルガノシロキサン(アルケニル基含有シリコーン)」と称する場合がある。なお、アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
上記アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、1分子中に、主鎖又は骨格を形成しているケイ素原子に結合しているアルケニル基を2個以上有しているポリオルガノシロキサンが好ましい。なお、上記アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンは、アルケニル基の他に、フェニル基やアクリル基を分子中に含有していてもよい。
【0024】
上記アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンにおけるアルケニル基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2−プロペニル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。中でも、ビニル基、ヘキセニル基が好ましい。
【0025】
上記アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンにおける主鎖又は骨格を形成しているオルガノポリシロキサンとしては、特に限定されないが、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン等のポリアルキルアルキルシロキサン(ポリジアルキルシロキサン)や、ポリアルキルアリールシロキサンの他、ケイ素原子含有モノマー成分が複数種用いられている共重合体[例えば、ポリ(ジメチルシロキサン−ジエチルシロキサン)等]などが挙げられる。中でも、ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0026】
すなわち、上記アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、ビニル基を官能基として有するポリジメチルシロキサン、ヘキセニル基を官能基として有するポリジメチルシロキサンなどが好ましい。また、これらの混合物も好ましく挙げられる。
【0027】
また、上記の分子中にヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサンは、官能基としてヒドロシリル基を有し、水素原子が主鎖又は骨格を形成しているケイ素原子(例えば、末端のケイ素原子や、主鎖内部のケイ素原子など)に結合している構造(Si−H結合)を有する。本明細書において、「分子中にヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサン」を「ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン(ヒドロシリル基含有シリコーン)」と称する場合がある。なお、ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、1分子中に、Si−H結合を有するケイ素原子を2個以上有しているヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。上記Si−H結合を有するケイ素原子は、主鎖中のケイ素原子であってもよく、側鎖中のケイ素原子であってもよい。すなわち、主鎖の構成単位として含まれていてもよく、側鎖の構成単位として含まれていてもよい。なお、上記ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン中のSi−H結合を有するケイ素原子の数は、2個以上が好ましいが、その上限は特に限定されない。
【0029】
上記ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、具体的には、ポリメチルハイドロジェンシロキサンやポリ(ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン)などが好ましい。
【0030】
また、上記熱硬化性付加型シリコーン組成物は、反応抑制剤を含有していてもよい。反応抑制剤は、熱硬化性付加型シリコーン組成物に白金系触媒混合後の保存安定性を向上させることができる。上記反応抑制剤としては、特に限定されないが、例えば、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール等のアセチレン系アルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のアセチレン化合物などが挙げられる。また、上記反応抑制剤は、光硬化性シリコーンに用いられる光分解性の反応抑制剤は好ましくない。なお、反応抑制剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
さらに、上記熱硬化性付加型シリコーン組成物は、上記成分の他にも必要に応じて、MQレジンなどの剥離コントロール剤;アルケニル基又はヒドロシリル基を有しないポリオルガノシロキサン(トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサンなど)、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンなどの密着性向上剤(シリコーン系硬化皮膜の基材への密着性を向上させる成分)などを含んでいてもよい。なお、上記剥離コントロール剤や上記密着性向上剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
これらの成分(上記反応抑制剤、上記剥離コントロール剤、上記密着性向上剤など)の熱硬化性付加型シリコーン組成物中の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性付加型シリコーン組成物中の全固形分(100質量%)に対して1〜30質量%が好ましい。
【0033】
上記熱硬化性付加型シリコーン組成物は、必要に応じて、有機溶剤(例えば、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、メチルエチルケトン、これらの混合溶剤など)を含んでいてもよい。
【0034】
上記塗工液中の熱硬化性付加型シリコーン組成物の含有量は、特に限定されないが、上記塗工液中の固形分全量(100質量%(重量%))に対して、熱硬化性付加型シリコーン組成物に由来する固形分が80質量%以上(より好ましくは90質量%以上)となる量であることが好ましい。
【0035】
また、上記白金系触媒は、付加反応用の触媒である。なお、白金系触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
上記白金系触媒としては、特に限定されないが、塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、塩化白金酸のオレフィン錯体から選ばれた少なくとも1つの白金系触媒が好ましい。上記の中でも、シロキサン構造部分を含む白金のオレフィン錯体が好ましく、さらに、Karstedt触媒(米国特許第3715334号明細書、第3775452号明細書参照)がシリコーンの硬化性に優れる観点で特に好ましい。なお、上記白金系触媒としては、光硬化性シリコーン用触媒である光分解性の白金錯体は好ましくない。
【0037】
上記塗工液中の上記白金系触媒の含有量は、特に限定されないが、上記塗工液中の全固形分に対して、白金換算で10〜1000ppm(質量ppm)であり、好ましくは50〜800ppm、さらに好ましくは100〜600ppmである。上記の白金系触媒の含有量が10ppm以上であると塗布被膜の硬化性向上効果が得やすくなり、好ましい。一方、上記の白金系触媒の含有量が1000ppm以下であると、上記塗工液のポットライフが短くなることを抑制でき、好ましい。また、白金系触媒は高価であるため、コストの面より好ましい。
【0038】
さらに、上記塗工液は、多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤を少なくとも含む。上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、α−ヒドロキシアルキルフェノン構造を1分子中に2個以上有する。上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、紫外線の照射によりラジカルを発生する。なお、多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、製造されたセパレータにおいて基材とシリコーン系硬化皮膜との密着性を向上させる役割をする。これは、下記のことによると推測される。上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、α−ヒドロキシアルキルフェノン構造を1分子中に2個以上有するので、熱硬化性付加型シリコーン組成物中のポリシロキサン(特にポリオルガノシロキサン)との相溶性が低く、塗工液を基材に塗工した際に、塗布皮膜中の基材側に偏析しやすい。そのため、紫外線照射すると塗布皮膜と基材の界面付近で大量のラジカルが発生することとなり、セパレータにおける基材とシリコーン系硬化皮膜との密着性が向上しやすくなる。また、上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、多官能であり、1分子中にα−ヒドロキシアルキルフェノン構造を2個以上有するので、紫外線照射により、ある部位ではポリシロキサンと反応して新たな結合を生成し、またある部位では基材と反応して新たな結合を生成でき、橋かけの役割を果たすと考えられる。
【0040】
上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、上記のことにより基材とシリコーン系硬化皮膜との密着性を向上させると考えられるので、単官能光開始剤(1分子中にα−ヒドロキシアルキルフェノン構造を1個有する化合物)に比べて密着性が向上するものと考えられる。
【0041】
さらに、上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、揮発性が低く、融点が高い傾向がある。このため、上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、基材に上記塗工液を塗工してから加熱処理しても、揮発が生じにくい。また、融点が高いので、本発明のセパレータの製造方法により製造されたセパレータが粘着剤面に貼り合わされた粘着テープ(セパレータ付き粘着テープ)が加熱されることがあっても、シリコーン系硬化皮膜と基材の界面付近に残留した光開始剤が融けて剥離処理層表面に移動して重剥離の原因になったり、粘着剤を汚染したりすることもない。このような点からも、上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、単官能光開始剤に比べて有利である。
【0042】
上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤としては、例えば、特表2002―530372号公報、特表2005−508378号公報、特表2005−533156号公報、特表2007―501776号公報、特表2009―541554号公報、US4987159特許などに記載されている光開始剤のうち、α−ヒドロキシアルキルフェノン構造を1分子中に2個以上有する光開始剤である。
【0043】
上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、分子内にN、S、Pの元素を有さないことが好ましい。分子中にN、S、Pの元素を有していると、熱硬化性付加型シリコーン組成物の硬化を阻害することがあるためである。
【0044】
上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は、市販品であってもよい。例えば、IRGACURE127(BASF社製)、ESACURE ONE、ESACURE KIP150、ESACURE KIP160(以上、Lamberti社製)などが挙げられる。
【0045】
上記塗工液中の上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性付加型シリコーン組成物中の固形分100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましい。上記含有量の下限は、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上である。また、上記含有量の上限は、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。上記含有量が0.01質量部以上であると、基材とシリコーン系硬化皮膜との密着性を向上させる効果の点より好ましい。また、上記含有量が5質量部以下であると、シリコーンの硬化阻害への影響が小さく、また、コストの点より好ましい。
【0046】
上記塗工液には、必要に応じて、さらに各種添加成分(添加剤)が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(染料や顔料等)などが挙げられる。なお、添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0047】
さらに、上記塗工液には、希釈溶剤として、有機溶剤が含まれていてもよい。このような有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタンなどの炭化水素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。つまり、上記希釈溶剤は、有機溶剤の混合溶液であってもよい。
【0048】
上記塗工液は、上記各種成分を公知慣用の方法により混合することにより得ることができる。例えば、上記塗工液は、上記熱硬化性付加型シリコーン組成物、上記白金系触媒、上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤を混合することにより得ることができる。なお、混合の際には、希釈溶剤として上記有機溶剤が用いられてもよい。
【0049】
なお、上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤は上記の炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤に対する溶解性が低いものが多いので、あらかじめエステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤の中から溶解性の良い溶剤を選定し、その溶剤に溶解した溶液を添加して塗工液を調整すると、溶解の作業性がよくなり好ましい。つまり、生産性の点より、本発明のセパレータの製造方法では、上記塗工液は、上記熱硬化性付加型シリコーン組成物、白金系触媒、及び、上記多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤を含む溶剤を少なくとも混合することにより形成されることが好ましい。
【0050】
(基材)
上述のように、本発明のセパレータの製造方法では、基材(フィルム基材、シート状基材)の片面側又は両面側に上記塗工液を塗工し、基材の片面側又は両面側に上記塗工液による塗布被膜を形成する。上記基材は、セパレータの母材としての役割を果たす。
【0051】
上記基材としては、特に限定されないが、従来セパレータにおいて基材として慣用されているものの中から、適宜選択して用いることができる。例えば、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙などの紙基材;これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;プラスチックフィルム(熱可塑性樹脂フィルム)などが挙げられる。なお、上記基材は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
上記プラスチックフィルムの素材(熱可塑性樹脂)としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0053】
中でも、上記基材は、本発明のセパレータの製造方法により得られるセパレータにおいて、基材とシリコーン系硬化皮膜との間で優れた密着性を得る点より、プラスチックフィルムやラミネート紙が好ましく、特にプラスチックフィルムが好ましい。特に、上記基材は、プラスチックフィルムであることが好ましい。これは、基材側に偏析した多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤も紫外線照射時にラジカルを生成するため、基材に生成したラジカルとの両ラジカルの結合により剥離処理層とシート状基材との間に新たな結合を生成するためである。また、生成した多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤ラジカルにより、熱硬化性付加型シリコーン組成物中のヒドロシリル基の水素が引き抜かれて生成するラジカルと、基材に生成したラジカルとの結合も生成するためである。
【0054】
特に、これらの基材の中でも、紫外線照射時にラジカルをより生成しやすいことから、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルムが好ましい。つまり、上記基材は、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムからなる群より選択される少なくとも1のフィルムであることが特に好ましい。
【0055】
特に、本発明のセパレータの製造方法は、基材とシリコーン系硬化皮膜との間で優れた密着性を得ることができるので、耐熱性の低い基材を用いても、基材とシリコーン系硬化皮膜との間で優れた密着性を有するセパレータを効率よく製造することができる。例えば、PETフィルムは耐熱性が低く、温度が高くなると収縮しシワが発生しやすくなるが、基材としてのPETフィルムとシリコーン系硬化皮膜との間で優れた密着性を有するセパレータを効率よく製造することができる。
【0056】
上記基材の厚さは、特に限定されないが、用途、使用目的などに応じて適宜に選択できる。例えば、5〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μmである。なお、上記基材は単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0057】
上述のように、本発明のセパレータの製造方法では、基材の片面側又は両面側に上記塗工液を塗工し、基材の片面側又は両面側に上記塗工液による塗布被膜(塗工層)が形成される。
【0058】
上記塗工の際には、慣用の塗工機を用いることができる。このような塗工機としては、例えば、グラビヤコーター、バーコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどが挙げられる。
【0059】
また、塗布被膜(塗工層)の厚さは、特に限定されないが、シリコーン系硬化皮膜(シリコーン系剥離処理層)が、0.01〜3.0g/m2の範囲となるように塗工されることが好ましく、より好ましくは0.03〜2.0g/m2、さらに好ましくは0.05〜1.0g/m2である。
【0060】
上述のように、本発明のセパレータの製造方法では、上記塗工液を基材に塗工した後、加熱と紫外線照射を行い、基材の片面又は両面にシリコーン系硬化皮膜(シリコーン系剥離処理層)を有するセパレータを製造することができる。加熱及び紫外線照射は、同時に行ってもよいし、順次行ってもよい。また、加熱及び紫外線照射を順次行う場合、加熱を行ってから、紫外線照射を行ってもよいし、また、紫外線照射を行ってから、加熱を行ってもよい。
【0061】
特に、本発明のセパレータの製造方法では、剥離性及び基材とシリコーン系硬化皮膜との密着性に優れるセパレータを効率よく生産できる点、加熱及び紫外線照射をこの順で連続して行うと優れた密着性を得やすい点より、加熱および紫外線照射をこの順で順次行って、シリコーン系硬化皮膜を形成することが好ましい。つまり、加熱を行って塗布皮膜(塗布層)を予備硬化させてから、紫外線照射を行い、予備硬化させた塗布皮膜(予備硬化皮膜、予備硬化層)を完全硬化させて、シリコーン系硬化皮膜を形成することが好ましい。
【0062】
上記加熱(加熱処理)における温度(加熱温度)は、特に限定されないが、上記塗工液による塗布皮膜を十分に硬化させて、良好な剥離性を有するシリコーン系硬化皮膜を得る点より、70〜130℃が好ましい。上記加熱温度の下限は、より好ましくは80℃以上である。また、上記加熱温度の上限は、より好ましくは120℃以下である。上記加熱温度が70℃以上であると、加熱工程に極端に時間がかかり生産性が低下することを抑制でき、好ましい。また、上記加熱温度が、130℃以下であると、基材において加熱によるシワが生じることを抑制でき、好ましい。特に上記基材がPETフィルムなどの熱に弱い基材である場合には加熱によるシワが生じやすい。
【0063】
上記加熱(加熱処理)における時間(加熱時間)は、特に限定されないが、生産性向上と基材への熱によるダメージ低減の観点から、1〜60秒が好ましい。上記加熱時間の下限は、より好ましくは2秒以上、さらに好ましくは5秒以上である。また、上記加熱時間の上限は、より好ましくは40秒以下、さらに好ましくは25秒以下である。
【0064】
上記紫外線照射における紫外線のピーク照度は、特に限定されないが、100〜4000mW/cm2が好ましい。上記紫外線のピーク照度の下限は、より好ましくは150mW/cm2以上、さらに好ましくは200mW/cm2以上である。また、上記紫外線のピーク照度の上限は、より好ましくは3500mW/cm2以下、さらに好ましくは3000mW/cm2以下である。上記紫外線のピーク照度が100mW/cm2以上であると、紫外線照射による硬化性向上効果が得やすくなり、また基材とシリコーン系硬化皮膜との間において良好な密着性が得やすくなり、好ましい。また、上記紫外線のピーク照度が4000mW/cm2以下であると、紫外線照射による基材の劣化を有効に抑制でき、好ましい。また、高価でない汎用の紫外線ランプが使用できるため設備コストの面で好ましい。
【0065】
また、上記紫外線照射における紫外線の積算照射量は、特に限定されないが、10〜600mJ/cm2が好ましい。上記紫外線の積算照射量の下限は、より好ましくは15mJ/cm2以上、さらに好ましくは20mJ/cm2以上である。また、上記紫外線の積算照射量の上限は、より好ましくは500mJ/cm2以下、さらに好ましくは400mJ/cm2以下である。上記紫外線の積算照射量が10mJ/cm2以上であると、紫外線照射による硬化速度をより向上でき、生産性を高めることができ、また、また基材とシリコーン系硬化皮膜との間において良好な密着性が得やすくなり、好ましい。また、上記紫外線の積算照射量が600mJ/cm2以下であると、より生産性を高めることができ、好ましい。
【0066】
上記紫外線照射で用いられる紫外線ランプとしては、特に限定されないが、従来公知のものが挙げられる。上記紫外線ランプとしては、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの有電極紫外線ランプ、無電極紫外線ランプなどが挙げられる。中でも、上記塗工液による塗布皮膜に対する硬化性、作製されたセパレータにおいて基材とシリコーン系硬化皮膜との密着性を向上させる点より、上記有電極紫外線ランプの中では高圧水銀ランプが好ましく、また、無電極紫外線ランプの中ではフュージョン社製のHバルブ、H+バルブが好ましい。さらには、フュージョン社製のHバルブ、H+バルブが特に好ましい。これは、上記高圧水銀ランプはメタルハライドランプに比べて300nm以下の波長領域の照度が高く、Hバルブ、H+バルブはDバルブ、Vバルブに比べて300nm以下の波長領域の照度が高いので、多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤の吸収波長とのマッチングがよく、基材におけるラジカルも生成しやすいためと考えられる。なお、上記紫外線ランプは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0067】
上記紫外線照射における温度は、特に限定されない。例えば、上記紫外線照射は、加熱終了直後(加熱処理終了直後)の室温より温度が高い状態で行われてもよいし、室温状態で行われてもよい。特に、生産性の点や基材とシリコーン系硬化皮膜との間において優れた密着性を得る点より、上記紫外線照射は、加熱終了直後(加熱処理終了直後)の室温より温度が高い状態で行われることが好ましい。室温状態よりも温度が高い状態で紫外線照射した方が、紫外線照射により生成したラジカルの反応性が高いためと考えられる。つまり、本発明のセパレータの製造方法では、加熱処理と紫外線照射処理をインラインで行うことが好ましい。
【0068】
本発明のセパレータの製造方法は、上記塗工液を基材に塗工した後、加熱と紫外線照射を行い、基材の片面又は両面にシリコーン系硬化皮膜を有するセパレータを得るが、シリコーン系硬化皮膜を有するセパレータを得た後に、必要に応じて、エージング工程を有していてもよい。エージング工程(エージング処理)により、セパレータの剥離力を低く安定させることができる。エージング工程としては、例えば、20〜50℃程度の温度で1〜10日間程度保存することが挙げられる。
【0069】
本発明のセパレータの製造方法によれば、基材の片面又は両面に、シリコーン系硬化皮膜(シリコーン系剥離処理層)を基材と密着性よく形成できる。さらに熱収縮によるシワなどの発生を抑制でき、剥離性に優れたセパレータを生産性よく得ることができる。
【0070】
また、本発明のセパレータの製造方法は、上記塗工液の状態に左右されない点からも、生産性に有利である。一般に、熱硬化性付加型シリコーン組成物による塗工液は経時劣化し、硬化性、基材密着性が低下しやすくなる傾向があるが、本発明のセパレータの製造方法によれば、それをカバーできる。
【0071】
(セパレータ)
本発明のセパレータは、上記の本発明のセパレータの製造方法により得られる。本発明のセパレータは、基材の片面又は両面にシリコーン系硬化皮膜を有する。本発明のセパレータは、上記の本発明のセパレータの製造方法により得られるので、シリコーン系硬化皮膜と基材と密着性に優れ、また製造時に熱収縮によるシワなどの発生が抑制されているので、外観性に優れる。また、剥離性も良好である。
【0072】
上記セパレータの形態としては、例えば、上記基材の片面に上記シリコーン系硬化皮膜を有するもの、上記基材の両面に上記シリコーン系硬化皮膜を有するものなどが挙げられる。他にも、基材の一方の面に上記シリコーン系硬化皮膜を有し、他方の面にその他の剥離処理層(上記塗工液により形成された上記シリコーン系硬化皮膜以外の剥離処理層)を有するものが挙げられる。また、上記セパレータは、一方の面と他方の面との間で剥離力に差があってもよいし、剥離力が同じであってもよい。つまり、上記セパレータは、軽剥離面と重剥離面を備えるセパレータを有していてもよい。
【0073】
上記セパレータのシリコーン系硬化皮膜の剥離力(下記のセパレータ剥離力の測定方法により求められる剥離力)は、特に限定されないが、良好な剥離性を得る点より、0.30N/50mm以下が好ましく、より好ましくは0.20N/50mm以下である。特に、剥離コントロール剤を含まない場合に、上記剥離力を有することが好ましい。
【0074】
(セパレータ剥離力測定方法)
粘着テープ(商品名「No.502」、日東電工株式会社製)の粘着剤層上に、上記セパレータを貼り合わせてから、幅50mm、長さ150mmのシート状の切断片を切り出す。次に、上記切断片上に全体的に1kgの荷重をかけて、100℃環境下で上記切断片を1時間放置する。放置後、23℃環境下で1時間放置する。1時間後、23℃環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で、粘着テープよりセパレータを引き剥がし、剥離力を測定する。
【0075】
上記セパレータの用途としては、特に限定されないが、例えば、粘着シート、粘着テープ、ラベルなどの粘着剤層の保護(粘着製品の粘着面の保護)が挙げられる。
【0076】
[セパレータ付き粘着テープ]
本発明のセパレータ付き粘着テープ(セパレータ付き粘着シート)は、粘着剤層の少なくとも片面側に、上記の本発明のセパレータ(上記の本発明のセパレータの製造方法により得られるセパレータ)を有する。本発明のセパレータ付き粘着テープは、粘着テープ及び上記の本発明のセパレータから少なくとも構成される。
【0077】
本発明のセパレータ付き粘着テープは、粘着テープが有する粘着剤層の少なくとも片面側に上記セパレータ設けることにより得られる。上記粘着テープは、特に限定されず、片面のみが粘着面となっている片面粘着テープであってもよいし、両面が粘着面となっている両面粘着テープであってもよい。また、粘着剤層のみからなる基材レス粘着テープであってもよいし、基材の少なくとも片面側に粘着剤層を有する基材付き粘着テープであってもよい。
【0078】
本発明のセパレータ付き粘着テープは、セパレータを1枚有するタイプ(シングルセパレータタイプ)であってもよいし、セパレータを2枚有するタイプ(ダブルセパレータタイプ)であってもよい。例えば、本発明のセパレータ付き粘着テープは、巻回することにより、両面粘着テープの両方の粘着面が1枚のセパレータにより保護されている形態を有していてもよい。また、シートが積層されている形態を有していてもよい。
【0079】
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、公知慣用の粘着剤(感圧性接着剤)であってもよい。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。中でも、アクリル系粘着剤が特に好ましい。なお、粘着剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもちいることができる。
【0080】
上記粘着剤層の厚さは、特に限定されず、3〜100μmが好ましく、より好ましくは5〜50μmである。
【0081】
上記粘着テープが基材付き粘着テープである場合の基材(粘着テープ用基材)としては、特に限定されないが、例えば、紙などの紙系基材;布、不職布、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)やポリオレフィン系フィルム(ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等)などのプラスチックフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体やこれらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体が挙げられる。
【0082】
上記基材(粘着テープ用基材)の厚さは、特に限定されないが、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択できる。上記基材(粘着テープ用基材)の厚さは、1000μm以下(例えば1〜1000μm)が好ましく、より好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μmである。なお、上記基材(粘着テープ用基材)は単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0083】
本発明のセパレータ付き粘着テープは、例えば、偏光板保護用などの表面保護テープなどの公知慣用の粘着テープの用途に用いることができる。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0085】
実施例及び比較例で使用した熱硬化性付加型シリコーン組成物、白金系触媒、多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤、その他の光開始剤(多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤以外の光開始剤)、紫外線測定機器、及び、紫外線照射ランプは以下の通りである。
【0086】
(熱硬化性付加型シリコーン組成物)
KS−847T : 商品名「KS−847T」(熱硬化性付加型シリコーン組成物、30質量%溶液、信越化学工業株式会社製)
X−62−5065 : 商品名「X−62−5065」(熱硬化性付加型シリコーン組成物、30質量%溶液、信越化学工業株式会社製)
KNS−3001 : 商品名「KNS−3001」(熱硬化性付加型シリコーン組成物、有効成分:100%、信越化学工業株式会社製)
SRX211 : 商品名「SRX211」(熱硬化性付加型シリコーン組成物、30質量%溶液、東レ・ダウコーニング株式会社製)
LTC350G : 商品名「LTC350G」(熱硬化性付加型シリコーン組成物、30質量%溶液、東レ・ダウコーニング株式会社製)
【0087】
(白金系触媒)
CAT−PL−50T : 商品名「CAT−PL−50T」(白金系触媒のトルエン溶液、信越化学工業株式会社製)
CAT−PL−56 : 商品名「CAT−PL−56」(白金系触媒のシリコーン溶液、信越化学工業株式会社製)
SRX212 : 商品名「SRX212」(白金系触媒のシリコーン溶液、東レ・ダウコーニング株式会社製)
【0088】
(多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤)
ESACURE ONE : 商品名「ESACURE ONE」(2−ヒドロキシ−1−(4−イソプロペニルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オンのオリゴマー、Lamberti社製、下記式(1))
【化1】
なお、上記式(1)において、n=2である。
ESACURE KIP150 : 商品名「ESACURE KIP150」(2−ヒドロキシ−1−(4−イソプロペニルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オンのオリゴマー、Lamberti社製、下記式(2))
【化2】
なお、上記式(2)において、n>3である。
IRGACURE 127 : 商品名「IRGACURE 127」(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、BASF社製、下記式(3))
【化3】
【0089】
(その他の光開始剤)
IRGACURE 651 : 商品名「IRGACURE 651」(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、BASF社製、下記式(4))
【化4】
IRGACURE 184 : 商品名「IRGACURE 184」(1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、BASF社製、下記式(5))
【化5】
IRGACURE 2959 : 商品名「IRGACURE 2959」(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、BASF社製、下記式(6))
【化6】
DAROCUR 1173 : 商品名「DAROCUR 1173」(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、BASF社製、下記式(7))
【化7】
IRGACURE 907 : 商品名「IRGACURE 907」(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製、下記式(8))
【化8】
IRGACURE 369 : 商品名「IRGACURE 369」(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、BASF社製、下記式(9))
【化9】
IRGACURE 819 : 商品名「IRGACURE 819」(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製、下記式(10))
【化10】
2,2−ジエトキシアセトフェノン : 2,2−ジエトキシアセトフェノン(東京化成工業株式会社製、下記式(11))
【化11】
ベンゾフェノン : ベンゾフェノン(和光特級、和光純薬工業社株式会社製、下記式(12))
【化12】
【0090】
(紫外線測定機器)
トプコン : 工業用UVチェッカー(装置名「UVR−T1」、受光部UD−T36、測定波長域300〜390nm、トプコンテクノハウス社製)
EIT : UV測定器(装置名「UV Power Puck II」、測定波長領域UV−A(320〜390nm)、EIT社製)
【0091】
(紫外線照射ランプ(紫外線ランプ))
高圧水銀ランプ : 高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング株式会社製、出力120W/cm、ピーク照度250mW/cm2
Hバルブ : 「UVランプシステム F600 Hバルブ」(フュージョンUVシステムズ社製、出力240W/cm、ピーク照度2000mW/cm2
【0092】
実施例1
光開始剤である「ESACURE ONE」(多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤)を酢酸エチルに溶解させ、「ESACURE ONE」の5質量%酢酸エチル溶液を作製した。次に、下記表1に示す材料を下記表1に示す量で混合し、塗工液を作製した。
【表1】
マイヤーバーを用いて、上記塗工液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の面に塗布し、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。なお、塗布量は、固形分で、0.1g/m2とした。
上記塗布フィルムを、熱風オーブンにより、温度90℃、加熱時間20秒の条件で加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表6に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表6に示すピーク照度の紫外線を下記表6の積算照射量となるように照射した。
そして、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0093】
実施例2〜5、比較例1〜6
下記表6に示す割合で、「KS−847T」、「CAT−PL−50T」、「光開始剤」、「ヘキサン(ノルマルヘキサン)及びトルエンの混合溶液」を用いて、実施例1と同様にして、塗工液を作製した。
次に、実施例1と同様にして、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。
上記塗布フィルムを、実施例1と同様にして、加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表6に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表6に示すピーク照度の紫外線を下記表6の積算照射量となるように照射した。
そして、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0094】
比較例7〜9
下記表6に示す割合で、「KS−847T」、「CAT−PL−50T」、「光開始剤」、「ヘキサン(ノルマルヘキサン)及びトルエンの混合溶液」を用いて、実施例1と同様にして、塗工液を作製した。
次に、実施例1と同様にして、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。
上記塗布フィルムを、実施例1と同様にして、加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表6に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表6に示すピーク照度の紫外線を下記表6の積算照射量となるように照射した。
しかし、塗布皮膜の硬化が生じず、硬化皮膜(剥離処理層)を得ることができなかった。従って、比較例7、比較例8及び比較例9では、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得ることができなかった。
【0095】
比較例10〜11
下記表6に示す割合で、「KS−847T」、「CAT−PL−50T」、「光開始剤」、「ヘキサン(ノルマルヘキサン)及びトルエンの混合溶液」を用いて、実施例1と同様にして、塗工液を作製した。
次に、実施例1と同様にして、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。
上記塗布フィルムを、実施例1と同様にして、加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表6に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表6に示すピーク照度の紫外線を下記表6の積算照射量となるように照射した。
そして、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0096】
比較例12
白金系触媒である「CAT−PL−50T」を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、塗工液を作製した。
この塗工液より、実施例1と同様にして、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。
上記塗布フィルムを、実施例1と同様にして、加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表6に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表6に示すピーク照度の紫外線を下記表6の積算照射量となるように照射した。
しかし、塗布皮膜の硬化が生じず、硬化皮膜(剥離処理層)を得ることができなかった。従って、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得ることができなかった。
【0097】
比較例13
下記表6に示す割合で、「KS−847T」、「CAT−PL−50T」、「ヘキサン(ノルマルヘキサン)及びトルエンの混合溶液」を用いて、実施例1と同様にして、塗工液を作製した。なお、比較例13では、光開始剤を使用しなかった。
次に、実施例1と同様にして、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。
上記塗布フィルムを、熱風オーブンにより、温度150℃、加熱時間20秒の条件で加熱処理した。なお、比較例13では、紫外線の照射は行わなかった。
そして、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0098】
実施例6
光開始剤である「ESACURE KIP150」(多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤)を酢酸エチルに溶解させ、「ESACURE KIP150」の5質量%酢酸エチル溶液を作製した。次に、下記表2に示す材料を下記表2に示す量で混合し、塗工液を作製した。
【表2】
マイヤーバーを用いて、上記塗工液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の面に塗布し、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。なお、塗布量は、固形分で、0.1g/m2とした。
上記塗布フィルムを、熱風オーブンにより、温度90℃、加熱時間15秒の条件で加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表7に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表7に示すピーク照度の紫外線を下記表7の積算照射量となるように照射した。
そして、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0099】
実施例7、比較例14〜15
下記表7に示す割合で、「X62−5065」、「CAT−PL−50T」、「光開始剤」、「ヘキサン(ノルマルヘキサン)及びトルエンの混合溶液」を用いて、実施例6と同様にして、塗工液を作製した。
次に、実施例6と同様にして、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。
上記塗布フィルムを、実施例6と同様にして、加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表7に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表7に示すピーク照度の紫外線を下記表7の積算照射量となるように照射した。
そして、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0100】
実施例8
光開始剤である「ESACURE KIP150」(多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤)を酢酸エチルに溶解させ、「ESACURE KIP150」の5質量%酢酸エチル溶液を作製した。次に、下記表3に示す材料を下記表3に示す量で混合し、塗工液を作製した。
【表3】
マイヤーバーを用いて、上記塗工液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の面に塗布し、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。なお、塗布量は、固形分で、0.1g/m2とした。
上記塗布フィルムを、熱風オーブンにより、温度110℃、加熱時間15秒の条件で加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表8に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表8に示すピーク照度の紫外線を下記表8の積算照射量となるように照射した。
そして、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0101】
実施例9、比較例16〜17
下記表8に示す割合で、「KNS−3001」、「CAT−PL−56」、「光開始剤」、「ヘキサン(ノルマルヘキサン)及びヘプタン(ノルマルヘプタン)の混合溶液」を用いて、実施例8と同様にして、塗工液を作製した。
次に、実施例8と同様にして、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。
上記塗布フィルムを、実施例8と同様にして、加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表8に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表8に示すピーク照度の紫外線を下記表8の積算照射量となるように照射した。
そして、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0102】
実施例10
光開始剤である「ESACURE KIP150」(多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤)を酢酸エチルに溶解させ、「ESACURE KIP150」の5質量%酢酸エチル溶液を作製した。次に、下記表4に示す材料を下記表4に示す量で混合し、塗工液を作製した。
【表4】
マイヤーバーを用いて、上記塗工液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の面に塗布し、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。なお、塗布量は、固形分で、0.1g/m2とした。
上記塗布フィルムを、熱風オーブンにより、温度90℃、加熱時間25秒の条件で加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表9に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表9に示すピーク照度の紫外線を下記表9の積算照射量となるように照射した。
そして、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0103】
実施例11、比較例18〜19
下記表9に示す割合で、「SRX211」、「SRX212」、「光開始剤」、「ヘキサン(ノルマルヘキサン)及びトルエンの混合溶液」を用いて、実施例10と同様にして、塗工液を作製した。
次に、実施例10と同様にして、PETフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。
上記塗布フィルムを、実施例10と同様にして、加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表9に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表9に示すピーク照度の紫外線を下記表9の積算照射量となるように照射した。
そして、PETフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0104】
実施例12
光開始剤である「ESACURE KIP150」(多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤)を酢酸エチルに溶解させ、「ESACURE KIP150」の5質量%酢酸エチル溶液を作製した。次に、下記表5に示す材料を下記表5に示す量で混合し、塗工液を作製した。
【表5】
マイヤーバーを用いて、上記塗工液を、厚さ38μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムの一方の面に塗布し、PENフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。なお、塗布量は、固形分で、0.1g/m2とした。
上記塗布フィルムを、熱風オーブンにより、温度80℃、加熱時間10秒の条件で加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表10に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表10に示すピーク照度の紫外線を下記表10の積算照射量となるように照射した。
そして、PENフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0105】
実施例13、比較例20〜21
下記表10に示す割合で、「LTC350G」、「SRX212」、「光開始剤」、「ヘキサン(ノルマルヘキサン)、トルエン、及びエチルメチルケトン(MEK)の混合溶液」を用いて、実施例12と同様にして、塗工液を作製した。
次に、実施例12と同様にして、PENフィルムの片面に塗布皮膜を有する塗布フィルムを得た。
上記塗布フィルムを、実施例12と同様にして、加熱処理した。次いで、加熱処理後の塗布フィルムに対して、下記表10に示す紫外線照射ランプを使用し、下記表10に示すピーク照度の紫外線を下記表10の積算照射量となるように照射した。
そして、PENフィルムの一方の面に硬化皮膜(剥離処理層)を有するセパレータを得た。
【0106】
[評価]
実施例及び比較例で得られたセパレータについて、下記の評価又は測定を行った。評価結果を表6〜10に示した。
比較例7、8、9、12については、下記の「(2)密着性の評価」及び「(3)セパレータの剥離力の測定」を行うことができなかった。
【0107】
(1) 外観の評価
セパレータの外観を目視で観察し、下記の基準でセパレータの外観を評価した。
「とても良好」(◎):全くシワが発生していない。
「良好」(○):わずかにシワが発生しているが、使用に問題はない。
「不良」(×):シワが多く発生し、使用に問題を生じる。
なお、シワの発生は、セパレータの基材となる基材フィルム(PETフィルムやPENフィルム)の熱収縮に起因する。
【0108】
(2)密着性の評価
セパレータ表面の硬化皮膜(剥離処理層)を、長さ方向に10往復、指で擦り、基材フィルム(PETフィルム又はPENフィルム)と硬化皮膜との間の密着性を、下記基準で評価した。
「良好」(◎):硬化皮膜の脱落が生じない。
「不良」(△):わずかに硬化皮膜の脱落が生じる。
「とても不良」(×):硬化皮膜の脱落が生じ、基材フィルムの露出が生じた。
なお、同じ実施例又は比較例であっても、作製直後の塗工液を使用して硬化皮膜を作製したセパレータと、作製してからしばらく時間をおいた塗工液を使用して硬化皮膜を作製したセパレータとを対比すると、作製してからしばらく時間をおいた塗工液を使用して硬化皮膜を作製したセパレータは基材フィルムと硬化皮膜との密着性が悪い傾向があった。このため、上記の(2)密着性の評価は、作製直後の塗工液を使用して硬化皮膜を作製したセパレータ、及び、作製してから5時間経過した塗工液(作製5時間後の塗工液)を使用して硬化皮膜を作製したセパレータについて、それぞれ行った。
【0109】
(3)セパレータの剥離力
粘着テープ(商品名「No.502」、日東電工株式会社製)の粘着剤層上に、上記セパレータの硬化皮膜面を貼り合わせて、ハンドローラで粘着テープ及び上記セパレータを圧着した。そして、幅50mm、長さ150mmのシート状の切断片を切り出した。
切断片の面積(幅50mm、長さ150mm)に対して1kgとなるように、切断片に荷重をかけて、切断片を100℃の環境下で1時間放置した。放置後、さらに、23℃環境下で1時間放置した。
放置後、引張試験(装置名「DT9503−1000N」、株式会社タンスイ製)を用いて、23℃環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で、粘着テープよりセパレータを引き剥がし、剥離力(N/50mm)を測定した。
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
【表8】
【0113】
【表9】
【0114】
【表10】
【0115】
本発明のセパレータ(実施例)は、作製5時間後の塗工液を使用してセパレータを作製しても剥離処理層(硬化皮膜)のフィルム基材(シート状基材)への密着性が良好であり、この点で塗工液のポットライフが長く密着性不良によるトラブルを生じにくいといえる。加えて光開始剤を添加したことによる剥離力の異常もみられなかった。また、作製直後の塗工液及び作製5時間後の塗工液のどちらを使用しても剥離処理層のフィルム基材への密着性が良好であったことから、塗工液にこだわらず生産が可能である。このことは、生産性の点で有利である。一方、紫外線照射を行わずに剥離処理層を形成した場合(比較例1)、光開始剤を使用せずに剥離処理層を形成した場合(比較例2)、多官能α−ヒドロキシアルキルフェノン系光開始剤以外の光開始剤を添加して剥離処理層を形成した場合(比較例3〜11、14〜21)、白金系触媒を使用せずに剥離処理層を形成した場合(比較例12)は、剥離処理層が硬化しなかったり、作製5時間後の塗工液を使用してセパレータを作製した場合に密着性が悪かったりといった問題を生じた。また、光開始剤を使用せず、紫外線照射も行わなかった場合、加熱温度を150℃にすれば作製5時間後の塗工液を使用しても密着性は良好だったが、PETフィルムの加熱収縮によるシワの発生が多く外観不良となった。