(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る血液成分測定装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る血液成分測定装置10Aの概略構成を示す図である。この血液成分測定装置10Aは、照射光源12と、受光部14と、保持機構16と、加温機構18と、演算手段20とを備え、照射光源12から出射した光を生体の生体部位11に透過させ、透過光を受光部14で受光し、受光部14で得られた信号を演算手段20で演算・解析して、生体部位11における血液成分を測定するための医療機器である。
【0018】
生体部位11は、人体の一部、例えば、ヒトの手指11a、手のひら、耳たぶ等を例示できる。
図1にした血液成分測定装置10Aは、ヒトの手指11aを生体部位11として、この手指11aの一部に光を照射し、照射部位における血液中のグルコース濃度を測定するように構成されている。
【0019】
照射光源12としては、可視から近赤外の範囲で光を出射可能であり、例えば、互いに異なる波長の光を出射する複数のLEDをマトリックス状に配置した多波長LEDアレイを採用し得る。また、照射光源12の他の構成としては、連続光を出射する光源(例えば、ハロゲンランプ)と、任意の波長成分を取り出すことができる分光器(モノクロメータ)とを組み合わせた構成でもよい。
【0020】
照射光源12は、血色素(ヘモグロビン)に吸収されやすい波長の光(第1の波長)と、血色素に吸収されにくい波長の光(第2の波長)と、生体部位11を透過した光の透過スペクトルを取得するための広範な波長域(例えば、700nm程度〜2200nm程度の範囲)の光を出射することができる。
【0021】
血色素に吸収されやすい波長は、経皮透過では、760nm、940nm付近である。血色素に吸収されにくい波長は、血色素に吸収されやすい波長以外の波長のうち、血液以外の生体組織にも吸収されにくい波長であり、例えば、1000nm〜1300nmである。1000nm〜1300nmは、生体成分による吸収が比較的少なく、「生体の窓」と言われている。グルコースは、吸収ピークが明確でないが、1600nm付近で強い観察が可能である。
【0022】
受光部14は、可視から近赤外域の範囲で光を検出可能であり、本実施形態では、複数の受光素子がマトリックス状に配置された受光素子アレイにより構成されている。このような受光素子アレイとしては、例えば、InGaAsフォトダイオードアレイが挙げられる。
【0023】
保持機構16は、生体部位11を保持・固定し得るように構成されており、図示した構成では、ヒトの手指11aを挿入可能な保持孔部22a、23aを有する2つの保持部材22、23からなる。保持部材22、23は、例えば、ヒトの手指11aを挿入した際に弾性変形して手指11aの形状にフィットするような弾性部材により構成されるのが好ましい。そのような弾性部材としては、例えば、エラストマースポンジ等が挙げられる。このように保持部材22、23が構成されることで、手指11aを安定して保持・固定することができる。
【0024】
加温機構18は、生体部位11の血流を増加させるべく、生体部位11を加温(加熱)する機能を有する。図示した構成例では、加温機構18は、赤外線光源18a(例えば、赤外線LED)として構成され、生体部位11である手指11aのうち、2つの保持部材22、23の間に露出した部分に赤外線を照射し、当該照射部分を加熱する。なお、加温機構18の他の構成例としては、例えば、熱源を生体部位11に直接接触させて加温する構成、生体部位11を減圧して加温する構成、生体部位11を摩擦(マッサージ)して加温する構成等が挙げられる。
【0025】
演算手段20は、制御部26の機能として設けられている。制御部26は、記憶部28とともに、生体部位11における血液成分(グルコース)の濃度を算出するよう構成されたコンピュータを構成し、照射光源12の発光状態に対応する信号と、受光部14で受光した透過光強度に対応した受光信号が入力されるようになっている。血液成分測定装置10Aには、表示部30が設けられており、制御部26の制御作用下に、表示部30は計測結果(血糖値)等の情報を表示するようになっている。
【0026】
演算手段20は、生体部位11のうち、上記第1の波長の透過光強度S1と、上記第2の波長の透過光強度S2との比(S1/S2)が最小の箇所について、血液成分の濃度を算出するように構成されている。
図2に示すように、演算手段20は、透過光強度算出部32と、測定部位抽出部34と、透過スペクトル生成部36と、濃度算出部38とを有する。
【0027】
透過光強度算出部32は、受光部14からの受光信号に基づき、第1の波長の透過光強度S1と第2の波長の透過光強度を算出する。測定部位抽出部34は、前記比(S1/S2)が最小の箇所を測定部位として抽出する。透過スペクトル生成部36は、抽出された測定部位の透過スペクトルSP1を生成する。濃度算出部38は、生成された透過スペクトルSP1に基づいて、血液成分の濃度を算出する。
【0028】
記憶部28には、透過光強度算出部32、測定部位抽出部34、透過スペクトル生成部36、濃度算出部38による各処理を実行するためのプログラムが格納され、当該プログラムに従って、制御部26におけるCPUが所定の演算処理を実行し、受光部14により取得した受光信号に対応した透過光強度等に基づいて、多変量解析等によってグルコース濃度を算出する。
【0029】
本実施形態に係る血液成分測定装置10Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0030】
上述した血液成分測定装置10Aによりグルコース濃度(血糖値)を測定するには、
図1に示すように、まず、血液成分測定装置10Aの保持機構16に、グルコース濃度を測定する人の手指11aを挿入して所定位置に保持させる。手指11aを保持機構16に保持させたら、血液成分測定装置10Aの図示しない本体部に設けられたスタートスイッチを押して、測定処理を開始する。
【0031】
血液成分測定装置10Aにおいて、測定処理が開始されると、加温機構18である赤外線光源から手指11aに対して赤外線が照射される。ここで、
図3は、手のひら温度と血流量との関係を示す図である。
図3から了解されるように、手のひらの温度が高くなるほど、血流量が増す。したがって、加温機構18により手指11aを加温することによって、手指11aにおける血流量を増大させることができる。
【0032】
以下、血液成分測定装置10Aの動作について、
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0033】
血液成分測定装置10Aは、加温機構18による手指11aの加温と並行して、あるいは、加温した後に、血色素に相対的に吸収されやすい第1の波長の光を照射光源12から出射させ、手指11aを透過した光を受光部14にて受光する。受光部14は、受光信号を出力する。透過光強度算出部32は、受光部14からの受光信号に基づき、第1の波長の透過光強度S1を算出(測定)する(ステップS1)。また、血液成分測定装置10Aは、第1の波長の光を照射光源12から照射して受光部14からの受光信号を演算手段20で受信した後、あるいは、第1の波長の光を照射光源12から照射する前に、血色素に相対的に吸収されにくい第2の波長の光を照射光源12から出射させ、手指11aを透過した光を受光部14にて受光する。受光部14は、受光信号を出力する。透過光強度算出部32は、受光部14からの受光信号に基づき、透過光強度S2を算出(測定)する(ステップS2)。
【0034】
次に、測定部位抽出部34は、第1の波長の透過光強度S1と、第2の波長の透過光強度S2との比(S1/S2)が最小の箇所を測定部位として抽出する(ステップS3)。本実施形態の場合、受光部14は、受光素子アレイにより構成されるため、生体部位11の一定範囲を透過した光を受光する。したがって、具体的には、受光部14の受光素子アレイを構成する受光素子のうち、比(S1/S2)が最小の箇所に対応する受光素子を抽出(特定)する。
【0035】
図5に示すように、生体には、血液成分が多く存在する部分(血管40)と、それ以外の組織成分とがある。第1の波長の光は、血色素(ヘモグロビン)に吸収されやすいが、第2の波長は、血色素に吸収されにくい。このため、第1の波長の透過光強度S1と、第2の波長の透過光強度S2との比(S1/S2)が最小の箇所は、血液成分の多い箇所、つまり血管40がある部位と考えることができる。そこで、本発明では、血液成分の測定精度を向上させるべく、前記比(S1/S2)が最小の箇所を測定部位として抽出する。このように抽出された測定部位は、血管40が存在する箇所であり、例えば、
図5に示す位置P1である。
【0036】
次に、血液成分測定装置10Aは、照射光源12により近赤外域の光を手指11aに照射し、その透過光を受光部14で受光する。すると、その受光信号に基づいて、透過スペクトル生成部36は、測定部位抽出部34にて抽出された測定部位についての透過スペクトルSP1を生成する(ステップS4)。次に、濃度算出部38は、透過スペクトル生成部36にて生成された透過スペクトルSP1に基づいて、多変量解析等によってグルコース濃度を算出する(ステップS5)。表示部30は、このように算出されたグルコース濃度を血糖値として表示する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る血液成分測定装置10Aによれば、血色素に相対的に吸収されやすい第1の波長の透過光強度S1と、血色素に相対的に吸収されにくい第2の波長の透過光強度S2との比(S1/S2)が最小の箇所、すなわち、血液成分の多い箇所(
図5中の位置P1)について血液成分の濃度を算出するので、血液成分の測定精度を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態の場合、受光素子アレイにより、生体部位11(手指11a)の複数箇所について同時に透過光を受光できるので、簡便な装置構成で、前記比(S1/S2)が最小のものを確実に抽出することができる。
【0039】
さらに、本実施形態の場合、加温機構18により生体部位11を加温するので、生体部位11の血流を増加させ、血液成分の多い箇所を抽出しやすくなる。よって、血液成分の測定精度を一層向上させることができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、
図6を参照し、第2実施形態に係る血液成分測定装置10Bについて説明する。なお、第2実施形態に係る血液成分測定装置10Bにおいて、第1実施形態に血液成分測定装置10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0041】
本実施形態に係る血液成分測定装置10Bは、照射光源12と、スキャナ機構44と、受光部45と、保持機構16と、加温機構18と、演算手段20とを備える。保持機構16及び演算手段20は、第1実施形態における保持機構16及び演算手段20と同様に構成されている。
【0042】
照射光源12は、
図1に示した照射光源12と同様の構成であるが、保持機構16により保持される手指11aに対向する位置から外れた位置に配置されている。照射光源12の発光面側には、照射光源12からの光を反射して生体部位11に対して走査するスキャナ機構44が設けられている。すなわち、スキャナ機構44は、照射光源12と保持機構16との間の光路上に配置されている。
【0043】
スキャナ機構44は、照射光源12からの光を反射する反射部46と、反射部46を揺動駆動する駆動部48とを備え、図示しない制御部26の作用下に、駆動部48により反射部46を回転(揺動)させることで、照射光源12からの光を反射して、生体部位11に沿って光を2次元的に走査するように構成されている。
【0044】
受光部45は、可視から近赤外域の範囲で光を検出可能であり、本実施形態では、単一の受光素子から構成されている。このような受光素子としては、例えば、InGaAsフォトダイオードが挙げられる。受光部45は、スキャナ機構44による光の走査に同期して、生体部位11の複数箇所について、第1の波長の透過光と第2の波長の透過光をそれぞれ受光する。
【0045】
受光部45と保持機構16との間には、集光レンズ50が配置されている。この集光レンズ50により、生体部位11を透過した光は、受光部45に向かって集光される。
【0046】
演算手段20は、第1の波長の光と第2の波長の光を照射した生体部位11のうち、第1の波長の透過光強度S1と、第2の波長の透過光強度S2との比(S1/S2)が最小の箇所について、血液成分の濃度を算出するように構成されている。演算手段20は、
図2に示した演算手段20と同様に、透過光強度算出部32と、測定部位抽出部34と、透過スペクトル生成部36と、濃度算出部38とを有する。
【0047】
上述した血液成分測定装置10Bによりグルコース濃度(血糖値)を測定するには、まず、血液成分測定装置10Bの保持機構16に、グルコース濃度を測定する人の手指11aを挿入して所定位置に保持させる。手指11aを保持機構16に保持させたら、血液成分測定装置10Bの図示しない本体部に設けられたスタートスイッチを押して、測定処理を開始する。すると、加温機構18である赤外線光源から手指11aに対して赤外線が照射され、生体部位11が加温される。
【0048】
血液成分測定装置10Bは、加温機構18による手指11aの加温と並行して、あるいは、加温した後に、血色素に相対的に吸収されやすい第1の波長の光を照射光源12から出射させ、手指11aを透過した光を受光部45にて受光する。透過光強度算出部32は、受光部45からの受光信号に基づき、第1の波長の透過光強度S1を算出(測定)する。また、血液成分測定装置10Bは、第1の波長の光を照射光源から照射して受光部14からの受光信号を演算手段20で受信した後、あるいは、第1の波長の光を照射光源から照射する前に、血色素に相対的に吸収されにくい第2の波長の光を照射光源12から出射させ、手指11aを透過した光を受光部45にて受光する。この受光信号は演算手段20に送られる。すると、透過光強度算出部32は、受光部45からの受光信号に基づき、透過光強度S2を算出(測定)する。
【0049】
この場合、本実施形態では、照射光源12からの光をスキャナ機構44により反射して走査するように構成されるとともに、受光部45が単一の受光素子により構成されている。したがって、スキャナ機構44の走査位置と、受光部45からの受光信号とを対応付けることで、生体部位11の複数箇所の各々についての透過光強度を算出することができる。
【0050】
次に、測定部位抽出部34は、第1の波長の光と第2の波長の光を照射した生体部位11のうち、第1の波長の透過光強度S1と、第2の波長の透過光強度S2との比(S1/S2)が最小の箇所(
図5中、P1で示す箇所)を測定部位として抽出する。
【0051】
次に、血液成分測定装置10Bは、照射光源12により近赤外域の光を手指11aに照射し、その透過光を受光部45で受光する。このとき、照射光源12からの光を、抽出された測定部位に照射するように、スキャナ機構44の動作位置が制御され、測定部位を透過した光は、集光レンズ50にて集光され、受光部45にて受光される。すると、その受光信号に基づいて、透過スペクトル生成部36は、測定部位抽出部34にて抽出された測定部位についての透過スペクトルSP1を生成する。
【0052】
次に、濃度算出部38は、透過スペクトル生成部36にて生成された透過スペクトルSP1に基づいて、多変量解析等によってグルコース濃度を算出する。表示部30は、このように算出されたグルコース濃度を血糖値として表示する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る血液成分測定装置10Bによれば、血色素に相対的に吸収されやすい第1の波長の透過光強度S1と、血色素に相対的に吸収されにくい第2の波長の透過光強度S2との比(S1/S2)が最小の箇所、すなわち、血液成分の多い箇所について血液成分の濃度を算出するので、血液成分の測定精度を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態の場合、スキャナ機構44により照射光源12からの光を生体部位11に向けて走査するので、受光部45を単一の素子で構成しても、前記比(S1/S2)が最小のものを容易に抽出することができる。
【0055】
なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0056】
[第3実施形態]
図7は、本発明の第3実施形態に係る血液成分測定装置10Cの概略構成を示す図である。この血液成分測定装置10Cは、照射光源12と、受光部14と、保持機構16と、加温機構18と、演算手段52とを備え、照射光源12から出射した光を生体の生体部位11に透過させ、透過光を受光部14で受光し、受光部14で得られた信号を演算手段52で演算・解析して、生体部位11における血液成分を測定するための医療機器である。
【0057】
本実施形態に係る血液成分測定装置10Cは、演算手段52の構成において、第1実施形態に係る血液成分測定装置10Aと異なる。具体的には、演算手段52は、
図8に示すように、透過光強度算出部32と、第1抽出部56と、第2抽出部58と、第1透過スペクトル生成部60と、第2透過スペクトル生成部62と、差分透過スペクトル算出部64と、濃度算出部38とを有する。
【0058】
透過光強度算出部32は、第1の波長の透過光強度S1と、第2の波長の透過光強度S2を算出する。第1抽出部56は、生体部位11のうち、前記比(S1/S2)が最小の箇所を測定部位(以下、第1測定部位という)として抽出する。第2抽出部58は、第2の波長の透過光強度S2が前記第1測定部位とほぼ等しい部位であって、前記比(S1/S2)が最大となる箇所を第2測定部位として抽出する。第1透過スペクトル生成部60は、第1測定部位の透過スペクトルSP1を生成する。第2透過スペクトル生成部62は、第2測定部位の透過スペクトルSP2を生成する。差分透過スペクトル算出部64は、前記第1測定部位と前記第2測定部位との差分透過スペクトルdSP(=PS1−PS2)を算出する。濃度算出部38は、差分透過スペクトルdSPに基づいて、前記血液成分の濃度を算出する。
【0059】
演算手段52における前記記憶部28には、透過光強度算出部32、第1抽出部56、第2抽出部58、第1透過スペクトル生成部60、第2透過スペクトル生成部62、差分透過スペクトル算出部64による各処理を実行するためのプログラムが格納され、当該プログラムに従って、制御部54のCPUが所定の演算処理を実行し、受光部14により取得した透過光強度等に基づいて、多変量解析等によってグルコース濃度を算出する。
【0060】
照射光源12及び加温機構18は、制御部54によって制御される。演算手段52は、制御部54の機能の一部である。
【0061】
上述した血液成分測定装置10Cによりグルコース濃度(血糖値)を測定するには、まず、血液成分測定装置10Cの保持機構16に、グルコース濃度を測定する人の手指11aを挿入して所定位置に保持させる。手指11aを保持機構16に保持させたら、血液成分測定装置10Cの図示しない本体部に設けられたスタートスイッチを押して、測定処理を開始する。すると、加温機構18である赤外線光源から手指11aに対して赤外線が照射され、生体部位11が加温される。
【0062】
以下、血液成分測定装置10Cの動作について、
図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0063】
血液成分測定装置10Cは、加温機構18による手指11aの加温と並行して、あるいは、加温した後に、血色素に相対的に吸収されやすい第1の波長の光を照射光源12から出射させ、手指11aを透過した光を受光部14にて受光する。受光部14は、受光信号を出力する。透過光強度算出部32は、受光部14からの受光信号に基づき、透過光強度S1を算出(測定)する(ステップS11)。また、血液成分測定装置10Cは、第1の波長の光を照射光源12から照射して受光部14からの受光信号を演算手段52で受信した後、あるいは、第1の波長の光を照射光源から照射する前に、血色素に相対的に吸収されにくい第2の波長の光を照射光源12から出射させ、手指11aを透過した光を受光部14にて受光する。受光部14は、受光信号を出力する。すると、透過光強度算出部32は、受光部14からの受光信号に基づき、透過光強度S2を算出(測定)する(ステップS12)。
【0064】
次に、第1抽出部56により、生体部位11のうち、第1の波長の透過光強度S1と、第2の波長の透過光強度S2との比(S1/S2)が最小の箇所を第1測定部位として抽出する(ステップS13)。抽出された第1測定部位は、血管40が存在する箇所であり、例えば、
図5に示す位置P1である。本実施形態の場合、受光部14は、受光素子アレイにより構成されるため、生体部位11の一定範囲を透過した光を受光する。したがって、具体的には、受光部14の受光素子アレイを構成する受光素子のうち前記比(S1/S2)が最小の箇所に対応する受光素子を抽出(特定)する。
【0065】
また、第2抽出部58により、生体部位11において、第2の波長の透過光強度S2が前記第1測定部位とほぼ等しい部位のうち前記比(S1/S2)が最大の箇所を抽出する(ステップS13)。本実施形態の場合、具体的には、受光部14の受光素子アレイを構成する受光素子において、第2の波長の透過光強度S2が前記第1測定部位とほぼ等しい箇所のうち前記比(S1/S2)が最大の箇所に対応する受光素子を抽出(特定)する。
【0066】
ところで、血管40を透過した光であっても、必ず血液以外の生体組織成分を透過しているため、血液以外の生体組織成分の影響により測定誤差の低下を招く。したがって、血液以外の生体組織成分の影響を除去することが、測定誤差の低減の観点からは好ましい。しかし、単に、血管40を避けた部分の生体組織成分の影響を排除するだけでは、必ずしも測定誤差を低減できるとは限らない。
【0067】
例えば、
図5において、光の透過経路上に血管40が存在しない箇所のうち、手指11aの側端部P3は、透過光の生体透過距離が血管70が存在する箇所のそれと比べて相当に短いため、側端部P3における生体組織成分の影響を排除しても、測定誤差を有効に低減することができない。また、骨41が存在する箇所の影響を排除しても、測定誤差を有効に低減することができない。
【0068】
そこで、本実施形態では、第2の波長の透過光強度S2が第1測定部位とほぼ等しい箇所のうち前記比(S1/S2)が最大の箇所を第2測定部位として抽出し、第2測定部位における生体組織成分の影響を排除する。このように抽出された第2測定部位は、例えば、
図5に示す血管40近傍の位置P2である。この第2測定部位は、透過光の生体通過距離が第1測定部位とほぼ同じであるため、この部分の生体組織成分の影響を排除することにより、測定誤差を有効に低減できる。
【0069】
次に、血液成分測定装置10Cは、照射光源12により近赤外域の光を手指11aに照射し、その透過光を受光部14で受光する。すると、その受光信号に基づいて、第1透過スペクトル生成部60が第1測定部位を透過した光の透過スペクトルSP1を生成するとともに、第2透過スペクトル生成部62が第2測定部位を透過した光の透過スペクトルSP2を生成する(ステップS14)。
【0070】
次に、差分透過スペクトル算出部64は、第1測定部位の透過スペクトルSP1と第2測定部位の透過スペクトルSP2との差分透過スペクトルdSP(=SP1−SP2)を演算する(ステップS15)。次に、濃度算出部38は、算出された差分透過スペクトルdSPに基づいて、多変量解析等によって血液成分(グルコース)の濃度を算出する(ステップS16)。表示部30は、このように算出されたグルコース濃度を血糖値として表示する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態に係る血液成分測定装置10Cによれば、血色素に相対的に吸収されやすい第1の波長の透過光強度S1と、血色素に相対的に吸収されにくい第2の波長の透過光強度S2との比(S1/S2)が最小の箇所、すなわち、血液成分の多い箇所について血液成分の濃度を算出するので、血液成分の測定精度を向上させることができる。
【0072】
また本実施形態の場合、第1測定部位と第2測定部位の差分透過スペクトルdSPを計測及び分析することで、血液以外の生体組織成分の影響を補正し、S/N比を向上させることができる。すなわち、血液以外の生体組織成分の影響を補正によって排除することで、血液の情報をより多く取得することができるため、血液成分の測定精度をより向上させることができる。
【0073】
なお、第3実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0074】
[第4実施形態]
次に、
図10を参照し、第4実施形態に係る血液成分測定装置10Dについて説明する。なお、第4実施形態に係る血液成分測定装置10Dにおいて、第3実施形態に血液成分測定装置10Cと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0075】
本実施形態に係る血液成分測定装置10Dは、照射光源12と、スキャナ機構44と、受光部45と、保持機構16と、加温機構18と、演算手段52とを備える。照射光源12、保持機構16及び加温機構18は、第1実施形態における照射光源12及び保持機構16と同様に構成されている。スキャナ機構44は、第2実施形態におけるスキャナ機構44と同様に構成されている。演算手段52は、第3実施形態における演算手段52(
図8参照)と同様に、透過光強度算出部32と、第1抽出部56と、第2抽出部58と、第1透過スペクトル生成部60と、第2透過スペクトル生成部62と、差分透過スペクトル算出部64と、濃度算出部38とを有する。
【0076】
上述した血液成分測定装置10Dによりグルコース濃度(血糖値)を測定するには、まず、血液成分測定装置10Dの保持機構16に、グルコース濃度を測定する人の手指11aを挿入して所定位置に保持させる。手指11aを保持機構16に保持させたら、血液成分測定装置10Dの図示しない本体部に設けられたスタートスイッチを押して、測定処理を開始する。すると、加温機構18である赤外線光源から手指11aに対して赤外線が照射され、生体部位11が加温される。
【0077】
血液成分測定装置10Dは、加温機構18による手指11aの加温と並行して、あるいは、加温した後に、血色素に相対的に吸収されやすい第1の波長の光を照射光源12から出射させ、手指11aを透過した光を受光部45にて受光する。透過光強度算出部32は、受光部45からの受光信号に基づき、第1の波長の透過光強度S1を算出(測定)する。また、血液成分測定装置10Dは、第1の波長の光を照射光源から照射して受光部45からの受光信号を演算手段52で受信した後、あるいは、第1の波長の光を照射光源12から照射する前に、血色素に相対的に吸収されにくい第2の波長の光を照射光源12から出射させ、手指11aを透過した光を受光部45にて受光する。受光部45はこの受光信号を出力する。透過光強度算出部32は、受光部45からの受光信号に基づき、透過光強度S2を算出(測定)する。
【0078】
次に、第1抽出部56は、第1の波長の光と第2の波長の光を照射した生体部位11のうち、第1の波長の透過光強度S1と、第2の波長の透過光強度S2との比(S1/S2)が最小の箇所を第1測定部位として抽出する。第2抽出部58は、第1の波長の光と第2の波長の光を照射した生体部位11において、第2の波長の透過光強度S2が第1測定部位とほぼ等しい箇所のうち前記比(S1/S2)が最大の箇所を第2測定部位として抽出する。
【0079】
次に、血液成分測定装置10Dは、第1測定部位及び第2測定部位のそれぞれを透過した光の透過スペクトルSP1、SP2を生成すべく、照射光源12により近赤外域の光を手指11aに照射し、その透過光を受光部45で受光する。このとき、まず、照射光源12からの光を第1測定部位に照射するように、スキャナ機構44の動作位置が制御され、第1測定部位を透過した光は、受光部45にて受光される。すると、その受光信号に基づいて、第1透過スペクトル生成部60は、第1測定部位についての透過スペクトルSP1を生成する。
【0080】
次に、照射光源12からの光を第2測定部位に照射するように、スキャナ機構44の動作位置が制御され、第2測定部位を透過した光は、受光部45にて受光される。すると、その受光信号に基づいて、第2透過スペクトル生成部62は、第2測定部位についての透過スペクトルSP2を生成する。
【0081】
なお、透過スペクトルSP1、SP2の取得に際し、上記動作順序と異なり、第1測定部位に近赤外光を照射してその透過光から第1測定部位の透過スペクトルSP1を生成する処理の前に、第2測定部位に近赤外光を照射してその透過光から第2測定部位の透過スペクトルSP2を生成する処理を行ってもよい。
【0082】
次に、差分透過スペクトル算出部64は、第1測定部位の透過スペクトルSP1と第2測定部位の透過スペクトルSP2との差分透過スペクトルdSP(=SP1−SP2)を演算する。次に、濃度算出部38は、算出された差分透過スペクトルdSPに基づいて、多変量解析等によって血液成分(グルコース)の濃度を算出する。表示部30は、このように算出されたグルコース濃度を血糖値として表示する。
【0083】
以上説明したように、血液成分測定装置10Dによれば、第1〜第3実施形態に係る血液成分測定装置10A〜10Cと同様に、血色素に相対的に吸収されやすい第1の波長の透過光強度S1と、血色素に相対的に吸収されにくい第2の波長の透過光強度S2との比(S1/S2)が最小の箇所、すなわち、血液成分の多い箇所について血液成分の濃度を算出するので、血液成分の測定精度を向上させることができる。
【0084】
また、第2実施形態に係る血液成分測定装置10Bと同様に、スキャナ機構44により照射光源12からの光を生体部位11に向けて走査するので、受光部45を単一の素子で構成しても、前記比(S1/S2)が最小のものを容易に抽出することができる。
【0085】
また、第3実施形態に係る血液成分測定装置10Cと同様に、第1測定部位と第2測定部位の差分透過スペクトルdSPを計測及び分析することで、血液以外の生体組織成分の影響を補正し、S/N比を向上させることができる。すなわち、血液以外の生体組織成分の影響を補正によって排除することで、血液の情報をより多く取得することができるため、血液成分の測定精度をより向上させることができる。
【0086】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。