【文献】
Agung NUGROHO, et al.,Facile synthesis of nanosized Li4Ti5O12 in supercritical water,Electrochemistry Communications,2011年 4月 8日,Volume 13, Issue 6,Pages 650-653,Available online 8 April 2011
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加熱の前に、少なくとも、前記(1)のチタン原料と、(2)のリチウム化合物と、(3)目的とするチタン酸リチウムと同じ結晶構造を有するチタン酸リチウム化合物とを乾式混合する、請求項1に記載のチタン酸リチウムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で用いる測定方法について説明する。
比表面積
本願明細書において、比表面積は、窒素吸着によるBET一点法にて測定したものである。装置はユアサアイオニクス社製モノソーブ又はQuantachrome Instruments社製Monosorb型番MS−22を用いた。
【0010】
粒子径(リチウム化合物)
本願明細書において、リチウム化合物の平均粒径とは、レーザー回折法で測定した体積平均粒径をいう。体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、分散媒にエタノールを使用し、屈折率をエタノールについては1.360とし、リチウム化合物については化合物種に応じて適宜設定して測定したものである。例えば、リチウム化合物が炭酸リチウムである場合、屈折率は1.500を使用する。レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製 LA−950を用いた。
【0011】
粒子径(チタン原料)
本願明細書において、チタン原料の一次粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用い、画像中の一次粒子100個の粒子径を測定し、その平均値を取ったものである(電子顕微鏡法)。
また、本願明細書において、チタン原料の二次粒子の平均二次粒子径とは、レーザー回折法で測定した体積平均粒径をいう。体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、分散媒に純水を使用し、屈折率を、純水については1.333とし、チタン原料については化合物種に応じて適宜設定して測定したものである。例えば、チタン原料がアナターゼ型酸化チタンの場合、屈折率は2.520を使用する。レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置は、堀場製作所社製 LA−950を用いた。
【0012】
粒子径(前駆体混合物)
本願明細書において、チタン酸リチウム前駆体混合物の平均粒径とは、レーザー回折法で測定した体積平均粒径をいう。体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、分散媒にエタノールを使用し、屈折率を、エタノールについては1.360とし、測定粒子については配合したリチウム化合物種の数値を用いて測定したものである。例えば、リチウム化合物が炭酸リチウムである場合は、屈折率は1.567を使用する。レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置は、堀場製作所社製 LA−950を用いた。
【0013】
粒子径(チタン酸リチウム)
本願明細書において、チタン酸リチウムの一次粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用い、画像中の一次粒子100個の粒子径を測定し、その平均値を取ったものである(電子顕微鏡法)。
また、本願明細書において、チタン酸リチウムの二次粒子の平均二次粒子径とは、レーザー回折法で測定した体積平均粒径をいう。体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、分散媒に純水を使用し、屈折率を、水については1.333とし、チタン酸リチウムについては化合物種に応じて適宜設定して測定する。チタン酸リチウムがLi
4Ti
5O
12である場合、屈折率は2.700を使用する。また、本発明においてはレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置は、堀場製作所社製 LA−950を用いた。
【0014】
嵩密度
本願明細書において、嵩密度は、シリンダー式(メスシリンダに試料を入れ、体積と質量から算出)により求める。
【0015】
不純物
本願明細書において、不純物である、ナトリウム、カリウムは原子吸光法により測定し、SO
4、塩素はイオンクロマトグラフィー法又は蛍光X線測定装置により測定し、ケイ素、カルシウム、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、ニオブ、ジルコニウムなどのその他の元素はICP法により測定する。SO
4ついては、蛍光X線測定装置(RIGAKU RIX−2200)を用いた。
【0016】
次に本発明について説明する。
本発明は、チタン酸リチウム製造用チタン原料であって、比表面積が50〜450m
2/gのチタン酸化物を含む、チタン酸リチウム製造用チタン原料である。
【0017】
チタン酸リチウム製造用チタン原料(以降、単に「チタン原料」と記載することもある)とは、少なくともリチウム化合物と当該原料とを混合し、その後、当該混合物を加熱することによりチタン酸リチウムを製造するときに用いられる原料のことを言う。
【0018】
チタン原料はチタン酸化物を含み、チタン酸化物には、TiO(OH)
2又はTiO
2・H
2Oで表されるメタチタン酸、Ti(OH)
4またはTiO
2・2H
2Oで表されるオルトチタン酸などのチタン酸化合物(含水酸化チタンともいう)、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型、ブロンズ型などの結晶性酸化チタンやアモルファス酸化チタン)、あるいはそれらの混合物などが含まれる。酸化チタンは、X線回折パターンが、単一の結晶構造からの回折ピークのみを有する酸化チタンのほか、例えば、アナターゼ型の回折ピークとルチル型の回折ピークを有するもの等、複数の結晶構造からの回折ピークを有するものであってもよい。中でも、結晶性の酸化チタンが好ましい。
【0019】
なお、チタン原料は、前記のチタン酸化物以外の物質を含んでいてもよく、例えば、無機チタン化合物やチタンアルコキシドのような有機チタン化合物を含んでいてもよい。ただし、前記チタン原料中のチタン酸化物は、50モル%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
【0020】
本発明で用いるチタン原料に含まれるチタン酸化物は、比表面積が50〜450m
2/gの範囲にあることが重要である。
比表面積が前記範囲のチタン酸化物を含むチタン原料を用いると、チタン原料とリチウム化合物とが均一に混合され易くなり、その後の加熱の際、チタン原料とリチウム化合物との反応が進み易くなるため、目的とするチタン酸リチウムを効率よく製造することができる。すなわち、組成の異なる副相の生成や未反応の原料の残存が少なく、焼結の進行や比表面積の低下が少ない。また、目的とするチタン酸リチウムを、従来よりも低い加熱温度でも確実に安定して製造することができる。
チタン酸化物の比表面積が50m
2/gより小さいとリチウム化合物との混合が不均一になり易く、充分な反応性が得られないため好ましくなく、チタン酸化物の比表面積を450m
2/gより大きくしてもそれに見合う反応性は得られにくい。比表面積は、50〜300m
2/gの範囲が好ましく、60〜300m
2/gの範囲がより好ましく、60〜100m
2/gの範囲がさらに好ましい。
【0021】
前記範囲の比表面積を有するチタン酸化物は、硫酸チタン、硫酸チタニル、塩化チタン、塩化チタニル、チタンアルコキシドなどのチタン化合物を加水分解したり、あるいは中和してチタン酸化合物(含水酸化チタン)や酸化チタンなどのチタン酸化物を製造する際に、反応温度や反応時間を適宜設定し、比表面積を調整することによって製造できる。このようにして得られたチタン酸化合物(含水酸化チタン)や酸化チタンを200〜700℃の温度で焼成してもよく、焼成によっても比表面積を調整したり結晶性をよくしたりすることができる。
【0022】
チタン原料に含まれるチタン酸化物は、リチウム化合物との反応性の点から微細なものが好ましく、平均一次粒子径(電子顕微鏡法)は0.001μm〜0.3μmの範囲が好ましく、0.005〜0.3μmがより好ましく、0.01μm〜0.3μmの範囲がより好ましく、0.04〜0.28μmがさらに好ましい。このようなチタン酸化物を造粒して二次粒子として用いる場合は、その平均二次粒子径(レーザー回折法)は0.05〜5μmとすると好ましく、0.1〜3.0μmがより好ましく、0.5〜2.0μmがさらに好ましい。
【0023】
チタン原料に含まれるチタン酸化物は、高純度のものが好ましく、通常純度90重量%以上が良く、99重量%以上がより好ましい。不純物のCl又はSO
4は1.0重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましい。また、その他の元素として具体的には次の範囲がより好ましい。ケイ素(1000ppm以下)、カルシウム(1000ppm以下)、鉄(1000ppm以下)、ニオブ(0.3重量%以下)、ジルコニウム(0.2重量%以下)。
【0024】
更に、チタン原料に含まれるチタン酸化物は、嵩密度が低い、具体的には嵩密度が0.2〜0.7g/cm
3の範囲のものを用いると、チタン原料とリチウム化合物とが均一に混合され易くなり、その後の加熱の際、チタン原料とリチウム化合物との反応が進み易くなるため好ましい。嵩密度の範囲は、0.2〜0.6g/cm
3がより好ましく、0.2〜0.5g/cm
3がさらに好ましい。
【0025】
次に、本発明は、チタン酸リチウムの製造方法であって、少なくとも以下の2種の化合物を加熱するチタン酸リチウムの製造方法である。
(1)前記チタン酸リチウム製造用チタン原料
(2)リチウム化合物
【0026】
(1)のチタン酸リチウム製造用チタン原料としては、前記のチタン酸化物を用いることができる。また、(2)のリチウム化合物としては、水酸化物、塩、酸化物等を特に制限無く用いることができ、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酸化リチウム等が挙げられる。これらの1種を用いることができ、2種以上を併用してもよい。前記リチウム化合物の中でも、チタン酸リチウムへの酸性根の残存を避けるため、水酸化リチウム、炭酸リチウム、酸化リチウムを用いるのが好ましく、水酸化リチウム、炭酸リチウムを用いるのがより好ましく、炭酸リチウムが一層好ましい。
本発明において酸性根とは、硫酸根(SO
4)及び塩素根(Cl)を意味する。
【0027】
リチウム化合物は高純度のものが好ましく、通常、純度98.0重量%以上が良い。たとえば、炭酸リチウムをリチウム化合物として用いる場合には、Li
2CO
3が98.0重量%以上、好ましくは99.0重量%以上であって、Na、Ca、K、Mg等の不純物金属元素が1000ppm以下、好ましくは500ppm以下で、Cl、SO
4が1000ppm以下、好ましくは500ppm以下が良い。また、水分については十分除去したものが望ましく、その含有量は0.3重量%以下にすることが望ましい。
【0028】
リチウム化合物の体積平均粒径には、特に制限はなく、一般的に入手可能なものを用いることができる。炭酸リチウムの場合は、体積平均粒径が10〜100μmの範囲のものが一般的である。
【0029】
なお、リチウム化合物を事前に単独で微細化処理してもよい。微細化は、体積平均粒径が5μm以下となるようにするとチタン原料とリチウム化合物の反応性が高まるため好ましく、4μm以下がより好ましい。微細化処理には公知の方法を用いることができ、中でも、粉砕によってリチウム化合物の体積平均粒径を5μm以下とすると好ましく、0.5〜5μmとするとより好ましく、1〜5μmとするとさらに好ましい。また、粉砕によって体積平均粒径を4μm以下、好ましくは0.5〜4μmの範囲、より好ましくは1〜4μmの範囲としてもよい。
【0030】
微細化処理には公知の粉砕機を用いることができ、例えば、フレーククラッシャ、ハンマーミル、ピンミル、バンタムミル、ジェットミル、サイクロンミル、フレットミル、パンミル、エッジランナー、ローラーミル、ミックスマーラー、振動ミルなどが挙げられる。このとき、粗粒が少なくなるように粉砕するのが好ましく、具体的には、上記方法で測定した粒度分布において、D90(累積頻度90%径)を10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは7μm以下とすると好適である。
【0031】
また、リチウム化合物の比表面積は高いほどチタン原料とリチウム化合物の反応性が高まるため好ましく、例えば炭酸リチウムであれば0.8m
2/g以上が好ましく、1.0〜3.0m
2/gがより好ましい。
【0032】
リチウム化合物とチタン原料の配合比は、目的とするチタン酸リチウムの組成に合わせればよい。例えば、チタン酸リチウムとしてLi
4Ti
5O
12を製造する場合には、Li/Ti比が0.79〜0.85となるように配合する。
【0033】
また、本発明においては、チタン酸リチウムの製造方法は、少なくとも以下の3種の化合物を加熱するチタン酸リチウムの製造方法としてもよい。
(1)前記チタン酸リチウム製造用チタン原料
(2)リチウム化合物
(3)目的とするチタン酸リチウムと同じ結晶構造を有するチタン酸リチウム化合物
【0034】
(3)目的とするチタン酸リチウムと同じ結晶構造を有するチタン酸リチウム化合物
このチタン酸リチウム化合物は、必要に応じて使用するものであり、生成するチタン酸リチウムの焼結を抑制したり、あるいは、種結晶として作用すると考えられる。このチタン酸リチウム化合物を使用すると、後述の加熱工程を比較的低温で行うことができるとともに、加熱工程におけるチタン酸リチウムの粒子成長が適切に制御され、目的とするチタン酸リチウムを製造しやすくなる。このため、目的とするチタン酸リチウムと同じ結晶構造を有する必要がある。チタン酸リチウム化合物の粒子径(電子顕微鏡法)には特に制限は無く、目的とするチタン酸リチウムの粒子径(電子顕微鏡法)と同程度の粒径、例えば、0.5〜2.0μm程度の粒子径のものを用いればよい。チタン酸リチウム化合物は本発明の方法で作製することができる。その配合量は、Ti量換算で、チタン原料100重量部に対し、1〜30重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。なお、前記の(1)、(2)、(3)のほかに、混合助剤などを用いてもよい。
【0035】
以上のとおり、本発明では、少なくとも前記の(1)チタン酸リチウム製造用チタン原料と(2)リチウム化合物とを、必要に応じて(3)目的とするチタン酸リチウムと同じ結晶構造を有するチタン酸リチウム化合物などとを加熱して、チタン酸リチウムを製造する。
【0036】
チタン原料の二次粒子の体積平均粒径(Aμm)と、リチウム化合物の体積平均粒径(Bμm)の比(B/A)は、0.1〜80とするのが好ましく、0.1〜20とするのがより好ましく、0.1〜8とするのがさらに好ましい。B/Aをこのような範囲とすることで、リチウム化合物とチタン原料の粒子径が比較的揃い、粒度分布の狭い混合物が得られ易い。このため、リチウム化合物とチタン原料との反応性をより高めることができる。B/Aの範囲は、1.0〜5.0とするとより好ましく、1.0〜4.0とするとさらに好ましい。
【0037】
この加熱に先立ち、前記の原料を混合し混合物(以降、「前駆体混合物」と言うこともある)を予め調製するのが好ましい。前記混合は、少なくとも、(1)前記チタン酸リチウム製造用チタン原料と、(2)リチウム化合物とを乾燥混合するのが好ましく、(3)目的とするチタン酸リチウムと同じ結晶構造を有するチタン酸リチウム化合物を製造に用いる場合は、このチタン酸リチウム化合物を、上記2種類と共に乾式混合するのが好ましい。前記(1)〜(3)の各材料は、混合に先立ち個別に解砕又は粉砕に供しておいてもよい。
【0038】
混合
本発明のチタン酸リチウム製造用チタン原料を用い、リチウム化合物と乾式混合を行うと、本発明のチタン原料はその比表面積が高いため、乾式混合装置内で容易に分散され、リチウム化合物と均一に混合され易くなっているものと考えられる。また、要因は不明であるが、本発明のチタン原料は、混合中に、混合装置内部(内壁、配管内等)への付着が著しく抑制されるため、前駆体混合物中の成分比率の変動が抑制される。また、収率の向上や設備清掃頻度の低減が図れ、生産性も向上する。
【0039】
前駆体混合物を調製するには公知の混合機を用いることができ、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、パウダーミキサー、ダブルコーンブレンダー、タンブラーミキサーなどの乾式混合機が好ましく用いられる。混合を行う雰囲気には特に制限は無い。
【0040】
混合後の粉砕/加圧
前記混合後に前駆体混合物を粉砕し、前記混合後に前駆体混合物に圧力をかけ、または前記混合後に前駆体混合物を粉砕しかつ圧力をかけてもよい。一般に、比表面積の大きい材料は嵩が高く(嵩密度が低い)、質量当たりの占有体積が大きいため、生産性、例えば、単位時間や設備当たりの処理量(材料投入量)が低下する。そこで、前駆体混合物を粉砕したり、圧力をかけたりして、適度な嵩密度とすることが好ましい。粉砕したり、圧力をかけたりすることによって、チタン原料とリチウム化合物が接触し易くなり、リチウム化合物とチタン原料の反応性の高い前駆体混合物が得られ易くなるため好ましい。
【0041】
粉砕する手段としては、前記した公知の粉砕機、例えばジェットミル、サイクロンミルなどを用いることができる。
圧力をかける手段としては、加圧(圧縮)する手段、加圧(圧縮)して粉砕する手段等を用いることができ、公知の加圧成形機、圧縮成形機を用いることができ、例えば、ローラーコンパクター、ローラークラッシャー、ペレット成型機などが挙げられる。
【0042】
前駆体混合物の嵩密度としては、0.2〜0.7g/cm
3が好ましく、0.4〜0.6g/cm
3がより好ましい。嵩密度が前記範囲より低いと、チタン原料とリチウム化合物の接触が少なく、反応性が低下し、前記範囲より高いと、加熱工程において反応中に発生するガスが抜けづらくなったり、熱伝導が阻害されるなどして、この場合も反応性が低下する。その結果、いずれの場合も得られるチタン酸リチウムの単相率が低下する。前駆体混合物に圧力をかける場合、粉末への付加圧力を0.6t/cm
2以下とすると、嵩密度が前記範囲の前駆体混合物が得られやすく、0.5t/cm
2未満とするとより好ましく、0.15〜0.45t/cm
2とすると更に好ましい。
【0043】
粉砕混合
なお、前駆体混合物の調製において、粉砕混合機を用いても良い(以降、この方法を「粉砕混合」と記載することもある。)。この場合、公知の粉砕機を用いてよく、サイクロンミル例えば、フレーククラッシャ、ハンマーミル、ピンミル、バンタムミル、ジェットミル、サイクロンミル、フレットミル、パンミル、エッジランナー、ローラーミル、ミックスマーラー、振動ミルなどの乾式粉砕機が好ましく、フレットミル、パンミル、エッジランナー、ローラーミル、ミックスマーラーがさらに好ましい。
【0044】
粉砕混合は、チタン原料とリチウム化合物の両者を粉砕機に投入すればよい。先に一方の粉砕を開始してから後で他方を投入してもよく、両者を投入してから粉砕を開始してもよく、事前に両者をヘンシェルミキサーなどの公知の混合機で混合してから粉砕機に投入し、粉砕してもよい。このようにチタン原料とリチウム化合物とが共存した状態で粉砕を行うことにより、チタン原料とリチウム化合物とが充分に混合された前駆体混合物が得られ易くなる。
【0045】
少なくともリチウム化合物及びチタン原料が共存した状態で粉砕を行うと、一般に微粒子同士の混合のみを行った場合よりも、チタン原料とリチウム化合物の混合度合いが高くなり易く、加えて、粒子径の揃った粒度分布の狭いリチウム化合物とチタン原料を含む前駆体混合物が得られ易いため好ましい。これにより、リチウム化合物とチタン原料との反応性のより高い前駆体混合物が得られ易く好ましい。
【0046】
粉砕混合にジェットミル、サイクロンミルなどの気流粉砕機を用いる場合、チタン原料には嵩密度が低い、具体的には嵩密度が0.2〜0.7g/cm
3の範囲のものを用いると、反応性の高いチタン酸リチウム前駆体混合物が得られるため好ましい。このような嵩密度が低めのチタン原料は、粉砕機内の気流にのって容易に分散し、リチウム化合物と均一に混合され易くなっているものと考えられる。嵩密度の範囲は、0.2〜0.6g/cm
3がより好ましく、0.2〜0.5g/cm
3がさらに好ましい。
【0047】
粉砕混合と加圧
粉砕混合と同時に及び/又は粉砕混合後に、それらに圧力をかけてもよい。一般に、粉砕混合物は嵩が高く(嵩密度が低い)、質量当たりの占有体積が大きいため、生産性、例えば、単位時間や設備当たりの処理量(材料投入量)が低下する。そこで、粉砕混合物に圧力をかけ、嵩高くなることを抑制し、適度な嵩密度とすることが好ましい。更に、圧力をかけることにより、チタン原料とリチウム化合物が接触し易くなり、リチウム化合物とチタン原料の反応性の高い前駆体混合物が得られ易くなるため好ましい。圧力をかける手段としては、加圧(圧縮)する手段、加圧(圧縮)して粉砕する手段等を用いることができる。
【0048】
まず、粉砕混合後に、当該粉砕混合物に圧力をかける手段としては、加圧(圧縮)成形が好ましく、前述の公知の加圧成形機、圧縮成形機を用いることができる。粉砕混合物に更に下記の圧力(圧縮)粉砕を行ってもよい。
【0049】
次に、粉砕混合と同時に圧力をかける手段(圧力(圧縮))粉砕)としては、加圧粉砕機、圧縮粉砕機を用いることができる。圧力、圧縮の力によって粉砕するものであれば適宜用いることができ、例えばフレットミル、パンミル、エッジランナー、ローラーミル、ミックスマーラーから選ばれる少なくとも1種の粉砕機を用いることができる。これらの粉砕機の粉砕原理は、試料に圧力をかけ、その高い圧力により試料を粉砕するというものである。フレットミルを例に、その作動状態を説明すると、自重の重いローラーが回転する事によりローラーの下にある試料が磨砕される。複数の化合物が一定の時間ローラーの下で磨砕される事により、それらの混合も同時に行われる。これらの粉砕機を用いると、粉砕と同時に前記混合粉末に圧力をかけることができ、別途圧縮工程を設ける必要がなく、工程の簡略化を図ることもできる。
【0050】
粉砕混合し、必要に応じて、粉砕混合と同時に及び/又は粉砕混合後に、それらに圧力をかけたチタン酸リチウム前駆体混合物の嵩密度は、前述の範囲が好ましい。また、圧力をかける場合、付加圧力は前述の範囲とすると好ましい。
【0051】
また、粉砕混合工程を経由した前駆体混合物にあっては、エタノール中に分散した状態で粒度分布を測定したときに、その頻度曲線においてピークが一つであることが好ましい。また、体積平均粒径が0.5μm以下であり、D90(累積頻度90%径)が10μm以下とするのが好ましく、体積平均粒径が0.45μm以下であり、D90(累積頻度90%径)が6μm以下とするのがより好ましい。
粒度分布を前記の範囲とすることで、組成の異なる副相の生成や未反応の原料の残存を更に少なくすることができ、焼結の進行や比表面積の低下の少ない、目的とするチタン酸リチウムを、従来の製造方法よりも低い加熱温度でも確実に安定して製造することができる。
【0052】
少なくとも前記の(1)前記チタン酸リチウム製造用チタン原料と(2)リチウム化合物と、必要に応じて(3)目的とするチタン酸リチウムと同じ結晶構造を有するチタン酸リチウム化合物などとを加熱し反応させるには、原料を加熱炉に入れ、所定の温度に昇温し、一定時間保持して反応させる。加熱炉としては、例えば、流動炉、静置炉、ロータリーキルン、トンネルキルン等を用いて行うことができる。加熱温度は、700℃以上の温度が好ましく、950℃以下が好ましい。例えばLi
4Ti
5O
12の場合、700℃より低いと、目的とするチタン酸リチウムの単相率が低くなり、未反応のチタン原料が多くなるため好ましくなく、一方、950℃より高くすると、不純物相(Li
2TiO
3やLi
2Ti
3O
7)が生成するため好ましくない。好ましい加熱温度は700℃〜900℃であり、この範囲であれば、後述する単相率を好ましい範囲とすることができ、且つ焼結や粒成長の抑制されたチタン酸リチウムを、安定して製造できる。加熱時間は適宜設定することができ、3〜6時間程度が適当である。加熱雰囲気としては、制限が無いが、大気、酸素ガスなどの酸化性雰囲気、窒素ガス、アルゴンガスなどの非酸化性雰囲気、水素ガス、一酸化炭素ガスなどの還元性雰囲気がよく、酸化性雰囲気が好ましい。仮焼は行ってもよいが、特に必要はない。
【0053】
このようにして得られたチタン酸リチウムは、冷却後、必要に応じて解砕又は粉砕してもよい。粉砕には、前述の公知の粉砕機を用いることができる。本発明のチタン酸リチウムは、焼結や粒成長が少ないため、解砕、粉砕を行うとチタン酸リチウム粒子が解れ易く、蓄電デバイスの電極を作製する際にペーストに分散し易いため好ましい。
【0054】
前記のチタン酸リチウムの単相率とは、下記式1で表され、目的とするチタン酸リチウムの含有率を示す指標であり、90%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がさらに好ましい。
(式1)単相率(%)=100×(1−Σ(Y
i/X))
ここで、Xは、Cukα線を用いた粉末X線回折測定における、目的とするチタン酸リチウムのメインピーク強度、Y
iは各副相のメインピーク強度である。Li
4Ti
5O
12の場合、Xは2θ=18°付近のピーク強度であり、アナターゼ型又はルチル型TiO
2やLi
2TiO
3が副相として存在しやすいのでY
iには2θ=25°付近のピーク強度(アナターゼ型TiO
2)、2θ=27°付近のピーク強度(ルチル型TiO
2)と2θ=44°付近のピーク強度(Li
2TiO
3)を用いる。
【0055】
このようにして得られたチタン酸リチウムは、大きな比表面積を有し、具体的には1.0m
2/g以上が好ましく、2.0〜50.0m
2/gがより好ましく、2.0〜40.0m
2/gがより好ましい。また、チタン酸リチウムの嵩密度、体積平均粒径は、適宜設定することができ、嵩密度は0.1〜0.8g/cm
3が好ましく、0.2〜0.7g/cm
3がより好ましい。体積平均粒径は1〜10μmが好ましい。また、不純物は少ないことが好ましく、具体的には次の範囲がより好ましい。ナトリウム(1000ppm以下)、カリウム(500ppm以下)、ケイ素(1000ppm以下)、カルシウム(1000ppm以下)、鉄(500ppm以下)、クロム(500ppm以下)、ニッケル(500ppm以下)、マンガン(500ppm以下)、銅(500ppm以下)、亜鉛(500ppm以下)、アルミニウム(500ppm以下)、マグネシウム(500ppm以下)、ニオブ(0.3重量%以下)、ジルコニウム(0.2重量%以下)、SO
4(1.0重量%以下)、塩素(1.0重量%以下)。
【0056】
次に、本発明は電極活物質であって、上述した本発明のチタン酸リチウムを含むことを特徴とする。また、本発明は蓄電デバイスであって、上述した本発明の製造方法で得られたチタン酸リチウムを用いることを特徴とする。この蓄電デバイスは、電極、対極及びセパレータと電解液とからなり、電極は、前記電極活物質に導電材とバインダーを加え、適宜成形または塗布して得られる。導電材としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電助剤が、バインダーとしては、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴム等のフッ素樹脂や、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸等の水溶性樹脂が挙げられる。リチウム電池の場合、前記電極活物質を正極に用い、対極として金属リチウム、リチウム合金など、または黒鉛等の炭素含有物質を用いることができる。あるいは、前記電極活物質を負極として用い、正極にリチウム・マンガン複合酸化物、リチウム・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル複合酸化物、リチウム・コバルト・マンガン・ニッケル複合酸化物、リチウム・バナジン複合酸化物等のリチウム・遷移金属複合酸化物、リチウム・鉄・複合リン酸化合物等のオリビン型化合物等を用いることができる。セパレータには、いずれにも、多孔性ポリプロピレンフィルムなどが用いられ、電解液には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチルラクトン、1,2−ジメトキシエタンなどの溶媒にLiPF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiBF
4等のリチウム塩を溶解させたものなど常用の材料を用いることができる。本発明のチタン酸リチウムは、リチウム二次電池の活物質としてだけでなく、他の種類の活物質の表面に付着させたり、電極に配合したり、セパレータに含有させたり、リチウムイオン伝導体として使用したりなどしてもよい。また、ナトリウムイオン電池の活物質として使用してもよい。
【実施例】
【0057】
以下に本発明の実施例を示すが、これらは本発明を限定するものではない。
【0058】
実施例
チタン原料として、表1に示す粉末を準備した。いずれもアナターゼ型の二酸化チタンからなることを確認した。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例1)
チタン原料aと、リチウム化合物として炭酸リチウム粉末(純度99.2%、体積平均粒径7.5μm、比表面積1.25m
2/g)とを、Li/Tiモル比で0.81となるように原料を採取し、ヘンシェル混合器で20分間、1800rpmで混合し、前駆体混合物を調製した。次いで、前駆体混合物を、電気炉を用い大気中750℃で3時間加熱を行い、チタン酸リチウムを合成した。得られたチタン酸リチウムをサンプルミルで解砕し、試料1を得た。
【0061】
(実施例2)
実施例1において、チタン原料aに代えてチタン原料bを用いた以外は試料1の製造と同様にして、試料2のチタン酸リチウムを得た。
【0062】
(実施例3)
実施例1において、チタン原料aに代えてチタン原料cを用いた以外は試料1の製造と同様にして、試料3のチタン酸リチウムを得た。
【0063】
(実施例4)
実施例1において、チタン原料aに代えてチタン原料dを用いたこと、加熱温度を800℃としたこと以外は試料1の製造と同様にして、試料4のチタン酸リチウムを得た。
【0064】
(実施例5)
炭酸リチウム粉末(純度99.2%、体積平均粒径7.5μm、比表面積1.25m
2/g)をジェットミル(セイシン企業社製 STJ−200)を用いて体積平均粒径3.7μmの炭酸リチウム粉末とした。次いで、チタン原料eと、リチウム化合物として前記粉砕した炭酸リチウム粉末とを、Li/Tiモル比で0.81となるように原料を採取し、ヘンシェル混合器で10分間、1800rpmで混合し、前駆体混合物を調製した。次いで、前駆体混合物を、電気炉を用い大気中750℃で3時間加熱を行い、チタン酸リチウムを合成した。得られたチタン酸リチウムをジェットミルで解砕し、試料5を得た。
【0065】
(実施例6)
リチウム化合物として、前記炭酸リチウムの粉砕を行わずに用いた以外は、実施例5と同様して、試料6を得た。
【0066】
(実施例7)
実施例6において、大気中800℃で3時間の加熱を行った以外は実施例6と同様にして、試料7を得た。
【0067】
(実施例8)
リチウム化合物として、前記炭酸リチウムを体積平均粒径2.1μmまで粉砕したものを用いたこと以外は、実施例5と同様して、試料8を得た。
【0068】
(実施例9)
リチウム化合物として、前記炭酸リチウムを体積平均粒径5.0μm、まで粉砕したものを用いたこと以外は、実施例5と同様して、試料9を得た。
【0069】
(実施例10)
チタン原料eと、炭酸リチウム粉末(純度99.2%、体積平均粒径7.5μm、比表面積1.25m
2/g)をLi/Tiモル比で0.81となるように原料を採取し、更に、目的とするチタン酸リチウムと同じ結晶構造を有するチタン酸リチウム化合物としてチタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12、純度99%、一次粒子の平均粒径1μm)を原料100重量部に対して5重量部添加し、フレットミル(粉砕ローラー40kg、ローラー回転数50rmp)にて混合/粉砕/圧縮処理を15分行い、チタン酸リチウム前駆体を作製した。この前駆体の嵩密度は0.6g/cm
3であり、体積平均粒径は0.4μm、D90は6.2μm、粒度分布の頻度曲線のピークは一つであった。次いで、チタン酸リチウム前駆体を、電気炉を用い大気中750℃で3時間加熱し、チタン酸リチウムを合成した。得られたチタン酸リチウムをジェットミルで解砕し、試料10を得た。得られた試料10の嵩密度は0.6g/cm
3であった。比表面積は5m
2/gであった。
【0070】
(実施例11)
実施例10において、チタン原料、炭酸リチウム粉末、目的とするチタン酸リチウムと同じ結晶構造を有するチタン酸リチウム化合物としてチタン酸リチウムをヘンシェル混合器で5分間、1020rpmで混合した後、ジェットミル(セイシン企業社製 STJ−200)にて粉砕処理を行い、次いで、ローラーコンパクター(フロイントターボ社製 WP160×60)にて圧力(圧縮圧0.4ton/cm
2)をかけてチタン酸リチウム前駆体を作製したこと以外、実施例10と同様にして試料11を得た。
チタン酸リチウム前駆体の嵩密度は0.7g/cm
2であり、体積平均粒径は0.4μm、D90は2.2μm、粒度分布の頻度曲線のピークは一つであった。また、試料11の嵩密度は0.6g/cm
3であった。
【0071】
(実施例12)
実施例10において、チタン原料、炭酸リチウム粉末、目的とするチタン酸リチウムと同じ結晶構造を有するチタン酸リチウム化合物としてチタン酸リチウムをヘンシェル混合器で5分間、1020rpmで混合した後、ジェットミル(セイシン企業社製 STJ−200)にて粉砕処理を行って、チタン酸リチウム前駆体を作製したこと以外、実施例10と同様にして試料12を得た。
チタン酸リチウム前駆体の嵩密度は0.3g/cm
2であり、体積平均粒径は0.4μm、D90は2.2μm、粒度分布の頻度曲線のピークは一つであった。また、試料12の嵩密度は0.3g/cm
3であった。
【0072】
(実施例13)
実施例10において、チタン原料、炭酸リチウム粉末、目的とするチタン酸リチウムと同じ結晶構造を有するチタン酸リチウム化合物としてチタン酸リチウムをヘンシェル混合器で10分間、1800rpmで混合して、チタン酸リチウム前駆体を作製したこと以外、実施例10と同様にして試料13を得た。
チタン酸リチウム前駆体の嵩密度は0.3g/cm
2であり、体積平均粒径は0.9μm、D90は15.2μmで、粒度分布の頻度曲線には二つのピークが認められた。また、試料13の嵩密度は0.3g/cm
3であった。
【0073】
(実施例14)
実施例13において、チタン酸リチウム前駆体に、更にローラーコンパクターにて圧力(圧縮圧0.4ton/cm
2)をかけてチタン酸リチウム前駆体を作製すること、さらに、加熱温度を750℃としたこと以外は、実施例13と同様にしてチタン酸リチウム(試料14)を合成した。この前駆体の嵩密度は0.6g/cm
3であり、試料14の嵩密度は0.6g/cm
3であった。
【0074】
(実施例15)
実施例4において、チタン原料dに代えてチタン原料fを用いたこと以外は実施例4と同様にして、試料15のチタン酸リチウムを得た。
【0075】
(比較例1)
実施例4において、チタン原料dに代えてチタン原料gを用いたこと以外は実施例4と同様にして、試料16のチタン酸リチウムを得た。
【0076】
(比較例2)
実施例1において、チタン原料aに代えてチタン原料hを用いたこと、加熱温度を900℃としたこと以外は実施例1と同様にして、試料17のチタン酸リチウムを得た。
【0077】
(評価1)
得られた試料1〜17について、粉末X線回折装置(リガク社製 UltimaIV Cukα線使用)を用いて粉末X線回折パターンを測定した。その結果、いずれの試料もLi
4Ti
5O
12を主成分とすることを確認した。また、測定されたピーク強度のうち、Xとして、2θ=18°付近のLi
4Ti
5O
12のピーク強度を、Yとして2θ=27°付近のルチル型TiO
2のピーク強度、2θ=25°付近のアナターゼ型TiO
2のピーク強度及び2θ=44°付近のLi
2TiO
3のピーク強度を用いて前述の単相率を算出した。結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
比表面積が50〜450m
2/gであるチタン酸化物を含むチタン原料を用いると、750℃あるいは800℃という加熱温度が低い条件でも高い単相率のチタン酸リチウムが得られることがわかった。一方、比表面積が50m
2/g未満であるチタン原料を用いた場合、単相率を高めるには加熱温度を高くする必要があることがわかった。具体的には比表面積が12m
2/gであるチタン原料を用いた場合、加熱温度を900℃という非常に高い温度としても単相率が94%と低く(試料17)、チタン酸リチウム粒子同士の焼結が進んでおり、解砕も困難であった。また、比表面積が27m
2/gであるチタン原料を用いた場合、加熱温度を800℃としても単相率が95%と低いことがわかった(試料16)。
【0080】
(評価3)
試料5及び試料6について、BET一点法(窒素吸着、ユアサアイオニクス社製モノソーブ)にて比表面積を測定した。その結果、比表面積はそれぞれ4.9m
2/g、3.0m
2/gであった。このことから、本発明の製造方法により、チタン酸リチウム粒子同士の焼結を抑制し、粉砕が容易で比表面積の低下が抑制されたチタン酸リチウムを合成できることがわかる。
【0081】
(評価4)
電池特性の評価
(1)蓄電デバイスの作成
試料5のチタン酸リチウムと、導電剤としてのアセチレンブラック粉末、及び結着剤としてのポリフッ化ビニリデン樹脂を重量比で100:5:7で混合し、乳鉢で練り合わせ、ペーストを調製した。このペーストをアルミ箔上に塗布し、120℃の温度で10分乾燥した後、直径12mmの円形に打ち抜き、17MPaでプレスして作用極とした。電極中に含まれる活物質量は、3mgであった。
この作用極を120℃の温度で4時間真空乾燥した後、露点−70℃以下のグローブボックス中で、密閉可能なコイン型セルに正極として組み込んだ。コイン型セルには材質がステンレス製(SUS316)で外径20mm、高さ3.2mmのものを用いた。負極には厚み0.5mmの金属リチウムを直径12mmの円形に成形したものを用いた。非水電解液として1モル/リットルとなる濃度でLiPF
6を溶解したエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶液(体積比で1:2に混合)を用いた。
作用極はコイン型セルの下部缶に置き、その上にセパレータとして多孔性ポリプロピレンフィルムを置き、その上から非水電解液を滴下した。さらにその上に負極と、厚み調整用の0.5mm厚スペーサー及びスプリング(いずれもSUS316製)をのせ、ポリプロピレン製ガスケットのついた上部缶を被せて外周縁部をかしめて密封し、本発明の蓄電デバイス(試料A)を得た。
【0082】
チタン酸リチウムとして試料6を用いたこと以外は、試料Aの蓄電デバイスと同様の方法で蓄電デバイス(試料B)を得た。
【0083】
(2)レート特性の評価
上記で作製した蓄電デバイス(試料A,B)について、種々の電流量で放電容量を測定して容量維持率(%)を算出した。測定は、電圧範囲を1〜3Vに、充電電流は0.25Cに、放電電流は0.25C〜30Cの範囲に設定して行った。環境温度は25℃とした。容量維持率は、0.25Cでの放電容量の測定値をX
0.25、0.5C〜30Cの範囲での測定値をX
nとすると、(X
n/X
0.25)×100の式で算出した。尚、ここで1Cとは、1時間で満充電できる電流値を言い、本評価では、0.48mAが1Cに相当する。容量維持率が高いほうが、レート特性が優れている。結果を、
図1に示す。蓄電デバイス(試料A、B)は、いずれもレート特性に優れているが、試料Aのほうが優れていることがわかった。