特許第5990537号(P5990537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990537
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20160901BHJP
   C08C 19/22 20060101ALI20160901BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20160901BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   C08L15/00
   C08C19/22
   C08K5/548
   B60C1/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-550290(P2013-550290)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(86)【国際出願番号】JP2012082802
(87)【国際公開番号】WO2013094609
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2011-277358(P2011-277358)
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 道夫
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−225809(JP,A)
【文献】 特開2005−344039(JP,A)
【文献】 特開平01−217047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 15/00−15/02
B60C 1/00
C08C 19/00−19/44
C08K 5/00−5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるアクリルアミド化合物で変性された変性ジエン系ゴムAと、
【化1】
(式中、Rは水素又はメチル基を表す。R及びR炭素数1〜4のアルキル基を表す。nは2〜5の整数を表す。
記式(III)で表される変性化合物で変性された変性ジエン系ゴムBとを含み、かつ該変性ジエン系ゴムA及びB全体の重量平均分子量が30万〜140万であり、
【化2】
(式中、R〜Rは同一若しくは異なって炭素数が1〜8のアルキル基を表す。R〜R12は同一若しくは異なって炭素数が1〜8のアルコキシ基又はアルキル基を表す。p〜rは同一若しくは異なって1〜8の整数を表す。)
更に、メルカプト基を有するシランカップリング剤を含むタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記変性化合物におけるR〜Rはメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基、R〜R12はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基、p〜rは2〜5の整数である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記メルカプト基を有するシランカップリング剤は、下記式(1)で表される化合物、及び/又は下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化3】
(式(1)中、R101〜R103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は−O−(R111−O)−R112(z個のR111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。z個のR111はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。zは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R101〜R103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R104は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【化4】
【化5】
(式(2)及び(3)中、R201は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R202は分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を表す。R201とR202とで環構造を形成してもよい。)
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用の空気入りタイヤに要求される特性は、低燃費性のほか、耐摩耗性やウェットスキッド性能など多岐にわたり、これらの性能を向上するために様々な工夫がなされている。例えば、低燃費配合としてシリカ配合ゴム組成物が使用されているが、シリカはカーボンブラックに比べてゴムとの親和性が低いため、シランカップリング剤が更に添加されている。
【0003】
シランカップリング剤として汎用されているビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドやビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを使用することで、シリカの分散性が向上し、力学特性が改善されるが、多量の添加が必要なためにコストが大きく上昇し、また、多量に添加しても充分な分散性が得られない場合もある。更に、シリカとシランカップリング剤を充分に反応させるために高温で混練すると、ゴムのゲル化やゴム焼けが発生する傾向もある。
【0004】
一方、メルカプト基を有するシランカップリング剤は、反応性が高く、シリカ分散性の向上効果が高いものとして知られているが、スコーチタイムが短くなり、仕上げ練りや押し出し工程でゴム焼けが起こりやすい。そのため、特に、NB、BR等の低極性ゴムに比較してスコーチしやすいSBR配合系において適用することは難しい。
【0005】
また、特許文献1には、シリカを配合し、転がり抵抗、耐摩耗性を悪化させることなく、ウェットグリップ性能を向上できるタイヤ用ゴム組成物が開示されているが、良好な加工性を維持しながら、これらの性能をバランスよく改善する点について、未だに改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-31244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、優れた加工性を得つつ、転がり抵抗、耐摩耗性及びウェットスキッド性能をバランスよく改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記式(I)で表されるアクリルアミド化合物で変性された変性ジエン系ゴムAと、
【化1】
(式中、Rは水素又はメチル基を表す。R及びRはアルキル基を表す。nは整数を表す。)
下記式(II)で表されるケイ素若しくはスズ化合物及び下記式(III)で表される変性化合物、又は下記式(III)で表される変性化合物で変性された変性ジエン系ゴムBとを含み、かつ該変性ジエン系ゴムA及びB全体の重量平均分子量が30万〜140万であり、
【化2】
(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基を表す。Mはケイ素又はスズを表す。Xはハロゲンを表す。aは0〜2の整数を表す。bは2〜4の整数を表す。)
【化3】
(式中、R〜Rは同一若しくは異なって炭素数が1〜8のアルキル基を表す。R〜R12は同一若しくは異なって炭素数が1〜8のアルコキシ基又はアルキル基を表す。p〜rは同一若しくは異なって1〜8の整数を表す。)
更に、メルカプト基を有するシランカップリング剤を含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0009】
前記変性ジエン系ゴムA及びBは、炭化水素溶媒中で、共役ジエンモノマー、又は共役ジエンモノマー及び芳香族ビニルモノマーをアルカリ金属系触媒を用いて重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、前記アクリルアミド化合物と、前記ケイ素若しくはスズ化合物及び前記変性化合物、又は前記変性化合物とを反応させることにより得られる混合物であることが好ましい。
【0010】
前記変性化合物におけるR〜Rはメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基、R〜R12はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基、p〜rは2〜5の整数であることが好ましい。
【0011】
前記メルカプト基を有するシランカップリング剤は、下記式(1)で表される化合物、及び/又は下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物であることが好ましい。
【化4】
(式(1)中、R101〜R103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は−O−(R111−O)−R112(z個のR111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。z個のR111はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。zは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R101〜R103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R104は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【化5】
【化6】
(式(2)及び(3)中、R201は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R202は分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を表す。R201とR202とで環構造を形成してもよい。)
【0012】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定のアクリルアミド化合物で末端が変性された変性ジエン系ゴムAと、ケイ素若しくはスズ化合物及び特定の変性化合物、又は該変性化合物で変性された変性ジエン系ゴムBとを含み、かつ該ゴムAとB全体の重量平均分子量が特定範囲のものを使用し、更にメルカプト基を有するシランカップリング剤とを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、優れた加工性を得ながら、転がり抵抗、耐摩耗性及びウェットスキッド性能をバランスよく改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物では、ゴム成分として、後述の変性ジエン系ゴムAとBからなる全体の重量平均分子量が特定範囲のブレンド物が使用されるとともに、メルカプト基を有するシランカップリング剤が配合されている。これにより、シリカとシランカップリング剤の反応性が高く、シリカが均一に分散されるため、転がり抵抗、耐摩耗性及びウェットスキッド性能の性能バランスを顕著に改善できる。また、メルカプト基を有するシランカップリング剤を配合しているにもかかわらず、スコーチタイムが良好であるため、優れた加工性も得られる。従って、本発明では、シリカ配合ゴムにおいて、前記ブレンド物とメルカプト基を有するシランカップリング剤を併用することで、良好な加工性を得ながら、転がり抵抗、耐摩耗性及びウェットスキッド性能の性能バランスを相乗的に改善できる。
【0015】
このような改善効果は、以下の作用機能により発揮されると推察される。
上記変性ジエン系ゴムA及びBのブレンド物は、カーボンブラックとシリカの両フィラーに対して強い相互作用があり、かつフィラーとの共有結合を形成しない。また、上記アクリルアミド化合物で末端変性したゴムAによってシリカやカーボンブラックとの相互作用を強化できるが、該ゴムAのみでは低分子成分が多く、フィラー凝集塊の破壊効果が期待できないため、フィラーの分散性を高めることが難しい。これに対し本発明では、更に上記変性化合物で末端変性したゴムBも使用しているので、フィラー、特にシリカとの相互作用を一層強化でき、また、このゴムBの分子は、シリカとの相互作用を有しながら、末端変性基同士が相互作用してポリマーのカップリングが起こり、高分子量化する。そのため、フィラー凝集塊が充分に破壊されることで、ゴムA及びBによるフィラーの分散性向上効果が効率的、かつ相乗的に発揮される。
【0016】
更に、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等の従来ゴム工業で使用されているシランカップリング剤は、混練り温度が高温(例えば、130℃以上)になると、架橋が進行し、加工が困難になるが、本発明では、上記ブレンド物にメルカプト基を有するシランカップリング剤を添加しているため、このような問題を防止することが可能となり、結果として、シリカとシランカップリング剤との反応性が向上し、シリカの分散性が更に向上する。以上の作用効果が発揮されることで、フィラーの分散性が非常に高まり、良好な加工性を得ながら、転がり抵抗、耐摩耗性及びウェットスキッド性能の性能バランスを顕著に改善できるものと推察される。
【0017】
本発明のゴム組成物は、変性ジエン系ゴムA及びBを含み、かつ該ゴムA及びB全体の重量平均分子量が特定範囲である。
上記変性ジエン系ゴムAは、下記式(I)で表されるアクリルアミド化合物で変性されたジエン系ゴムである。これは、ポリマーの末端がアクリルアミド化合物で変性されたジエン系ゴムである。
【化7】
(式中、Rは水素又はメチル基を表す。R及びRはアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【0018】
式(I)において、R及びRは、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。nは、好ましくは2〜5の整数である。
【0019】
上記アクリルアミド化合物の具体例としては、N,N−ジメチルアミノメチルアクリルアミド、N,N−エチルメチルアミノメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノメチルアクリルアミド、N,N−エチルプロピルアミノメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノメチルアクリルアミド、N,N−ブチルプロピルアミノメチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアミノメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−エチルメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−エチルプロピルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ブチルプロピルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−エチルメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−エチルプロピルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ブチルプロピルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチルアクリルアミド、N,N−エチルメチルアミノブチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチルアクリルアミド、N,N−エチルプロピルアミノブチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノブチルアクリルアミド、N,N−ブチルプロピルアミノブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアミノブチルアクリルアミド;これらのメタクリルアミドなどが挙げられる。中でも、前記性能バランスを改善できる点から、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが好ましい。
【0020】
上記変性ジエン系ゴムBは、下記式(II)で表されるケイ素若しくはスズ化合物及び下記式(III)で表される変性化合物で変性されたジエン系ゴム、又は下記式(III)で表される変性化合物で変性されたジエン系ゴムである。前者はケイ素若しくはスズ化合物でカップリングされたポリマーの末端が変性化合物で変性されたジエン系ゴムであり、後者はポリマーの末端が変性化合物で変性されたジエン系ゴムである。
【化8】
(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基を表す。Mはケイ素又はスズを表す。Xはハロゲンを表す。aは0〜2の整数を表す。bは2〜4の整数を表す。)
【化9】
(式中、R〜Rは同一若しくは異なって炭素数が1〜8のアルキル基を表す。R〜R12は同一若しくは異なって炭素数が1〜8のアルコキシ基又はアルキル基を表す。p〜rは同一若しくは異なって1〜8の整数を表す。)
【0021】
式(II)で表されるケイ素化合物及びスズ化合物は、ジエン系ゴムのカップリング剤として機能する。ケイ素化合物としては、テトラクロロケイ素、テトラブロモケイ素、メチルトリクロロケイ素、ブチルトリクロロケイ素、ジクロロケイ素、ビストリクロロシリルケイ素などが挙げられる。スズ化合物としては、テトラクロロスズ、テトラブロモスズ、メチルトリクロロスズ、ブチルトリクロロスズ、ジクロロスズ、ビストリクロロシリルスズなどが挙げられる。
【0022】
式(III)において、R〜Rはメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が好ましく、R〜R12はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基が好ましく、p〜rは2〜5の整数が好ましい。これにより、前記性能バランスを改善できる。
【0023】
式(III)で表される変性化合物の具体例としては、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−トリプロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−トリブトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。中でも、前記性能バランスを改善できる点から、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが好ましい。
【0024】
上記変性ジエン系ゴムA及びBとしては、例えば、該ゴムA及びBを別途それぞれ調製した後に混合することにより得られる。この場合、変性ジエン系ゴムA、Bはそれぞれ以下の製法などにより調製できる。
【0025】
変性ジエン系ゴムAは、炭化水素溶媒中で、共役ジエンモノマー、又は共役ジエンモノマー及び芳香族ビニルモノマーをアルカリ金属系触媒を用いて重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、上記式(I)で表されるアクリルアミド化合物を反応させることにより調製できる。
【0026】
共役ジエンモノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン(ピペリン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。中でも、得られる重合体の物性、工業的に実施する上での入手性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0027】
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどが挙げられる。中でも、得られる重合体の物性、工業的に実施する上での入手性の観点から、スチレンが好ましい。
【0028】
炭化水素溶媒としては、アルカリ金属系触媒を失活させないものであれば特に限定されず、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素が挙げられる。具体的には、炭素数3〜12個を有するプロパン、n−ブタン、iso−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0029】
アルカリ金属系触媒としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどの金属、これらの金属を含有する炭化水素化合物などが挙げられる。好ましいアルカリ金属触媒としては、2〜20個の炭素原子を有するリチウム又はナトリウム化合物が挙げられ、具体的には、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−フロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウムなどが挙げられる。
【0030】
重合用モノマーとしては、共役ジエンモノマーのみを用いてもよく、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを併用してもよい。共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを併用する場合の両者の比率は、共役ジエンモノマー/芳香族ビニルモノマーの質量比で50/50〜90/10が好ましく、更に好ましくは55/45〜85/15である。
【0031】
重合に際しては、アルカリ金属系触媒、炭化水素溶媒、ランダマイザー、共役ジエン単位のビニル結合含有量調節剤など通常使用されているものを用いることが可能であり、重合体の製造方法は特に限定されない。
【0032】
共役ジエン部のビニル結合含有量を調節するためには、ルイス塩基性化合物として、各種の化合物を使用できるが、エーテル化合物又は第三級アミンが、工業的実施上の入手容易性の点で好ましい。エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどの脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテルなどの脂肪族ジエ−テルが挙げられる。また、第三級アミン化合物としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどが挙げられる。
【0033】
アルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、上記アクリルアミド化合物を添加して変性ジエン系ゴムAを製造する際に使用する量は、アルカリ金属を付加する際に使用するアルカリ金属系触媒1モル当たり、通常0.05〜10モル、好ましくは0.2〜2モルである。
【0034】
上記アクリルアミド化合物とアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体との反応は、迅速に起きるので、反応温度及び反応時間は広範囲に選択できるが、一般的には、室温〜100℃、数秒〜数時間である。反応は、上記活性共役ジエン系重合体とアクリルアミド化合物とを接触させればよく、例えば、アルカリ金属系触媒を用いて、ジエン系重合体を調製し、該重合体溶液中に該アクリルアミド化合物を所定量添加する方法などが挙げられる。
【0035】
反応終了後、反応溶媒中から凝固剤の添加又はスチーム凝固など通常の溶液重合によるゴムの製造において使用される凝固方法がそのまま用いられ、凝固温度も何ら制限されない。得られた変性ジエン系ゴムAは、分子末端にアクリルアミド化合物が導入されている。
【0036】
一方、変性ジエン系ゴムBは、炭化水素溶媒中で、共役ジエンモノマー、又は共役ジエンモノマー及び芳香族ビニルモノマーをアルカリ金属系触媒を用いて重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、(a)上記式(II)で表されるケイ素若しくはスズ化合物(カップリング剤)、次いで、上記式(III)で表される変性化合物を反応させること、又は、(b)上記式(III)で表される変性化合物を反応させることにより調製できる。
【0037】
アルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体は、変性ジエン系ゴムAの調製と同様に得られる。また、上記(a)において、ケイ素若しくはスズ化合物は、通常、活性共役ジエン系重合体の末端アルカリ金属原子1当量に対してハロゲン原子0.01〜0.4当量の範囲で用いられる。カップリング反応は通常20℃〜100℃の範囲で行われる。更に、上記(a)(b)における変性化合物の反応は、前述のアクリルアミド化合物の反応と同様の方法で実施できる。得られた変性ジエン系ゴムBは、分子末端に変性化合物が導入されている。
【0038】
また、上記変性ジエン系ゴムA及びBとしては、該ゴムA及びBを1バッチで調製して得られる混合物が好ましい。この場合、例えば、上記アルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体に対して、上記アクリルアミド化合物と、上記ケイ素若しくはスズ化合物及び上記変性化合物、又は上記変性化合物とを反応させることにより該混合物を調製できる。
【0039】
具体的には、前述と同様の方法によりアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体を調製し、(c)該重合体溶液中にアクリルアミド化合物を添加した後、必要に応じてケイ素若しくはスズ化合物(カップリング剤)を添加し、次いで変性化合物を添加すること、又は(d)該重合体溶液中に、アクリルアミド化合物、変性化合物、必要に応じてケイ素若しくはスズ化合物を同時に添加すること、などにより上記混合物が得られる。
【0040】
この場合、アクリルアミド化合物、変性化合物との反応、カップリング反応は前述と同様の方法で実施できる。得られた混合物は、分子末端にアクリルアミド化合物が導入された変性ジエン系ゴムA、分子末端に変性化合物が導入された変性ジエン系ゴムBを含む。
【0041】
本発明のゴム組成物で使用される変性ジエン系ゴムA及びBは、両ゴム全体の重量平均分子量(該変性ジエン系ゴムA及びBからなる組成物全体で測定した重量平均分子量)が30万以上、好ましくは50万以上、より好ましくは60万以上である。該(Mw)は140万以下、好ましくは120万以下、より好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、前記性能バランスを改善できる。
【0042】
変性ジエン系ゴムA及びBの全体の分子量分布(Mw/Mn)は、4以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。4を超えると、フィラーの分散性が悪化し、tanδが増大(転がり抵抗特性が悪化)する傾向がある。
【0043】
なお、本明細書において、上記両ゴム、後述の芳香族ビニル重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値をもとに標準ポリスチレン換算により求めたものである。
【0044】
変性ジエン系ゴムA及びBとしては、前記性能バランスを改善できる点から、変性ブタジエンゴム(変性BR)、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)が好ましく、変性SBRがより好ましい。
【0045】
変性ジエン系ゴムA及びBが変性SBRの場合、該ゴムA及びBの全体のブタジエン部におけるビニル結合量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。20質量%未満の変性ジエン系ゴムは、重合(製造)が困難になる傾向がある。また、該ビニル結合量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。60質量%を超えると、フィラーの分散性が悪化する傾向がある。なお、本明細書において、ビニル結合量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0046】
変性ジエン系ゴムA及びBが変性SBRの場合、該ゴムA及びBの全体のスチレン含有量は、好ましくは10質量%、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。10質量%未満であると、ウェットスキッド性能が悪化する傾向がある。また、該スチレン含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。50質量%を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。なお、本明細書において、スチレン含有量は、H−NMR測定によって算出される。
【0047】
本発明のゴム組成物において、変性ジエン系ゴムA及びBの配合比(A/B(質量比))は、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20である。下限未満であると転がり抵抗特性が低下し、上限を超えると耐摩耗性が低下し、前記性能バランスが悪化する傾向がある。
【0048】
また、ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の変性ジエン系ゴムA及びBの合計含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。2質量%未満であると、転がり抵抗特性及び耐摩耗性を充分改善できないおそれがある。該合計含有量の上限は特に限定されず、100質量%でもよいが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0049】
本発明で使用できる他のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)などのジエン系ゴムを使用することができる。中でも、相溶性が高く、前記性能バランスに優れる点から、SBR、BRを使用することが好ましい。
【0050】
SBRとしては、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。BRとしては、高シス含有量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBRなどを使用できる。
【0051】
SBR(非変性)を配合する場合、該SBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。20質量%未満であると、加工性が悪化する傾向がある。該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。90質量%を超えると、シリカが分散しにくくなり、ウェットスキッド性能と耐摩耗性のバランスが悪くなる傾向がある。
なお、SBR(非変性)の好適なスチレン量は、変性ジエン系ゴムA及びBが変性SBRの場合と同様である。
【0052】
本発明で変性SBRや非変性SBRを使用する場合、ゴム成分100質量%中の全SBRの合計含有量は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%である。75質量%未満であると、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0053】
BR(非変性)を配合する場合、該BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。該含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。40質量%を超えると、ウェットスキッド性能が低下する傾向がある。
【0054】
本発明のゴム組成物は、充填剤としてカーボンブラック及び/又はシリカ(好ましくは両成分)を含有することが好ましい。
【0055】
カーボンブラックの配合により、補強性を高め、耐摩耗性をより改善できる。カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどを用いることができる。カーボンブラックは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上である。50m/g未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましい。200m/gを超えると、カーボンブラックが分散しにくくなり、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0057】
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、好ましくは60ml/100g以上、より好ましくは100ml/100g以上である。60ml/100g未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。また、カーボンブラックのDBP吸油量は、好ましくは150ml/100g以下、より好ましくは120ml/100g以下である。150ml/100gを超えると、加工性、分散性が低下する傾向がある。
なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6217−4:2001によって求められる。
【0058】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。10質量部未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、該カーボンブラックの含有量は好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。100質量部を超えると、カーボンブラックが分散しにくくなり、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。
【0059】
シリカの配合により、補強性を高めながら、転がり抵抗特性を改善できる。シリカとしては、湿式法で製造されたシリカ、乾式法で製造されたシリカなどが挙げられる。シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは120m/g以上、より好ましくは150m/g以上である。120m/g未満であると、充分な補強性が得られない傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。250m/gを超えると、シリカの分散性が低下するため、ヒステリシスロスが増大し、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTMD3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0061】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは35質量部以上である。20質量部未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、該シリカの含有量は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。120質量部を超えると、シリカの分散性が低下するため、転がり抵抗特性が悪化する傾向がある。
【0062】
本発明のゴム組成物において、カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは70質量部以上である。40質量部未満であると、充分な補強性が得られない傾向がある。該合計含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは110質量部以下である。150質量部を超えると、フィラーの分散性が低下する傾向がある。
【0063】
また、カーボンブラック及びシリカの両フィラーを含む場合、カーボンブラック及びシリカ中のシリカの含有率は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。一方、該含有率は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。上記範囲では、本発明の効果が充分に得られる。
【0064】
本発明では、メルカプト基を有するシランカップリング剤が使用される。上記変性ジエン系ゴムA及びBに対してシリカとメルカプト基を有するシランカップリング剤の両成分を配合することでシリカの分散性と耐スコーチ性を両立できるため、良好な加工性を得ながら、転がり抵抗、耐摩耗性及びウェットスキッド性能の性能バランスを顕著に改善できる。
【0065】
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、下記式(1)で表される化合物、及び/又は下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物を好適に使用できる。
【化10】
(式(1)中、R101〜R103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は−O−(R111−O)−R112(z個のR111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。z個のR111はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。zは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R101〜R103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R104は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【化11】
【化12】
(式(2)及び(3)中、R201は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを表す。R202は分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を表す。R201とR202とで環構造を形成してもよい。)
【0066】
以下、式(1)で表される化合物について説明する。
【0067】
式(1)で表される化合物を使用することで、シリカが良好に分散し、低燃費性、耐摩耗性、ウェットスキッド性能を顕著に改善できる。また、良好なスコーチタイムも得られ、加工性にも優れている。
【0068】
101〜R103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は−O−(R111−O)−R112で表される基を表す。本発明の効果が良好に得られるという点から、R101〜R103は、少なくとも1つが−O−(R111−O)−R112で表される基であることが好ましく、2つが−O−(R111−O)−R112で表される基であり、かつ、1つが分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0069】
101〜R103の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基などがあげられる。
【0070】
101〜R103の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトシキ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトシキ基、tert−ブトシキ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、へプチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基などがあげられる。
【0071】
101〜R103の−O−(R111−O)−R112において、R111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基を表す。該炭化水素基としては、例えば、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基などがあげられる。中でも、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基が好ましい。
【0072】
111の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。
【0073】
111の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などがあげられる。
【0074】
111の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。
【0075】
111の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などがあげられる。
【0076】
zは1〜30(好ましくは2〜20、より好ましくは3〜7、更に好ましくは5〜6)の整数を表す。
【0077】
112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。中でも、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
【0078】
112の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基などがあげられる。
【0079】
112の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基などがあげられる。
【0080】
112の炭素数6〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などがあげられる。
【0081】
112の炭素数7〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などがあげられる。
【0082】
−O−(R111−O)−R112で表される基の具体例としては、例えば、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1225、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1429、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327などがあげられる。中でも、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327が好ましい。
【0083】
104の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜5)のアルキレン基としては、例えば、R111の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基をあげることができる。
【0084】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランや、下記式で表される化合物(EVONIK−DEGUSSA社製のSi363)などがあげられ、下記式で表される化合物を好適に使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化13】
【0085】
次に、式(2)で示される結合単位Aと式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物について説明する。
【0086】
式(2)で示される結合単位Aと式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物は、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
【0087】
また、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは、結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの−C15部分が結合単位Bの−SH基を覆うため、ポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
【0088】
上述した加工中の粘度上昇を抑制する効果や、スコーチ時間の短縮を抑制する効果を高めることができるという点から、上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、また、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、また、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(2)、(3)と対応するユニットを形成していればよい。
【0089】
201のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などがあげられる。
【0090】
201の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などがあげられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
【0091】
201の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基などがあげられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0092】
201の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基などがあげられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0093】
202の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
【0094】
202の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などがあげられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0095】
202の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0096】
式(2)で示される結合単位Aと式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの−C15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
【0097】
式(2)で示される結合単位Aと式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60などを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
メルカプト基を有するシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。0.5質量部未満では、シリカを良好に分散できなくなるおそれがある。また、該配合量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。20質量部以上に添加量を増やしても、シリカの分散を向上させる効果が得られず、コストが不必要に増大する傾向がある。また、スコーチタイムが短くなり、混練りや押し出しでの加工性が悪化する傾向がある。
【0099】
本発明では、通常、硫黄(架橋剤)が使用される。
硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが挙げられる。
【0100】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上である。0.1質量部未満であると、加硫速度が遅くなり、生産性が悪化するおそれがある。該含有量は、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.8質量部以下である。2.0質量部を超えると、ゴム物性変化が大きくなるおそれがある。
【0101】
本発明のゴム組成物は、上記成分の他に、オイルなどの軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等、必要に応じた添加剤を適宜配合してもよい。
【0102】
本発明のゴム組成物は、トレッド、サイドウォール、インナーライナーなどのタイヤ部材として使用できるが、中でも、耐摩耗性及びウェットスキッドを両立できる点から、トレッドとして好適に使用できる。また、これを用いたタイヤは乗用車、商用車、2輪車などに好適に適用できる。
【0103】
本発明のゴム組成物は、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等の混練機で上記各成分を混練りし、その後加硫する方法等、一般的な方法で製造できる。中でも、ゴム成分、フィラー(補強剤)、シランカップリング剤及び軟化剤を混合する工程1、該工程1で得られた混合物、ステアリン酸、酸化亜鉛及び老化防止剤を混合する工程2、並びに、該工程2で得られた混合物、加硫剤及び加硫促進剤を混合する工程3を含む混練工程を有する製法で製造することが好ましい。一般には、工程1と2を分けて混練することなく、1つの工程で混練されるが、本発明では、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸などの薬品がシランカップリング剤の反応効率を下げることから、これらの成分、更に必要に応じてワックスは、前記工程2において混練することが好ましい。
【0104】
このような工程1〜3を含む製法の場合、工程1における混練温度は130〜160℃が好ましく、工程2における混練温度は130〜155℃が好ましく、工程3における混練温度は70〜120℃が好ましい。混練温度がそれぞれの上限値を超えると、ゴムの劣化が起こる傾向がある。
【0105】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのコンポーネント(トレッドなど)の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、空気入りタイヤを製造できる。
【実施例】
【0106】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0107】
以下、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
変性ジエン系ゴムA及びB:下記製造例1〜10(各ゴムのオイル量:15質量%)
SBR:JSR(株)製のSBR1502(スチレン含有量:23.5質量%)
BR:宇部興産(株)製のBR130B
シリカ:EVONIK−DEGUSSA社製のウルトラジルVN3(NSA:175m/g)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックI(NSA:114m/g、DBP吸油量:114ml/100g)
シランカップリング剤1:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤2:Momentive社製のNXT−Z45(結合単位A及び結合単位Bを含む化合物(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
シランカップリング剤3:EVONIK−DEGUSSA社製のSi363
オイル:JX日鉱日石エネルギ−(株)製のJOMOプロセスX140
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製の椿
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミサルファー(2硫化炭素による不溶分60%、オイル分10質量%を含む不溶性硫黄)
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
【0108】
(製造例1)
内容積20リットルのステンレス製重合反応機を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後に1,3−ブタジエン548g、スチレン235g、テトラヒドロフラン8.89g、ヘキサン10.2kg、n−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液、5.22mmol)を添加し、攪拌下に65℃で3時間重合を行った。重合完了後、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを1.57mmol(0.245g)、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを3.66mmol(2.251g)添加した。攪拌下に30分間反応させた後、10mlのメタノールを加えて、更に5分間攪拌した。その後、重合反応容器の内容物を取り出し、2,6−ジ−t−フチル−p−クレゾール(住友化学(株)製のスミライザーBHT:以下同様)を10g、オイルを141g加え、ヘキサンの大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、ゴム混合物1を得た。
【0109】
(製造例2)
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを0.52mmol(0.082g)、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを4.70mmol(2.894g)に変更した以外、製造例1と同様に行い、ゴム混合物2を得た。
【0110】
(製造例3)
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを4.70mmol(0.734g)、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを0.52mmol(0.322g)に変更した以外、製造例1と同様に行い、ゴム混合物3を得た。
【0111】
(製造例4)
テトラヒドロフランを31.12g、n−ブチルリチウムを(n−ヘキサン溶液、18.28mmol)、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを1.83mmol(0.286g)、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを16.45mmol(10.131g)に変更した以外、製造例1と同様に行い、ゴム混合物4を得た。
【0112】
(製造例5)
テトラヒドロフランを31.12g、n−ブチルリチウムを(n−ヘキサン溶液、18.28mmol)、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを16.45mmol(2.57g)、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを1.83mmol(1.126g)に変更した以外、製造例1と同様に行い、ゴム混合物5を得た。
【0113】
(製造例6)
テトラヒドロフランを4.15g、n−ブチルリチウムを(n−ヘキサン溶液、2.44mmol)、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを0.24mmol(0.038g)、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを2.19mmol(1.351g)に変更した以外、製造例1と同様に行い、ゴム混合物6を得た。
【0114】
(製造例7)
テトラヒドロフランを4.15g、n−ブチルリチウムを(n−ヘキサン溶液、2.44mmol)、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを2.19mmol(0.343g)、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを0.24mmol(0.15g)に変更した以外、製造例1と同様に行い、ゴム混合物7を得た。
【0115】
(製造例8)
テトラヒドロフランを4.15g、n−ブチルリチウムを(n−ヘキサン溶液、2.44mmol)、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを0mmol(0g)、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを2.44mmol(1.501g)に変更した以外、製造例1と同様に行い、ゴム混合物8を得た。
【0116】
(製造例9)
テトラヒドロフランを4.15g、n−ブチルリチウムを(n−ヘキサン溶液、2.44mmol)、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを2.44mmol(0.381g)、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを0mmol(0g)に変更した以外、製造例1と同様に行い、ゴム混合物9を得た。
【0117】
(製造例10)
内容積20リットルのステンレス製重合反応機を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後に1,3−ブタジエン548.3g、スチレン235g、テトラヒドロフラン8.89g、ヘキサン10.2kg、n−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液、5.22mmol)を添加し、攪拌下に65℃で3時間重合を行った。重合完了後、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを5.22mmol(0.816g)添加した。攪拌下に30分間反応させた後、10mlのメタノールを加えて、更に5分間攪拌した(変性ジエン系ゴムA)。
また別途、内容積20リットルのステンレス製重合反応機を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した後に1,3−ブタジエン548.3g、スチレン235g、テトラヒドロフラン8.89g、ヘキサン10.2kg、n−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液、5.22mmol)を添加し、攪拌下に65℃で3時間重合を行った。重合完了後、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを5.22mmol(3.216g)添加した。攪拌下に30分間反応させた後、10mlのメタノールを加えて、更に5分間攪拌した(変性ジエン系ゴムB)。
その後、それぞれの重合反応容器の内容物を取り出して、変性ジエン系ゴムA及びBの配合比(A/B(質量比))が30/70になるように混合し、2,6−ジ−t−フチル−p−クレゾールを10g、オイルを141g加え、ヘキサンの大部分を蒸発させた後、55℃で12時間減圧乾燥し、ゴム混合物10を得た。
【0118】
<実施例及び比較例>
表1、2に示す配合内容(硫黄量は、セイミサルファー中に含まれる純硫黄量を示す)に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、配合材料のうち、工程1に示す材料を表に示す排出温度になるように5分間混練りし、混練り物を得た。次に、工程1で得られた混練り物に工程2に示す材料を添加し、140℃で3分間混練りし、混練り物を得た。続いて、工程2で得られた混練り物に工程3に示す材料を添加し、オープンロールを用いて、80℃で3分間混練りして、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を150℃で20分間プレス加硫し、加硫ゴムシートを得た。
【0119】
また、得られた未加硫ゴム組成物を用いて、厚さ10mmのトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部位と貼り合わせ、170℃の条件下で15分間加硫することにより、試験用タイヤを製造した(タイヤサイズ:215/45ZR17)。
【0120】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴムシート、試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表1、2に示す。
【0121】
(スコーチタイム)
未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に従って未加硫ゴム物理試験方法のムーニースコーチ試験を行い、130.0±0.5℃でのt10[分]を測定し、それを、基準比較例を100とした指数で示した。スコーチタイムが短くなるとゴム焼けの問題が起こる傾向がある。今回の評価では、指数が70以下になると、仕上げ練りや押し出し工程等でゴム焼けの問題が起こる可能性がある。
【0122】
(転がり抵抗指数)
加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で各配合のtanδを測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れる。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0123】
(ウェットスキッド性能)
試験用タイヤを車輌(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面で初速度100km/hからの制動距離を求めた。比較例1の制動距離を100として、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、ウェットスキッド性能が良好である。
ウェットスキッド性能=(比較例1の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
【0124】
(耐摩耗性能)
試験用タイヤを車輌(国産FF2000cc)の全輪に装着してテストコースを実車走行し、30000km走行前後のパターン溝探さの変化を求めた。比較例1を溝探さの変化を100として、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど耐摩耗性能が良好である。
耐摩耗性能=(比較例1の溝探さの変化)/(各配合の溝探さの変化)×100
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
変性ジエン系ゴムA及びBを使用せず、メルカプト基を有しないシランカップリング剤1(Si69)を用いた比較例1では、転がり抵抗指数、耐摩耗性、ウェットスキッド性能が実施例に比べて劣っていた。変性ジエン系ゴムA及びBを使用しているものの、メルカプト基を有するシランカップリング剤を使用していない比較例2〜13では、シリカの分散性が悪く、実施例ほどの性能向上が見られなかった。
【0128】
他方、変性ジエン系ゴムA及びBとメルカプト基を有するシランカップリング剤2、3(NXT−Z45、Si363)を併用した実施例では、耐摩耗性、転がり抵抗指数、ウェットスキッド性能の全性能がバランスよく改善されると同時に、スコーチタイムも良好であり、良好な加工性を得ながら、前記性能バランスを相乗的に改善できることが明らかとなった。特に、NXT−Z45を用い、工程1における排出温度を実施例2より高く設定し、高温練りを行った実施例8では、転がり抵抗指数、耐摩耗性が顕著に向上するとともに、スコーチタイムもあまり短くならず、加工性上の問題も生じなかった。更に、Si363を用いた実施例7でも、転がり抵抗指数、耐摩耗性、ウェットスキッド性能の性能バランスが優れ、かつ加工性も問題なかった。