【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従うと、この目的は、現場で自己流し込みされ且つ現場で焼結されたブロック(これ以降、「本発明に従うブロック」と呼ぶ)を備えている構造を備えた溶融ガラス用の供給通路によって達成される。
【0012】
自己流し込みは該方法の1の特徴であるけれども、当業者は、下部構造ブロックが自己流し込みであるか否かを容易に決定しうる。事実、現場での自己流し込みによる下部構造ブロックの構築は、上で記載された従来技術とは対照的に、製造されたブロックがU字開口を上向きにして置かれることを意味する。したがって、本発明に従う現場で自己流し込みされた下部構造ブロックは、ブロックの側壁の上部面に流し込み面を有している。事実、該流し込み面は、当業者によって直ちに同定されうるところの外観を有している。特に、それは、型からの痕跡は有さず、特徴的な流し込み線(条痕)を有する。
【0013】
ブロックの微細構造の分析はまた、ブロックが焼結されたか否かを確認するのに役立つ。
【0014】
現場での自己流し込みによる供給通路の少なくとも部分の構築は、大きなブロックを製造するのに有利に働く。
【0015】
従って有利には、自己流し込みによる製造は、素早く実行されうる。
【0016】
さらに、従来技術に従うと、2つの隣接ブロックは間隔すなわち「接合部」(23)によって分離されている。接合部は、溶融ガラスによる攻撃に対して特に弱い領域である。したがって、接合部でのブロックへの損傷は、供給通路の使用期間を短縮させ、またガラス品の生産収率を低下させる欠陥を生み出し勝ちである。もし接合部が温度の影響下に開けられるとすると、この損傷は特に重要である。
【0017】
自己流し込みによる製造は、接合部の数を限定するように有利に働く。
【0018】
一つの特別の実施態様は、ブロックがその中に置かれる金属ケーシング内でブロックを流し込み成形することで構成されている。ケーシングは、供給通路を保護し支持するように従来からデザインされている。ブロックの長さは、ブロックがその中に置かれるところのケーシングの長さと同じでありうる。好ましくは、1のケーシングの全ブロックが、同時に流し込み成形され、それによって有利に生産時間を短縮することに役立つ。
残りの記載で詳細に示されるように、本発明者は、これら技術の従来からの現場での実施に伴う欠陥にもかかわらず、現場での自己流し込みおよび現場での焼結によって下部構造ブロックを製造することに成功した。
特に、上向きU字開口を有する、製造の間のブロックの位置決めは、作業面への気泡の上昇を引き起こし、したがって、この表面に損傷を与える傾向がある。
さらに、焼結品質は窯内で適切に制御される。反対に現場での焼結は、一般に、窯内よりも低温での加熱の間に実行される。
さらに、現場で焼結されたブロックの配列は、従来、焼結の間にブロック中に不均一な温度を生じさせ、供給通路の内側と接触する面が他の面よりも高温に加熱される。これはブロックの焼結品質のばらつきをもたらす。
以下に記載される本発明に従う製造方法のお陰で、本発明者達はこれらの障害を克服するのに成功した。
【0019】
本発明に従う溶融ガラスの供給通路は、さらに次の任意的な特徴の一つ以上を有してもよい:
− 上記下部構造は、現場で自己流し込み且つ現場で焼結されたブロックで全て構成されている;
− 上記供給通路は、少なくとも部分的に、好ましくは全部、現場で流し込みまたは自己流し込みされ且つ現場で焼結されたブロックから成る上部構造を備えている;
− 上記ブロックは、底部と、上記底部から流し込み面の外観を有する上部面によって境界を画された自由端まで延在している側壁とを備えている;
− 上記ブロックは、好ましくは、2つの側壁を備え、そしてより好ましくはU字断面形状を有する;
− 上記ブロックは、600kgを超える、または800kgを超える、または1200kgを超える、または1600kgを超える、または2400kgを超える、または3200kgを超える、または4000kgを超える重さがある;
− 上記ブロックは、供給通路の長手方向(
図4の軸X)に沿って測られた、0.7mを超える、1mを超える、1.5mを超える、2mを超える、3mを超える、4mを超えるまたは5mを超える長さを有している;
− 上記ブロックは、粒(grain)と、水硬性結合剤、好ましくはセメント、好ましくはアルミナセメントをベースにした、即ち、酸化物に対する重量%で65%を超えるアルミナ、好ましくは75%を超えるアルミナを含む、セメントとを含んでいる。
− 水硬性結合剤の含有量、特にアルミナセメントの含有量は、酸化物に対する重量%で、2%を超え、または3%を超え、または4%を超え、または5%を超え、及び/又は8%未満、好ましくは7%未満、好ましくは6%未満である。
− 上記ブロックは、該ブロックの重量に対して80%を超える、好ましくは85%を超える、好ましくは90%を超える、好ましくは95%を超える、好ましくは98%を超える、好ましくは99%を超える、好ましくは実質的に100%の酸化物を含んでいる。
− 上記ブロックは、Al
2O
3+ZrO
2+SiO
2+CaO+MgO+TiO
2+Y
2O
3の合計含有量が、酸化物に対する重量%で90%を超える、好ましくは95%を超える、好ましくは98%を超える、好ましくは99%を超えるような組成を有している。
【0020】
第1の特別の実施態様において、前記ブロックは、Al
2O
3+SiO
2+CaO+Y
2O
3の合計含有量が、酸化物に対する重量%で90%を超える、好ましくは95%を超える、好ましくは98%を超える、好ましくは99%を超えるような組成を有している。前記ブロックは、酸化物の重量に対し、合計で100%で、特に次のような組成を有している:
− Al
2O
3>80%、好ましくはAl
2O
3>85%、好ましくはAl
2O
3>90%
− SiO
2<10%、好ましくはSiO
2<8%、好ましくはSiO
2<7%、且つ、好ましくはSiO
2>2%、好ましくはSiO
2>3%、好ましくはSiO
2>5%、
− CaO<5%、好ましくはCaO<4%、好ましくはCaO<3%、好ましくはCaO<2%、好ましくはCaO<1%、且つ好ましくはCaO>0.3%、好ましくはCaO>0.5%、
− Y
2O
3<5%、好ましくはY
2O
3<3%、且つ好ましくはY
2O
3>1%、好ましくはY
2O
3>2%、
− それ以外の酸化物<5%、好ましくは該「それ以外の酸化物」<3%。
【0021】
第2の特別の実施態様において、前記ブロックは、Al
2O
3+ZrO
2+SiO
2+CaO++Y
2O
3の合計含有量が、酸化物に対する重量%で90%を超える、好ましくは95%を超える、好ましくは98%を超える、好ましくは99%を超えるような組成を有している。前記ブロックは、特に、酸化物の重量に対し、合計で100%で、次のような組成を有している:
− Al
2O
3<85%、またはAl
2O
3<80%、および、好ましくはAl
2O
3>45%、またはAl
2O
3>50%、またはAl
2O
3>60%、
− SiO
2<25%、またはSiO
2<20%、および、好ましくはSiO
2>5%、またはSiO
2>10%、
− ZrO
2<35%、またはZrO
2<30%、またはZrO
2<25%、またはZrO
2<21%、またはZrO
2<17%、またはZrO
2<13%、および好ましくはZrO
2>8%、好ましくはZrO
2>10%、
− CaO<5%、好ましくはCaO<4%、好ましくはCaO<3%、好ましくはCaO<2%、および、好ましくはCaO>0.3%、好ましくはCaO<0.5%、
− Y
2O
3<5%、好ましくはY
2O
3<4%、および、好ましくはY
2O
3>1%、好ましくはY
2O
3>2%、
− それ以外の酸化物<5%、好ましくは該「それ以外の酸化物」<3%。
【0022】
本発明はさらに、本発明に従う溶融ガラス供給通路を備えているガラス製造炉に関係している。特に、本発明に従う溶融ソーダ石灰ガラスのための供給通路を備えているガラス製造炉に関係している。
【0023】
本発明は、さらに本発明に従うガラス製造炉のための供給通路の下部構造のブロックを製造するための方法であって、上記方法は以下の工程:
a)活性化され且つ部分真空下でガス抜きされた、自己流し込み可能な成形されていない製品を準備すること、
b)前記ブロックが使用されることを意図されているところの場所で、前記ブロックの形状に対応している型を準備すること、
c)溶融ガラスと接触するようになるように意図された前記ブロックの表面に対応する、活性化され、ガス抜きされそして前記型へ導入された前記自己流し込み可能な成形されていない製品の表面に位置する気泡の除去を伴いながら、型へ底部供給すること、
d)プリフォームを形成するために、活性化され、ガス抜きされそして前記型へ導入された前記自己流し込み可能な成形されていない製品を固化すること、
e)任意的に前記プリフォームの型を除去すること、
f)前記プリフォームを乾燥させ且つ焼結させるために加熱すること、
を含む。
【0024】
そのような方法は、したがって、
− 成形されていない活性化された自己流し込み可能製品の従来のような準備をすること;
− ガス抜きをすること;
− 底部供給すること;および
− 使用中に溶融ガラスと接触するようになるであろう該成形されていない製品の表面に上昇し現われる気泡を少なくとも部分的に吸収するための手段、
を含む。
【0025】
これら4つの条件が満たされるとき、本発明者たちは、現場で自己流し込み且つ現場で焼結されたブロックを製造することが可能であり、該ブロックは、工場で流し込み且つ窯で焼結された従来技術のブロックの接触面と同等の質である、溶融ガラスとの接触面を有していることを見い出した。
【0026】
最後に、上記方法は大きなブロックを製造するのに役立ち、それによって接続部の数を減らせ、したがって供給通路の使用寿命を増加させる。
【0027】
製造されたブロックの長さと、ブロックの側壁の少なくとも一つの自由端での流し込み面の存在とは、本発明に従う製造方法の特徴を構成しうる。
【0028】
本発明はさらに、次の工程を含むガラス製造炉のための供給通路を製造するための方法に関係している:
A.本発明に従う製造方法を用いて、底部および2つの側壁を備え、好ましくはU字形断面を備える下部構造ブロックを製作すること、
B.任意的に、前記側壁の少なくとも1つの上部に1以上のバーナーブロックをアセンブリすること、
C.上部構造ブロックの製造に適合された形状を有する型を架設すること、
D.前記上部構造型内に成形されていない製品を流し込むこと、
を含む。
【0029】
本明細書の残りでより詳細に示されるように、上記方法は、供給通路を素早く製造するのに役立つ。
【0030】
好ましくは、上記下部構造ブロックの内側表面を画定するために用いられたコアは、上記下部構造ブロックの上部に置かれる上部構造ブロックの内側表面を画定するために用いられる。
【0031】
好ましくは、下部構造ブロックおよび上部構造ブロックは、同時に流し込まれる。
【0032】
本発明は最後に、溶融ガラスと、特にソーダ石灰ガラスと接触するようになることを意図された、ガラス製造炉の供給通路のブロックの現場での製造のために自己流し込み可能な成形されていない製品の使用に関係している。
定義
【0033】
− 「粒状混合物」は、粒子の乾燥混合物(互いに結合されていない)を意味する。
「粒子」は、粒状混合物内の固体物を意味する。
粒子の「サイズ」は、その最大寸法dMと最小寸法dmの平均(dM+dm)/2である。粒状混合物の粒子のサイズは、従来、レーザ粒子サイズ分析器で実施された粒子サイズ分布の特性によって評価されている。該レーザ分析器は、例えば、HORIBAによって販売されているPartica LA-950でありうる。
粒状混合物のパーセンタイルまたは「センタイル」10(D
10),50(D
50)、90(D
90)および99.5(D
99.5)は、粒状混合物の粒子の累積粒子サイズ分布曲線(粒子サイズは増加する順に分類されている)において、重量で10%、50%、90%および99.9%にそれぞれ対応する粒子のサイズである。例えば、重量で10%の粒子は、D
10よりも小さいサイズを有し、そして重量で90%の粒子は、D
10よりも大きいサイズを有する。パーセンタイルは、レーザ粒子サイズ分析器を用いて測定された粒子サイズ分布によって決定されうる。
「最大サイズ」は、上記粉末の99.9パーセンタイル(D
99.5)である。
「中央値サイズ」は、パーセンタイルD
50である、すなわち、該サイズは、粒子を第1と第2の重量の同じ集合に分け、上記第1および第2集合は夫々中央値サイズよりも大きいかまたは小さい粒子のみを含む。
粒子の「球形度」は、該球形度が得られる方法に無関係に、最小直径の最大直径に対する比を意味する。
粒子は、それが、粒の造粒によって、特に従来の造粒または微粒子化によって形成されていないとき、「非粒状化」であるといわれる。
− 「成形されていない製品」または「形作られていないコンクリート」は、成形品を構成するために硬化可能な濡れた粒子の混合物である。成形されていない製品は、硬化過程にあるとき、「活性化」される。活性化は、通常、水またはその他の液体で濡らすことによる。
− 自己流し込み可能な成形されていない製品は、振動タイプの外部からの機械的な動作なしに、且つ材料分離なしに、それ自体の重量の下で流れるという能力を有する成形されていない製品である。材料分離のないことは、制限された水含有量を意味している。流し込み性は、15分の練り混ぜ時間で、70mmおよび100mmの底、80mmの高さを有する中空の切頭円錐を用いる標準ASTM C1446-99の一般的な教示に従って測定される。広げられた後のmmでの値が、該円錐を持ち上げた後5分で測られ、該流し込み性は、広げられた活性化された成形されていない製品の、2つの直交方向における値の平均値である。自己流し込み可能な成形されていない製品の流し込み性は270mmより大きい。
自己流し込み可能な成形されていない製品は20年以上にわたって使用されており、当業者には公知である。それらは種々の組成を持ちうる。それらは、例えば、論文「Les betons refractaires autocoulables」Hommes et Fonderie, April 1993, pages 17 to 20 に記載されている。仏国特許第2937636号も、自己流し込み可能なまたは「自己水平化」の成形されていない製品を記載している。
自己流し込み可能な成形されていない製品の粒子サイズ分布は、特に、数学的予測モデルによって、例えば、アンドレアセン(Andreasen)コンパクションモデル(“High performance refractory castable: particle size design”, Refractories Application and News,Vol.8, No. 5, page 17 to 21 (2003))、または “The effect of particle-size distribution on flow of refractory castables”, The American Ceramic Society 30th Annual Refractories Symposium, March 25, 1994に記載されている)によって決定されうる。
ポンプ扱い可能な成形されていない製品は、ポンプによって搬送される能力を有し、且つそれ故に該ポンプを通過する間に分離されるのを回避する能力を有している成形されていない製品である。
自己流し込み性およびポンプ扱い性は2つの異なる特性である。特に、ポンプ扱い可能な成形されていない製品は、必ずしも自己流し込み可能ではない。例えば、以下に記載される比較例2の製品は、自己流し込み可能ではない。なぜなら、それは流し込みの間に材料分離を受けるからである。しかしそれはポンプを使用して移動させられうるので、ポンプ扱い可能である。
− 「成形製品」または「成形コンクリート」は、粒がその中で結合された集合体で構築された、微細構造を有する固体物質である。
「集合体」は、耐火性粒の集合であり、重量で少なくとも90%の粒は、50μmと15mmとの間のサイズを有している。
成形製品において、粒の「サイズ」はその最大寸法と最小寸法との平均であり、この寸法は該製品の断面で測定される。
プリフォームは、粒状混合物の硬化(一般的に水で濡らすことによる)によって得られた成形製品の1例である。その中の粒は、一時的でありうる結合相によって結合されている。
プリフォームを焼結することによって得られた焼結製品は、成形製品のもう一つの例である。その中の粒は「マトリックス」、すなわち結晶化されうるかまたはされ得ない相、によって結合され、該マトリックスは粒の間の連続的な相を提供し且つ焼結に起因する。「マトリックス」は、焼結前に、例えば水硬性結合剤の活性化によって任意的に存在する結合相と区別されなければならない。
「ブロック」は、成形されていない製品を流し込むことによって得られた成形製品(表面張りとは異なる)を意味している。
− ブロックの現場での流し込みまたはその場所での流し込みは、ブロックが使用されるべき丁度その場所(使用地点)で実行される流し込みである。現場での流し込みは、大きなブロック(これはその後移動させることが出来ない)を製造するのに役立つ。したがって、現場での流し込みは、一般的に焼結も現場で実行されることを意味している。
− 型または流し込みの「底部」供給は、成形されていない製品が型の底部から頂点まで流されるような供給である。言い換えれば、型に入っていく成形されていない製品は、型内に既に存在する成形されていない製品の下方に導入される。
− 加熱は、ガラス製造炉の第1の温度上昇である。
− 「焼結」は、それによってプリフォームの耐火粒子が、該プリフォームの他の粒子を互いに結合するマトリックスを形成するように転化される熱処理である。
− 「耐火材料」は、1000℃を超える融点または解離点を有する材料を意味する。
− 「繊維」は細長い構造であり、典型的には0.1μm〜2mmの直径、および約3cmまでの長さを有する。
【0034】
酸化物含有量は、工業における通常の慣習に従って、最も安定な酸化物の形式で表現された、対応する化学元素の各々についての合計含有量に関係する。
【0035】
別に指示がない限り、本発明に従う製品の酸化物含有量のすべては、該酸化物に対して表現された重量パーセントである。
【0036】
「1の・・を含む」「1の・・を備える」は、別に指示がない限り「少なくとも1の・・を備える」を意味する。
【0037】
本発明の他の特徴および利点は、以下の記載および添付された図面の説明を読むことによって理解できよう。