【実施例】
【0032】
本発明の一実施例では、EN2(Engrailed−2)タンパク質を発現、精製して5‘−TAATTA−3’の特定の結合配列を確認し(実施例1ないし3参照)、上記の特定の結合配列を有するdsDNA(Double strand DNA)のEN2タンパク質との強い結合能を確認した(実施例4ないし5を参照)。また、上記の実験結果に基づいて、安定性および結合能が強化されたDNAアプタマーとバイオセンサーを製造して(実施例6ないし7を参照)、上記のバイオセンサーは、EN2タンパク質に対する結合特異性も非常に優れているので、前立腺がんの診断のための情報提供の方法で用いることができることを確認した(実施例8参照)。
【0033】
そこで、(1)本発明は、被検体試料を上記バイオセンサに処理する段階;および、(2)上記のバイオセンサーに結合されたEN2(Engrailed−2)のレベル(level)を測定する段階を含む、前立腺がんの診断のための情報提供の方法を提供する。
【0034】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されているものであり、下記の実施例により、本発明の内容が限定されるものではない。
【0035】
実施例1.EN−2遺伝子クローニング
EN2(Engrailed−2)遺伝子を増幅するために、forwardプライマー(5‘−CCC GGA TCC ATG GAG GAG AAT GAC CCC AAG C−3 ’(配列番号1))とreverseプライマー(5‘−CCC CTC GAG CTA CTC GCT GTC CGA CTT GC−3 ’(配列番号2))を使用した。
【0036】
遺伝子増幅のためにcDNAからi−pfuポリメラーゼ(polymerase)を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、polymerase chain reaction)プロセスを介して増幅した。ポリメラーゼ連鎖反応の各ステップは、次の通りである。 1)鋳型(template)の二本鎖DNAを解放する段階で95℃で1分、2)鋳型とプライマーが結合するステップで58℃で30秒、3)新しい鎖を合成していく段階で、72℃で1分反応させ、このような手続きを30回繰り返した。
【0037】
増幅されたEN2遺伝子は、制限酵素切断反応とDNAライゲーション(ligation)反応を介して(His)6−tagが含まれたベクトルであるpET28a−ruベクトルにクローニングし、上記のベクトルを用いてBL21(DE3)E. coliに形質転換した。
【0038】
実施例2.EN−2タンパク質の発現
EN2(Engrailed−2)遺伝子が形質転換されたBL21(DE3)細胞を、37℃のLB(Luria Bertani)培地で培養した。その後、タンパク質の発現を誘導するために最終濃度が0.1 mMになるようにIPTG(isopropyl−thio−b−D−galactopyranoside)を添加した後、37℃で4時間培養した。タンパク質の発現は、gel electrophoresisで確認し、細胞を高速遠心分離器を用いて、培地から分離させた後、PBS(10 mM sodium phosphate,150 mM NaCl,pH7.4)bufferで一度洗浄した。
【0039】
実施例3.EN−2タンパク質の精製
バクテリア細胞BL21(DE3)で発現されたEN2タンパク質を高純度に精製するために細胞溶菌バッファー(lysis buffer)(20mM Tris、500mM NaCl、0.5mMβ-mercaptoethanol、3%glycerol、0.01%tween 20、pH 8.0)に細胞を溶かした後、超音波破砕機(sonicator)を利用して、15分間超音波粉砕(sonication)することにより、細胞を破壊した。水溶液上のタンパク質と細胞を分離するために遠心分離した。
【0040】
また、高純度のタンパク質を得るためにNi−NTA(Ni−Nitrilotriacetic acid)と(His)6−tagのアミノ酸が結合する特性を利用した。具体的には、
図1に示すように、Ni−NTAカラムに吸着されたタンパク質の(His)6−tagはイミダゾール(immidazole)の化合物と競争的に吸着するので、imidazoleの濃度を順次に高めることで、40kDのEN2タンパク質を高純度に分離した。
【0041】
ただし、上記のようにNi−NTAカラムで精製したタンパク質試料は、不純物が多く含まれている可能性がありますので、追加の精製を実施した。したがって、タンパク質のpI値により分離するion exchangeコラムであるMonoQカラムを使用して、もう一度精製し、この後、タンパク質をサイズに応じて分離するgel filtrationコラムのsuperdex 200コラムを利用してもう一度分離して、純度を95%以上に高めた。
【0042】
実施例4.EN−2結合の有無の測定
EN2タンパク質は転写因子として、5‘−TAATTA−3’の特定の結合配列を有していることを確認し、本発明者は、上記の特定の結合配列を有するDouble strand DNA(dsDNA)を利用して、EN2特異的DNAアプタマーを設計しようとした。これに先んじて、5’−TAATTA−3‘の特定の結合配列にEN2が結合することができるかどうかを評価し、EMSA(Electron mobility shift assay)とSPR(Surface Plasmon Resonance)を実施した。
【0043】
具体的には、EMSAから、EN2タンパク質と特定の結合配列を有しているdsDNAが含まれている溶液を30分間反応させた後、gel electrophoresis(100 V、50 min)を実施した。また、SPRで、NTA chipに固定されたEN2タンパク質と特定の結合配列を有しているdsDNAが含まれている溶液と反応させた後、物質の組成変化に伴う共鳴波長の移動を観察することによって、EN2タンパク質との結合の有無を測定した。
【0044】
その結果、
図2に示すように、EMSAはdsDNAとEN2タンパク質の結合による移動速度の減少を確認し、EN2濃度が増加するにつれて、明確な移動速度の減少を確認した。また、
図3に示すように、SPRではdsDNAとEN2タンパク質結合によるSPR信号の増加(Association phase)と、dsDNAとEN2タンパク質の間の強い結合により増加されたSPR信号の遅れの減少(Dissociation phase)を確認した。上記の結果は、5‘−TAATTA−3配列を有するdsDNAはEN2タンパク質と強い結合を形成することを示す。
【0045】
実施例5.蛍光測定を通じたEN−2結合力の測定
上記のdsDNAプローブを用いた定量的な分析が可能かどうかを確認するために、SYBR Green I(SGI)の蛍光色素を用いた蛍光分析を実施した。 EN2タンパク質が存在しない場合、SGIがdsDNAプローブに結合して蛍光シグナルを発生させる一方、EN2タンパク質が存在する場合、dsDNAプローブがEN2タンパク質に結合してSGIの結合が減ることになる。本実施例では、様々なEN2濃度(1nM〜100nM)でのSGIスペクトルを解析することにより、蛍光シグナルの減少するかどうかを比較した。
【0046】
その結果、
図4ないし
図5に示すように、対照群(0 nM)と比較して、EN2濃度が増加するにつれて、蛍光シグナルも減少することを確認した。上記の結果は、本発明のdsDNAプローブを利用して、EN2特異的検出のための定量的分析が可能であることを意味する。
【0047】
実施例6.向上された安定性と結合強度を有するDNAアプタマーの製造
EN2タンパク質の検出の安定性と結合強度を向上させるために、Hairpin構造を有するDNAアプタマーを設計した。
図6に示すように、上記のDNAアプタマーはLoop部分とStem部分に分けられ、Loop部分とStem部分の長さが異なるDNAアプタマー(hpDNA1、hpDNA2、hpDNA3、hpDNA4、hpDNA5、hpDNA6)を製造した。
【0048】
この後、EN2タンパク質と、各DNAアプタマーの間の結合の強さを比較するために、EN2タンパク質と、各DNAアプタマーの間の解離定数(Dissociation constant、Kd)を測定した。このとき、DNAアプタマーにFluorescein amidite(FAM)をマーカーとして付着させ、FAMの蛍光シグナルからタンパク質に結合したDNAアプタマーの量を測定した。
【0049】
その結果、下記の表1に示すように、Hairpin DNAの構造を有するDNAアプタマー(hpDNA)は従来のdsDNAプローブと比較して、概ね解離定数の値が減少することを確認した。特に、hpDNA2とhpDNA3はLoop部分の2 bases差で解離定数の値が大きく変わったのに対し、hpDNA3とhpDNA5の間に大きな変化がなかった点を考慮すると、Loop部分の長さがDNAアプタマーの結合強度に大きな影響を及ぶことを確認した。また、Loop部分の長さが8 basesのhpDNA3、hpDNA5、hpDNA6が他のDNAアプタマーと比較して、解離定数値が低いことを確認しており、上記の結果は、Loop部分の長さが8 baseのDNAアプタマーはEN2タンパク質の検出において、最も安定性の高いことを意味する。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例7.検出条件の最適化およびバイオセンサーの製作
EIS(Electrochemical Impedance Spectroscopy)技術を利用して、検出感度に優れたバイオセンサーを設計した。
図6に示すように、まず、金電極に金ナノ粒子を吸着させた後、DNAアプタマーを電極に結合させることで、EN2検出用のバイオセンサーを製造した。
【0052】
上記のセンサにEN2タンパク質が結合すると、電子の流れを妨げるようになって増加されたインピーダンス値を示すようになるので、このような性質を利用して、最適化されたEN2検出用のバイオセンサーを製造した。具体的には選択性と検出感度を高めるためにDNAアプタマーのloopの長さ、stemの長さ、および金表面とDNAアプタマーの間のリンカーの長さの変化によるインピーダンス(impedance)値の変化を測定した。
【0053】
また、上記の実施例では、最適化されたアプタマーで構成されたバイオセンサーを用いて、EN2タンパク質の定量的検出可能かどうかを確認した。
【0054】
その結果、
図8ないし10に示すように、Loop部分の長さとStem部分の長さがそれぞれ8 bases、14 bases(hpDNA3)のときのインピーダンス値が最も高いことを確認しており、これはEN2タンパク質が最も多く結合したことをを意味する。これを基に、上記の実施例6と同様にLoop部分の長さが8baseのhpDNA3が結合力が高く、安定した序列であることを確認した。また、金表面と繋ぐ、poly A配列で構成されたLinker部分の長さは、10 basesが最も適していることで確認された。
【0055】
また、上記の結果に基づいて、最適化された条件に基づいて選択されたhpDNA3アプタマーを利用して、EN2タンパク質を検出した。その結果、
図11に示すように、Nyquist図式で、EN2の濃度が高くなるほど(10 fM〜1 nM)のインピーダンス値が増加することを確認し、
図12に示すように、EN2の検出が定量的に行われて、検出限界は5.62 fMであることを確認した。
【0056】
実施例8.EN−2結合の特異性の確認
DNAアプタマーは選択的に結合するかどうかを確認するために、いくつかのタンパク質試料に対する結合特異性を確認した。人工尿溶液(Artificial Urine Medium)に各タンパク質の濃度が10 pMになるように混合した後、DNAアプタマーとの結合可否を確認した。
【0057】
その結果、
図13に示すように、EN2タンパク質に対する優れた結合特異性を確認した。特に、TATA box Binding Protein(TBP)は、EN2と同様Homeoboxを認識する転写因子であるにもかかわらず、本発明で開発されたDNAアプタマーと結合しないことが確認された。また、いくつかのタンパク質が混合された溶液でEN2が存在しない場合は、信号が検出されておらず、EN2を入れたときは、信号が検出される結果が示した。
【0058】
上記の結果は、本発明で開発されたDNAアプタマーがEN2タンパク質に対して高い結合特異性を有しているだけでなく、複雑な生物学的試料でも、バイオセンサーとして用いられることを意味する。
【0059】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有するものは本発明の技術的な思想や必須的な特徴を変更しなくて、他の具体的な形態に容易に変更が可能であることを理解できるだろう。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないものとして理解するべきである。