特許第5990620号(P5990620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5990620EN2に特異的に結合するDNAアプタマーおよびこれの用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990620
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】EN2に特異的に結合するDNAアプタマーおよびこれの用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20160901BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20160901BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20160901BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20160901BHJP
   G01N 33/553 20060101ALI20160901BHJP
   G01N 33/547 20060101ALI20160901BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALN20160901BHJP
【FI】
   C12N15/00 HZNA
   C12N15/00 F
   C12M1/00 A
   G01N33/574 A
   G01N33/553
   G01N33/547
   !C12Q1/68 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-94438(P2015-94438)
(22)【出願日】2015年5月1日
(65)【公開番号】特開2016-119897(P2016-119897A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2015年5月1日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0188124
(32)【優先日】2014年12月24日
(33)【優先権主張国】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 Biosensors and Bioelectronics,第66巻,2015年,第32〜38頁,エルゼビア社出版(発行日:平成26年11月6日)
(73)【特許権者】
【識別番号】509191159
【氏名又は名称】ポステック アカデミー‐インダストリー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パン、チャンギル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン‐クン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、フンホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン、ヒョン チュン
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/085483(WO,A1)
【文献】 特表2009−540852(JP,A)
【文献】 特開2012−254074(JP,A)
【文献】 MORGAN R. et al.,Engrailed-2 (EN2): a tumor specific urinary biomarker for the early diagnosis of prostate cancer.,Clin Cancer Res, 2011, vol.17, no.5, pp.1090-1098
【文献】 KILLICK E. et al.,Role of Engrailed-2 (EN2) as a prostate cancer detection biomarker in genetically high risk men.,Sci Rep, 2013, 3:2059
【文献】 LEE S. et al.,Cationic surfactant-based colorimetric detection of Plasmodium lactate dehydrogenase, a biomarker for malaria, using the specific DNA aptamer.,PLoS One, 2014 July, vol.9, no.7, e100847
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EN2(Engrailed−2)に特異的に結合するDNAアプタマー(DNA Aptamer)として、配列番号5ないし配列番号10から選択される塩基配列で構成されることを特徴とする、DNAアプタマー。
【請求項2】
請求項1記載のDNAアプタマーを含む、前立腺がん診断用の組成物。
【請求項3】
EN2(Engrailed−2)特異的DNAアプタマー;および上記のDNAアプタマーが固定されている基板を含むが、上記のDNAアプタマーは配列番号5ないし10から選択される塩基配列で構成されることを特徴とする、前立腺がん診断用のバイオセンサー。
【請求項4】
上記の基板は金属電極層および金属のナノ粒子層で構成されて、上記の金属は金(Au)であることを特徴とする、請求項記載の前立腺がん診断用のバイオセンサー。
【請求項5】
上記のバイオセンサーは上記の基板とDNAアプタマーリンカーをさらに含むことを特徴とする、請求項記載の前立腺がん診断用のバイオセンサー。
【請求項6】
(1)被検体試料を請求項記載のバイオセンサーに処理する段階;および
(2)上記のバイオセンサーに結合されたEN2(Engrailed−2)のレベル(level)を測定する段階を含む、前立腺がん診断のための情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はEN2(Engrailed−2)に特異的に結合するDNAアプタマー、これを含む前立腺がん診断用のバイオセンサー、および前立腺がん診断のための情報提供方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前立腺がんは男性に最も一般的な形態のがんであり、50歳以上の男性の3割が発病すると推定される。複数の臨床的な証拠によれば、ヒトの前立腺がんは骨へ転移される傾向を有するとみられて、アンドロゲン依存性の状態からアンドロゲン耐性の状態へ不可避に進行されて患者の死亡率を増加させると知られている。さらに、前立腺がん治療を受けた男性の約25%は病が再発して追加的な治療を必要とする疾病として、現在アメリカで男性のがん死亡原因の中で第2の原因を示しているので、これに関する早期診断および治療が必要な実情である。
【0003】
現在使用されている前立腺がん診断法の中で直接的な方法としては、前立腺を直接造影したり組織検査を通じた診断方がある。直接造影したり組織検査により診断する場合には、初期に前立腺がんの発病の可否を診断することに困難があるところ、体外で診断できる方法の開発が至急である。
【0004】
間接的な方法ではprostate−specific antigen(PSA)検査を利用して体外で検診できる診断方法がある。しかし、診断に利用されるPSAは悪性前立腺の上皮組織だけではなく、正常および良性からも生成されて前立腺がんの検出においての仮性良性率を高める結果をもたらした。また、血清PSAのレベルが非常に高い場合には効果的な前立腺がんの標準的な診断方法で用いられるが、一方、PSA血清のレベルが2−10ng/mLのように低い場合には、確かな前立腺がん診断ができない。上記のようにPSA濃度が低い場合には血清PSAはBPH(benign prostatic hyperplasia)、前立腺炎またはその他身体的な外傷のような非−腫瘍疾病から由来できるので、前立腺がんの診断のためのPSA分析は検出特異性と関連して問題点が存在する。
【0005】
したがって、新規のバイオマーカーを用いた前立腺がんの診断が主要な課題の対象になっていて、これに関する研究が行われているが(韓国特許公開番号10−2009−0111307)、まだ不十分なのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開番号10−2009−0111307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような問題点を解決するために案出されたもので、本発明から製造されたDNAアプタマーのEN2(Engrailed−2)タンパク質に対する特異的な結合能を確認してこれに基づいて本発明を完成するようになった。
【0008】
これで、本発明の目的はEN2(Engrailed−2)に特異的に結合するDNAアプタマー(DNAアプタマー)の開発で、配列番号5ないし10から選択される塩基配列で構成されることを特徴とする、DNAアプタマーを提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は上記のDNAアプタマーを含む、前立腺がん診断用の組成物を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の膜的はEN2(Engrailed−2)特異的DNAアプタマー;および上記のDNAアプタマーが固定されている基板を含むが、上記のDNAアプタマーは配列番号5ないし10から選択される塩基配列で構成されることを特徴とする、前立腺がん診断用のバイオセンサーを提供することである。
【0011】
また、本発明のもう一つの目的は(1)被検体試料を上記のバイオセンサーに処理する段階;および上記のバイオセンサーに結合されたEN2(Engrailed−2)のレベル(level)を測定する段階を含む、前立腺がん診断のための情報提供方法を提供することである。
【0012】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から当業者に明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明はEN2(Engrailed−2)に特異的に結合するDNAアプタマー(DNA Aptamer)で、配列番号5ないし10から選択される塩基配列で構成されることを特徴とする、DNAアプタマーを提供する。
【0014】
また、本発明は上記のDNAアプタマーを含む、前立腺がん診断用の組成物を提供する。
【0015】
また、本発明はEN2(Engrailed−2)特異的DNAアプタマー;および上記のDNAアプタマーが固定されている基板を含むが、上記のDNAアプタマーは配列番号5ないし10から選択される塩基配列で構成されることを特徴とする、前立腺がん診断用のバイオセンサーを提供する。
【0016】
本発明の一具現例として、上記の基板は金属電極層および金属ナノ粒子層構成されて、上記の金属は金(Au)であることができる。
【0017】
本発明の他の具現例として、上記のバイオセンサーは上記の基板とDNAアプタマーの間のリンカーをさらに含むことができる。
【0018】
また、本発明は(1)被検体試料を上記のバイオセンサーに処理する段階;および上記のバイオセンサーに結合されたEN2(Engrailed−2)のレベル(level)を測定する段階を含む、前立腺がん診断のための情報提供の方法を提供する。
【0019】
また、本発明はEN2(Engrailed−2)に特異的に結合するDNAアプタマー(DNA Aptamer)を含む組成物の前立腺がんの診断用度を適用する。
【発明の効果】
【0020】
本発明による組成物はEN2(Engrailed−2)に特異的に結合するDNAアプタマー(DNA Aptamer)を有効成分として含めて、上記のDNAアプタマーおよびこれを利用したバイオセンサーで、EN2タンパク質との強い結合力と優れた特異性を確認したところ、従来のPSA(prostate−specific antigen)検査の検出特異性問題を克服した前立腺がん診断用の組成物として有用に用いられると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】EN2タンパク質をNi−NTA chromatography、Ion exchange chromatography、およびsize chromatographyで確認した結果である。
図2】EN2タンパク質と特定の結合配列を有するdsDNA(Double−stranded DNA)の間の結合可否をEMSA(Electron mobility shift assay)を通じて確認した結果である。
図3】EN2タンパク質と特定の結合配列を有するdsDNAの間の結合可否をSPR(Surface Plasmon Resonance)を通じて確認した結果である。
図4】EN2タンパク質濃度(1nM〜100nM)によるdsDNAプローブとの結合可否をSYBR GreenI(SGI)スペクトルを通じて確認した結果である。
図5】EN2タンパク質濃度(1nM〜100nM)によるdsDNAプローブとの結合により蛍光信号の減少を数値化した結果である。
図6】EN2(Engrailed−2)に特異的に結合するDNAアプタマーの2次構造を表したものである。
図7】DNAアプタマーを用いたEN2タンパク質検出用のバイオセンサーの製造方法に関しての概略的な模式図である。
図8】EN2タンパク質検出用のバイオセンサーで、DNAアプタマーのループの長さによるインピーダンス(impedance)値の変化を表した結果である。
図9】EN2タンパク質検出用のバイオセンサーで、DNAアプタマーのステムの長さによるインピーダンス値の変化を表した結果である。
図10】EN2タンパク質検出用のバイオセンサーで、金の表面とDNAアプタマー間のリンカーの長さによるインピーダンス値の変化を表した結果である。
図11】hpDNA3アプタマーを含むEN2タンパク質検出用のバイオセンサーで、EN2タンパク質濃度(1nM〜100nM)によるインピーダンス値の変化を表した結果である。
図12】hpDNA3アプタマーを含むEN2タンパク質検出用のバイオセンサーで、EN2タンパク質濃度のLog値によるインピーダンス値の変化を表した結果である。
図13】hpDNA3アプタマーを含むEN2タンパク質検出用のバイオセンサーで、様々なタンパク質の間の結合可否および混合された溶液でのEN2タンパク質との結合可否を相対的なインピーダンス値を通じて確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
奔発明者はEN2と強い結合能を有するDouble strand DNAに基づいたHairpin構造のDNAアプタマー(DNA Aptamer)およびこれを用いたバイオセンサーを製造して、上記のDNAアプタマーおよびバイオセンサーのEN2に対する強い結合力と優れた特異性を確認して、これに基づいて本発明を完成した。
【0023】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0024】
本発明はEN2(Engrailed−2)に特異的に結合するDNAアプタマー(DNA Aptamer)を提供する。
【0025】
本発明で、「EN2(Engrailed−2)」は従来の前立腺がん診断に用いられるPSA(prostate−specific antigen)検査の検出特異性の問題を解決できるバイオマーカー(bio−marker)の一つである。EN2タンパク質は細胞の中で、転写因子として作用して、前立腺がん細胞の中では過多発現されてDNA転写調節障害をもたらす。さらに前立腺がん細胞内でEN2発現が増加する場合、小便で排泄されるEN2タンパク質の量もまた増加するから、体外分析に適合するので、EN2タンパク質を検出により効果的に前立腺がんを診断することができる。
【0026】
本発明で用いられる用語、「アプタマー」という特定物質に対して高い特異性と親和度を有する 一本鎖DNA(ssDNA)またはRNAである。 従来に開発されている抗体を用いた方法は、生体の免疫システムを利用して作られているので、比較的に多くの時間がかかり、高コストであるという点、タンパク質であるため、その安定性が問題になる場合がありますが、アプタマーは合成において、比較的に単純な方法で可能であり、細胞、タンパク質、小さな有機物質も標的物質になることがあるため、これを利用した新しい検出方法の開発が可能であり、その特異性および安定性がすでに開発されている抗体に比べて非常に高い点に着目して、EN2タンパク質の特異的検出のためにDNAアプタマーを使用した。上記のアプタマーは、好ましくは、配列番号5ないし10の塩基配列からなることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
また、本発明は、上記DNAアプタマーを含む、前立腺がんを診断するための組成物を提供する。
【0028】
本発明の組成物は、上記のDNAアプタマー以外に薬理学的にも生理学的にも許容される担体、賦形剤、希釈剤をさらに含むことができ、これらの組成物に含めることができる適切な担体、賦形剤、および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロフィールヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油などを挙げることができる。上記の組成物は、薬剤化する場合、通常の充填剤、増量剤、結合剤、崩解剤、界面活性剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含むことができる。
【0029】
また、本発明は、EN2(Engrailed−2)特異的DNAアプタマー;上記のDNAアプタマーが固定されている基板を含む、前立腺がん診断用のバイオセンサーを提供する。
【0030】
本発明の上記のDNAアプタマーが固定されている基板は、金属電極層と金属ナノ粒子層からなり、上記の電極層とナノ粒子の材質は、電界または磁界によって誘引されることがあり、電界の特性を変化させることができる任意の材質も用いることができ、好ましくは、金(Au)からなることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
また、上記のバイオセンサーは、EN2の特異的な結合を向上させるために、上記の基板とDNAアプタマーの間にリンカーをさらに含むことができる。上記のリンカーは、5個から15個の塩基配列からなることができ、好ましくは、10個の塩基配列からなることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
本発明の一実施例では、EN2(Engrailed−2)タンパク質を発現、精製して5‘−TAATTA−3’の特定の結合配列を確認し(実施例1ないし3参照)、上記の特定の結合配列を有するdsDNA(Double strand DNA)のEN2タンパク質との強い結合能を確認した(実施例4ないし5を参照)。また、上記の実験結果に基づいて、安定性および結合能が強化されたDNAアプタマーとバイオセンサーを製造して(実施例6ないし7を参照)、上記のバイオセンサーは、EN2タンパク質に対する結合特異性も非常に優れているので、前立腺がんの診断のための情報提供の方法で用いることができることを確認した(実施例8参照)。
【0033】
そこで、(1)本発明は、被検体試料を上記バイオセンサに処理する段階;および、(2)上記のバイオセンサーに結合されたEN2(Engrailed−2)のレベル(level)を測定する段階を含む、前立腺がんの診断のための情報提供の方法を提供する。
【0034】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されているものであり、下記の実施例により、本発明の内容が限定されるものではない。
【0035】
実施例1.EN−2遺伝子クローニング
EN2(Engrailed−2)遺伝子を増幅するために、forwardプライマー(5‘−CCC GGA TCC ATG GAG GAG AAT GAC CCC AAG C−3 ’(配列番号1))とreverseプライマー(5‘−CCC CTC GAG CTA CTC GCT GTC CGA CTT GC−3 ’(配列番号2))を使用した。
【0036】
遺伝子増幅のためにcDNAからi−pfuポリメラーゼ(polymerase)を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、polymerase chain reaction)プロセスを介して増幅した。ポリメラーゼ連鎖反応の各ステップは、次の通りである。 1)鋳型(template)の二本鎖DNAを解放する段階で95℃で1分、2)鋳型とプライマーが結合するステップで58℃で30秒、3)新しい鎖を合成していく段階で、72℃で1分反応させ、このような手続きを30回繰り返した。
【0037】
増幅されたEN2遺伝子は、制限酵素切断反応とDNAライゲーション(ligation)反応を介して(His)6−tagが含まれたベクトルであるpET28a−ruベクトルにクローニングし、上記のベクトルを用いてBL21(DE3)E. coliに形質転換した。
【0038】
実施例2.EN−2タンパク質の発現
EN2(Engrailed−2)遺伝子が形質転換されたBL21(DE3)細胞を、37℃のLB(Luria Bertani)培地で培養した。その後、タンパク質の発現を誘導するために最終濃度が0.1 mMになるようにIPTG(isopropyl−thio−b−D−galactopyranoside)を添加した後、37℃で4時間培養した。タンパク質の発現は、gel electrophoresisで確認し、細胞を高速遠心分離器を用いて、培地から分離させた後、PBS(10 mM sodium phosphate,150 mM NaCl,pH7.4)bufferで一度洗浄した。
【0039】
実施例3.EN−2タンパク質の精製
バクテリア細胞BL21(DE3)で発現されたEN2タンパク質を高純度に精製するために細胞溶菌バッファー(lysis buffer)(20mM Tris、500mM NaCl、0.5mMβ-mercaptoethanol、3%glycerol、0.01%tween 20、pH 8.0)に細胞を溶かした後、超音波破砕機(sonicator)を利用して、15分間超音波粉砕(sonication)することにより、細胞を破壊した。水溶液上のタンパク質と細胞を分離するために遠心分離した。
【0040】
また、高純度のタンパク質を得るためにNi−NTA(Ni−Nitrilotriacetic acid)と(His)6−tagのアミノ酸が結合する特性を利用した。具体的には、図1に示すように、Ni−NTAカラムに吸着されたタンパク質の(His)6−tagはイミダゾール(immidazole)の化合物と競争的に吸着するので、imidazoleの濃度を順次に高めることで、40kDのEN2タンパク質を高純度に分離した。
【0041】
ただし、上記のようにNi−NTAカラムで精製したタンパク質試料は、不純物が多く含まれている可能性がありますので、追加の精製を実施した。したがって、タンパク質のpI値により分離するion exchangeコラムであるMonoQカラムを使用して、もう一度精製し、この後、タンパク質をサイズに応じて分離するgel filtrationコラムのsuperdex 200コラムを利用してもう一度分離して、純度を95%以上に高めた。
【0042】
実施例4.EN−2結合の有無の測定
EN2タンパク質は転写因子として、5‘−TAATTA−3’の特定の結合配列を有していることを確認し、本発明者は、上記の特定の結合配列を有するDouble strand DNA(dsDNA)を利用して、EN2特異的DNAアプタマーを設計しようとした。これに先んじて、5’−TAATTA−3‘の特定の結合配列にEN2が結合することができるかどうかを評価し、EMSA(Electron mobility shift assay)とSPR(Surface Plasmon Resonance)を実施した。
【0043】
具体的には、EMSAから、EN2タンパク質と特定の結合配列を有しているdsDNAが含まれている溶液を30分間反応させた後、gel electrophoresis(100 V、50 min)を実施した。また、SPRで、NTA chipに固定されたEN2タンパク質と特定の結合配列を有しているdsDNAが含まれている溶液と反応させた後、物質の組成変化に伴う共鳴波長の移動を観察することによって、EN2タンパク質との結合の有無を測定した。
【0044】
その結果、図2に示すように、EMSAはdsDNAとEN2タンパク質の結合による移動速度の減少を確認し、EN2濃度が増加するにつれて、明確な移動速度の減少を確認した。また、図3に示すように、SPRではdsDNAとEN2タンパク質結合によるSPR信号の増加(Association phase)と、dsDNAとEN2タンパク質の間の強い結合により増加されたSPR信号の遅れの減少(Dissociation phase)を確認した。上記の結果は、5‘−TAATTA−3配列を有するdsDNAはEN2タンパク質と強い結合を形成することを示す。
【0045】
実施例5.蛍光測定を通じたEN−2結合力の測定
上記のdsDNAプローブを用いた定量的な分析が可能かどうかを確認するために、SYBR Green I(SGI)の蛍光色素を用いた蛍光分析を実施した。 EN2タンパク質が存在しない場合、SGIがdsDNAプローブに結合して蛍光シグナルを発生させる一方、EN2タンパク質が存在する場合、dsDNAプローブがEN2タンパク質に結合してSGIの結合が減ることになる。本実施例では、様々なEN2濃度(1nM〜100nM)でのSGIスペクトルを解析することにより、蛍光シグナルの減少するかどうかを比較した。
【0046】
その結果、図4ないし図5に示すように、対照群(0 nM)と比較して、EN2濃度が増加するにつれて、蛍光シグナルも減少することを確認した。上記の結果は、本発明のdsDNAプローブを利用して、EN2特異的検出のための定量的分析が可能であることを意味する。
【0047】
実施例6.向上された安定性と結合強度を有するDNAアプタマーの製造
EN2タンパク質の検出の安定性と結合強度を向上させるために、Hairpin構造を有するDNAアプタマーを設計した。図6に示すように、上記のDNAアプタマーはLoop部分とStem部分に分けられ、Loop部分とStem部分の長さが異なるDNAアプタマー(hpDNA1、hpDNA2、hpDNA3、hpDNA4、hpDNA5、hpDNA6)を製造した。
【0048】
この後、EN2タンパク質と、各DNAアプタマーの間の結合の強さを比較するために、EN2タンパク質と、各DNAアプタマーの間の解離定数(Dissociation constant、Kd)を測定した。このとき、DNAアプタマーにFluorescein amidite(FAM)をマーカーとして付着させ、FAMの蛍光シグナルからタンパク質に結合したDNAアプタマーの量を測定した。
【0049】
その結果、下記の表1に示すように、Hairpin DNAの構造を有するDNAアプタマー(hpDNA)は従来のdsDNAプローブと比較して、概ね解離定数の値が減少することを確認した。特に、hpDNA2とhpDNA3はLoop部分の2 bases差で解離定数の値が大きく変わったのに対し、hpDNA3とhpDNA5の間に大きな変化がなかった点を考慮すると、Loop部分の長さがDNAアプタマーの結合強度に大きな影響を及ぶことを確認した。また、Loop部分の長さが8 basesのhpDNA3、hpDNA5、hpDNA6が他のDNAアプタマーと比較して、解離定数値が低いことを確認しており、上記の結果は、Loop部分の長さが8 baseのDNAアプタマーはEN2タンパク質の検出において、最も安定性の高いことを意味する。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例7.検出条件の最適化およびバイオセンサーの製作
EIS(Electrochemical Impedance Spectroscopy)技術を利用して、検出感度に優れたバイオセンサーを設計した。図6に示すように、まず、金電極に金ナノ粒子を吸着させた後、DNAアプタマーを電極に結合させることで、EN2検出用のバイオセンサーを製造した。
【0052】
上記のセンサにEN2タンパク質が結合すると、電子の流れを妨げるようになって増加されたインピーダンス値を示すようになるので、このような性質を利用して、最適化されたEN2検出用のバイオセンサーを製造した。具体的には選択性と検出感度を高めるためにDNAアプタマーのloopの長さ、stemの長さ、および金表面とDNAアプタマーの間のリンカーの長さの変化によるインピーダンス(impedance)値の変化を測定した。
【0053】
また、上記の実施例では、最適化されたアプタマーで構成されたバイオセンサーを用いて、EN2タンパク質の定量的検出可能かどうかを確認した。
【0054】
その結果、図8ないし10に示すように、Loop部分の長さとStem部分の長さがそれぞれ8 bases、14 bases(hpDNA3)のときのインピーダンス値が最も高いことを確認しており、これはEN2タンパク質が最も多く結合したことをを意味する。これを基に、上記の実施例6と同様にLoop部分の長さが8baseのhpDNA3が結合力が高く、安定した序列であることを確認した。また、金表面と繋ぐ、poly A配列で構成されたLinker部分の長さは、10 basesが最も適していることで確認された。
【0055】
また、上記の結果に基づいて、最適化された条件に基づいて選択されたhpDNA3アプタマーを利用して、EN2タンパク質を検出した。その結果、図11に示すように、Nyquist図式で、EN2の濃度が高くなるほど(10 fM〜1 nM)のインピーダンス値が増加することを確認し、図12に示すように、EN2の検出が定量的に行われて、検出限界は5.62 fMであることを確認した。
【0056】
実施例8.EN−2結合の特異性の確認
DNAアプタマーは選択的に結合するかどうかを確認するために、いくつかのタンパク質試料に対する結合特異性を確認した。人工尿溶液(Artificial Urine Medium)に各タンパク質の濃度が10 pMになるように混合した後、DNAアプタマーとの結合可否を確認した。
【0057】
その結果、図13に示すように、EN2タンパク質に対する優れた結合特異性を確認した。特に、TATA box Binding Protein(TBP)は、EN2と同様Homeoboxを認識する転写因子であるにもかかわらず、本発明で開発されたDNAアプタマーと結合しないことが確認された。また、いくつかのタンパク質が混合された溶液でEN2が存在しない場合は、信号が検出されておらず、EN2を入れたときは、信号が検出される結果が示した。
【0058】
上記の結果は、本発明で開発されたDNAアプタマーがEN2タンパク質に対して高い結合特異性を有しているだけでなく、複雑な生物学的試料でも、バイオセンサーとして用いられることを意味する。
【0059】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有するものは本発明の技術的な思想や必須的な特徴を変更しなくて、他の具体的な形態に容易に変更が可能であることを理解できるだろう。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないものとして理解するべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]