特許第5990638号(P5990638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本たばこ産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5990638-非加熱型香味吸引器 図000004
  • 特許5990638-非加熱型香味吸引器 図000005
  • 特許5990638-非加熱型香味吸引器 図000006
  • 特許5990638-非加熱型香味吸引器 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990638
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】非加熱型香味吸引器
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   A24F47/00
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-508229(P2015-508229)
(86)(22)【出願日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2014055767
(87)【国際公開番号】WO2014156537
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-70563(P2013-70563)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】太郎良 賢史
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/095659(WO,A1)
【文献】 特開2004−187658(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/111792(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/021310(WO,A1)
【文献】 特表2007−511437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A61M 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って延びる空洞を形成する筒状の外壁を有する筒状部材と、前記空洞内に充填される小片状の香味源とを備える非加熱型香味吸引器であって、
前記筒状部材は、前記所定方向における1対の端部として、空気が流入する第1端部と、空気が流出する第2端部とを有するとともに、
前記筒状部材は、前記外壁を貫通し、且つ、前記空洞に連通する第1外壁孔を有しており、
前記第1端部には、前記空洞の蓋体として、第1フィルタ壁が設けられており、
前記第2端部には、前記空洞の蓋体として、第2フィルタ壁が設けられており、
前記空洞は、前記香味源が前記空洞に充填された状態で空隙を有しており、
前記第1外壁孔は、前記第2端部が下に位置するように前記所定方向を鉛直方向に沿って向けた状態で、前記空洞に充填された前記香味源と隣接する位置に設けられており、
前記第2フィルタ壁と、前記第1外壁孔との前記所定方向における距離は、0.5mm〜5.0mmの範囲内である
ことを特徴とする非加熱型香味吸引器。
【請求項2】
前記第2端部が下に位置するように前記所定方向を鉛直方向に沿って向けた状態で、前記空洞に充填された前記香味源の上側端部と、最も前記第2フィルタ壁側に近い前記第1外壁孔との前記所定方向における距離は、1.5mm〜35.0mmの範囲内である
ことを特徴とする請求項に記載の非加熱型香味吸引器。
【請求項3】
前記筒状部材は、前記外壁を貫通し、且つ、前記空洞に連通する第2外壁孔を更に有しており、
前記第2外壁孔は、前記第2端部が下に位置するように前記所定方向を鉛直方向に向けた状態で、前記空洞に充填された前記香味源の上側端部と前記第1フィルタ壁との間に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の非加熱型香味吸引器。
【請求項4】
前記第1外壁孔の直径は、0.1mm以上0.8mm以下である
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の非加熱型香味吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非加熱型香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通常の紙巻きたばこ(シガレット)の代替品として、刻みたばこや揮発生着香剤(メントールなど)に代表される小片状の香味源を充填する筒状の筒状部材と、ユーザに吸引される吸い口部とを備えた非加熱型香味吸引器が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この種の非加熱型香味吸引器では、筒状部材は、空洞を形成する筒状の外壁を有するとともに、空洞内に一対のフィルタ壁を有している。具体的に、筒状部材は、空気を流入する一方の端部側に設けられるフィルタ壁と、空気を流出する他方の端部側に設けられるフィルタ壁とを有している。なお、当該一対のフィルタ壁の間には、香味源が充填されている。このような構成の非加熱型香味吸引器によれば、香味源の燃焼を伴うことなくユーザに香味成分を提供することができる。
【0004】
ところで、今回、本発明者らが上記従来技術をより好適なものとすべく、改善案について種々の検討を行ったところ、新たな課題を見出した。具体的に、従来技術に係る非加熱型香味吸引器では、香味吸引開始時において、ユーザの吸引動作に伴って吸い口側に香味源が移動する。
【0005】
このとき、香味源の移動の程度が顕著であると、ユーザは、かかる香味源のフィルタ壁への衝突によって生じる衝撃を吸い口部から受けることになるため、一般的なシガレットを吸引する場合に比べて、違和感を感じてしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2010/095659
【発明の概要】
【0007】
本発明の特徴は、所定方向(軸線AX方向)に沿って延びる空洞(空洞15)を形成する筒状の外壁(外壁11)を有する筒状部材(筒状部材10)と、前記空洞内に充填される小片状の香味源(香味源30)とを備える非加熱型香味吸引器(非加熱型香味吸引器1)であって、前記筒状部材は、前記所定方向における1対の端部として、空気が流入する第1端部(第1端部21)と、空気が流出する第2端部(第2端部22)とを有するとともに、前記筒状部材は、前記外壁を貫通し、且つ、前記空洞に連通する第1外壁孔(第1外壁孔40a)を有しており、前記第1端部には、前記空洞の蓋体として、第1フィルタ壁(第1フィルタ壁51)が設けられており、前記第2端部には、前記空洞の蓋体として、第2フィルタ壁(第2フィルタ壁52)が設けられており、前記空洞は、前記香味源が前記空洞に充填された状態で空隙(空隙15a)を有しており、前記第1外壁孔は、前記第2端部が下に位置するように前記所定方向を鉛直方向に沿って向けた状態で、前記空洞に充填された前記香味源と隣接する位置に設けられることを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る非加熱型香味吸引器の概略斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る非加熱型香味吸引器の軸線方向に沿った断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る筒状部材を鉛直方向に沿って向けた状態における軸線方向に沿った断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る比較評価結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0010】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
(1)非加熱型香味吸引器の全体概略構成
図1は、本実施形態に係る非加熱型香味吸引器1の全体概略構成図である。図2は、非加熱型香味吸引器1の軸線AX方向に沿った断面図である。なお、図2には、非加熱型香味吸引器1の軸線AX方向が水平方向hに向けられた状態が示されている。
【0012】
図1及び図2に示すように、非加熱型香味吸引器1は、吸い口部5と、筒状部材10と、小片状の香味源30とを備える。非加熱型香味吸引器1は、香味成分を含む空気を吸引できるように構成されている。具体的に、非加熱型香味吸引器1のユーザが吸い口部5を介して筒状部材10に供給された空気を吸引することで、香味成分を含む空気を吸引できるように構成されている。
【0013】
吸い口部5は、筒状部材10に装着して使用される。なお、本実施形態では、吸い口部5は、筒状部材10と着脱可能に構成されている。
【0014】
筒状部材10は、所定方向に沿って延びる空洞15を形成する筒状の外壁11を有する。なお、本実施形態では、所定方向は、非加熱型香味吸引器1の軸線AX方向である。
【0015】
筒状部材10は、非加熱型香味吸引器1のユーザの吸引時に、筒状部材10の空洞15に発生した空気流を吸い口部5に向けて誘導する。具体的には、非加熱型香味吸引器1のユーザが吸い口部5を通じて吸引することによって発生した空気流(図2の矢印参照)を吸い口部5に向けて誘導する。
【0016】
筒状部材10としては、例えば、中空の円筒体として形成された紙管又はプラスチック管によって構成できる。
【0017】
筒状部材10の空洞15は、香味源30が空洞15に充填された状態で空隙15aを有している。
【0018】
筒状部材10は、軸線AX方向における1対の端部として、空気が流入する第1端部21と、空気が流出する第2端部22とを有する。
【0019】
第1端部21には、空洞15の蓋体として、第1フィルタ壁51が設けられている。第1フィルタ壁51は、小片状の香味源30のサイズよりも小さい目開きを有するメッシュ部材によって構成されており、空気の通気を可能としている。また、第1端部21は、吸い口部5と係合可能な突出部21aを有している。なお、突出部21aは、設けられていなくても構わない。
【0020】
第2端部22には、空洞15の蓋体として、第2フィルタ壁52が設けられている。第2フィルタ壁52は、小片状の香味源30のサイズよりも小さい目開きを有するメッシュ部材によって構成されている。第2端部22は、吸い口部5と係合可能な突出部22aを有している。
【0021】
なお、第1フィルタ壁51及び第2フィルタ壁52としては、メッシュ部材のみならず、紙によって構成される紙フィルタや、セルロースアセテートによって構成されるアセテートフィルタ等も、好適に用いることができる。
【0022】
また、筒状部材10は、外壁11を貫通し、且つ、空洞15に連通する外壁孔を有している。具体的には、外壁11を貫通し、且つ、空洞15に連通する第1外壁孔40aと第2外壁孔40bとを有している。なお、第1外壁孔40aと第2外壁孔40bとの詳細な構成については、後述する。
【0023】
香味源30は、空洞15内に充填される。具体的に、香味源30は、空洞15の蓋体としての第1フィルタ壁51と、空洞15の蓋体としての第2フィルタ壁52との間に充填される。
【0024】
本発明においては、上述したように、筒状部材10の空洞15が、香味源30がかかる空洞15に充填された状態で空隙15aを有している。そのため、充填された香味源30は、筒状部材10の空洞15内において移動可能である。また、本発明者等の知見によれば、香味源30が移動可能であり、かつ、外壁11に外壁孔を空けた場合、ユーザの口腔内に導入される香味は、当該外壁孔よりも吸い口部5側に配置された香味源30から供給される。そのため、本実施形態のように外壁11に外壁孔を空け、香味源30が移動可能なように充填されていると、例えばユーザが振ったりすることによって、吸い口部5の近辺の香味源30が循環する。これにより、長時間に渡って十分な量の香味をユーザに供給することができる。
【0025】
本発明において、香味源30は、空洞15を鉛直方向に静置した際の空洞15の高さを1(基準100%)としたときに、空洞15の高さに対して、0.2〜0.8(20%〜80%)の高さまで充填されていることが好ましく、0.3〜0.7(30%〜70%)の高さまで充填されていることがより好ましい。
【0026】
香味源30は、たばこ葉を裁刻又は粉砕した刻みたばこ、あるいは、たばこ葉の成形体等のたばこ粉粒を含む。香味源としては、香味成分を有する揮発生着香剤とを含んでも良い。香味成分としては、例えば、メントール、ナツメグ、オレンジ、ローズ、ジャスミンなどでもよい。
【0027】
(2)第1外壁孔及び第2外壁孔の構成
次に、筒状部材10が有する第1外壁孔40a及び第2外壁孔40bの構成について図3を参照して説明する。図3には、筒状部材10の軸線AX方向を鉛直方向Vdに沿って向けた状態における筒状部材10の断面図が示されている。なお、図3の例では、図の下側が鉛直方向Vdであり、図の上側が鉛直方向Vdの反対方向Vuである。
【0028】
ここで、香味源30は、筒状部材10の空洞15内において、移動可能である。よって、図3に示すように、第2端部22が下に位置するように軸線AX方向を鉛直方向Vdに沿って向けた状態では、香味源30が空洞15の第2フィルタ壁52側に移動する。これにより、空洞15の第2フィルタ壁52側には、香味源30が密集する領域が形成される。なお、第2端部22が下に位置するように軸線AX方向を鉛直方向Vdに向けた状態とは、第1端部21から第2端部22に向かう軸線AXに沿った方向が、鉛直方向Vdに向けられた状態と言い換えることができる。
【0029】
本実施形態では、筒状部材10が、外壁11を貫通し、且つ、空洞15に連通する外壁孔として、第1外壁孔40aと第2外壁孔40bとを有する。第1外壁孔40aは、第2端部22が下に位置するように軸線AX方向を鉛直方向Vdに沿って向けた状態で、空洞15に充填された香味源30と隣接する位置に設けられる。
【0030】
具体的に、第1外壁孔40aは、第2端部22が下に位置するように軸線AX方向を鉛直方向Vdに沿って向けた状態で、香味源30が密集する領域に連通する位置に設けられる。
【0031】
なお、換言すれば、第1外壁孔40aは、筒状部材10の軸線AXに沿って、第1端部21から第2端部22に向かう方向が、鉛直方向Vdに向けられた状態で、香味源30の上側端部30aと第2フィルタ壁52の上側端部との間に位置する。
【0032】
また、本実施形態では、筒状部材10は、第1外壁孔40aを複数有する。具体的に、筒状部材10は、複数の第1外壁孔40a1乃至40a3を有する。複数の第1外壁孔40a1乃至40a3は、筒状部材10の軸線AXを基準として、筒状部材10の外壁11の両側のそれぞれに、対称関係を有するように形成されている。つまり、本実施形態では、複数の第1外壁孔40a1乃至40a3が、一対形成されている。
【0033】
具体的に、本実施形態では、筒状部材10は、外壁11の一方側に3つの第1外壁孔40a1乃至40a3を有し、外壁11の他方側に3つの第1外壁孔40a1乃至40a3を有する。
【0034】
なお、第1外壁孔40a1乃至40a3の数は、これに限定されるものではない。さらに、第1外壁孔40a1乃至40a3は、筒状部材10の軸線AXを基準として、筒状部材10の外壁11の一方側のみに形成されていてもよい。また、第1外壁孔40a1乃至40a3のそれぞれは、配置される位置を除き、同様の構成であるため、本実施形態では、第1外壁孔40a1乃至40a3のそれぞれを、単に第1外壁孔40aとして適宜示す。
【0035】
また、図3に示すように、本実施形態に係る非加熱型香味吸引器1では、第2端部22が下に位置するように軸線AX方向を鉛直方向Vに向けた状態で、空洞15に充填された香味源30の上側端部30aと、第1外壁孔40a1乃至40a3の内、最も第2フィルタ壁52に近い第1外壁孔40a1との軸線AX方向における距離Laは、1.5mm〜35.0mmの範囲内であることが好ましい。また、距離Laは、10.0〜31.0mmの範囲内であることがより好ましい。
【0036】
なお、本実施形態において、距離Laは、複数の第1外壁孔40a1乃至40a3と香味源30の上側端部30aとの最長距離である。つまり、距離Laは、複数の第1外壁孔40a1乃至40a3の内、香味源30の上側端部30aから最も遠い第1外壁孔40a1と、香味源30の上側端部30aとの距離と言い換えることができる。
【0037】
また、図3に示すように、第2フィルタ壁52と、第1外壁孔40aとの軸線AX方向における距離Lbは、0.1mm〜10.0mmが好ましく、0.5mm〜5.0mmの範囲内であることがより好ましい。
【0038】
なお、本実施形態において、距離Lbは、複数の第1外壁孔40aと第2フィルタ壁52との最短距離である。つまり、距離Lbは、複数の第1外壁孔40a1乃至40a3の内、第2フィルタ壁52に最も近い第1外壁孔40a1と、第2フィルタ壁52との距離である。
【0039】
本実施形態において、複数の第1外壁孔40a1乃至40a3の総面積は0.016mm以上、36.200mm以下であることが好ましい。なお、複数の第一外壁孔の総面積とは、複数の第1外壁孔40a1乃至40a3それぞれの開口面積の総和である。かかる総面積を0.016mm以上とすることにより、香味源30に由来する香味吸引具使用時における衝撃を、より効果的に緩和することができる。また、36.200mm以下とすることにより、香味吸引具に好適な通気抵抗をユーザに与えやすくすることができる。なお、複数の第1外壁孔40aの総面積は0.141mm以上、20.370mm以下であることがより好ましい。
【0040】
また、本実施形態において、外壁11に形成される複数の第1外壁孔40a1乃至40a3の外壁孔数(孔数)は、2つ以上72つ以下であることが好ましく、6つ以上64つ以下であることがより好ましい。
【0041】
また、本実施形態において、複数の第1外壁孔40a1乃至40a3のそれぞれの直径(孔径)は、0.1mm以上0.8mm以下であることが好ましい。また、直径(孔径)は、0.3mm以上0.6mm以下であることがより好ましい。
【0042】
また、本実施形態において、複数の第1外壁孔40a1乃至40a3のそれぞれの開口面積(孔面積)は、0.01mm以上0.50mm以下であることが好ましい。また、開口面積は、0.07mm以上0.28mm以下であることが好ましい。
【0043】
なお、複数の第1外壁孔40a1乃至40a3の外壁孔数と、直径と、開口面積とは、上述の範囲内において、上述した総面積を考慮して適宜調整してもよい。
【0044】
次に、第2外壁孔40bの構成について説明する。図3に示すように、第2外壁孔40bは、第2端部22が下に位置するように軸線AX方向を鉛直方向Vdに沿って向けた状態で、空洞15に充填された香味源30の上側端部30aと第1フィルタ壁51との間に設けられている。
【0045】
また、本実施形態では、第2外壁孔40bを複数有する。具体的に、筒状部材10が、複数の第2外壁孔40b1乃至40b3を有する。複数の第2外壁孔40b1乃至40b3は、筒状部材10の軸線AXを基準として、筒状部材10の外壁11の両側のそれぞれに、対称関係を有するように形成されている。つまり、本実施形態では、複数の第2外壁孔40b1乃至40b3が、一対形成されている。
【0046】
具体的に、本実施形態では、筒状部材10は、外壁11の一方側に3つの第2外壁孔40b1乃至40b3を有し、外壁11の他方側に3つの第2外壁孔40b1乃至40b3を有する。
【0047】
なお、第2外壁孔40bの数は、これに限定されるものではない。さらに、第2外壁孔40bは、筒状部材10の軸線AXを基準として、筒状部材10の外壁11の一方側のみに形成されていてもよい。
【0048】
また、第2外壁孔40bの外壁孔数と、直径と、開口面積とは、第1外壁孔40aと同一であってもよいし、異なってもよい。なお、第2外壁孔40b1乃至40b3のそれぞれは、配置される位置を除き、同様の構成であるため、本実施形態では、第2外壁孔40b1乃至40b3を、単に第2外壁孔40bとして適宜示す。
【0049】
(3)作用・効果
以上説明したように、本実施形態に係る非加熱型香味吸引器1は、空洞15を形成する外壁11を有する筒状部材10と、筒状部材10の空洞15に充填される香味源30とを有する。
【0050】
筒状部材10は、空気が流入する第1端部21と、空気が流出する第2端部22とを有するとともに、空気が流入する第1外壁孔40aと第2外壁孔40bとを有する。また、第1端部21には、第1フィルタ壁51が設けられ、第2端部22には、第2フィルタ壁52が設けられている。
【0051】
ここで、ユーザが、図2に示すような状態の非加熱型香味吸引器1から香味の吸引を開始した際に、香味源30は、空気の流出先である第2端部22側に向かって移動し、第2フィルタ壁52に密集しようとする。
【0052】
本実施形態に係る非加熱型香味吸引器1では、筒状部材10の空洞15には、第1端部21と第1外壁孔40aと第2外壁孔40bとから空気が流入する。従って、筒状部材10の第1端部21のみから空気が流入する場合、即ち、軸線AX方向のみに沿った空気が流入する場合に比べて、第2フィルタ壁52側に向かう空気の流れの内、軸線AX方向のみに沿った空気の流れが抑制される。
【0053】
また、第1外壁孔40aは、筒状部材10の第2端部22が下に位置するように軸線AX方向を鉛直方向Vdに沿って向けた状態で、空洞15に充填された香味源30と隣接する位置に設けられる。
【0054】
ここで、第2端部22が下に位置するように軸線AX方向を鉛直方向Vdに沿って向けた状態とは、香味源30が最も第2フィルタ壁52に密集した状態を模擬した状態である。つまり、第1外壁孔40aは、充填されている香味源30が第2端部22側に密集した状態を模擬した状態において、香味源30と隣接する位置に設けられている。
【0055】
上述した位置関係となるように、非加熱型香味吸引器1に第1外壁孔40aを設けることで、香味源30が第2フィルタ壁52に密集することをより確実に抑制できる。具体的には、第1外壁孔40a1乃至40a3を設けることにより、香味吸引時において、第1端部21に由来する軸線AX方向のみに沿った空気の流れ以外にも、かかる軸線AX方向に交差する方向に沿った空気の流れが発生する。また、第1外壁孔40a1乃至40a3を設けることにより、第1外壁孔40a1乃至40a3に由来する空気の流れが支配的になり、その結果、香味源30に与えられる空気の流れを、複数方向から与えることができる。これにより、香味吸引時において、香味源30が第2フィルタ壁52に密集することを抑制しうる。
【0056】
言い換えると、従来技術では、軸線AX方向の空気の流れのみが発生していたため、第2フィルタ壁52に香味源30が急激に密集していたが、本実施形態では、上述のように、第1外壁孔40a1乃至40a3を設けることにより、軸線AX方向とは異なる方向に沿った空気の流れを発生させられることから、香味源30が急激に密集することを効果的に抑制できる。
【0057】
このように、非加熱型香味吸引器1によれば、香味吸引開始時において、香味源30の第2フィルタ壁52への急激な移動や第2フィルタ壁52近傍への急激な密集を抑制できる。
【0058】
すなわち、非加熱型香味吸引器1によれば、香味吸引開始時において、香味源の移動によってユーザに与えられる違和感を抑制することができる。
【0059】
また、図3に示すように、第2フィルタ壁52と、第1外壁孔40aとの軸線AX方向における距離Lbは、0.5mm以上5.0mm以下の範囲内であることが好ましく、0.7mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。
【0060】
ここで、筒状部材10の空洞15に流入する空気は、第1端部21と第1外壁孔40aと第2外壁孔40bとから流入するが、空洞15に流入する空気の大半は、複数の第1外壁孔40a1乃至40a3の内、最も第2フィルタ壁52側に位置する第1外壁孔40a1から流入する。したがって、吸引時において、香味源30による衝撃を緩和するためには、第1外壁孔40aは、なるべく第2フィルタ壁52と近接させた位置に設けて、距離Lbを小さくすることが好ましい。
【0061】
一方、第1外壁孔40aと第2フィルタ壁52との距離を一定以上に保つことで、第1外壁孔40aから第2フィルタ壁52に流れる空気と香味源30とが効果的に接触できる。その結果、好適な量の香味を、口腔内に供給することができる。したがって、本実施形態において、距離Lbは、0.5mm以上であることが好ましい。
【0062】
また、距離Lbが5.0mm以下であれば、第1端部21から流入する空気と、第1外壁孔40aから流入する空気とが、第2フィルタ壁52から離れた位置で合流せずに、軸線AX方向に交差する方向に流れる空気を第2フィルタ壁52付近で発生し易くなり、軸線AX方向のみに沿った空気の流れをより確実に低下させることが可能になる。すなわち、第2フィルタ壁52に集束する空気の流れを効果的に分散させるためには、距離Lbが5.0mm以下であることが好ましい。
【0063】
(4)比較評価1
次に、本実施形態に係る非加熱型香味吸引器の比較評価について説明する。まず、実施例1乃至2に係る非加熱型香味吸引器と、比較例1に係る非加熱型香味吸引器とを準備した。
【0064】
実施例1として、図1及び図2に示す形状の非加熱型香味吸引器を作製した。具体的には、筒状部材10としてプラスチックの成形体を用い、第1フィルタ壁51及び第2フィルタ壁52としてメッシュ部材を用いた。なお、筒状部材10は鉛直方向(AX方向)に42mmの長さを円筒形状の外壁11及び、鉛直方向に各々4mmの長さを有する突出部21a及び22aを有している。また、香味源としては、たばこ葉を成形したたばこ粉粒を用いた。第2端部22が鉛直方向の下になるように静置した際に、第2フィルタ壁52から香味源の上端までの距離が25mmとなるように、香味源を充填した。
【0065】
また、実施例1では、筒状部材10上に複数の第1外壁孔40aと複数の第2外壁孔40bとを設けた。また、複数の第1外壁孔40aのうち第2フィルタ壁52との距離が最も近い第1外壁孔40a1(以下、直近の第1外壁孔40ともいう)と、第2フィルタ壁52との距離Lbが1.0mmとなるように、直近の第1外壁孔40a1を筒状部材10に形成した。また、直近の第1外壁孔40a1を形成すると同時に、当該直近の第1外壁孔40a1から第1フィルタ壁51の直前まで、筒状部材10の軸線AX方向に沿って、直近の第1外壁孔40a1以外の複数の第1外壁孔40aと複数の第2外壁孔40bとを形成した。複数の第1外壁孔40aと複数の第2外壁孔40bとのそれぞれは、孔の中心間の距離(ピッチ)が、2.0mmの間隔を有するように設けた。このようにして、複数の第1外壁孔40aと複数の第2外壁孔40bを筒状部材10の所定領域に1列設けた。同様に、複数の第1外壁孔40aと複数の第2外壁孔40bは、筒状部材10の軸線AXを基準として、筒状部材10の外壁11の反対側にも、更に1列設けた。即ち、実施例1の非加熱型香味吸引器は、複数の第1外壁孔40aと複数の第2外壁孔40bを2列有している。なお、複数の第1外壁孔40aと複数の第2外壁孔40bの各々の直径(孔径)は0.5mmとした。
【0066】
また、実施例2として、直近の第1外壁孔40a1の位置を、第2フィルタ壁52からの距離Lbが10.0mmとなるように変更した非加熱型香味吸引器を生製した。なお、実施例2は、距離Lbの構成以外は、実施例1と同様の構成を有する。
【0067】
また、比較例1として、第1外壁孔40aと第2外壁孔40bを形成していない非加熱型香味吸引器を生製した。なお、比較例1は、第1外壁孔40aと第2外壁孔40bを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の構成を有する。
【0068】
(通気抵抗の測定)
ISO 6565 - 1997 Draw resistance of cigarettes and pressure drop of filter rodsに準拠した方法を用い、上記した実施例1、2及び比較例1の非加熱型香味吸引器の通気抵抗を測定した。具体的には、流れる空気の上流側から見て、非加熱型香味吸引器、差圧計、マスフローコントローラ、真空ポンプの順に装置をそれぞれ接続した。そして、真空ポンプで1050ml/secで吸引し、それぞれの非加熱型香味吸引器の通気抵抗を測定した。測定結果を表1に示す。
【0069】
(吸引時の衝撃に関する官能評価)
上記した実施例1、2及び比較例1の香味吸引器を用いて、評価者20人に対して香味吸引動作を実施させて、各々の非加熱型香味吸引器に対する官能評価試験を行った。具体的には、非加熱型香味吸引動作時の香味源に由来する衝撃を評価する官能評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
上記表1の評価結果からも明らかなように、比較例1においては衝撃が気になると答えた評価者が多数である一方、実施例1及び2においては、衝撃が気にならないと答えた評価者が多数となった。このように、実施例1及び2においては、比較例1に比べて、衝撃に起因する違和感を抑制する効果に優れていることが証明された。また、実施例1は、実施例2に比べて、吸引動作時の衝撃に起因する違和感をより効果的に抑制できていることが証明された。
【0072】
なお、通気抵抗測定の結果からも明らかなように、第1及び第2のフィルタ壁としてメッシュを用いた場合、第1外壁孔40aと第2外壁孔40bとを有する非加熱型香味吸引器は、15.0mmHO以下の通気抵抗を有することがわかる。
【0073】
(吸引動作時の通気抵抗変動測定)
続いて、実施例1の非加熱型香味吸引器及び比較例1の非加熱型香味吸引器とを用い、各非加熱型香味吸引器における吸引動作時における通気抵抗の変化を測定した。
【0074】
まず、試験装置を準備した。具体的には、真空ポンプ(linicon lv660 日東工器社製)と香味吸引器の間に、マスフローコントローラ(SEC−B40 堀場エステック社製)、電磁弁(AG−43−02−4 CDK社製)、差圧計(DP45−28 validyine engineering corporation製)を真空ポンプ側(系の下流側)から順に配設し、差圧計とデータロガー(NR600 キーエンス社製)及びPCを接続することで、通気抵抗の経時変化が可視化できるような試験装置を作製した。
【0075】
また、試験装置の電磁弁を閉めた状態、即ち、各非加熱型香味吸引器から真空ポンプへの空気流入を抑えた状態において、真空ポンプの空気吸引の出力を5L/minで安定するように調節した。その後、電磁弁を解放することで、香味吸引器からの空気吸引を行った。この時、差圧計を用い、空気吸引直後の通気抵抗の経時変化を測定した。測定結果を図4に示す。
【0076】
図4からも明らかなように、比較例1の非加熱型香味吸引器においては、吸引開始から0.1秒以内に、通気抵抗の大きな減少及び係る減少の回復挙動が見られる。一方、実施例1の非加熱型香味吸引器においてはこのような通気抵抗の大きな変動等は無く、吸引開始直後から極めて安定した通気抵抗を示していることがわかる。香味源に由来する衝撃は吸引開始直後に生じるため、係る通気抵抗の経時変化の違いが上記した官能評価の結果の違いを導き出したといえる。即ち、本発明は吸引開始後0.1秒以内という、極めて短い時間の間において、通気抵抗の変動量を抑制する効果に優れていることが証明された。
【0077】
(5)比較評価2
次に、第1フィルタ壁と第2フィルタ壁との構成を変えて、非加熱型香味吸引器に対する官能評価試験を行った。まず、実施例3、4及び比較例2の非加熱型香味吸引器を準備した。
【0078】
具体的に、実施例3として、第1フィルタ壁と第2フィルタ壁とにアセテートフィルタを用いた非加熱型香味吸引器を作製した。実施例3は、第1フィルタ壁と第2フィルタ壁との構成以外は、上述した実施例1と同様の構成を有する。
【0079】
次に、実施例4として、第1フィルタ壁と第2フィルタ壁とにアセテートフィルタを用いた非加熱型香味吸引器を作製した。実施例4は、第1フィルタ壁と第2フィルタ壁との構成以外は、上述した実施例2と同様の構成を有する。
【0080】
次に、比較例2として、第1フィルタ壁と第2フィルタ壁とにアセテートフィルタを用いた非加熱型香味吸引器を作製した。比較例2は、第1フィルタ壁と第2フィルタ壁との構成以外は、上述した比較例1と同様の構成を有する。
【0081】
なお、実施例3乃至4と比較例2では、第1及び第2フィルタ壁に用いたアセテートフィルタは、いずれも非加熱型香味吸引器の軸線AX方向に対して5mmの厚みを有するものを用いた。
【0082】
(吸引時の衝撃に関する官能評価)
上記した実施例3、4及び比較例2の香味吸引器を用いて、評価者20人に対して香味吸引動作を実施させて、各々の非加熱型香味吸引器に対する官能評価試験を行った。具体的には、非加熱型香味吸引動作時の香味源に由来する衝撃を評価する官能評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
上記表2の結果からも明らかなように、第1及び第2のフィルタ壁として、アセテートフィルタを用いた場合においても、実施例3及び4では、吸引動作時の衝撃を極めて効果的に低減することが証明された。すなわち、第1外壁孔40aと第2外壁孔40bとを有する非加熱型香味吸引器は、吸引動作時の衝撃を極めて効果的に低減することが証明された。また、実施例3は、実施例4に比べて、吸引動作時の衝撃に起因する違和感をより効果的に抑制できていることが証明された。なお、第1及び第2のフィルタ壁として、アセテートフィルタを用いた場合、第1外壁孔40aと第2外壁孔40bとを有する非加熱型香味吸引器は、25.0mmHO以下の通気抵抗を有することがわかる。
【0085】
(6)その他の実施形態
上述したように、本発明の一実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
【0086】
例えば、上述した本発明の実施形態では、吸い口部5と筒状部材10とは、別体に構成されている場合を例に挙げて説明した。しかし、吸い口部5と筒状部材10とは、一体に形成されていてもよい。この場合、筒状部材10の第2端部22が、吸い口部5を有する構成としてもよい。
【0087】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0088】
なお、日本国特許出願第2013−70563号(2013年3月28日出願)の全内容が、参照により、本願明細書に組み込まれている。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、香味吸引時にユーザに与える違和感を抑制することが可能な非加熱型香味吸引器を提供することができる。
図1
図2
図3
図4