(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態の概要]
実施の形態に係る接合体の製造方法は、第1基材の所定領域に貼り付けられた樹脂材により第2基材が接合されてなる接合体の製造方法であって、前記所定領域を被覆するように、シート基材の一主面に樹脂材を備えるシート材を前記第1基材に貼付ける貼付工程と、前記第1基材に貼り付けられたシート材に、前記所定領域に対応させて分離容易部を形成する形成工程と、前記分離容易部を境にして、内側部分の樹脂材が前記第1基材の所定領域に残り、外側部分の樹脂材が前記第1基材に残らないように、前記シート基材から前記内側部分の樹脂材を分離する分離工程とを含む。
【0015】
ここで、貼付工程におけるシート基材の一主面に備えられた樹脂材は、第1基材の所定領域に対応する(所定領域に貼り付けられる)樹脂材と、所定領域外に対応する(所定領域に貼り付けられない)樹脂材とを含む。
【0016】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、第1基材の所定領域に貼り付けられた樹脂材により第2基材が接合されてなる接合体の製造方法であって、前記所定領域を被覆するように、シート基材の一主面に樹脂材を備えるシート材を前記第1基材に貼付ける貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記シート材に、前記所定領域に対応させて分離容易部を形成する形成工程と、前記形成工程の後に、前記分離容易部を境にして、内側部分の樹脂材が前記第1基材の所定領域に残り、外側部分の樹脂材が前記第1基材に残らないように、前記シート基材から前記内側部分の樹脂材を分離する分離工程とを含む。
【0017】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記シート材は、少なくとも前記シート基材と前記樹脂材とを積層した積層構造である。これにより、樹脂材の取り扱いが容易となる。
【0018】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記シート材は、2層構造であり、前記樹脂材の引張強度は、前記シート基材の引張強度に比べて小さい。これにより、シート基材が破れることなく、シート材を第1基材や樹脂材から剥がすことができる。
【0019】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記分離容易部はシート材の切断により形成され、前記貼付工程の前に、前記第1基体における前記シート材の切断箇所に対応する部分を含む領域に保護膜を形成する工程を含む。これにより、形成工程で、第1基体におけるシート材の切断箇所に対応する部分に傷が付くのを少なくできる。
【0020】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記保護膜は金属である。これにより、形成工程で、第1基体におけるシート材の切断箇所に対応する部分に傷が付くのをさらに少なくできる。
【0021】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記形成工程では、レーザ光を用いて前記分離容易部を形成し、前記保護膜は、前記レーザ光を反射する材質又は吸収する材料である。
【0022】
これにより、形成工程で、第1基体におけるシート材の切断箇所に対応する部分に傷が付くのを少なくできる。
【0023】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記分離容易部は、ミシン目である。これにより、分離容易部を境にして、内側部分の樹脂材が第1基材の所定領域に残り、外側部分の樹脂材が第1基材に残らないように、シート基材から内側部分の樹脂材を容易に分離することができる。
【0024】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記第1基材は、表示パネル用の基体を有し、前記分離容易部は、前記基体における非画像表示領域に対応して形成される。これにより、基体の画像表示領域に対応する部分に樹脂材を貼り付けることができる。
【0025】
前記基体は、前記非画像表示領域に対応する部分にブラックマトリクスが形成され、前記分離容易部は、前記シート材の切断により形成され、当該切断箇所が前記ブラックマトリクス上に位置する。これにより、第1基体におけるシート材の切断箇所に対応する部分にブラックマトリクスがあるため、形成工程で基体に傷が付くのを少なくでき、当該ブラックマトリクスは非画像表示領域に形成されているので、基体における画像表示領域に対応する部分に傷が付くことをなくすことができる。
【0026】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記接合体は、第1基体と第2基体とが樹脂材により接合されてなる表示パネルであり、前記第1基材には前記第1基体が形成されていると共に前記第2基材には前記第2基体が形成され、前記第1基材の所定領域は、前記第1基体における前記第2基体側の面上にあり、前記貼付工程では、前記樹脂材が前記第1基体側になるように前記シート材が貼り付けられ、前記分離工程の後に、前記第1基体と前記第2基体とが対応するように、前記第1基材と前記第2基材とを貼合わせる貼合工程と、前記貼合せ工程の後に、貼合せた状態で前記第1基材の所定領域に残った樹脂材を硬化させる硬化工程とを含む。これにより、樹脂材を精度良く第1基体に貼り付けることができ、画像を表示する表示部の最外周から表示パネルの最外周までの距離を小さくすることができる。
【0027】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記第1基材は前記第1基体が複数形成され、前記第2基材は前記第2基体が前記第1基体に対応して複数形成されている。これにより、表示パネルを効率良く製造することができる。
【0028】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記第1基材は、前記表示パネルの表示領域を規定するマークを有する。これにより、形成工程で、分離容易部を精度良く形成することができる。
【0029】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記形成工程において、前記分離容易部は、前記マークに対応させて、前記シート材を断続的に切断することで形成される。これにより、形成工程で、分離容易部を精度良く形成することができる。
【0030】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記形成工程において、前記分離容易部は、前記マークに対応させて、前記シート材を連続的に切断することで形成され、前記剥離工程は、前記第1基材上に残ったシート材のシート基材に剥離部材を貼る工程と、前記シート基材に貼られた剥離部材を前記第1基体から剥がす工程とを含む。これにより、形成工程で、分離容易部を精度良く形成することができる。さらに、分離容易部を境にして、内側部分の樹脂材が第1基材の所定領域に残り、外側部分の樹脂材が第1基材に残らないように、シート基材から内側部分の樹脂材を容易・確実に分離することができる。
【0031】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記形成工程において、レーザ光を用いて前記シート材を切断する。これにより、分離容易部を境にして、内側部分の樹脂材が第1基材の所定領域に残り、外側部分の樹脂材が第1基材に残らないように、シート基材から内側部分の樹脂材を容易に分離することができる。
【0032】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記レーザ光の波長は、前記樹脂材及び前記シート基材が前記レーザ光から出力されるレーザ光を吸収する波長であり、前記レーザ光のレーザ光パワーは、前記樹脂材及び前記シート基材の各々を、前記樹脂及び前記シート基材の各々の厚み方向の全てにわたって熱飛散又は蒸発若しくは昇華させる程度のパワーである。これにより、シート基材及び樹脂材を確実に切断することができる。
【0033】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記レーザ光は、赤外線レーザ光であり、前記赤外線レーザ光により、前記樹脂材及び前記シート基材の各々は、前記樹脂材及びシート基材の各々の厚み方向の全てにわたって熱飛散する。これにより、シート基材及び樹脂材を確実に切断することができる。
【0034】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記レーザ光は、UVレーザ光であり、前記UVレーザ光により、前記樹脂材及び前記シート基材の各々は、前記樹脂材及び前記シート基材の各々の厚み方向の全てにわたって蒸発若しくは昇華する。これにより、シート基材及び樹脂材を確実に切断することができる。
【0035】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記形成工程において、ナイフを用いて前記シート材を切断する。これにより、これにより、分離容易部を境にして、内側部分の樹脂材が第1基材の所定領域に残り、外側部分の樹脂材が第1基材に残らないように、シート基材から内側部分の樹脂材を容易に分離することができる。
【0036】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記形成工程において、前記シート基材の引き剥がし方向と直交する方向に形成される分離容易部は、当該分離容易部の切断面が、前記第1基材側から離れるに従って前記所定領域の外側から内側へと傾斜する状態で形成される。これにより、分離容易部を境にして、内側部分の樹脂材が第1基材の所定領域に残り、外側部分の樹脂材が第1基材に残らないように、シート基材から内側部分の樹脂材を容易に分離することができる。
【0037】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記第1基体は、カラーフィルターが形成された基板であり、前記第2基体は、有機EL素子が形成された基板である。これにより、CF基板側に分離容易部が形成されることとなり、EL基板側での分離容易部の形成が不要となる。なお、カラーフィルターが形成された基板をCF基板とし、有機EL素子が形成されている基板を有機EL基板やEL基板とする。
【0038】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記第1基体は、前記所定領域の外周に沿ってブラックマトリクスが帯状に形成され、前記ブラックマトリクスの内側領域にカラーフィルターは設けられ、前記ブラックマトリクスの外周は前記所定領域の外周と一致している。これにより、カラーフィルター部分に確実に樹脂材を貼り付けることができる。
【0039】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記形成工程において、前記シート材は、前記ブラックマトリクス上で切断される。このとき、ブラックマトリクスが第1基体を保護する保護膜となり、第1基体に傷が付くのを少なくできる。
【0040】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記硬化工程の後に、前記ブラックマトリクス上の切断跡に沿って、前記第1基材と第2基材とが接合した状態で切り離される。これにより、完成品として表示パネルのブラックマトリクス上には切断跡が残らないようにできる。
【0041】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記硬化工程の後に、前記ブラックマトリクス上の切断跡の内側部分で、前記第1基材と第2基材とが接合した状態で切り離される。これにより、完成品として表示パネルのブラックマトリクス上には切断跡が残らないようにできる。
【0042】
また、実施の形態に係る接合体の製造方法は、前記貼付工程の前に、前記第1基材上の前記所定領域外に剥離膜を形成する工程を含む。これにより、分離容易部を境にして、内側部分の樹脂材が第1基材の所定領域に残り、外側部分の樹脂材が第1基材に残らないように、シート基材から内側部分の樹脂材を容易に分離することができる。
【0043】
さらに、実施の形態に係る接合体は、第1基材の所定領域に貼り付けられた樹脂材により第1基材と第2基材とが接合され且つ前記第1基材と前記第2基材とが前記所定領域に沿って厚み方向に切断されてなる接合体であって、前記第1基材は、第1基板と、前記第1基板の前記第2基材側の面に設けられた機能部とを有し、前記第1基材の切断面において、前記第1基板と前記樹脂材との間に、前記第1基板を保護する保護層が露出している。これにより、樹脂材を所定領域に沿って切断する際に第1基板が傷つけられるのを防止できる。
【0044】
また、実施の形態に係る接合体は、前記第2基材は、第2基板の前記第1基材側の面に発光色の異なる発光素子を複数有する発光部を有し、前記機能部は、前記発光素子に対応して設けられた複数のカラーフィルターと、当該カラーフィルター間に設けられたブラックマトリクスとを備え、前記保護層は前記ブラックマトリクスと同じ材料で構成されている。これにより、ブラックマトリクスを形成する際に保護層も同時に設けることができる。
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る接合体の製造方法及び接合体について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態では、本発明で使用している、材料、数値は好ましい例を例示しているだけであり、この形態に限定されることはない。また、本発明の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。また、他の実施の形態との組み合わせは、矛盾が生じない範囲で可能である。
[第1の実施の形態]
本実施の形態では、接合体として表示パネルを例に説明する。
【0045】
例えば、EL表示装置や液晶表示装置等の表示装置の分野においては、正面視(画面の前から見た状態である。)における表示装置に対する表示部(画面)の占有面積の増大化、つまり、表示部の最外周から表示装置の最外周までの距離(表示装置のフレーム幅)を小さくする、所謂、狭額縁化が要望されている。
【0046】
一方、EL表示装置の表示パネルは、後述するEL基板又はCF基板の表面にシート材で供給される樹脂材を貼り付け、EL基板とCF基板とを貼り合わせ、両基板を前記樹脂材により接合している。
【0047】
このような表示パネルの製造方法において、上記背景技術で説明した第1の技術や第2の技術を利用すると、精度良くシート材を基体であるEL基板又はCF基板に貼り付けることができず、上記狭額縁化の要望に答えることができない。
【0048】
具体的には、狭額縁化に対応するには、シート材の基体(EL基板又はCF基板)への貼合わせ精度は100[μm]のオーダが必要であるのに対し、第1の技術及び第2の技術では、その貼り合わせ精度は1[mm]のオーダである。
【0049】
以下、EL表示パネル(以下、単に「表示パネル」という。)について説明する。
1.構成
(1)全体構成
図1は、第1の実施の形態の表示パネル10の要部を模式的に示す部分断面図である。
【0050】
表示パネル10は、同図に示すように、EL基板11とCF基板12とを有し、EL基板11とCF基板12との間に封止樹脂層13が介在している。
【0051】
この封止樹脂層13は、上述したシート材で供給された樹脂材が硬化したものであり、EL基板11とCF基板12とを接合する目的の他、水分やガスが表示パネル10の外部からEL基板11へ侵入するのを防止する目的を有する。
【0052】
なお、表示パネル10における光の取出し口側を上側や表側とし、光の取り出し口側は
図1における下側である。
(2)EL基板
EL基板11は、基板、層間絶縁膜、陽極、バンク、発光層等からなる。
【0053】
図2はEL基板の平面図であり、
図3は
図2のA1−A2の断面を矢印方向から見た図であり、
図4は
図2のB1−B2の断面を矢印方向から見た図である。
【0054】
なお、EL基板11において、CF基板12と貼り合わされる側を上側や表側(
図1では下側である。)とする。
【0055】
EL基板11は、基板(111)上に複数の画素30が行列方向に配置されている。ここでは、1つの画素30は、3個(3色(R,G,B))の発光素子31(R),31(G),31(B)により構成されている。なお、発光色に関係なく発光素子全般を指す場合は、単に「31」の符号を用いる。
【0056】
ここでは、1つの発光素子31は長い形状をし、3つの発光素子31(R),31(G),31(B)が、発光素子31の短手方向に隣接して配置されることで、平面視において略正方形状の画素30が得られる(
図2参照)。
【0057】
以下、主に
図2〜
図4を用いて説明する。
【0058】
基板は、ここではTFT基板111が利用されている。TFT基板111の上面には層間絶縁膜112が形成されている。
【0059】
層間絶縁膜112の上面には、陽極113aが発光素子31単位で配置されている。陽極113aは、発光素子31の平面視形状と同じ長い形状をしている。また、層間絶縁膜112の上面には、
図3および
図4に示すように、陽極113a以外に補助電極113bが画素30間に形成されている。
【0060】
陽極113a間及び陽極113aと補助電極113bとの間にはバンク114が形成されている。バンク114は、層間絶縁膜112上であって陽極113aや補助電極113bが形成されていない領域から、陽極113aや補助電極113bの間を通って、上方へと突出している。
【0061】
バンク114により規定された(バンク114により囲繞されている)領域内の陽極113aの上面には、所定の発光色の発光層(ここでは有機発光層である。)115が積層されている。
【0062】
ここでの所定の発光色とは、「青」、「緑」および「赤」の3色であるが、当該3色以外に他の色、例えば黄色等が含まれていても良い。なお、図中において、青色の発光層を「115(B)」、緑色の発光層を「115(G)」、赤色の発光層を「115(R)」でそれぞれ表している。また、発光色に関係なく発光層全般を指す場合は、単に「115」の符号を用いる。
【0063】
有機発光層115の上面には、陰極116及び封止層117が、それぞれバンク104で規定された領域を超えて隣接する有機発光層115の上面及び補助電極113bの上面のものと連続するように形成されている。封止層117は、有機発光層115等が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有する。
(3)CF基板
図5はCF基板の平面図であり、
図6は
図5のC1−C2の断面を矢印方向から見た図であり、
図7は
図5のD1−D2の断面を矢印方向から見た図である。
【0064】
なお、CF基板12において、EL基板11と貼り合わされる側を上側や表側(
図1では上側である。)とする。
【0065】
CF基板12は、基板121とカラーフィルター122等からなる。
【0066】
カラーフィルター122は、
図5に示すように、
図2で示した発光素子31の平面視形状と同じように長い形状をしている。
【0067】
以下、主に
図4、
図6および
図7を用いて説明する。
【0068】
基板121は、表示パネル10における前面基板であり、光透性材料からなる。基板121の上面には、EL基板11の有機発光層115(B),115(G),115(R)に対応して、カラーフィルター122(B),122(G),122(R)が形成されている。なお、光色に関係なくカラーフィルター全般を指す場合は、単に「122」の符号を用いる。
【0069】
基板121の上面であって各カラーフィルター122間には、いわゆる、ブラックマトリクス(以下、単に「BM」とする。)123が形成されている。各カラーフィルター122は、
図6および
図7に示すように、隣接する両側のBM123の上面周縁部分に一部が乗り上げた状態で形成されている。
【0070】
BM123は、表示パネル10の表示面への外光の照り返しや外光の入射を防止し、表示コントラストを向上させる目的で設けられる黒色層である。BM123は、
図1に示すように、EL基板11のバンク114に対応(対向)して形成されている。
2.製造方法
表示パネル10は、EL基板11を準備する工程と、CF基板12を準備する工程と、準備されたEL基板11とCF基板12とを貼り合せる工程とを経て製造される。
【0071】
なお、EL基板11及びCF基板12を準備する工程は、従来と同じ公知の工程で行われるため、その説明は省略する。
【0072】
ここでは、EL基板11とCF基板12とを貼り合せる際に、CF基板12に封止樹脂層13用の樹脂材63を貼り付ける場合(つまり、本発明の第1基材や第1基体がCF基板の場合である。)を例にして説明するが、EL基板に樹脂材を貼り付けても良い(つまり、本発明の第1基材や第1基体がEL基板の場合でも良い。)。
【0073】
EL基板11とCF基板12とを貼り合わせる工程は、シート材61の樹脂材63をCF基板12に貼り付ける貼付工程(後述の(b)、(c)の工程であり、
図8の(b)、(c)である。)と、CF基板12に貼り付けたシート材61を所定領域(EL基板11とCF基板12とを樹脂材63で接合する際の樹脂材63が貼り付けられる領域である。)に合わせて分離容易部(65)を形成する容易部形成工程(後述の(d)の工程であり、
図8の(d)である。)と、分離容易部(65)を境にして、内側部分の樹脂材63がCF基板12の所定領域に残り、外側部分の樹脂材63がCF基板12に残らないように、セパレータから内側部分の樹脂材を分離する分離工程(後述の(e)の工程であり、
図8の(e)である。)とを含んでいる。なお、ここでは、EL基板11やCF基板12が複数形成された第1基材52と第2基材54を用いて説明する。
【0074】
図8は、第1の実施の形態に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。
【0075】
なお、
図8では、複数の工程における特徴的な状態をa〜hの8個の概略図で示し、各状態を、上側に斜視図(図の作成上の便宜により断面でない部分に他の部材との相違を示すためにハッチングを入れている部分もある。)と、下側に断面図(図の作成上の便宜によりハッチングを省略している。)との2つで示している。
【0076】
シート材61は、樹脂材63を2枚のセパレータ(本発明の「シート基材」に相当する。)62,64によりサンドイッチされた構成を有している。なお、シート材61は、2枚のセパレータ62,64と樹脂材63とにより構成されたものを指すが、製造工程中で、一方のセパレータ(例えば、64である。)が剥がされたものもシート材61として説明する。
【0077】
また、分離容易部(65)としては切れ目を利用し、さらに、ここでは切れ目が断続的に形成されているミシン目65を利用する。ミシン目65の形成方法としては、例えば、カッターナイフやレーザ光や打ち抜き加工等を用いることができるが、ここではカッターナイフを用いてミシン目を入れる。
【0078】
以下、表示パネル10の製造方法について
図8を用いて具体的に説明する。
(a)第1基体であるCF基板51が複数(ここでは4個であり、後述するが、1個でも良い。)形成された第1基材52を準備し、例えば、UVオゾン洗浄する(図中の(a)である。)。
(b)シート材61を準備し、第1基材52にシート材61を貼り合わせる側のセパレータ(ここでは、下側のセパレータである)64を剥離する(図中の(b)である。)。
(c)下側のセパレータ64が剥がされたシート材61を、樹脂材63が第1基材52側になるように、第1基材52に貼り付ける(図中の(c)である。)。
【0079】
この際、第1基材52の上面であって樹脂材63を貼り付ける所定領域上にシート材61を貼り付ければ良く、所定領域に合わせて切断した樹脂材63を、当該所定領域に貼り合わせる場合の位置合わせ精度を必要としない。
(d)第1基材52に貼り付けられたシート材61に対して、CF基板51の上面に貼る樹脂材63の所定領域の大きさ・形状(樹脂材の外周縁)に合わせて、ミシン目65を入れる(図中の(d)である。)。なお、ミシン目65の入れる角度については後述する。
【0080】
この際、第1基材52にシート材61を貼り付けた後にミシン目65を形成するため、シート材61を第1基材52に貼り付ける際の変形等を考慮する必要がなく、シート材61に対して高い精度でミシン目65を入れることができる。
【0081】
ミシン目65は、ここでは、CF基板51に合わせて四角形状の各辺に沿って入れられる。ミシン目65は、シート材61(正確には、セパレータ62と樹脂材63である。)をその厚み方向に切断する切れ目を主面に沿って不連続に入れるものである。ミシン目65の大きさ(1つの切れ目の長さ)は、セパレータ62を剥がす際に、ミシン目65に囲まれた樹脂材63だけがCF基板51の上面に残り、CF基板51の上面の所定領域外の樹脂材63がセパレータ62と一緒に剥がれる大きさである。
(e)ミシン目65が形成されたシート材61を第1基材52から剥がす(図中の(e)である。)。シート材61を剥がした後には、シート材61のミシン目65によってCF基板51の上面の所定領域内にだけ樹脂材63が残り、所定領域外の樹脂材63はCF基板51上に残らずにシート材61と共に剥がれる。
【0082】
この際、所定領域に存する樹脂材63は、所定領域の外周縁(境界線)に対応する部分にミシン目65が形成され、CF基板51と密着し固定されているので、セパレータ62を剥がす際に変形しにくい。
【0083】
また、樹脂材63が切断される部分はミシン目65が形成されている部分であるので、第1基材52上に残る樹脂材63は所定領域の大きさに対応しており、結果的に樹脂材63をCF基板51に精度良く貼り付けることができる。
(f)第2基体であるEL基板53が第1基材52のCF基板51に対応して同数形成されている第2基材54を準備し、CF基板51とEL基板53とがそれぞれ対応するように、第2基材54を第1基材52に貼り合わせる(図中の(f)である。)。なお、第2基材54は、準備の後に洗浄しても良いし、洗浄されたものを準備しても良い。
(g)貼り合せた第1基材52と第2基材54とを加熱(UVを加えても良い)して樹脂材63を硬化させる(図中の(g)である。)。
(h)硬化後に、接合した第1基材52と第2基材54とから、接合したEL基板11とCF基板12とをスクライブして個片化する(図中の(h)である。)。これにより表示パネル10が得られる。
【0084】
上記の製造方法、特に、EL基板11とCF基板12とを貼り合わせる工程では、シート材61の状態で樹脂材63をCF基板12に貼り付けた後に、ミシン目(切断容易部)65を形成している。これにより、シート材61を貼り付ける際に、樹脂材63に変形が生じたとしても、その変形後の樹脂材63に対してミシン目65を入れるため、樹脂材63を精度良く切断でき、結果的に第1基材52に樹脂材63を精度良く貼り付けることができる。
3.シート材の特性について
(1)密着力
シート材61における所定領域の樹脂材63が第1基材52に貼り付けられ、所定領域以外の樹脂材63がシート材61に残るようにするため、シート材61と第1基材52との間に以下の関係を満たす必要がある。
【0085】
図9は、シート材の特性を説明する図であり、(a)はミシン目が入った状態を示す概略図であり、(b)は(a)のE部の拡大斜視図である。
【0086】
同図の(a)に示すように、第1基材52の上面に下面のセパレータが剥がされた状態でシート材61が第1基材52の上面に貼り付けられ、シート材61にミシン目65が形成されている。
【0087】
シート材61の特性は、同図の(b)に示すように、第1基材52に形成されたCF基板51と樹脂材63との密着力を「F1」とし、第1基材52の上面であってCF基板51が形成されていない領域(CF基板の所定領域画の領域も含む場合がある。)と樹脂材63との密着力を「F2」とし、セパレータ62と樹脂材63との密着力を「F3」とすると、各密着力の間には、
F1 > F3 > F2 (式1)
の関係がある。
【0088】
ここで、樹脂材63の密着力は、相手材料の影響を受けるが、第1の実施の形態では、第1基材52の上面において、CF基板51の上面との密着力F1と、CF基板51が形成されていない領域の上面との密着力F2とでは、CF基板51の上面の密着力F1が大きくなっている。
【0089】
さらに、樹脂材63のCF基板51との密着性と、樹脂材63の第1基材52との密着性との間に差がない場合であっても、第1基材52の上面に対しCF基板51が飛び出ているため、シート材61を貼り付けた状態では、樹脂材63と第1基材52との間に隙間が生じ、結果的に、CF基板51の上面との密着力F1が第1基材52の上面との密着力F2よりも大きくなっている。
【0090】
上記の式1を満たすことにより、ミシン目65で囲まれた所定領域内の樹脂材63はCF基板51に密着し、所定領域外の樹脂材63はセパレータ62に密着することとなる。
(2)機械特性
シート材61の機械特性において、樹脂材63の引張強度をS1、セパレータ62の引張強度をS2とすると、各引張強度の間には、
S2 > S1 (式2)
の関係がある。
【0091】
式2の関係を満たすため、シート材61を第1基材52から剥がす際に、セパレータ62と樹脂材63とに対し引張応力が作用する。樹脂材63は硬化前であるため強度が小さく、容易にちぎれて(切断して)しまう。これに対し、セパレータ62は樹脂材63よりも強度が大きく、樹脂材63よりも先にちぎれる(切断する)ことはない。
【0092】
これにより、セパレータ62を剥がした際に、ミシン目65で囲まれた所定領域の樹脂材63が第1基材52側に残ることとなる。なお、樹脂材63はシート材61が剥がされる際に変形してしまうが、ミシン目65が形成されているため変形する部分が少なく、樹脂材63の第1基材52に対する位置精度に与える影響は小さい。
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では切断容易部としてミシン目65を利用したが、第2の実施の形態では分離容易部として切れ目66を利用する。なお、ミシン目65は、断続的に入れられた切れ目であるが、第2の実施の形態に係る切れ目66は連続的に入れられている点で異なる。つまり、第1の実施の形態に係る切れ目65は断続的な切れ目(ミシン目)であり、第2の実施の形態に係る切れ目66は連続的な切れ目である。
【0093】
切れ目66の形成方法としては、例えば、カッターナイフやレーザ光や打ち抜き加工等を用いることができるが、ここではレーザ光を用いて切れ目66を入れる。
1.製造方法
表示パネル10は、EL基板11を準備する工程と、CF基板12を準備する工程と、準備されたEL基板11とCF基板12とを貼り合せる工程とを経て製造される。
【0094】
EL基板11とCF基板12とを貼り合わせる工程は、シート材61の樹脂材63をCF基板12に貼り付ける貼付工程(後述の(2b)、(2c)の工程であり、
図10の(b)、(c)である。)と、シート材61をCF基板12に合わせて切断容易部(66)を形成する容易部形成工程(後述の(2d)の工程であり、
図10の(d)である。)と、CF基板12の所定領域の樹脂材63だけが残るように、シート材61から所定領域の樹脂材63を剥離工程(後述の(2e)の工程であり、
図10の(e)である。)とを含んでいる。
【0095】
図10は、第2の実施の形態に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。
【0096】
なお、
図10では、第1の実施の形態の
図8と同様に、複数の工程における特徴的な状態をa〜jの10個の概略図で示し、各状態を、上側に斜視図(図の作成上の便宜により断面でない部分に他の部材との相違を示すためにハッチングを入れている部分もある。)と、下側に断面図(図の作成上の便宜によりハッチングを省略している。)との2つで示している。
【0097】
また、第1の実施の形態と同じ構成については、第1の実施の形態における同じ構成の符号と同じ符号を用い、その構成の説明を省略する。また、第1の実施の形態で記載したなお書きは、第2の実施の形態においても同様に適用されるものとし、その記載を省略する。
【0098】
以下、表示パネル10の製造方法について
図10を用いて具体的に説明する。
(2a)第1基体であるCF基板51が複数形成された第1基材52を準備し、例えば、UVオゾン洗浄する(図中の(a)である。)。
(2b)シート材61を準備し、第1基材52に貼り合わせる側のセパレータ(ここでは、下側のセパレータである)64をシート材61から剥離する(図中の(b)である。)。
(2c)下側のセパレータ64が剥がされたシート材61を、樹脂材63が第1基材52側になるように、第1基材52に貼り付ける(図中の(c)である。)。
(2d)第1基材52に貼り付けられたシート材61に対して所定領域の大きさ・形状に合わせて、切れ目66を入れる(図中の(d)である。)。
【0099】
この際、所定領域の外周縁(境界線)に対応する部分に、連続する切れ目66を形成するので、所定領域に沿って精度良く切れ目66を形成することができる。
(2e)切れ目66が形成されたシート材61を第1基材52から剥がす(図中の(e)である。)。シート材61を剥がした後には、シート材61に切れ目66が形成されているので、切れ目66により区画された所定領域のシート材61a(正確にはセパレータ62の一部と樹脂材63の一部である。)だけがCF基板51の上面に残る。
【0100】
この際、所定領域に対応した切れ目66が形成されているので、シート材61を剥がすときに樹脂材63aが変形するようなことがほとんどなく、また、所定領域内のシート材61aと所定領域外のシート材61bとを容易に分離できる。
【0101】
また、一部のシート材61aが他の部分から分離される部分は、切れ目66が形成されている部分であるので、第1基材52の上面に残るシート材61aは所定領域の大きさに対応しており、シート材61aをCF基板51に精度良く貼り付けることができる。
(2f)第1基材52上のシート材61aの上面に、セパレータ62aを樹脂材63aから剥がすための剥離テープ71を貼り付ける(図中の(f)である。)。
(2g)剥離テープ71を剥がし、樹脂材63aからセパレータ62aを剥がす(図中の(g)である。)。
(2h)第1基材52のCF基板51と、第2基材54のEL基板53とがそれぞれ対応するように、第2基材54と第1基材52とを貼り合わせる(図中の(h)である。)。
(2i)貼り合せた第1基材52と第2基材54とを加熱して樹脂材63aを硬化させる(図中の(i)である。)。
(2j)硬化後に、接合した第1基材52と第2基材54とから、接合したEL基板11とCF基板12とをスクライブして個片化する(図中の(j)である。)。これにより表示パネル10が得られる。
【0102】
上記の製造方法、特に、EL基板11とCF基板12とを貼り合わせる工程では、シート材61の状態で樹脂材63をCF基板12に貼り付けた後に、切れ目(切断容易部)66を形成している。これにより、シート材61を貼り付ける際に、樹脂材63に変形が生じたとしても、その変形後の樹脂材63に対して切れ目66を入れるため、樹脂材63を精度良く切断でき、結果的に第1基材52に樹脂材63aを精度良く貼り付けることができる。
2.シート材の特性について
(2―1)所定領域外の樹脂材が残らない場合
シート材61を第1基材52に貼り付け、切れ目66で区画されたシート材61の所定領域の樹脂材63aが第1基材52に残り且つ所定領域外の樹脂材63bが残らないように、所定領域のシート材61aのセパレータ62aを剥離テープ71で剥がすには、シート材61、第1基材52および剥離テープ71との間に以下の関係を満たす必要がある。
【0103】
図11は、シート材の特性を説明する図であり、(a)は切れ目が入った状態を示す概略図であり、(b)は(a)のFa部の拡大斜視図である。
【0104】
まず、切れ目66で区画されたシート材61の所定領域61aが第1基材52に残り、所定領域外の樹脂材63bが残らないように、シート材61を第1基材52から剥がすには、シート材61の特性は、第1基材52のCF基板51と樹脂材63との密着力を「F1」とし、第1基材52上でCF基板51が形成されていない領域と樹脂材63との密着力を「F2」とし(
図9参照)、セパレータ62と樹脂材63との密着力を「F3」とすると、
F1 > F3 > F2 (式3)
の関係を満たす必要がある。
【0105】
次に、
図12は、シート材と剥離テープの特性を説明する図であり、(a)は
図11のシート材61を剥離したものに剥離テープ71を示す概略図であり、(b)は(a)のFb部の拡大斜視図である。
所定領域において樹脂材63aが剥がれずにセパレータ62aのみが剥離テープ71によって剥がされるには、シート材61aと剥離テープ71の特性は、セパレータ62aと剥離テープ71との密着力を「F4」とすると、
F1,F4 > F3 (式4)
の関係を満たす必要がある。なお、F1とF4との間の大小関係は問わない。
(2―2)所定領域外の樹脂材が残る場合
第1基材52に貼り付けたシート材61を剥がした際に、切れ目66で区画されたシート材61の所定領域の樹脂材63aと所定領域外の樹脂材63bとが第1基材52に残り、第1基材52に残った所定領域のシート材61aのセパレータ62aと所定領域外の樹脂材63bを剥離テープ71で剥がすには、圧着ローラー等で、第1基材52側に剥離テープ71を押し付け、所定領域外の樹脂材63bと剥離テープ71を密着させる必要がある。このとき、シート材61、第1基材52および剥離テープ71との間に以下の関係を満たす必要がある。
【0106】
まず、
図11において、切れ目66で区画されたシート材61の所定領域の樹脂材63aと所定領域外の樹脂材63bとが第1基材52に残るようにシート材61(セパレータ62b)を第1基材52から剥がすには、シート材61と剥離テープ71の特性は、第1基材52上に形成されたCF基板51と樹脂材63との密着力を「F1」とし、第1基材52上でCF基板51が形成されていない領域と樹脂材63との密着力を「F2」とし、セパレータ62と樹脂材63との密着力を「F3」とすると、
F1 > F2 > F3 (式5)
の関係が満たされる。
【0107】
次に、
図13は、シート材の特性を説明する図であり、(a)は切れ目が入った状態を示す概略図であり、(b)は(a)のG部の拡大斜視図である。
【0108】
所定領域において樹脂材63aが剥がれずにセパレータ62のみが剥離テープ71により剥がされるには、シート材61と剥離テープ71の特性は、セパレータ62と剥離テープ71との密着力を「F4」とすると、
F1,F4 > F3 (式6)
の関係を満たす必要がある。なお、F1とF4との間の大小関係は問わない。
【0109】
さらに、所定領域外の樹脂材63bが剥離テープ71により剥がされるには、樹脂材63と剥離テープ71の特性は、樹脂材63と剥離テープ71との密着力を「F5」とすると、
F5 > F2 (式7)
の関係を満たす必要がある。
3.レーザ光
レーザ光としては、固体レーザ光(例えば、YAGレーザ光、Nd:YAGレーザ光、Nd:YVO
4レーザ光等がある。)、気体レーザ光(CO
2レーザ光、He−Neレーザ光、エキシマレーザ光、アルゴンレーザ光等がある。)、液体レーザ光(例えば、Dyeレーザ光等がある。)を利用することができる。
【0110】
但し、第1基材52の材料によっては上記レーザ光を用いることができない場合もある。つまり、レーザ光の波長によってはシート材61を透過してしまい、シート材61を切断することができない場合がある。
【0111】
従って、レーザ光は、シート材61によって吸収される(吸収されやすい)波長のレーザ光を用いることが好ましく、そのパワーは、シート材61を構成しているセパレータ62,64、樹脂材63のそれぞれの材料をその膜厚方向の全てに亘って熱飛散、蒸発、昇華のいずれかを起こさせる程度である。
【0112】
第2の実施の形態では、シート材61のセパレータ62,64として例えば、PETフィルムを、樹脂材63としてエポキシ樹脂をそれぞれ使用した場合、レーザ光として、波長が400[nm]以下のレーザ光(例えば、UVレーザ光)や、波長のピークが10.6[μm]であるCO
2レーザ光等を利用することができる。
4.その他
上記製造方法では、切れ目66の形成後に所定領域外のシート材61bを剥がし、その後に、所定領域に貼り付けられているシート材61aに対し、剥離テープ71を利用して、シート材61aのセパレータ62aを剥離している。
【0113】
しかしながら、切れ目66形成後に、剥離テープ71を貼り付けても良い。
【0114】
つまり、切れ目66の形成後に、シート材61の全領域又は所定領域を覆う領域に剥離テープ71を貼付け、この剥離テープ71剥がすことで、所定領域に貼り付けられているシート材61aのセパレータ62aと、所定領域外のシート材61bとを同時に剥がしても良い。この方法は、上述(2−1)と同様に、式3の関係を満たすときに有効である。
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態では、ミシン目65を入れる際にカッターナイフによりシート材61をカットしている。この場合、カッターナイフにより第1基材52やCF基板51を傷つけるおそれがある。第1基材52やCF基板51に傷が入ると、第1基材52と第2基材54とを真空状態で貼り合わせた際に第1基材52やCF基板51に割れが生じる場合ある(
図8の(f)、
図10の(h)参照)。
【0115】
以下、第1の実施の形態で説明したように分離容易部としてミシン目65をカッターナイフで入れる場合に、第1基材52を傷つけることを防ぐことができる第3の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態で説明した分離容易部として切れ目66をレーザ光で入れる場合については第4の実施の形態で説明する。
1.製造方法
第3の実施の形態に係る表示パネルは、第1基体201(第1基材202)に樹脂材63を介して第2基体53(第2基材54)が貼り付けられた構成を有し、第1基材202は、ミシン目形成用のカッターナイフを入れる領域に保護膜205を有している。
【0116】
図14は、第3の実施の形態に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。
【0117】
なお、第1の実施の形態に係る表示パネル10の製造方法と同じ工程、あるいは、略同じ工程についてはその説明を省略する。
【0118】
以下、表示パネルの製造方法について説明する。
(3a)同図の(a)に示すように、第1基体であるCF基板201が形成された第1基材202を準備する。第1基材202は、上述したように、カッターナイフの入刀予定部分には保護膜205が形成されている。
【0119】
この保護膜205は、入刀されたカッターナイフが保護膜205を通過して第1基材202に達しないようにする必要があり、ある程度の厚み(カッターナイフの加工精度を考慮して第1基材202にカッターナイフが届かないように管理できる寸法以上である。)が必要となる。
(3b)〜(3d)シート材61を準備し、第1基材202に貼り付け(図中の(b)である。)、所定領域に合わせてカッターナイフを入れて(図中の(c)である。)、ミシン目65を形成する。なお、(3b)〜(3d)は、第1の実施の形態における(b)〜(d)と基本的には同じである。
【0120】
このとき、シート材61にミシン目65を確実に形成するために、樹脂材63を厚み方向に完全に切断した場合であっても、樹脂材63と第1基材202との間に保護膜205が存在するので、第1基材202を傷つけることはない。
(3e)〜(3g)ミシン目65が形成されたシート材61を、所定領域の樹脂材63を除いて第1基材202から剥がし(同図の(d)である。)、第2基材54を第1基材202に貼り合わせ(図中の(e)である。)、樹脂材63を硬化させる(図中の(f)である。)。なお、(3e)〜(3i)の詳細は、第1の実施の形態における(e)〜(g)と基本的に同じである。
(3h)硬化後に、接合した第1基材202と第2基材54とから、接合したEL基板11とCF基板12とをスクライブして(同図の(g)である。)個片化する。これにより表示パネル10が得られる。
2.保護膜
保護膜205として利用される材料は、例えば、金属材料、樹脂材、ゴム材料等であっても良い。
【0121】
金属材料の場合、例えば、蒸着法で金属膜を形成できる。ゴム材料の場合、例えば、薄板状のゴム板を第1基材202に張り付けることで実施できる(なお、板状のゴム板も「膜」の概念に含むものとする。)。樹脂材の場合、例えば、第1基材202に第1基体(CF基板201)を形成してから、カッターナイフが入る領域に樹脂材を塗布した後、硬化させることで実施できる。
【0122】
特に、上記(3a)の工程で、第1基体201の構成で保護膜205として機能する膜(層)があれば、この膜(層)の成形時に保護膜205も同時に成形することができ、わざわざ保護膜205を形成するよりも容易・安価に保護膜205を得ることができる。
【0123】
例えば、第1基体201(第1基材202)がCF基板12の場合、保護膜205としてBM(
図1の「123」である。)を利用することができる。この場合、BM123の形成時のマスクパターンを変更することで容易に保護膜205として作用するBM(123)を得ることができる。
3.スクライブ
上記(3h)の工程で、例えば、
図14中の(g)に示すように、硬化した樹脂材63の端面に合わせてスクライブすることで、端面が面一な表示パネルを得ることができる。
【0124】
また、保護膜205の形成領域を所定領域よりも外側にし(つまり、本来の所定領域よりも大きい仮の所定領域に対応する保護膜を形成し)、第1基材202と第2基材54とを樹脂材63で接合した後に、保護膜205が表示パネルの端面に露出しないように(保護膜が形成されていない本来の所定領域に沿って)、スクライブしても良い。
[第4の実施の形態]
第2の実施の形態では、切れ目66を入れる際にレーザ光を利用している。この場合、レーザ光により第1基材52を傷つけるおそれがある。
【0125】
以下、第2の実施の形態で説明したように分離容易部として切れ目66をレーザ光で入れる場合に、第1基材52に傷つけることを防ぐことができる第4の実施の形態について説明する。
【0126】
また、第3の実施の形態では、カッターナイフによりシート材61を切断していたが、第4の実施の形態ではレーザ光によりシート材を切断し、また保護膜としてBMを利用している。第3の実施の形態では、表示パネルの端面が面一となるように、第1基材202、硬化した樹脂材63、第2基材54をスクライブしていたが、表示パネルの端面を面一にスクライブする必要はなく、端面を面一にスクライブしない製造方法を第4の実施の形態として説明する。なお、端面を面一にスクライブしない工程を、第1から第3の実施の形態に適用しても良い。
1.製造方法
図15は、第4の実施の形態に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。
(4a)同図の(a)に示すように、第1基体であるCF基板301が形成された第1基材302を準備する。第1基材302は、上述したように、レーザ光が入る部分には保護膜であるBM123bを備える。ここでのBM123bは、第1の実施の形態等で説明したBM123を、レーザ光が入る部分まで拡げて形成したものであり、他のBM123の形成と同時に形成される。
(4b)〜(4d)シート材61を準備し、第1基材302に貼り付け(図中の(b)である。)、所定領域に合わせてレーザ光を照射して(図中の(c)である。)、切れ目66を形成する。なお、(4b)〜(4d)は、第2の実施の形態における(2b)〜(2d)と基本的には同じである。
【0127】
このとき、シート材61に切れ目66を確実に形成するために、厚み方向に完全に樹脂材63を切断した場合であっても、樹脂材63と第1基材302との間にBM(保護膜)123bが存在するので、第1基材302を傷つけることはない。
(4e)〜(4i)切れ目66が形成されたシート材61を、所定領域の樹脂材63aを除いて第1基材302から剥がし、第2基体であるEL基板303が形成された第2基材304を第1基材302に貼り合わせ、樹脂材63を硬化させる(図中の(d)である。)。なお、(4e)〜(4i)の詳細は、第2の実施の形態における(2e)〜(2i)と基本的に同じである。
(4j)樹脂材63の硬化が完了すると、第1基材302と第2基材304とをそれぞれスクライブする(同図の(e)である。)。第1基材302のスクライブ位置は、シート材61に切れ目66を入れる際にBM123bに入った溝305の一部が残る位置(スクライブ位置を図中の(e)の破線で示す。)である。第2基材304のスクライブ位置は、第1基材302をスクライブした位置よりもさらに外側の位置である。
【0128】
このようにスクライブすることで、同図の(f)に示すように、BM123bに入った溝305を見え難くすることができる。また、硬化時に樹脂フローの少ない樹脂材を利用することで、樹脂材63のスクライブを省略することができる。
2.保護膜
保護膜として利用される材料は、レーザ光を反射する材料とレーザ光を吸収する材料とに大別できる。
(1)反射する材料
レーザ光を反射する材料としては、例えば、金属材料がある。特に、アルミや銅の非酸化物(非酸化膜)、金、銀(非酸化物の方が酸化物よりも反射率は大きい)、タングステン等がある。なお、これらの材料を用いる場合、例えば蒸着法により形成できる。
(2)吸収する材料
レーザ光を吸収する材料としては、例えば、非金属材料、カーボンを含有するもの、樹脂、ゴム等があり、これらを混合したものであっても良い。
3.レーザ光
レーザ光の種類、そのパワー等は第2の実施の形態における3.レーザ光の欄で説明した通りである。
[第5の実施の形態]
第1、第2、第3及び第4の実施の形態(以下、単に「第1〜第4の実施の形態」とする。)に係る製造方法、表示パネルとは別に、下記の構成(技術)だけの形態でもあっても良いし、上記第1〜第4の実施の形態に追加する形で適用させても良い。
1.分離容易部
分離容易部により区画される所定領域内の樹脂材63aは、第1基材52側に残る必要があり、また、所定領域外の樹脂材63bはシート材61や剥離テープ71と共に第1基材52から剥がされる必要がある。
【0129】
しかしながら、例えば、所定領域内の樹脂材63aがセパレータ62に付着してシート材61と共に剥がれるようなことが生じ得る。なお、この問題は、第1〜第4の実施の形態で説明した表示パネルにのみ生じるものではなく、基体にシート材を貼り付け、所定領域だけ樹脂材を残すようにシート材を剥がすような工程を含んで製造される接合体であれば生じ得る。
【0130】
以下、シート材61の樹脂材63の貼り付けをスムーズに行うことができる分離容易部について説明する。
(1)分離容易部の形成方向
図16は、分離容易部(ミシン目)の形成の方向とセパレータの剥がれる様子とを模式的に表した図であり、(a)はミシン目の形成方向を説明する図であり、(b)は、セパレータを剥がす際の樹脂材の貼り付け状態を示す図である。
【0131】
なお、
図16のミシン目65は、紙面に対して直交する方向に断続的に伸びるミシン目を現しており、シート材61が剥がされていく方向と直交している。 シート材61は、同図の(a)に示すように、第1基材52に貼り付けた状態で右側からシート材61をHの方向に持ち上げられて、同図の(b)に示すようにI方向に剥がされる。
【0132】
樹脂材63aを第1基材52側に残す場合には、同図の(a)のJで示す矢印方向からミシン目65を入れ、樹脂材63bをシート材61に残さない場合には、同図の(a)のKで示す矢印方向からミシン目65を入れる。
【0133】
ここで、Jの方向、Kの方向を、シート材61の剥がす方向に関連付けて説明すると、Jの方向は、シート材61が剥がれて行く方向(同図の(b)のIの方向である。)側からの斜め方向であり、Kの方向は、シート材61が剥がし始める側からの斜め方向である。
【0134】
換言して説明すると、J方向は、第1基材52の上面に対して直交する仮想線J1に対して、シート材61が剥がされるのが遅い側(剥がす方向の下流側である。)に位置する箇所から、第1基材52の上面と仮想線J1との交点に向かう方向である。
【0135】
同様に、K方向は、第1基材52の上面に対して直交する仮想線K1に対して、シート材61が剥がされるのが早い側(剥がす方向の上流側である。)に位置する箇所から、第1基材52の上面と仮想線K1との交点に向かう方向である。
【0136】
つまり、J方向は、第1基材52側から離れるに従って所定領域の外側から内側へと傾斜する方向である。同様に、K方向は、第1基材52側から離れるに従って所定領域の内側から外側へと傾斜する方向である。
【0137】
このように同図の(b)のように、Jの方向からミシン目65を入れると樹脂材63aが第1基材52側に残り、Kの方向からミシン65目を入れると、樹脂材63bがシート材61側に残る。
【0138】
図17は、ミシン目の方向と、樹脂材の剥がれ負荷の作用点とを説明する図であり、(a)はJの方向からミシン目を入れた場合を示し、(b)はK方向からミシン目を入れた場合を示す。
【0139】
なお、同図の(a)のJ方向は、樹脂材63aを残す方向であり、(b)のK方向は、樹脂材63bを剥がす方向である。
【0140】
まず、同図の(a)に示すように、J方向からミシン目65を入れた場合、シート材61をH方向に持ち上げて、当該シート材61を剥がし始めていく(同図の(1)である。)と、樹脂材63aのミシン目65の付け根(セパレータ62側であり、同図の(2)の黒丸である。)に、シート材61から剥がされようとする力が作用し(同図の(2)である。)、やがて、樹脂材63aがセパレータ62から剥がされる(同図の(3)である。)。
【0141】
次に、同図の(b)に示すように、K方向からミシン目65を入れた場合、シート材61をH方向に持ち上げて、当該シート材61を剥がし始めていく(同図の(1)である。)と、樹脂材63bのミシン目65の先端部(セパレータ62側であり、同図の(2)の黒丸である。)に、シート材61から剥がされようとする力が作用する。このとき、樹脂材63bは、その先端側が薄くなっているので、剥がされているセパレータ62に沿って変形し、剥がされることはない。
【0142】
さらに、シート材61が剥がされていくと、シート材61から剥がされようとする力の作用点(黒丸で示す。)が樹脂材63のミシン目65の付け根(第1基材52側である。)側に移動して、樹脂材63aと第1基材52との間に作用する(同図の(3)である。)。そして、樹脂材63aが第1基材52から剥がされる(同図の(4)である。)。
【0143】
なお、第1や第3の実施の形態では、ミシン目66はカッターナイフにより形成されており、この場合、ミシン目65の形成方向は、カッターナイフを傾斜させることで実施できるが、例えば、第2や第4の実施の形態で説明したようにレーザ光を利用してミシン目65が形成される場合には、レーザ光の出射方向を傾斜させることで、カッターナイフと同様に実施できる。
(2)剥離剤
図18は、第1基材に剥離処理を施した場合を模式的に表した図であり、(a)は剥離処理を施す部分を説明する図であり、(b)はセパレータを剥がす際の樹脂材の貼り付け状態を示す図である。
【0144】
第1基材52は、樹脂材63aが貼り付けられる所定領域に相当する領域は、脱脂等を行う目的で洗浄されている。一方、シート材61を剥がす際にセパレータ62と同時に樹脂材63bが剥がされる領域では、剥離処理が施されている。
【0145】
剥離処理は、樹脂材63bと第1基材52の上面との密着力F2(
図9の(b)参照)を、樹脂材63とセパレータ62との密着力F3(
図9の(b)参照)よりも小さくするための処理である。なお、この処理により式1の関係が常に成立することになる。
【0146】
剥離処理は、例えば、第1基材52上であって樹脂材63bがセパレータ62と共に剥がされる領域に剥離剤(例えばシリコーン樹脂やフッ素樹脂である。)を塗布することで実施できる(剥離膜73である。)。
【0147】
下側のセパレータ64が剥がされたシート材61の第1基材52への貼り付けは、上述の剥離処理後(つまり、剥離膜73の形成後である。)に行われ、その後にミシン目65や切れ目66が形成され、同図の(a)に示すようになる。
【0148】
シート材61を第1基材52から剥がす際には、シート材61における第1基材52の周縁側(ここでは右側である。)部分を、第1基材52から離すように、図中のHの方向へと(第1基材52の上方へと)持ち上げる。
【0149】
この際、第1基材52の上面であって樹脂材63bが剥がされる領域には、剥離膜73が形成されているので、同図の(b)に示すように、剥離膜73と接触していた樹脂材63bはセパレータ62と共に第1基材52から剥がされる。
【0150】
なお、樹脂材63bが、最初にセパレータ62bに付着して第1基材52から剥がされれば、その後もセパレータ62に付着して第1基材52から剥がされるような機械特性、つまり、剥がしている途中で樹脂材63がちぎれない様な強度特性を有している場合、剥離処理は、少なくとも第1基材52におけるシート材61を剥がし始める部分に施しておけば十分である。
【0151】
次に、剥離膜の効果について、具体的にミシン目65や切り目66を入れた場合について説明する。
(2−1)断続的な切れ目(ミシン目)
図19は、ミシン目における剥離膜の有無に対する密着力の関係を示す図である。
(a)剥離膜なしの場合
同図の(a)に示すように、所定領域内の樹脂材63aと第1基材52の上面との密着力F1、所定領域外の樹脂材63bと第1基材52の上面(剥離膜がない)との密着力F2、樹脂材63a,63bとセパレータ62との密着力F3とする。
【0152】
これらの3つの密着力F1,F2,F3が、同図の(b)に示すように、
F1 > F3 > F2 (式8)
の関係にあると、所定領域内の樹脂材63aのみが第1基材52側に残る。
【0153】
一方、3つの密着力F1,F2,F3が、同図の(c)に示すように、
F1、F2 > F3 (式9)
の関係にあると、所定領域外の樹脂材63bも第1基材52に残る。
(b)剥離膜ありの場合
同図の(d)に示すように、所定領域内の樹脂材63aと第1基材52の上面との密着力F1、所定領域外の樹脂材63bと剥離膜73との密着力F6、樹脂材63a,63bとセパレータ62との密着力F3とする。
【0154】
これらの3つの密着力F1,F3,F6が、同図の(e)に示すように、
F1 > F3 > F6 (式10)
の関係にあると、所定領域内の樹脂材63aのみが第1基材52側に残る。
(c)まとめ
上記(a)、(b)で説明したように、剥離膜73がない場合は、式8を満たす場合だけ、所定領域の樹脂材63aを第1基材52に残すことができる。
【0155】
しかしながら、剥離膜73を設けることにより、樹脂材63bの密着力が、第1基材52との密着力F2の方がセパレータ62との密着力F3よりも大きい場合(上記式9を満たす場合である。)でも、第1基材52の上面の剥離膜73との密着力をF6にすることができ、容易に所定領域の樹脂材63aのみを第1基材52に残すことができる。
(2―2)連続的な切れ目
図20は、連続的な切れ目における剥離膜の有無に対する密着力の関係を示す図である。
(a)剥離膜なしの場合
同図の(a)に示すように、所定領域内の樹脂材63aと第1基材52の上面との密着力F1、所定領域外の樹脂材63bと第1基材52の上面(剥離膜がない)との密着力F2、樹脂材63a,63bとセパレータ62との密着力F3とする。
【0156】
これらの3つの密着力F1,F2,F3が、同図の(b)に示すように、
F1 > F3 > F2 (式11)
の関係にあると、所定領域内のシート材61aのみが第1基材52側に残る。
【0157】
一方、3つの密着力F1,F2,F3が、同図の(c)に示すように、
F1、F2 > F3 (式12)
の関係にあると、所定領域内のシート材61aだけでなく、所定領域外の樹脂材63bも第1基材52に残る。
(b)剥離膜ありの場合
同図の(d)に示すように、所定領域内の樹脂材63aと第1基材52の上面との密着力F1、所定領域外の樹脂材63bと剥離膜73との密着力F6、樹脂材63a,63bとセパレータ62との密着力F3とする。
【0158】
これらの3つの密着力F1,F3,F6が、同図の(e)に示すように、
F1 > F3 > F6 (式13)
の関係にあると、所定領域内のシート材61aのみが第1基材52側に残り、所定領域外のシート材61bは第1基材52から剥がされる。
(c)まとめ
上記(a)、(b)で説明したように、剥離膜73がない場合は、式11を満たす場合だけ、所定領域のシート材61aを第1基材52に残すことができる。
【0159】
しかしながら、剥離膜73を設けることにより、樹脂材63bの密着力が、第1基材52との密着力F2の方がセパレータ62との密着力F3よりも大きい場合(上記式12を満たす場合である。)でも、第1基材52の上の剥離膜73との密着力をF6にすることができ、容易に所定領域のシート材61aのみ第1基材52に残すことができる。
(3)硬化
図21は、樹脂材の一部の領域を硬化した場合を模式的に表した図であり、(a)は一部の領域を硬化させる方法を説明する図であり、(b)はセパレータを剥がす際の樹脂材の貼り付け状態を示す図である。
【0160】
本例に係るシート材61では、第1基材52に貼り付けられる所定領域以外の領域の樹脂材63bが硬化されている。樹脂材63の一部の領域(63b)の硬化は、同図の(a)に示すように、例えば、UVを照射することで硬化が促進する樹脂材、例えば、光硬化性アクリル材料を利用した場合、硬化すべき一部の領域(63b)にだけUV照射されるようなマスク77を用い、シート材61に対してUV照射を所定時間行う。
【0161】
これにより樹脂材63の一部の領域(63b)の硬化が進行し、硬化した樹脂材63bは第1基材52とは接合せず(又は接合し難い)、その密着力は樹脂材63とセパレータ62との密着力よりも小さくなる。
【0162】
このように樹脂材63における一部の領域(63b)が硬化しているシート材61を第1基材52に貼り付けた後にミシン目65や切れ目66を形成する。
【0163】
そして、シート材61を第1基材52から剥がす際には、同図の(b)に示すように、シート材61における第1基材52の周縁側(ここでは右側である。)を第1基材52から離すように、図中の矢印のように上方へと引き上げる。
【0164】
この際、第1基材52の上面であって第1基材52から剥がされる一部の領域に対応する樹脂材63bは硬化しているため、同図の(b)に示すように、樹脂材63bと第1基材52との密着力が小さく、セパレータ62と共に第1基材52から剥がされる。
【0165】
なお、樹脂材63が、最初にセパレータ62に付着して第1基材52から剥がされれば、その後もセパレータ62に付着して第1基材52から剥がされるような機械特性、つまり、剥がしている途中で樹脂材63がちぎれない強度特性を有している場合、硬化処理は、少なくとも第1基材52におけるシート材61を剥がし始める部分に施しておけば十分である。
【0166】
また、樹脂材63bは、完全硬化させる必要はなく、半硬化(完全に硬化する前の段階である。)でも良く、硬化を進行させることで、硬化が進行している樹脂材63bと第1基材52との密着力が、樹脂材63とセパレータ62との密着力よりも小さくなれば良い。
(4)組み合わせ
上述のように、シート材61からの樹脂材63aの分離をスムーズに行うことができる技術として、分離容易部の形成方向、第1基材52への剥離処理、樹脂材63の硬化処理の3つについて説明した。
【0167】
これらの技術の1つを第1〜第4の実施の形態に適用しても良いし、これらの技術の2つを組合せて第1〜第4の実施の形態に適用しても良いし、これら技術のすべてを組合せて第1〜第4の実施の形態に適用しても良い。
(5)その他
第5の実施の形態では、分離容易部により区画された所定領域の樹脂材63aを第1基材52に残存させる技術について説明したが、これらの技術は、分離容易部の形成方法、例えば、カッターナイフによる形成、レーザ光による形成、打ち抜き加工による形成等に関係なく実施できる。
<変形例>
1.製造方法
(1)第1の実施の形態等に係る表示パネル10は、EL基板11を準備する工程と、CF基板12を準備する工程と、準備されたEL基板11とCF基板12とを貼り合せる工程とを経て製造される。
【0168】
しかしながら、樹脂材が貼り付けられる第1基材に対し、シート材の樹脂材の一部を貼り付けた後、第2基材を準備して、第1基材と第2基材とを貼り合わせても良い。
【0169】
つまり、表示パネルの製造方法は、第1基材の所定領域にシート材の樹脂材を貼り付け、その後に、第1基材と第2基材とを貼り合わせれば良く、第2基材を第1基材に貼り合せる際に第2基材が準備されていれば良い。
【0170】
第2基材を準備するタイミングとしては、具体的には、第1基材にシート材を貼り付ける前に第2基材を準備しても良いし、第1基材にシート材(セパレータと樹脂材である。)を貼り付けた後(セパレータを剥離する前である。)に第2基材を準備しても良いし、第1基材に第2基材を貼り合せる状態になった後(第1基材の所定領域にのみ樹脂材が貼り付けられた状態になった後)に第2基材を準備して良いし、さらには、第1基材を準備する際に第2基材も準備しても良いし、さきに第2基材を準備しても良い。
(2)第1の実施の形態等の(a)の工程では、UVオゾン洗浄をしていたが、他の方法で基板を洗浄しても良い。さらに、洗浄された基板を準備しても良い。
【0171】
また、第1基材(基板52)は、複数の第1基体(CF基板12)51が形成されていたが、第1基材に第1基体が1つ形成されていても良い。つまり、第1基材が第1基体であっても良い
(3)第1の実施の形態等の(c)の工程では、第1基材52が下側に位置し、第1基材52の上面にシート材61を貼り付けていたが、樹脂材63が上側に位置するシート材61を下側に配置し、このシート材61の上面(つまり樹脂材63の上面である。)に、上側から第1基材52を貼り付けるようにしても良いし、途中で、第1基材52やシート材61を上下反転させても良い。
【0172】
すなわち、第1の実施の形態におけるシート材61と第1基材52の上下の位置関係を逆にしても良いし、さらに、シート材61と第1基材52とを左右方向から貼り付けるようにしても良い。
(4)第1の実施の形態や第3の実施の形態でのミシン目65のパターン(形状)について特に説明していないが、セパレータ62を剥がした際に、第1基材52の所定領域に樹脂材63aが残り、所定領域外の樹脂材63bが第1基材52から剥がれるようなパターンであれば良い。
【0173】
具体的には、ミシン目65は、シート材61を切断する切断部と、切断しない非切断部とを交互に有する構造であり、切断部および非切断部の長さ、切断部と非切断部との間隔等が一定でも良いし、一定でなくても良い。さらに、切れ目の長さが一定で間隔が一定でないミシン目でも良いし、さらには、切れ目の長さと間隔が一定でないミシン目でも良い。
(5)第1の実施の形態の(g)の工程や第2の実施の形態の(i)の工程では、樹脂材63の硬化を加熱により行っていたが、樹脂材の種類によっては、例えば第5の実施の形態で説明したUVを照射して、樹脂材を硬化をしても良い。さらには、樹脂材が加熱だけでなく例えばUVでも硬化が促進される場合、加熱とUV照射との両方で樹脂材を硬化させても良いし、加熱とUVとを順番に行っても良いし交互に繰り返しても良い。
【0174】
当然他の条件で樹脂材の硬化が促進する場合、その条件で硬化しても良いし、加熱に加えて前記他の条件を加えても良いし、加熱と交互に行っても良い。
2.分離容易部の形成
(1)マークについて
上記第1〜第4の実施の形態では、分離容易部の形成の際に目印となるマークについて特に説明しなかったが、上記第1〜第4の各実施の形態に対して、第1基材を、マークを付した基板としても良いし、第1基材にマークを付する工程をシート材を貼り付ける前に実施しても良い。
【0175】
図22は、マークを付した第1基材を示す図である。
【0176】
なお、同図の(a)および(b)では、4個の第1基体51が形成された第1基材52を示しているが、第1基体51の数は特に限定するものではなく、1個でも良いし、複数でも良い。また、第1基体51は、例えば、CF基板(12)用でも良いし、EL基板(11)用でも良い。さらには、他の接合体の場合、例えば、PDP表示装置の場合、第1基体は前面板でもあっても良いし、背面板であっても良い。
【0177】
さらに、第5の実施の形態で説明したように、第1基材52にシート材61を貼り付け、所定領域だけ樹脂材63aを残すようにシート材61を剥がすような工程においても適用することができる。
【0178】
マーク79は、同図の(a)に示すように、1枚の第1基材52に対して2点以上(例えば4点である。)あれば良く、その位置は特に限定するものではない。同図の(a)では、第1基材52は平面視形状が矩形状をし、第1基材52の各角にマーク79が設けられ、合計4個ある。
【0179】
また、マーク79は、同図の(b)に示すように、第1基材52において形成されている第1基体51に対して2点以上(例えば4点である。)あっても良く、その位置は特に限定するものではない。同図の(b)では、第1基体51は平面視形状が矩形状をし、第1基材52の各第1基体51の全ての角の外側にマーク79が設けられ、合計16個ある。
【0180】
マークの形状・大きさについても、分離容易部を形成する際に目印として認識できれば良く、特に限定するものではないが、その一例として、同図の(c)に示すような、「+」形状、四角形状(内部を塗り潰したものや内部を白抜きしたものを含む。)、円形状(内部を塗り潰したものや内部を白抜きしたものを含む。)等がある。
(2)マークを付すタイミング
マーク79は、上述した説明と重なるが、第1基材52に形成し、その後に、当該マーク79を基準にして第1基体51を形成しても良い。つまり、第1〜第5の実施の形態において、第1基材52を準備する工程中に、マーク79を入れる工程を行っても良い。
【0181】
また、第1基材52に第1基体51を形成した後にマーク79が付されても良い。つまり、第1〜第5の実施の形態において、第1基材を準備する工程の後に、マークを入れる工程を行っても良いし、シート材61を貼り付けた後(分離容易部を形成する前である。)に行っても良い。
3.第1基体数とシート材の貼り付け方法
上記各実施の形態では、第1基材とシート材の貼り付け方法について特に説明しなかったが、第1基材とシート材の貼り付け方法について特に限定するものではないが、その一例について説明する。
【0182】
図23〜
図25は、第1基体数とシート材の貼り付け方法の例を示す図である。
【0183】
図23は1面取りの例であり、
図24は3面取りの例であり、
図25は4面取りの例である。
【0184】
なお、
図23〜
図25は、第1基体51が形成されてなる第1基材を示しているが、第1基体51は、例えば、CF基板12でも良いし、EL基板11でも良い。さらには、他の接合体の場合、例えば、PDP表示装置の場合、前面板でもあっても良いし、背面板であっても良い。
(1)1面取り
1面取りでは、1つの第1基材401に1つの第1基体51が形成されている。シート材61は、
図23の(a)に示すようにロール状に巻かれたものでも良いし、
図23の(b)に示すように予め第1基体51(所定領域)に合うように所定領域よりも大きな枚葉状のものでも良い。
(2)3面取り
3面取りでは、1つの第1基材411に3つの第1基体51が例えば1列状に形成されている。シート材61は、
図24の(a)に示すようにロール状に巻かれたものでも良いし、
図24の(b)に示すように予め第1基体51(所定領域)に合うように所定領域よりも大きな枚葉状のもの(3枚使用する。)でも良い。
(3)4面取り
4面取りでは、1つの第1基材421に4つの第1基体51が例えば2列状(各列に2個ずつ)に形成されている。シート材61は、
図25の(a)に示すようにロール状に巻かれたものでも良いし、
図25の(b)に示すように第1基体51にあわせた幅でロール状の巻かれたものを2つ並行して利用するようにしたものでも良いし、
図25の(c)に示すように予め第1基体51(所定領域)に合うように所定領域よりも大きさな枚葉状のもの(4枚使用する。)でも良い。
(4)シート材の大きさ
上記の(1)〜(3)の説明において、シート材61の大きさについて説明しなかったが、シート材61の大きさについて、共通して、分離容易部を形成する領域(実施の形態における所定領域である。)よりも大きい面積を有していることが必要であり、これを満たせは、例えば
図23の(a)に示すように第1基材401よりも面積が大きくても良いし、
図23の(b)に示すように第1基材401よりも面積が小さくても良い。
【0185】
ここでいう「面積が大きい」とは、シート材61を第1基材52,401,411,421等に被せたときに第1基体51の所定領域がシート材61に完全に隠れるような場合をいい、「面積が小さい」とは、シート材61を第1基体51に被せたときに第1基体51の所定領域がシート材61に隠れないような場合をいう。
【0186】
従って、例えば、シート材61の面積が第1基体51の所定領域の面積よりも大きくても、シート材61を被せたときに所定領域が露出しているような場合は、面積が大きいとは言わない。なお、シート材61の面積が大きいのに所定領域を覆うことができない例としては、シート材(61)が細長い形状をし、第1基体51がシート材(61)の幅よりも長い辺を有する正方形状をしている場合等がある。
【0187】
また、実施の形態等では、第1基材に成形されている第1基体の個数と、第2基材に成形されている第2基体の個数とが一致していたが、これらの個数は一致する必要はない。
【0188】
例えば、第1基体に4個の第1基体が形成されている場合、第1基材の第1基体の配置に対応した2個の第2基体が形成された第2基材を2個用いて、第1基体と第2基体とを貼り合せても良いし、1個の第2基体が形成された第2基材(第2基体そのものである。)を4個用いて、第1基体と第2基体とを貼り合せても良い。
4.シート材
実施の形態等では、シート材61は樹脂材63を一対のセパレータ62,64で挟んだ構成をしている。セパレータ62,64の一例としては、第2の実施の形態で説明したPETフィルムがあるが、他の材質のフィルム(樹脂)でも良いし、表面が剥離処理された紙材料でも良い。
【0189】
また、シート材を、両表面(両主面)が樹脂材に対して剥離性を有するセパレータの一主面に樹脂材を設け(例えば塗布により設け)、ローラ状に巻きつけて構成したものであっても良い。
【0190】
この場合、セパレータ(の裏面)に設けられた樹脂材におけるセパレータと反対側の面(表面)は、ローラ状に巻き付けられている下層のセパレータの表面に接触し、機密性が保持される。
【0191】
このような構成のシート材を利用する場合は、第1の実施の形態での(b)の工程(
図8の(b)である。)や第2の実施の形態での(2b)の工程(
図10の(b)である。)におけるシート材61から一方(下側)のセパレータ64を剥がす工程は不要となる。
5.表示パネル
第1の実施の形態等では、接合体の例として有機EL表示装置等の表示パネルについて説明したが、接合体は、無機発光層を用いた無機EL表示装置であっても良い。また、他の表示パネル、例えば、液晶表示パネル、PDPであっても良い。
6.所定領域
第1〜第5の実施の形態では、樹脂材を貼り付ける所定領域の形状は矩形状をしていたが、他の形状であっても良い。他の形状としては、楕円(円を含む)状、3角形や5角形等の多角形であっても良い。
【0192】
さらに、四角形の環状をした形状であっても良い。このような環状をした所定領域の例としては、接合体がPDP装置の場合、前面板の外周部分の貼り合わせ等がある。
7.接合体
第1〜第5の実施の形態では、接合体として表示パネルを用いて説明し、変形例の欄における2.分離容易部の形成の(1)の項では、接合体の例としてPDP表示装置について説明したが、他の接合体としては、例えば、反射防止膜(いわゆる、「ARフィルム」である。)を液晶表示装置、EL表示装置、PDP表示装置等の画面に貼り付ける場合、透明基板(例えばITO基板等である。)を情報表示面(例えば液晶表示面)に貼り付ける場合(いわゆるタッチパネルである。)、電磁波カットフィルムをPDP表示装置に貼り付ける場合、太陽電池の分野において封止シート(例えば、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂等である。)を太陽電素子に貼り付ける場合、車両分野においてスモークフィルムを窓に貼り付ける場合やボディフィルムを車両に貼り付ける場合等がある。
8.最後に
本明細書では、表示パネル等の接合体の製造方法を主の発明として記載しているが、特徴部分は、第1基材の所定領域にのみシート状の樹脂材を貼り付ける工程(換言すると、所定領域の樹脂材のみをシート材から分離する分離工程である。)である。
【0193】
従って、第1基材の所定領域にのみ樹脂材を貼り付ける貼付け方法(という発明)も明細書に記載されている。
【0194】
また、シート材のシート基材を剥がした際に、所定領域のみ樹脂材が第1基材側に残りやすくするための方法(例えば、剥離膜の形成等)やシート材の切断方法(という発明)も明細書に記載されている。