(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990804
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】電気化学電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 2/16 20060101AFI20160901BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20160901BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20160901BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20160901BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20160901BHJP
H01M 6/16 20060101ALI20160901BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20160901BHJP
【FI】
H01M2/16 M
H01M2/16 P
H01M2/16 L
H01M10/0568
H01M10/052
H01M4/40
H01M4/06 X
H01M6/16 A
H01G11/52
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-520699(P2013-520699)
(86)(22)【出願日】2011年7月18日
(65)【公表番号】特表2013-535773(P2013-535773A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】US2011001274
(87)【国際公開番号】WO2012011944
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年6月5日
(31)【優先権主張番号】61/399,883
(32)【優先日】2010年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511108208
【氏名又は名称】オプトドット コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】500031537
【氏名又は名称】ジール ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Sihl GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】チョン シュー
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン アレン カールソン
【審査官】
山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/066946(WO,A2)
【文献】
特表2003−517418(JP,A)
【文献】
特開2010−056036(JP,A)
【文献】
特表2003−515893(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/016881(WO,A1)
【文献】
米国特許第6224846(US,B1)
【文献】
リチウム二次電池,株式会社オーム社,2008年,第1版,pp.128−129
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14−2/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流発生電池用セパレータであって、
前記セパレータは、(a)少なくとも50重量%の改質酸化アルミニウムと、(b)有機ポリマーと、を含む微多孔層を備え、
前記改質酸化アルミニウムは、スルホン酸を用いて改質された酸化アルミニウムを有しており、非プロトン性溶媒に分散可能であり、
前記有機ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンポリマーを含む、
セパレータ。
【請求項2】
前記スルホン酸は、アリールスルホン酸である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記スルホン酸は、トルエンスルホン酸である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記改質酸化アルミニウムは、式Al2O3・xH2Oの水和酸化アルミニウムを含み、式中、xは、1.0〜1.5の範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載のセパレータ。
【請求項5】
前記セパレータは、前記微多孔層の重量に基づく60〜90重量%の前記改質酸化アルミニウムを含む、請求項4に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記微多孔層は、平均孔径2nm〜70nmのキセロゲル層である、請求項4に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記電流発生電池は、リチウムイオン二次電池またはリチウム一次電池である、請求項1〜6のいずれかに記載のセパレータ。
【請求項8】
前記微多孔層は、少なくとも1つの微多孔ポリオレフィン層の片側または両側に被覆される、請求項1〜3のいずれかに記載のセパレータ。
【請求項9】
アノードと、カソードと、リチウム塩を含む有機電解質と、前記アノードと前記カソードとの間に介在するセパレータと、を備える電気化学電池であって、
前記セパレータは、(a)少なくとも50重量%の改質酸化アルミニウムであって、スルホン酸を用いて改質された酸化アルミニウムを有する改質酸化アルミニウムと、(b)有機ポリマーと、を含む微多孔層を備え、
前記改質酸化アルミニウムは、非プロトン性溶媒に分散可能であり、
前記有機ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンポリマーを含む、
電気化学電池。
【請求項10】
前記スルホン酸は、アリールスルホン酸である、請求項9に記載の電池。
【請求項11】
前記スルホン酸は、トルエンスルホン酸である、請求項9に記載の電池。
【請求項12】
前記改質酸化アルミニウムは、式Al2O3・xH2Oの水和酸化アルミニウムを含み、式中、xは、1.0〜1.5の範囲である、請求項9〜11のいずれかに記載の電池。
【請求項13】
前記微多孔層は、平均孔径2nm〜70nmのキセロゲル層である、請求項9〜11のいずれかに記載の電池。
【請求項14】
前記微多孔層は、少なくとも1つの微多孔ポリオレフィン層の片側または両側に被覆される、請求項9〜11のいずれかに記載の電池。
【請求項15】
前記アノードのアノード活性材料は、リチウムである、請求項9〜11のいずれかに記載の電池。
【請求項16】
前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムである、請求項9〜11のいずれかに記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、多孔質膜の分野、ならびに電流発生電池および当該電池に用いるセパレータの分野に関する。より具体的には、本発明は、酸化アルミニウムおよび有機ポリマーを含み、酸化アルミニウムが、非プロトン性有機溶媒における分散性を提供するように有機酸を用いた処理によって表面改質された多孔質セパレータ膜に関する。また、本発明は、上記の多孔質セパレータを備える、例えばリチウムイオン電池およびコンデンサ等の電流発生電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池用の構造に製造された電気活性材料は、電極と称される。電気化学電池用の一対の電極のうち、電気化学的に電位の高い側の電極は、陽極またはカソードと称され、電気化学的に電位の低い側の電極は、陰極またはアノードと称される。バッテリーは、1つ以上の電気化学電池を含み得る。
【0003】
内部での短絡においてアノードからカソードへの望ましくない電子の流れを防止するために、カソードとアノードとの間に電解質要素が介在する。この電解質要素は、短絡を防止するために非電子伝導性でなければならないが、アノードとカソードとの間のイオン輸送を可能にしなければならない。また、電解質要素は、アノードおよびカソードの両方に対して電気化学的かつ化学的に安定であるべきである。
【0004】
一般的に、電解質要素は、(アノードとカソードとを互いから分離するまたは絶縁することから)セパレータと称される多孔質材料と、セパレータの細孔内の水溶性または非水溶性の電解質とを含む。水溶性または非水溶性の電解質は、通常、イオン性電解質塩およびイオン伝導性材料を含む。様々な材料が、電気化学電池内の電解質要素の多孔質層またはセパレータに使用されてきた。これらの多孔質セパレータ材料は、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、ガラス繊維濾紙、ならびにセラミック材料を含む。通常、これらのセパレータ材料は、電気化学電池の製造において、アノードおよびカソードに挟まれた多孔質の独立膜として供給される。
【0005】
有機溶媒およびリチウム塩を含有する液体有機電解質は、通常、充電式電池またはリチウムイオン二次電池用、および非充電式電池または一次リチウム電気化学電池用の電解質要素におけるセパレータの細孔内の電解質として使用される。あるいは、イオン伝導性ポリマーおよびリチウム塩を含有し、ならびに有機溶媒を任意に含むゲルまたは固体ポリマー電解質が、液体有機電解質の代わりに用いられてもよい。
【0006】
セパレータは、多孔質であること、および電流発生電池の他の材料に対して化学的に安定であることに加えて、可撓性で、薄く、コストが安価であり、且つ、良好な機械的強度および安全性特性を有するべきである。
【0007】
セパレータにおける高多孔性は、例えば、比較的低い充電量および放電率で動作するバッテリーを除く、ほとんどのバッテリーにおける実効性能のために必要とされる高いイオン伝導率を得るために、そして、例えば超コンデンサ等のコンデンサの効率のために重要である。セパレータは、リチウムイオンバッテリーにおいて、少なくとも30パーセント、好ましくは40パーセント以上の多孔性を有することが望ましい。
【0008】
電解質要素内のセパレータのもう一つの非常に望ましい特徴は、イオン伝導性を提供する電解質材料によって容易に湿潤されることである。セパレータ材料が無極性表面特性を有するポリオレフィン材料である場合、電解質材料(一般的に高い極性特性を有する)は、セパレータ材料を十分に湿潤させない場合が多い。このため、電解質でバッテリーを充填するのにより長い時間がかかり、電解質要素における電解質材料の不均質な分布のために、バッテリーの容量が潜在的に少なくなる。
【0009】
リチウムイオンバッテリーに使用されるセパレータは、一般的に、200℃未満で溶融し、非常に可燃性である、ポリオレフィンセパレータである。リチウムイオンバッテリー、ならびにリチウム一次バッテリーおよびいくつかのコンデンサは、それらの電解質中に可燃性の高い有機溶媒を用いる。非溶融性および難燃性のセパレータは、バッテリーまたはコンデンサのより広い領域へと広がって大爆発を引き起こす可能性のある、内部短絡、熱暴走、または他の危険な条件によって引き起こされる有機電解質の燃焼の広がりを防止するのに役立つ。例えば電気自動車等の高出力用途へのリチウムイオンバッテリーの利用が増加すると、これらの車両用バッテリーの非常に大きなサイズおよび高い出力率のために、安全性向上の必要性が著しく高まる。
【0010】
リチウムイオンおよび他の電流発生電池に適用可能であり、内部短絡および熱暴走に対する安全性を提供する難燃性および非溶融特性を有する一方で、電解質およびセパレータ自らの化学的安定性を維持するセパレータは、バッテリーおよびコンデンサ産業において非常に価値がある。
【発明の概要】
【0011】
例えばバッテリーおよびコンデンサ等の電流発生電池に用いるセパレータにおいて高い安全性を達成するために、本発明は、例えば酸化アルミニウム、好ましくは、セパレータ内にフッ素化基を有する不燃性有機ポリマー等の不燃性無機酸化物を用いる。本発明は、上記セパレータを調製するための種々の無機酸化物粒子の前処理、混合、被覆、乾燥、および剥離方法を用いる。
【0012】
本発明の一態様は、電流発生電池用のセパレータであって、(a)少なくとも50重量%の酸化アルミニウムと、(b)有機ポリマーと、を含む微多孔層を備え、酸化アルミニウムは、改質酸化アルミニウムを形成するように有機酸を用いた処理により表面改質されている、セパレータである。一実施形態において、有機酸は、スルホン酸であり、好ましくはアリールスルホン酸であり、より好ましくはトルエンスルホン酸である。一実施形態において、有機酸は、カルボン酸である。一実施形態において、酸化アルミニウムは、式Al
2O
3・xH
2Oの水和酸化アルミニウムを含み、式中、xは、1.0〜1.5の範囲であり、水和酸化アルミニウムは、改質水和酸化アルミニウムを形成するように有機酸を用いた処理により表面改質されている。一実施形態において、改質酸化アルミニウムは、50〜85重量%の範囲のAl
2O
3含有量を有する。一実施形態において、改質酸化アルミニウムは、65〜80重量%のAl
2O
3含有量を有する。一実施形態において、セパレータは、60〜90重量%の改質酸化アルミニウムを含む。一実施形態において、セパレータは、70〜85重量%の改質酸化アルミニウムを含む。一実施形態において、微多孔層は、キセロゲル層である。一実施形態において、有機ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンポリマーを含む。一実施形態において、セパレータは、第1のフッ素化有機モノマーおよび第2の有機モノマーのコポリマーを含む。一実施形態において、第2の有機モノマーは、第2のフッ素化有機モノマーである。
【0013】
本発明のセパレータの一実施形態において、電流発生電池は、リチウムイオン二次電池である。一実施形態において、電流発生電池は、リチウム一次電池である。一実施形態において、電流発生電池は、コンデンサである。一実施形態において、セパレータは、300℃よりも低い温度では溶融しない。一実施形態において、セパレータは、難燃性セパレータである。
【0014】
本発明の別の態様は、アノードと、カソードと、リチウム塩を含む有機電解質と、アノードとカソードとの間に介在するセパレータとを備える電気化学電池であって、セパレータは、(a)少なくとも50重量%の酸化アルミニウムと、(b)有機ポリマーと、を含む微多孔層を備え、酸化アルミニウムは、有機酸を用いた処理により表面改質されている、電気化学電池である。一実施形態において、有機酸は、スルホン酸であり、好ましくはアリールスルホン酸であり、より好ましくはトルエンスルホン酸である。一実施形態において、有機酸は、カルボン酸である。一実施形態において、酸化アルミニウムは、式Al
2O
3・xH
2Oの水和酸化アルミニウムであり、式中、xは、1.0〜1.5の範囲であり、水和酸化アルミニウムは、改質水和酸化アルミニウムを形成するように有機酸を用いた処理により表面改質されている。
【0015】
本発明の電気化学電池の一実施形態において、微多孔層は、キセロゲル層である。一実施形態において、アノードのアノード活性材料は、リチウムである。一実施形態において、改質酸化アルミニウムは、50〜85重量%の範囲のAl
2O
3含有量を有する。一実施形態において、改質酸化アルミニウムは、65〜80重量%の範囲のAl
2O
3含有量を有する。一実施形態において、有機ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンポリマーを含む。一実施形態において、有機ポリマーは、第1のフッ素化有機モノマーおよび第2の有機モノマーのコポリマーを含む。一実施形態において、第2の有機モノマーは、第2のフッ素化有機モノマーである。一実施形態において、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムである。
【0016】
本発明の別の態様は、2つの電極と、テトラアルキルアンモニウム塩を含む有機電解質と、2つの電極の間に介在するセパレータとを備えるコンデンサであって、セパレータは、(a)少なくとも50重量%の酸化アルミニウムと、(b)有機ポリマーと、を含む微多孔層を備え、酸化アルミニウムは、改質酸化アルミニウムを形成するように有機酸を用いた処理により表面改質されている、コンデンサである。一実施形態において、無機酸化物は、式Al
2O
3・xH
2Oの水和酸化アルミニウムを含み、式中、xは、1.0〜1.5の範囲であり、酸化アルミニウムは、改質酸化アルミニウムを形成するように有機酸を用いた処理により表面改質されている。一実施形態において、有機酸は、スルホン酸である。一実施形態において、微多孔層は、キセロゲル層である。一実施形態において、有機ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンポリマーを含む。一実施形態において、有機ポリマーは、第1のフッ素化有機モノマーおよび第2の有機モノマーのコポリマーを含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のセパレータは、リチウムバッテリーおよびコンデンサに限定されない電流発生電池に用いられるための優れた安全性および他の重要な性能特性を提供する。
【0018】
電気化学電池用の微多孔質キセロゲルセパレータを調製する方法は、米国特許第6,153,337号および第6,306,545号、ならびに米国特許出願第20020092155号に記載される(全てCarlsonらによるものである)。これらの参考文献に記載されるキセロゲルセパレータを被覆するための液体混合物は、無機酸化物、有機結合剤、そして一般的に、当該混合物中の揮発性液体として水を含む。液体混合物は、有機溶媒、好ましくはプロトン性有機溶媒を任意に含む。プロトン性有機溶媒の例は、アルコールやグリコールである。
【0019】
キセロゲル層を形成するための乾燥プロセスは、液体混合物中の液体を除去することを含む。無機酸化物キセロゲルコーティングの技術分野において既知であるように、液体が除去されるときに、無機酸化物ゾルのコロイド粒子は、さらに液体が失われると、無機酸化物の3次元微多孔質ネットワークを形成するゲルを形成する。本明細書で使用される場合、「キセロゲル層」および「キセロゲル構造」という用語は、無機酸化物に基づくキセロゲルの層を被覆するために、例えば、IchinoseらによるChem. Mater., Vol.9、1296〜1298ページ(1997)に記載されるように、固体ゲルマトリクスを形成するための液体ゾルまたはゾル‐ゲル混合物を乾燥させることによって形成されるコーティングの層および被覆層の構造のそれぞれを意味する。
【0020】
したがって、例えば、液体‐気体界面の形成により、液体ゾル‐ゲル混合物中に形成されたゲルの液体が大幅に除去された場合、その結果生じるゲル層またはフィルムは、本明細書において使用される場合、キセロゲル層と称される。したがって、本発明の一実施形態における微多孔質キセロゲル層は、層の一方の最外側面から該層の他方の最外側面まで実質的に連続的な様式で相互接続された細孔を有する、乾燥した微多孔質の3次元固体ネットワークを含む。連続的なキセロゲルの被覆層は、該被覆層において連続構造のキセロゲルの材料を有する。すなわち、この材料は、例えば無機酸化物粒子等であって、接触しており、例えば相互に分離した固体顔料粒子の不連続層等のように構造の不連続性を有さない。
【0021】
対照的に、キセロゲル顔料粒子は、キセロゲル顔料粒子の乾燥塊を形成するために顔料の好適な前駆体の溶液を乾燥することを伴うキセロゲルプロセスによって形成され得る。通常、キセロゲル顔料粒子の乾燥塊は、その後、キセロゲル顔料粒子を提供する微粉へと粉砕される。本発明の一実施形態における微多孔質無機酸化物層は、限定されないが、キセロゲル層であってもよい。また、本発明の一実施形態における無機酸化物層は、キセロゲル被覆層ではなく、不連続層の構造において相互に分離した固体顔料粒子の不連続性を有する固体顔料粒子の不連続層であってもよい。この分離は、通常、顔料粒子の間に有機ポリマーが介在することによってなされる。「キセロゲルコーティング」および「キセロゲル被覆層」という用語は、本明細書で使用される場合、「キセロゲル層」という用語と同義である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「微多孔質」という用語は、直径約1ミクロン以下の細孔を有する材料の層またはコーティングを意味する。本明細書で使用される場合、「ナノ多孔質」という用語は、直径約100ナノメートル以下の細孔を有する材料の層またはコーティングを意味する。
【0023】
バッテリーおよびコンデンサのセパレータの適用に関し、細孔が、微多孔層の一方の最外側面から該層の他方の最外側面まで実質的に連続的な様式で接続されていることが好ましい。この実質的に連続的な3次元の微多孔質無機酸化物ネットワークは、電流発生電池の充電中および放電中に、セパレータを通してリチウムイオン等のイオンの拡散を可能にする上で効率的である。
【0024】
セパレータの細孔の量は、多孔性率、またはセパレータの立方センチメートル当たりの細孔の立方センチメートルである細孔容積率によって特徴付けることができる。多孔性率は、既知の密度を有する比較的非揮発性の液体で細孔を充填することによって測定することができ、次いで、存在する液体を含むセパレータの重量の増加を液体の既知の密度で除し、次いで、この商をセパレータの面積および平均厚さから計算されるセパレータの容積で除すことによって計算することができる。
【0025】
本発明のセパレータの一実施形態において、微多孔質無機酸化物層の平均孔径は、2nm〜70nmである。一般的に、微多孔質無機酸化物層の平均孔径は、30〜50nmである。これらの極めて小さい細孔は、ポリオレフィンセパレータの平均細孔寸法よりも約5〜10倍小さく、リチウム塩電解質による高い伝導率への限界を提示しない。したがって、本発明の一実施形態におけるセパレータの孔径は、ポリオレフィンセパレータのイオン輸送およびイオン伝導性と少なくとも等しいリチウムイオンバッテリー電解質によるイオン輸送およびイオン伝導性を提供する。
【0026】
本発明のセパレータの一実施形態において、無機酸化物は、酸化アルミニウムである。電気化学電池用の電解質要素およびセパレータの技術分野において既知であるように、例えば酸化ジルコニウムやシリカ等の他の無機酸化物が、単独で、または酸化アルミニウムを含む他の無機酸化物とともに用いられてもよい。好ましい酸化アルミニウムは、アルミニウムベーマイトである。「疑似ベーマイト」という用語は、本明細書において使用される場合、xが1.0〜1.5の範囲である化学式Al
2O
3・xH
2Oを有する水和酸化アルミニウムに関する。「疑似ベーマイト」と同義であって本明細書において使用される用語は、「アルミニウムベーマイト」、「ベーマイト」、「AlOOH」、および「アルミナ水和物」を含む。本明細書において「疑似ベーマイト」と称される材料は、無水酸化アルミニウム、アルミナ(αアルミナまたはγアルミナ等のAl
2O
3)、およびxが1.0未満であるかまたは1.5よりも大きい式Al
2O
3・xH
2Oで示される水和酸化アルミニウムとは異なる。本発明のセパレータの一実施形態において、セパレータ内の酸化アルミニウムの重量パーセントは、50%よりも大きい。この酸化アルミニウムの配合は、電流発生電池を製造する際に、伝導性および電解質による迅速な湿潤のために必要なセパレータの多孔性を提供するのに役立つ。
【0027】
本発明の一態様は、電流を発生する電池用のセパレータであって、(a)少なくとも50重量%の酸化アルミニウムと、(b)有機ポリマーと、を含む微多孔層を備え、酸化アルミニウムは、改質酸化アルミニウムを形成するように有機酸を用いた処理により表面改質されている、セパレータである。セパレータは、本発明の一実施形態における微多孔層のみを含んでもよいし、リチウムイオンバッテリーに通常使用される多孔質ポリオレフィン層等の付加的な微多孔層を含んでもよい。例えば、本発明の一実施形態における微多孔層は、例えばCelgard2500(Charlotte,NCのPolypore,Inc.から入手可能なポリオレフィンセパレータ膜の商品名である)等の微多孔ポリオレフィン層の片側または両側に被覆されてもよい。5〜20ミクロンという厚さは、本実施形態の微多孔層のみを含む本実施形態のセパレータにとっては標準的であるが、ポリオレフィン微多孔質セパレータ上の本発明の一実施形態における微多孔層のコーティングの厚さは、標準的には、限定されないが1〜4ミクロンの範囲である。
【0028】
本発明のセパレータの一実施形態において、有機酸は、スルホン酸であり、好ましくはアリールスルホン酸であり、より好ましくはトルエンスルホン酸である。一実施形態において、有機酸は、カルボン酸である。酸化アルミニウムの表面改質の目的の1つは、有機溶媒中、特に非プロトン性有機溶媒中で、酸化アルミニウム粒子を分散可能にすることである。この広範囲にわたる分散性は、非プロトン性有機溶媒には可溶であるが、水およびアルコールには不溶であるという点において、より幅広い範囲の有機ポリマーの使用を可能にすることができ、有利である。非プロトン性有機溶媒における優れた分散性のための無機酸化物の表面改質の技術分野で既知であるような、無機酸化物の他の表面改質が本発明において用いられてもよい。
【0029】
本発明のセパレータの一実施形態において、酸化アルミニウムは、式Al
2O
3・xH
2Oの水和酸化アルミニウムを含み、式中、xは、1.0〜1.5の範囲であり、水和酸化アルミニウムは、改質水和酸化アルミニウムを形成するように有機酸を用いた処理により表面改質されている。一実施形態において、改質酸化アルミニウムは、50〜85重量%の範囲のAl
2O
3含有量を有する。一実施形態において、改質酸化アルミニウムは、65〜80重量%の範囲のAl
2O
3含有量を有する。一実施形態において、セパレータは、60〜90重量%の改質酸化アルミニウムを含む。一実施形態において、セパレータは、70〜85重量%の改質酸化アルミニウムを含む。一実施形態において、微多孔層は、キセロゲル層である。一実施形態において、有機ポリマーは、例えばKYNAR HSV 900(Arkema,Inc.から入手可能なリチウムバッテリーおよび他の用途用のポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーの商品名)等のPVDFポリマーを含む。一実施形態において、セパレータは、第1のフッ素化有機モノマーおよび第2の有機モノマーのコポリマーを含む。一実施形態において、第2の有機モノマーは、第2のフッ素化有機モノマーである。
【0030】
本発明のセパレータの一実施形態において、電流発生電池は、リチウムイオン二次電池である。一実施形態において、電流発生電池は、リチウム一次電池である。一実施形態において、電流発生電池は、コンデンサである。一実施形態において、セパレータは、300℃よりも低い温度では溶融しない。酸化アルミニウムまたは他の無機酸化物材料は、高温でのセパレータの非溶融性および寸法安定性を提供することに主に寄与する。一実施形態において、セパレータは、難燃性セパレータである。酸化アルミニウムまたは他の無機酸化物は、難燃性材料であり、同じく難燃性である高度フッ素化有機ポリマーと組み合わされると、難燃性セパレータを提供し得る。
【0031】
本発明の別の態様は、アノードと、カソードと、リチウム塩を含む有機電解質と、アノードとカソードとの間に介在するセパレータとを備える電気化学電池であって、セパレータは、(a)少なくとも50重量%の酸化アルミニウムと、(b)有機ポリマーと、を含む微多孔層を備え、酸化アルミニウムは、有機酸を用いた処理により表面改質されている、電気化学電池である。一実施形態において、有機酸は、スルホン酸であり、好ましくはアリールスルホン酸であり、より好ましくはトルエンスルホン酸である。一実施形態において、有機酸は、カルボン酸である。一実施形態において、酸化アルミニウムは、式Al
2O
3・xH
2Oの水和酸化アルミニウムを含み、式中、xは、1.0〜1.5の範囲であり、水和酸化アルミニウムは、改質水和酸化アルミニウムを形成するように有機酸を用いた処理により表面改質されている。
【0032】
本発明の電気化学電池の一実施形態において、微多孔層は、キセロゲル層である。一実施形態において、アノードのアノード活性材料は、リチウムである。一実施形態において、改質酸化アルミニウムは、50〜85重量%の範囲のAl
2O
3含有量を有する。一実施形態において、改質酸化アルミニウムは、65〜80重量%の範囲のAl
2O
3含有量を有する。一実施形態において、有機ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンポリマーを含む。一実施形態において、有機ポリマーは、第1のフッ素化有機モノマーおよび第2の有機モノマーのコポリマーを含む。一実施形態において、第2の有機モノマーは、第2のフッ素化有機モノマーである。一実施形態において、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムである。
【0033】
本発明の別の態様は、コンデンサであって、2つの電極と、テトラアルキルアンモニウム塩を含む有機電解質と、2つの電極の間に介在するセパレータであって、(a)少なくとも50重量%の酸化アルミニウムと、(b)有機ポリマーと、を含む微多孔層を備え、酸化アルミニウムは、改質酸化アルミニウムを形成するように有機酸を用いた処理により表面改質されている、セパレータと、を含むコンデンサである。一実施形態において、無機酸化物は、式Al
2O
3・xH
2Oの水和酸化アルミニウムを含み、式中、xは、1.0〜1.5の範囲であり、酸化アルミニウムは、改質酸化アルミニウムを形成するように有機酸を用いた処理により表面改質されている。一実施形態において、有機酸は、スルホン酸である。一実施形態において、微多孔層は、キセロゲル層である。一実施形態において、有機ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンポリマーを含む。一実施形態において、有機ポリマーは、第1のフッ素化有機モノマーおよび第2の有機モノマーのコポリマーを含む。
【実施例】
【0034】
以下の実施例において本発明のいくつかの実施形態を記載するが、それらは例として提供されるのであって、制限として提供されるものではない。
【0035】
〔実施例1〕
メチルエチルケトン中のDISPAL 10SR(SASOL North America、Houston,TXから入手可能な表面改質された酸化アルミニウムの商品名)の20重量%分散体を調製した。SASOLによるDISPAL 10SRの製品安全データシート(MSDS)によれば、酸化アルミニウムはアルミニウムベーマイトであり、表面改質はp−トルエンスルホン酸(PTSA)を含む。別途、N−メチルピロリドン(NMP)中のKYNAR HSV 900の10重量%溶液を調製した。撹拌したフルオロポリマー溶液に酸化アルミニウム分散体を加え、乾燥重量比5:1で酸化アルミニウムおよびフルオロポリマーを含む分散体を調製した。この分散体の固形の割合は、約17%であった。
【0036】
この分散体を、約20ミクロンの乾燥皮膜厚となるように、シリコン放出側の厚さ3ミリのシリコン処理したポリエステル(PET)フィルムに被覆し、次いで、放出基板から剥離して、約43%の多孔性の独立型の酸化アルミニウム微多孔質セパレータを作製した。グラファイトを含有するアノード、有機カーボネート溶媒中にヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する電解質、ならびに酸化コバルトを含有するカソードを有する一般的なリチウムイオンボタン電池におけるこの酸化アルミニウム微多孔質セパレータの評価は、酸化アルミニウムセパレータの代わりに同じ厚さのUbe製ポリオレフィンセパレータを用いた比較対照のボタン電池と比較して、等しいかまたはより良好な55℃での化学的安定性、循環、ならびに1Cおよび5C充電でのイオン伝導性を示した。
【0037】
酸化アルミニウムセパレータは、300℃未満の温度では溶融せず、直火に曝露された時に燃焼しなかったことによって難燃性であることが示された。
【0038】
〔実施例2〕
実施例1の酸化アルミニウムおよびフルオロポリマーの分散体を、Ube製の厚さ20ミクロンのポリオレフィンセパレータに被覆し、ポリオレフィンセパレータの収縮および溶融を防止するために90℃で乾燥させた。コーティングの厚さは、乾燥した状態で1ミクロン〜4ミクロンと異なり、ポリオレフィンセパレータの片側または両側に被覆した。ポリオレフィンセパレータの片側または両側に2ミクロンの厚さの酸化アルミニウム微多孔質コーティングがなされた、実施例1に記載したボタン電池を調製し、ポリオレフィンセパレータのみを有する比較対照のボタン電池に、同等の55℃での安定性、循環、および伝導性を付与した。
【0039】
〔比較例1〕
メチルエチルケトン中のDISPAL 10F4(SASOL North America、Houston,TXから入手可能な表面改質されたアルミニウムベーマイトの商品名)の20重量%分散体を、40分間撹拌しながら2200rpmで混合した。満足のいく分散体は得られず、ほぼ全ての顔料が混合容器の底に沈殿した。SASOLによるDISPAL 10F4の製品安全データシート(MSDS)によれば、表面改質はギ酸を含む。別途、NMP中のKYNAR HSV 900の10重量%溶液を調製した。アルミニウムベーマイトおよびフルオロポリマーを乾燥重量比3:1で撹拌したフルオロポリマー溶液に、分散しなかったメチルエチルケトン中のDISPAL 10F4混合物を2200rpmで40分間撹拌を続けながら加えた。満足のいく分散体は得られず、ほぼ全ての顔料が混合容器の底に沈殿した。混合物は、放出基板上のセパレータ層を被覆するのに好適ではなかった。
【0040】
〔比較例2〕
NMP中のKYNAR HSV 900の7.5重量%溶液を調製した。2200rpmで撹拌中のこのフルオロポリマー溶液に、乾燥重量比5:1のアルミニウムベーマイトおよびフルオロポリマー中のDISPAL 10F4を2200rpmで40分間撹拌を続けながら徐々に加えた。満足のいく分散体は得られず、ほぼ全ての顔料が混合容器の底に沈殿した。混合物は、放出基板上のセパレータ層を被覆するのに好適ではなかった。
比較例1および2は、ギ酸を用いた酸化アルミニウムの表面改質は、NMPおよびメチルエチルケトンに代表されるような非プロトン性溶媒における分散性を提供せず、結果的に、可溶性のためにNMP等の非プロトン性溶媒を必要とするポリフッ化ビニリデン(PVDF)および他のフルオロポリマーでセパレータを被覆すること、ならびに例えばセパレータまたはバッテリー電極の被覆等のコーティングにおける使用には好適ではないことを示している。
【0041】
本発明は、詳細に、その特定のおよび一般的な実施形態を参照して説明してきたが、当業者には、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、本発明において種々の変更および修正を行うことができることは明白であろう。