(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コアと、該コアを被覆する包囲層と、該包囲層を被覆する中間層と、該中間層を被覆し、表面に多数のディンプルが形成された外層とを備えたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアは弾性体からなり、上記包囲層が、内側及び外側の2層に形成され、上記中間層が、内側及び外側の2層に形成されると共に、上記コアにおける平均硬度を下記式で表したとき、
コア平均硬度(ショアD)=[コア表面硬度(ショアD)+コア中心硬度(ショアD)]/2
外層硬度(ショアD)が上記コア平均硬度よりも高く、且つ包囲層及び中間層の各層が外層よりも軟らかくなり、更に下記の3つの式を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
1≦(外側中間層のショアD硬度−内側中間層のショアD硬度)≦10
1≦(外側包囲層のショアD硬度−内側包囲層のショアD硬度)≦10
0.75≦(外側中間層厚さ+内側中間層厚さ)/外層厚さ≦1.3
上記外層は、アイオノマーを主材として形成され、外層材料には、酸含量16質量%以上のアイオノマー樹脂を1種又は複数種含む請求項1〜4のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ヘッドスピードがそれほど速くない一般アマチュアゴルファーに優れた飛びと軟らかく良好な打感が得られるマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、コアに被覆する層を、内側から順に、内側包囲層、外側包囲層、内側中間層、外側中間層及び外層の5層以上の多層構造とすることを基本的構成とし、上記コアは弾性体からなり、上記コアにおける平均硬度を下記式で表したとき、
コア平均硬度(ショアD)=[コア表面硬度(ショアD)+コア中心硬度(ショアD)]/2
外層硬度(ショアD)が上記コア平均硬度よりも高く、且つ包囲層及び中間層の各層が外層よりも軟らかくなるように硬度設計することにより、ヘッドスピードがそれほど速くない一般アマチュアゴルファーに優れた飛びと軟らかく良好な打感が得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
即ち、本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、コアに少なくとも5層の被覆層を形成して6層以上の多層構造とすることを基本にしつつ、外層を比較的硬くすることにより低スピンと高反発を両立させている。更に、外層以外の各層(内側包囲層、外側包囲層、内側中間層及び外側中間層)の硬さと厚さとの絶妙なコンビネーションによりフルショットの低スピン化と高反発化により優れた飛距離が得られる。また、フルショットした時には、ソフトで良好な打感を達成することができる。
【0010】
従って、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
[1]コアと、該コアを被覆する包囲層と、該包囲層を被覆する中間層と、該中間層を被覆し、表面に多数のディンプルが形成された外層とを備えたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアは弾性体からなり、上記包囲層が、内側及び外側の2層に形成され、上記中間層が、内側及び外側の2層に形成されると共に、上記コアにおける平均硬度を下記式で表したとき、
コア平均硬度(ショアD)=[コア表面硬度(ショアD)+コア中心硬度(ショアD)]/2
外層硬度(ショアD)が上記コア平均硬度よりも高く、且つ包囲層及び中間層の各層が外層よりも軟らかく
なり、更に下記の3つの式を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
1≦(外側中間層のショアD硬度−内側中間層のショアD硬度)≦10
1≦(外側包囲層のショアD硬度−内側包囲層のショアD硬度)≦10
0.75≦(外側中間層厚さ+内側中間層厚さ)/外層厚さ≦1.3
[2]上記包囲層、中間層及び外層のショアD硬度の関係が、下記式を満たす[1]記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
外層硬度>外側中間層硬度>内側中間層硬度>外側包囲層硬度>内側包囲層硬度
[
3]上記コア、包囲層、中間層及び外層のショアD硬度の関係が、下記の
3つの式を満たす[1]記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
3≦(外層硬度−外側中間層硬度)≦20
1≦(内側中間層硬度−外側包囲層硬度)≦10
5≦(外層硬度−コア平均硬度)≦40
[
4]上記包囲層、中間層及び外層の厚さの関係が、下記式を満たす[1]記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
1≦
(外側中間層厚さ+内側中間層厚さ+外側包囲層厚さ+内側包囲層厚さ)/外層厚さ≦4.0
[5]上記外層は、アイオノマーを主材として形成され、外層材料には、酸含量16質量%以上のアイオノマー樹脂を1種又は複数種含む[1]〜[4]のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
[6]上記コア、包囲層、中間層及び外層のショアD硬度の関係が、下記式を満たす[1]記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
外層硬度>外側中間層硬度>内側中間層硬度>外側包囲層硬度>内側包囲層硬度>コア中心硬度
[7]上記包囲層、中間層及び外層の厚さの関係が、下記式を満たす[1]記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
外層厚さ≦(外側中間層厚さ+内側中間層厚さ+外側包囲層厚さ+内側包囲層厚さ)<コア直径
[8]上記内側包囲層、外側包囲層、内側中間層及び外側中間層のうちの少なくとも1つの層が、
(a)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、(b)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを質量比で100:0〜0:100になるように配合したアイオノマー樹脂成分と、
(e)非アイオノマー熱可塑性エラストマー
とを質量比で100:0〜50:50になるように配合した材料で形成された[1]〜[7]のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
[9]上記内側包囲層、外側包囲層、内側中間層及び外側中間層のうちの少なくとも1つの層が、
(a)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(b)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを質量比で100:0〜0:100になるように配合したベース樹脂と、
(e)非アイオノマー熱可塑性エラストマー
とを質量比で100:0〜50:50になるように配合した樹脂成分100質量部に対して、
(c)分子量が228〜1500の脂肪酸及び/又はその誘導体 5〜120質量部
と、
(d)上記ベース樹脂及び(c)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物 0.1〜17質量部
とを必須成分として配合した材料で形成された[1]〜[7]のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
[10]上記内側包囲層、外側包囲層、内側中間層及び外側中間層のうちの少なくとも2つの層が、[9]に記載された材料で形成されたマルチピースソリッドゴルフボール。
[11]上記内側包囲層、外側包囲層、内側中間層及び外側中間層のうちの少なくとも3つの層が、[9]に記載された材料で形成されたマルチピースソリッドゴルフボール。
[12]上記内側包囲層、外側包囲層、内側中間層及び外側中間層の全ての層が、[9]に記載された材料で形成されたマルチピースソリッドゴルフボール。
[
13]上記コア、包囲層、中間層及び外層の厚さの関係が、下記の
3つの式を満たす[1]記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
0.75≦(外側包囲層厚さ+内側包囲層厚さ)/外層厚さ≦1.5
0.75≦(外側中間層厚さ+内側中間層厚さ)/(外側包囲層厚さ+内側包囲層厚さ)≦1.5
外層厚さ<(外側中間層厚さ+内側中間層厚さ+外側包囲層厚さ+内側包囲層厚さ)<コア直径
[
14]
上記外層の硬度が、ショアD硬度で65〜75である[1]〜[13]のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
[
15]
上記外層は、隣接する上記外側中間層よりも厚く形成される[1]〜[14]のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
[
15]
上記外層は、隣接する上記外側中間層よりも0.6〜1.0mm厚く形成される[1]〜[14]のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
[
17]
上記外層硬度と上記コアの平均硬度との差は、ショアD硬度で、24〜40である[1]〜[16]のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
[
18]
上記外側中間層と、隣接する上記外層との硬度差は、ショアD硬度で、8〜20である[1]〜[17]のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、ドライバーによるフルショット時におけるボールを低スピン化させることができ、更なるボールの飛距離の増大と良好な打感を兼ね備えたものとすることができ、特に、ヘッドスピードがそれほど速くない一般アマチュアゴルファー向けのゴルフボールとして非常に有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、
図1に示されているように、コア1と、該コアを被覆する包囲層2と、該包囲層を被覆する中間層3と、該中間層を被覆した外層4とを具備したゴルフボールGであり、更に、上記包囲層2が、内側包囲層2a及び外側包囲層2bの2層に形成され、上記中間層3が、内側中間層3a及び外側中間層3bの2層に形成されるものである。なお、
図1に示される外層4の表面には、通常、
図2のようにディンプルが多数形成されているが、
図1では特に図示していない。コア1については、それぞれ単層に限られず2層以上の複数層に形成することができる。
【0014】
本発明では、コアの直径は、特に制限されるものではないが、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上、更に好ましくは34mm以上である。また、直径の上限も特に制限されるものではないが、好ましくは38mm以下、より好ましくは37mm以下、更に好ましくは36mm以下である。コアの直径がこの範囲を逸脱すると、ボール初速が低くなったり、ドライバーで打撃した時の低スピン効果が足りずに飛距離が伸びなくなる場合がある。
【0015】
コアの表面硬度は、特に制限はないが、JIS−C硬度で、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、更に好ましくは70以上である。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは95以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは85以下である。上記の硬度範囲をショアD硬度で表すと、好ましくは30以上、より好ましくは38以上、更に好ましくは45以上となる。また、その上限は、好ましくは64以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは57以下である。
【0016】
コアの中心硬度は、具体的には、JIS−C硬度で、好ましくは40以上、より好ましくは45以上、更に好ましくは50以上とすることができる。また、その上限は、好ましくは72以下、より好ましくは68以下、更に好ましくは65以下である。上記の硬度範囲をショアD硬度で表すと、好ましくは22以上、より好ましくは26以上、更に好ましくは30以上となる。また、その上限は、好ましくは47以下、より好ましくは44以下、更に好ましくは41以下である。
【0017】
コアの表面硬度と中心硬度との平均値(以下、「コア平均硬度」という。)を[コア表面硬度+コア中心硬度]/2で表したとき、コア平均硬度は、特に制限されないがJIS−C硬度で、好ましくは35以上、より好ましくは40以上、更に好ましくは50以上とすることができる。また、その上限は、好ましくは84以下、より好ましくは79以下、更に好ましくは75以下である。上記の硬度範囲をショアD硬度で表すと、好ましくは19以上、より好ましくは22以上、更に好ましくは30以上となる。また、その上限は、好ましくは56以下、より好ましくは52以下、更に好ましくは49以下となる。コア平均硬度が、上記の範囲を下回ると、コアの反発性が足りずに飛距離が伸びなくなったり、打感が軟らかくなりすぎたり、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなる場合がある。逆に、上記の範囲を超えると、フルショットした時の打感が硬くなりすぎたり、スピン量が多くなりすぎて飛距離が伸びなくなる場合がある。
【0018】
本発明において、コアの中心から表面に向かって硬度が増加することが好適である。この場合、コアの中心と表面の硬度差がJIS−C硬度で5以上であることが好ましく、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上である。また、その上限は、40以下であることが好ましく、より好ましくは35以下、更に好ましくは25以下である。この差が小さすぎると、スピン量が多くなりすぎて飛距離が伸びなくなることがある。差が大きすぎると、繰り返し打撃耐久性が悪くなったり、反発性が低くなり飛距離が伸びなくなることがある。
【0019】
コアが荷重負荷された時のたわみ量、即ち、コアに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上、更に好ましくは3.5mm以上である。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは12.0mm以下、より好ましくは10.0mm以下、更に好ましくは6.0mm以下である。この値が大きすぎると、コアの反発性が低くなりすぎて飛距離が不十分なものとなり、打感が軟らかくなりすぎたり、また、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、この値が小さすぎると、フルショットした時の打感が硬くなりすぎたり、スピン量が多くなりすぎて飛距離が伸びなくなる場合がある。
【0020】
上記のような表面硬度やたわみ量を有するコアを形成する材料としては、下記に記載されるゴム材Iまたは樹脂材IIを主材として用いることができる。
【0021】
ゴム材I
基材ゴムに、共架橋剤、有機過酸化物、不活性充填剤、有機硫黄化合物等を含有するゴム材(ゴム組成物)を挙げることができる。そして、このゴム材の基材ゴムとしては、ポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0022】
上記のポリブタジエンは、そのポリマー鎖中に、シス−1,4−結合を60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上有することが好適である。分子中の結合に占めるシス−1,4−結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。
【0023】
また、上記ポリブタジエンに含まれる1,2−ビニル結合の含有量としては、そのポリマー鎖中に通常2%以下、好ましくは1.7%以下、更に好ましくは1.5%以下である。1,2−ビニル結合の含有量が多すぎると、反発性が低下する場合がある。
【0024】
本発明で用いる上記ポリブタジエンとしては、良好な反発性を有するゴム組成物の加硫成形物を得る観点から、希土類元素系触媒又はVIII族金属化合物触媒で合成されたものであることが好ましく、中でも特に希土類元素系触媒で合成されたものであることが好ましい。
【0025】
このような希土類元素系触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ランタン系列希土類元素化合物と、有機アルミニウム化合物、アルモキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じルイス塩基とを組み合わせてなる触媒を挙げることができる。
【0026】
上記ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の金属ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等を挙げることができる。
【0027】
本発明においては、特に、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム化合物を用いたネオジム系触媒を使用することが、シス−1,4−結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましく、これらの希土類元素系触媒の具体例は、特開平11−35633号公報、特開平11−164912号公報、特開2002−293996号公報に記載されているものを好適に挙げることができる。
【0028】
ランタン系列希土類元素化合物系触媒を用いて合成されたポリブタジエンは、ゴム成分中に10質量%以上、好ましくは20質量%以上、特に40質量%以上含有することが反発性を向上させるためには好ましい。
【0029】
なお、上記基材ゴムには、上記ポリブタジエン以外にも他のゴム成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。上記ポリブタジエン以外のゴム成分としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエン、その他のジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0030】
共架橋剤としては、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の金属塩等が挙げられる。
【0031】
不飽和カルボン酸として具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。
【0032】
不飽和カルボン酸の金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0033】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、更に好ましくは6質量部以上、上限として、好ましくは60質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは35質量部以下、最も好ましくは25質量部以下とすることができる。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0034】
上記有機過酸化物としては市販品を用いることができ、例えば、パークミルD(日油社製)、パーヘキサC−40、パーヘキサ3M(日油社製)、Luperco 231XL(アトケム社製)等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記有機過酸化物の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、最も好ましくは0.7質量部以上、上限として、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると好適な打感、耐久性及び反発性を得ることができない場合がある。
【0036】
不活性充填剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
不活性充填剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、上限として、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは110質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な重さ、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0038】
更に、必要に応じて老化防止剤を配合することができ、例えば、市販品としては、ノクラックNS−6、同NS−30(大内新興化学工業社製)、ヨシノックス425(吉富製薬社製)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
該老化防止剤の配合量は0超とすることができ、好ましくは基材ゴム100質量部に対して0.05質量部以上、特に0.1質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは基材ゴム100質量部に対して3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、最も好ましくは0.5質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると好適な反発性、耐久性を得ることができない場合がある。
【0040】
上記基材ゴムには、ゴルフボールの反発性を向上させ、ゴルフボールの初速度を大きくするため、有機硫黄化合物を配合することができる。この有機硫黄化合物としては、ゴルフボールの反発性を向上させ得るものであれば特に制限されないが、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ハロゲン化チオフェノール類又はそれらの金属塩等が挙げられる。より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ペンタフルオロチオフェノールの亜鉛塩、ペンタブロモチオフェノールの亜鉛塩、パラクロロチオフェノールの亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられ、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩が好適に用いられる。
【0041】
樹脂材II
コア材料としては、上記のゴム組成物に代えて、熱可塑性樹脂を主材したものを採用することができ、特にアイオノマー樹脂を用いることが好適である。より好適には、後述する「包囲層」の材料として記載した中和度を向上させた高中和アイオノマー樹脂材料を用いることができる。
【0042】
上記の熱可塑性樹脂として具体的には、ナイロン、ポリアリレート、アイオノマー樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができ、市販品としては、商品名「サーリンAD8512」(デュポン社製のアイオノマー樹脂)、「ハイミラン1706」、「同1707」(三井・デュポン社製アイオノマー樹脂)、「リルサンBMNO」(東レ社製ナイロン樹脂)、「UポリマーU−8000」(ユニチカ社製ポリアリレート樹脂)などを好適に使用し得る。
【0043】
上記の樹脂製コアを得るには、型付けもしくは射出成型いずれの方法も使用できるが、好ましくは射出成型方法にて製造すればよく、コア成形用金型のキャビティ内に通常の方法により射出する方法を好適に採用することができる。
【0044】
次に、包囲層について下記に説明する。
本発明では、上述したように、コアを被覆する包囲層が内側包囲層及び外側包囲層の2層に形成される。
【0045】
内側包囲層の材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度(ASTM D2240に準拠したタイプDデュロメータによる測定値。以下同じ。)で好ましくは30以上、より好ましくは37以上、更に好ましくは40以上である。また、その上限についても特に制限されるものではないが、好ましくは56以下、より好ましくは53以下、更に好ましくは50以下である。内側包囲層が軟らかすぎると、W#1による打撃時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。逆に、内側包囲層が硬すぎると、打感が硬くなりすぎたり、W#1による打撃時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。内側包囲層と、隣接する外側包囲層との硬度差については、ショアD硬度で、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、上限として、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。上記範囲を逸脱すると、フルショットした時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。また、繰り返し打撃における割れ耐久性が悪くなることがある。
なお、ここで材料硬度とは、材料が樹脂の場合は、樹脂組成物をプレス成形して作製した厚さ2mmのシートについて測定した硬度であり、材料がゴムの場合は、ゴム組成物をシート成形用金型に投入して170℃で15分間加熱成形して作製した厚さ約2mmのプレスシートについて測定した硬度である(以下、同様)。
【0046】
内側包囲層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上である。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。内側包囲層の厚さが上記の範囲を外れると、ドライバー(W#1)打撃による低スピン効果が足りずに飛距離が伸びなくなることがある。
【0047】
上記外側包囲層の材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で、好ましくは37以上、より好ましくは40以上、更に好ましくは43以上である。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは58以下、より好ましくは55以下、更に好ましくは52以下である。外側包囲層が軟らかすぎると、W#1による打撃時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。逆に、外側包囲層が硬すぎると、打感が硬くなりすぎたり、W#1による打撃時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。外側包囲層と、隣接する内側中間層との硬度差は、ショアD硬度で、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、上限として、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下である。上記硬度差が上記範囲を逸脱すると、フルショットした時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがあったり、繰り返し打撃における割れ耐久性が悪くなることがある。
【0048】
外側包囲層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。また、その上限については、特に制限されるものではないが、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。外側包囲層の厚さが上記の範囲を外れると、ドライバー(W#1)打撃による低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。
【0049】
本発明において、包囲層は内側及び外側の2層に形成されるが、これらの各層は同一又は互いに異なる樹脂材料を用いて形成することができる。上記包囲層を形成する材料は、ゴム材料や樹脂材料等を用いることができ、特に制限されるものではないが、本発明では、(a)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、(b)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを特定量配合したベース樹脂を必須成分とする材料を好適に用いることができる。本発明では、上記包囲層の少なくとも1層をこの材料を用いて形成することにより、ドライバー(W#1)打撃時に低スピン化することができ、大きな飛距離を得ることができる。上記材料について、以下に詳述する。
【0050】
上記ベース樹脂中のオレフィンは、(a)成分、(b)成分のいずれであっても、炭素数が、通常2以上、上限として8以下、特に6以下のものが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。
【0051】
また、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。
【0052】
更に、不飽和カルボン酸エステルとしては、上述した不飽和カルボン酸の低級アルキルエステルが好適で、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等を挙げることができ、特にアクリル酸ブチル(n−アクリル酸ブチル、i−アクリル酸ブチル)であることが好ましい。
【0053】
(a)成分のオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び(b)成分のオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体(以下、(a)成分及び(b)成分中の共重合体を総称してランダム共重合体という)は、上記成分を公知の方法によりランダム共重合させることにより得ることができる。
【0054】
上記ランダム共重合体は、不飽和カルボン酸の含量(酸含量)が調整されたものであることが推奨される。ここで、(a)成分のランダム共重合体に含まれる不飽和カルボン酸の含量は、特に制限されるものではないが、好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上とすることができる。また、その上限については、特に制限されるものではないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下、特に好ましくは15質量%以下であることが推奨される。
【0055】
同様に(b)成分のランダム共重合体に含まれる不飽和カルボン酸の含量は、特に制限されるものではないが、好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下であることが推奨される。ランダム共重合体の酸含量が少なすぎると反発性が低下する場合があり、多すぎると加工性が低下する場合がある。
【0056】
(a)成分及び(b)成分のランダム共重合体の金属イオン中和物は、上記ランダム共重合体中の酸基を金属イオンで部分的に中和することにより得ることができる。ここで、酸基を中和する金属イオンの具体例としては、Na
+、K
+、Li
+、Zn
++、Cu
++、Mg
++、Ca
++、Co
++、Ni
++、Pb
++等が挙げられる。本発明においては、この中でも特にNa
+、Li
+、Zn
++、Mg
++等を好適に用いることができ、更には反発性を改良する観点からNa
+を用いることが推奨される。これら金属イオンのランダム共重合体に対する中和度は特に限定されるものではない。このような中和物は、公知の方法で得ることができ、例えば、上記ランダム共重合体に対して、上記金属イオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物及びアルコキシド等の化合物を使用して中和する方法などを採用することができる。
【0057】
上記ランダム共重合体の金属イオン中和物としては、ナトリウムイオン中和型アイオノマー樹脂や亜鉛イオン中和型アイオノマー樹脂等を好適に使用でき、材料のメルトフローレート(MFR)を増加させ、後述する最適なメルトフローレートに調整することが容易であり、成形性を改良することができる。
【0058】
上記(a)成分と上記(b)成分は、市販品を使用してもよく、例えば、(a)成分のランダム共重合体として、ニュクレルN1560、同N1214、同N1035、同AN4221C(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、ESCOR5200、同5100、同5000(いずれもEXXONMOBIL CHEMICAL社製)等を、(b)成分のランダム共重合体として、例えば、ニュクレルAN4311、同AN4318、同AN4319(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、ESCOR ATX325、同ATX320、同ATX310(いずれもEXXONMOBIL CHEMICAL社製)等を挙げることができる。
【0059】
また、(a)成分のランダム共重合体の金属イオン中和物として、例えば、ハイミラン1554、同1557、同1601、同1605、同1706、同1707、同AM7311(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン7930(米国デュポン社製)、アイオテック3110、同4200(EXXONMOBIL CHEMICAL社製)等を、(b)成分のランダム共重合体の金属イオン中和物として、例えば、ハイミラン1855、同1856、同AM7316(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン6320、同8320、同9320、同8120(いずれも米国デュポン社製)、アイオテック7510、同7520(いずれもEXXONMOBIL CHEMICAL社製)等をそれぞれ挙げることができる。
【0060】
上記ベース樹脂の調製に際しては、(a)成分と(b)成分との配合を質量比で通常100:0〜0:100とすることができ、好ましくは75:25〜0:100、より好ましくは50:50〜0:100、更に好ましくは25:75〜0:100、最も好ましくは0:100とすることができる。(a)成分の配合量が少なすぎると、材料の成形物の反発性が低下することがある。
【0061】
また、上記ベース樹脂は、上記の配合比の調整に加えて更にランダム共重合体とランダム共重合体の金属イオン中和物との配合比を調整することにより、成形性をより良好にすることができる。この場合、ランダム共重合体:ランダム共重合体の金属イオン中和物は、質量比で通常100:0〜40:60とすることができ、好ましくは100:0〜60:40、より好ましくは100:0〜80:20、更に好ましくは100:0とすることが推奨される。ランダム共重合体の配合量が多すぎると、ペレット組成の均一性が低下する場合がある。
【0062】
上記ベース樹脂には、打撃時のフィーリング、反発性をより一層向上させるために、(e)非アイオノマー熱可塑性エラストマーを配合することができる。この(e)成分の具体例としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。本発明では、反発性をより高めることができる点から、ポリエステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、特に、結晶性ポリエチレンブロックをハードセグメントとして含む熱可塑性ブロック共重合体からなるオレフィン系エラストマーを好適に使用することができる。
【0063】
上記(e)成分は、市販品を使用してもよく、具体的には、ダイナロン(JSR社製)、ポリエステル系エラストマーとして、ハイトレル(東レ・デュポン社製)等を挙げることができる。
【0064】
上記(e)成分の配合量は0超とすることができる。また、配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは上記ベース樹脂100質量部に対して50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、最も好ましくは20質量部以下とすることができる。(e)成分の配合量が多すぎると、混合物の相溶性が低下し、ゴルフボールの耐久性が著しく低下する可能性がある。
【0065】
次に、上記ベース樹脂に(c)成分として、分子量228以上1500以下の脂肪酸又はその誘導体を配合することができる。この(c)成分は、上記ベース樹脂と比較して分子量が極めて小さいものであり、混合物の溶融粘度を適度に調整し、特に流動性の向上に寄与する成分である。また、上記(c)成分は、比較的高含量の酸基(誘導体)を含み、反発性の過度の損失を抑制できる。
【0066】
上記(c)成分の脂肪酸又はその誘導体の分子量は、228以上、好ましくは256以上、より好ましくは280以上、更に好ましくは300以上とすることがでる。また、その上限は1500以下、好ましくは1000以下、より好ましくは600以下、更に好ましくは500以下とすることができる。分子量が小さすぎる場合は耐熱性が改良できず、大きすぎる場合は流動性が改善できない。
【0067】
上記(c)成分の脂肪酸又はその脂肪酸誘導体としては、例えば、アルキル基中に二重結合又は三重結合を含む不飽和脂肪酸(誘導体)やアルキル基中の結合が単結合のみで構成される飽和脂肪酸(誘導体)を同様に好適に使用できるが、いずれの場合も1分子中の炭素数が、好ましくは18以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは22以上、特に好ましくは24以上であることが推奨される。また、その上限は、好ましくは80以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは40以下、特に好ましくは30以下であることが推奨される。炭素数が少なすぎると、耐熱性の改善が達成できない上、酸基の含有量が多すぎて、ベース樹脂に含まれる酸基との相互作用により流動性の改善の効果が少なくなってしまう場合がある。一方、炭素数が多すぎる場合には、分子量が大きくなるために、流動性改質の効果が顕著に表れない場合がある。
【0068】
ここで、(c)成分の脂肪酸として、具体的には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸などが挙げられ、特にステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸を好適に使用することができる。
【0069】
また、上記(c)成分の脂肪酸誘導体としては、上述した脂肪酸の酸基に含まれるプロトンを金属イオンにより置換した金属せっけんを例示することができる。この場合、金属イオンとしては、例えば、Na
+、Li
+、Ca
++、Mg
++、Zn
++、Mn
++、Al
+++、Ni
++、Fe
++、Fe
+++、Cu
++、Sn
++、Pb
++、Co
++等を挙げることができ、特にCa
++、Mg
++、Zn
++が好ましい。
【0070】
(c)成分の脂肪酸誘導体として、具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸亜鉛、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸亜鉛、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸亜鉛等を挙げることができ、特にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸亜鉛、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸亜鉛、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸亜鉛等を好適に使用することができる。
【0071】
なお、上述した(a)成分及び/又は(b)成分、及び(c)成分の使用に際し、公知の金属せっけん変性アイオノマー(米国特許第5312857号明細書、米国特許第5306760号明細書、国際公開第98/46671号パンフレット等)を使用することもできる。
【0072】
上記(c)成分の配合量は、上記(a)成分、(b)成分及び(e)成分を適宜配合した樹脂成分100質量部に対して、5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、120質量部以下とすることができ、好ましくは115質量部以下、より好ましくは110質量部以下、更に好ましくは100質量部以下とすることができる。(c)成分の配合量が少なすぎると、溶融粘度が低くなり加工性が低下することがあり、多すぎると耐久性が低下することがある。
【0073】
(d)成分として、上記ベース樹脂及び(c)成分中の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物を加えることができる。この(d)成分を配合しないで、金属せっけん変性アイオノマー樹脂(例えば、上記特許公報に記載された金属せっけん変性アイオノマー樹脂のみ)を単独で使用した場合には、加熱混合時に金属せっけんとアイオノマー樹脂に含まれる未中和の酸基が交換反応を起こして多量の脂肪酸が発生する。この脂肪酸は熱的安定性が低く成形時に容易に気化するため、成形不良の原因となるおそれがある。更には、上記脂肪酸が成形物の表面に付着して、塗膜密着性を著しく低下させたり、得られる成形体の反発性低下等の不具合を生じさせる場合がある。
【0075】
このような問題を解決すべく、(d)成分として、上記ベース樹脂及び(c)成分中に含まれる酸基を中和する塩基性無機金属化合物を必須成分として配合する。(d)成分の配合で、上記ベース樹脂と(c)成分中の酸基が中和され、これら各成分配合による相乗効果により、樹脂組成物の熱安定性が高まると同時に、良好な成形性が付与され、ゴルフボール用材料としての反発性が向上するという優れた特性が付与されるというものである。
【0076】
ここで、塩基性無機金属化合物に使われる金属イオンとしては、例えば、Li
+、Na
+、K
+、Ca
++、Mg
++、Zn
++、Al
+++、Ni
++、Fe
++、Fe
+++、Cu
++、Mn
++、Sn
++、Pb
++、Co
++等が挙げられ、塩基性無機金属化合物としては、これら金属イオンを含む公知の塩基性無機充填剤を使用することができ、具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等を挙げることができるが、特に水酸化物、又は一酸化物であることが推奨され、より好ましくはベース樹脂との反応性の高い水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、更に好ましくは酸化マグネシウムであることが推奨される。
【0077】
上記(d)成分の配合量は、上記樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部以上とすることができ、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.2質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、17質量部以下とすることができ、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下とすることができる。(d)成分の配合量が少なすぎると、熱安定性、反発性の向上が見られず、多すぎると過剰の塩基性無機金属化合物によりゴルフボール用材料の耐熱性がかえって低下することがある。
【0078】
上述したように(a)成分及び(b)成分を所定量配合したベース樹脂と、任意成分の(e)成分を配合した樹脂成分に対し、所定量の(c)成分と(d)成分とをそれぞれ配合することにより、熱安定性、流動性、成形性に優れる材料とすることができ、更に成形物の反発性を飛躍的に向上させることができる。
【0079】
上述した樹脂成分、(c)成分及び(d)成分を所定量配合した材料は、中和度が高い(高中和化されている)ことが推奨され、具体的には、材料中の酸基の50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上が中和されていることが推奨される。材料中の酸基を高中和化することにより、上述した従来技術のベース樹脂と脂肪酸(誘導体)のみを使用した場合に問題となる交換反応をより確実に抑制し、脂肪酸の発生を防ぐことができる上、熱的安定性が著しく向上し、成形性が良好で、従来のアイオノマー樹脂と比較して反発性に非常に優れた成形物を得ることができる。
【0080】
ここで、中和度とは、ベース樹脂と(c)成分の脂肪酸(誘導体)の混合物中に含まれる酸基の中和度であり、ベース樹脂中のランダム共重合体の金属イオン中和物としてアイオノマー樹脂を使用した場合におけるアイオノマー樹脂自体の中和度とは異なる。中和度が同じ本発明の混合物と同中和度のアイオノマー樹脂のみとを比較した場合、本発明の材料は、(d)成分が配合されていることにより非常に多くの金属イオンを含むため、反発性の向上に寄与するイオン架橋が高密度化し、成形物に優れた反発性を付与できる。
【0081】
上記樹脂材料は、射出成形に特に適した流動性を確保し、成形性を改良するため、メルトフローレート(MFR)を所定の範囲に調整することが好ましい。この場合、JIS−K7210に準拠して試験温度190℃、試験荷重21.18N(2.16kgf)の条件で測定したときのメルトフローレートが、好ましくは0.6g/10min以上、より好ましくは0.7g/10min以上、更に好ましくは0.8g/10min以上、最も好ましくは2g/10min以上に調整されることが推奨される。また、その上限は、好ましくは20g/10min以下、より好ましくは10g/10min以下、更に好ましくは5g/10min以下、最も好ましくは3g/10min以下に調整されることが推奨される。メルトフローレートが、大きすぎても小さすぎても加工性が著しく低下する場合がある。
【0082】
包囲層を形成する材料としては、市販品を使用することもでき、具体的には、Dupont社製の商品名「HPF 1000」、「HPF 2000」、「HPF AD1027」、「HPF AD1035」、「HPF AD1040」、実験用 HPF SEP1264−3などを例示することができる。
【0083】
次に、中間層について説明する。
本発明ゴルフボールでは、上述したように、中間層が内側中間層及び外側中間層の2層に形成される。
【0084】
内側中間層の材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で好ましくは40以上、より好ましくは43以上、更に好ましくは46以上である。また、その上限についても特に制限されるものではないが、好ましくは60以下、より好ましくは58以下、更に好ましくは55以下である。内側中間層が軟らかすぎると、W#1による打撃時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。逆に、内側中間層が硬すぎると、打感が硬くなりすぎたり、W#1による打撃時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。内側中間層と、隣接する外側中間層との硬度差については、ショアD硬度で、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3以上、上限として、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下である。上記範囲を逸脱すると、フルショットした時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。また、繰り返し打撃における割れ耐久性が悪くなることがある。
【0085】
内側中間層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上である。また、その上限については、特に制限されるものではないが、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。内側中間層の厚さが上記の範囲を外れると、ドライバー(W#1)打撃による低スピン効果が足りずに飛距離が伸びなくなることがある。
【0086】
一方、外側中間層の材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で好ましくは44以上、より好ましくは47以上、更に好ましくは50以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは65以下、より好ましくは61以下、更に好ましくは58以下とすることができる。上記範囲よりも軟らかすぎると、W#1による打撃時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。上記範囲よりも硬すぎると、打感が硬くなりすぎたり、W#1による打撃時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。外側中間層と、隣接する外層との硬度差は、ショアD硬度で、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上であり、上限として、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下である。上記硬度差が上記範囲を逸脱すると、フルショットした時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがあったり、繰り返し打撃における割れ耐久性が悪くなることがある。
【0087】
外側中間層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1.0mm以下とすることができる。外側中間層の厚さが上記範囲を外れると、W#1にて打撃した時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。
【0088】
上記外側及び内側の中間層に用いられる樹脂材料は、特に限定されないが、上記に説明した包囲層の材料を採用することが好適である。
【0089】
なお、上記中間層用材料には、顔料や、比重調整剤としての充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の通常使用される添加剤を適宜添加、配合することもできる。
【0090】
次に、外層について説明する。なお、本発明に言う外層とは、ボール構造体中の最も外側に位置する被覆層を意味し、本発明に言う上述した中間層、包囲層は除かれる。
【0091】
外層の材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で、好ましくは55以上、より好ましくは60以上、更に好ましくは63以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは75以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは68以下とすることができる。外層の材料硬度が上記の範囲よりも小さいと、フルショット時にスピンが掛かりすぎて飛距離が出なくなることがある。また、外層の材料硬度が上記の範囲よりも大きいと、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなったり、パターやショートアプローチ実施時の打感が硬くなりすぎることがある。
【0092】
外層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.9mm以上、更に好ましくは1.0mm以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.4mm以下とすることができる。また、外層の厚さが上記の範囲よりも厚すぎると、ドライバー(W#1)による打撃時にボールの反発性が足りなくなったり、スピン量が多くなり、その結果として飛距離が伸びなくなる場合がある。逆に、外層の厚さが上記の範囲よりも薄すぎると、耐擦過傷性が悪くなったり、プロや上級者でもコントロール性が不足する場合がある。
【0093】
また、外層は、隣接する外側中間層と同等の厚さに形成しても良いが、隣接する外側中間層よりも1.0mm以内の範囲で厚く形成することが好適である。外層が外側中間層より薄すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなり、また、W#1打撃時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。逆に、外層が外側中間層より厚すぎると、打感が硬くなりすぎたり、W#1打撃時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。
【0094】
本発明の外層に用いられる材料としては、特に限定されないが、高剛性かつ高反発材料という観点からアイオノマー樹脂が最も好適に用いられる。このようなアイオノマー樹脂としては、特にα−オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の共重合体中のカルボン酸の一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂、α−オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボン酸の少なくとも一部を金属イオンで中和したものまたはその混合物が用いられる。上記アイオノマー樹脂中のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレンが好ましく、α,β−不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸等が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが好ましい。更に、中和する金属イオンとしては、アルカリ金属イオン、例えばNaイオン、Kイオン、Liイオン等;2価金属イオン、例えばZnイオン、Caイオン、Mgイオン等;3価金属イオン、例えばAlイオン、Ndイオン等;およびそれらの混合物が挙げられるが、Naイオン、Znイオン、Liイオン等が反発性、耐久性等からよく用いられる。外層のアイオノマーは、好ましくは高酸(即ち、酸含量16質量%以上)のアイオノマー樹脂または高酸アイオノマー混合物よりなる。さらに好ましくは異なった金属イオンにより種々な程度にまで中和された2つまたはそれ以上の高酸(即ち、酸含量は16質量%以上)のアイオノマー樹脂の混合物よりなる。
【0095】
また、上記の外層用アイオノマーの調製にあたっては、顔料や、比重調整剤としての充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの通常使用される添加剤などを適宜添加、配合することもできる。
【0096】
内層総厚(外側中間層厚さ+内側中間層厚さ+外側包囲層厚さ+内側包囲層厚さ)
コアを被覆する被覆層のうち、外層を除いた被覆層(以下、単に「内層」という。)の総厚については、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上であり、上限として、好ましくは10.0mm以下、好ましくは5.0mm以下、さらに好ましくは4.0mm以下である。内層の総厚が上記範囲を外れると、W#1にて打撃した時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。
【0097】
外層硬度、中間層硬度、包囲層硬度、コア平均硬度及びコア中心硬度の取り合い
本発明では、コアにおける平均硬度を下記式で表したとき、
コア平均硬度(ショアD)=[コア表面硬度(ショアD)+コア中心硬度(ショアD)]/2
外層硬度(ショアD)が上記コア平均硬度よりも高く、且つ包囲層及び中間層の各層が外層よりも軟らかいこと条件とする。
【0098】
外層硬度とコア平均硬度との差は、ショアD硬度で、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、上限として、好ましくは40以下、より好ましくは35以下、更に好ましくは30以下である。上記範囲を逸脱すると、W#1による打撃時の低スピン化が不十分となり、良好な飛距離が得られなくなることがあり、或いは、W#1による打撃時の打感が硬くなりすぎることがある。
【0099】
また、特に制限されるものではないが、本発明では、包囲層、中間層及び外層のショアD硬度の関係が、下記式
外層硬度>外側中間層硬度>内側中間層硬度>外側包囲層硬度>内側包囲層硬度
を満たすことが好適である。より好ましくは下記式、
外層硬度>外側中間層硬度>内側中間層硬度>外側包囲層硬度>内側包囲層硬度>コア中心硬度
を満たすことであり、最も好ましいのは、
外層硬度>外側中間層硬度>内側中間層硬度>外側包囲層硬度>内側包囲層硬度≧コア平均硬度>コア中心硬度
を満たすことである。上記の硬度関係を逸脱すると、W#1打撃時にスピンが多すぎて飛距離が出なくなることがある。
【0100】
外層厚さ、中間層厚さ、包囲層厚さ及びコア直径との関係
また、特に制限されるものではないが、外側中間層、内側中間層、外側包囲層、内側包囲層の各々の層が外層と同等またはそれ以下の厚さであることが好適である。
【0101】
さらに、(外側中間層厚さ+内側中間層厚さ)/外層厚さの値が、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上であり、上限として、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.1以下である。上記の厚さ関係を逸脱すると、W#1打撃時にスピンが多すぎて飛距離が出なくなることがある。
【0102】
また、(外側包囲層厚さ+内側包囲層厚さ)/外層厚さの値が、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上であり、上限として、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.1以下である。上記の厚さ関係を逸脱すると、W#1打撃時にスピンが多すぎて飛距離が出なくなることがある。
【0103】
さらに、(外側中間層厚さ+内側中間層厚さ)/(外側包囲層厚さ+内側包囲層厚さ)の値が、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上であり、上限として、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.1以下である。上記の厚さ関係を逸脱すると、W#1打撃時にスピンが多すぎて飛距離が出なくなることがある。
【0104】
また、下記式、
外層厚さ≦(外側中間層厚さ+内側中間層厚さ+外側包囲層厚さ+内側包囲層厚さ)<コア直径
を満たすことが好適である。上記の厚さ関係を逸脱すると、W#1打撃時にスピンが多すぎて飛距離が出なくなることがある。
【0105】
上述したコア、包囲層、中間層及び外層を有するマルチピースソリッドゴルフボールは、射出成形法等の公知の方法により製造することができる。より具体的には、ゴム材を主材としたコアをプレス成形又は射出成形により作製し、該コアの周囲に所定の射出成形用金型を用いて包囲層及び中間層を順次形成した後、上記で得られた中間層被覆球体の周囲に外層材料を射出成形することにより6層以上の構造を有するマルチピースソリッドゴルフボールを得ることができる。また、上記外層を形成する方法として、上述した外層材料を用いて予め一対のハーフカップを成形し、このハーフカップで上記中間層被覆球体を包んで、例えば120〜170℃、1〜5分間の条件で加圧成形する方法を用いてもよい。
【0106】
本発明のゴルフボールにおいては、更に空力特性を改善して飛距離を向上させるために、通常のゴルフボールと同様にボール表面に多数のディンプルを形成することが好ましい。上記ディンプルの種類及び総数等を適正化することにより、上述したボール構造との相乗効果で弾道がより安定し、飛距離性能に優れたゴルフボールを得ることができる。なお、ゴルフボールのデザイン性や耐久性を向上させるために、ボール表面に下地処理、スタンプ、塗装等の種々の処理を行うことも任意である。
【0107】
まず、ディンプルの総数については、特に制限はないが、280個以上とすることが好ましく、より好ましくは300個以上、更に好ましくは320個以上である。また、その上限は360個以下とすることが好ましく、より好ましくは350個以下、更に好ましくは340個以下とすることができる。ディンプルの個数が上記範囲より多くなると、ボールの弾道が低くなり、飛距離が低下することがある。逆に、ディンプル個数が少なくなると、ボールの弾道が高くなり、飛距離が伸びなくなる場合がある。
【0108】
ディンプルの形状については、円形に限られず、各種多角形、涙形、楕円形等から1種類又は2種類以上を適宜選択することができる。例えば、円形ディンプルを使用する場合には、直径は2.5mm以上6.5mm以下程度、深さは0.08mm以上0.30mm以下とすることができる。
【0109】
ディンプルがゴルフボールの球面に占めるディンプル占有率、具体的には、ディンプルの縁に囲まれた平面の面縁で定義されるディンプル面積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率(SR値)については、空気力学特性を十分に発揮し得る点から60%以上90%以下であることが望ましい。また、各々のディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値V
0は、ボールの弾道の適正化を図る点から0.35以上0.80以下とすることが好適である。更に、ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計がディンプルが存在しないと仮定したボール球容積に占めるVR値は、0.6%以上1.0%以下とすることが好ましい。上述した各数値の範囲を逸脱すると、良好な飛距離が得られない弾道となり、十分満足した飛距離を出せない場合がある。
【0110】
本発明のゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、ボール外径としては42.672mm内径のリングを通過しない大きさで42.80mm以下、重さとしては通常45.0〜45.93gとすることが好適である。
【実施例】
【0111】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0112】
[実施例1〜3、比較例1〜5]
コアの形成
表1に示す配合のゴム組成物を調製した後、156℃、15分の条件で加硫成形することによりコアを作製した。
【0113】
【表1】
【0114】
表1中に記載した材料の詳細は下記の通りである。
ポリブタジエンA
商品名「BR730」、JSR社製
ポリブタジエンB
商品名「BR51」、JSR社製
ポリイソプレンゴム
商品名「IR2200」、JSR社製
過酸化物
1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカとの混合物、商品名「パーヘキサC−40」、日油社製
老化防止剤
2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、商品名「ノクラックNS−6」、大内新興化学工業社製
【0115】
包囲層、中間層及び外層の形成
次に、上記で得たコアの周囲に、表2に示す配合の内側包囲層、外側包囲層、内側中間層、外側中間層及び外層を射出成形法により順次成形して、コアの周囲に5層の被覆層を形成した6層構造のマルチピースソリッドゴルフボールを作製した。この際、外層表面には
図2に示したディンプルを形成した。このディンプルの詳細については表3に示した。
【0116】
【表2】
【0117】
表2中に記載した材料の詳細は下記の通りである。
ハイミラン
三井・デュポンポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
AM7317、AM7318
三井・デュポンポリケミカル社製の高酸含量アイオノマー
AM7329、AM7331
三井・デュポンポリケミカル社製のアイオノマー
AN4319、AN4318、AN4221C
商品名「ニュクレル」、三井・デュポンポリケミカル社製
HPF1000、HPF2000
デュポン社製の“HPFポリマー”
ダイナロン6100P
JSR社製 水添ポリマー
ポリエチレンワックス
低分子量のポリエチレンワックス、商品名「サンワックス161P」三洋化成社製
酸化マグネシウム
商品名「キョーワマグ MF150」協和化学工業社製の酸化マグネシウム
【0118】
【表3】
【0119】
ディンプルの定義
直径: ディンプルの縁に囲まれた平面の直径
深さ: ディンプルの縁に囲まれた平面からのディンプルの最大深さ
V
0 : ディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値
SR: ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率(単位:%)
VR: ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球容積に占める比率(単位:%)
【0120】
得られた各ゴルフボールにつき、各層の厚さ、硬度、たわみ量等の諸物性と、飛び性能及び打感を下記の方法で評価した。結果を表4及び表5に示す。なお、全て23℃の環境下で測定した。
【0121】
(1)コアのたわみ量(mm)
コアを硬板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1,275N(130kgf)に負荷したときまでの変形量を計測した。
(2)コアの表面硬度
コアの表面は球面であるが、その球面に硬度計の針をほぼ垂直になるようにセットし、JIS−C硬度(JIS−K6301規格)に準拠してコアの表面の2点をランダムに測定した値の平均値。また、コア表面の「ショアD硬度」を計測した。これについては、ASTM−2240規格のデュロメータ「タイプD」により上記と同様の方法で測定した。
(3)コアの中心硬度
コアを半分にカットして平面を作り、その中心に硬度計の針をほぼ垂直になるようにセットし、JIS−C硬度(JIS−K6301規格)に準拠して測定した。また、コア中心の「ショアD硬度」を計測した。これについては、ASTM−2240規格のデュロメータ「タイプD」により上記と同様の方法で測定した。
(4)コア平均硬度
コア平均硬度=[コア表面硬度+コア中心硬度]/2
(5)包囲層、中間層及び外層の材料硬度(シート状成形物の硬度)
各層を形成する材料を厚さ2mmのシート状に成形し、23℃で2週間保存後、ASTM−2240規格のデュロメータ「タイプD」、即ち「ショアD硬度」により測定した。
(6)ドライバーによる飛び性能
ゴルフ打撃ロボットにドライバー(W#1)、ブリヂストンスポーツ社製、「TourStage GR(2010モデル)」(ロフト角:10.5°)を装着し、ヘッドスピード(HS)40m/sで打撃した時の飛距離を測定すると共に、下記の基準で評価した。また、スピン量は同様に打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定した。
○:トータル飛距離 204m以上
×:トータル飛距離 204m未満
(7)フィーリング
ヘッドスピード(HS)35〜45m/sの飛距離を重視するアマチュアゴルファーがドライバー(W#1)により打撃して下記の基準で官能評価した。
○:ソフトで良好な打感
×:硬い打感
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【0124】
表5から各比較例は本発明(実施例)よりも下記の点で劣る結果となった。
比較例1は、外層が外側中間層より軟らかく、ボールのスピンが増えるとともに反発も下がり、その結果、飛距離が出ない。
比較例2は、外層のショアD硬度がコア平均のショアD硬度及び中間層両側より軟らかいので、ボールのスピンが増えるとともに反発も下がり、その結果、飛距離が出ない。
比較例3は、外層のショアD硬度がコア平均のショアD硬度と同じであるため、ボールのスピンが増えるとともに反発も下がり、その結果、飛距離が出ない。
比較例4は、被覆層が4層の5ピースソリッドゴルフボールであり、ドライバー(W#1)打撃時のボールの低スピン効果が足りず、その結果、飛距離が劣る。
比較例5は、被覆層が3層の4ピースソリッドゴルフボールであり、ドライバー(W#1)打撃時のボールの低スピン効果が足りず、その結果、飛距離が劣る。