特許第5990908号(P5990908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990908
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】横流沈殿池
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/02 20060101AFI20160901BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20160901BHJP
   B01D 21/08 20060101ALI20160901BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   B01D21/02 J
   B01D21/24 G
   B01D21/08 A
   E03F1/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-286014(P2011-286014)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-132621(P2013-132621A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−048406(JP,U)
【文献】 特開昭50−033554(JP,A)
【文献】 特開昭54−036055(JP,A)
【文献】 特開昭52−090863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/02
B01D 21/08
E03F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜板および/または傾斜管を設置した横流沈澱池において、該傾斜板または傾斜管の上手側に、両端を波型にしたシート状膜を互に隣接するシート状膜間に、それぞれ間隔を設けて隣接してなるシー を、水流に対して対向するように展張してなる横流沈澱池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚濁物質を含有する原水を処理するための横流沈殿池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚濁物質を含有する原水を清澄化する装置としては、横流式普通沈殿池、横流式薬品沈殿池、放射流式普通沈殿池、放射流式薬品沈殿池が用いられていた。
これらの沈殿池は、原水中の汚濁物質を除去するために沈殿池内に傾斜板あるいは傾斜管(以下傾斜板等という)を設置するのが一般的であった。
しかしながら傾斜板等は原水中の汚濁物質の濃度が高いと傾斜板等の間隙等に汚濁物質が付着したり、偏流が生じ、傾斜板等を流下しない現象が生じていた。
【0003】
これらの問題を解決する手段として、従来横流沈殿池にあっては、傾斜板等の上手側に整流設備を設けたり、前段池を設置したりしていた(非特許文献1)。
【0004】
非特許文献1によれば、沈殿池の整流設備は、池内の偏流を少なくして除去率を高めるものであり実際の沈殿地では、池内の水流は水流自体の乱れや外部からの影響で、理想的な状態とはほど遠い乱れた水流状態を呈する。水理学的にいえば、水流自体の乱れはレイノルズ数、水流の安定性はフルード数によって決まるとされ、レイノルズ数を小さく、フルード数を大きくなる水流状況に改善することで除去率を高めると云われている。流速を小さくするとレイノルズ数は小さくなるが、水流の安定性が悪くなり、流速を大きくするとフルード数は大きくなるが、表面負荷率が大きくなり、除去率が低下し、池底に一度沈殿したスラッジが再び巻き上げる現象が起こると云う矛盾したものである。
そこで横流沈殿池の改善方法としての整流設備には、沈殿池の流入部・中間部・流出部に整流壁・阻流板・導流壁・仕切板等を設けて池内流速の平均化を図るとされている。
実際の沈殿池の流れの主体は水面近くに流れが集中するので、部分的に整流壁で流れを早くしても水深下の通水断面を広げようとする事が有効である。
整流壁は、径が10cm前後の孔を設け、孔の断面積は流水の通過断面積の6%程度が良いとされている。整流壁を設置して、全断面に均等に流入させて池内全体の流速を遅く滞留時間を多く取れるようにするものであるが、整流壁によって、通過断面積を絞ることで、出口近傍では流速が速くなり、池内水深下にも水流が拡散され池効率は上がるが、孔からの流速は300m/hr程度の高流速で、その近傍での懸濁粒子は拡散するため、懸濁粒子の沈降には阻害要因となる。
しかし沈殿池に流入した流れの主体は水面近くに流れが集中するので、流入部の整流壁の孔で部分的に流れが早くとも水深下の通水断面を広げようとする事が有効であることを認知しているからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】水道施設設計指針(2000年版)(社団法人日本水道協会発行、平成13年3月15日三版第194頁〜第203頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら整流壁を設けた場合、整流孔が閉塞して機能を失ったり、また沈殿池に沈降したスラッジを除去する場合、整流壁が障害となりスラッジの除去作業が困難であった。
そこで本発明者は、簡単な装置で沈殿池内を流れる水流を整流化すると共に、傾斜板等の間隔が閉塞しない装置について種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、傾斜板または傾斜管を設置した横流沈殿池において、該傾斜板または傾斜管の上手側に、シート膜を、隣接するシート膜間に間隔を設けて設置することを特徴とする横流沈殿池である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の横流沈殿池によれば、シート膜を設けることによって、沈殿池に流入する水流を整流化して短絡流の発生を防止すると共に、汚濁物質の沈降も同時に行うことができるので、下手側に設けられた傾斜板あるいは傾斜管の閉塞も防止することができる。またシート膜を設けた場合は沈殿池の底部に沈積したスラッジを回収除去する場合にも、底部に障害物がないので容易に作業をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】横流沈殿池の側断面図
図2】横流沈殿池の平面図
図3】連接されたシート膜の正面図
図4】シート膜の側面図
図5】連接されたシート膜の正面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明について横流沈殿池を例に説明するが、本発明は、以下の説明のみに限定されるものではない。
図1は横流沈殿池の側断面を表す概略図であり、図2は横流沈殿池の平面を表す概略図である。
1は原水流入部、2は急速撹拌槽、3は緩速撹拌槽、4はシート膜を展張した整流沈殿槽、5は傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽、6は集水トラフ、7は凝集剤供給管、8は汚濁物質を含有する原水供給管、9はシート膜、10はシート状膜、11はフロート、12は隣接するシート膜10との間に間隔、13は沈殿池の底部に沈積したスラッジ、14はスラッジ集水管を示す。
【0011】
河川等から取水した汚濁物資を含有する原水を横流沈殿池の原水流入部に導入し、同時に凝集剤供給管7より凝集剤溶液を導入する。この凝集剤溶液は、凝集溶液の外、凝集剤と本発明の沈殿槽のスラッジ集水管14から集水したスラッジ水で調整した溶液も使用することができる。
【0012】
原水導入部1で汚濁物質を含有する原水(以下原水という)と供給された凝集剤溶液とが混合され、急速撹拌槽2に導入され、ここで急速撹拌が行われ、さらに均一に混合される。急速撹拌槽2で混合された原水は、次に緩速撹拌槽3に導入され、緩速撹拌が行われ原水中の汚濁物質がフロック化される。緩速撹拌槽3で処理された原水は、次のシート膜9を水流に対して対向して展張した整流沈殿槽4に導入される。図3は連接されたシート膜の正面図であり、図4はシート膜の側面図である。この整流沈殿槽4に展張されるシート膜9は、図3に示すようにシート状膜10の上部にフロート11を設け、このフロート11を連接することによって構成することができる。この際隣接するシート膜10との間に間隔12を設けることが必要である。この間隔幅は、水流の速度にもよるが、一般的には5〜20cmの間隔を設けることが好ましい。またシート膜4の前後の間隔は、1.2〜6mの間隔で設けることが好ましい。
またこのシート状膜10にはさらに整流効果を高めるために整流孔を設けることもできる。そしてこの整流孔の総面積は、シート膜10の面積の6%程度が好適である。また整流孔の径は10cm程度が好適である。
さらにシート状膜10に整流効果を高める他の方法として、図5に示す様にシート状膜10の両端15を凹凸・非線形の波型にすることもできる。この波型の総面積は、シート膜10の面積の6%程度が好適である。
前記シート膜9は通常複数条展張することが好ましい。
【0013】
整流沈殿槽4を通過する原水はシート状膜10間の間隔12を通過することによって、またシート状膜10の整流孔(図示せず)を通過する時に整流化されると共にフロック化された汚濁物質を沈降させる。
整流沈殿槽4を通過した原水は、次に傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽5に導入され、ここでフロック化した汚濁物質を分離し、スラッジとして沈殿池の底部に沈降堆積させる。ここで処理された原水は集水トラフ6を通って横流沈殿池外に排出される。
【0014】
沈殿池は、懸濁粒子を効果的に沈殿除去させるために、設計の要素として懸濁粒子を単一粒子沈降と捉え、表面負荷率を基に考えられているが、実際は、懸濁粒子は単一粒子沈降と干渉沈降であり、表面負荷率および滞留時間と池内の平均流速(又は通水断面流速負荷)を基に考えることで初めて懸濁粒子を効果的に沈殿除去されるのである。
懸濁粒子を単一粒子沈降と捉え、表面負荷率を改善するものが傾斜板あるいは傾斜管として知られているが、本発明のシート状膜を展張した整流沈殿槽では干渉沈降に効果があり、表面負荷率はもとより滞留時間と池内の平均流速を改善することが出来る。
【0015】
本発明のシート状膜を展張した整流沈殿槽では、シート膜10が抵抗体、間隔12が通水部と成る。沈殿槽に抵抗体と通水部が多数設けられると、流れは抵抗体を事前に避けて通水部に向かって移流傾斜して、縮流・カルマン流(図示せず)などを生成しながら、抵抗体前後に水流に影響され難い沈降ポケット(図示せず)が形成され、複合作用が通水断面中に生起する。
この複合作用は、沈殿池の通水断面にシート膜10と間隔12を適時に設けて通水形状を左右・上下に蛇行させることでもたらされ、滞留時間を得る効果と、池内の平均流速及び表面負荷率を改善し、抵抗体前後のポケットが沈降を促進させることによって、前述レイノズル数とフルード数の矛盾を解決する沈殿池となる。
【0016】
本発明に使用する前記傾斜板あるいは傾斜管としては、従来公知のものがいずれも好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0017】
2・・・・急速撹拌槽
3・・・・緩速撹拌槽
4・・・・シート膜を展張した整流沈殿槽
5・・・・傾斜板(管)を設置した沈殿槽
7・・・・凝集剤供給管
8・・・・汚濁物質を含有する原水供給管
13・・・スラッジ
14・・・スラッジ集水管
図1
図2
図3
図4
図5