特許第5990967号(P5990967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990967
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20160901BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20160901BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20160901BHJP
   B29B 7/46 20060101ALI20160901BHJP
   C08G 81/02 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   C08L29/04 S
   C08L77/00
   C08L23/26
   B29B7/46
   C08G81/02
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-67448(P2012-67448)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199537(P2013-199537A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年12月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】友井 修作
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−041448(JP,A)
【文献】 特開平10−045920(JP,A)
【文献】 特開平11−279286(JP,A)
【文献】 特開2007−224288(JP,A)
【文献】 特開昭63−146928(JP,A)
【文献】 特開2012−072306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00−77/12
C08K 5/04− 5/47
C08L 23/08
C08L 23/26−23/36
C08L 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物を連続相として含み、かつ、前記連続相中に分散された変性エラストマーを分散相として含む熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
(1)ポリアミド樹脂とエポキシ基含有ポリマーとを反応させて末端封鎖ポリアミド樹脂を生成させる工程、
(2)工程(1)で得られた生成物にエチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーを加える工程、
(3)前記エチレン−ビニルアルコール共重合体を工程(1)で得られた生成物中に分散させる工程、
(4)工程(3)で得られた分散体に前記変性エラストマーを架橋させるための架橋剤を加える工程、及び
(5)前記架橋剤により前記変性エラストマーを架橋させる工程、
を順に含み、
前記工程(1)〜(5)が、
工程(1)を実施するための第1の混練部、
工程(3)を実施するための第2の混練部、及び
工程(5)を実施するための第3の混練部、
を含む少なくとも3つの混練部と、
第1の混練部より押出方向上流側に位置する、前記ポリアミド及びエポキシ基含有ポリマーのための第1の供給口、
第1の混練部と第2の混練部の間に位置する、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーのための第2の供給口、及び
第2の混練部と第3の混練部の間に位置する、架橋剤のための第3の供給口、
を含む少なくとも3つの供給口と、
を有する2軸混練押出機を使用して実施され、
前記熱可塑性樹脂組成物がエチレン−ビニルアルコール共重合体と末端封鎖ポリアミド樹脂とを含む熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項2】
前記エポキシ基含有ポリマーが、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−グラフト−ポリスチレン、エチレン−メタクリル酸グリシジル−グラフト−アクリロニトリル−スチレン共重合体、エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エポキシ化天然ゴム及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エポキシ基含有ポリマーの量が、前記ポリアミド100質量部当たり0.5〜40質量部である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
エチレン−ビニルアルコール共重合体が、1〜55モル%のエチレン含有量及び90%以上のケン化度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂が、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記変性エラストマーが、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、より詳細には、本発明は、優れた加工性及び動的疲労耐久性を有する熱可塑性エラストマー組成物の簡便な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は気体遮断性に優れるが柔軟性に劣り、特に低温で脆いという欠点があることが知られており、一方、ポリアミド樹脂は、気体遮断性に加えて疲労耐久性に優れることが知られている。エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリアミド樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物を連続相として及び変性エラストマーを分散相として含む熱可塑性エラストマーは上記の優れた気体遮断性及び疲労耐久性を有することが期待されるが、かかる熱可塑性エラストマー組成物を製造するためにエチレン−ビニルアルコール共重合体とポリアミド樹脂と変性エラストマーを混練した場合には、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリアミド樹脂との反応によりゲル化が生じるため、所望の生成物が得られないという問題があった。エチレン−ビニルアルコール共重合体と反応しうるポリアミド樹脂の末端アミノ基をエポキシモノマーにより封鎖する方法が知られているが(例えば特許文献1及び2)、一般的に、エポキシモノマーは常温常圧で液体又は気体であることに加えて人間の健康や環境に対する有害性が懸念されることから取り扱い難いという問題や、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーとの混練前に予めポリアミド樹脂とエポキシモノマーを反応させなければならないという問題があった。エチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーとの混練前に予めポリアミド樹脂とエポキシモノマーを反応させる場合に、熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法は、少なくとも、ポリアミド樹脂とエポキシモノマーとを反応させる工程と、得られた反応生成物をエチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーと混練する工程の2段階で行われるため、より簡便に熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法が必要とされていた。さらに、ポリアミド樹脂とエポキシモノマーとの反応を、二軸混練押出機を使用して実施する場合には、エポキシモノマーは常温常圧で液体又は気体であるため、固体であるポリアミド樹脂と混練することは困難であることから、二軸混練押出機の混練部の途中から二軸混練押出機に導入して溶融状態にあるポリアミド樹脂とエポキシモノマーを混練する必要があった。従って、ポリアミド樹脂とエポキシモノマーとを反応させる工程と、得られた反応生成物をエチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーと混練する工程とを実施するためには、スクリューの有効長さLとスクリューの直径Dとの比L/Dが大きい二軸混練押出機を使用する必要があった。比L/Dが大きい二軸混練押出機は高い設備投資を必要とし、また、押出機内の材料の滞留時間が長いため、実用的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−132850号公報
【特許文献2】特開2011−52210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、優れた加工性及び動的疲労耐久性を有する熱可塑性エラストマー組成物の簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、熱可塑性樹脂組成物を連続相として含み、かつ、前記連続相中に分散された変性エラストマーを分散相として含む熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
(1)ポリアミド樹脂とエポキシ基含有ポリマーとを反応させて末端封鎖ポリアミド樹脂を生成させる工程、
(2)工程(1)で得られた生成物にエチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーを加える工程、
(3)前記エチレン−ビニルアルコール共重合体を工程(1)で得られた生成物中に分散させる工程、
(4)工程(3)で得られた分散体に前記変性エラストマーを架橋させるための架橋剤を加える工程、及び
(5)前記架橋剤により前記変性エラストマーを架橋させる工程、
を順に含み、前記熱可塑性樹脂組成物がエチレン−ビニルアルコール共重合体と末端封鎖ポリアミド樹脂とを含む熱可塑性エラストマー組成物の製造方法が提供される。
【0006】
本発明の上記方法により製造される熱可塑性エラストマー組成物は、良好な加工性及び動的疲労耐久性を示すため、かかる特性が要求される各種用途(例えば、空気入りタイヤ、気体もしくは流体輸送用ホース、防舷材、ゴム袋、燃料タンク等)に有用である。そのため、本発明によれば、上記方法により製造される熱可塑性エラストマー組成物を使用して製造される各種製品、例えば本発明の熱可塑性エラストマー組成物から形成された層を有する空気入りタイヤなども提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、エポキシ基含有ポリマーによりポリアミド樹脂を末端封鎖する工程を含むため、混練機、例えば二軸混練押出機を使用して1段階で簡便に実施することができるという利点がある。さらに、エポキシ基含有ポリマーは固体であり、揮発性がほとんど無く、エポキシモノマーと比べて人間の健康や環境に対する有害性が低いため、取り扱いが容易であるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の上記方法における工程(1)は、ポリアミド樹脂とエポキシ基含有ポリマーとを反応させて末端封鎖ポリアミド樹脂を生成させる工程である。ポリアミド樹脂の少なくとも1つの末端アミノ基がエポキシ基含有ポリマーにより封鎖される。この工程は、例えば二軸混練押出機を使用して実施する場合に、二軸混練押出機の押出方向上流側に位置する供給口を通じて導入されたポリアミド樹脂とエポキシ基含有ポリマーとを、ポリアミド樹脂の溶融温度以上、かつ、エポキシ基含有ポリマーの溶融温度以上の温度に設定された混練部で溶融混練することにより行うことができる。第1の混練部における溶融混練条件は、使用されるポリアミド樹脂及びエポキシ基含有ポリマーの種類及び量に応じて当業者が適宜選択することができる。第1の混練部における溶融混練温度は、ポリアミド樹脂の溶融温度以上、かつ、エポキシ基含有ポリマーの溶融温度以上であって、ポリアミド樹脂とエポキシ基含有ポリマーとが反応する温度以上であればよく、典型的には約180℃〜約250℃である。第1の混練部における溶融混練(動的架橋)時間(滞留時間)は、典型的には約5秒間〜約3分間である。工程(1)で、末端封鎖ポリアミド樹脂を含む生成物が生成する。ポリアミド樹脂の末端アミノ基がエポキシ基含有ポリマーにより封鎖されているため、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中に、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマー(ポリアミド樹脂が末端封鎖されていなければポリアミド樹脂と反応しうる変性エラストマーが使用される場合)が高含有量で含まれる場合でも、熱可塑性エラストマー組成物は良好な流動性およびフィルム製膜性を示すことができる。
【0009】
本発明において使用できるポリアミド樹脂の例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体、ナイロンMXD6及びナイロン6Tなどが挙げられる。これらのポリアミド樹脂のうちの1種を使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ナイロン6、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体及びナイロン6/12共重合体が良好な耐疲労性と良好な気体透過防止性をもたらすため好ましい。
【0010】
本発明において使用できるエポキシ基含有ポリマーは、1分子中に1個以上のエポキシ基を有するポリマーである。エポキシ基含有ポリマーの例としては、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体(E−GMA)、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体(E−GMA−VA)、エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸メチル共重合体(E−GMA−MA)、エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸エチル共重合体(E−GMA−EA)、エチレン−メタクリル酸グリシジル−グラフト−ポリスチレン(E−GMA−g−PS)、エチレン−メタクリル酸グリシジル−グラフト−アクリロニトリル−スチレン共重合体(E−GMA−g−AS)、エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(E−SBS)、エポキシ化天然ゴム(E−NR)などが挙げられ、これらのエポキシ基含有ポリマーのうちの1種を使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エポキシ基含有ポリマーの量は、ポリアミド樹脂100質量部当たり0.5〜40質量部、好ましくは1〜35質量部である。ポリアミド樹脂に対するエポキシ基含有ポリマーの量が少なすぎると、ポリアミド樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマー(ポリアミド樹脂が末端封鎖されていなければポリアミド樹脂と反応しうる変性エラストマーが使用される場合)との反応によるゲル化を防止することはできない。ポリアミド樹脂に対するエポキシ基含有ポリマーの量が多すぎると、溶融時の流動性が極端に低下し、混練物のフィルム製膜性が大幅に悪化する。
【0011】
工程(1)の後に、工程(1)で生成した生成物にエチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーを加える工程(2)を実施する。工程(2)は、例えば二軸混練押出機を使用して実施する場合に、第1の混練部から押出方向下流側に位置する第2の供給口を通じてエチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーを二軸混練押出機に導入することにより実施される。第2の供給口は、第1の混練部と下記の第2の混練部の間に位置する。
【0012】
本発明において使用できるエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は公知の方法により調製でき、例えばエチレンと酢酸ビニルとを重合してエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を調製し、得られたEVAを加水分解することによって製造することができる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、気体遮断性と柔軟性の観点から、1〜55モル%のエチレン含有量を有することが好ましい。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体は、気体透過防止性および成形時の熱安定性の観点から90%以上のケン化度を有することが好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、例えば日本合成化学(株)からソアノール(登録商標)H4815B(エチレン単位含有量:48モル%)、ソアノール(登録商標)H4412B(エチレン単位含有量:44モル%)、ソアノール(登録商標)E3808B(エチレン単位含有量:38モル%)およびソアノール(登録商標)D2908(エチレン単位含有量:29モル%)として入手可能であり、(株)クラレからエバール(登録商標)G156B(エチレン単位含有量:48モル%)、エバール(登録商標)E171B(エチレン単位含有量:44モル%)、エバール(登録商標)H171B(エチレン単位含有量:38モル%)、エバール(登録商標)F171B(エチレン単位含有量:32モル%)およびエバール(登録商標)L171B(エチレン単位含有量:27モル%)として入手可能である。1種のエチレン−ビニルアルコール共重合体を使用しても、2種以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体を組み合わせて使用してもよい。エチレン−ビニルアルコール共重合体の量は、変性エラストマー100質量部を基準として10〜100質量部である。
【0013】
本発明において使用できる変性エラストマーは、好ましくは酸無水物基、またはカルボキシル基又はそれらの誘導体である官能基を有する。ポリアミド樹脂との相溶性という観点から、特に好ましくは、変性エラストマーは酸無水物基を有する。変性エラストマーを構成するゴムとしては、エチレン−α−オレフィン共重合体、またはエチレン−不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体などが挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。エチレン−不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルメタクリレート共重合体などが挙げられる。変性エラストマーは、エポキシ基含有ポリマーとの反応前のポリアミド樹脂とEVOHとの総量100質量部に対して、好ましくは80〜200質量部であり、より好ましくは100〜180質量部である。ポリアミド樹脂とEVOHとの総量に対する変性エラストマーの比率が低過ぎると、得られる熱可塑性エラストマー組成物は低温耐久性に劣り、ポリアミド樹脂とEVOHとの総量に対する変性エラストマーの比率が高過ぎると、変性エラストマーが連続相を形成してしまい、所望の熱可塑性エラストマー組成物が得られない。
【0014】
酸無水物基を有する変性エラストマーは、例えば、酸無水物及びペルオキシドをエラストマーと反応させることにより製造することができる。酸無水物基を有する変性エラストマーの例としては、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(三井化学(株)からタフマー(登録商標)MP−0620として入手可能)、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(三井化学(株)からタフマー(登録商標)MP−7010として入手可能)、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(三井化学(株)からタフマー(登録商標)MP−7020として入手可能)、無水マレイン酸変性エチレン−メチルアクリレート共重合体(アルケマ(株)からLotader(登録商標)4503として入手可能)、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)からHPR(登録商標)AR201として入手可能)、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(アルケマ(株)からLotader(登録商標)4720として入手可能)、無水マレイン酸変性エチレン−ブチルアクリレート共重合体(アルケマ(株)からLotader(登録商標)4210として入手可能)などが挙げられる。特に好ましい変性エラストマーは、酸無水物(例えば無水マレイン酸など)により変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体及び酸無水物(例えば無水マレイン酸など)により変性されたエチレン−エチルアクリレート共重合体である。
【0015】
工程(2)の後に、エチレン−ビニルアルコール共重合体を工程(1)で得られた生成物中に分散させる工程(3)を実施する。工程(3)は、例えば二軸混練押出機を使用して実施する場合に、第2の供給口より二軸混練押出機の押出方向下流側に位置する第2の混練部において、工程(1)で得られた生成物とエチレン−ビニルアルコール共重合体と変性エラストマーを溶融混練する。第2の混練部における溶融混練条件は、使用されるポリアミド樹脂、エポキシ基含有ポリマー、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーの種類及び量に応じて当業者が適宜選択することができる。第2の混練部における溶融混練温度は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と末端封鎖ポリアミド樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物の溶融温度以上であればよく、典型的には約180℃〜約250℃である。第2の混練部における溶融混練(動的架橋)時間(滞留時間)は、典型的には約5秒間〜約3分間である。工程(3)を実施することによって、エチレン−ビニルアルコール共重合体と末端封鎖ポリアミド樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物を連続相として含み、かつ、当該連続相中に分散された変性エラストマーを分散相として含む溶融混練物が形成される。
【0016】
工程(3)の後に、工程(3)で得られた分散体に変性エラストマーを架橋させるための架橋剤を加える工程(4)を実施する。工程(4)は、例えば二軸混練押出機を使用して実施する場合に、第2の混練部から押出方向下流側に位置する第3の供給口を通じて架橋剤を二軸混練押出機に導入することにより実施される。第3の供給口は、第2の混練部と下記の第3の混練部の間に位置する。
【0017】
架橋剤の種類および配合量は、使用されるポリアミド樹脂、エポキシ基含有ポリマー、EVOH及び変性エラストマーの種類及び量などに応じて当業者が適宜選択することができる。架橋剤の例としては、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(例えば、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC))、少なくとも2つのアミノ基を有する化合物(例えば、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DAS)、2,2’−ジアミノジフェニルジスルフィド)などが挙げられる。架橋剤の量は、典型的には、変性エラストマー100質量部に対して0.1〜10質量部であり、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。架橋剤の量が少なすぎると、十分な疲労耐久性を達成することができない。逆に、架橋剤の量が多すぎると、架橋剤を添加した後に実施される下記の混練工程においてスコーチを引き起こす原因となり、フィルム、チューブなどの形態に成形した後にフィッシュアイなどの外観不良が生じる原因となる。
【0018】
工程(4)の後に、架橋剤により変性エラストマーを架橋させる工程(5)を実施する。工程(5)は、例えば二軸混練押出機を使用して実施する場合に、第3の供給口より二軸混練押出機の押出方向下流側に位置する第3の混練部において実施される。第3の混練部において、架橋剤と、エチレン−ビニルアルコール共重合体と末端封鎖ポリアミド樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物を連続相として含み、かつ、当該連続相中に分散された変性エラストマーを分散相として含む溶融混練物を溶融混練し、変性エラストマーを動的架橋させることが好ましい。動的架橋により、分散相を連続相中に安定化(又は固定化)させることができる。第3の混練部における溶融混練条件は、使用されるポリアミド樹脂、エポキシ基含有ポリマー、EVOH、変性エラストマー及び架橋剤の種類及び量に応じて当業者が適宜選択することができる。第3の混練部における溶融混練温度は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と末端封鎖ポリアミド樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物の溶融温度以上であればよく、典型的には約180℃〜約250℃である。第3の混練部における溶融混練(動的架橋)時間(滞留時間)は、典型的には約5秒間〜約3分間である。
【0019】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記必須成分および任意の添加剤を、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、一軸混練押出機、二軸混練押出機などの熱可塑性樹脂組成物の調製に一般的に使用されている混練機を使用して溶融混練することによって調製できる。溶融混練は、その生産性の高さから二軸混練押出機を使用して行うことが好ましい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法における、上記工程(1)〜(5)は、
工程(1)を実施するための第1の混練部、
工程(3)を実施するための第2の混練部、及び
工程(5)を実施するための第3の混練部、
を含む少なくとも3つの混練部と、
第1の混練部より押出方向上流側に位置する、ポリアミド及びエポキシ基含有ポリマーのための第1の供給口、
第1の混練部と第2の混練部の間に位置する、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーのための第2の供給口、及び
第2の混練部と第3の混練部の間に位置する、架橋剤のための第3の供給口、
を含む少なくとも3つの供給口と、
を有する二軸混練押出機を使用して実施することができる。
【0020】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法では、本発明の目的に反しない限り、必要に応じて、上記の成分に加えて、補強性、加工性、分散性、耐熱性、老化防止性などの特性を改善するために、充填剤、補強剤、加工助剤、相溶化剤、安定剤、老化防止剤などの一般的な樹脂又はゴム用の一般的な添加剤を添加してもよい。これらの添加剤の量は、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量であることができる。上記の任意の添加剤は、例えば、工程(2)において、末端封鎖ポリアミド樹脂にエチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エラストマーとともに添加することができる。
【0021】
工程(5)において溶融混練した熱可塑性エラストマー組成物を、次に、溶融状態で二軸混練押出機の吐出口に取り付けられたダイからフィルム状またはチューブ状等の形状に押し出すか、あるいは、ストランド状に押し出し、樹脂用ペレタイザーで一旦ペレット化した後、得られたペレットを、インフレーション成形、カレンダー成形、押出成形などの通常の樹脂成形法により、用途に応じてフィルム状、シート状またはチューブ状の所望の形状に成形することができる。
【0022】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物から形成された層を有する製品の製造方法を、空気入りタイヤの製造方法を一例として説明することができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物から形成された層を有する空気入りタイヤの製造方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を所定の幅と厚さを有するフィルムに成形し、それをタイヤ成型用ドラム上に円筒状に貼り着け、その上にカーカス層、ベルト層、トレッド層等のタイヤ部材を順次貼り重ね、タイヤ成型用ドラムからグリーンタイヤを取り外す。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加硫することにより、本発明の熱可塑性エラストマー組成物から形成された層(例えばインナーライナーとして)を有する空気入りタイヤを製造することができる。
【0023】
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物から形成された層を有する製品の製造方法を、ホースの製造方法を一例として説明することができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物から形成された層を有するホースの製造方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、予め離型剤を塗布したマンドレル上に、押出機によりクロスヘッド押出方式で押出し、内管を形成した後、内管上に、編組機を使用して補強糸もしくは補強鋼線を編組して補強層を形成し、この補強層上にさらに熱可塑性樹脂を押出して外管を形成する。内管と補強層の間および補強層の外管の間に、必要に応じて他の熱可塑性樹脂および/または接着剤の層を設けてもよい。最後にマンドレルを引き抜くと、本発明の熱可塑性エラストマー組成物から形成された層を有するホースが得られる。
【実施例】
【0024】
以下に示す実施例及び比較例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
なお、ポリアミド樹脂をエポキシモノマーと予め反応させる従来の方法は、上記のとおり取扱性に劣るため、エポキシ基含有ポリマーを使用せず、変性エラストマー、エチレン−ビニルアルコール共重合体及びポリアミド樹脂を二軸混練押出機に同時に導入した例を比較例1とし、変性エラストマー、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂及びエポキシ基含有ポリマーを二軸混練押出機に同時に導入した例を比較例2とした。比較例1〜2及び実施例1〜5は下記表1の配合(質量部)に従う。
【0025】
原材料
変性エラストマー:無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(三井化学(株)製のタフマー(登録商標)MH7020)
EVOH:エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学工業(株)製のソアノール(登録商標)H4815B)(エチレン単位含有量:48モル%、溶融温度:158℃)
ポリアミド樹脂:ナイロン6(宇部興産(株)製のUBEナイロン(登録商標)1022B)(溶融温度:225℃)
エポキシ基含有ポリマー:エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体(住友化学(株)製のボンドファスト(登録商標)CG5001)(溶融温度:100℃)
架橋剤1:トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)(四国化成工業(株)製)
架橋剤2:3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DAS)(三井化学ファイン(株)製)
【0026】
比較例1の熱可塑性エラストマー組成物の調製
二軸混練押出機(日本製鋼所製のTEX44)を使用して、以下のようにして比較例1の熱可塑性エラストマー組成物を調製した。二軸混練押出機TEX44は、シリンダーが複数個のブロック(ブロックシリンダー)を連結して構成されたものであり、必要に応じて、シリンダー長を変えることができる。比較例1では、二軸混練押出機TEX44を、シリンダーが、押出方向上流側から順に配設された第1の混練部及び第2の混練部と、第1の混練部の押出方向上流側に配設された第1の供給口と、第1の混練部と第2の混練部の間に配設された第2の供給口とからを有するように構成した。第1の供給口を通じてシリンダー内に変性エラストマー、EVOH及びポリアミド樹脂を同時に導入し、温度230℃に設定された第1の混練部で溶融混練した。第2の供給口を通じてシリンダー内に架橋剤を導入し、架橋剤を第1の混練部から搬送されてきた溶融混練物と230℃に設定された第2の混練部において混練し、変性エラストマーを動的架橋させた。第1及び第2の混練部における混練時間の合計は3分間であった。得られた混練物を二軸混練押出機の吐出孔から連続的にストランド状に押出すことを試みたがストランドの吐出状態が極めて悪く、ストランドが頻繁に切れた。
【0027】
比較例2の熱可塑性エラストマー組成物の調製
比較例2の熱可塑性エラストマー組成物の調製には、比較例1の熱可塑性エラストマー組成物の調製に使用したものと同じシリンダー構成を有する二軸混練押出機を使用した。第1の供給口を通じてシリンダー内に変性エラストマー、EVOH、ポリアミド樹脂及びエポキシ基含有ポリマーを同時に導入し、温度230℃に設定された第1の混練部で溶融混練した。第2の供給口を通じてシリンダー内に架橋剤を導入し、架橋剤を第1の混練部から搬送されてきた溶融混練物と230℃に設定された第2の混練部において混練し、変性エラストマーを動的架橋させた。第1及び第2の混練部における混練時間の合計は3分間であった。得られた混練物を二軸混練押出機の吐出孔から連続的にストランド状に押出し、水冷カッターで切断することにより、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0028】
実施例1〜5の熱可塑性エラストマー組成物の調製
押出方向に沿って上流側から順に配設された第1の混練部、第2の混練部及び第3の混練部を有するシリンダーと、シリンダー内に配設された一対のスクリューと、第1の混練部より押出方向上流側に位置する第1の供給口、第1の混練部と第2の混練部との間に配設された第2の供給口及び第2の混練部と第3の混練部との間に配設された第3の供給口とを有する二軸混練押出機(日本製鋼所製のTEX44)を使用して、以下のようにして実施例1〜5の熱可塑性エラストマー組成物を調製した。第1の供給口を通じてシリンダー内にポリアミド樹脂及びエポキシ基含有ポリマーを導入し、温度230℃に設定された第1の混練部でポリアミド樹脂及びエポキシ基含有ポリマーを溶融混練してポリアミド樹脂とエポキシ含有ポリマーを反応させた。第2の供給口を通じてシリンダー内に変性エラストマー及びEVOHを導入し、変性エラストマー及びEVOHを第1の混練部から搬送されてきた溶融混練物と温度230℃に設定された第2の混練部において混練し、変性エラストマーとEVOHを溶融混合物中に分散させた。第3の供給口を通じてシリンダー内に架橋剤を導入し、架橋剤を第2の混練部から搬送されてきた溶融混練物と温度230℃に設定された第3の混練部において混練し、溶融混合物中の変性エラストマーを動的架橋させた。第1、第2及び第3の混練部における混練時間の合計は3分間であった。得られた混練物を二軸混練押出機の吐出孔から連続的にストランド状に押出し、水冷カッターで切断することにより、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0029】
熱可塑性エラストマー組成物の評価
比較例1〜2及び実施例1〜5の熱可塑性エラストマー組成物について、加工性(混練性及び押出成形性)及び動的疲労耐久性(耐クラック性)を評価した。
【0030】
(1)加工性
比較例1〜2及び実施例1〜5の熱可塑性エラストマー組成物のそれぞれについて、加工性の指標として混練性を評価した。
(a)混練性
比較例1〜2及び実施例1〜5の熱可塑性エラストマー組成物を二軸混練押出機から押出されたストランドを観察し、以下の基準で混練性を評価した。
1:ストランドの表面が滑らか。
2:ストランドの表面にわずかな粒状の欠陥もしくは荒れがあるか、または、わずかなストランドの脈動吐出が観察された。
3:ストランドの表面に荒れがあり、ストランドの顕著な吐出不良が観察された。
4:ストランドの吐出状態が極めて悪く、ストランドが頻繁に切れた。
(b)押出成形性
比較例2及び実施例1〜5の熱可塑性エラストマー組成物のそれぞれについて、加工性の別の指標として押出成形性を評価した。比較例1の熱可塑性エラストマー組成物は、混練性が悪く、押出成形性を評価するためのシート状に押出成形できなかった。
比較例1の熱可塑性エラストマー組成物はシート状に押出成形できなかったため、比較例2及び実施例1〜5の熱可塑性エラストマー組成物を、Tダイ押出成形装置(ダイ幅200mm及びφ40mmの単軸押出機、プラ技研製)を使用して、押出温度230℃で厚さ1mmのシート状に押出した。得られたシートの表面状態を観察し、観察結果を以下のような基準で等級づけすることにより押出成形性を評価した。
1:粒やフローマークがなく、シート表面が滑らかで、外観が良好であるもの。
2:わずかな粒状の凹凸及び表面荒れが観察されたもの。
3:多数の粒状の凹凸及び表面荒れが観察されたもの。
【0031】
(2)動的疲労耐久性
比較例1の熱可塑性エラストマー組成物はシート状に押出成形できなかったため、比較例2及び実施例1〜5の熱可塑性エラストマー組成物のそれぞれについて、動的疲労耐久性の指標として空気入りタイヤでの耐クラック性を評価した。
まず、熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層としてタイヤ内面に貼り付けるための粘接着剤組成物を調製した。粘接着剤組成物は、下記表2に示す原料のペレットを二軸混練押出機(日本製鋼所製のTEX44)に導入し、120℃で3分間混練することにより調製した。得られた混練物を押出機から連続的にストランド状に押出し、水冷カッターで切断することにより、ペレット状の粘接着剤組成物を得た。
次に、得られたペレット状の粘接着剤組成物と、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物とを、インフレーション成形装置(プラコー製)を使用して、230℃で、熱可塑性エラストマー組成物が内側、粘接着剤組成物が外側になるように2層のチューブ状に押出し、空気を吹き込んで膨張させ、ピンチロールで折りたたみ、巻き取ることによって、チューブ状の積層体を得た。得られた積層体における熱可塑性エラストマー組成物層の厚さは100μmであり、粘接着剤組成物層の厚さは30μmであった。この積層体をインナーライナーとして、粘接着剤組成物層が外側(ドラムの反対側)になるようにタイヤ成形用ドラム上に配置し、その上に、未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次積層し、タイヤ成型用ドラムからグリーンタイヤを取り外した。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより195/65R15サイズのタイヤを作製した。作製したタイヤをリム15×6JJに装着し、内圧200kPa(空気)として、排気量1800ccのFF乗用車に装着し、実路上を30,000km走行した。その後、タイヤをリムから外し、タイヤの内面に配置された熱可塑性エラストマー層を目視観察し、クラックの個数を求め、観察結果を以下のような基準で等級づけした。クラック数が少ないほど、耐久性に優れる。結果を下記表1に示す。
1:クラックが存在しない。
2:クラック数が1〜5。
3:クラック数が6〜10。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表2脚注:
*1:スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体のエポキシ化物(ダイセル化学工業(株)製のエポフレンドAT501)
*2:正同化学(株)製の酸化亜鉛3種
*3:日油(株)製のビーズステアリン酸
*4:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTOT−N
*5:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンD105
【0035】
表1から、本発明の製造方法により製造された熱可塑性エラストマー組成物は、良好な加工性及び動的疲労耐久性を有することが判る。