特許第5991008号(P5991008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5991008
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】風車の過速抑制制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20160901BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   H02P9/00 F
   F03D7/04 A
   H02P9/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-104315(P2012-104315)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-233045(P2013-233045A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】光田 純
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−017683(JP,A)
【文献】 特開2003−259694(JP,A)
【文献】 特開昭55−029085(JP,A)
【文献】 特開平11−062814(JP,A)
【文献】 米国特許第04193005(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
F03D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車に連結された発電機を、風車の回転速度に応じてコンバータにより制御し、コンバータの出力を任意の電圧と周波数に変換して電力系統へ出力するインバータを備えた風力発電装置において、
風車の検出された回転速度を入力して速度変化率を検出する速度変化率検出部と、
予め過速抑制開始変化率を設定した設定部と、
前記速度変化率検出部によって検出された速度変化率と前記設定部により設定された過速抑制開始変化率の変化率偏差を求め、変化率偏差>過速抑制開始変化率のときにのみPI演算を実行して過速抑制トルクを生成し、変化率偏差<過速抑制開始変化率のとき過速抑制トルクをゼロとする過速抑制トルク演算部を前記コンバータのコンバータ制御装置に設け、
前記過速抑制トルクと風車コントローラからのトルク指令を加算してコンバータへのトルク指令とすると共に、
前記過速抑制トルク演算部は、変化率偏差≠0時にPI演算を行い、
変化率偏差<0時に過速抑制トルクの出力をゼロとする切換機能を備えたことを特徴とした風車の過速抑制制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置における風車の過速抑制制御装置に係わり、特に風車発電機に対するトルク制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、風力発電装置の概略構成図を示したもので、風のエネルギーを風車1によって回転エネルギーに変換し、この回転エネルギーにより発電機2を回転させることで電気エネルギーに変換する。コンバータ3は、発電機2を制御して取り出した交流を直流に変換し、インバータ4により任意の電圧と交流の周波数に変換して電力系統5に出力する。6はインバータ制御装置、7はコンバータ制御装置、8は風車コントローラで、風車の回転数に応じたトルク指令が演算されて
コンバータ制御装置7、コンバータ3を介して発電機2の出力がトルク指令通りになるよう制御する。
【0003】
図5は風車コントローラ8の構成図で、風車速度と風速を入力して各入力値に基づいて風車羽の角度(ピッチ角度)を決定するピッチコントローラ80を有した過速抑制のための回路を備えている。すなわち、風車の回転速度が速くなった場合には回転速度が遅くなる方向にピッチ角度を制御することにより、風車の速度が過大となることを防止している。
【0004】
なお、ピッチ角度を制御する手段として、風況予測情報によって出力可能な風車の出力をスケジューリングしてピッチ角度および電力変換器を制御することで所定の出力を取り出すよう制御するものとして特許文献1が公知となっており、また、過大な風速によって回転数が過大上昇してもブレーキなどの外部装置を用いずに風車の回転を減速すると共に、発電機の稼働率を向上させるものとして特許文献2および特許文献3が公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−83229
【特許文献2】特開2006−296189
【特許文献3】特開2006−257985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5で示すような風車コントローラ8を用いてピッチ角度を制御する場合、ピッチ角度の動作速度は風車の速度変動を抑えきれるほど速くないことが一般的である。このため、突風などにより急激に風車速度が変動した場合には、過速抑制機能が十分に機能しないことになる.
また、特許文献1で示すように、ピッチ角度および電力変換器を制御して所定の出力を取り出す方法では、ピッチを調整することにより風車を減速するための装置が複雑になる問題を有している。特許文献2および3では、風車の特性として平常時のトルク指令と風車速度は、図6(特許文献2の図6)で示すように、例えば、風速WT3,トルク指令Tn3で運転していたとき、突風が吹いて風速がWT4になってトルク指令が追従できなくなると、風車速度はω1にまで増速し、危険な状態となる虞を有している。
【0007】
なお、図6でWT1〜WT4は風速のパラメータ、Tn1〜Tn4はトルク、Tresは保護動作を開始するトルクレベル、Tpは保護運転のトルクレベル、Terは保護動作の検出トルクレベルである。また、ωpは保護運転における風車速度、ωerは保護動作開始時の風車速度である。
【0008】
本発明が目的とするとこは、突風などにより急激に風車速度が増加するような場合においても、風車の速度が過大となることを防止すると共に、発電電力が過大とならない風車の過速抑制制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、風車に連結された発電機を、風車の回転速度に応じてコンバータにより制御し、コンバータの出力を任意の電圧と周波数に変換して電力系統へ出力するインバータを備えた風力発電装置において、
風車の検出された回転速度を入力して速度変化率を検出する速度変化率検出部と、
予め過速抑制開始変化率を設定した設定部と、
前記速度変化率検出部によって検出された速度変化率と前記設定部により設定された過速抑制開始変化率の変化率偏差を求め、変化率偏差>過速抑制開始変化率のときにのみPI演算を実行して過速抑制トルクを生成し、変化率偏差<過速抑制開始変化率のとき過速抑制トルクをゼロとする過速抑制トルク演算部を前記コンバータのコンバータ制御装置に設け、
前記過速抑制トルクと風車コントローラからのトルク指令を加算してコンバータへのトルク指令とすると共に、
前記過速抑制トルク演算部は、変化率偏差≠0時にPI演算を行い、
変化率偏差<0時に過速抑制トルクの出力をゼロとする切換機能を備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明によれば、風車速度の変化率に対して過速抑制トルクを出力するため、突風等による急激な速度変動を抑制することができると共に、風車速度が過大となることを抑制することが可能となる。また、速度変動が高速になる前に、過速抑制トルクが出力するため、発電電力が過大となることもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態を示すコンバータ制御装置の構成図。
図2】本発明の過速抑制トルク演算部の構成図。
図3】過速抑制開始変化率の説明図。
図4】、風力発電装置の概略の構成図。
図5】ピッチコントローラの構成図。
図6】トルクー風車回転特性図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施例を示すコンバータ制御装置の構成図で、風力発電装置の概略構成は図4と同様に構成される。本発明におけるコンバータ制御装置10は、微分演算機能よりなる速度変化率検出器11と、過速抑制トルク演算部12、および過速抑制開始変化率を設定する設定部13を有している。速度変化率検出器11には検出された風車速度が入力され、微分演算することで風車速度の変化率信号(以下、速度変化率という)を求める。
【0016】
設定部13は、風車の過速を抑制するトルク(以下、過速抑制トルクという)を発生させるために、風車速度>所定の値の過速抑制開始変化率の出力期間△Tが設定される。すなわち、図3で示すように風車速度がWV1からWV2のように急変した場合の期間△Tが設定される。速度変化率検出器11によって求められた速度変化率と、設定部13によって設定された過速抑制開始変化率は、減算部14に出力されて変化率偏差が算出される。
【0017】
過速抑制トルク演算部12は、図2で示すように変化率偏差に応じてPI演算を実行する比例制御器P,積分制御器Iと切換機能SW1,SW2および出力をゼロとする機能0を有している。切換機能SW1,SW2は、入力する変化率偏差<0のとき、すなわち、負の入力のときに機能0側に切換り、過速抑制トルク演算部12の出力をゼロとする。
【0018】
次に動作を説明する。
検出器によって検出された風車1の回転速度は、コンバータ制御装置7の速度変化率検出器11に入力されて微分演算が行われて速度変化率が求められ、その出力は減算部14に入力される。減算部14には予め設定された過速抑制開始変化率が入力されており、速度変化率と過速抑制開始変化率との差分である変化率偏差が求められる。風車速度が緩やかに変化して状態では、速度変化率<過速抑制開始変化率となって過速抑制トルク演算部12への変化率偏差は負の値となっており、切換機能SW1,SW2はそれぞれ端子a側に接続されて過速抑制トルクはゼロとなっている。このため、コンバータ制御装置7から出力されるトルク指令は、風車コントローラ8からのトルク指令のみが最終トルク指令となってコンバータ3に出力されて、スイッチング素子が制御される。
【0019】
次に、図6で示す風速WT3,トルクTn3で運転しているときに急に風速が強くなり、図3で示す時刻t1においてWT4となったとする。その風速の急変は検出器によって検出され、その風車速度は速度変化率検出器11に入力されて微分演算され速度変化率が減算部14に出力される。減算部14での差演算結果は速度変化率>過速抑制開始変化率となって偏差≠0の変化率偏差を発生し、切換機能SW1,SW2はそれぞれ端子b側に切換る。したがって、過速抑制トルク演算部12では、変化率偏差に応じたPI演算を実行して設定された期間△Tに過速抑制トルクを出力する。過速抑制トルクは、風車トルク指令に加算されて最終トルク指令となってコンバータ3に出力され、このコンバータ3を介して発電機2の出力が最終トルク指令通りになるよう制御される。
【0020】
したがって、速度変化率検出器11によって算出された風車の速度変化率が発電機に対する所定のトルク値となるよう抑制すると共に、過速抑制トルクが補正値となることで風車速度を図6で示すωwrに抑えることができる。
【0021】
なお、設定部13により設定される過速抑制開始変化率を、風車のピッチ角度動作速度に併せて設定することにより、風車コントローラ8とコンバータ制御部7が自動で共同して過速抑制を行うことも可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1… 風車
2… 発電機
3… コンバータ
4… インバータ
5… 電力系統
6… インバータ制御装置
7,10… コンバータ制御装置
8… 風車コントローラ
11… 速度変化率検出器
12… 過速抑制トルク演算部
13… 設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6