(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5991120
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 3/32 20060101AFI20160901BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
E02F3/32 B
E02F3/36 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-215744(P2012-215744)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70379(P2014-70379A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平垣内 聡
(72)【発明者】
【氏名】中谷 光夫
(72)【発明者】
【氏名】竹井 通景
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−051434(JP,A)
【文献】
特開2004−036308(JP,A)
【文献】
実開昭49−082460(JP,U)
【文献】
実開昭53−141005(JP,U)
【文献】
実開昭63−045863(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/32
E02F 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載された旋回フレームを有する上部旋回体と、該上部旋回体の前側に起伏可能に連結されたアタッチメントとを備えた建設機械であって、
前記旋回フレームのフレーム前端縁から前方に突出して延びるスイングポストと、
前記アタッチメントの基端側に設けられ、垂直方向に延びるスイングピンを介して前記スイングポストに回動可能に連結されたスイングブラケットと、
伸縮動作によって前記スイングブラケットを水平方向に回動させるスイングシリンダとを備え、
前記スイングポストの下面には、幅方向一端の側壁面が該スイングポストの幅方向一端の側壁面よりも平面視で内側に位置するように立設したストッパ部が設けられ、
前記スイングブラケットの下部には、前記スイングシリンダの伸長時に前記ストッパ部の幅方向一端の側壁面に当接する伸長側ストッパ面が形成され、
前記ストッパ部の幅方向一端の側壁面は、前方に向かうほど該ストッパ部の幅が小さくなるように傾斜していることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1において、
前記ストッパ部の幅方向他端の側壁面は、前記スイングポストの幅方向他端の側壁面よりも平面視で内側に位置しており、
前記スイングブラケットの下部には、前記スイングシリンダの縮小時に前記ストッパ部の幅方向他端の側壁面に当接する縮小側ストッパ面が形成され、
前記ストッパ部の幅方向他端の側壁面は、前方に向かうほど該ストッパ部の幅が小さくなるように傾斜していることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2において、
前記ストッパ部は、前記スイングブラケットの前記伸長側ストッパ面に当接する伸長側ストッパ部と、該伸長側ストッパ部に対して幅方向に間隔をあけて配置され且つ該スイングブラケットの前記縮小側ストッパ面に当接する縮小側ストッパ部とで構成されていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、旋回フレーム前側のスイングポストに掘削作業部基端のブーム支持体を枢支することで、ブーム支持体を水平スイング自在に構成した建設機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この建設機械では、ブーム支持体の側面にブームブラケットを突設する一方、スイングポストの側面にスイングストッパーを突設することで、ブーム支持体の水平回動時に、スイングストッパーにブームブラケットの一側面を当接させて掘削作業部の水平スイング角度を制限するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−045863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブーム支持体の水平スイング動作を繰り返し行うと、スイングストッパーとブームブラケットとの当接面の塗装が剥がれてしまうという問題がある。ここで、従来の建設機械では、スイングポストの側面にスイングストッパーを突設させた構成としているので、当接面の塗装が剥がれるとその部分が目立ってしまい、見栄えが悪くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スイングブラケットのストッパ部の配設位置を工夫することで、ストッパ部の当接面の塗装が剥がれた場合でもその部分が目立ち難いようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に搭載された旋回フレームを有する上部旋回体と、該上部旋回体の前側に起伏可能に連結されたアタッチメントとを備えた建設機械を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、前記旋回フレームのフレーム前端縁から前方に突出して延びるスイングポストと、
前記アタッチメントの基端側に設けられ、垂直方向に延びるスイングピンを介して前記スイングポストに回動可能に連結されたスイングブラケットと、
伸縮動作によって前記スイングブラケットを水平方向に回動させるスイングシリンダとを備え、
前記スイングポストの下面には、幅方向一端の側壁面が該スイングポストの幅方向一端の側壁面よりも平面視で内側に位置するように立設したストッパ部が設けられ、
前記スイングブラケットの下部には、前記スイングシリンダの伸長時に前記ストッパ部の幅方向一端の側壁面に当接する伸長側ストッパ面が形成され
、
前記ストッパ部の幅方向一端の側壁面は、前方に向かうほど該ストッパ部の幅が小さくなるように傾斜していることを特徴とするものである。
【0009】
第1の発明では、スイングポストの下面にはストッパ部が立設している。ストッパ部の幅方向一端の側壁面は、スイングポストの幅方向一端の側壁面よりも平面視で内側に位置している。また、スイングブラケットの下部には、スイングシリンダの伸長時にストッパ部の幅方向一端の側壁面に当接する伸長側ストッパ面が形成される。
【0010】
このような構成とすれば、ストッパ部の側壁面とスイングブラケットのストッパ面とが衝突して当接面の塗装が剥がれてしまった場合でも、その塗装剥がれが目立ち難くなり、見栄えが悪くなるのを防止できる。さらに、スイングポストの下面にストッパ部を立設させているので、このストッパ部がスイングポストの補強リブとして機能し、スイングポストの剛性を高めることができる。
【0011】
また、スイングブラケットの下部に伸長側ストッパ面を設けるようにしたから、従来の建設機械のように、ストッパ面となるブームブラケットをブーム支持体の側面から突設させた場合に比べて、ストッパ部とストッパ面とが衝突したときに加わる応力が軽減されるので、スイングブラケットの剛性を確保することができる。また、スイングシリンダの伸長時にストッパ部とストッパ面とが当接する構成となっているため、スイングシリンダが伸長動作中に外れてしまう等の不具合が発生した場合でも、スイングブラケットの回動動作を確実に停止させることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
前記ストッパ部の幅方向他端の側壁面は、前記スイングポストの幅方向他端の側壁面よりも平面視で内側に位置しており、
前記スイングブラケットの下部には、前記スイングシリンダの縮小時に前記ストッパ部の幅方向他端の側壁面に当接する縮小側ストッパ面が形成され
、
前記ストッパ部の幅方向他端の側壁面は、前方に向かうほど該ストッパ部の幅が小さくなるように傾斜していることを特徴とするものである。
【0013】
第2の発明では、ストッパ部の幅方向他端の側壁面は、スイングポストの幅方向他端の側壁面よりも平面視で内側に位置している。また、スイングブラケットの下部には、スイングシリンダの縮小時にストッパ部の幅方向他端の側壁面に当接する縮小側ストッパ面が形成される。
【0014】
このような構成とすれば、スイングシリンダの伸長時に加えて縮小時にもスイングブラケットの回動動作を確実に停止させることができる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、
前記ストッパ部は、前記スイングブラケットの前記伸長側ストッパ面に当接する伸長側ストッパ部と、該伸長側ストッパ部に対して幅方向に間隔をあけて配置され且つ該スイングブラケットの前記縮小側ストッパ面に当接する縮小側ストッパ部とで構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明では、ストッパ部は、互いに幅方向に間隔をあけて配置された伸長側ストッパ部と縮小側ストッパ部とで構成される。伸長側ストッパ部は、スイングブラケットの伸長側ストッパ面に当接する。縮小側ストッパ部は、スイングブラケットの縮小側ストッパ面に当接する。
【0017】
このような構成とすれば、幅方向に延びる1つのストッパ部をスイングポストの下面に立設させた場合に比べて、幅方向中央位置の肉厚が薄くなるので、建設機械全体として軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ストッパ部の側壁面とスイングブラケットのストッパ面とが衝突して当接面の塗装が剥がれてしまった場合でも、その塗装剥がれが目立ち難くなり、見栄えが悪くなるのを防止できる。さらに、スイングポストの下面にストッパ部を立設させているので、このストッパ部がスイングポストの補強リブとして機能し、スイングポストの剛性を高めることができる。
【0019】
また、スイングブラケットの下部に少なくとも伸長側ストッパ面を設けるようにしたから、ストッパ部とストッパ面とが衝突したときに加わる応力が軽減されるので、スイングブラケットの剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る建設機械の構成を示す側面図である。
【
図2】スイングブラケット周辺の構成を示す側面図である。
【
図4】スイングシリンダを伸長させたときの
図3相当図である。
【
図5】スイングシリンダを縮小させたときの
図3相当図である。
【
図6】本変形例に係る建設機械の
図3相当図である。
【
図7】その他の実施形態に係る建設機械の
図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。各図には、上下や前後左右の方向を矢印で示してある。特に言及しない限り、上下等の方向についてはこれら矢印で示す方向に従って説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る建設機械の構成を示す側面図である。
図1に示すように、建設機械10は、下部走行体11と、下部走行体11に対して旋回可能に連結された旋回フレーム12aを有する上部旋回体12と、上部旋回体12の前側に起伏可能に連結されたアタッチメント20とを備えている。
【0023】
上部旋回体12の前側には、スイングポスト13が設けられている。スイングポスト13は、旋回フレーム12aのフレーム前端縁から前方に突出して延びている。具体的に、スイングポスト13は、平面視で前方に向かって先細となる三角形状に形成されている(
図3参照)。
【0024】
スイングポスト13の先端部には、垂直方向に延びるスイングピン35が挿通されている。スイングポスト13には、スイングピン35を介してスイングブラケット30が回動可能に連結されている。なお、スイングブラケット30の具体的な構成については後述する。
【0025】
アタッチメント20は、ブーム21及びアーム25と、これらを駆動させるブームシリンダ22及びアームシリンダ26とを備えている。ブーム21の基端部は、ブーム連結軸21aを介してスイングブラケット30に連結されている。ブームシリンダ22は、チューブ側がスイングブラケット30下側の下部支持ピン22aに対して回動可能に連結され、ロッド側がブーム21の腹面側の上部支持ピン22bに回動可能に連結されている。ブーム21は、ブームシリンダ22の伸縮動作によって回動可能に支持されている。
【0026】
ブーム21の先端部には、アーム連結軸25aを介してアーム25が回動可能に連結されている。アーム25は、アームシリンダ26の伸縮動作によって回動可能に支持されている。なお、アーム25の先端部には、バケット等が回動可能に連結されるが、図示を省略する。
【0027】
図2及び
図3に示すように、スイングブラケット30は、ブーム21及びブームシリンダ22の基端部が連結されるスイング本体部31と、スイングポスト13を挟んで上下方向に間隔をあけて配置され且つスイング本体部31の後方に張り出した一対のフランジ部32と、スイング本体部31の右側方に突出したシリンダ連結部33とを有する。
【0028】
スイングブラケット30は、一対のフランジ部32間にスイングポスト13を挟んだ状態で、一対のフランジ部32にスイングピン35を嵌合させることで、スイングポスト13に回動可能に連結されている。
【0029】
スイングシリンダ36は、旋回フレーム12a内に収容されている。スイングシリンダ36のロッド側は、支持軸36aを介してシリンダ連結部33に回動可能に連結されている。スイングブラケット30は、スイングシリンダ36の伸縮動作によってスイングピン35を中心に水平方向に回動する。
【0030】
スイングポスト13の下面には、ストッパ部15が立設している。ストッパ部15は、平面視で台形状に形成されており、幅方向両端の側壁面16がスイングポスト13の幅方向両端の側壁面よりも平面視で内側に位置している。
【0031】
スイングブラケット30の下部には、ストッパ部15の幅方向両端の側壁面16にそれぞれ当接する伸長側ストッパ面30aと縮小側ストッパ面30bとが形成されている。具体的に、伸長側ストッパ面30aは、スイング本体部31と下側のフランジ部32との左側の付け根部分に形成されており、スイングシリンダ36の伸長時にストッパ部15の左側の側壁面16に当接する(
図4参照)。
【0032】
一方、縮小側ストッパ面30bは、スイング本体部31と下側のフランジ部32との右側の付け根部分に形成されており、スイングシリンダ36の縮小時にストッパ部15の右側の側壁面16に当接する(
図5参照)。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る建設機械10によれば、ストッパ部15の幅方向両端の側壁面16とスイングブラケット30の伸長側ストッパ面30a及び縮小側ストッパ面30bとが衝突して当接面の塗装が剥がれてしまった場合でも、その塗装剥がれが目立ち難くなり、見栄えが悪くなるのを防止できる。さらに、スイングポスト13の下面にストッパ部15を立設させているので、このストッパ部15がスイングポスト13の補強リブとして機能し、スイングポスト13の剛性を高めることができる。
【0034】
《本変形例》
図6は、本変形例に係る建設機械の
図3相当図である。
図6に示すように、ストッパ部15は、互いに幅方向に間隔をあけて配置された伸長側ストッパ部15aと縮小側ストッパ部15bとで構成されている。伸長側ストッパ部15aは、スイングブラケット30の伸長側ストッパ面30aに当接する。縮小側ストッパ部15bは、スイングブラケット30の縮小側ストッパ面30bに当接する。
【0035】
このようにすれば、前記実施形態のように、幅方向に延びる1つのストッパ部15をスイングポスト13の下面に立設させた場合に比べて、幅方向中央位置の肉厚が薄くなるので、建設機械10全体として軽量化を図ることができる。
【0036】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0037】
前記実施形態では、スイングブラケット30を1本のスイングピン35を介してスイングポスト13に連結させるようにした形態について説明したが、この形態に限定するものではない。例えば、
図7に示すように、スイングポスト13の前端部を上下2つに分岐させた形状とし、スイングブラケット30のフランジ部32を、スイングポスト13の2つの分岐部をそれぞれ挟むように4つ設けることで、上下2本のスイングピン35を介してスイングブラケット30をスイングポスト13に連結させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明は、スイングブラケットのストッパ部の配設位置を工夫することで、ストッパ部の当接面の塗装が剥がれた場合でもその部分が目立ち難いようにすることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0039】
10 建設機械
11 下部走行体
12 上部旋回体
12a 旋回フレーム
13 スイングポスト
15 ストッパ部
15a 伸長側ストッパ部
15b 縮小側ストッパ部
16 側壁面
20 アタッチメント
30 スイングブラケット
30a 伸長側ストッパ面
30b 縮小側ストッパ面
35 スイングピン
36 スイングシリンダ