(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スイッチング増幅制御部は、前記線形増幅部から出力された電流Icが所定の下限値より小さい場合、全てのスイッチング増幅部から前記所定の電圧を出力させない、請求項1に記載の電源装置。
i番目のヒステリシスコンパレータの低電圧側しきい値をVLi、高電圧側しきい値をVHiとした時(i=1,2、、、n−1:nは2以上の自然数)、VH(i+1)>VHiおよびVL(i+1)>VLiが成り立つ、請求項4に記載の電源装置。
前記スイッチング増幅制御部は、前記複数のスイッチング増幅部から出力された電圧を合算し、該合算した電圧Vswを電流Imに変換して出力するインダクタを備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電源装置。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や無線LAN(Local Area Network)など、近年の無線通信に用いられているデジタル変調方式は、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの変調フォーマットが採用されている。このような変調フォーマットでは、一般にシンボル間の遷移時に信号の軌跡が振幅変調を伴い、マイクロ波帯のキャリア信号に重畳された高周波変調信号では、時間とともに信号の振幅(包絡線)が変化する。このとき、高周波変調信号のピーク電力と平均電力の比は、PAPR(Peak−to−Average Power Ratio)と呼ばれている。
【0003】
PAPRが大きい信号を増幅する場合、高い線形性を確保する為に、ピーク電力に対しても波形が歪まないように電源から十分に大きな電力を増幅器に供給する必要がある。言い換えると、増幅器を電源電圧で制限される飽和電力よりも十分低い電力領域で余裕(バックオフ)をもたせて動作させる必要がある。一般に、A級やB級で動作させた線形増幅器では、その飽和出力電力付近で電力効率が最大になるので、バックオフが大きい領域で動作させると平均的な効率は低くなる。
【0004】
次世代携帯電話や無線LAN、デジタルテレビ放送に採用されているマルチキャリアを用いた直交波周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式では、PAPRは大きくなる傾向にあり、増幅器の平均効率はさらに低下する。したがって、増幅器の特性としては、バックオフの大きい電力領域でも高い効率を有していることが望ましい。
【0005】
バックオフの大きい電力領域で広いダイナミックレンジに渡って高効率に信号を増幅する方式として、非特許文献1には包絡線除去・復元(EER:Envelope Elimination and Restoration)という送信方式が記載されている。また、EER方式と類似した方式として、包絡線追跡(ET:Envelope Tracking)という方法も知られている。たとえば、非特許文献2にその一例が報告されている。
【0006】
EER方式やET方式に用いる変調電源装置では、一般に、振幅成分をパルス変調信号に変換し、D級アンプなどを用いてスイッチング増幅する。しかし、広い帯域の変調電源装置を実現するためには、大電力・高速なスイッチング増幅が必要となる。そこで、高効率で且つ広帯域に電源を変調する方法として、広帯域で効率の低い線形増幅部と、狭帯域で効率の高いスイッチングコンバータ部を連動させる技術が提案されており、その一例が非特許文献3に記載されている。
【0007】
非特許文献3に記載された変調電源装置の構成を
図16に示す。
図16に示した変調電源装置では、広帯域だが効率の低い線形増幅部70と、狭帯域だが効率の高いスイッチングコンバータ部71を連動させることによって、高効率・広帯域な出力電圧72を電力増幅器73に供給している。
【0008】
振幅変調成分74がオペアンプ75で構成された線形増幅部70に入力されると、線形増幅部70の出力電流Icは、電流検知部77で電圧に変換されてヒステリシスコンパレータ78に入力される。この際、ヒステリシスコンパレータ78の出力は、線形増幅部70から電流が流れ出る(Ic>0)ときがHigh、流れ込む(Ic<0)ときがLowとなるように極性を選ぶことにより、振幅変調成分74の強度に応じたパルス幅変調信号79になる。このパルス幅変調信号79を、スイッチング素子80の制御信号として用いる。
【0009】
スイッチング素子80は、ダイオード81と合わせてスイッチングコンバータを構成している。パルス幅変調信号79がHighの場合、スイッチング素子80は、オン(導通状態)になり、電源V1から、負荷である電力増幅器73に向かって出力電流Imを流す。一方、パルス幅変調信号79がLowの場合、スイッチング素子80は、オフ(非導通状態)になる。この時、インダクタ83を流れる電流を維持するために、グランド(以下、GNDと記載する。)からダイオード81を介して出力電流Imを出力する。
【0010】
そして、非特許文献3の変調電源装置は、出力電流Imと出力電流Icとを結合し、電力増幅器73へ出力電流Ioutを供給する。上記のスイッチング動作を繰り返すことにより、電力増幅器73へは主に、電源V1とGNDとから交互に出力電流Ioutが供給される。
【0011】
また、高効率で且つ広帯域に電源を変調する別の電源回路が、特許文献1に提案されている。
図17に示した特許文献1の電源回路の構成は、
図16に示した非特許文献3の変調電源装置の構成の一部を変形したものである。
図17において、第1のスイッチングコンバータ部94と第2のスイッチングコンバータ部95とが並列に設けられている。この際、第1のスイッチングコンバータ部94を構成するインダクタ96のインダクタンスを、第2のスイッチングコンバータ部95を構成するインダクタ97のそれよりも小さくする。また、第1のヒステリシスコンパレータ98のヒステリシス幅は、第2のヒステリシスコンパレータ99のヒステリシス幅よりも大きくする。
【0012】
このような構成により、振幅変調成分のスルーレートが小さい場合は、第2のスイッチングコンバータ部95が比較的遅いスイッチング速度で動作する。一方、振幅変調成分のスルーレートが大きい場合は、第2スイッチングコンバータ部95に加えて、第1のスイッチングコンバータ部94が高速にスイッチング動作する。すなわち、特許文献1の電源回路は、振幅変調成分のスルーレートに応じてインダクタを切り替えることによって、広帯域な入力信号に対してもある程度高い効率を維持する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。本実施形態に係る電源装置のブロック構成図の一例を
図1に示す。
図1において、電源装置200は、線形増幅部400およびスイッチング増幅制御部500を備え、入力した信号の波形に応じた出力電圧Voutを生成すると共に電流Ioutを出力する。
【0024】
線形増幅部400は、電源装置200へ入力した入力信号を線形に増幅して電流Icを出力する。線形増幅部400としては、例えば、ボルテージフォロアや負帰還増幅器を適用することができる。
【0025】
スイッチング増幅制御部500は、n個(n=1、2、、、:nは2以上の自然数)のスイッチング増幅部601、602、、、60nを備える。スイッチング増幅部601、602、、、60nは、オンした時にそれぞれ所定の電圧V1、V2、、、Vnを出力する。
【0026】
スイッチング増幅制御部500は、所定の下限値を保持し、線形増幅部400から出力された電流Icの大きさを検知する。そして、電流Icが下限値よりも大きい場合、スイッチング増幅制御部500は、電流Icの大きさに基づいてスイッチング増幅部601、602、、、60nをオンまたはオフし、オンされたスイッチング増幅部から出力された電圧に基づいた電流Imを出力する。一方、電流Icが下限値よりも小さい場合、スイッチング増幅制御部500は、全てのスイッチング増幅部をオフし、グランド(以下GNDと記載する。)から電流Imを出力する。
【0027】
本実施形態において、スイッチング増幅制御部500は、電流Icが下限値よりも大きい場合、入力信号のスルーレートが小さい場合は少ない数のスイッチング増幅部をオンし、スルーレートが大きい場合、スイッチング増幅制御部500はたくさんのスイッチング増幅部をオンする。例えば、スイッチング増幅制御部500は、入力信号のスルーレートが小さいとき、スイッチング増幅部601のみをオンし、電圧V1に応じたスルーレート電流Imを出力する。一方、スイッチング増幅制御部500は、入力信号のスルーレートが大きいとき、全てのスイッチング増幅部601、602、、、60nをオンし、合算した電圧Vsw=(V1+V2+、、、+Vn)に応じたスルーレートの電流Imを出力する。
【0028】
そして、本実施形態に係る電源装置200は、線形増幅部400から出力された電流Icと、スイッチング増幅制御部500から出力された電流Imとが結合された電流Ioutを出力する。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る電源装置200は、入力信号の大きさに応じて、スイッチング増幅部とGNDとを切り換え、さらに、オンするスイッチング増幅部の数を調整する。該電源装置200は、入力信号のスルーレートが小さい場合は不要なスイッチング増幅部をオフして効率を高めることができ、入力信号のスルーレートが大きい場合は、必要な数のスイッチング増幅部をオンして急峻なピークにも追随することができる。従って、高効率で、かつ波形歪の小さい電源装置200を提供することができる。
【0030】
次に上記の電源装置200を電源として備えた電力増幅装置について説明する。該電力増幅装置のブロック構成図の一例を
図2に示す。
図2において、電力増幅装置100は、電源装置200および高周波増幅器300を備え、振幅変調成分720および位相変調成分730を含む入力変調信号700を増幅して、高周波変調信号710を出力する。
【0031】
電源装置200は、
図1に示した電源装置200をそのまま適用することができ、入力信号として入力変調信号700の振幅変調成分720が入力した時、振幅変調成分720の波形に応じた出力電圧Voutを生成し、電流Icと電流Imとが結合された電流Ioutを出力する。
【0032】
高周波増幅器300は、電源装置200から出力された出力電圧Voutを電源として動作し、入力した入力変調信号700を増幅して高周波変調信号710を出力する。
【0033】
本実施形態に係る電力増幅装置100は、電源装置200から高周波増幅器300へ必要最小限の電力のみ供給されることから、効率よく高周波変調信号710を出力することができる。また、振幅変調成分720のスルーレートが大きい場合でも、急峻なピークに追随した十分な電力が電源装置200から高周波増幅器300へ供給されるため、電力増幅装置100は、高い線形性を維持することができる。従って、高効率で、かつ線形性の高い電力増幅装置100を提供することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る電源装置と、それを用いた電力増幅装置の回路図の一例を
図3に示す。本実施形態に係る電力増幅装置1は、電源装置2と電力増幅器(電源装置2の負荷)3を備える。
【0035】
電源装置2は、線形増幅部4、制御信号生成部5、スイッチング増幅部6および電流検知部7を備える。スイッチング増幅部6は、少なくとも2個以上のスイッチング増幅器801、802、、、80n(n=1、2、、、:nは2以上の自然数)および合成部9を備える。
【0036】
振幅変調成分11と位相変調成分14を含む入力変調信号10が、電源増幅装置1に入力されると、入力変調信号10は電力増幅器3に入力され、振幅変調成分11は電源装置2に入力される。線形増幅部4は、電源装置2に入力した入力変調信号10の振幅変調成分11を線形に増幅し、出力電流Icを出力する。電流検知部7は、線形増幅部4から出力された出力電流Icの流れる方向と大きさを検知し、その結果を制御信号生成部5に出力する。
【0037】
制御信号生成部5は、出力電流Icが所定の下限値よりも大きい場合、出力電流Icの大きさに基づき、HighまたはLowの制御信号51、52、、、5n(n=1、2、、、:nは2以上の自然数)を生成し、対応するスイッチング増幅器801、802、、、80nへ出力する。ここで、制御信号生成部5は、スイッチング増幅器801、802、、、80nごとに異なるしきい値を保持し、該しきい値と比較することによってHighまたはLowの制御信号を生成する。なお、n個のしきい値はいずれも上述の下限値よりも大きい。
一方、出力電流Icが下限値よりも小さい場合、制御信号生成部5は、全てLowの制御信号制御信号51、52、、、5nを生成し、対応するスイッチング増幅器801、802、、、80nへ出力する。
【0038】
スイッチング増幅器801、802、、、80nは、Highの制御信号を受信した場合にオン動作し、Lowの制御信号を受信した場合にオフする。オン動作になったスイッチング増幅器は、電源電圧V1、V2、、、Vnの電源でそれぞれ動作し、合成部9に出力パルス電圧を出力する。
【0039】
合成部9は、各スイッチング増幅器から出力された出力パルス電圧を加算し、加算した電圧値に応じたスルーレートの電流Imを出力する。
【0040】
電源装置2は、合成部9の出力端子の出力端と線形増幅部4の出力端子の出力端とを結合し、両者からの出力電流Imおよび出力電流Icを加算して、負荷である電力増幅器3に出力電流Ioutを供給する。
【0041】
電力増幅器3は、振幅変調成分11と位相変調成分14とを含む入力変調信号10の振幅変調成分11が入力した時の電源装置2からの出力電圧(Vout)12を電源として動作し、入力変調信号10を増幅して、高周波変調信号13を出力する。また、電力増幅器3は、電源装置の出力電圧(Vout)12を電源として、A級やAB級などの線形増幅、もしくはE級、F級、D級などのスイッチングモード増幅を行い、振幅と位相が変調された高周波変調信号13を出力する。このような一連の動作で入力信号の大きさに応じて出力電圧を変化させる。
【0042】
以下、本実施形態の電源装置の動作について、2つのスイッチング増幅器と合成部で構成される例を用いて詳細に説明する。
図4は、スイッチング増幅器が2つで構成される電源装置のブロック図の一例である。また、下限値<0、n個のしきい値>0、とする。
【0043】
本実施形態の電源装置15は、出力端Voutにおいて、Ic=Iout−Imの関係が成り立つ。線形増幅部17から電流が流れ出すとき(Ic>0)、すなわち、電流Icが下限値よりも大きい場合、制御信号生成部18は、振幅変調成分23のスルーレートに応じてスイッチング増幅器201、202をオンして、電源V1とV2に導通させる。つまり、振幅変調成分23のスルーレートが小さいときは、スイッチング増幅器201のみを導通させ、スイッチング電圧Vsw=V1が出力される。一方、振幅変調成分23のスルーレートが大きいときは、スイッチング増幅器201と202の両方を導通させ、スイッチング電圧Vsw=V1+V2が出力される。
【0044】
そして、電力増幅器16への出力電流Ioutに対して、出力電流Imが過剰に供給されると、電流Icが徐々に減少する。そして、電流Icが下限値よりも小さくなった時、制御信号生成部18は、スイッチング増幅器201、202の両方を非導通にする。そして、スイッチングコンバータの原理により、GNDから電力増幅器16に電流が供給される。
【0045】
本実施形態の電源装置15では、出力電流Icの流れる大きさに応じて、上記の動作を繰り返す自励発振を行う。そして、振幅変調成分23のスルーレートに応じて、出力電流Imのスルーレートが切り替わり、スイッチング周波数が常に最適に調整される。そのため、スルーレートの低い信号に対して不必要に高速なスイッチング動作をしないので、それに伴うスイッチングノイズの増加やスイッチング損失の増加による効率劣化が抑制される。また、スルーレートの高い信号に対しては、高いスルーレートの出力電流Imが供給されるため、急峻なピークにも追随でき、効率の低い線形増幅部17の電流増加を抑制することができる。
【0046】
このように、スルーレートが変化する入力信号に対して、高スルーレートの領域では、スイッチング増幅部26からの電流スルーレートが高くなり、低スルーレートの領域ではスイッチング増幅部26からの電流のスルーレートが低くなる制御を行う。そのため、スイッチング周波数を入力信号のスルーレートに合わせて切り替えることができる。
【0047】
その結果、高スルーレートに合わせた場合でも、低スルーレートの領域でスイッチング周波数が不必要に高くなりすぎて、スイッチングノイズやスイッチング損失が増加し、電力効率が低下することを防ぐことができる。また、逆に、低スルーレートに合わせた場合でも、高スルーレートの領域でスイッチング電流が不足し、線形増幅部17の電流が増加して電力効率が劣化したり、線形増幅部17の電流不足によって波形歪が発生したりすることを回避することができる。これは、常に最適なスイッチング増幅部26の電流と線形増幅部17の電流の関係を維持できるためである。
【0048】
さらに、一般的に、スイッチング増幅部は、耐圧及びオン抵抗と、高速動作との間にトレードオフの関係がある。本実施形態に係る電源装置において生成される出力電圧Voutは、各スイッチング増幅器の電圧の和(=V1+V2+、、、+Vn)になるため、各々のスイッチング増幅器には、高い電圧がかからない。その結果、スイッチング増幅器のスイッチング速度を高速化しやすく、入力信号波形へ追随する精度を高めることができる。また、オン抵抗が低く、電流と電圧のオーバーラップのない理想的なスイッチング動作をしやすいので、電力効率を高くできる。さらに、電流検知部は共通に1つ設ければよいので、電流検知部による損失を必要最低限に抑制することができる。
このように、本実施形態の電源装置15を電源として電力増幅装置14に備えることにより、電力増幅器16には、入力変調信号の振幅の変化に応じて常に必要最小限の電力のみが供給される。また、入力変調信号の波形を正確に追随できるので、電力増幅器16は、波形歪の発生や混入を防ぐことができる。そのため、一定電圧で動作させた場合に比べ、電力増幅装置全体として、高い電力効率を実現することができる。さらに、本実施形態の電力増幅装置14の出力信号は、電源装置15の出力電圧Voutが入力信号に精度良く追随できるため、高い線形性を維持することができる。
【0049】
すなわち、上述の構成を適用することにより、高効率で、かつ波形歪の小さい電源装置と、それを電源として用いた高効率で、かつ線形性の高い電力増幅装置を得ることができる。
【0050】
本実施形態では、スイッチング増幅器が2つのスイッチング増幅器で構成される場合を説明したか、3つ以上のスイッチング増幅器を有する場合でも同様の効果が得られる。
【0051】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る電源装置の回路図の一例を
図5に示す。本実施形態に係る電源装置は、線形増幅部33、制御信号生成部35およびスイッチング増幅部27を備える。
【0052】
線形増幅部33は、ボルテージフォロアを構成するオペアンプ34から構成される。制御信号生成部35は、複数のヒステリシスコンパレータ361、362、、、363n(n=1、2、、、:nは2以上の自然数)から構成される。
【0053】
スイッチング増幅部27は、n個(n=1、2、、、:nは2以上の自然数)のスイッチング増幅器32と、ダイオード300、301、、、、30nと、インダクタ31と、第二の直流電源Voffsetとを有する。
【0054】
各スイッチング増幅器32は、スイッチング素子281、282、、、28n(n=1、2、、、:nは2以上の自然数)と、トランス291、292、、、29nと、第一の直流電源V1、V2、、、Vnとを有する。そして、トランス291の一次側コイルの一端に第一の直流電源V1が接続され、トランス291の一次側コイルの他の一端と接地との間にスイッチング素子281が配置されている。さらに、トランス291の二次側コイルの第一の端子は、第二の直流電源Voffsetに接続されている。そして、ダイオード300、301、、、、30nの一端は、各スイッチング増幅器の二次側コイルに接続されており、ダイオードの他の一端は、インダクタ31に接続されている。
【0055】
次に本実施形態に係る電源装置の動作について説明する。以下、ヒステリシスコンパレータとスイッチング増幅器が2個で構成される場合について説明する。
図6は、ヒステリシスコンパレータとスイッチング増幅器がそれぞれ2個で構成される電源装置の回路図の一例である。ここで、各スイッチング増幅器の電圧とその電圧の和の関係は、V1=V2=V0/2、Voffset=0Vとする。
【0056】
図6において、振幅変調成分が、ボルテージフォロアを構成するオペアンプ41に入力すると、オペアンプ41は該振幅変調成分をオペアンプ電流Icに変換して出力する。オペアンプ41から出力されたオペアンプ電流Icは、電流検知部48を介して、ヒステリシスコンパレータ421と422に入力される。オペアンプ電流Icが所定の下限値よりも大きい場合にHigh、小さい場合にLowとなるように極性を選ぶことにより、ヒステリシコンパレータ421、422の出力は、入力した振幅変調成分の強度に応じたパルス幅変調信号になる。
【0057】
図7は、本実施形態の電源装置において、ヒステリシスコンパレータ421、422のしきい値の関係を示す図の一例である。
【0058】
ヒステリシスコンパレータ421、422の低電圧側と高電圧側のしきい値をそれぞれ、(VL1、VH1)、(VL2、VH2)とすると、しきい値はそれぞれ、VH2>VH1、VL2>VL1を満たすように設定される。そして、上述の所定の下限値は、VL1よりも小さい値に設定される。以下の説明では、簡単のため下限値=VL1、VH1=VL2とするが、必ずしもこの条件を満たす必要はない。
【0059】
入力した振幅変調成分のスルーレートが低い場合の電流の流れとその電圧波形を、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8は、振幅変調成分のスルーレートが低い場合の電流の流れを示すスイッチング増幅部42の回路図の一例であり、
図9は、動作時の電流、電圧波形の一例である。
図9(a)はオペアンプ41から出力されたオペアンプ電流Ic、(b)はダイオード451のカソード位置におけるスイッチング電圧Vsw、(c)は電力増幅器49に供給されるスイッチング電流Imの特性の一例である。
【0060】
図9(a)に示すようにオペアンプ電流Icが増加し、ヒステリシスコンパレータ421の高電圧側しきい値VH1に達すると、ヒステリシスコンパレータ421から出力されるパルス幅変調信号はHighになる。このHighのパルス幅変調信号は、
図8に示すように、例えばMOSFETで構成されるスイッチング素子431のゲートに入力され、スイッチング素子431をオン(導通状態)にする。スイッチング素子431の一方の端子は接地され、他方の端子はトランス441の1次側コイルを介して電源V1=V0/2に接続される。スイッチング素子431を介して、電源V1からトランス441の1次側に電流が流れる。
【0061】
トランス441に蓄積した電力は、2次側コイルに伝達され、2次側電源Voffset(GND)からトランス441の2次コイルとダイオード451を介して電源装置の負荷である電力増幅器49の方向に向かって電流Im_on1が流れる。この時、トランス441の1次側コイルと2次側コイルの巻き数比を1:1とすると、
図9(b)に示すようにダイオード451のカソードには、Vsw=V0/2の電圧が生じる。さらにスイッチング電流Imは、インダクタ46を介して電力増幅器49に供給される。
【0062】
スイッチング電流Im_on1のスルーレートは、インダクタ46のインダクタンスをL0とすると、およそ、以下のように与えられる。
【0063】
本実施形態の電源装置の出力端子Voutでは、Ic=Iout−Imが成立するので、電力増幅器49に流れる出力電流Ioutに対してスイッチング電流Imが過剰になると、オペアンプ電流Icは、オペアンプ41に流れ込む方向に流れ始める。そして、
図9(a)において、オペアンプ電流Icがヒステリシスコンパレータ421の低電圧側のしきい値VL1(=下限値)よりも小さくなると、ヒステリシスコンパレータ421の極性は逆転し、スイッチング素子431はオフ(非導通状態)になる。この時、トランス441の2次側では、インダクタンス46を流れる電流を維持するために、GNDからダイオード450を介して電力増幅器49に向かって電流Im_offが流れる。また、ダイオード450のカソード位置におけるスイッチング電圧Vswは、スイッチング素子431、432がオフ(非導通状態)であるため、
図9(b)に示すように0Vになる。このように、振幅変調成分のスルーレートが低い場合は、上記のスイッチング動作を繰り返し、
図9(c)に示すように、電力増幅器49には、Im_on1とIm_offとが交互に供給される。
【0064】
次に、本実施形態のスルーレートが高い場合の電流の流れとその電圧波形を、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10は、振幅変調成分のスルーレートが高い場合の電流の流れを示すスイッチング増幅部42の回路図の一例であり、
図11は、動作時の電流、電圧波形である。
図11(a)はオペアンプ電流Ic、(b)はスイッチング電圧Vsw、(c)はスイッチング電流Imの特性を示す。
【0065】
振幅変調成分のスルーレートが小さく、それに伴う出力電流Ioutのスルーレートが、前述の式1で与えられるスイッチング電流Imのスルーレートよりも小さい間は、オペアンプ電流Icは、
図11(a)に示すように、ヒステリシスコンパレータ422の高電圧側しきい値VH2を超えないので、スイッチング素子442は非導通のままである。したがって、トランス441に直列に接続されたトランス442はオープン状態で、電流は流れない。
【0066】
一方、振幅変調成分のスルーレートが大きく、それに伴う出力電流Ioutのスルーレートが、式1で与えられるスイッチング電流Im_on2のスルーレートよりも大きくなると、オペアンプ電流Icは、
図11(a)に示すように、ヒステリシスコンパレータ422の高電圧側しきい値VH2よりも大きくなる。この場合、
図10に示すように、ヒステリシスコンパレータ421に加えて422から出力されるパルス幅変調信号もHighになり、スイッチング素子431と432の両方がオン(導通状態)になる。
【0067】
このとき、スイッチング素子432を介して、電源V2=V0/2からトランス442の1次側に電流が流れ、蓄積した電力は、2次側コイルに伝達される。トランス442の2次側コイルの一端は、トランス441の2次側コイルの一端に接続されていることから、GNDからトランス441の2次側コイル、トランス442の2次側コイルおよびダイオード452を介して負荷である電力増幅器49の方向に向かって電流Im_on2が流れる。この時、トランス441および442の1次側と2次側の巻き数比を1:1とすると、
図11(b)に示すように、ダイオード452のカソードには、Vsw=V0/2+V0/2=V0の電圧が生じる。また、ダイオード451には逆向きの電圧がかかるので、電流は流れない。
【0068】
スイッチング電流Im_on2は、インダクタ46を介して電力増幅器49に供給される。この時、Im_on2のスルーレートは、およそ、以下のように与えられる。
【0069】
本実施形態の電源装置の出力端子Voutでは、Ic=Iout−Imが成立するので、出力電流Ioutと同程度までスイッチング電流Imが供給されると、オペアンプ電流Icは減少し始める。オペアンプ電流Icが、ヒステリシスコンパレータ422の低電圧側のしきい値VL2よりも小さくなると、ヒステリシスコンパレータ422の極性は逆転し、スイッチング素子432はオフ(非導通状態)になる。オペアンプ電流Icが、ヒステリシスコンパレータ421の低電圧側のしきい値VL1よりも依然として高ければ、スイッチング素子431はオンしたままで、スイッチング電圧Vswは、
図11(b)に示すようにV0/2になる。
【0070】
この場合は、
図8に示したように、電流Im_on1がトランス441の2次側コイルとダイオード451を介して電力増幅部49に供給される。さらに、オペアンプ電流Icが減少し、ヒステリシスコンパレータ421の低電圧側のしきい値VL1よりも小さくなると、スイッチング素子431もオフし、スイッチング電位Vswは、
図11(b)に示すように0Vになる。この時、トランス441と442の2次側では、インダクタ46を流れる電流を維持するために、GNDからダイオード450を介して電力増幅部49に電流Im_offが流れる。
【0071】
上記のように、入力信号のスルーレートに応じたスイッチング動作を繰り返し、
図11(c)に示すように、Im_on1、Im_on2、Im_offのいずれかのスイッチング電流Imが電力増幅器49に供給される。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る電源装置は、振幅変調成分のスルーレートに応じて、出力電流Imのスルーレートが切り替わる。スルーレートの低い信号に対して不必要に高速なスイッチング動作をしないので、それに伴うスイッチングノイズの増加やスイッチング損失の増加が抑制される。また、スルーレートの高い信号に対しては、高いスルーレートの出力電流Imが供給されるため、急峻なピークにも追随できる。
【0073】
さらに、i番目のヒステリシスコンパレータの低電圧側しきい値をVLi、高電圧側しきい値をVHiとした時(i=1,2、、、n−1:nは2以上の自然数)、VH(i+1)>VHiおよびVL(i+1)>VLiとすることにより、振幅変調成分のスルーレートに応じて段階的にスイッチング増幅器32が切り替わる。この場合、スイッチング増幅器32の切り替え時に、過渡的に電源装置の出力が不安定になることを抑制することができる。
【0074】
本実施形態の電源装置に、WCDMA(登録商標)ダウンリンク信号の包絡線(振幅信号)を入力した場合について説明する。本実施形態に係る電源装置の動作波形の一例を
図12(a)〜(c)に示す。なお、比較例1として、背景技術で説明した非特許文献3の電源装置(
図16)の動作波形の一例を
図13(a)〜(c)に示す。さらに、比較例2として、
図16の電源装置においてインダクタ83のインダクタンスを2倍にした電源装置の動作波形の一例を
図14(a)〜(c)に示す。
【0075】
ここで、本実施形態に係る電源装置のインダクタ46および比較例1の電源装置のインダクタ83のインダクタンスを共にL0=0.6μH、比較例2の電源装置のインダクタのインダクタンスをL0=1.2μHとする。また、電源電圧をV0=15Vとする。
【0076】
先ず、比較例1(
図13、
図16)について説明する。
図16において、非特許文献3(比較例1)の線形増幅部70から電流が流れ出るとき、パルス幅変調信号79がHighとなる。この時、
図13(c)に示すように、スイッチング電圧(Vsw)82は、V0(=15V)になる。スイッチング素子80からの電流は、インダクタ83を通過することにより積分され、スイッチング周波数の成分が除去されたスイッチング電流(Im)84になる。
【0077】
一方、電力増幅器73に流れる出力電流Ioutに対してスイッチング電流Imが過剰になると、オペアンプ電流Icは減少し始める。そして、オペアンプ電流Icが所定のしきい値よりも小さくなると、ヒステリシスコンパレータ78の極性が逆転してパルス幅変調信号79がLowになり、スイッチング素子80はオフ(非導通状態)になる。この時、インダクタ83を流れる電流を維持するために、グランド(以下GNDとする)からダイオード81を介して電力増幅器73に向かって電流Imが流れる。また、
図13(c)に示すように、スイッチング電圧(Vsw)82は0Vになる。
【0078】
上記のスイッチング動作を繰り返し、V0とGNDとから交互に電力増幅器73にスイッチング電流(Im)84が供給される。スイッチング電流(Im)84にはスイッチングによる誤差成分が含まれているが、線形増幅部70によって電圧補正され、
図13(c)に示す出力電圧85は、振幅変調成分50の波形を正確に再現、増幅して、電力増幅器73に供給される。
【0079】
ここで、比較例1の電源装置の効率を高めるためには、スイッチング素子80のスイッチング周波数は振幅変調成分の周波数帯域に比べできるだけ高くし、スイッチング電流(Im)84に含まれるスイッチング誤差を低減して、オペアンプ75を流れる電流を低減することが望ましい。具体的にはスイッチング電流(Im)84のスルーレートを、振幅変調成分に伴う出力電流Ioutのスルーレートよりも大きくすることが望ましい。
【0080】
しかしながら、この電源装置を、例えば携帯電話基地局のように大電力の装置に適用する場合、電源電圧V0は数10Vになり、このような大振幅信号を高速、低損失でスイッチングすることは一般に困難である。また、スイッチング誤差を補正するためには、オペアンプ75で構成される線形増幅部70の帯域をスイッチング周波数よりも十分高く設定する必要があるが、数10V振幅で数10MHzの帯域を確保することはやはり容易ではない。
【0081】
そこで、スイッチング周波数を下げるために、比較例2の電源装置では、インダクタ83‘の値を2×L0(=1.2μH)とする。比較例2の電源装置の動作について、
図14(a)〜(c)を用いて説明する。
【0082】
図14(c)に示すように、スイッチング電圧(Vsw)87のスイッチング周波数は、
図13に示した比較例1(L0=0.6μH)のスイッチング電圧(Vsw)82のスイッチング周波数と比べて約1/2に低減している。また、
図14(a)に示す振幅変調成分50のスルーレートが低い領域では、適度なスイッチング周波数になっているが、スルーレートが大きいピークの部分では、
図14(b)に示すスイッチング電流(Im)89のスルーレートが信号の振幅変調成分50のスルーレートそれよりも低くなっている。
【0083】
この場合、ピークの部分では、振幅変調成分50の波形を再現するために、
図14(b)に示すように、線形増幅部70‘から大きなオペアンプ電流(Ic)90を供給する必要があり、電源装置全体の効率が低下する。また、線形増幅部70’を構成するオペアンプ75‘の電流供給能力が不十分だと、ピークの部分の波形を再現できなくなり、
図14(c)に示す出力電圧91に波形歪が生じる。
【0084】
一方、本実施形態に係る電源装置は、
図12(a)に示す入力変調信号の振幅変調成分50のスルーレートが低い領域では、スイッチング素子431のみがオンするので、
図12(c)に示すスイッチング電圧(Vsw)55のパルス高は、V0/2(=7.5V)となる。V0(=15V)で動作する比較例1および比較例2と比較すると、スイッチング電圧(Vsw)55が1/2になるため、同じL0(=0.6μH)でありながら、前出の式1で与えられるスイッチング電流(Im)53のスルーレートは、
図12(b)に示すように、約1/2となる。その結果、平均的なスイッチング周波数も約1/2となり、比較例1の課題である、スイッチング速度が高すぎることによって生じるスイッチング素子のロスの増加や、オペアンプの帯域不足によって生じるノイズの増加を抑制することができる。
【0085】
一方、振幅変調成分50のスルーレートが高いピーク領域では、スイッチング素子431と432が共にオンになり、
図12(c)に示すように、スイッチング電圧(Vsw)55はV0(=15V)となる。このとき、前出の式2で与えられるスイッチング電流(Im)53のスルーレートは、
図12(b)に示すように、大きくなる。その結果、急峻なピークに対しても、スイッチング電流(Im)53が追随できるので、
図12(b)に示すように、振幅変調成分50のピーク領域においてオペアンプ電流(Ic)54の増加が抑制され、それに伴う効率の劣化や歪特性の劣化も抑制される。
【0086】
言い換えると、本実施形態に係る電源装置では、振幅変調成分50のスルーレートに応じて、スルーレートが小さいときは、等価的に出力インダクタンスが2×L0に、スルーレートが大きいときは、出力インダクタンスがL0に切り替わり、常に最適なスイッチング電流とスイッチング周波数を提供することが可能となる。
【0087】
このようにして得られた
図12(c)に示す出力電圧56は、振幅変調成分50の波形を高い精度で再現し、かつ高い電力効率で、電力増幅器に電力を供給することができる。また、得られた出力電圧を電力増幅器の電源として用いることによって、電源装置からは、入力変調信号の振幅に応じて最小限の電力しか供給されないため、電力増幅器は常に効率の高い飽和付近で用いることができ、電源装置と電力増幅器を合わせたシステム全体の電力効率も向上することが可能となる。
【0088】
尚、ここでは、スイッチング増幅器が2つの場合について説明したが、スイッチング増幅器が、3つ以上になっても基本的な原理は同じであるため、同様の効果が得られる。
【0089】
また、ここでは、V1=V2=V0/2、Voffset=0Vの場合を用いて説明したが、スイッチング増幅器に与える電圧V1、V2、、、Vnと、トランスの2次側コイルに与えるオフセット電圧Voffsetは、システムに応じて、任意に設計することができる。例えば、WCDMA(登録商標)ダウンリンク信号やOFDM信号では、PAPRが大きく、平均電力に対して大きなピーク電力が発生する頻度は低い。このような信号に対しては、V1+Voffsetを平均電力付近に設定することにより、ほとんどの時間帯でスイッチング素子431のみが動作し、たまにスイッチング素子432が動作する。このようにすることによって、スイッチングに伴う損失を平均的に減らすことができるので、システム全体の効率も向上する。
【0090】
また、トランス441、442、、、44nの巻き数比は、システムに応じて任意に設計することができる。
【0091】
(第3の実施形態の変形例)
第3の実施形態について説明する。本実施形態の変形例に係る電源装置の構成を示す回路図の一例を
図15に示す。
図15は、第3の実施形態で説明した
図5の線形増幅部33、制御信号生成部35および電流検知部38に対応する。
【0092】
図15において、線形増幅部57は、オペアンプ58とその出力に接続された第1のバッファアンプ59からなり、第1のバッファアンプ59の出力から、オペアンプ58の入力に負帰還がかかったボルテージフォロア構成になっている。電流検知部60は、オペアンプ58の出力に第1のバッファアンプ59と並列に接続された第2のバッファアンプ61からなり、第2のバッファアンプ61は、第1のバッファアンプ59のサイズをスケーリングした構成を持ち、第1のバッファアンプ59から出力されるオペアンプ電流Icに比例して、かつオペアンプ電流Icよりも十分小さい出力電流Ic’を出力する。
【0093】
出力電流Ic’は、制御信号生成部62に入力される。制御信号生成部62では、出力電流Ic’を、抵抗素子等の電流−電圧変換器63で電圧に変換し、ヒステリシスコンパレータ641、642、、、64n(nは2以上の自然数)の一方の入力端子に入力する。ヒステリシスコンパレータ641、642、、、64nの他方の入力端子は、参照電圧VrefとGND間に直列に接続された(n+1)個の抵抗素子651、652、、、65n+1で抵抗分割した、n個の接点にそれぞれ接続される。
【0094】
i番目のヒステリシスコンパレータの低電圧側しきい値をVLi、高電圧側しきい値をVHiとした時、(VHi>VLi、i=1、2、、、n−1:nは2以上の自然数)、VH(i+1)>VHiとVL(i+1)>VLiが成り立つようにすると、線形増幅部57から出力されたオペアンプ電流Icが大きいほど、Highを出力するヒステリシスコンパレータの数が増える。ヒステリシスコンパレータ641、642、、、64nから出力されたHighまたはLowのパルス幅変調信号は、
図5に示したスイッチング増幅部27へ入力される。それ以降の基本動作は、
図6から
図11を用いて説明した第3の実施形態の電源装置の動作と同様である。
【0095】
このような構成をとることにより、負荷に供給されるオペアンプ電流Icが流れる主経路に、第2および第3の実施形態に示した電流検知部を設ける必要がなくなる。電流検知部には、電位降下による損失を最小限にするため、一般的に1Ω以下の小さい抵抗が用いられるが、抵抗が小さくても電源装置の出力インピーダンスが増大する。従って、オペアンプ電流Icが流れる主経路に電流検知部を配置しないことが望ましい。
【0096】
また、小さな抵抗はサイズが大きく、精度良く実現することが困難であるため、サイズやばらつきが問題になる。一方、本実施形態に係る電源装置において、電流検知用のバッファアンプ61や電流−電圧変換器63は主経路に配置されないと共に電流検知専用なので、設計のマージンを大きくできる。
【0097】
以上、本発明の好適実施形態について説明したが、単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。本発明は、要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【0098】
この出願は、2010年5月18日に出願された日本出願特願2010−113793を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。