(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
本実施形態では車両用インバータ装置に具体化しており、車両用インバータ装置の電気的構成について
図1を用いて説明する。
【0015】
図1に示すように、車両用インバータ装置10は、三相インバータ装置であり、インバータ回路20を備えている。インバータ回路20は、U相上アーム21とU相下アーム22とV相上アーム23とV相下アーム24とW相上アーム25とW相下アーム26を有する。
【0016】
各アーム21〜26は、それぞれ、1つのアームが、互いに並列接続した複数の半導体スイッチング素子にて構成されている。本実施形態では、並列接続した2つの半導体スイッチング素子Q1,Q2にて1つのアームが構成されている。また、各半導体スイッチング素子Q1,Q2には、それぞれ帰還ダイオードD1,D2が逆並列接続されている。各アーム21〜26は、それぞれ
図3に示すようにモジュール化されているとともに、アーム21〜26も
図2に示すようにモジュール化(一体化)されている。
【0017】
各半導体スイッチング素子Q1,Q2には、IGBT(絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ)が使用されている。なお、半導体スイッチング素子としてパワーMOSFETを使用してもよい。半導体スイッチング素子としてIGBTを用いた場合、ゲート端子、コレクタ・エミッタ端子を備えており、ゲート端子が素子の制御端子となり、コレクタ・エミッタ端子が素子の入出力端子となる。また、半導体スイッチング素子としてパワーMOSFETを用いた場合、ゲート端子、ソース・ドレイン端子を備えており、ゲート端子が素子の制御端子となり、ソース・ドレイン端子が素子の入出力端子となる。
【0018】
インバータ回路20において、U相上アーム21およびU相下アーム22、V相上アーム23およびV相下アーム24、W相上アーム25およびW相下アーム26がそれぞれ直列に接続されている。U相上アーム21、V相上アーム23およびW相上アーム25が正極入力端子(P端子)と接続され、正極入力端子(P端子)が車載バッテリの正極と接続される。また、U相下アーム22、V相下アーム24およびW相下アーム26が負極入力端子(N端子)と接続され、負極入力端子(N端子)が車載バッテリの負極と接続される。
【0019】
U相上アーム21とU相下アーム22の間の接続点はU相出力端子に接続されている。また、V相上アーム23とV相下アーム24の間の接続点はV相出力端子に接続されている。さらに、W相上アーム25とW相下アーム26の間の接続点はW相出力端子に接続されている。U相出力端子、V相出力端子およびW相出力端子は、車載モータとしての3相交流モータに接続される。
【0020】
インバータ回路20の各アームを構成する半導体スイッチング素子Q1,Q2のゲート端子と駆動回路30とが接続され、駆動回路30にはコントローラ40が接続されている。駆動回路30からゲート電圧信号が半導体スイッチング素子Q1,Q2のゲート端子に送られる。駆動回路30は駆動回路基板31に搭載されている。コントローラ40は駆動回路30を介して各半導体スイッチング素子Q1,Q2をスイッチングさせる。つまり、インバータ回路20はバッテリから供給される直流を適宜の周波数の3相交流に変換してモータの各相の巻線に供給する。即ち、各アームを構成する半導体スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング動作によりモータの各相の巻線が通電されてモータを駆動することができる。
【0021】
半導体スイッチング素子Q1,Q2をスイッチングさせる際、各アーム21〜26において、並列接続した2つの半導体スイッチング素子Q1,Q2は同時にオン・オフされ、電流が分流される。
【0022】
次に、車両用インバータ装置10の構造について、
図2〜7を用いて説明する。
なお、
図2〜7において、水平面を、直交するX,Y方向で規定するとともに、上下方向をZ方向で規定している。
【0023】
図3に示すように、半導体モジュールMsは信号コネクタ60を備える。信号コネクタ60において、信号配線材保持部材としての樹脂台61に信号配線材としての金属製の信号ピン62,63が埋設されている。信号ピン62,63の一端が樹脂台61から露出して半導体スイッチング素子Q1,Q2のゲート端子とボンディングワイヤW1,W2にて接続されるワイヤボンド部62a,63aとなっている。また、信号ピン62,63の他端が樹脂台61から突出してコネクタ接続部62b,63bとなっている。そして、信号ピン62,63を介して駆動回路基板31に半導体スイッチング素子Q1,Q2のゲート端子が接続される。また、U相上アーム21、U相下アーム22、V相上アーム23、V相下アーム24、W相上アーム25、W相下アーム26の各アームがそれぞれ半導体モジュールMsで構成され、6つの半導体モジュールMsと6つの信号コネクタ60を用いてインバータモジュールMiを構成している。
図2に示すように、各アーム21〜26を構成する各半導体モジュールMsが整列して配置されている。具体的には、X方向に半導体モジュールMsが2つ配列されるとともにY方向に半導体モジュールMsが3つ配列されている。
【0024】
図2に示すように、車両用インバータ装置10は、駆動回路基板31と、水冷式の冷却器50を備えている。水冷式の冷却器50は水平に位置し、入口パイプP1から冷媒としての冷却水が冷却器50の内部に導入されて出口パイプP2から排出されるようになっている。
【0025】
冷却器50の上面には、絶縁部材としてのセラミック基板70が配置されている。セラミック基板70の下面には金属層71が形成されているとともに、セラミック基板70の上面には配線層72が形成されている。具体的には、例えば、セラミック基板70はAlN基板よりなり、金属層71はアルミ層よりなり、配線層72はアルミ層とその表面のNiめっき層よりなる。冷却器50の上面に金属層71がロウ付け等により接合されている。
【0026】
図3を用いてU相上アーム21について説明する。他のアーム22〜26についても同様な構成となっている。
図3において、冷却器50の上面においてセラミック基板70に接近した位置に信号コネクタ60が固定されている。信号コネクタ60は、複数(2つ)の半導体スイッチング素子Q1,Q2に共通の樹脂台61に半導体スイッチング素子Q1,Q2毎の信号ピン62,63が埋設され、この半導体スイッチング素子Q1,Q2毎の信号ピン62,63のワイヤボンド部62a,63aが階段状に配置されている。
【0027】
信号コネクタ60の上方には駆動回路基板31が配置され、駆動回路基板31は水平に位置している。なお、コントローラ40を搭載した基板は駆動回路基板31と多段に、即ち、駆動回路基板31の上に重ねて配置される。
【0028】
図3に示すように、配線層72の上面には、半導体スイッチング素子(チップ)Q1および帰還ダイオード(チップ)D1が接近する位置に、はんだ付け等により接合されている。同様に、配線層72の上面には、半導体スイッチング素子(チップ)Q2および帰還ダイオード(チップ)D2が接近する位置に、はんだ付け等により接合されている。これにより、冷却器50の外面(上面)にセラミック基板70を介して半導体スイッチング素子Q1,Q2および帰還ダイオードD1,D2が固定され、半導体スイッチング素子Q1,Q2および帰還ダイオードD1,D2は冷却器50に熱的に結合している。
【0029】
半導体スイッチング素子(チップ)Q1,Q2の上面と帰還ダイオード(チップ)D1,D2の上面とがバスバー80に、はんだ付け等により接合されている。バスバー80の延設部81が、半導体スイッチング素子Q1,Q2のエミッタ端子から延びるU相出力端子として延設されている。つまり、半導体スイッチング素子Q1,Q2のエミッタ端子から延びる入出力配線材としてのバスバー80の延設部81が延設されている。
【0030】
図4,5,6に示すように、信号コネクタ60は、樹脂よりなる樹脂台61に信号配線材としての信号ピン62,63がそれぞれ5本ずつ埋設されている。
図3(b)に示すように樹脂台61は全体形状としてL字状をなし、水平部61aとその一端部から上方に延びる立設部61bからなる。さらに、樹脂台61の水平部61aが階段状に形成され、階段部の第1段目の水平部64において5本の信号ピン62の一端側が露出してワイヤボンド部62aとなり、各信号ピン62における他端側が樹脂台61の立設部61bの上面から突出してコネクタ接続部62bとなっている。また、階段部の第2段目の水平部65において5本の信号ピン63の一端側が露出してワイヤボンド部63aとなり、各信号ピン63における他端側が樹脂台61の立設部61bの上面から突出してコネクタ接続部63bとなっている。
【0031】
5本の信号ピン62のうちの1本がゲート電圧信号用であり、2本が温度検出用ダイオードのアノード用およびカソード用であり、残りが電流センス用とエミッタ端子である。
図5,6に示すように、信号線を構成する信号ピン62はL状に屈曲形成されている。即ち、X方向とZ方向に延びている。信号ピン62の一端は樹脂台61の階段部の第1段目の水平部64においてワイヤボンド部62aとして露出し、ボンディングワイヤW1により半導体スイッチング素子(チップ)Q1のゲート端子等と接続される。一方、信号ピン62の上端が樹脂台61の上面から突出してコネクタ接続部62bとして上方に延びている。そして、コネクタ接続部62bは駆動回路基板31を貫通して、コネクタ接続部62bと駆動回路基板31とは、はんだ付け等により接続される。
【0032】
同様に、5本の信号ピン63のうちの1本がゲート電圧信号用であり、2本が温度検出用ダイオードのアノード用およびカソード用であり、残りが電流センス用とエミッタ端子である。
図5,6に示すように、信号線を構成する信号ピン63はL状に屈曲形成されている。即ち、X方向とZ方向に延びている。信号ピン63の一端は樹脂台61の階段部の第2段目の水平部65においてワイヤボンド部63aとして露出し、ボンディングワイヤW2により半導体スイッチング素子(チップ)Q2のゲート端子等と接続される。一方、信号ピン63の上端が樹脂台61の上面から突出してコネクタ接続部63bとして上方に延びている。そして、コネクタ接続部63bは駆動回路基板31を貫通して、コネクタ接続部63bと駆動回路基板31とは、はんだ付け等により接続される。
【0033】
ワイヤボンド部62a,63aの幅は、ワイヤボンドの為に、コネクタ接続部62b,63bよりも幅広に形成されている。
信号コネクタ60において、半導体スイッチング素子Q1,Q2に対応して設けられた信号ピン62,63のコネクタ接続部62b,63bが交互にY方向に一列に配列されている。よって、信号ピン62,63のコネクタ接続部62b,63bと駆動回路基板31との結線が容易となる。即ち、駆動回路基板31におけるコネクタ接続部62b,63bと電気的に接続する導体パターンを容易に引き回すことができる。
【0034】
また、
図5,6に示すように、信号ピン63におけるZ方向に延びる部位に、配線長の均等化のための曲げ部66を有する。曲げ部66はコ字状に屈曲形成されている。
さらに、
図3に示すように、配線層72の上面にはバスバー82が、はんだ付け等により接合されている。入出力配線材としてのバスバー82が、並列接続した2つの半導体スイッチング素子Q1,Q2における各々のコレクタ端子から延びる正極入力端子(P端子)として延設されている。バスバーの延設部81およびバスバー82は、X方向に延設されている。よって、ゲート端子の信号ピン62,63のコネクタ接続部62b,63bの配列方向であるY方向とは直交している。このように、半導体スイッチング素子Q1,Q2の入出力端子に接続される入出力配線材としてのバスバーの延設部81およびバスバー82がコネクタ接続部62b,63bの配列方向(Y方向)と交差する方向(X方向)に延設されている。
【0035】
なお、
図2において、U相下アーム22においては、U相上アーム21の半導体スイッチング素子Q1,Q2のエミッタ端子と接合されたバスバー80がU相下アーム22の半導体スイッチング素子Q1,Q2のコレクタ端子と接続されている。また、U相下アーム22の半導体スイッチング素子Q1,Q2のエミッタ端子から負極入力端子(バスバー)が延設されている。以下同様に、V相上アーム23においては半導体スイッチング素子Q1,Q2のエミッタ端子から延びるV相出力端子としてバスバーが延設されるとともに半導体スイッチング素子Q1,Q2のコレクタ端子から延びる正極入力端子(バスバー)が延設されている。V相下アーム24においては、V相上アーム23の半導体スイッチング素子Q1,Q2のエミッタ端子と接合されたバスバーがV相下アーム24の半導体スイッチング素子Q1,Q2のコレクタ端子と接続されている。また、V相下アーム24の半導体スイッチング素子Q1,Q2のエミッタ端子から負極入力端子(バスバー)が延設されている。W相上アーム25においては半導体スイッチング素子Q1,Q2のエミッタ端子から延びるW相出力端子としてバスバーが延設されるとともに半導体スイッチング素子Q1,Q2のコレクタ端子から延びる正極入力端子(バスバー)が延設されている。W相下アーム26においては、W相上アーム25の半導体スイッチング素子Q1,Q2のエミッタ端子と接合されたバスバーがW相下アーム26の半導体スイッチング素子Q1,Q2のコレクタ端子と接続されている。また、W相下アーム26の半導体スイッチング素子Q1,Q2のエミッタ端子から負極入力端子(バスバー)が延設されている。
【0036】
次に、車両用インバータ装置10の作用について説明する。
駆動回路基板31における駆動回路30からのゲート電圧信号によりインバータ回路20におけるU相上アーム21、U相下アーム22、V相上アーム23、V相下アーム24、W相上アーム25およびW相下アーム26を構成する半導体スイッチング素子Q1,Q2がスイッチング動作する。このとき、1つのアームを構成する、並列接続した2つの半導体スイッチング素子Q1,Q2が同期してオン・オフする。この半導体スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング動作により、バッテリから供給される直流が適宜の周波数の3相交流に変換されてモータの各相の巻線に供給される。
【0037】
半導体スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング動作に伴い半導体スイッチング素子Q1,Q2が発熱する。この熱は冷却器50において冷却水と熱交換される。
ここで、信号ピン62,63のうちの上側の信号ピン63に曲げ部66が設けられており、ワイヤボンド部からピンの上端までの長さが、下側の信号ピン62と上側の信号ピン63とで同一の長さとなっている。即ち、曲げ部66によりワイヤボンド部から、駆動回路基板31との接合部までの距離が2つの信号ピン62,63で同一になっている。これにより、信号ピンの長さの均等化を図ることができる。
【0038】
組み立ての際には配線層72の上にチップ(Q1,Q2,D1,D2)を、はんだ付けし、その後、冷却器50の上面に信号コネクタ60を接着する。その後、超音波等によりワイヤボンディングを行ってボンディングワイヤW1,W2によりチップ(Q1,Q2)と信号コネクタ60の信号ピン62,63とを接続した後にバスバー80,82を接合する。その後、駆動回路基板31を配置するとともに信号コネクタ60の信号ピン62,63を駆動回路基板31に接続する。
【0039】
図7に示すように、ワイヤボンディングは、ワイヤボンディング装置を用いて行われる。ワイヤボンディング装置における棒状ツールTwの先端部分は細くなっているが先端から離れた部位においては太くなっており、この形状の制約により、棒状ツールTwの先端部でのワイヤボンド部近くに高さのある物体が配置されていると、ツールTwの先端部と干渉する。つまり、信号コネクタ60の樹脂台61における2段目の水平部65においては立設部61bとワイヤボンド部を離すべくX方向の幅(W1寸法)を大きくしている。一方、信号コネクタ60の樹脂台61における1段目の水平部64においては、立設部61bとワイヤボンド部が離れているため、1段目の水平部64のX方向の幅(W2寸法)は小さくてもよい。
【0040】
また、信号コネクタ60を半導体スイッチング素子Q1,Q2に共通にし、信号コネクタ60における階段部に信号ピンの先端部をワイヤボンド部として露出する構造とすることにより、信号コネクタ60の占めていた面積分を減少させることができる。また、信号コネクタ60が小さくなることにより、インバータ装置における半導体スイッチング素子Q1,Q2のコレクタ・エミッタ端子からのバスバーの引き出しスペースを確保することができる。
【0041】
この小型化について、
図3の本実施形態と
図10の比較例とを対比しつつ説明する。
比較例として
図10においては、信号コネクタ100,101として、樹脂台102の上面に信号ピン103の一端が露出し、当該部位がワイヤボンド部となっている。また、信号コネクタ100,101が半導体スイッチング素子(チップ)Q1,Q2毎に設けられている。つまり、半導体スイッチング素子Q1に対応する信号コネクタ100と、半導体スイッチング素子Q2に対応する信号コネクタ101とが冷却器50の上面においてY方向において並設されている。各信号ピン103の間隔は幅広のワイヤボンド部での絶縁距離と棒状ツールTwの挿入性によって決まる。
【0042】
これに対し、本実施形態においては、
図3に示すように、階段部を有する信号コネクタ60を1つだけ用いて、2つの半導体スイッチング素子(チップ)Q1,Q2から駆動回路基板31へのゲート電圧信号ラインを確保している。ここで幅広のワイヤボンド部62a,63aが水平部64,65に分れて配置されているので、ワイヤボンド部での絶縁距離と棒状ツールTwの挿入性は確保されている。したがって、各信号ピン62,63の間隔は幅狭のコネクタ接続部62b,63bでの絶縁距離によって決まる。これにより、
図3のY方向での幅L1と
図10のY方向での幅L2との対比において、
図10の幅寸法(L2)に比べ
図3の幅寸法(L1)を小さくすることができる。その結果、小型化が図られる。つまり、バスバーによる引き出し部を信号ピンよりも外側に設けるが(取り出すが)信号ピンのY方向での必要幅が小さくてよいので小型化可能となる。また、インバータモジュールMiにおいては
図2に示すようにX方向に半導体モジュールMsが2つ並べられ、Y方向に半導体モジュールMsが3つ並べられる。よって、Y方向において3倍(=3・(L1−L2))小型化を図ることができる。なお、X方向においては
図7のW2寸法を小さくできるので極力大型化を回避できる。
【0043】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)半導体モジュールMsの構成として、2つの半導体スイッチング素子Q1,Q2と、信号コネクタ60を備える。信号コネクタ60は、2つの半導体スイッチング素子Q1,Q2に共通の樹脂台61に半導体スイッチング素子Q1,Q2毎の信号ピン62,63が埋設され、この半導体スイッチング素子Q1,Q2毎の信号ピン62,63のワイヤボンド部62a,63aが階段状に配置されている。これにより、半導体スイッチング素子毎に信号コネクタを設ける場合に比べ小型化が図られる。よって、並列接続された2つの半導体スイッチング素子Q1,Q2と信号コネクタ60を備えた半導体モジュールにおいて小型化を図ることができる。
【0044】
(2)信号コネクタ60は、半導体スイッチング素子毎の信号ピン62,63のコネクタ接続部62b,63bが一列に配列されている。これにより、駆動回路基板31と接続する場合、駆動回路基板31において各コネクタ接続部62b,63bと電気的に接続する導体パターンについてその引き回しが容易となる。
【0045】
(3)半導体スイッチング素子Q1,Q2毎の信号ピン62,63のうちの信号ピン63は配線長の均等化のための曲げ部66を有するので、配線長の均等化を図ることができる。
【0046】
(4)半導体スイッチング素子Q1,Q2のコレクタ・エミッタ端子に接続されるバスバーの延設部81およびバスバー82がコネクタ接続部62b,63bの配列方向と交差する方向に延設されている。つまり入口パイプP1と出口パイプP2が配置される方向にバスバーやコネクタ接続部を配置することなく、コネクタ接続部62b,63bの配列方向が小さくできるのでバスバーを容易に引き出すことができ、小型化を図ることができる。
【0047】
(5)インバータモジュールMiの構成として、U相上アーム21、U相下アーム22、V相上アーム23、V相下アーム24、W相上アーム25、W相下アーム26の各アームが、それぞれ、上述した半導体モジュールMsで構成されている。よって、インバータモジュールMiの小型化を図ることができる。
【0048】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・
図3,4においては信号コネクタ60における信号ピン62,63のコネクタ接続部62b,63bの配置として一列に配置したが、
図8,9に示すように、信号コネクタ60における信号ピン62,63のコネクタ接続部62b,63bの配置として二列に配置してもよい。つまり、1つの半導体スイッチング素子Q1に対応して設けられた5本の信号ピン62のコネクタ接続部62bがY方向において一列に配列されている。一方、X方向においてずれた位置において1つの半導体スイッチング素子Q2に対応して設けられた5本の信号ピン63のコネクタ接続部63bがY方向において一列に配列されている。この場合、各信号ピン62同士の間隔,各信号ピン63同士の間隔は幅広のワイヤボンド部での、絶縁距離と棒状ツールTwの挿入性によって決まるが、階段状に重ねられているので、
図10の比較例に比べてY方向寸法を小さく出来る。またこの場合、
図2に示すように半導体モジュールMsが3つY方向に並べられた場合、
図3に比べY方向においてより小型化可能となる。
【0049】
・下側の信号ピン62と上側の信号ピン63は、まったく同一長さに限らない。スイッチングに問題の発生しない程度の長さの差におさまっていればよい。つまり、電流のアンバランスが生じない程度に均等化すればよい。
【0050】
・下側の信号ピン62と上側の信号ピン63は、片方だけでなく、両方に曲げがあり、同一長さになっていてもよい。要は、第1の信号ピンおよび第2の信号ピンの少なくとも一方は配線長の均等化のための曲げ部を有する構成であればよい。広義には、半導体スイッチング素子毎の信号配線材のうちの少なくとも1つは配線長の均等化のための曲げ部を有する構成であればよい。
【0051】
・実施の形態においては、1つのアームにおいて並列接続する半導体スイッチング素子の数が「2」であり、信号コネクタでの段数が「2」であったが、この構成に限らない。例えば、1つのアームにおいて並列接続する半導体スイッチング素子の数が「3」以上で、信号コネクタでの段数を「2」以上にしてもよい。つまり並列接続する半導体スイッチング素子の数と段数は同一でなくてもよい。また、例えば、並列接続する半導体スイッチング素子の数が「3」のときには信号コネクタでの段数を「3」にし、並列接続する半導体スイッチング素子の数が「4」のときには信号コネクタでの段数を「4」というように、並列接続する半導体スイッチング素子の数と段数を同一にすれば、各段毎に接続される半導体スイッチング素子が分けられるので、ワイヤボンディングがやり易い。
【0052】
・信号ピン62,63は樹脂台61内においてL字状に屈曲形成したが、横出ししてもよい。即ち、ワイヤボンド部から水平方向にそのまま延ばし、樹脂台61からコネクタ接続部として水平方向に突出させてもよい。