【実施例1】
【0064】
以下、
図1から
図9を用いて本発明の安否監視装置の第1の実施形態を詳述する。
[本発明の原理的説明:
図8、
図9]
初めに、
図8と
図9とを用いて安否監視装置に搭載されているマイクロ波ドップラセンサによる信号検出の原理を説明する。
図8は、マイクロ波ドップラセンサと被検者とを示す模式的な図である。
図9は、マイクロ波ドップラセンサで検出される信号波形を説明するための波形図である。
【0065】
図8において、31はマイクロ波発信器、32はマイクロ波受信器、33はマイクロ波復調器である。これらでマイクロ波ドップラセンサ3を構成している。
10は
被検者、10aは呼吸筋である。呼吸筋10aは、呼吸を行うときに胸郭の拡大、収縮を行う筋肉の総称である。例えば、横隔膜、内肋間筋、外肋間筋、胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋などがある。
【0066】
マイクロ波ドップラセンサは、一般的なマイクロ波ドップラセンサを用いることができる。マイクロ波ドップラセンサには、その出力信号がアナログ信号のものとデジタル信号のものとがあるが、本実施形態では、
図8に示すように、マイクロ波復調器33からの信号はアナログ信号であり、マイクロ波ドップラセンサ3にはアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器を搭載していない例で説明をする。
【0067】
マイクロ波発信器31は、約2.5GHzのマイクロ波Mを被検者10に発射すると共に、マイクロ波電気信号Emeを出力する。マイクロ波発信器31から発射されたマイクロ波Mは、一部が被検者10の体表で反射され、一部が被検者10の内部に入り、呼吸筋10aで反射して再び被検者10を経由してマイクロ波受信器32で受信される。
マイクロ波受信器32は、マイクロ波Mを受信すると共に、マイクロ波電気信号Emrを出力する。
マイクロ波復調器33は、マイクロ波電気信号Emeと受
信したマイクロ波電気信号Emrとから、マイクロ波ドップラシフト信号Maを出力する。
【0068】
受
信したマイクロ波電気信号Emrには被検者10の体動と呼吸筋10aの動きとに対応したドップラシフトが生じているので、マイクロ波ドップラシフト信号Maは、被検者10の体動と呼吸筋10aの動きとに対応した信号となる。
【0069】
本発明の特徴は、このマイクロ波ドップラシフト信号Maを解析して、体動を検出するアルゴリズムと呼吸を検出するアルゴリズムとの異なるアルゴリズムを用いて、体動と呼吸との組み合わせパターン(安否パターン)から、
被検者の安否を監視するのである。
【0070】
図9(a)は、マイクロ波ドップラセンサ3と被検者10との距離が比較的近い場合(例えば、2m)のマイクロ波ドップラシフト信号Maの時間的変化を示し、
図9(b)は、その距離が比較的遠い場合(例えば、5m)のマイクロ波ドップラシフト信号Maの時間的変化を示すものである。距離の違いは波形の振幅の強弱となって現れるが、波形の変化の傾向には違いがない。
【0071】
図9に示す区間A〜Eは、
被検者10の呼吸の状態を示すものである。
区間Aは、被検者10が安静呼吸をしている場合である。低周期のマイクロ波ドップラシフト信号Maが観測されている様子を示している。
区間Bは、速い呼吸をしている場合である。やや早い周期のマイクロ波ドップラシフト信号Maが観測されている。
区間Cは、
被検者10が呼吸を止めている場合である。平坦なマイクロ波ドップラシフト信号Maが観測されている。
【0072】
区間Dは、呼吸を止めていた状態から再び呼吸を始めた後に安静呼吸に戻る場合を示している。区間Aと同じく低周期のマイクロ波ドップラシフト信号Maが観測されている。
区間Eは、呼吸中に体動が加えた場合である。例えば、体を動かした場合である。すると、低周期成分にランダム成分が加わったマイクロ波ドップラシフト信号Maが観測される。
【0073】
図9に示す例は、安静呼吸をしている状態から呼吸が早くなり、一旦呼吸が止まり、その後呼吸が再開され、体を動かした場合を模式的に示すものである。これは、所定の時間内に、
被検者の体に呼吸が変化するような状況が発生した場合を示しており、本発明の安否監視装置がマイクロ波ドップラセンサを用いているからこそ、呼吸をも検出できた状況である。
[安否監視装置の構成説明:
図1、
図2]
次に、
図1と
図2とを用いて安否監視装置の構成を説明する。
初めに、
図1を用いて安否監視装置1の概念的な構成を説明する。
図1は、安否監視装置1のブロック図であり、安否監視装置1は、マイクロ波ドップラセンサ3と、信号処理部4と体動呼吸検出手段5と安否パターン判定部6と安否報知手段7と報知手段8と計時部9とを備えた存在判別手段2とから構成される。
【0074】
マイクロ波ドップラセンサ3は被検者10にマイクロ波Mを発信し、反射してきたマイクロ波Mから、被検者10の身体の動きや呼吸動作を反映するマイクロ波ドップラシフト信号Maを出力する。
【0075】
存在判別手段2の信号処理部4は、マイクロ波ドップラシフト信号Maをデータ処理に適した信号に変えマイクロ波デジタルデータMdとして出力する。
体動呼吸検出手段5は、このマイクロ波デジタルデータMdに基づき被検者10の安否情報Siを出力する。
【0076】
安否パターン判定部6は、安否情報Siに基づき安否の状態を判別して安否パターンデータAsを出力する。
安否報知手段7は、安否パターンデータAsに基づき安否が異常の場合に外部に報知するものであって、通報データNを出力する。
【0077】
報知手段8は、安否パターンデータAsの内容に応じて視覚的あるいは音響的手段で被検者10に問い合わせを行ない、その結果を通話データCmとして安否パターン判定部6に出力する。また、安否監視装置1の動作が異常な場合にアラーム信号を発する。
【0078】
計時部9は、存在判別手段2の各要素に、第1計時信号T1と第2計時信号T2および第3計時信号T3からなる基準信号を供給する。
第1計時信号T1は、後述する信号処理部4の内部のAD変換回路のサンプリング時間を決めるための時刻情報を有している。
例えば、周期を10msecとしたパルス信号である。
第2計時信号T2は、体動呼吸検出手段5の動作を制御する時刻情報を有している。例えば、パルス周期を5〜30secのパルス信号である。
第3計時信号T3は、日付や時間などの情報を有する時刻情報である。
【0079】
次に
図2を用いて存在判別手段2の構成を更に詳細に説明する。
図2は、
図1に示した安否監視装置1の各要素の構成を更に分解した詳細の機能ブロック図である。
【0080】
信号処理部4は、帯域制限回路41とAD変換回路42とから構成される。帯域制限回路41は、マイクロ波ドップラシフト信号Maを入力してマイクロ波ドップラシフト信号Maのうちの不要な周波数帯域の成分を除去し、マイクロ波帯域制限信号Msとして出力する。
【0081】
AD変換回路42は、マイクロ波帯域制限信号Msを入力して、第1計時信号T1によるサンプリングレート10msecにてアナログ信号であるマイクロ波ドップラシフト信号Maをデジタル信号であるマイクロ波デジタルデータMdに変換して出力する。
【0082】
体動呼吸検出手段5が出力する安否情報Siは、体動数Tdと呼吸数Rrを含んでいる。この体動数Tdを出力するのは体動計数部51であり、呼吸数Rrを出力するのは呼吸検出部52である。
【0083】
体動計数部51は、マイクロ波デジタルデータMdを入力してマイクロ波時間変化率データDdを出力する時間微分回路511と、マイクロ波時間変化率データDdを入力して有効体動信号Cdを出力する閾値比較回路512と、有効体動信号Cdを入力して体動数Tdを出力する体動計数回路513とから構成される。
【0084】
呼吸検出部52は、マイクロ波デジタルデータMdを入力して周波数分布データFsを出力するFFT回路521と、周波数分布データFsを入力して基本波データRfを出力する基本波検出回路522と、基本波データRfを入力して呼吸数Rrを出力する呼吸計数回路523とから構成される。
【0085】
安否パターン判定部6は、体動数Tdと呼吸数Rrとからなる安否情報Siと、後述する報知手段8からを入力される通話データCmと、から安否パターンデータAsを出力する。
【0086】
安否報知手段7は、安否パターンデータAsを記憶し安否パターン記憶データSdを出力する記憶部71と、安否パターン記憶データSdに基づき通報指示信号Edを出力する通報判断部72と、通報指示信号Edに基づき通報データNを発信する通信部73とから構成される。
【0087】
報知手段8は、安否パターン判定部6から出力される安否パターンデータAsの内容に応じて、「どうしましたか」などのように、後述する表示器や通話装置を通じて文字表示や音声で被検者10に問い合わせを行ない、その結果を通話データCmとして安否パターン判定部6に出力する。
また、安否報知手段7から通報データNが出力されたとき、その内容を被検者10や、被検者10の関係者に知らせる機能も有している。
【0088】
計時部9は、第1計時信号T1、第2計時信号T2、第3計時信号T3を出力しているが、図示はしないが、例えば、水晶振動子などを用いて所定の周波数のクロック信号を出力する源振クロック部、そのクロック信号を分周して所定の分周信号を生成する分周回路部、その分周信号から時刻情報を生成する時刻生成部などで構成することができる。これらの構成は知られている時計回路で広く知られているものであるから、詳細な説明は省略する。
[体動呼吸検出手段の動作説明:
図2〜
図4]
次に
図2〜
図4を用いて本発明の安否監視装置の第1の実施形態の動作を説明する。
まず、体動呼吸検出手段5の動作を説明する。
図3及び
図4は、
図2に示す体動呼吸検出手段5の動作を説明する波形図であって、横軸は時間で縦軸は振幅を示している。
【0089】
まず、体動計数部51の動作を説明する。
図3(a)は、体動呼吸検出手段5の時間微分回路511に入力されるマイクロ波デジタルデータMdと、時間微分回路511によって時間微分されたマイクロ波時間変化率データDdを示すものである。
図3(b)は、有効体動信号Cdと体動計数回路513によって出力される体動数Tdの関係を示すものである。
【0090】
図3(a)に示すように、入力したマイクロ波デジタルデータMdを時間微分回路511にて時間で微分すると、信号の時間変化率が現れるから、マイクロ波時間変化率データDdは、0(ゼロ)を中心にして、ある振幅範囲を増減するような波形となる。
【0091】
マイクロ波時間変化率データDdは、閾値比較回路512によって予め定められた値、すなわち
図3(a)に示す、「+閾値」、「−閾値」で表す2つの閾値と比較され、予め定められた「+閾値」、「−閾値」より大きいマイクロ波時間変化率データDdが、有効体動信号Cdとして閾値比較回路512より出力される。
なお、この「+閾値」及び「−閾値」は、実験などにより予め設定しておく。
【0092】
体動計数回路513は、有効体動信号Cdと第2計時信号T2とから単位時間当りの体を動かした数である体動数Tdが出力される。第2計時信号T2は、パルス周期を5〜30secのパルス信号であり、例えば、30secを単位時間とする。
図3(b)に示す例では、この30sec(第2計時信号T2)という時間当たりの体動数は、「9」である。
【0093】
次に、呼吸検出部52について説明する。
図4(a)及び
図4(b)は、マイクロ波デジタルデータMdと、マイクロ波デジタルデータMdに基づきFFT回路521が出力する周波数分布データFsと、を並べて示したものである。
マイクロ波デジタルデータMdを示す図にあっては、横軸を時間とし、縦軸を信号の振幅としており、周波数分布データFs示す図にあっては、横軸を周波数とし、縦軸を信号の強度として表したものである。
そして、
図4(a)は被検者10の体動がない場合で、
図4(b)は体動がある場合を示している。
【0094】
FFT回路521は、第2計時信号T2に基づきマイクロ波デジタルデータMdを所定時間蓄積しFFT処理を行なう。このFFT処理は、入力信号を高速フーリエ変換処理を行なうものである。すなわち、蓄積したマイクロ波デジタルデータMdをフーリエ変換し、個々の信号成分に分解した後、各成分を周波数スペクトラム上に表す処理を行い、周波数分布データFsとして基本波検出回路522に出力する。
マイクロ波デジタルデータMdを所定時間蓄積する第2計時信号T2は、この場合、例えば、例えば、30secである。
【0095】
呼吸波形は単純な正弦波ではなく、個人固有の高調波を含み、さらに体動が含まれると波形毎の検出が実質不可能になる。そこでこのように、実波形を一定時間まとめてFFT処理を行ない、周波数毎のフーリエスペクトルに分解して検出する方式を採用した。
【0096】
基本波検出回路522は、入力された周波数分布データFsから基本波データRfを出力するのであるが、
図4に示すように、周波数分布データFsのうち、呼吸に係る所定の範囲の周波数分布を選び、その中から最も強度(ピーク)の高いpを含む周波数成分を基本波データRfとして呼吸計数回路523に出力する。
【0097】
すなわち、基本波検出回路522は、周波数分布データFsを、
図4(a)及び
図4(b)に示す、区間Rとして示す範囲の周波数分布を呼吸に係わる成分として抽出する。この区間Rを決める2つの周波数R1及びR2は、例えば、0.2Hzから0.5Hzの区間である。なお、周波数R1及びR2は、実験などを行い、呼吸に関わる周波数分布を捉えることができる範囲を選定する。
【0098】
生体反応は正規分布性を持つので、区間Rのうち、周波数R1側から準次成分を読み出す。そして、最もピークの高いpを選択すれば、それが呼吸の基本波であると予測できるのである。しかしこのとき、単発の成分で最もピークの高いものを単に選ぶのではなく、2回連続で上昇傾向にあり、かつ、ノイズと識別するため特定の閾値以上の条件を満たすものをpとして選択すれば、より確度の高い基本波データRfとすることができるので好ましい。
【0099】
図4(b)は、体動がある場合を示しているので、その波形には呼吸に係る周波数分布の他に体動に係る周波数分布も含まれている。
区間Tとして示す範囲の周波数分布を体動に係わる成分であるとする。この区間Tを決める2つの周波数R3及びR4は、例えば、0.5Hzから5.0Hzの区間である。この区間Tは、体動に係わる周波数成分なので基本波データRfから除かれる。
なお、周波数R3及びR4も、実験などを行い、体動に関わる周波数分布を捉えることができる範囲を選定する。大切なことは、区間Tは、呼吸の周波数範囲よりも大きければよい。この例では、区間Tを決める周波数R3は周波数R2よりも高ければよい。体動には明確な周期性がないので、FFT処理した周波数分布データFsには明確な周波数成分としては現れない。そこで、本発明では、区間Tとして体動の周波数範囲を規定することで、呼吸とは異なる成分を除外している。
【0100】
呼吸計数回路523は、入力された基本波データRfから呼吸数Rrを算出する。すなわち、基本波データRfを60倍することで、単位時間すなわち1分間当りの呼吸の数である呼吸数Rrを算出する。
[安否パターン判定部の動作説明1]
次に、体動と呼吸とで安否を判断する安否パターン判定部6の動作を説明する。まず、体動数Tdや呼吸数Rrの判断基準は、以下に示す例を用いることができる。
【0101】
体動数Tdは、以下のとおりである。
・体動数Td<=10 :「体動無し」
・体動数Td>10 :「体動有り」
・体動数Td>500 :「体動異常」
呼吸数Rrは、以下のとおりである。
・区間Rで基本波データRfが検出される:「呼吸正常」
・周波数R2以上で基本波データRfが検出される:「呼吸異常」
・基本波データRfが検出されない:「呼吸未検出」
なお、これらの体動数と呼吸数による体動と呼吸の状態の区分は、体
動呼吸検出手段5で行ってもよく、その場合安否パターン判定部6は、体動数と呼吸数の区分結果に基づいて以下に説明する安否判定を行う。
【0102】
安否パターン判定部6は、安否の検出には、下記に示す複数の条件、つまり、安否パターンを用いて
被検者の安否を判断し、安否パターンデータAsを作成する。安否パターンは、A〜Eの5つ条件を例示した。
なお、
被検者に異常がないと判定した状態を「安判定」、
被検者に異常があると判定した状態を「否判定」と呼称する。
[パターンA]
「体動異常」が、時間t1の間続いたら「否判定」とする。
時間t1は、例えば、日中では10分間、就寝時間帯(夜間)では5分間である。
【0103】
上記のパターンAは、高齢者などは、通常、室内で一定時間激しい運動をし続けることは異常と判断するものである。このような状況を検出するため、この時間t1を選定した。
[パターンB]
「呼吸異常」が、時間t2の間続いたら「否判定」とする。
時間t2は、例えば、日中では10分間、就寝時間帯では3分間である。
【0104】
上記のパターンBは、高齢者などは、通常、室内で一定時間早い呼吸を続けることは異常と判断するものである。このような状況を検出するため、この時間t2を選定した。
[パターンC]
「体動有り」が、時間t3の間続いたら「否判定」とする。
時間t3は、例えば、日中では60分間、就寝時間帯では10分間である。
【0105】
上記のパターンCは、高齢者などは、通常、室内で一定時間身体を動かし続けることは異常と判断するものである。このような状況を検出するため、この時間t3を選定した。
[パターンD]
「体動無し」及び「呼吸正常又は異常」が、時間t4以上(時間t2未満)続いている状態から「体動無し」及び「呼吸未検出」が、時間t5の間続いたら「否判定」とする。
時間t4は、例えば、日中では5分間、就寝時間帯では3分間である。
時間t5は、例えば、日中では5分間、就寝時間帯では3分間である。
【0106】
上記のパターンDは、
被検者が外出したとすれば、室外へ移動するため「呼吸未検出」になる直前に必ず一時的な「体動有り」又は「体動異常」を伴う。「体動無し」状態からいきなり呼吸が無くなることは異常と判断するものである。このような状況を検出するため、この時間t4と時間t5とを選定した。
[パターンE]
「体動有り」の後、時間t6以内から、時間t7の間連続して「体動無し」と「呼吸未検出」とが続いたら「否判定」とする。
時間t6は、例えば、日中では2分間、就寝時間帯では2分間である。
時間t7は、例えば、日中では60分間、就寝時間帯では20分間である。
【0107】
上記のパターンEは、
被検者が「体動有り」又は「体動異常」と判定された後、一定時間以上、体動も呼吸も検出されない状態は、室外への外出も考えられる。一定時間内に体動又は呼吸が戻らなければ異常と判断する。
【0108】
呼吸はフーリエ変換した周波数成分で検出する。体動は微分波形で検出する。このため、呼吸は体動に比べノイズの影響で誤検出することがないとは言えない。したがって、体動と呼吸との連続未検出は体動を優先して、体動が連続して発生していない状態で、単発で呼吸が検出されるケースは誤検出と見なし無効と考える。
【0109】
上述の安否パターンは、
被検者に異常があると判定した状態である「否判定」を定義するものであるが、当然どれにも当てはまらなければ
被検者には異常がなく、「安判定」となる。
【0110】
安否パターン判定部6は、以上のような安否パターンA〜Eを用いて、所定のタイミングごとに安否を判定する。例えば、30secごとである。このタイミングは、上述の安否パターンに用いる「日中」や「就寝時間帯(夜間)」という時間と共に、
図2に示す第3計時信号T3を用いる。この第3計時信号T3は、すでに説明したように、日付や時間などの情報を有している。
【0111】
以上説明した安否パターンA〜Eは、安否パターン判定部6の内部に図示しない記憶部を設けており、それに記憶している。この安否パターンは、すでに説明した例以外にも、被検者の特性や行動パターンによって様々な判断基準を選ぶことができる。また、他にいくつかの安否パターンを用意しておき、状況に応じて使い分けをすることも可能である。
[安否パターン判定部の動作説明2:
図5]
次に、
図5を用いて安否パターン判定部6の別の動作を説明する。
この動作は、安否パターンの緊急性、生死重要度が異なるため、各パターンに応じた安否ポイントを予め設定し、1日の安否ポイントの合計を安否レベルとして出力するという動作である。
【0112】
図5(a)は複数の安否パターンと、各パターンのポイント数とを表に表したものであって、用いる安否パターンは、すでに説明した安否パターンA〜Eを用いる例である。また、
図5(b)は緊急性を表す安否レベルと、1日の安否ポイントの累計と、それに対する管理者の対応とを表に表したものである。
【0113】
安否パターンA〜Eに対して、緊急程度に比例して安否ポイントを付与する。安否パターンAには安否ポイント「3」が、安否パターンBには安否ポイント「2」が、安否パターンCには安否ポイント「1」が、安否パターンDには安否ポイント「10」が、安否パターンEには安否ポイント「5」が各々付与されている。
【0114】
安否ポイントは、生死重要度により決めている。例えば、パターンCは、安否ポイントが「1」であり、パターンAは「3」である。パターンCは、上述の通り、「体動有り」が、時間t3の間続いたら「否判定」とする。時間t3の例は、日中で60分間、就寝時間帯で10分間である。日中を例にすると、少なくとも60分間は「体動有り」の状態が検出されている。一方、パターンAは、「体動有り」よりも激しい「体動異常」が、時間t1(例えば、日中では10分間、就寝時間帯では5分間)続く場合である。そうすると、パターンCはパターンAに比べて激しい体動状態ではないため、
被検者が生死に直面しているかどうかという点で見れば、パターンCは、
被検者が生きている(つまり、死に直面していない)可能性が高いと考えることができる。このような判断により
、安否パターンごとに生死重要度という重み付けを行なうのである。
【0115】
各安否パターンに応じて予め安否ポイントを設定するが、1日の安否ポイントの累計値によって決める安否レベルは、例えば、「低」,「中」,「高」の3段階を設定する。
安否ポイントの累計値が、「1〜3」ならば安否レベルを「低」とし、安否ポイントの累計値が、「4〜9」であれば安否レベルを「中」とし、安否ポイントの累計値が、「10」以上ならば安否レベルを「高」とする。
【0116】
安否レベルは、安否ポイントの累計値であるから、
図5(b)に示す例でいえば、パターンCは安否ポイントが1であり、1日にこのパターンCが1回しか発生しなければ、
図5(b)に図示したとおり安否レベルは「低」である。しかし、図示はしないが、このパターンCが1日に4回発生すれば、安否レベルは「中」になり、10回発生すれば「高」になる。
【0117】
つまり、咳き込むような「呼吸異常」は、もがき苦しむような「体動異常」よりも、軽度な異常であるかもしれないが、その「呼吸異常」が1日に何度も繰り返し発生するようであれば、軽度な異常ではなく深刻な異常であるかもしれない。このようなときに安否ポイントと安否レベルとを設定することで、
被検者の異常を見極めやすくなるのである。
【0118】
また、安否レベルに応じて属性を決めることもでき、安否レベル「低」は「画面メッセージによる確認」、安否レベル「中」は「通話による直接会話確認」、安否レベル「高」は「訪問確認」としている。
属性「訪問確認」は、すぐに訪問し安否を確認して方がよい場合としており、属性「画面メッセージによる確認」、「通話による直接会話確認」は、それほどの緊急性はない場合とすることができる。これら属性は、安否パターンデータAsに組み込まれる。
【0119】
後述する安否報知手段7は、安否パターンデータAsの内容が、
被検者に異常があると判定した「否判定」であれば、安否パターンデータAsの内容を通信部73から通報データNとして発信するが、このとき、情報を受け取った管理者は、安否レベル及び属性の情報も入手できれば、すぐさま
被検者のもとに訪問した方がよいか否か、通話装置82を用いて被検者に「異常ありませんか」などと問うだけよいか、などの判断の材料が増えて便利である。
【0120】
以上説明した、複数の安否パターンの数、および各安否パターンに付与する安否ポイントや安否レベルの数は、それに限定するものではなく、被検者や周囲の環境に応じて設定することができる。
[安否報知手段の動作説明:
図2〜
図4]
次に、安否報知手段7の動作を説明する。
安否パターン判定部6から出力された安否パターンデータAsは、一旦記憶部71に記憶され、記憶部71から安否パターン記憶データSdとして読み出され通報判断部72に出力される。
通報判断部72は、入力された安否パターン記憶データSdが通報を要するレベルか否か判断する。
【0121】
一例としては、安否パターンデータAsの内容が、
被検者に異常がないと判定した「安判定」であれば、通報を要するレベルではないと判断する。また、安否パターンデータAsの内容が、
被検者に異常があると判定した「否判定」であれば、安否パターンデータAsの内容を通報指示信号Edに加えて通報指示信号Edを出力する。
【0122】
通報指示信号Edは、通信部73によって外部に通報データNとして発信される。
通信部73としては、デジタル変調器と一般電話回線に接続する回線制御装置の組合せや、アナログもしくはデジタル無線送信機を用いることができる。
[外観説明:
図7]
次に、
図7を用いて安否監視装置1の外観を説明する。
図7において、81は表示器、82は通話装置であり、報知手段8を構成する要素である。83及び84は操作スイッチである。
図7に示すように、安否監視装置1はデスクトップ型のフォトフレームに近い外観を有し、上部にはマイクロ波ドップラセンサ3が収納され、前面には報知手段8の表示器81と通話装置82と操作スイッチ83,84とが設けられている。
【0123】
表示器81は、液晶表示器を用いることができる。すでに説明したように、安否パターン判定部6から出力される安否パターンデータAsの内容に応じて、「異常ありませんか?」などの文字を表示することができる。
【0124】
通話装置82は、被検者に「異常ありませんか」などと音声で問い合わせを行う、セラミック音響素子やダイナミックスピーカで構成することができる。
また、安否監視装置1は、被検者からの返事を受けるなどの同時通話が可能な通話装置を搭載することもできるので、通話装置82は、上述のセラミック音響素子やダイナミックスピーカとダイナミックマイクロホンとの組合せで構成することができる。
【0125】
操作スイッチ83,84は、表示器81の表示内容や音響レベルの操作、また通話装置82からの問い合せに対する返事を行なうものであって、ボタン型のスイッチを用いることができる。
例えば、表示器81や通話装置82から「異常ありませんか」などの問いに対して、
被検者が何ら問題ないときに、所定の時間以内に操作スイッチ83又は操作スイッチ84を操作するなどして、安否監視装置1に
被検者の状態を入力する。
[第1の実施形態の動作フローの説明:
図2、
図6]
次に、
図2及び
図6を用いて、安否監視装置1の動作フローを詳述する。
図6は安否監視装置1の動作を説明する動作フローである。以下に詳述する。
【0126】
S1は、信号を取り込むルーチンである。
マイクロ波ドップラシフト信号Maは、分解能10bit、サンプリングレート約10msec毎で、マイクロ波デジタルデータMdに変換される(S1)。
S2は、マイクロ波デジタルデータMdから体動数Tdを出力するマクロルーチンである。以下に詳述する。
【0127】
サンプリングしたマイクロ波デジタルデータMdをサンプリング回数n回目ごとにV(n)と表すと、以下にように時間微分を行なう。
ΔV=v(n)−v(n−1)
1サンプリング前の数値で後退差分(ΔV)を算出する。(S21)
以下の2つの条件で体動積算値を計数する。(S22)
ΔV>0.05V(+閾値に相当する)
ΔV<−0.05V(−閾値に相当する)
この0.05Vという値は、閾値であって一例である。安否監視装置を設置した環境の環境ノイズを除外するために、実験などで決めるものである。
【0128】
30sec分の波形データを配列V(n)に蓄積。また、30秒間の体動数Tdを出力する。(S23)
30secの体動数に応じた判断をする。(S24)
体動数>10なら「体動有り」判定。
体動数<=10なら「体動無し」判定。
体動数>500なら「体動異常」判定。
【0129】
S3は、呼吸数Rrを出力するメインルーチンである。
30sec間のマイクロ波デジタルデータMdをFFT変換する。抽出された基本波データRfから呼吸判定を行う。(S3)
区間R(0.2Hz以上0.5Hz未満)で基本波データRfが検出されると「呼吸正常」判定。
周波数R2(0.5Hz)以上で基本波データRfが検出されると「呼吸異常」と判定。
基本波データRfが検出されないと「呼吸未検出」と判定。
【0130】
S4は、安否を判定するメインルーチンである。
30sec間の体動数Tdと呼吸数Rrとから安否パターンデータAsを出力する。また、安否パターンデータAsの内容によっては被検者10に報知手段8を通じて、「どうしましたか」等の問い合わせを行なう。(S4)
S5は、記憶部71のデータファイルに記憶するルーチンである。
30sec間の結果を日付や時間と共に24時間形式のデータファイルに保存する。また、日付、時間、体動数、体動数積算値、呼吸数、等に加え、呼吸周波数分布値、呼吸スペクトル値も必要に応じ記憶する。(S5)
S6は、通報し表示するルーチンである。
安否パターン記憶データSdの内容に応じ、また必要に応じ過去の安否パターン記憶データSdの内容を参照し、緊急の場合は通報データNを発信する。(S6)
以上のステップによって、大きな体動を有しないような、寝ながら長時間TVを視聴しているときなどに
被検者に起こる異常の検出や健康状態の異常検出が困難であった従来方式の欠点が克服される。
【実施例3】
【0136】
[センサユニットとサーバとに分割した構成]
上述した各実施形態の安否監視装置1,100においては、
図12に示すように、マイクロ波ドップラセンサ3と信号処理部4と計時部9と体動呼吸検出手段5とを一体的なセンサユニット300として形成し、安否パターン判定部6と安否報知手段7と報知手段8とを、センサユニット300とは別体のサーバ400に備え、センサユニット300とサーバ400とを通信回線600で結んだ構成としてもよい。
【0137】
そして、センサユニット300を、この安否監視装置1,100による安否監視の対象となる被検者10が通常滞在している部屋などの特定の空間に設置される。
【0138】
一方、サーバ400は、センサユニット300の設置場所とは異なる場所(安否監視装置1,100を管理する管理者が常駐する場所(例えば、警備会社や病院等))に設置される。
【0139】
通信回線600は、有線の回線であってもよいしWiFi等の無線の回線であってもよい。
【0140】
通信回線600として無線の回線を適用した構成の場合、
図13に示すように、その通信回線600は、センサユニット300の体動呼吸検出手段5から出力されたデータを無線信号として送信する無線送信部610と、無線送信部610から送信された無線信号を受信して有線の信号に変換し出力する無線受信部620と、無線受信部620から出力された信号を流すインターネットやLAN等の回線640と、回線640を流れた信号を取り込むデータ受信部630とを備える。
【0141】
ここで、無線送信部610はセンサユニット300に一体に設けられていて、体動呼吸検出手段5からの出力データ(体動数Td、呼吸数Rr)および計時部9からの出力データ(第3計時信号T3)が入力されて、これらのデータを無線信号に変換して送出する。
【0142】
一方、データ受信部630はサーバ400に設けられていて、回線640から入力されたデータ(体動数Td、呼吸数Rr、第3計時信号T3)を安否パターン判定部6に入力する。
【0143】
実施例1で示した体動呼吸検出手段5から出力される体動数Td、呼吸数Rrは、単位時間当たりに検出される体動数、呼吸数の生データであったが、以下の実施例では、体動数Tdを、「体動異常」、「体動有り」、「体動無し」、の3つの状態に区分(ランク分け)したデータ、呼吸数Rrを、「呼吸異常」、「呼吸正常」、「呼吸未検出」、の3つの状態に区分(ランク分け)したデータとする。
【0144】
なお、体動数Tdの上記3つの区分は、実施例1で示した区分と同じであり、
・体動数Td<=10(10以下)のとき「体動無し」
・体動数Td>10(10超え)のとき「体動有り」
・体動数Td>500(500超え)のとき「体動異常」
とする。
【0145】
同様に呼吸数Rrの上記3つの区分は、実施例1で示した区分と同じであり、
・区間Rで基本波データRfが検出されたとき「呼吸正常」
・周波数R2以上で基本波データRfが検出されたとき「呼吸異常」
・基本波データRfが検出されないとき「呼吸未検出」
とする。
【0146】
なお、無線受信部620は、無線送信部610から送出された無線信号を受信し得る距離の範囲に設置される。
【0147】
以上のように構成された実施形態の安否監視装置1,100によれば、前述した実施例1,2の効果に加えて、被検者10の体動、呼吸を検出するという処理負荷が比較的小さい処理をセンサユニット300で行い、その他の処理負荷が比較的大きい処理を、センサユニット300とは別体のサーバ400で行うことができるため、センサユニット300は、処理負荷に応じて比較的小さいサイズで構成することができる。
[センサユニットが複数の構成]
さらに、サーバ400では、多数のデータを並列的あるいは一括的に処理することもできるため、単一のサーバ400に複数のセンサユニット300,300,…を組み合わせた安否監視装置1,100を構成することができる。
【0148】
すなわち、例えば
図14に示すように、病院内の1つの病室に複数人の患者が居て、各患者をそれぞれ被検者10(ベッドAの被検者10A、ベッドBの被検者10B)とし、被検者10A,10Bごとにセンサユニット300A,300Bが対応して設けられ(被検者10Aにセンサユニット300Aが対応、被検者10Bにセンサユニット300Bが対応)、その病室に1つだけ無線受信部620が備えられ、病院内のLANを回線640とし、病院内に設けられた単一のサーバ400を備えた構成により、本発明の安否監視装置を構成することができる。
【0149】
この場合、サーバ400における安否パターン判定部6が、データ受信部630から入力されたデータが2人の被検者10A,10Bのうちいずれの被検者10Aまたは10Bのデータであるかを判別する必要があるため、被検者10A,10Bごとにそれぞれ対応した各センサユニット300A,300Bには、その無線送信部610ごとに、センサユニット300を特定するための例えばID(identification)番号が付されていて、各無線送信部610が送出するデータ(体動数Td、呼吸数Rr、第3計時信号T3)には、例えばヘッダ情報として、そのID番号が付加されて送出される。
【0150】
一方、サーバ400には、
被検者10A,10Bごとに対応したセンサユニット300A,300Bを特定する情報(例えば、上記ID番号)を被検者10A,10Bに対応付けて対象者登録情報として記憶された対象者登録情報記憶部800が備えられていて、対象者登録情報記憶部800に記憶された対象者登録情報は安否パターン判定部6に入力される。
【0151】
そして、各センサユニット300A,300Bから安否パターン判定部6にデータが入力されると、安否パターン判定部6が、その入力されたデータのヘッダ情報として付加されたID番号を読み取り、対象者登録情報で特定されたID番号に対応する被検者10A,10Bのデータとして、判定に利用することができる。
【0152】
また、各センサユニット300A,300Bはそれぞれ1人の被検者10A,10Bを監視対象としているものの、
図14に示した、1つの病室に複数の被検者10A,10Bが滞在している場合のように、監視対象の
被検者10A,10Bの近くに他の被検者10B,10Aがいる場合は、各センサユニット300A,300Bは、本来の監視対象である被検者10A,10Bからの反射マイクロ波(被検者10A,10Bで反射したマイクロ波M)の他に本来の監視対象ではない他の被検者10B,10Aからの反射マイクロ波も検出してしまう可能性がある。
【0153】
そして、本来の監視対象者ではない他の被検者10B,10Aからの反射マイクロ波も検出してしまうと、本来の監視対象者である被検者10A,10Bの安否を正確に検出することができない虞がある。
【0154】
そこで、各実施形態の安否監視装置1等においては、
図15に示すように各センサユニット300に、
図3(a)に示された予め設定された値である閾値(「+閾値」と「−閾値」との間の範囲)を変化させる体動閾値設定部531を備え、閾値比較回路512を、体動閾値設定部531により変化された値(「+閾値」と「−閾値」との間の範囲)を超えるマイクロ波時間変化率データを有効体動信号として出力するものとし、
図4(c)に示す任意の値の閾値を設定可能の呼吸閾値設定部532を備え、基本波検出回路522を、FFT回路521から出力された周波数分布データFsのうち、強度が呼吸閾値設定部532により設定された閾値を超える周波数分布データFsに基づいて基本波データRfを出力するものとすればよい。
【0155】
ここで、体動閾値設定部531で設定される閾値は、本来の監視対象者ではない被検者の体動による信号をノイズとして除去するのに十分な、予め実験等に基づいて定められた値である。
【0156】
つまり、体動閾値設定部531で設定される閾値は、例えばマイクロ波ドップラセンサが設置される条件(具体的には、その設置された部屋の大きさや、1部屋に設置されたセンサユニットの数、間隔等)に応じて設定されればよい。
【0157】
また、呼吸閾値設定部532で設定される閾値は、本来の監視対象者ではない被検者の呼吸による信号をノイズとして除去するのに十分な、予め実験等に基づいて定められた値である。
【0158】
このような構成とすれば、マイクロ波時間変化率データとの比較対照される予め定められた値(閾値)を、体動閾値設定部531で変化させることにより、体動計数に関する検出感度の調整を行うことができ、基本波データの強度の値と比較対照される任意の値(閾値)を、呼吸閾値設定部532で変化させることにより、基本波データRfを検出するための周波数分布データFsの検出感度の調整を行うことができる。
【0159】
したがって、センサユニット300Aが、本来の監視対象である被検者10Aからの反射マイクロ波の他に本来の監視対象ではない他の被検者10Bからの反射マイクロ波を検出するのを抑制することができ、センサユニット300Bが、本来の監視対象である被検者10Bからの反射マイクロ波の他に本来の監視対象ではない他の被検者10Aからの反射マイクロ波を検出するのを抑制することができる。
【0160】
これにより、各被検者10A,10Bの安否状態の検出精度が低下するのを防止乃至抑制することができる。
【0161】
なお、体動閾値設定部531による閾値の調整や、呼吸閾値設定部532による閾値の調整は、上述した、センサユニット300とサーバ400とに分割された構成のものにおいてのみ行われるものではなく、
図1,2に示した実施例においても適用できることはいうまでもない。
【0162】
また、体動閾値設定部531による閾値の調整、呼吸閾値設定部532による閾値の調整は、1つの病室に複数の被検者が存在する場合にのみ行われるものではなく、センサユニット300が監視対象としている被検者10が滞在する部屋の広さ等に応じて行われるものであってもよい。
【0163】
例えば、体動閾値設定部531により設定される閾値としては、広い部屋に1人の被検者10のみが居て、センサユニット300から距離5[m]程度の範囲を検出したい場合には、「+閾値」を+0.1[V]、「−閾値」を−0.1[V]程度に設定す
ればよい。
【0164】
一方、上述したような、1つの病室に複数の被検者10A,10Bが居て、センサユニット300から距離1[m]以内の範囲だけを検出したい場合には、「+閾値」を+1.0[V]、「−閾値」を−1.0[V]程度に設定す
ればよい。
【0165】
6畳間アパートに1人の被検者10のみが居て、センサユニット300から距離2[m]程度の範囲を検出したい場合(アパートの隣室の他者を検出したくない場合)には、「+閾値」を+1.0[V]と+0.1[V]との間の値、「−閾値」を−1.0[V]と−0.1[V]との間の値に設定すればよい。
【0166】
また、呼吸閾値設定部532により設定される閾値としては、広い部屋に1人の被検者10のみが居て、センサユニット300から距離5[m]程度の範囲を検出したい場合には、「閾値」を0.5程度に設定す
ればよい。
【0167】
一方、上述したような、1つの病室に複数の被検者10A,10Bが居て、センサユニット300から距離1[m]以内の範囲だけを検出したい場合には、「閾値」を1.0程度に設定す
ればよい。
【0168】
6畳間アパートに1人の被検者10のみが居て、センサユニット300から距離2[m]程度の範囲を検出したい場合(アパートの隣室の他者を検出したくない場合)には、閾値を1.0と0.5との間の値に設定すればよい。
【実施例4】
【0169】
上述した実施例3の安否監視装置1等は、1つの空間(病室)に2人またはそれ以上の被検者10が居る状況に対応可能なものであったが、
図16は、これとは反対に、例えば1人の被検者10のみで複数の部屋を使用する状況(
図17)に対応する実施形態である。
【0170】
すなわち、2以上の部屋を有する戸建て住宅や集合住宅に一人暮らしで生活を営むことは一般的に想定され、そのような状況下では、監視対象である被検者10は1人であるが、
図17に示すように、居間、寝室、浴室、トイレという各部
屋に対応して複数のセンサユニット300A,300B,300C,300Dが設置された構成となる。
【0171】
このように、互いに異なる複数の場所である各部屋にそれぞれセンサユニット300が設置された状況下において、被検者10は特定の時間には、居間、寝室、浴室、トイレという複数の部屋のうちいずれか1つの部屋にしか存在していないため、その存在していない部屋に設置されたセンサユニット300からの信号のみに基づいて、サーバ400の安否パターン判定部6が安否判定を行うと、誤った結果が出力される虞がある。
【0172】
そこで、
図16に示した実施形態の安否監視装置1等は、
被検者10に対応して組み合わせる必要があるセンサユニット300A〜300Dの出力を組み合わせて安否情報として出力するデータマージ部700をサーバ400に備える。
【0173】
データマージ部700において組み合わせる必要があるセンサユニット300A〜300Dについては、サーバ400に、
被検者10に対応した4つのセンサユニット300A〜300Dを特定する情報(例えば、ID番号)を被検者10に対応付けて対象者登録情報として対象者登録情報記憶部800に記憶させておき、この記憶された対象者登録情報を、データ受信部630、データマージ部700および安否パターン判定部6に入力する。
【0174】
一方、各センサユニット300A〜300Dには、前述したID番号が付されていて、各センサユニット300A〜300Dの無線送信部610が送出するデータのヘッダ情報として付加されたID番号は、データ受信部630およびデータマージ部700に読みとられ、対象者登録情報で特定されたID番号に一致するデータを、組み合わせの対象とすればよい。
【0175】
安否パターン判定部6は、データマージ部700によって、センサユニット300Aから出力されたデータと、センサユニット300Bから出力されたデータと、センサユニット300Cから出力されたデータと、センサユニット300Dから出力されたデータとを組み合わせた安否情報を入力して安否パターンデータAsを出力する。
【0176】
ここで、安否パターン判定部6が行う安否判定は、まず各センサユニット300A〜300Dからそれぞれ入力された体動数Tdと呼吸数Rrとが、実施例1と同様に安否パターンA〜Eに該当するか否かを判定し、各センサユニットの判定結果を総合してそれぞれのパターンA〜Eに該当するか否かを判定のするもので、例えば以下のとおりである。
(1)パターンA(異常活動)
各センサユニット300A,300B,300C,300Dからそれぞれ入力された体動数Tdに基づいた判定であり、まず、各センサユニット300A,300B,300C,300Dから入力された体動数Tdごとの判定を行う。
【0177】
すなわち、「体動異常」がT1分間継続したときは「異常」と判定する。ただし、T1は日中については10分間、就寝中は5分間とする。なお、「体動異常」、「体動有り」、「体動無し」、の区別の判定については、実施例1で示した方法と同じであり、体動数Td<=10(10以下)のとき「体動無し」、体動数Td>10(10超え)のとき「体動有り」、体動数Td>500(500超え)のとき「体動異常」とする。
【0178】
そして、センサユニット300Aからの信号についての判定結果と、センサユニット300Bからの信号についての判定結果と、センサユニット300Cからの信号についての判定結果と、センサユニット300Dからの信号についての判定結果との組み合わせに応じて、パターンAについての判定結果を出力する。
【0179】
ここでの組み合わせに応じた判定は、「異常」を真、「異常でない」を偽としたときの論理和である。
【0180】
すなわち、いずれか1つのセンサユニット300の信号についての判定結果が「異常」であるときのパターンAの判定結果は「異常」であり、4つのセンサユニット300の信号についての判定結果が全て「異常でない」ときのパターンAの判定結果は「異常でない」である。
(2)パターンB(異常呼吸)
各センサユニット300A,300B,300C,300Dからそれぞれ入力された呼吸数Rrに基づいた判定であり、まず、各センサユニット300A,300B,300C,300Dから入力された呼吸数Rrごとの判定を行う。
【0181】
すなわち、「呼吸異常」がT2分間継続したときは「異常」と判定する。ただし、T2は日中については10分間、就寝中は3分間とする。なお、「呼吸異常」、「呼吸正常」、「呼吸未検出」、の区別の判定については、実施例1で示した方法と同じであり、区間Rで基本波データRfが検出されたとき「呼吸正常」、周波数R2以上で基本波データRfが検出されたとき「呼吸異常」、基本波データRfが検出されないとき「呼吸未検出」とする。
【0182】
そして、センサユニット300Aからの信号についての判定結果と、センサユニット300Bからの信号についての判定結果と、センサユニット300Cからの信号についての判定結果と、センサユニット300Dからの信号についての判定結果との組み合わせに応じて、パターンBについての判定結果を出力する。
【0183】
ここでの組み合わせに応じた判定は、「異常」を真、「異常でない」を偽としたときの論理和である。
【0184】
すなわち、いずれか1つのセンサユニット300の信号についての判定結果が「異常」であるときのパターンBの判定結果は「異常」であり、4つのセンサユニット300の信号についての判定結果が全て「異常でない」ときのパターンBの判定結果は「異常でない」である。
(3)パターンC(長時間活動)
各センサユニット300A,300B,300C,300Dからそれぞれ入力された体動数Tdに基づいた判定であり、まず、各センサユニット300A,300B,300C,300Dから入力された体動数Tdごとの判定を行う。
【0185】
すなわち、「体動有り」がT3分間継続したときは「異常」と判定する。ただし、T3は日中については60分間、就寝中は10分間とする。
【0186】
そして、センサユニット300Aからの信号についての判定結果と、センサユニット300Bからの信号についての判定結果と、センサユニット300Cからの信号についての判定結果と、センサユニット300Dからの信号についての判定結果との組み合わせに応じて、パターンCについての判定結果を出力する。
【0187】
ここでの組み合わせに応じた判定は、「異常」を真、「異常でない」を偽としたときの論理和である。
【0188】
すなわち、いずれか1つのセンサユニット300の信号についての判定結果が「異常」であるときのパターンCの判定結果は「異常」であり、4つのセンサユニット300の信号についての判定結果が全て「異常でない」ときのパターンCの判定結果は「異常でない」である。
(4)パターンD(体動・呼吸消失)
各センサユニット300A,300B,300C,300Dからそれぞれ入力された体動数Tdおよび呼吸数Rrに基づいた判定であり、まず、各センサユニット300A,300B,300C,300Dから入力された体動数Tdおよび呼吸数Rrごとの判定を行う。
【0189】
すなわち、「体動無し」および「呼吸正常」または「呼吸異常」({「体動無し」および「呼吸正常」}または{「体動無し」および「呼吸異常」})がT4分間異常(T2分間未満)継続した状態から、「体動無し」および「呼吸未検出」がT5分間継続したときは「異常」と判定する。ただし、T4は日中については5分間、就寝中は3分間とし、T5も日中については5分間、就寝中は3分間とする。
【0190】
そして、センサユニット300Aからの信号についての判定結果と、センサユニット300Bからの信号についての判定結果と、センサユニット300Cからの信号についての判定結果と、センサユニット300Dからの信号についての判定結果との組み合わせに応じて、パターンDについての判定結果を出力する。
【0191】
ここでの組み合わせに応じた判定は、「異常」を真、「異常でない」を偽としたときの論理積である。
【0192】
すなわち、4つのセンサユニット300の信号についての判定結果が全て「異常」であるときのパターンDの判定結果は「異常」であり、いずれか1つのセンサユニット300の信号についての判定結果が「異常でない」ときのパターンDの判定結果は「異常でない」である。
(5)パターンE(異常外出)
各センサユニット300A,300B,300C,300Dからそれぞれ入力された体動数Tdおよび呼吸数Rrに基づいた判定であり、まず、各センサユニット300A,300B,300C,300Dから入力された体動数Tdおよび呼吸数Rrごとの判定を行う。
【0193】
すなわち、「体動有り」の後、T6分間からT7分間連続して「体動無し」および「呼吸未検出」のときは「異常」と判定する。ただし、T6は日中については2分間、就寝中も2分間とし、T7は日中については60分間、就寝中は20分間とする。
【0194】
そして、センサユニット300Aからの信号についての判定結果と、センサユニット300Bからの信号についての判定結果と、センサユニット300Cからの信号についての判定結果と、センサユニット300Dからの信号についての判定結果との組み合わせに応じて、パターンEについての判定結果を出力する。
【0195】
ここでの組み合わせに応じた判定は、「異常」を真、「異常でない」を偽としたときの論理積である。
【0196】
すなわち、4つのセンサユニット300の信号についての判定結果が全て「異常」であるときのパターンEの判定結果は「異常」であり、いずれか1つのセンサユニット300の信号についての判定結果が「異常でない」ときのパターンEの判定結果は「異常でない」である。
【0197】
以上のように、4つのセンサユニット300A,300B,300C,300Dからサーバ400にそれぞれ送信されたデータが、データマージ部700で
被検者10に対するデータとしてマージされた安否情報として生成され、この安否情報が安否パターン判定部6に入力され、安否パターン判定部6が安否パターンA〜Eのいずれかに該当するか否かによって安否判定を行う。
【0198】
安否パターン判定以下の安否パターンA〜Eに対して、緊急程度に比例して安否ポイントを付与するなどの処理は実施例1において既に説明したものと同じである。
【0199】
なお、上述した各パターンA〜Eがそれぞれ意味するところも、実施例1において説明したものと同じである。
【0200】
以上のように構成された実施形態の安否監視装置1等によれば、単一の被検者10が複数の監視対象場所である4つの部屋に交互に出現するような状況にあっても、各監視対象場所にそれぞれセンサユニット300A〜300Dを設けて、これら4つのセンサユニット300A〜300Dからサーバ400にそれぞれ送信されたデータを、データマージ部700で組み合わせて安否パターンデータAsを出力するため、4つのセンサユニット300A〜300Dからサーバ400にそれぞれ送信されたデータごとに異なる安否パターンデータが出力されるのを防止することができ、精度のよい安否検出を行うことができる。
【0201】
なお、上述した安否パターン判定としてはパターンA〜Eの5つであるが、安否パターン判定部6は、これらの安否パターンの他に、
被検者10がいずれの部屋に居るのかの判定結果をパターンFとして、安否パターンデータに含めて出力するようにしてもよい。
【0202】
すなわち、例えば、各センサユニット300A,300B,300C,300Dからそれぞれ入力された体動数Tdおよび呼吸数Rrに基づいた判定であり、まず、各センサユニット300A,300B,300C,300Dから入力された体動数Tdおよび呼吸数Rrごとの判定を行う。
【0203】
すなわち、「体動無し」および「呼吸未検出」が継続している状態から、「体動有り」または「体動異常」と「呼吸正常」または「呼吸異常」とが同時に一定時間検出されたときは、その検出されたデータを出力したセンサユニット300A〜300Dが設置された部屋に入室したと判定する。この入室の判定は排他的であり、2つ以上の部屋で同時に「入室」の判定は起こらない。
【0204】
一方、「体動有り」または「体動異常」と「呼吸正常」または「呼吸異常」とが継続している状態から、大きな体動を伴って「体動無し」および「呼吸未検出」が一定時間検出されたときは、その検出されたデータを出力したセンサユニット300A〜300Dが設置された部屋から
被検者10が退室したと判定する。この退室の判定も排他的であり、2つ以上の部屋で同時に「退室」の判定は起こらない。
【0205】
このように判定された結果のパターンFを安否パターンデータに含めて出力することにより、
被検者10に全く異常が生じていない場合においても、被検者10が居る部屋を常に把握することができる。
【0206】
上述した実施形態においては、体動呼吸検出手段5から出力される体動数Tdを、「体動異常」、「体動有り」、「体動無し」、の3つの区分としていたが、この態様に代えて、「体動無し」(対応するフラグをM0とする)、「体動小」(対応するフラグをM1とする)、「体動中」(対応するフラグをM2とする)、「体動大」(対応するフラグをM3とする)、の4つの区分(ランク分け)として出力するようにしてもよい。
【0207】
同様に、体動呼吸検出手段5から出力される呼吸数Rrを、「呼吸異常」、「呼吸正常」、「呼吸未検出」、の3つの区分としていたが、この態様に代えて、「呼吸無し」(対応するフラグをB0とする)、「呼吸安静」(対応するフラグをB1とする)、「呼吸活動」(対応するフラグをB2とする)、「呼吸異常」(対応するフラグをB3とする)、の4つの区分(ランク分け)として出力するようにしてもよい。
【0208】
さらに、体動呼吸検出手段5からは、時間当たりの体動数Tdの変化を表す「体動一定」(対応するフラグをP0とする)、「体動増加傾向」(対応するフラグをP1とする)、「体動減少傾向」(対応するフラグをP2とする)、「体動ランダム」(対応するフラグをP3とする)、の3つを加えて出力してもよい。
【0209】
そして、体動呼吸検出手段5がこれらの体動数Tdの4つの区分の別を表すフラグ(例えば、M1)、呼吸数Rrの4つの区分の別(例えば、B1)、時間当たりの体動数Tdの変化の4つの区分の別(例えば、P0)を出力する際には、出力年月日時分秒(例えば、2011年02月10日、14時15分30秒)、センサユニット300のID番号(例えば、83651)、閾値を設定するパラメータ(例えば、1[m]の範囲のときとしてA(2[m]の範囲のときはB、5[m]の範囲のときはC))を加えたデータ(2011/02/10/14/15/30,83651,A,B1,M1,P0)として出力すればよい。