【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後、上下の方向は図中に示す方向を基準として説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施例に係るコードレスポリッシャの全体構成を示す側面図である。本実施例のコードレスポリッシャは、ドライバドリル等の電動工具1と、電動工具1に取り付けられるフレキシブルシャフト101と、フレキシブルシャフト101の先端側(電動工具1と反対側の端部)に取り付けられるポリッシャ本体200の3つの部分によって主に構成される。電動工具1は、着脱可能な電池パック4の電力により駆動されるドライバドリルであって、本実施例においてはポリッシャ本体200を駆動させるためにモータの回転制御を工夫し、従来の回転制御モードに加えて新たな回転制御モードである“ポリッシュモード”を追加したものである。
【0021】
フレキシブルシャフト101は、電動工具1に着脱可能に装着される先端工具の1つとしてチャック12に取り付けられるものであり、所定の長さを有する接続棒たる中空パイプ106と、その電動工具1側に取り付けられる装着部102と、中空パイプ106の先端側に固定される自在継手110と、自在継手110の先端に固定される差込角115によって主に構成される。自在継手110は、2つの保持部材たるヨーク111、114と、これらに取り付けられお互いの軸方向が90度となるように交差して配置されるシャフト112、113を含んで構成される。ヨーク114の下側には、差込角115が形成されるものであって、可撓自在な回転軸で、回転力を所定の角度を有する方向に向きを変えて伝達することができるものである。本実施例では、自在継手110を用いたことによってヨーク114に固定される差込角115の軸方向中心線(=図中の鉛直線)と中空パイプ106との角度θ
1を所定の範囲内で自由に変化させることができる。ここで、角度θ
1は、0〜45度程度分確保すると好ましいが、実際の作業においては0〜30度程度の範囲内でポリッシュ作業を行うと好適である。尚、
図1では、中空パイプ106が鉛直線より後方側に傾いている様子を示しているが、同様にして鉛直線より前方向に、及び、鉛直線より左右方向に傾くことが可能である。
【0022】
ポリッシャ本体200は、ポリッシュ作業を行うための先端工具(作業機器)であって、図示しないブラシ等が取り付けられたパッド204を保持し、所定の面圧を重力方向に与えながらパッド204を回転させるものである。回転基台201の下側には取付基台203が設けられ、取付基台203はパッド204を図示しない面ファスナーや、その他の固定器具によって着脱可能な構成とされる。面ファスナーは、フック状に起毛された側とループ状に密集して起毛された側とを押し付けることにより、容易に貼り付けと取り外しが自在にできるものであり、例えばマジックテープ(株式会社クラレの登録商標)として市販されているものを利用できる。回転基台201の中央の回転軸付近には、差込角115の凸部に対応する凹部201a形成される。ここでは回転基台201の直径が10〜50cm程度で有り、パッド204は回転基台201と同じ大きさ又はやや大きめに製造される。回転基台201は、金属製、合成樹脂製、木製又はこれらの組み合わせにより任意に製造することができ、取付基台203は、ゴム製、合成樹脂製、金属製とすることができ、下側が平面状に形成されて、面全体に面ファスナーが貼り付けられる。一方、パッド204の下側あるいはそれ自体は図示していないが、ブラシ、スポンジ、ポリッシングペーパ、バフ等の一般的なポリッシャに用いられる作業用具である。ポリッシャ本体200の回転基台201の大きさを5〜45cm程度で適切に設定し、パッド204を適切に選択すれば作業箇所、作業位置に応じて適切なポリッシュ作業を行うことができる。
【0023】
図2はフレキシブルシャフト101の単体形状を示す側面図である。自在継手110の部分は側面図であるが、上側が部分は断面図にて示している。本実施例において、軽量化の観点からフレキシブルシャフト101は円筒形のアルミ合金製の中空パイプ106を用いて製造される。中空パイプ106の上側端部(電動工具1に取り付けられる側の端部)には、一体成形により製造された装着部102が固定される。装着部102は、強度の観点から鉄系の金属にて製造されると好ましく、チャック12に装着可能な円柱状の細径部103と、中空パイプ106の内部に嵌挿される中径部105と、細径部103と中径部105の間に形成され、径方向外側に太径に構成されるフランジ部104が形成される。細径部103と中径部105は、回転軸方向と垂直な断面が円形となるように構成されるが、細径部103側は回転軸方向と垂直な断面を六角形又は多角形状に形成しても良い。中空パイプ106の径方向外側からはネジ107が設けられ、中空パイプ106の抜け止め及び回転止めをしている。中空パイプ106の直径D
1(
図1参照)は、チャック12の直径D
c(
図1参照)よりも十分細くなることが好ましく、中空パイプ106がチャック12の回転操作の妨げにならずチャック12の操作がし易い。フランジ部104の径は、中空パイプ106の直径D
1とほぼ同じ程度とする良い。
【0024】
中空パイプ106の先端(下端)部分には、自在継手110のヨーク111が固定される。この固定の方法は図示しないネジを用いても良いし、溶接しても良いし、圧入しても良いし、その他の公知の接続方法にて固定することができる。差込角115は、ポリッシャ本体200に形成された凹部と嵌合させることにより、自在継手110とポリッシャ本体200を着脱可能に接続するための凸部であって、回転軸方向に垂直な断面形状が四角形である。また作業中に自在継手110とポリッシャ本体200の接続が外れないように、差込角115の一側面に裏からスプリングで支持する小さい金属ボール116が形成され、そのボールがポリッシャ本体200側の凹部の側面に形成された窪み(図示せず)に係合するように構成した。
【0025】
図3は、
図1の電動工具1部分を上方から見た上面図である。電動工具1の胴体部2aには、サイドハンドル40を取り付けることができる。サイドハンドル40は、片手(通常右手)で把持するグリップ部2bに加えて、作業者がもう一方の手(通常左手)にて電動工具1を安定的に保持して作業ができるようにするための着脱可能なサブハンドルである。サイドハンドル40の一端側(右側)には、円環状の固定部42が形成され、固定部42は胴体部2aの外周側に位置づけされる保持部2d(後述する
図5を参照)を締め付けることにより固定される。サイドハンドル40の他端側(左側)には、作業者が片手で把持するためのグリップ41が設けられる。グリップ41は、合成樹脂又はゴム製であって表面に滑り止めの凹凸を設けると好ましい。このように電動工具1にサイドハンドル40を取り付けることによって、作業者は両手にて電動工具1を安定して保持することができ、疲労を低減させたコードレスポリッシャを実現できる。
【0026】
図4は、ポリッシャ本体200にウエイト120を装着した状態を示す図である。ポリッシャ本体200は、その自重によってブラシ等のポリッシュ部材を床等に押しつけて作業を行うが、床等の汚れの度合いによってはポリッシャ本体200の自重が不足する場合がある。そこで、本実施例では円環状のウエイト120をポリッシャ本体200の上側であって自在継手110に周囲に配置できるように構成した。回転基台201の上側であって周方向に180度隔てた2箇所にはネジ穴201bが形成され、2つの蝶ネジ121によりウエイト120が回転基台201に固定される。ウエイト120は、例えば円環状の鉄又はその他の重量のある材料性の塊であって、軸方向の一方側から他方側に延びる複数(ここでは2つ)の貫通穴120aが形成される。回転基台201の上部には、蝶ネジ121が螺合されるネジ穴(雌ねじ)201bが形成される。ウエイト120は、その中心軸が回転基台201の回転中心と一致すると共に、ウエイト120の重心が回転基台201の回転軸上に位置するように取り付けられ、ポリッシャ本体200の回転時にポリッシャ本体200が安定して回転できるようになっている。
【0027】
図5は本発明の実施例に係る電動工具1の全体構造を示す断面図である。
図5に示すように、電動工具1には、ハウジング2の胴体部2a内にブラシレス直流方式のモータ3が収容され、動力伝達部、即ち、モータ3の回転力を減速する減速機構部30とクラッチ機構部33を介してスピンドル(出力軸)16に装着されたチャック(先端工具保持部)12に着脱自在に保持されるドライバ、ドリルや、本発明に係るポリッシングアタッチメント等の図示しない先端工具に回転力を与える。モータ3の後端側には、モータ3を駆動するためのインバータ回路基板6が設けられる。モータ3は、いわゆるインナーロータ型のブラシレスDCモータであり、回転軸3eにマグネット3bを有するロータ3aが取り付けられ、ハウジング2側にステータコイル3dを有するステータ3cが固定される。ステータコイル3dへの駆動電流の供給には、FET(Field effect transistor)等のスイッチング素子7を用いた公知のインバータ回路が用いられる。モータ3の前方側において、回転軸3eと同軸上に小型の冷却ファン17が設けられる。モータ3が回転することによって冷却ファン17も回転し、ハウジング2の後方付近に設けられる空気取入口18a(
図3参照)、18b(
図1参照)から外気が吸引され、吸引された外気はスイッチング素子7やモータ3の周囲を流れることによりこれらを冷却した後に、ハウジング2の側方に設けられる空気排出口19(
図1参照)から排出される。
【0028】
ハウジング2の胴体部2aは、グリップ部2b及びバッテリ取付部2cと共に合成樹脂材料の一体成形により製造され、モータ3の回転軸3eを通る鉛直面において左右方向に2分割されるよう形成される。組立の際にはハウジング2の左側部材と右側部材を準備し、予め、
図5の断面図で示すような一方のハウジング2(例えば左側のハウジング)に、モータ3、減速機構部30、クラッチ機構部33等の組込みを行い、しかる後、他方のハウジング2(例えば右側のハウジング)を重ねて、複数のネジ8で締め付ける方法が取られる。
【0029】
ハウジング2のバッテリ取付部2cには、モータ3の駆動電源となる電池パック4が着脱可能に装着される。電池パック4の上部には、モータ3のインバータ回路基板6を制御するための制御回路基板9が前後左右方向に延びるように設けられる。グリップ部2bの上端部にはトリガスイッチ13が配設され、トリガスイッチ13のトリガ13aがバネ力によって押された状態でグリップ部2bから前方に突出する。使用者はグリップ部2bを片手で把持し、人差し指等によってトリガ13aを後方に引くことによって、トリガ押込量(操作量)を調整し、モータ3の回転速度(回転数)を制御することができる。モータ3の回転方向は、正逆切替レバー14を操作することによって切り替えることができる。電池パック4は、トリガスイッチ13および制御回路基板9へ動作電源を供給するとともに、インバータ回路基板6へモータ3の駆動電力を供給する。電池パック4を構成する二次電池は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッカド電池等を用いることができる。バッテリ取付部2cであって制御回路基板9の上方付近においては、モータの運転モードを設定したり、バッテリチェックのチェックをしたり、LEDのオンオフ制御を行うための操作パネル20が設けられる。
【0030】
胴体部2a先端側に配置されるクラッチ機構部33は、減速機構部30の出力軸に得られる回転トルクをスピンドル16の負荷に応答してスピンドル16に伝達するか否かを制御する。これにより、予めトルク調整及びモード切り替え用のダイヤル5によって所望の締付けトルク(負荷トルク)に設定しておくと、クラッチ機構部33は、減速機構部30の出力軸の回転力が設定した締付けトルクに達したとき、その出力軸が空転してスピンドル16及びチャック12への回転伝達を遮断する機能を持つ。減速機構部30は、モータ3の回転軸3eのピニオンギアに噛合う、例えば、3段の遊星歯車減速機構(変速ギアケース)から構成される。減速機構部30は、変速比を切換えるためのシフトノブ15を有する。使用者の手動によるシフトノブ15の切換え操作により低速と高速の2段階で変速が可能となる。
【0031】
クラッチ機構部33は、クラッチ爪たるピン34と、ピン34の先端を案内するものであって円周方向に複数の軸方向貫通穴が形成されたギヤケース35を含んで構成される。第3段目の遊星歯車減速機構を構成するリングギヤ32の前端面には軸方向に延びるクラッチ爪(図示せず)が設けられており、この凸状の爪は円周方向に均等間隔で6つ設けられ、それぞれの爪の凹部分にはピン35の略半球状の後端部が係合する。複数のピン35は、ギヤケース35に対して回転不能であって軸方向に移動可能に設けられたクラッチプレート37に固定される。クラッチプレート37の前方側はコイルスプリング38が配置され、コイルスプリング38の前方側は軸方向に移動可能な押圧部材39により保持される。押圧部材39はダイヤル5を回転することによって同期して回転するように構成されるものであって、クラッチ機構の作動トルクを設定又はクラッチ機構の動作を遮断させるための設定手段を構成する。押圧部材39の内壁側には、クラッチケース36の外周部に設けられたねじ部と螺合可能なねじ部が形成され、ダイヤル5を回転操作されることにより押圧部材39も回転し、押圧部材39はねじ部にそってコイルスプリング38の軸方向に移動する。ダイヤル5と押圧部材39は、回転方向に固定されており、軸方向に移動可能である。この押圧部材39の軸方向(前後方向)に移動することによりピン35の後方への付勢力の強さを調整することが可能となる。このようにダイヤル5を回転させることにより締付けトルク(負荷トルク)を調整できる。尚、
図5ではスピンドル16よりも上側部分には、最前位置にある押圧部材39の断面図を示しており、スピンドル16よりも下側部分には、最後位置にある押圧部材39’の断面図を示しているが、これらは理解を助けるためにそのように上下で非対称に図示したものである。39がダイヤルを回す前であってコイルスプリング38が最も伸びた状態であり、39’がダイヤルを回した後でコイルスプリング38が圧縮された状態である。押圧部材39は、円周方向に連続したリング状の部材であるため、実際には上下で対称な形状となる。
【0032】
押圧部材39をコイルスプリング38が十分圧縮されるまでダイヤル5を回動させ、
図2の押圧部材39’の位置にセットしてピン35の軸方向の動きを抑止すると、リングギヤ32の爪がピン35を軸方向に移動しようとしても、コイルスプリング38をそれ以上圧縮できないためにクラッチプレート37の軸方向の移動が抑止され、ピン35が移動できず、結果的にリングギヤ32の回転が阻止される。
【0033】
図6は、
図5の操作パネル20の詳細を示す上面図である。操作パネル20には動作モード切替ボタン21が設けられる。動作モード切替ボタン21は、ボタンを押す毎にチャック12の回転速度が変わるように設定されるものである。つまり動作モード切替ボタン21を1回押すごとに、第二モードの速度1→速度2→速度3→速度4と切替わり、この次に更に動作モード切替ボタン21を押すと、第一モードの200rpm→100rpm→50rpmと切替わり、この次に更に動作モード切替ボタン21を押すと、再び第二モードの速度1に戻る。設定された回転速度に応じてLED22a、23aのいずれか一つが点灯するために、作業者は点灯位置を見ることによって、ドライバモード枠22とポリッシュモード枠23のどちらの枠内のLED22が点灯しているかで、設定されたモードを容易に認識することができる。LED22a、23aの色は異なるように設定すると好ましい。ここではモータ3自体の速度をドライバモード(第二モード)においては、4段階に変更可能であって、シフトノブ15による2段階の変速に合わせて合計8段階の速度で運転が可能である。つまり、シフトノブ15がHigh(高速側)の時には、動作モードを速度1〜速度4に切替えるとチャック12の回転速度を1700、1400、1200、900(rpm)に切替え設定可能であり、シフトノブ15がLow(低速側)の時には、動作モードを速度1〜速度4に切替えるとチャック12の回転速度を400、330、280、210(rpm)のいずれかに設定可能である。また、ポリッシュモード(第一モード)においてはシフトノブ15をLow(低速側)にセットして動作させるもので、その場合は200、100、50rpmのポリッシュ作業に適した回転速度でチャック12が回転するようモータ3を制御する。
【0034】
ポリッシュモード枠23の右側にはエラー表示用のLED24が設けられる。このLED24は、何らかのエラーが発生したときは点滅することによって作業者に注意を促すものである。ここでは、ポリッシュモードを選択する場合は、正逆切替レバー14を正回転位置(締め付け方向位置)に設定し、シフトノブ15をLow(低速側)に設定し、更にダイヤル5をドリルマーク49に位置づける必要があるが、そのように設定されていない場合又はこれら条件のうちいずれか1つが合致しない場合においてトリガ13aを引いたときに点滅する。LED24の右側にはバッテリ残量表示25が設けられる。バッテリ残量表示25には2つのLED25a、25bが設けられ、電池残量表示スイッチ26を押すと、LED25a、25bが点灯して電池残量を確認することができる。LED25a、25bは、2つ点灯が“十分な電池残量有り”、1つ点灯が“電池残量が半分”、2つとも点灯せずが“非常に少なくなっている”を示している。照明スイッチ27は、先端工具付近を照射するLED等の照明を点灯又は消灯させるためのスイッチである。
【0035】
図7は、
図1のクラッチ動作の調整用のダイヤル5を上から見た部分上面図である。ハウジング2の胴体部2aの一部には三角マーク29が設けられる。三角マーク29に対向するダイヤル5の円周方向には、ドリルマーク49、クラッチ設定値を示す目盛り数値47が表示され、目盛り数値47によってクラッチ機構の動作するトルクの大きさを容易に認識することができる。ダイヤル5の設定位置は、クラッチモードが1〜22の22段階有り、それにクラッチ機構部33が動作しないドリルモードがある。目盛り数値47は、例えば1、3、5..19までが奇数数値で表示され、19の後には22が表示される。また、各数値表示の間には、“・”マーク46が表示され、ダイヤル5を三角マーク29にあわせる際の指標を示している。ドリルマーク49は、ドリルビット等の先端工具を絵文字で表示したもので、三角マーク29をドリルマーク49にあわせた状態の際に、押圧部材39が最後位置になってコイルスプリング38を最大圧縮してピン35の軸方向の動きを抑止し、クラッチが動作しないようになる。目盛り数値が“22”からドリルマーク49の間の位置は、この位置のまま使用してはいけない位置であるので、横線48が引かれてこの位置にダイヤル5をあわせないように使用者に注意を促している。本実施例によるポリッシュモードで稼働させる際にはクラッチ機構部33が動作しないように、三角マーク29をドリルマーク49に合わせることが適切である。本実施例においては、ダイヤル5がクラッチモードに設定されているか否かを検出する図示しないクラッチ検出センサを設けて、制御部51(
図8で後述)がクラッチモードに設定されているかどうかを検出できるように構成した。
【0036】
次に、
図8を用いてモータ3の駆動制御系の構成と作用を説明する。
図8はモータの駆動制御系の構成を示すブロック図であり、本実施例では、モータ3は3相のブラシレスDCモータで構成される。モータ3は、いわゆるインナーロータ型で、一対のN極およびS極を含むマグネット3b(永久磁石)を埋め込んで構成されたロータ3aと、ロータ3aの回転位置を検出するために60°毎に配置された3つの位置検出素子65と、位置検出素子65からの位置検出信号に基づいて電気角120°の電流の通電区間に制御されるスター結線された3相巻線U、V、Wからなるステータ3cを含んで構成される。なお、本実施例では、ロータ3aの位置検出は、ホールIC等の位置検出素子65を用いて電磁結合的に行っているが、電機子巻線の誘起起電圧(逆起電力)を、フィルタを通して論理信号として取出すことによってロータ3aの位置を検出するセンサレス方式を採用することもできる。
【0037】
インバータ回路70は、3相ブリッジ形式に接続された6個のFET(以下、単に「トランジスタ」という)Q1〜Q6と、フライホイールダイオード(図示せず)から構成され、インバータ回路基板6に搭載される。ブリッジ接続された6個のトランジスタQ1〜Q6の各ゲートは制御信号回路52に接続され、また、6個のトランジスタQ1〜Q6のソースまたはドレインはスター結線された電機子巻線U、VおよびWに接続される。これによって、6個のトランジスタQ1〜Q6は、制御信号回路52から出力されたスイッチング素子駆動信号によってスイッチング動作を行い、インバータ回路70に印加される電池パック4の直流電圧を、3相(U相、V相、W相)交流電圧Vu、Vv、Vwとして、電機子巻線U、V、Wへ電力を供給する。
【0038】
制御回路基板9には、制御回路50が搭載され、制御回路50は制御部51、制御信号回路52、回転位置検出回路53、回転数検出回路54、モード位置センサ55、加速度センサ56、電流検出回路57、スイッチ操作検出回路58,回転方向検出回路59、電圧検出回路60を含んで構成される。制御部51は、図示されていないが、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するためのCPU、後述するフローチャートに相当するプログラムや制御データを記憶するためのROM、データを一時記憶するためのRAM、タイマ等を有するマイコンを含んで構成される。電流検出回路57はモータ3に流れる電流を検出する電圧検出手段であって、シャント抵抗76の両端の電圧から電流値を検出し、その出力は制御部51に入力される。電圧検出回路60は電池パック4の電圧を検出するための回路であり、コンデンサ79の両端にて検出された検出電圧は制御部51に入力される。FET77は制御部51への電圧供給を制御するためのスイッチング素子であり、そのON又はOFFは制御信号回路52にて駆動される。FET78は電池パック4の電力をインバータ回路70へ供給するためのスイッチとなるスイッチング素子であり、そのON又はOFFは制御信号回路52にて駆動される。
【0039】
スイッチ操作検出回路58は、トリガ13aの移動ストロークに応答するトリガスイッチ13の引き量に応じてモータ3への印加電圧、すなわちPWM信号のデューティ比を設定するための回路である。回転方向検出回路59は、モータの正逆切替レバー14による正回転方向または逆回転方向の操作を検出してモータ3の回転方向を設定するための回路である。回転位置検出回路53は、3つの位置検出素子65の出力信号に基づいてロータ3aとステータ3cの電機子巻線U、V、Wとの関係位置を検出するための回路である。回転数検出回路54は、単位時間内にカウントされる回転位置検出回路53からの検出信号の数に基づいてモータの回転速度(回転数)を検出する回路である。制御信号回路52は、制御部51からの出力に基づいてトランジスタQ1〜Q6にPWM信号を供給する。PWM信号のパルス幅の制御によって各電機子巻線U、V、Wへ供給する電力を調整して設定した回転方向へのモータ3の回転速度を制御することができる。
【0040】
モード位置センサ55は、動作モード切替ボタン21(
図6参照)によって設定されたモードを検出して制御部51に出力するためのモード選択部である。加速度センサ56は、制御回路基板9の上に設けられるものであって、電動工具1に加わる加速度を測定することによって電動工具1の異常状態を検出するものである。例えば、作業者がポリッシュ作業中に何らかの理由によって電動工具1の把持状態が解除されて、電動工具1が落下状態になったときには、加速度センサ56からの出力により制御部51は落下状態にあることを検出することができ、直ちにモータ3の回転を抑制するか、又は、停止させることができる。加速度センサ56は、落下状態だけで無く他の機器に衝突してしまった際の衝撃を検出することができる。クラッチ検出センサ62は、ダイヤル5によってクラッチモードとドリルモードのいずれが設定されているかを検出するためのセンサである。この出力によって制御部51はダイヤル5の設定がクラッチモードであるかドリルモードであるかを認識することができるので、ポリッシュモードにおけるモータ起動の有無を判定することができる。例えば、作業者が動作モード切替ボタン21によってポリッシュモードを選択したにもかかわらずに、クラッチモードを選択している場合は、エラー表示を行うと共にモータ3の起動を抑止する。ギヤ位置検出センサ63は、シフトノブ15がHigh(高速側)かLow(低速側)のいずれに設定されているかを検出するセンサであって、その出力は制御部51に出力される。尚、本実施例では、加速度センサ56、クラッチ検出センサ62、ギヤ位置検出センサ63を設けるように構成したが、これらのうちいずれか又はすべてを省略してもポリッシュモードによる制御を実現することが可能である。
【0041】
送受信部64は、無線通信によって電動工具1の外部の機器と通信を行うための送信回路及び受信回路を含んで構成される。本実施例では、トリガ操作を外部から送られる信号によってオン又はオフにすることが可能なように構成したので、送受信部64をハウジング2の内部に設けたものである。送受信部64は、後述の実施例4の構成を実現するために必要な素子であるので、実施例1〜3までの構成を用いる場合には、送受信部64の設定を省略しても良い。
【0042】
図9はトリガ13aの引き代とモータ3の回転速度の関係を示す図である。トリガ13aの引き代とモータ3の回転速度の関係は、トリガ13aの操作量信号をスイッチ操作検出回路58から受けた制御部51の記憶装置にその制御手順を格納しておいて、マイクロプロセッサ等によりソフトウェア的に制御することにより容易に実現できる。本実施例ではブラシレス方式のモータ3への駆動電流を徐々に増大させることによってソフトスタートによる起動制御を実現させている。
図9において、横軸はトリガ13aの引き代であって、縦軸はそのときのモータ3の回転速度である。ここでは、トリガ13aの引き代が0〜S
1は不感帯(いわゆる遊び)とされ、ストロークS
1〜S
4の間が実際のトリガの移動可能なストロークである。ここで、図では0〜S
1大きさを全体のストロークに比べて大きめに図示しているが、この大きさをどの程度に設定するかは任意である。従来から備えられるクラッチモード及びドリルモードの制御を示したのが速度81である。ここでは、ストロークS
1〜S
3の範囲においてトリガ13aの引き量とモータ3の回転速度が比例するように制御する。設定モードに応じて最高回転速度が異なるため、トリガ13aを一杯に引いた際の最高回転速度がN
2の時は速度81のようになり、最高回転速度がN
1の時は点線で示す速度83のようになる。
【0043】
一方、ポリッシュモードにおいてはトリガ13aの操作を直接反映させずに、制御部51が関与することにより速度82のように制御する。即ち、電動工具1にポリッシングアタッチメントを装着しているときには、作業者は動作モードとして“ポリッシュモード”を選択する。その際、トリガ13aのストロークがS1以上の場合は、その引き量の大きさに関わらずにモータ3の回転速度がN
1になるように制御する。N
1の大きさは、
図6で示した動作モード切替ボタン21によって設定された200、100、50(rpm)のいずれかである。この際、制御部51は、モード位置センサで第一モードが選択された際には設定された速度で一定に先端工具保持部を回転させるようにフィードバック制御を行う。このようにトリガの引き代に比例させないトリガ制御を行うことによって、“ポリッシュモード”において作業者がトリガ13aをわずかにでも引くだけでモータ3は回転速度N
1の定速回転を維持することができる。このため、作業中に作業者がトリガ13aの引き量を変化させてしまった場合であっても、安定して一定の速度でポリッシャ本体を回転させることができる。尚、本実施例の電動工具1にはトリガ13aを引いたままで固定して、作業者が指をトリガ13aから離してもモータ3の回転を維持するようにする機械式のトリガロック機構は設けられていないが、それを設けるように構成しても良い。本実施例のポリッシュモードにおいては、トリガ13aを短い時間だけ引いたらモータ3の回転をオンとして、作業者がトリガ13aを離すことを許容し、もう一度トリガ13aを引いたらモータ3の回転をオフとするようなソフトウェア制御によるトリガロック機構を採用している。このため、ポリッシュモードでの作業中に不意に本体を離してしまったとしても、モータ3及びポリッシュ本体200が回転し続けることになるが、本体が床などに落下したことを上述の加速度センサ56の信号に基づいて検出し、直ちにモータ3の回転を抑制するか、又は、停止させることが有用である。なお、この加速度センサ56の信号に基づくモータ制御は、ポリッシュモードの時にのみ有効とすることが望ましい。ポリッシュモードでの作業における本体の落下を検出するためのセンサとしては、加速度に限られず、音、ひずみ、ハンドルの把持力等であっても良い。
【0044】
図10は、本実施例によるモータ3の起動制御(加速制御)及び停止制御(ブレーキ制御)を説明するための図である。本実施例によるポリッシュモード(第一モード)と、従来の動作モード(第二モード:クラッチモード又はドリルモード)とにおいては、共にソフトスタート制御を行い、停止制御を行う。しかしながら、使用する先端工具の違いからのそれらの制御状況が異なる。回転速度N
3は従来の動作モード(第二モード)におけるモータの回転速度84であって、時刻0から時刻t
1の間に徐々に加速をして、時刻t
1からt
3の間を回転速度N
3で回転し、時刻t
3になったら作業者がトリガ13aを離すことにより、停止制御が行われて時刻t
4にてモータ3の回転が停止する。この際の停止制御は、急激にモータ3の回転速度を低下させてできるだけ早く停止するようにする。一方、本実施例におけるポリッシュモードでは、モータの回転速度85を従来の動作モード(第二モード)に比べてソフトに制御する。これは、ポリッシャ本体200の重量がドライバドリルに通常用いられる先端工具に比べてはるかに重いため、急に加速させたり急に停止させると、作業者への反動が大きくなる上に、衝撃によりチャック12の固定が緩んでしまう恐れがあるためである。そこで、ポリッシャ本体200の加速及び減速に最適なようにモータの加減速制御を行うようにした。回転速度N
1はポリッシュモード(第一モード)におけるモータの回転速度85であって、時刻0から時刻t
3の間に徐々に加速をして、時刻t
1からt
3の間を回転速度N
1で回転し、時刻t
3になったら作業者がトリガ13aを離すことにより、停止制御が行われて時刻t
5にてモータ3の回転が停止する。この際の停止制御は、急激に回転を低下させないようにして、時刻t
4よりもはるかに遅い時刻t
5にてポリッシャ本体200の回転が停止するようにした。
【0045】
ここで、スタート制御における加速時間と回転速度の関係を見ると、(ポリッシュモードの最高回転速度N
1)<(従来のモードの最高回転速度N
3)となるのに対して、(ポリッシュモードの加速時間A
1)>(従来のモードの加速時間A
3)となり、従来のモードに比べてモータがよりソフトに起動される。一方、停止制御においても、定速回転時の設定回転速度の差があるにもかかわらずに(ポリッシュモードの減速時間B
1)>(従来のモードの減速時間B
3)とした。これらの関係は、回転速度に一番差がある組み合わせ、例えば従来のモードの最高回転速度(
図6の1700rpm)と、ポリッシュモードの最低回転速度(
図6の50rpm)においても同様の関係が成り立つように制御される。このように本実施例では、制御部が行うモータの停止制御は、第一モード選択時と第二モード選択時とで異なるように設定され、特に第一モードたるポリッシュモードでは、スタート制御と停止制御をポリッシャ本体200に合わせて最適に制御して、第二モード選択時よりもソフトに制御されるように構成したので、ドライバドリルを用いて快適なポリッシング作業を行うことができる。
【0046】
次に、本実施例のポリッシュモードにおけるモータの回転制御を説明する。作業者は電動工具1にフレキシブルシャフト101を介してポリッシャ本体200を装着する。ポリッシャ本体200を、床面等の磨く対象位置に位置づけた後、電動工具1のグリップ部2bを右手で把持し、サイドハンドル40のグリップ41を左手で把持して、トリガ13bを引く。このトリガ13bが引かれると、スイッチ操作検出回路58(
図8参照)から制御部51にその信号が入力される。この際、制御部51は、モード位置検出センサ55の出力によりモータ3の動作モードのいずれかが設定されているか識別し、ポリッシュモード(回転速度が200、100、50rpmのいずれか)が設定されているかを判断する。ここで、ポリッシュモードが設定されている場合は、次に、クラッチ検出センサ62によって、ドリルモード(
図7でダイヤル5がドリルマーク49にセット)であるかを判定する。ここでドリルモードで無い時は、制御部51はクラッチ機構の作動設定を検出されたことにより、モータ3の起動を規制し、エラー表示(
図6のLED24を点滅)させて、作業者にドリルモードへの変更を促すようにする。尚、電動工具1によっては、本実施例のように機械的なクラッチ機構でなくて、電子的なクラッチ機構を用いるものがあるので、その場合は、制御部51がクラッチ機構の作動トルクの設定又は前記クラッチ機構の動作を遮断させるような制御を行えば良い。
【0047】
次に、ダイヤル5がドリルモードであることが確認できると、制御部51は回転方向検出回路59(
図8参照)の出力からモータ3の回転方向の設定が正回転方向であるか逆回転方向であるかを検出する。ここで正回転方向である場合は、制御部51は、
図9及び
図10で示したトリガ操作とソフトスタート制御に従ってモータ3を起動して定速回転させる。ここで、回転方向検出回路59の出力が逆回転方向で有る場合は、モータ3の起動を行わずにエラー表示(
図6のLED24を点滅)させて、作業者に正回転方向への変更を促す。尚、ポリッシュモードにあっては、正逆切替レバー14の設定に関わらずに、モータ3を一方向にのみ回転させるように電力供給を行うように構成しても良い。この場合は、たとえ正逆切替レバー14が逆回転方向の位置にあっても制御部51は、モータ3の回転方向が正回転方向になるように制御する。
【0048】
以上のように回転制御を行うが、本実施例では加速度センサ56(
図8参照)を備えているため、これを電動工具1の落下を検出するセンサとして用いて、制御部51は第一モードでのモータ3への電力供給中に、加速度センサ56の出力に応じて制御部51により電動工具の落下が検出された際に、制御部51はモータ3の電力供給を停止させるか、又は制動制御をおこなうことにより積極的にポリッシャ本体200の回転を停止するように制御すると良い。
【0049】
以上のように本実施例によれば、締め付け作業を行う電動工具1にポリッシャ本体200を用いることによって、床磨き等のポリッシュ作業を容易に行うことができるようになったので、専用のポリッシャ本体を準備せずにすむようになった。さらに、ポリッシュ作業の際に、AC電源供給のための電源ケーブルをコンセントに接続する必要が無いので取り扱いが容易であり、さらに、AC用のコンセントが無い場所においてもポリッシュ作業を行うことができる。さらに、電動工具1にポリッシャ本体200を装着しない場合は、ドリルやドライバ等の先端工具を装着する電動工具(締め付け工具)として従来通り使用できる。
【実施例4】
【0052】
次に、
図13〜
図17を用いて本発明の第4の実施例を説明する。第4の実施例においては第3の実施例に加えて電動工具1を遠隔で保持するための延長ハンドルユニット400を追加したものである。延長ハンドルユニット400は、電動工具1のグリップ部2bに固定されるものであって所定の長さの延長パイプ404を有し、延長パイプ404の先端部分には作業者が左右の手にて保持するためのハンドル部が形成され、左右方向に延びるハンドル部には2つのグリップ部(
図13では403bのみ図示)が形成される。延長ハンドルユニット400の他端側(下側)には、グリップ部2bを左右から挟持することにより電動工具1を固定するための固定部405が形成される。固定部405は左右に配置される一組の分割された略平行な部材であって、対向する内側面にはグリップ部2bの外形に沿った形状の凹部分405aが形成され、グリップ部2bと凹部分405aが嵌合する状態にて4つのネジ407a〜407dにより固定される。固定部405の上側部分には延長パイプ404を所定の角度だけ揺動可能なように軸支するためのフランジ部405bが形成され、フランジ部405bの中心には貫通穴405cが形成される。貫通穴405cには揺動軸406が貫通される。
【0053】
図14は本発明の第4の実施例に係るコードレスポリッシャの上面図である。
図12で示した第3の実施例と比べるとわかるように、ここではサイドハンドル40(
図3参照)を取り外して、その代わりにハウジング2のグリップ部2bに延長ハンドルユニット400を取り付けたものである。この際、電動工具1自体がポリッシャ本体200を床面に対して押しつけるための荷重となるため、通常はウエイト120を装着する必要は無いが、それだけでは荷重が不足する場合は
図14のように蝶ネジ121を用いてウエイト120を回転基台201に取り付けることで質量をさらに増やすことができるので、床面などのポリッシュ作業を効率良く行うことができる。
【0054】
図15は本発明の第4の実施例に係るコードレスポリッシャの側面図であって、延長ハンドルユニット400の動作を説明するための図である。延長ハンドルユニット400は図に示すように矢印Bの方向に揺動可能であって、点線で示す位置から実線で示す位置までの任意の位置に延長パイプ404を固定して、又は、揺動可能な状態のままポリッシュ作業を行うことができる。このように揺動可能な延長ハンドルユニット400を用いることにより、作業が終了した後には点線のように延長ハンドルユニット400がほぼ鉛直方向に延びるように配置すれば、
図15の状態のまま運搬又は収容する場合の必要なスペースを小さくすることができる。
【0055】
図16は本発明の第4の実施例に係るコードレスポリッシャの延長ハンドルユニットの形状を示す図である。延長パイプ404の先端には左右方向に延びるハンドルパイプ402a、402bが取付部材401によって固定される。ハンドルパイプ402a、402bには作業者が作業しやすいように取付部材401から左右に離れるに従って後方に後退するような形状とされ、左右の両端には合成樹脂製のグリップ403a、403bが装着される。また、右側のグリップ403aと取付部材401との間には電動工具1を遠隔操作するためのスイッチユニット410が設けられ、作業者は、スイッチレバー412を操作することによって電動工具1のトリガをオン、又は、オフに遠隔制御することができる。スイッチユニット410と電動工具1のトリガスイッチ13へはリード線を取り回すことによって接続しても良いが、本実施例においては無線通信方式を用いて、コードレスにてスイッチユニット410と電動工具1との通信を行うように構成した。そのため、ハンドル部にその電源となるバッテリ413を設けた。バッテリ413は、例えば乾電池や充電可能な二次電池を用いることができる。
【0056】
スイッチユニット410にはスイッチレバー412が設けられ、スイッチレバー412を一方向(例えば右方向)に揺動させることにより、電動工具1の制御部はトリガスイッチがオンの状態と同様の制御を行い、スイッチレバー412を逆方向(例えば左方向)にすることによりトリガスイッチがオフの状態と同様の制御を行うもので、これが電動工具1のオン・オフスイッチとしての機能を果たす。スイッチユニット410の一部には、スイッチレバー412がオンの状態にあるとき、又は、電動工具1からモータ3が回転中である旨の信号を受信したときに点灯するLED411が設けられ、作業者はLED411の点灯状況において電動工具1の動作状態を認識することができる。尚、本実施例においては延長ハンドルユニット400側のスイッチユニット410から電動工具1の遠隔操作ができるのは、電動工具1がポリッシュモードのいずれかの回転速度(200、100、50rpm:
図6参照)が設定されているときであり、それ以外の動作モード(例えばドライバモード)の際には上記通信ができないか制御部51がそれを無視するように構成される。また、シフトノブ15がHIGH側の設定になっていたり、ポリッシュモードであっても正逆切替レバー14の設定が逆回転である場合は制御部51がモータ3を回転しないように構成すると誤動作を防止できて好ましい。この場合は、電動工具1の制御部51からのエラー信号が送信されるので、電動工具1側からの無線送信の指示によってLED411を点滅させることにより作業者にエラー状態であることを知らせることができる。
【0057】
図17は本発明の第4の実施例に係るコードレスポリッシャの延長ハンドルユニット400に設置されるスイッチ操作の制御回路を示す図である。ここでは、スイッチ操作を検出する制御部451を用い、無線による送受信部454を制御することにより電動工具1側の送受信部64(
図8参照)と通信を行う。制御部451には、表示部452とトリガのオン又はオフを指示するための入力部453が設けられる。
図16の例では表示部452として、トリガをONにする場合に点灯するLED411が用いられ、入力部453としてスイッチレバー412が用いられる。本実施例では電動工具1側に無線による送受信部64が設けられるため、ハンドル部に設置される遠隔操作機器は様々なものを用いることができる。例えば、赤外線リモコン装置、赤外線通信機能付きの携帯電話、ブルートゥース(Bluetooth SIG社の登録商標である)や無線LAN機能付きの携帯電話、スマートフォンやPDA等を用いて電動工具1のトリガのオン又はオフの制御を行うように構成することも可能である。
【0058】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例では電動工具として、二次バッテリを用いたいわゆるコードレス式の電動工具の例を用いて説明したが、コードレス式だけに限られずに、AC電源を使用する携帯型の電動工具であっても良い。さらに、電動工具1として、ポリッシュモードを有するドライバドリルの例で説明したが、それだけに限られずに、ポリッシュモードを有するインパクトドライバやドリル等の他の動力伝達部を有する回転工具、又は締め付け工具であっても良い。