特許第5991486号(P5991486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5991486画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5991486
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 5/00 20060101AFI20160901BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   G06T5/00 730
   H04N1/40 101E
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-527714(P2012-527714)
(86)(22)【出願日】2011年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2011067455
(87)【国際公開番号】WO2012017946
(87)【国際公開日】20120209
【審査請求日】2014年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2010-175089(P2010-175089)
(32)【優先日】2010年8月4日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】戸田 真人
【審査官】 山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/025486(WO,A1)
【文献】 特開2003−256833(JP,A)
【文献】 特開2004−221644(JP,A)
【文献】 特開2008−227959(JP,A)
【文献】 特開2007−310886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 5/00
H04N 1/407
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像を部分領域に分割し、前記各部分領域の平均輝度値を算出し、前記各部分領域の平均輝度値に基づいて前記各部分領域の局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成し、
前記各部分領域の平均輝度の局所的階調補正後の平均輝度値を算出し、前記局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度値の平均値に基づいて、画像の全体的な輝度の大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成し、
前記部分領域の各々に対応する局所的階調補正のトーンマッピングカーブと前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを合成し、前記各部分領域に対応する合成トーンマッピングカーブを生成し、注目画素を含む部分領域に対応する前記合成トーンマッピングカーブにより、前記注目画素に対して前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する
画像処理方法。
【請求項2】
入力画像を部分領域に分割し、前記各部分領域の平均輝度値を算出し、前記各部分領域の平均輝度値に基づいて前記各部分領域の局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成し、
前記各部分領域の平均輝度の局所的階調補正後の平均輝度値を算出し、前記局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度値の最大値および最小値に基づいて、画像の全体的なコントラストの大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成し、
前記部分領域の各々に対応する局所的階調補正のトーンマッピングカーブと、前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを合成し、前記各部分領域に対応する合成トーンマッピングカーブを生成し、注目画素を含む部分領域に対応する前記合成トーンマッピングカーブにより、前記注目画素に対して、前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する
画像処理方法。
【請求項3】
前記局所的階調補正と前記大局的階調補正との少なくとも一方のトーンマッピングカーブがガンマ補正カーブである
請求項1又は請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
入力画像を部分領域に分割し、前記各部分領域の平均輝度値を算出し、前記各部分領域の平均輝度値に基づいて前記各部分領域の局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する局所的階調補正用トーンマッピングカーブ生成手段と、
前記各部分領域の平均輝度の局所的階調補正後の平均輝度値を算出し、前記局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度値の平均値に基づいて、画像の全体的な輝度を予測する予測手段と、
前記予測した画像の全体的な輝度に基づいて、画像の全体的な輝度の大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する大局的階調補正用トーンマッピングカーブ生成手段と、
前記部分領域の各々に対応する局所的階調補正のトーンマッピングカーブと、前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを合成し、前記各部分領域に対応する合成トーンマッピングカーブを生成し、注目画素を含む部分領域に対応する前記生成された合成トーンマッピングカーブにより、前記注目画素に対して前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する補正手段と
を有する画像処理装置。
【請求項5】
入力画像を部分領域に分割し、前記各部分領域の平均輝度値を算出し、前記各部分領域の平均輝度値に基づいて前記各部分領域の局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する局所的階調補正用トーンマッピングカーブ生成手段と、
前記各部分領域の平均輝度の局所的階調補正後の平均輝度値を算出し、前記局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度値の最大値および最小値に基づいて、画像の全体的なコントラストを予測する予測手段と、
前記予測した画像の全体的な画像の全体的なコントラストに基づいて、画像の全体的なコントラストの大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する大局的階調補正用トーンマッピングカーブ生成手段と、
前記部分領域の各々に対応する局所的階調補正のトーンマッピングカーブと、前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを合成し、前記各部分領域に対応する合成トーンマッピングカーブを生成し、注目画素を含む部分領域に対応する前記合成トーンマッピングカーブにより、前記注目画素に対して、前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する補正手段と
を有する画像処理装置。
【請求項6】
入力画像を部分領域に分割し、前記各部分領域の平均輝度値を算出し、前記各部分領域の平均輝度値に基づいて前記各部分領域の局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する処理と、
前記各部分領域の平均輝度の局所的階調補正後の平均輝度値を算出し、前記局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度値の平均値に基づいて、画像の全体的な輝度を予測する処理と、
前記予測した画像の全体的な輝度に基づいて、画像の全体的な輝度の大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する処理と、
前記部分領域の各々に対応する局所的階調補正のトーンマッピングカーブと、前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを合成し、前記各部分領域に対応する合成トーンマッピングカーブを生成し、注目画素を含む部分領域に対応する前記生成された合成トーンマッピングカーブにより、前記注目画素に対して前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する処理と
を情報処理装置に実行させる画像処理プログラム。
【請求項7】
入力画像を部分領域に分割し、前記各部分領域の平均輝度値を算出し、前記各部分領域の平均輝度値に基づいて前記各部分領域の局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する処理と、
前記各部分領域の平均輝度の局所的階調補正後の平均輝度値を算出し、前記局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度値の最大値および最小値に基づいて、画像の全体的なコントラストを予測する処理と、
前記予測した画像の全体的な画像の全体的なコントラストに基づいて、画像の全体的なコントラストの大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する処理と、
前記部分領域の各々に対応する局所的階調補正のトーンマッピングカーブと、前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを合成し、前記各部分領域に対応する合成トーンマッピングカーブを生成し、注目画素を含む部分領域に対応する前記合成トーンマッピングカーブにより、前記注目画素に対して、前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する処理と
を情報処理装置に実行させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像内に存在する逆光や日陰領域の明るさやコントラストを向上させるため、画像内の局所領域の平均輝度値をもとに階調変換を行う画像処理方法がある。(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
特許文献1では、注目画素周辺の局所領域の加重平均輝度値(以下、周辺輝度値と記載する)をもとに注目画素の補正量を決定することで、画像中に含まれるハイライト領域やシャドー領域の階調を補正している。
【0004】
特許文献2では、入力された画像からその画像の逆光度を算出し、算出された逆光度と注目画素の周辺輝度値から当該画素を補正するトーンマッピングカーブを生成し、補正を実行している。
【0005】
また、どちらの特許文献においても、処理の高速化のために、注目画素毎に局所領域の平均輝度を算出し補正量を決定する代わりに、入力画像をいくつかの矩形領域に等分割し、各矩形領域における平均輝度値を用いて、注目画素の補正量を決定する方式がその実施例に記述されている。
【0006】
特許文献1では、各矩形領域における平均輝度値から、注目画素の周辺輝度値を補間処理によって算出し、最適な補正量を決定している。
【0007】
特許文献2では、各矩形領域における平均輝度値によって生成されるトーンマッピングカーブから、注目画素を補正するための新たなトーンマッピングカーブを補間によって生成し、補正処理を実行している。
【0008】
これらの手法では、画像内の局所領域のみに適した補正を実行しているため、補正後の画像全体の明るさが劣化する問題がある。
【0009】
例えば、強い逆光画像に対応するためには、暗部や中間調の視認性を高めるために、局所的補正パラメータ記録手段13に強い補正を実行する局所的補正パラメータを保存しておく必要がある。しかし、同パラメータを用いて非逆光画像を補正すると、画像全体が明るくなりすぎ、露出オーバーとして捉えられる低品質な補正画像を出力してしまう。
【0010】
特許文献1では、この問題に対応するために、局所領域での階調補正後に、再度、画像全体の階調を整える大局的階調補正を備える例が記述されている。
【0011】
図6を用いて、関連技術の画像処理装置を説明する。図6は、特許文献1および特許文献2の記述をもとに作成したブロック図である。図6に示す画像処理装置は、矩形領域平均輝度算出手段11と、局所的補正用トーンマッピングカーブ生成手段12と、局所的階調補正手段13と、大局的補正用トーンマッピングカーブ生成手段14と、大局的階調補正手段15と、局所的補正パラメータ記憶手段16と、大局的補正パラメータ記憶手段17とから構成される。
【0012】
矩形領域輝度算出手段11は、各矩形領域における平均輝度値を算出する。
【0013】
局所的補正用トーンマッピングカーブ生成手段12は、入力画像の解析結果と局所的補正パラメータ記憶手段16から読み出されたパラメータに従って、各周辺輝度値に対する、局所領域での階調補正を実施するための局所的補正用トーンマッピングカーブを生成する。
【0014】
局所的階調補正手段13は、矩形領域平均輝度から補間処理によって注目画素の周辺輝度値を算出し、算出周辺輝度値に対応する局所的補正用トーンマッピングカーブに従って、注目画素を補正し、中間画像を生成する。
【0015】
大局的補正用トーンマッピングカーブ生成手段14は、中間画像の解析結果と大局的補正パラメータ記憶手段17から読み出されたパラメータに従って、画像全体の階調を整える大局的補正用トーンマッピングカーブを生成する。
【0016】
大局的階調補正手段15は、大局的補正用トーンマッピングカーブに従って、中間画像を補正し、出力画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開WO2006/025486
【特許文献2】特開2007‐243969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述した技術では、高品質な階調補正を行うために、局所的階調補正手段13による補正処理と大局的階調補正手段15による補正処理とをそれぞれ実行する必要があり、全体的な処理コストが増大するという課題があった。
【0019】
更に、大局的補正用トーンマッピングカーブ生成のために解析する、中間画像を保持する必要があるため、入力画像サイズと同一サイズのデータ記憶領域が必要であった。
【0020】
そこで、本発明は上記課題に鑑みて発明されたものであって、その目的は、必要されるメモリが少なく、低演算量で、高品質な階調補正を実行できる画像処理方法、画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、入力画像中の各注目画素をその周辺領域の輝度によって、局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成し、前記局所的階調補正後の画像の全体的な輝度又はコントラストの少なくとも一つを、前記入力画像を分割した部分領域の平均輝度から予測し、前記予測に基づいて、大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成し、前記局所的階調補正のトーンマッピングカーブと前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを統合し、前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する画像処理方法である。
【0022】
本発明は、入力画像中の各注目画素の周辺領域の輝度によって、局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する局所的階調補正用トーンマッピングカーブ生成手段と、前記局所的階調補正後の画像の全体的な輝度又はコントラストの少なくとも一つを、前記入力画像を分割した部分領域の平均輝度から予測する予測手段と、前記予測に基づいて、大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する大局的階調補正用トーンマッピングカーブ生成手段と、前記局所的階調補正のトーンマッピングカーブと前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを統合し、前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する補正手段とを有する画像処理装置である。
【0023】
本発明は、入力画像中の各注目画素をその周辺領域の輝度によって、局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する処理と、前記局所的階調補正後の画像の全体的な輝度又はコントラストの少なくとも一つを、前記入力画像を分割した部分領域の平均輝度から予測する処理と、前記予測に基づいて、大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する処理と、前記局所的階調補正のトーンマッピングカーブと前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを統合し、前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する処理とを情報処理装置に実行させる画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、必要されるメモリが少なく、低演算量で、高品質な階調補正を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は本発明による実施の形態の構成を示すブロック図である。
図2図2は本発明による実施の形態の動作を示すフローチャートである。
図3図3は大局的補正用トーンマッピングカーブの一例を示す図である。
図4図4は大局的補正用トーンマッピングカーブの一例を示す図である。
図5図5は本発明による実施の形態の情報処理システムのブロック図である。
図6図6は本発明の関連技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明を実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明による実施の形態の構成を示すブロック図である。図1に示す本発明による画像処理装置は、矩形領域平均輝度算出手段21と、局所的補正用トーンマッピングカーブ生成手段22と、矩形領域平均輝度補正手段23と、大局的補正用トーンマッピングカーブ生成手段24と、階調補正手段25と、局所的補正パラメータ記憶手段26と、大局的補正パラメータ記憶手段27とから構成される。
【0028】
本発明による実施の形態は、あらかじめ、矩形領域平均輝度を局所的補正用トーンマッピングカーブによって補正した、補正矩形領域平均輝度を解析し、大局的補正用トーンマッピングカーブを生成することで、局所的階調補正と大局的階調補正とを同時に実行する点で、上述した関連技術と大きく異なる。以下、各手段の動作を詳細に説明する。
【0029】
矩形領域平均輝度算出手段21は、関連技術と同様に、各矩形領域における平均輝度値を算出する。入力画像がRGB色空間で記述されたカラー画像の場合、色変換によって、注目画素の明るさを表す成分(明度:HSV色空間におけるV成分や、Lab色空間におけるL成分、輝度:YUV色空間におけるY成分等)を算出し、この値を輝度値として用い、平均輝度値を算出する。入力画像がYUV色空間やHSV色空間等で記述されるカラー画像の場合、輝度成分や明度成分と呼ばれる色の明るさを表す成分の値を輝度値として用い、平均輝度値を算出する。
【0030】
局所的補正用トーンマッピングカーブ生成手段22は、関連技術と同様に、入力画像の解析結果と局所的補正パラメータ記憶手段26から読み出されたパラメータに従って、各周辺輝度値に対する、局所領域での階調補正を実施するための局所的補正用トーンマッピングカーブを生成する。尚、局所的補正用トーンマッピングカーブ生成手段12の出力は、トーンマッピングカーブでなく、その形状を表すパラメータであってもよい。例えば、局所的補正用トーンマッピングカーブがガンマ補正カーブである場合、各周辺輝度値に対するガンマ補正カーブを出力する代わりに、各周辺輝度値に対するガンマ値を出力することも可能である。
【0031】
矩形領域平均輝度補正手段23は、矩形領域平均輝度を局所的補正用トーンマッピングカーブによって補正し、各矩形領域での局所的階調補正後の平均輝度の予測値を表す補正矩形領域平均輝度を算出する。
【0032】
補正矩形領域平均輝度を算出する一例として、矩形領域平均輝度を注目画素値および周辺輝度値に設定した局所的補正処理によって算出する方法がある。この方法では、i番目の矩形領域における補正後の矩形領域平均輝度値So(i)は、入力された矩形領域平均輝度値S(i)を周辺輝度値とした局所的補正用トーンマッピングカーブを選択し、選択されたトーンマッピングカーブについて、S(i)に対する出力値を読み出すことで算出される。また、局所補正用トーンマッピングカーブがガンマ補正カーブである場合、補正矩形領域平均輝度値So(i)は、S(i)に対するガンマ値γ(S(i))を用いて、次式の式1のように算出される。ただし、Mは、矩形領域平均輝度値がとりうる最大値を表している。
【0033】
【数1】
また、補正矩形領域平均輝度値を算出する方法として、あらかじめ矩形領域平均輝度に対する補正矩形領域平均輝度の値をデータとして保持しておき、算出時にこのデータの中から対応する算出値を読み出す方法を用いてもよい。
【0034】
大局的補正用トーンマッピングカーブ生成手段24は、補正矩形領域平均輝度の解析値と大局的補正パラメータ記憶手段26から読み出されたパラメータに従って、画像全体の階調を整える大局的補正用トーンマッピングカーブを生成する。
【0035】
大局的補正用トーンマッピングカーブを生成する方法として、補正矩形領域平均輝度の解析値として、局所的階調補正後の画像全体の平均輝度の予測値を算出し、この値を、大局的補正用パラメータ記憶手段25にパラメータとして保持された、出力画像の目標平均輝度値Pに変換するトーンマッピングカーブを生成する方法がある。
【0036】
局所的階調補正後の画像全体の平均輝度の予測値を算出する方法として、各矩形領域平均輝度の平均値の予測値を算出する方法がある。この方法の場合、分割矩形領域の総数をNとすると、予測値Eは、次式の式2のように算出される。
【0037】
【数2】
また、別の方法として、それぞれの補正矩形領域平均輝度の中央値を予測値とする方法を用いてもよい。
【0038】
予測値Eを目標平均輝度値Pに変換するトーンマッピングカーブの生成方法として、これらの変換を実行するガンマ補正カーブを生成する方法がある。予測画像輝度Eを目標平均輝度値Pに変換するためのガンマ値γ(E,P)は、次式の式3によって算出することができる。
【0039】
【数3】
予測画像輝度Eを目標平均輝度値Pに変換する別の大局的補正用トーンマッピングカーブとして、図3に示すような線形的なトーンマッピングカーブを用いても良い。
【0040】
大局的補正用トーンマッピングカーブを生成する別の方法として、補正矩形領域平均輝度の解析値として、補正矩形領域平均輝度の最大値と最小値を利用し、図4に示すようなトーンマッピングカーブを生成する方法がある。図4のトーンマッピングカーブでは、MaxおよびMinは補正矩形領域平均輝度の最大値と最小値を表し、Thは、大局的補正パラメータ記憶手段26に保持されたパラメータ値を表す。
【0041】
なお、大局的補正用トーンマッピングカーブ生成手段24の出力は、局所的補正用トーンマッピングカーブ生成手段22の出力と同様に、トーンマッピングカーブでなく、その形状を表すパラメータであってもよい。
【0042】
階調補正手段25は、入力画像の各画素に対し、局所的補正用トーンマッピングカーブを用いた階調補正と大局的補正用トーンマッピングカーブを用いた階調補正とを施し、出力画像を生成する。
【0043】
例えば、ある注目画素に対する階調補正は、次のように実行される。まず、矩形領域平均輝度から、補間処理によって、注目画素位置の周辺輝度値を算出する。次に、算出された周辺輝度値から対応する局所的補正用トーンマッピングカーブを選択し、局所的階調補正を実行する。最後に、大局的補正用トーンマッピングカーブによる補正を行い、出力画素を生成する。
【0044】
入力画像がRGB色空間で記述されたカラー画像の場合、各カラーチャンネルに対して階調補正処理が実行される。また、入力画像がYUV色空間やHSV色空間等で記述されるカラー画像の場合、輝度成分や明度成分と呼ばれる色の明るさを表す成分に対してのみ階調補正処理が実行される。
【0045】
また、階調補正手段25における階調補正処理では、補正処理を実行する前に、局所的補正用トーンマッピングカーブと大局的補正用トーンマッピングカーブとを合成した新たなトーンマッピングカーブを生成しておき、生成された合成トーンマッピングカーブによって階調補正処理を実行してもよい。この場合、各画素の階調補正処理は、一度のトーンマッピングカーブの参照によって実行されるため、それぞれのトーンマッピングカーブを参照して補正するよりも全体として処理が高速化される。
【0046】
次に、図1および図2のフローチャートを参照して、本実施の形態の全体の動作を説明する。
【0047】
矩形領域輝度算出手段11は、各矩形領域における平均輝度値を算出する(S01)。
【0048】
局所的補正用トーンマッピングカーブ生成手段12は、局所領域での階調補正を実施するための局所的補正用トーンマッピングカーブを生成する(S02)。
【0049】
矩形領域平均輝度補正手段23は、各矩形領域での局所的階調補正後の平均輝度の予測値を表す補正矩形領域平均輝度を算出する(S03)。
【0050】
大局的補正用トーンマッピングカーブ生成手段24は、画像全体の階調を整える大局的補正用トーンマッピングカーブを生成する(S04)。
【0051】
階調補正手段25、入力画像の各画素に階調補正を施し、出力画像を生成する(S05)。
【0052】
以上の如く、本実施の形態によれば、必要とするメモリ量を小さくすることができ、かつ、低演算量で、画像内の逆光や日陰領域の階調を高品質に補正することができる。その理由は、あらかじめ局所的階調補正後画像の矩形領域平均輝度を推定し、大局的補正用トーンマッピングカーブを生成することで、局所的階調補正と大局的階調補正とを同時に実行するためである。
【0053】
尚、上述した発明の実施の形態においては、上述した説明からも明らかなように、ハードウェアで構成することも可能であるが、コンピュータプログラムにより実現することも可能である。
【0054】
図5に示す情報処理システムは、プロセッサ31,プログラムメモリ32,記憶媒体33からなる。記憶媒体33は、局所的補正パラメータ記憶手段16と、大局的補正パラメータ記憶手段27として機能する。記憶媒体303は、ハードディスク等の磁気記憶媒体や、不揮発性のメモリ等を用いることができる。
【0055】
プログラムメモリ302は、上述した矩形領域平均輝度算出手段21と、局所的補正用トーンマッピングカーブ生成手段22と、矩形領域平均輝度補正手段23と、大局的補正用トーンマッピングカーブ生成手段24と、階調補正手段25と同様な処理を行うプログラムが格納され、プロセッサ301はそのプログラムを読み出して同様な処理を行う。
【0056】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0057】
(付記1) 入力画像中の各注目画素をその周辺領域の輝度によって、局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成し、
前記局所的階調補正後の画像の全体的な輝度又はコントラストの少なくとも一つを、前記入力画像を分割した部分領域の平均輝度から予測し、
前記予測に基づいて、大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成し、
前記局所的階調補正のトーンマッピングカーブと前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを統合し、前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する
画像処理方法。
【0058】
(付記2) 各注目画素の周辺領域の輝度を、入力画像を分割した各部分領域の平均輝度から算出する付記1に記載の画像処理方法。
【0059】
(付記3) 前記入力画像を分割した各部分領域の平均輝度を、該平均輝度値を前記周辺領域とした局所的階調補正によって補正することで、局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度の予測値を算出する
付記1又は付記2に記載の画像処理方法。
【0060】
(付記4) 前記局所的階調補正後の画像の全体的な輝度の予測値を、前記局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度値の平均値を取ることで算出する
付記3に記載の画像処理方法。
【0061】
(付記5) 前記局所的階調補正後の画像の全体的なコントラストを、前記局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度値の予測値の最大値および最小値から算出する
付記3に記載の画像処理方法。
【0062】
(付記6) 前記局所的階調補正と前記大局的階調補正との少なくとも一方のトーンマッピングカーブがガンマ補正カーブである
付記1から付記5のいずれかに記載の画像処理方法。
【0063】
(付記7) 入力画像中の各注目画素の周辺領域の輝度によって、局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する局所的階調補正用トーンマッピングカーブ生成手段と、
前記局所的階調補正後の画像の全体的な輝度又はコントラストの少なくとも一つを、前記入力画像を分割した部分領域の平均輝度から予測する予測手段と、
前記予測に基づいて、大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する大局的階調補正用トーンマッピングカーブ生成手段と、
前記局所的階調補正のトーンマッピングカーブと前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを統合し、前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する補正手段と
を有する画像処理装置。
【0064】
(付記8) 前記局所的階調補正用トーンマッピングカーブ生成手段は、各注目画素の周辺領域の輝度を、入力画像を分割した各部分領域の平均輝度から算出する付記7に記載の画像装置。
【0065】
(付記9) 前記予測手段は、前記入力画像を分割した各部分領域の平均輝度を、該平均輝度値を前記周辺領域とした局所的階調補正によって補正することで、局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度の予測値を算出する
付記7又は付記8に記載の画像処理装置。
【0066】
(付記10) 前記予測手段は、前記局所的階調補正後の画像の全体的な輝度の予測値を、前記局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度値の平均値を取ることで算出する
付記9に記載の画像処理装置。
【0067】
(付記11) 前記予測手段は、前記局所的階調補正後の画像の全体的なコントラストを、前記局所的階調補正後の各部分領域の平均輝度値の予測値の最大値および最小値から算出する
付記9に記載の画像処理装置。
【0068】
(付記12) 前記局所的階調補正と前記大局的階調補正との少なくとも一方のトーンマッピングカーブがガンマ補正カーブである
付記7から付記11のいずれかに記載の画像処理装置。
【0069】
(付記13) 入力画像中の各注目画素をその周辺領域の輝度によって、局所的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する処理と、
前記局所的階調補正後の画像の全体的な輝度又はコントラストの少なくとも一つを、前記入力画像を分割した部分領域の平均輝度から予測する処理と、
前記予測に基づいて、大局的階調補正のトーンマッピングカーブを生成する処理と、
前記局所的階調補正のトーンマッピングカーブと前記大局的階調補正のトーンマッピングカーブとを統合し、前記局所的階調補正と前記大局的階調補正とを同時に実行する処理と
を情報処理装置に実行させる画像処理プログラム。
【0070】
以上好ましい実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形し実施することが出来る。
【0071】
本出願は、2010年8月4日に出願された日本出願特願2010−175089号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、画像内の逆光や日陰領域の階調を自動的に補正する画像処理装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
21 矩形領域平均輝度算出手段
22 局所的補正用トーンマッピングカーブ生成手段
23 矩形領域平均輝度補正手段
24 大局的補正用トーンマッピングカーブ生成手段
25 階調補正手段
26 局所的補正パラメータ記憶手段
27 大局的補正パラメータ記憶手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6