【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 XXII Congress of International Society for Photogrammetry & Remote Sensingの論文予稿集である「International Archives of the Photogrammetry,Remote Sensing and Spatial Information Sciences,Volume XXXIX−B1」,第87〜90頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンピュータに、道路に沿う構造物表面から抽出された点群の3次元座標データに基づき、目的構造物の表面における不陸を検出するデータ解析を行わせるためのプログラムであって、当該コンピュータを、
前記表面を想定した平らな基準面上に不陸検査位置を通る基準線を設定し、前記不陸検査位置で分割した前記基準線の一方側と他方側とからそれぞれ、前記点群のうち予め設定した近傍範囲内で前記基準線に沿って位置する第1及び第2の注目点群を抽出する点群抽出手段、及び、
前記注目点群を構成する各点の前記基準線に沿った座標及び前記基準面に対する法線方向に沿った座標をそれぞれ説明変数、従属変数とする回帰分析に関し、前記両注目点群の回帰係数が一致するとの仮説を所定の有意水準でF検定して、前記仮説が棄却された場合に前記不陸検査位置に対応する不陸が存在すると判定する不陸判定手段、として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の測定装置のレーザスキャナは搭載された自動測定車の幅方向に沿ってレーザ光による走査を行い、その走査幅が車幅程度となる構造であった。そのため、測定される路面は専ら車線の中央付近に限定され、車線の端の部分は測定しにくく、また複数車線の道路では車線ごとに測定車を走行させなければならないという問題があった。
【0007】
この点、モービルマッピングシステムは、道路だけでなく道路脇の領域も含む広い範囲を一度に高密度な点群を取得できる。一方、当該システムで得られる点群データをもとに地物を判読するなどの分析は、3次元CADで編集ツール等を利用して手作業で行われており、自動化は開発途上である。道路の不陸の検出も同様に手作業で行うとすると作業者の負担が大きいという問題がある。特に、路面の不陸は、道路上・道路脇に設置される地物ほどには形状が必ずしも明確ではなく、点群が形成する表面形状から人が目視で不陸を高精度に判読するのは容易ではない。
【0008】
本発明は、道路に沿う構造物表面から抽出された点群の3次元座標データに基づいて不陸を検出する作業の自動化を可能とする道路変状検出装置、道路変状検出方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る道路変状検出装置は、道路に沿う構造物表面から抽出された点群の3次元座標データに基づき、目的構造物の表面における不陸を検出する装置であって、前記表面を想定した平らな基準面上に不陸検査位置を通る基準線を設定し、前記不陸検査位置で分割した前記基準線の一方側と他方側とからそれぞれ、前記点群のうち予め設定した近傍範囲内で前記基準線に沿って位置する第1及び第2の注目点群を抽出する点群抽出手段と、前記注目点群を構成する各点の前記基準線に沿った座標及び前記基準面に対する法線方向に沿った座標をそれぞれ説明変数、従属変数とする回帰分析に関し、前記両注目点群の回帰係数が一致するとの仮説を所定の有意水準でF検定して、前記仮説が棄却された場合に前記不陸検査位置に対応する不陸が存在すると判定する不陸判定手段と、を有する。
【0010】
他の本発明に係る道路変状検出装置においては、前記不陸判定手段は、Chow検定により前記仮説を検定する。
【0011】
さらに他の本発明に係る道路変状検出装置においては、前記点群抽出手段は、前記基準線上の複数個所に前記不陸検査位置を設定し、当該各不陸検査位置にて互いに同じ所定個数の点からなる前記第1の注目点群及び前記第2の注目点群を設定し、前記不陸判定手段は、前記不陸検査位置それぞれにて、互いに共通のF分布に従うことになるF値を算出し、前記基準線に沿った当該F値の変動を表す情報を生成する。
【0012】
上記道路変状検出装置においては、前記点群抽出手段は、道路の表面に対応した前記基準面を設定し、道路の横断方向に沿って前記基準線を設定する構成とすることができる。
【0013】
また上記道路変状検出装置においては、前記点群抽出手段は、前記近傍範囲として前記基準面上にて前記基準線に沿って予め定められた幅を有する帯状領域を設定し、前記基準面に射影した位置が前記帯状領域内となる点で前記注目点群を構成することができる。
【0014】
本発明に係る道路変状検出方法は、道路に沿う構造物表面から抽出された点群の3次元座標データに基づき、目的構造物の表面における不陸を検出する方法であって、前記表面を想定した平らな基準面上に不陸検査位置を通る基準線を設定し、前記不陸検査位置で分割した前記基準線の一方側と他方側とからそれぞれ、前記点群のうち予め設定した近傍範囲内で前記基準線に沿って位置する第1及び第2の注目点群を抽出する点群抽出ステップと、前記注目点群を構成する各点の前記基準線に沿った座標及び前記基準面に対する法線方向に沿った座標をそれぞれ説明変数、従属変数とする回帰分析に関し、前記両注目点群の回帰係数が一致するとの仮説を所定の有意水準でF検定して、前記仮説が棄却された場合に前記不陸検査位置に対応する不陸が存在すると判定する不陸判定ステップと、を有する。
【0015】
本発明に係るプログラムは、コンピュータに、道路に沿う構造物表面から抽出された点群の3次元座標データに基づき、目的構造物の表面における不陸を検出するデータ解析を行わせるためのプログラムであって、当該コンピュータを、前記表面を想定した平らな基準面上に不陸検査位置を通る基準線を設定し、前記不陸検査位置で分割した前記基準線の一方側と他方側とからそれぞれ、前記点群のうち予め設定した近傍範囲内で前記基準線に沿って位置する第1及び第2の注目点群を抽出する点群抽出手段、及び、前記注目点群を構成する各点の前記基準線に沿った座標及び前記基準面に対する法線方向に沿った座標をそれぞれ説明変数、従属変数とする回帰分析に関し、前記両注目点群の回帰係数が一致するとの仮説を所定の有意水準でF検定して、前記仮説が棄却された場合に前記不陸検査位置に対応する不陸が存在すると判定する不陸判定手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、道路に沿う構造物表面から抽出された点群の3次元座標データに基づいて不陸を検出する作業の自動化が図られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)である道路変状検出システム2について、図面に基づいて説明する。本システムは、道路に沿う構造物の表面から抽出された点群の3次元座標データに基づき、目的とする構造物の表面における不陸を検出するデータ解析装置である。道路に沿う構造物は、路面の他、例えば、側壁やトンネルなど種々のものを含む。一方、本システムが目的とする構造物は、基本的には平滑であることが期待される表面を有するものであり、本システムは当該表面にて不陸を検出し、不陸が存在することに基づいて当該構造物の変状を検出する。
【0019】
点群データは例えば、上述のモービルマッピングシステムのように地上を走行する車両に搭載されたレーザスキャナにより取得される。また、レーザスキャナを地上に設置して計測を行っても良い。ここで、点群を構成する複数の計測点は空間内に離散的に位置する。この点群が道路表面等の凹凸形状を捉えるには、当該凹凸のスケールに応じた密度でレーザスキャンが行われる必要がある。この点、車両や三脚等の高さから行うレーザスキャンは、航空機等の高所から行うレーザスキャンとは異なり十分な走査密度を得ることができる。
【0020】
図1は、道路変状検出システム2の概略の構成を示すブロック図である。本システムは、演算処理装置4、記憶装置6、入力装置8及び出力装置10を含んで構成される。演算処理装置4として、本システムの各種演算処理を行う専用のハードウェアを作ることも可能であるが、本実施形態では演算処理装置4は、コンピュータ及び、当該コンピュータ上で実行されるプログラムを用いて構築される。
【0021】
当該コンピュータのCPU(Central Processing Unit)が演算処理装置4を構成し、後述する点群抽出手段20及び不陸判定手段22として機能する。
【0022】
記憶装置6はコンピュータに内蔵されるハードディスクなどで構成される。記憶装置6は演算処理装置4を点群抽出手段20及び不陸判定手段22として機能させるためのプログラム及びその他のプログラムや、本システムの処理に必要な各種データを記憶する。例えば、記憶装置6は、処理対象データとして解析の対象空間の点群データを格納する。
【0023】
入力装置8は、キーボード、マウスなどであり、ユーザが本システムへの操作を行うために用いる。
【0024】
出力装置10は、ディスプレイ、プリンタなどであり、本システムによる不陸の解析結果を画面表示、印刷等によりユーザに示す等に用いられる。
【0025】
以下、不陸検出の目的構造物が舗装路面であり、道路変状検出システム2が道路の横断方向に沿った道路表面プロファイルにて不陸を検出する場合を例に説明する。
図2は、道路変状検出システム2による路面の不陸検出処理の概略のフロー図である。
【0026】
ここで、不陸が存在しない仮想的な路面を基準面として設定し、当該平らな基準面上に道路横断方向に延びる基準線を設定する。また、基準線をxyz直交座標系のx軸とし、道路の縦断方向(又は車両の進行方向)及び基準面の法線方向をそれぞれy軸、z軸とする。
【0027】
後述するように不陸の検査は基準線上にて行われ、道路のxz断面での不陸が評価される。すなわち、基準線に対応して不陸の検査断面となるxz断面が設定される(S10)。
図3は基準面、基準線及び検査断面を示す模式的な斜視図である。基準面30は概ね路面に平行に設定され、当該基準面30はxy平面を規定する。当該基準面30の上に道路32の横断方向(x軸方向)に沿って基準線34が設定される。そして基準線34に沿って基準面30に直交する検査断面36が設定される。
【0028】
点群抽出手段20は、記憶装置6に格納された点群データから、予め設定した近傍範囲内で基準線に沿って位置する点群を検査断面に対応する部分点群として抽出する(S20)。例えば、近傍範囲として基準面上にて基準線に沿って予め定められた幅を有する帯状領域を設定し、基準面に射影した位置が当該帯状領域内となる計測点が抽出される。
【0029】
具体的には、点群抽出手段20は、x,y,z各軸に沿った辺を有する直方体形状であって不陸検出を行う個所の路面を内包する部分空間を設定する。
図4は部分空間を説明する模式的な平面図である。例えば、部分空間のx方向のサイズη
xは道路幅員に対応して5m程度に設定され、y方向のサイズη
yは当該方向に複数の計測点が含まれる大きさに設定される。ここで、y方向に関するレーザのスキャン位置は車両の進行と共に移動する。部分空間のy方向のサイズη
yは例えば、3〜5周期程度のスキャン位置を含むように設定でき、本実施形態ではサイズη
yは50cmとする。z方向に関しては、路面の上方に物体、例えば、トンネルの天井や道路標識が存在すると、それらが路面形状の解析に対してノイズとなる。そこで、予めそれらに起因する点群が除外されるようにz方向に関する点群の抽出範囲(位置、サイズ)を設定する。或いは、斜め下向きのレーザスキャナと斜め上向きのレーザスキャナとで取得される点群のうち斜め下向きのレーザスキャナによって取得されたものだけを路面形状解析に用いる構成としてもよい。
【0030】
なお、後述する不陸判定手段22の処理内容から、基準面と路面とは平行でなくても不陸検出にそれほど影響は与えず、基準面は路面に対して多少の角度を有して設定することは許容される。
【0031】
点群抽出手段20は基準線上に不陸検査位置を設定する(S30)。
図5はステップS30での不陸検査位置P
Cの設定及び次のステップS40での注目点群の抽出を説明する検査断面の模式図である。
図5には基準線34、及び部分空間に存在する部分点群の検査断面への投影像40の例が示されている。不陸検査位置P
Cのx座標をx
Cとすると、点群抽出手段20は、ステップS20で抽出した部分点群のうちx<x
Cなるx座標を有する計測点からなる第1の注目点群G
Aと、x≧x
Cなるx座標を有する計測点からなる第2の注目点群G
Bとを抽出する(S40)。本実施形態では、注目点群G
A,G
Bを構成する計測点はそれぞれ不陸検査位置P
Cに近いものから順に所定個数n
A,n
Bずつ選択される。本実施形態ではn
A,n
Bは同数に設定され、例えばn
A=n
B=12とする。
【0032】
なお、n
A及びn
Bは同数とするのが好適であるが、異なっていてもよい。また、例えば、基準線にて不陸検査位置P
Cから両側に同じ幅wの区間[x
C−w,x
C),[x
C,x
C+w]内に存在する計測点を注目点群G
A,G
Bとすることもできる。
【0033】
不陸判定手段22は点群抽出手段20により抽出された注目点群G
A,G
Bを用いて不陸検査位置P
Cにて路面に不連続性が生じているかについて、回帰分析を用いた検定を行う(S50)。不陸判定手段22は注目点群を構成する各計測点の基準線に沿った座標、すなわちx座標を説明変数とし、基準面に対する法線方向に沿った座標、すなわちz座標を従属変数とする回帰分析を行う。
図6は当該回帰分析を説明する検査断面の模式図であり、不陸検査位置P
Cの両側の注目点群の検査断面への投影像が示されている。
図6において、直線50は注目点群G
Aについての各計測点の座標(x,z)を用いた回帰分析で得られた回帰直線であり、同様に、直線52は注目点群G
Bについての回帰分析で得られた回帰直線である。不陸判定手段22は注目点群G
A,G
Bの回帰直線50,52を表す回帰係数が一致する、つまり不陸検査位置P
Cの両側に位置する注目点群G
Aが得られた路面と注目点群G
Bが得られた路面とで路面状態が同等であるとの仮説(帰無仮説)を所定の有意水準でF検定する。そして、当該帰無仮説が棄却された場合に不陸検査位置P
Cの両側で路面状態に変化が生じており、検査位置P
C又はその近傍位置に不陸が存在するとの対立仮説が正しいと判定する。
【0034】
本実施形態ではF検定モデルとしてChow検定(Chow test)を用いる。Chow検定は、次式によりF値を算出する。
【0036】
ここで、RSS
A,RSS
Bはそれぞれ注目点群G
A,G
Bについての回帰分析の残差平方和である。また、Chow検定では、注目点群G
A,G
Bの両方を合わせた点群の座標(x,z)についても回帰分析を行い、RSS
A,Bは当該回帰分析の残差平方和である。n
A,n
Bは既に述べたようにそれぞれ注目点群G
A,G
Bを構成する計測点の個数である。kは説明変数の数であり、ここでは1である。
【0037】
例えば、不陸判定手段22は確率95%、つまり有意水準α=0.05で帰無仮説が棄却される場合に、検査位置P
Cに対応する個所に路面の不陸が生じていると判定する(S60)。ちなみに、(1)式のF値は自由度(k+1,n
A+n
B−2k−2)のF分布に従う。F値の棄却域は有意水準αごとに当該自由度に応じて定まり、F値がα及び自由度に応じて定まる境界値F
0より大きければ帰無仮説が棄却される。
【0038】
点群抽出手段20及び不陸判定手段22は部分点群について道路の横断方向に複数設定される検査すべき位置全てについて不陸検査が完了したか否かを判定し(S70)、未検査位置が存在する場合には(S70にて「Yes」の場合)、検査位置を変えてステップS30〜S60の処理を繰り返す。例えば、点群抽出手段20は不陸検査位置P
Cをx軸に沿って所定距離ずつ順次移動させて注目点群G
A,G
Bを抽出したり、計測点単位で注目点群G
A,G
Bを移動させたりし、これにより基準線に沿って不陸が探索される。
【0039】
一方、未検査位置が残っていない場合には(S70にて「No」の場合)、不陸判定手段22は基準線の各点で得られたF値に基づいて路面性状の評価を行う(S80)。具体的には、F値の大小によって路面不陸の度合いを評価する、あるいは基準線に沿って設定した評価区間においてF値が棄却域となった検査位置の発生割合によって路面性状の損傷度合いを評価することができる。ここで、注目点群G
A,G
Bを構成する計測点の個数を各検査位置で同じにすることで自由度も同じとなり、各検査位置でのF値の境界値が共通となる。すなわち、基準線上の検査位置間にてそれぞれのF値を換算せずに単純に比較することができるので、上述の路面性状の評価を容易に行うことができる。例えば、不陸判定手段22はF値が或る閾値を超えた個所では不陸の度合いが大きいと判定したり、F値が棄却域となった検査位置の発生割合が或る閾値を超えた基準線の位置では損傷度合いが大きいと判定したりする。
【0040】
上述したステップS10〜S80はx軸方向の1次元の路面プロファイルでの不陸評価である。
図7〜
図9は基準線に沿った路面プロファイル及びF値の例を示す模式図であり、計測点を◆印、F値を○印で示している。横軸はx座標(単位はメートルである)であり、左側の縦軸はレーザスキャナの高さを原点とした計測点のz座標(単位はメートルである)を表し、また右側の縦軸はF値を表す。太線の水平線は、αが0.05で自由度(2,20)である場合の境界値F
0の値3.49を示している。
図7の例では両勾配の路面にて窪みが1箇所存在しており、当該個所のF値が他の部分より高い値を示している。
図8の例では路面の凹凸が全体的に広がっており、F値が高い個所が幅員内に分散して現れている。
図9の例では片勾配の路面の左側にF値が極めて高い値を示す箇所が1個所現れており、例えば、当該個所は局所的な損傷箇所あるいは路肩や側溝などとして抽出される。
【0041】
点群抽出手段20はステップS10にて設定された検査断面での不陸評価(S20〜S80)が完了するたびに、検査断面をy方向にずらした位置に新たに設定する。例えば、点群抽出手段20は
図4に示すように道路の縦断方向に沿って等間隔λで検査断面を設定する。例えば、λは5m程度とすることができる。このように、道路の縦断方向の複数個所で検査断面を設定することで、xy面における2次元の路面プロファイルでの不陸評価が行われる。
【0042】
上述した道路変状検出システム2による不陸の検出は基準線に沿った各位置で実施され、路面性状を局所的に評価できる。一方、幅員全体に亘って不陸を検出でき、また、道路の縦断方向にて任意の間隔で検査断面を設定して不陸を検出できるので、路面を全体的に評価できる。すなわち、本発明に係る道路変状検出システム2によれば、ミクロ的な評価とマクロ的な評価との両方が可能である。
【0043】
上述の実施形態では平面形状がy方向に幅η
yを有する帯状となる部分空間内の点群を用いている。このようにy方向に関して複数位置の計測点を用いることで、モービルマッピングシステムで得られる点群データの座標値に様々な要因で生じるばらつきの影響を小さくすることができる。
【0044】
設定された部分空間において、注目点群として抽出する計測点の数n
A,n
Bを変えると注目点群が分布するx方向の範囲が変わる。上述の実施形態の不陸検出方法では、例えば、n
A,n
Bを増やしたり、注目点群を抽出するx方向の幅wを大きくすると、x方向に関するサイズが小さい不陸を検出しにくくなる。よって、n
A及びn
B、又はwを検出対象とする不陸のスケールに応じて設定することで、検出対象としないスケールが小さい不陸の影響を受けにくくして、目的とするスケールの不陸を好適に検出することができる。例えば、大型車両の通行量が多い道路のわだち掘れのx方向の幅は大型車両の通行量が少ない道路より大きくなり得る。そこで、道路変状検出システム2においてn
A及びn
B、又はwを変更可能に構成して、スケールの異なるわだち掘れを弁別して検出可能とすることができる。例えば、
図2を用いて説明した処理にて、設定した各検査断面についての解析にて、複数種類のn
A及びn
B、又はwでステップS40〜S70の処理やS80の処理を行ってもよい。
【0045】
なお、上述の実施形態では道路の横断方向に基準線を設定したが、縦断方向など任意の方向に設定して同様の不陸検査を行うことも可能である。
【0046】
注目点群G
A,G
Bの回帰係数が一致するとの仮説を検定するF検定モデルはChow検定以外のものを用いることもできる。
【0047】
また、不陸を検出する構造物の表面は路面に限られず、例えば、側壁、法面、トンネルの平面天井板に対して同様に本発明を適用することができる。さらに、道路横断方向の断面が馬蹄型、卵型、円形であるトンネルの曲率を有した内表面についても、当該内表面を想定した、曲率を有するが平滑である基準面を設定し、当該基準面上に設定した基準線に沿って不陸検査を行うことが可能である。具体的には、まず道路縦断方向には直線の基準線を設定することができるので、基本的に上述の実施形態と同様に不陸検査を行うことができる。また、基準線が曲線になる場合でも、基準線を表す方程式は求められるので、上述の実施形態では直線の回帰分析であったところを曲線の回帰分析として不陸検査を行うことが可能である。