【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、合成樹脂製ボトルとその成形方法に関し、以下まず合成樹脂製ボトルの成形方法、次に合成樹脂製ボトルについて説明する。
【0011】
本発明の合成樹脂製ボトルの成形方法に係る主たる方法は、
合成樹脂製ブロー成形壜体であるボトル本体の外周面の所定の領域に加飾層を積層したものをインサート材とし、このボトル本体の胴部と底部を外装する有底筒状の透明な合成樹脂製の外殻体を射出成形する合成樹脂製ボトルの成形方法において、
ボトル本体の底
部の中央部に対向位置させてゲート口を配設した射出金型を使用し、ボトル本体が少なくとも0.8mmの壁厚を有するものとし、外殻体の、底部が少なくとも4mmの肉厚、筒状部の周壁が少なくとも3mmの肉厚を有するようにキャビティ金型の形状を設定し、
射出金型内にセットされたボトル本体の底部に冷却エアを供給するエアピンの先端を当接させた状態にて冷却エアを循環供給しつつ、計量充填法により、外殻体を形成する溶融樹脂を充填するものとし、
計量充填法の採用により保圧工程に係る圧力上昇を回避し、
冷却エアによりボトル本体の温度上昇を抑制し、また外殻体の周壁の厚肉化により溶融樹脂の流動に係る溶融樹脂圧力の上昇を抑制するものとし、
冷却エアによる冷却と外殻体の周壁の厚肉化の程度を、溶融樹脂圧力によりボトル本体に変形が生じない程度に設定する、
と云うものである。
【0012】
上記方法によれば、従来の液体に替わって冷却エアを循環供給してインサート材であるボトル本体を冷却するので、成形された製品が濡れたり、また金型装置が濡れたりすることがなく、また成形毎に冷却媒体であるエアを入替える必要もないので、生産性を高いレベルで達成することができる。
また、上記構成の方法はインサート成形中の溶融樹脂圧力によるボトル本体の変形を、(1)ボトル本体の冷却エアによる冷却、(2)計量充填法の採用、(3)外殻体の周壁の厚肉化、と云う3つの手段を合せて抑制しようとするものであり、それぞれの手段は次のような作用効果を発揮する。
【0013】
(1)ボトル本体の冷却エアによる冷却について
冷却エアにより溶融樹脂によるボトル本体の温度上昇を抑制することができ、好ましくは、温度上昇をボトル本体に使用されている合成樹脂のガラス転移点以下に抑制することにより、高温、高圧状態にある溶融樹脂による変形を効果的に抑制することができる。
また、ボトル本体の、特にゲート口に対向する位置等、変形の発生しやすい部分に集中的に冷却エアを吹き付けることにより、当該部分の変形をより効果的に抑制することが可能となる。
【0014】
(2)計量充填法について
計量充填法は、
キャビティ金型の充填不足がないように予め決めた量の溶融樹脂を
キャビティ金型に充填し、保圧工程を省略するものであり、保圧工程に係る大きな圧力上昇を回避し、この圧力によるボトル本体の変形を抑制することができる。
【0015】
(3)外殻体の周壁の厚肉化について
外殻体の周壁を厚肉化する、すなわちインサート材であるボトル本体の外周面とキャビティ金型により形成されるキャビティを広げて、ゲート口を介してキャビティ内に射出される溶融樹脂の流動通路を大きくし、流動抵抗を小さくして溶融樹脂圧力の上昇を効果的に抑制することができる。
【0016】
そしてこれら(1)、(2)、(3)の手段の作用効果が相俟って、ボトル本体の変形を効果的に抑制することができる。
この中で、冷却エアによる冷却によりボトル本体の温度の上昇を抑制することができるが、冷却エアにより内部から、液体を充填するように射出成形圧力を十分に支えることには限界があり、
冷却エアによる冷却によりボトル本体の温度の上昇を抑制すると共に、外殻体の周壁の厚肉化により溶融樹脂圧力の上昇を抑制することにより、これら冷却エアによる冷却と外殻体の周壁の厚肉化と云う両手段の条件を、生産性やデザイン状の制約を考慮しながら相互に調整することにより、冷却エアによる冷却と外殻体の周壁の厚肉化の程度を溶融樹脂圧力によりボトル本体に変形が生じない程度に設定することが可能となる。
なお、たとえばゲート口に対向する部分では高温で高圧の溶融樹脂が衝突するので僅かに変形する場合もあるが、透明な外殻体を透して外部から視認できない程度の変形は許容される。
またここで、本発明に係る合成樹脂製ボトルはボトル本体を透明な合成樹脂製の外殻体で外層したものであるが、本発明では「透明」には半透明、あるいは有色透明のものが含まれるものとする。
【0018】
上記方法は、ボトル本体の底部底面の中央部に対向位置させてゲート口を配設した射出金型を使用するもので、このゲート口の配設位置はインサート成形によるこの種のボトルの成形では標準的であり、ゲート口から射出される溶融樹脂は高温でボトル本体の底部底面の中央部に衝突するように流動し、さらに胴部の周壁に沿ってその上端まで流動する。
ここで、ブロー成形品の場合底部底面は比較的厚肉に形成されるが、胴部の下端部すなわち底部直上の周壁が薄肉に形成される場合が多く、溶融樹脂の上記した底部底面への衝突及び底部から周壁への回り込み状の流動による圧力により、底部直上で周壁が押潰し状に変形してしまう場合があるが、ボトル本体が少なくとも0.8mmの壁厚を有するものとすることにより、極端なこの種の変形を防ぐことができる。
【0019】
そして、外殻体の底部および筒状部の周壁は少なくとも3mmの肉厚を有するように
キャビティ金型の形状を設定することにより、溶融樹脂の流動抵抗を小さくして溶融樹脂圧力の上昇を抑制し、ボトル本体の特に底部直上の周壁を含む底部近傍(以下、単に底部近傍と記す。)に見られる、より微小な変形を効果的に防ぐことができる。
【0021】
上記構成は、ボトル本体の外周面に所定の領域に印刷層、塗装膜層あるいは金属蒸着膜層等の加飾層を積層したものをインサート材とするもので、ボトル本体の変形をより高度に抑制する必要があるが、
冷却エアによる冷却と外殻体の周壁の厚肉化の程度を、溶融樹脂圧力により加飾層にひび割れや皺の発生がない程度に設定することにより、
加飾層と透明な外殻体による加飾効果をより高品位に発揮させることができる。
【0023】
ボトル本体に加飾層を積層する場合には上述したようにボトル本体の変形をより高度に抑制する必要があるが、外殻体の底部を少なくとも4mmの肉厚を有するように
キャビティ金型の形状を設定することにより、底部近傍における溶融樹脂圧力の上昇を十分に抑制し、加飾層でのひび割れや皺の発生を効果的に防ぐことができる。
なお、加飾層が金属蒸着膜層等の熱変形しやすい層の場合には外殻体の底部を少なくとも5mmの肉厚を有するものとするのが好ましい。
【0024】
本発明の成形方法に係るさらに他の方法は、ボトル本体の底部底面の中央部に対向位置させてゲート口を配設する方法において、
ボトル本体内の底部近傍から冷却エアを供給する、と云うものである。
【0025】
上記方法によれば、ボトル本体内のゲート口に対向位置する底部近傍から、冷却エアを供給することにより、射出された溶融樹脂が衝突し、最も苛酷な条件に晒される底部近傍に対して、冷却エアの冷却作用を確実に作用させることができる。
【0026】
本発明の成形方法に係る主たる方法は、ボトル本体の底
部の中央部に対向位置させてゲート口を配設する方法であって、冷却エアを供給するエアピンの先端をボトル本体の底部に当接させる、と云うものである。
【0027】
上記方法によれば、冷却エアを供給するエアピンの先端を、ボトル本体の底部に当接させることにより、射出された溶融樹脂の射出圧が直接作用するボトル本体の底部をエアピンで機械的に支えることができる。
【0028】
次に、合成樹脂製ボトルに係
る構成について説明するが、これらのボトルは上述した成形方法により成形できるものである。
【0029】
合成樹脂製ボトルに係
る構成は、
口筒部を連設し、ボトル本体の外周面の少なくとも底部近傍を含む領域に加飾層を積層した合成樹脂製ブロー壜体であるボトル本体と、
このボトル本体をインサート材とし、また冷却エアを供給するエアピンの先端が当接されるボトル本体の底部に対向する位置にゲート部を配設した射出成形により形成され、ボトル本体の胴部と底部を外装する有底筒状の透明な合成樹脂製の外殻体とから構成され、
ボトル本体は少なくとも0.8mmの壁厚を有するものとし、
外殻体の、底部が少なくとも4mmの肉厚を有し、筒状部の周壁は少なくとも3mmの肉厚を有する構成する、
と云うものである。
【0030】
上記構成によれば、ボトル本体は少なくとも0.8mmの壁厚を有するものとし、外殻体の、底部
が少なくとも4mmの肉厚を有し、筒状部の周壁は少なくとも3mmの肉厚を有するものとすることにより、本発明の成形方法の中で説明したように、射出成形より、インサート材であるボトル本体を変形させることなく外殻体を形成することができ、厚肉で透明な外殻体による光学的な加飾効果を高品位に発揮する合成樹脂製ボトルを提供することができる。
【0031】
ここで、ブロー成形によるボトル本体の形状は、円筒状等の丸形、角筒状、多角形筒状等さまざまな形状のものを使用することができ、また有底筒状の外殻体についても丸形、角筒状、多角形筒状等することができ、ボトル本体と外殻体の形状の組み合せにより、透明な外殻体を利用して、例えば多角形筒状のボトル本体と多角形筒状の外殻体を組み合せてクリスタル様の光学効果を現出させる等、さまざまに光学的な加飾効果を現出させることができる。
また、ボトル本体は目的に応じて不透明なものとすることができるし、透明なものとすることもできる。
【0033】
上記構成によれば、外殻体の底部をさらに厚肉とし、少なくとも4mmの肉厚を有するものとすることにより、外殻体の射出成形の際にゲート口から射出される溶融樹脂が衝突するボトル本体の底部近傍の変形をより高度に抑制することができ、加飾層にひび割れや皺を発生させることなく外殻体を形成することができ、
加飾層と透明な外殻体による光学的な加飾効果を高度に発揮させることができる。
なお、加飾層が金属蒸着膜層等の熱変形しやすい層の場合には外殻体の底部を少なくとも5mmの肉厚を有するものとするのが好ましい。
【0034】
ここで、加飾層は、ボトル本体の口筒部から底部にかけて略全領域に亘って積層することもできるし、部分的に積層することもできる。
さらに、ボトル本体を透明なものとし、加飾層の形成領域と非形成領域をストライプ状に交互に整列配置し、全体として規則性を有するパターンを形成し、モアレ模様を現出させる等、さらなる光学的な加飾効果を発揮させることもできる。
【0035】
合成樹脂製ボトルに係るさらに他の構成は、上記主たる構成において、加飾層を、印刷層、塗装膜層又は金属蒸着膜層から選らばれる少なくとも一つの層とする、と云うものである。
【0036】
加飾層は1種に限定されず、加飾目的に応じて異種の加飾層を積層することもできる。