(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電磁結合された一次コイル及び二次コイルと、一次コイルの電流をON/OFF制御するスイッチング素子とを収容するコイル本体部と、コイル本体部から第1方向に突出する突出軸部と、を有して構成され、
前記コイル本体部は、収容空間を設けたケース本体と、ケース本体の周縁に当接されるケース底部とに区分されて、前記ケース底部に配置された一次コイル及び二次コイルが、前記ケース本体で覆われて構成され、
二次コイルは、第1方向に略直交する第2方向に中央穴を貫通させた二次ボビンに二次巻線を巻着して構成されると共に、第2方向の外周が前記ケース底部と保護キャップとで覆われた状態で、第2方向の外周が絶縁性の第1材料で埋められており、
前記中央穴に一次コイルを配置した状態で、前記ケース底部と前記ケース本体に残る隙間が絶縁性の第2材料で埋められており、
二次ボビンには、複数の区画フランジを第2方向に離間して設けられ、前記区画フランジの間に二次巻線を巻着するよう構成され、前記区画フランジに、第1材料の注入経路となる切欠きが形成される一方、前記保護キャップの内周には、前記切欠きに対応して、切込み溝が形成されている構成を採るか、
或いは、
二次ボビンの外形寸法は、第2方向にわたって同一でなく、ラッパ状ないし太鼓状の丸みを持って形成され、保護キャップの内径寸法は、二次ボビンの外形寸法に対応して第2方向に丸みを持って形成され、二次ボビンの基端側が保護キャップに当接することで閉塞される一方、二次ボビンの先端側は、保護キャップの内面との隙間が解放される構成を採る
ことを特徴とする点火コイル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、上記の問題を解消するべく、一次コイルと二次コイルとを基端部に配置して、閉磁路を形成することが考えられる。しかし、このような構成では、一次コイル、二次コイル、及び点火回路の全てを、プラグホールから露出する基端部に配置する必要から、勢い、点火コイル全体がペンシルタイプの点火コイルより大型化するという問題がある。また、製造コストを上げることなく、二次コイルについての確実な絶縁性能を長期間にわって維持できる構成が望まれる。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、製造コストを上げることなく、必要な点火エネルギーを高効率で出力できる点火コイルを提供することを目的とする。また、確実な絶縁性能を長期間にわって維持できる点火コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、電磁結合された一次コイル及び二次コイルと、一次コイルの電流をON/OFF制御するスイッチング素子とを収容するコイル本体部と、コイル本体部から第1方向に突出する突出軸部と、を有して構成され、前記コイル本体部は、収容空間を設けたケース本体と、ケース本体の周縁に当接されるケース底部とに区分されて、前記ケース底部に配置された一次コイル及び二次コイルが、前記ケース本体で覆われて構成され、二次コイルは、第1方向に略直交する第2方向に中央穴を貫通させた二次ボビンに二次巻線を巻着して構成されると共に、第2方向の外周が前記ケース底部と保護キャップとで覆われた状態で、第2方向の外周が絶縁性の第1材料で埋められており、前記中央穴に一次コイルを配置した状態で、前記ケース底部と前記ケース本体に残る隙間が絶縁性の第2材料で埋められており、
二次ボビンには、複数の区画フランジを第2方向に離間して設けられ、前記区画フランジの間に二次巻線を巻着するよう構成され、前記区画フランジに、第1材料の注入経路となる切欠きが形成される一方、前記保護キャップの内周には、前記切欠きに対応して、切込み溝が形成されている構成を採るか、或いは、二次ボビンの外形寸法は、第2方向にわたって同一でなく、ラッパ状ないし太鼓状の丸みを持って形成され、保護キャップの内径寸法は、二次ボビンの外形寸法に対応して第2方向に丸みを持って形成され、二次ボビンの基端側が保護キャップに当接することで閉塞される一方、二次ボビンの先端側は、保護キャップの内面との隙間が解放される構成を採ることを特徴とする。
【0009】
本発明では、第2方向の外周が前記ケース底部と保護キャップとで覆われた状態で、第2方向の外周が絶縁性の第1材料で埋められるので、二次コイルの絶縁性能は、保護キャップと、第1材料とで担保されることになり、保護キャップや第1材料について、最適材料を選択することで、確実な絶縁性能を長期間にわって維持することができる。選択パラメータとしては、第1材料と二次巻線との密着性能や、第1材料と二次巻線との熱膨張係数の近似性や、第1材料と保護キャップとの親和性などを例示することができる。何れにしても、第1材料の使用量は多くないので、最適材料を使用した場合でも製造コストが特に上がることはない。
【0010】
本発明では、第1材料と第2材料が同一であることを特に禁止するものではないが、好ましくは、第1材料と第2材料とは、電気絶縁性、及び/又は、熱伝導性について、その特性が同じでないのが好適である。何故なら、二次コイルの絶縁性は、第1材料によって確保されており、第2材料は、一次コイルや適宜な磁路を形成する磁心の周りを埋める用途で使用されるため、これに相応しい材料が選択されるべきだからである。製造コストを考慮すると、好ましくは、第1材料より安価な材料が選択されるが、一方、放熱性能を考慮すると熱伝導性に優れた材料が選択されるべきである。
【0011】
第1材料の注入工程を考慮すると、二次ボビンには、複数の区画フランジを第2方向に離間して設けられ、前記区画フランジの間に二次巻線を巻着するよう構成され、前記区画フランジには、第1材料の注入経路となる切欠きが形成されているのが好ましい。更に好ましくは、保護キャップの内周には、前記切欠きに対応して、切込み溝が形成されているべきである。
【0012】
小型化の要請に応えるには、二次ボビンの外形寸法は、第2方向にわたって同一でなく、ラッパ状ないし太鼓状の丸みを持って形成されるのが好ましい。この場合、保護キャップの内径寸法は、二次ボビンの外形寸法に対応して第2方向に丸みを持って形成され、二次ボビンの基端側が保護キャップに当接することで閉塞される一方、二次ボビンの先端側は、保護キャップの内面との隙間が解放されるのが第1材料の注入において好適である。なお、第1材料は、好ましくは、熱硬化性の樹脂で構成されるので、この場合には、第1材料の注入後、二次巻線を通電状態にして内部加熱状態を実現するのが好適である。
【0013】
また、前記保護キャップは、二次コイルを覆った状態で、溶着によって前記ケース底部と一体化されているのが好ましい。
【0014】
第2材料の注入手法も適宜であるが、好ましくは、前記収容空間を上方に開口させた前記ケース本体に、第2材料を適量満たした状態で、一次コイル及び2次コイルと保護キャップとを固定したケース底部を沈み込ませることで、前記収容空間の隙間が埋めるべきである。細かな隙間は、既に第1材料で埋められているので、第2材料の充填は、このようなオーバーフロー方法でも十分である。なお、この場合には、前記ケース本体には、ケース底部を沈み込ませた時に、溢れる第2材料を受け入れる受入空間が設けられていると作業効率が良い。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明によれば、製造コストを上げることなく、必要な点火エネルギーを高効率で出力できる点火コイルを実現できる。また、確実な絶縁性能を長期間にわって維持できる点火コイルを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1〜
図6に記載の実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。先ず、完成状態の点火コイル1を示す斜視図(
図6(e))に基づいて概略構成を説明すると、実施例の点火コイル1は、プラグホールに挿入される突出軸部PRと、プラグホールの上部に配置されるコイル本体部BDYとが一体化されて、全体として略T字状に構成されている。
【0018】
この点火コイル1には、
図5(d)に示す点火回路IGNが内蔵されているが、実施例の点火回路IGNは、電磁結合された一次コイルL1及び二次コイルL2と、一次コイルL1の一次電流をON/OFF制御するスイッチング素子(イグナイタ)Qと、逆方向の放電を阻止するダイオードDと、を有して構成されている。
【0019】
図1(f)に略記するように、二次コイルL2の出力電圧は、導電端子TRを経由して高圧端子OUTに伝えられ、突出軸部PRに内装された導電スプリングSPを経由して点火プラグPGに伝送される。なお、導電端子TRと導電スプリングSPは、高圧端子OUTとの電気接続を確実にする適宜な弾発力を有している。
【0020】
イグナイタQは、本実施例では、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )で構成され、イグナイタQの発熱を効果的に放熱するべく、イグナイタQに近接してヒートシンクHeが配置されている。
図5(d)に示す通り、イグナイタQのエミッタ端子Q3は、ヒートシンクHeと接続端子Tcとを経由して、ECU(Engine Control Unit )などの外部回路のグランドGNDに接続されている。ここで、ヒートシンクHeは、熱伝導性に優れた材料で構成され、十分に広い放熱面積を有することで、高出力で高速の点火動作に効果的に寄与している。
【0021】
イグナイタQのゲート端子Q1は、接続端子(信号端子)Tbを通して点火パルスSGを受け、コレクタ端子Q2は、一次コイルL1と接続端子(電源端子)Taとを経由してバッテリ電圧VBを受けている。なお、一次コイルL1と二次コイルL2は、中心鉄芯Co1と外装鉄芯Co2による閉磁路を通して電磁結合している。
【0022】
本実施例の場合、イグナイタQと、ヒートシンクHeと、3本の接続端子Ta〜Tcとは、一次コイルL1などへの接続端子Tdと共に、予め一体化されてイグナイタ組立体DEVとなっている(
図5(a)〜
図5(c)参照)。そして、
図5に示すイグナイタ組立体DEVを、コイル本体部BDYに収容することで、接続端子Ta〜Tcのコイルケース(ケース本体10)への配置が完了する。
【0023】
そのため、本実施例の構成によれば、コイルケース内部に、接続端子Ta〜Tcを電気接続するための作業空間を確保する必要がなくなり、この意味でもコイルケースを小型化することができる。
【0024】
図6(a)〜
図6(d)に現れる通り、合成樹脂で構成されたコイル本体部BDYは、点火回路IGNを収容する箱状のケース本体10と、ケース本体10の開口を閉塞するケース底部20とに大別される。ここで、ケース本体10は、点火回路IGNを収容する回路収容部11と、エンジンブロックに固定接続される固定部12と、接続端子Ta〜Tcを内包する集合端子部13に区分されるが、本実施例では、これらが樹脂成型によって一体的に製造されており、集合端子部13の回路収容部11への組付け作業などを不要にしている。
【0025】
また、
図6(c)に示すように、集合端子部13の下方には、熱硬化樹脂の充填路となる充填開口14が設けられている。本実施例の場合、この充填開口14は、イグナイタ組立体DEVから突出するヒートシンクHe3の通過路としても機能する。すなわち、
図6(a’)に示す通り、コイル本体部BDYにイグナイタ組立体DEVを組付けた状態では、ヒートシンクHeの延長部He3がコイル本体部BDYから露出状態となり、この延長部He3がエンジンブロックに弾発接触することで、フレームグラント接続が実現されると共に、放熱性能を高めることができる。
【0026】
ケース底部20は、
図6(d)や
図1(c)に示す通り、コイル本体部BDYのケース本体10の周縁を閉塞する底板21と、底板21から突出して突出軸部PRを受け入れる連結部22と、に区分されている。ここで、底板21には、二次コイルL2を受け入れて保持すると共に、保護キャップ42を受け止める装着フランジ23と、ケース本体10のケース底部20への固定に使用される固定フランジ24とが設けられている。また、底板21には、二次コイルL2から点火プラグPGへの高圧導電部の通路を確保する開口H1が設けられている。
【0027】
このようなケース底部20の構成に対応して、突出軸部PRは、
図6(e)に示す通り、連結部22に外嵌されてプラグホールへの浸水を防止するエラストマ製の基端部30と、基端部30に内包される円筒部31と、点火プラグPGを覆うエラストマ製の先端部32とに区分される。円筒部31には、コイル状に形成された導電スプリングSPが内挿されており、二次コイルL2の高圧出力の点火プラグPGへの導電が実現される。
【0028】
続いて、上記の構成を有する点火コイル1の製造手順を説明する。点火コイル1の製造手順は、大略、二次コイルL2をケース底部20に組付ける第1工程、保護キャップ、二次コイルL2、及び、ケース底部20を一体化する第2工程、中心鉄芯Co1を内蔵した一次コイルL1を二次ボビン40に配置する第3工程、外装鉄芯Co2を一次コイルL1の周りに配置する第4工程、イグナイタ組立体DEVをコイル本体部BDYに収容する第5工程、コイルケースに熱硬化性樹脂を充填して硬化させる第6工程の工程を経て製造される。
【0029】
<二次コイルL2をケース底部20に組付ける第1工程>
図1は、二次コイルL2をコイルケースの底板21に組付ける工程を説明する図面である。二次コイルL2は、一次コイルL1を受け入れる矩形穴H2を有する二次ボビン40と、二次ボビン40に巻着された二次巻線41と、二次ボビン40の上部を密に覆う電気絶縁性の保護キャップ42とで構成されている。なお、作図の都合上、
図1には、二次巻線41が現れないが、二次ボビン40に設けられた区画フランジFGの間に、必要な高圧出力に対応するターン数の二次巻線41が巻かれている。
【0030】
二次ボビン40の占有空間は、区画フランジFGの周縁で確定されるが、軸方向基端側から先端側に向けて丸みをもって広がった後、その外径寸法を維持し、その後、外径寸法が先端側でやや絞られることで、全体として略ラッパ状ないし略太鼓状の輪郭形状を有している。
【0031】
このように、実施例の二次ボビン40は、丸みのある独特の輪郭形状を有することで、点火コイルの小型化に寄与している。但し、二次巻線41の巻き数を場所的に相違させることで、前記と同様の輪郭形状を実現しても良い。
【0032】
また、二次ボビン40の各区画フランジFG・・・FGには、軸方向に整列して、各々、切欠きCTが形成されている。この切欠きCTは、その後の一体化工程において、注入樹脂の充填通路となるので、保護キャップ42を限界まで二次ボビン40に密着させることができる。また、保護キャップ42を密着配置することで、点火コイルの小型化の要請に応えつつ、二次コイルL2の絶縁性を高めることができる。
【0033】
図1(a)に示す通り、保護キャップ42は、二次ボビン40の輪郭形状に対応したトンネル状に構成されている。すなわち、軸方向基端側から先端側に向けて丸みをもって広がった後、その外径寸法を維持して、全体として略トンネル状に形成されている。なお、保護キャップ42の先端側は完全に解放されているが、基端側は、矩形穴H2よりやや大きい開口で解放されて、二次ボビン40の基端面に密着するよう構成されている。
【0034】
また、保護キャップ42の上部内面には、二次ボビン40の切欠きCTに対応して、切込み溝GVが形成されている。この切込み溝GVは、二次ボビン40の切欠きCTと共に、樹脂通路を形成するものであり、二次ボビン40に保護キャップが密着配置された状態でも、二次巻線41と保護キャップ42と間に形成される隙間に、確実に樹脂を充填させることができる。なお、先に説明した通り、保護キャップ42の基端側は、二次ボビン40の基端面に密着するので、充填樹脂が漏れ出ることはない。
【0035】
また、保護キャップ42の最下部の内周面には、装着フランジ23の上部外周面に係合する段差部BAが形成されている。したがって、ケース底部20に二次コイルL2を配置した
図1(d)の状態で、保護キャップ42を装着フランジ23に装着すると、段差部BAが装着フランジ23の上部外周面に係合して安定する(
図1(e))。
【0036】
この安定状態において、保護キャップ42と装着フランジ23とを固定するため、予め、段差部BAに接着剤を塗布しておいても良いが、好ましくは、保護キャップ42と装着フランジ23とを超音波溶着して一体化する。この場合には、保護キャップ42と装着フランジ23とを同一材料とすることで、事実上、境界面のない一体構造にすることができる。
【0037】
なお、
図1(e)に示す組付け状態では、二次コイルL2の出力端子は、導電端子TRに接続されており、導電端子TRと高圧端子OUTとを経由して導電スプリングSPに電気接続される。
【0038】
図2(a)〜
図2(d)は上記の第1工程を終えた半完成状態のコイル本体部BDYを図示したものである。
【0039】
ところで、保護キャップ42を伸延しケース底部20に直接接触させることにより装着フランジ23を省略するのも好適である。また、保護キャップ42を磁性体で形成しても良く、この場合には、外装鉄芯Co2と組み合わせることで磁気特性を向上させることができる。
【0040】
<二次コイルL2をケース底部20に一体化する第2工程>
以上のようにして二次コイルL2のケース底部20への組付けが完了すると、次に、保護キャップ42の内部に熱硬化性樹脂を注入(部分含浸)して、保護キャップ42内部の隙間を埋めて確実な電気絶縁を実現する。
【0041】
図2(e)は、この第2工程を説明する図面であり、作業ボックスに多数の半完成状態のコイル本体部BDYを配置し、作業ボックスを脱気すると共に、注入ノズルを降下させて、熱硬化性樹脂を注入する状態を示している。
【0042】
先に説明したように、二次ボビン40の外形寸法と、保護キャップ42の内面寸法は、ほぼ同一であって隙間は狭いので、注入すべき熱硬化性樹脂の注入量は少なくて足りる。そのため、使用する樹脂としては、絶縁性に優れ、且つ、二次巻線41や保護キャップ42との接着力に優れた高グレイドの材料が選択されるが、高価な材料を選択しても製造コストが特に上がることはない。
【0043】
ところで、
図2(e)の作業姿勢において、二次ボビン40の基端面(
図2では下方端面)は、保護キャップ42の基端内面によって通気可能に閉塞されており、一方、注入樹脂は適度な粘度を有しているので、二次ボビン40から注入樹脂が漏れ出ることはない。なお、底板21の開口H1は、連結部22に配置された高圧端子OUTによって閉塞されており、また、作業ボックスは下方に向けて脱気されるので、開口H1内部に樹脂が侵入することもない。
【0044】
何れにしても、この第2工程では熱硬化性樹脂を加熱により硬化させる使用があるが、この加熱作業を迅速確実化するため、本実施例では、二次巻線41に適宜な加熱電流を流した状態で、加熱作業を実行している。そのため、熱硬化性樹脂は、内外から効果的に加熱されることになり、加熱作業が迅速確実化される。
【0045】
<中心鉄芯Co1や一次コイルL1を配置する第3工程>
第2工程が終われば、中心鉄芯Co1を内蔵した一次コイルL1を、二次ボビン40に配置する第3工程に移行する。
【0046】
図3(a)に示す通り、一次コイルL1は、一次ボビン50に一次巻線51を巻着して構成され、一次巻線51の巻始め51aと巻終わり51bは、巻付端子La,Lbに導体を露出した状態で巻き取られている(
図3(d))。なお、
図3(a)では、便宜上、一次巻線51の記載を省略している。
【0047】
一次巻線51を一次ボビン50の外周に巻着した後、巻付端子La,Lbに一次巻線51を巻き付けて一次コイルL1が完成すると、一次ボビン50の内部開口52に中心鉄芯Co1を挿入する(
図3(b)参照)。そして、この状態の一次コイルL1を、第2工程を終えた二次ボビン40に挿入する(
図3(c)参照)。
【0048】
<外装鉄芯Co2を配置する第4工程>
続いて、保護キャップ42の外側を覆うように外装鉄芯Co2を円環状に配置する。なお、外装鉄芯Co2は、全体として円環状であるが、適宜な箇所で、例えば二分割されている(
図3(e)参照)。但し、外装鉄芯Co2の分割個数に拘わらず、外装鉄芯Co2と、中心鉄芯Co1とで、余分な空隙のない閉磁路が形成される(
図3(e)参照)。
【0049】
<イグナイタ組立体DEVをコイル本体部BDYに収容する第5工程>
次に、イグナイタ組立体DEVをコイル本体部BDYに収容するが、この説明に先立ってイグナイタ組立体DEVについて説明する。
図4は、イグナイタ組立体DEVの構成要素を図示したものであり、外部回路に接続される3本の接続端子Ta〜Tcと、コレクタ端子Q2を一次コイルL1に接続する接続端子Tdと、IGBTを内蔵するイグナイタQと、ヒートシンクHeとを示している。なお、イグナイタ組立体DEVの完成状態は、
図5(a)〜(c)に示す通りであり、各部の電気接続は、
図5(d)に示す通りである。
【0050】
図4(a)に示す通り、バッテリ電圧VBを受ける接続端子Taは、イグナイタQへの接続片CNaと、ダイオードDの受入部t1(
図5(a)参照)と、一次巻線51の巻付端子La(バッテリ側)の受入部La(
図5(a)参照)と、連絡部t2などを有して構成されている。なお、接続端子Taは、一枚の板材を屈曲形成して作成され、接続片CNaを通してイグナイタQの連結端子Q5に接続されるが、電気的には、イグナイタQの内部回路とは絶縁状態である(
図5(d)参照)。
【0051】
点火パルスSGを受ける接続端子Tbも、一枚の板材を屈曲形成して作成され、接続片CNbを通してイグナイタQの連結端子Q1に接続される。そして、接続片CNbを通して、イグナイタQのゲート端子Q1との電気接続が実現される。
【0052】
図4(d)に示す通り、グランド端子である接続端子Tcは、その終端部に接続片CNcを設けて構成される。この接続片CNcは、ヒートシンクHeに電気接続されることで、ヒートシンクHeをグランド電位に設定する。なお、後述するように、本実施例のヒートシンクHeは、コイルケースから露出してエンジンブロックに弾発接触するようになっている。
【0053】
図4(a)に示す通り、接続端子Tdも、一枚の板材を屈曲形成して作成され、イグナイタQの連結端子Q2への接続片CNdと、一次巻線51の巻付端子Lb(イグナイタ側)の受入部Lb((
図5(a))とを有して構成されている。接続片CNdは、イグナイタQの連結端子Q2に接続されることで、一次コイルL1とイグナイタQのコレクタ端子Q2との電気接続が実現される。
【0054】
図示の通り、イグナイタQは、未使用のものも含め6本の連結端子を露出させて構成されるが、そのうち、長く露出する連結端子Q3,Q4は、各々、ヒートシンクHeに接続されることで同一のグランド電位となる。
【0055】
図4(c)に示す通り、ヒートシンクHeは、イグナイタQの背面に当接される垂直部He1と、イグナイタQの底面を受け止める水平部He2と、屈曲状態で水平部He2に連続する延長部He3と、接続端子Tcとの接続部He4と、イグナイタQの側面を保持する保持部Haと、イグナイタQの連結端子Q3,Q4の接続部Hcと、を有して構成されている。
【0056】
イグナイタQを、矢印に示す通りに降下させてヒートシンクHeに保持させた後、接続端子Ta,Tb,Tdを、各々、イグナイタQの連結端子Q5,Q1,Q2に、溶接などによって接続すると共に、接続端子Tcの接続片CNcをヒートシンクHeの接続部He4に接続することで、イグナイタ組立体DEVが完成状態となる。
【0057】
従来の点火コイルの場合には、
図4(b)の状態のイグナイタQをコイルケースに配置した後、接続端子Ta〜Tdの接続作業を実行する必要があったが、本実施例では、接続端子Ta〜Tdの接続が完了したイグナイタ組立体DEVを予め完成させるので、コイルケースでの煩雑な接続作業が不要となると共に、コイルケースに作業空間を確保する必要がなくなる。
【0058】
なお、
図4(a)〜
図4(d)は、点火回路IGNだけをコイルケースに内蔵させる場合の説明図であるが、点火回路IGNに加えてイオン検出回路を内蔵させるのも好適である。この場合には、ヒートシンクHe’として
図4(e)の構成のものが使用され、垂直部He1を挟んで、イグナイタQ及びイオン検出回路が、各保持部Ha,Hbによって保持される。また、集合端子部13から突出される接続端子には、イオン検出信号を示す出力端子が追加される。
【0059】
ここで、イオン検出回路とは、燃焼時にエンジン燃焼室に発生するイオン信号を検出する回路であって、ノッキングを素早く検出したり、或いは、排ガス低減、燃費低減などを達成する最適な燃焼制御を実現するための回路である。
【0060】
以上、変形例も含めイグナイタ組立体DEVについて説明したが、完成状態のイグナイタ組立体DEVは、
図6(a)に示すように、ケース本体10の下方から組付けられる。この場合、3本の接続端子Ta〜Tcは、集合端子部13に設けられている通過溝を貫通して、
図6(a)において、右斜め方向に露出状態となる。
【0061】
また、ヒートシンクHeを構成する延長部He3は、充填開口14を通してケース本体10から露出状態となる(
図6(a’)参照)。
【0062】
<熱硬化性樹脂を充填硬化させる第6工程>
最後に、
図6(a’)の状態のケース本体10を、ケース底部20と一体化させた状態で真空ボックスに収容する。なお、ケース本体10をケース底部20に一体化させる場合には、ケース底部20の固定フランジ24(
図1(c))が活用される。
【0063】
そして、ケース本体10をケース底部20に一体化させると、電源端子Taの受入部t1、La(
図5)と、一次コイルL1の巻付端子Laとの嵌合接触によって、電源端子Taと、一次コイルL1及びダイオードDとの電気接続が実現される。
【0064】
また、接続端子Tdの受入部Lb(
図5)と、一次コイルL1の巻付端子Lbとの嵌合接触によって、一次コイルL1とイグナイタQ(コレクタ端子Q2)との電気接続が実現される。
【0065】
真空ボックスでは、適宜な減圧下で、ケース本体10の隙間に熱硬化樹脂が充填され、これを加熱硬化させて確実な電気絶縁性を確保する。なお、熱硬化樹脂の充填路として、充填開口14が使用されることは先に説明した通りである。
【0066】
本実施例では、熱硬化性樹脂として電気絶縁性だけでなく、熱伝導性に優れた材料が使用される。そのためイグナイタQの発熱は、ヒートシンクHeを経由するだけでなく、充填樹脂を経由して放熱されることになり、点火回路IGNの安定した動作が担保される。
【0067】
ところで、樹脂の充填作業は、上記と異なる別の手法(オーバーフロー法)を採ることもできる。但し、この場合には、充填開口14を塞ぐと共に、集合端子部13の下方に液受け用の適宜な空隙を設けておく必要がある。
図7は、このオーバーフロー法を説明する図面であり、集合端子部13の下方(
図7(a)では上方)に液受けポケットPKが設けられている。なお、イグナイタ組立体DEVは、液受けポケットPKの左側に配置され、垂直部He1をやや高く設定したヒートシンクHeの下部(組付け状態では上部)に通液穴He5を設けておくことで、オーバーフロー流路を確保している(
図7(d)参照)。
【0068】
また、この実施例では、ケース本体10と略同形の加熱体60を用意し、この加熱体60にケース本体10を配置した状態で、熱硬化樹脂を満たす。なお、注入量は、その後のオーバーフロー量が最小になる程度の量とする。
【0069】
しかる後、ケース本体10の上部から一次コイルL1と二次コイルL2と鉄芯Co1,Co2を組付けたケース底部20(
図7(c)は正確な図面ではない)を降下させる。その結果、溢れた熱硬化樹脂は、ヒートシンクHeの通液穴He5を経由して、液受けポケットPKに移動する。
【0070】
そして、その後、加熱体60を動作させることで、充填樹脂を硬化させる。なお、これらの作業は必要に応じて適宜な減圧下で実行されるが、本実施例によれば、全ての充填樹脂が使用されることで材料の無駄がなく、しかも、充填硬化工程を迅速に終えることができる。また、二次コイルL2のコイル巻線41の周りは、既に埋められているので、第6工程を簡素化しても何の問題も生じない。
【0071】
以上、本発明の実施例について具体的に説明したが、具体的な記載内容は特に本発明を限定する趣旨ではなく、適宜に変更可能である。