【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度戦略的基盤技術高度化支援事業(超伝導ピン止め効果を応用した低発塵回転体の位置決め技術開発)に基づく特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された先行技術では、複数の環状永久磁石における超伝導体部と対向する磁極面の極性が、隣り合う2つの環状永久磁石間で逆になっており、磁石部が径方向(以下、「ラジアル方向」という。)に移動しようとすると、超伝導体部に加わる外部磁場が変化してピン止め力が発生する。しかし、環状永久磁石は超伝導体部の一方面側にのみ配置されているため、多くの磁束線を超伝導体部に効率よく貫通させることが困難であり、ラジアル方向におけるピン止め力を十分に得るためには、同心円状に配置される環状永久磁石の数を多くする必要があった。そのため、磁石部の最大外径が大きくなり、装置全体が大型化するという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、装置の大型化を招くことなく、ラジアル方向のピン止め力を大きくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る超伝導軸受装置は、回転軸と、前記回転軸に固定された第1磁石部と、前記回転軸に前記第1磁石部から軸方向に所定間隔を隔てて固定された第2磁石部とを有する回転体部と、前記第1磁石部と前記第2磁石部との間であって前記回転軸の周囲に配置され、かつ、前記第1磁石部に対向する第1対向面と前記第2磁石部に対向する第2対向面とを有する超伝導体と、前記超伝導体を冷却することによりピン止め効果を発現させる冷却部とを有する固定体部とを備え、前記第1磁石部は、前記回転軸の周囲に配置され、かつ、前記第1対向面と対向する第1磁極面を有する第1永久磁石を有し、前記第2磁石部は、前記回転軸の周囲に配置され、かつ、前記第2対向面と対向する第2磁極面を有する第2永久磁石を有し、前記第1磁極面の極性と前記第2磁極面の極性とが逆極性である。
【0008】
この構成によれば、第1磁極面の極性と第2磁極面の極性とが逆極性であるため、第1磁極面および第2磁極面のいずれか一方(N極)から他方(S極)に向かう磁束線の多くを、超伝導体に対して略直線状に貫通させることができる。また、第1磁石部および第2磁石部が回転軸に対して固定されるので、第1磁石部と第2磁石部との間に作用する磁力によってこれらの間隔が変動することはなく、第1磁石部および第2磁石部の磁力を大きくして、超伝導体を貫通する磁束線の数を増大させることができる。したがって、特許文献1に記載された先行技術のように、ラジアル方向のピン止め力を増大させるために多くの環状永久磁石を用いる必要がない。
【0009】
前記第1永久磁石および前記第2永久磁石のそれぞれは円環状に形成され、前記第1永久磁石および前記第2永久磁石のそれぞれの中心に前記回転軸が配置されてもよい。
【0010】
この構成では、円環状に形成された第1永久磁石および第2永久磁石のそれぞれの中心に回転軸が配置されるので、回転体部が回転するときには、超伝導体に加わる外部磁場が大きく変化することはない。したがって、回転方向におけるピン止め力の発生を抑えてエネルギー損失の少ない回転運動を得ることができる。
【0011】
前記第1永久磁石の内径をD
11、外径をD
12とし、前記第2永久磁石の内径をD
21、外径をD
22とし、(D
11+D
12)/2の式で得られる第1仮想円直径をD
13とし、(D
21+D
22)/2の式で得られる第2仮想円直径をD
23としたとき、前記第1仮想円直径D
13が前記第2仮想円直径D
23より大きくされ、或いは、小さくされることによって、前記超伝導体を略直線状に貫く磁束線の一部が前記回転軸に平行な方向に対して傾斜される。
【0012】
この構成では、回転体部がラジアル方向および軸方向のいずれの方向に移動するときでも、超伝導体に加わる外部磁場が変化する。したがって、回転体部のラジアル方向および軸方向の両方向の移動をピン止め力で抑制することができる。
【0013】
前記第1永久磁石の内側または外側に前記第1永久磁石と同心円状に配置され、前記第1対向面と対向する第3磁極面を有する円環状の第3永久磁石と、前記第2永久磁石の内側または外側に前記第2永久磁石と同心円状に配置され、前記第2対向面と対向する第4磁極面を有する円環状の第4永久磁石とを有し、前記第1磁極面の極性と前記第3磁極面の極性とが逆極性であり、前記第2磁極面の極性と前記第4磁極面の極性とが逆極性である。
【0014】
この構成では、第1磁極面の極性と第3磁極面の極性とが逆極性であり、第2磁極面の極性と第4磁極面の極性とが逆極性であるため、回転体部がラジアル方向に移動しようとすると、超伝導体に加わる外部磁場が大きく変化する。したがって、回転体部のラジアル方向への移動を、より大きなピン止め力で抑制することができる。また、第3磁極面および第4磁極面のいずれか一方から他方に向けて磁束線が延びるので、超伝導体を貫く磁束線の数が増大し、回転体部がラジアル方向に移動しようとするときのピン止め力をより大きくすることができる。
【0015】
前記冷却部は、冷媒が充填される円環状の断熱容器を有し、複数の前記超伝導体が、前記断熱容器の内部に前記断熱容器の内壁面から離間して配置される。
【0016】
この構成では、複数の超伝導体のそれぞれを、冷媒によって効率よく冷却することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る超伝導回転装置は、上記のいずれかの超伝導軸受装置と、回転力を発生させる回転駆動部と、前記回転力を前記回転体部に非接触で伝達する回転力伝達部とを備え、前記回転力伝達部は、前記回転軸に取り付けられた第1カップリング磁石と、前記回転駆動部の出力軸に取り付けられ、前記第1カップリング磁石と引き合う第2カップリング磁石とを有する。
【0018】
この構成によれば、固定体部に対して回転体部を、超伝導体のピン止め効果を利用して非接触で支持でき、また、回転体部に対して回転駆動部の回転力を、回転力伝達部を介して非接触で伝達できる。したがって、回転部分の摩耗による発塵を抑制できる。また、回転部分における摩擦熱の発生を抑制でき、たとえば、超伝導回転装置を液体移送ポンプに適用する場合でも、移送される液体(薬品等)が摩擦熱の影響を受けるのを防止できる。
【0019】
前記第1カップリング磁石と前記第2カップリング磁石との間隔を調整する間隔調整機構を備えていてもよい。
【0020】
超伝導回転装置を組み立てる際には、まず、固定体部と回転体部との相対位置を仮決めし、その状態で超伝導体を冷却してピン止め効果を発現させる。その後、第1カップリング磁石と第2カップリング磁石との間隔を間隔調整機構で短くし、これらの間の吸引力を増大させる。すると、当該吸引力によって固定体部に対して回転体部が軸方向に移動し、超伝導体に加わる外部磁場が変化してピン止め力が発生し、当該ピン止め力によって、固定体部と回転体部との位置関係が安定的に保持される。上記構成によれば、第1カップリング磁石と第2カップリング磁石との間隔を間隔調整機構で簡単に調整することができるので、超伝導回転装置の組み立て作業性を向上することができる。
【0021】
前記回転軸の一方端部に前記第1カップリング磁石が取り付けられ、前記回転軸の他方端部に液体を移送するインペラが取り付けられてもよい。
【0022】
この構成は、超伝導回転装置をインペラを有するポンプに適用したものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記の構成によって、装置の大型化を招くことなく、ラジアル方向のピン止め力を大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は、本発明に係る「超伝導回転装置」を超伝導ポンプ10に適用するとともに、本発明に係る「超伝導軸受装置」を超伝導ポンプ10の軸受部Aに適用したものである。なお、以下の説明で用いる「上」および「下」の方向は、
図1の紙面に対して上側を「上」、下側を「下」とするものであり、鉛直方向を意味するものではない。
【0026】
図1に示すように、超伝導ポンプ10は、水および薬品等のような液体を移送するものであり、固定体部12と、回転体部14と、回転駆動部16と、回転力伝達部18とを備えている。
【0027】
図1に示すように、固定体部12は、ポンプハウジング20と、駆動部ハウジング22と、間隔調整機構23と、ポンプハウジング20に組み込まれた超伝導体24と、ポンプハウジング20に組み込まれ、超伝導体24を冷却する冷却部26とを備えている。
【0028】
図1に示すように、ポンプハウジング20は、第1ハウジング20aと、第2ハウジング20bと、第3ハウジング20cと、第1連結部28とを有している。第1ハウジング20aは、インペラ30および第1磁石部32を収容する平面視略円形の第1収容室S1を有しており、第1ハウジング20aにおける上部の中央部には、第1収容室S1に液体を取り込む取込口34aが上下方向に延びて形成されている。また、第1ハウジング20aの側部には、第1収容室S1から液体を排出する排出口34bが第1収容室S1の接線方向に延びて形成されている。そして、取込口34aおよび排出口34bのそれぞれには、第1フランジ36aおよび第2フランジ36bが接合されている。
【0029】
第2ハウジング20bは、第1収容室S1の下方において超伝導体24および冷却部26を支持する部分であり、第2ハウジング20bの中央部には、回転軸38が挿通される貫通孔40が上下方向に延びて形成されている。そして、第2ハウジング20bにおける貫通孔40の周囲には、超伝導体24および冷却部26を収容する収容部42が形成されている。
【0030】
第3ハウジング20cは、第2磁石部44および第1カップリング磁石46を収容する第2収容室S2を有しており、第3ハウジング20cの側部には、第2収容室S2内の空気を外部に排出する排気孔48が形成されている。
【0031】
第1連結部28は、第3ハウジング20cの下面の外周部に配置された環状の基部28aと、基部28aの内周部から下方に延びて形成された短管状の第1嵌合部28bとを有している。また、基部28aには、間隔調整機構23のボルト25が螺合される複数のねじ孔23bが周方向に間隔を隔てて設けられている。
【0032】
そして、第1ハウジング20a、第2ハウジング20b、第3ハウジング20cおよび第1連結部28が、ボルト等の接続部材(図示省略)を用いて互いに接続されている。
【0033】
駆動部ハウジング22は、回転駆動部16を収容するハウジング22aと、ハウジング22aの上部に設けられた円盤状の台座22bと、台座22bの外周部に設けられた第2連結部52とを有している。第2連結部52は、台座22bの上面の外周部に接合された環状の基部52aと、基部52aの上面の径方向中央部から上方に延びて形成され、第1嵌合部28bの内側または外側(本実施形態では外側)に嵌合される短管状の第2嵌合部52bとを有している。そして、基部52aにおける第2嵌合部52bの外側には、間隔調整機構23のボルト25が挿通される複数の貫通孔23cが周方向に間隔を隔てて設けられている。
【0034】
間隔調整機構23は、回転力伝達部18を構成する第1カップリング磁石46と第2カップリング磁石102との間隔を調整するものであり、複数のボルト25と、複数のナット27とを有している。複数のボルト25のそれぞれは、第2連結部52の貫通孔23cに下方から挿通されるとともに、第1連結部28のねじ孔23bに螺合されている。複数のナット27のそれぞれは、基部52aの上面に配置されるとともに、ボルト25に螺合されている。そして、ボルト25の頭部25aとナット27とで基部52aが挟まれている。したがって、ねじ孔23bに対するボルト25のねじ込み長さを調整することによって、第1連結部28と第2連結部52との間隔を調整でき、ひいては第1カップリング磁石46と第2カップリング磁石102との間隔を調整できる。
【0035】
図2は、第1磁石部32、第2磁石部44、超伝導体24および冷却部26の構成を示す分解斜視図である。
図2に示すように、超伝導体24は、冷却されることによってピン止め効果を発現する第二種超伝導体(type 2 superconductor)であり、たとえば、イットリウム系酸化物超伝導体が超伝導体24として用いられる。本実施形態では、複数(たとえば8個)の略円柱状の超伝導体24が、第1磁石部32と第2磁石部44との間であって、かつ、貫通孔40(
図1)および回転軸38(
図1)の周囲に円環状に並べて配置されており、貫通孔40の周囲の全周においてピン止め効果を発現できるようになっている。また、超伝導体24は、第1磁石部32に対向する円形の第1対向面24aと第2磁石部44に対向する円形の第2対向面24b(
図1)とを有しており、第1対向面24aおよび第2対向面24b(
図1)のいずれか一方(N極)から他方(S極)に向けて磁束線が貫通するようになっている。なお、超伝導体24の数および形状は特に限定されるものではなく、たとえば、略円弧状の平面視形状を有する複数の超伝導体24が用いられてもよいし、1つの円環状の超伝導体24が用いられてもよい。
【0036】
図2に示すように、冷却部26は、超伝導体24を冷却することによって、超伝導体24にピン止め効果を発現させるものであり、液体窒素等の冷媒が充填される円環状の断熱容器(クライオスタット等)60と、断熱容器60の内周壁60aと外周壁60bとの間に配置された仕切り壁62とを有している。また、外周壁60bにおける仕切り壁62の一方面62aに近接する部分には、冷媒の供給口64aが形成されており、外周壁60bにおける仕切り壁62の他方面62bに近接する部分には、冷媒の排出口64bが形成されている。さらに、供給口64aおよび排出口64bのそれぞれには、冷媒配管66aおよび66bが接続されている。
【0037】
そして、
図2に示すように、複数の超伝導体24が、断熱容器60の内部に断熱容器60の内壁面から離間して円環状に配置されており、超伝導体24における第1磁石部32の下面と対向する第1対向面24aがスペーサ68aを介して断熱容器60の上壁60cに固定されており、超伝導体24における第2磁石部44の上面と対向する第2対向面24b(
図1)がスペーサ68b(
図1)を介して断熱容器60の下壁60dに固定されている。スペーサ68a,68b(
図1)のそれぞれは、合成樹脂等のような非磁性体で形成された円柱状または円盤状の部材であり、これらの直径は、第1対向面24aおよび第2対向面24b(
図1)の直径よりも十分に小さく設計されている。したがって、複数の超伝導体24のそれぞれと冷媒との接触面積を広く確保することが可能であり、供給口64aから供給された冷媒が排出口64bから排出されるまでの間に、超伝導体24のそれぞれを効率よく冷却することができる。
【0038】
図1に示すように、回転体部14は、回転軸38と、回転軸38に固定された第1磁石部32と、回転軸38に第1磁石部32から軸方向に所定間隔を隔てて固定された第2磁石部44と、インペラ30とを備えている。そして、回転軸38、第1磁石部32、第2磁石部44および超伝導体24等によって「超伝導軸受装置」としての軸受部Aが構成されている。
【0039】
回転軸38は、固定体部12の中央部に上下方向に延びて配置された棒状の部材であり、回転軸38の下端部外周面には、鍔部70が径方向に突出して形成されており、回転軸38の上端面には、雄ねじ部72が軸方向に突出して形成されている。
【0040】
図3は、第1磁石部32、第2磁石部44および超伝導体24の位置関係を示す側面図である。
図3に示すように、第1磁石部32は、回転軸38の周囲に配置され、かつ、超伝導体24の第1対向面24aと対向する第1磁極面74aを有する円環状の第1永久磁石74と、第1永久磁石74の内側または外側(本実施形態では外側)に第1永久磁石74と同心円状に配置され、第1対向面24aと対向する第3磁極面76aを有する円環状の第3永久磁石76と、合成樹脂等のような非磁性体で形成され、第1永久磁石74と第3永久磁石76との間に配置された円環状のスペーサ78とを有している。第1磁極面74aの極性と第3磁極面76aの極性とは互いに逆極性であり、本実施形態では、第1磁極面74aがS極、第3磁極面76aがN極になっている。
【0041】
また、
図3に示すように、第1磁石部32は、第1永久磁石74および第3永久磁石76を保持するとともに、これらの磁力を増幅させるヨーク80と、ヨーク80を保持する保持部材82とを有している。保持部材82は、回転軸38が挿入される貫通孔82aを有しており、回転軸38の上部が貫通孔82aに圧入されることによって、回転軸38の上部に第1磁石部32が固定されている。そして、回転軸38の雄ねじ部72には、貫通孔82aの内径より大きい外径を有する雌ねじ部材83が螺合されており、これにより第1磁石部32の脱落が防止されている。
【0042】
図3に示すように、第2磁石部44は、回転軸38の周囲に配置され、かつ、超伝導体24の第2対向面24bと対向する第2磁極面84aを有する円環状の第2永久磁石84と、第2永久磁石84の内側または外側(本実施形態では外側)に第2永久磁石84と同心円状に配置され、第2対向面24bと対向する第4磁極面86aを有する円環状の第4永久磁石86と、合成樹脂等のような非磁性体で形成され、第2永久磁石84と第4永久磁石86との間に配置されたスペーサ88とを有している。第2磁極面84aの極性と第4磁極面86aの極性とは互いに逆極性であり、本実施形態では、第2磁極面84aがN極、第4磁極面86aがS極になっている。
【0043】
また、
図3に示すように、第2磁石部44は、第2永久磁石84および第4永久磁石86を保持するとともに、これらの磁力を増幅させるヨーク90と、ヨーク90を保持する保持部材92とを有している。保持部材92は、回転軸38が挿入される貫通孔92aを有しており、回転軸38の下部が貫通孔92aに圧入されることによって、回転軸38の下部に第2磁石部44が固定されている。そして、貫通孔92aの下部には、内径を拡径することによって段状の係止部92bが形成されており、この係止部92bに回転軸38の鍔部70が係止されている。
【0044】
図3に示すように、第1永久磁石74の内径をD
11、外径をD
12とし、第2永久磁石84の内径をD
21、外径をD
22とし、(D
11+D
12)/2の式で得られる第1仮想円直径をD
13とし、(D
21+D
22)/2の式で得られる第2仮想円直径をD
23としたとき、第1仮想円直径D
13が第2仮想円直径D
23より大きくされ、或いは、小さくされている(本実施形態では小さくされている)。また、第3永久磁石76の内径をD
31、外径をD
32とし、第4永久磁石86の内径をD
41、外径をD
42とし、(D
31+D
32)/2の式で得られる第3仮想円直径をD
33とし、(D
41+D
42)/2の式で得られる第4仮想円直径をD
43としたとき、第3仮想円直径D
33が第4仮想円直径D
43より大きくされ、或いは、小さくされている(本実施形態では小さくされている)。これにより、超伝導体24を略直線状に貫く磁束線の一部が回転軸38に平行な方向に対して傾斜されるようになっている。
【0045】
図4は、第1磁石部32における磁場の強さを示すグラフである。
図4に示すように、第1磁極面74aおよび第3磁極面76aからの離間距離Lが5mmの点に測定ラインを設定し、当該測定ライン上における磁場の強さ(G)を測定すると、第1永久磁石74と第3永久磁石76との境界部に対応する点Pにおいて、磁場の強さ(G)が大きく変化する。また、図示していないが、第2永久磁石84と第4永久磁石86との境界部に対応する点においても、磁場の強さ(G)が大きく変化する。
【0046】
図3中の矢印で示すように、本実施形態では、第1磁石部32および第2磁石部44のいずれか一方(N極)から他方(S極)に向かう磁束線の多くを、超伝導体24に対して略直線状に貫通させるとともに、回転軸38に平行な方向に対して傾斜させることができ、回転体部14(
図1)がラジアル方向および軸方向のいずれの方向に移動するときでも、回転体部14の移動をピン止め力で抑制することができる。また、第1磁石部32と第2磁石部44との間に作用する磁力によってこれらの間隔が変動することがないので、当該磁力を大きくして、超伝導体24を貫通する磁束線の数を増大させることができる。さらに、
図4に示すように、固定体部12に対して回転体部14がラジアル方向に移動するときには、超伝導体24に加わる外部磁場が大きく変化するので、回転体部14の移動をピン止め力で効果的に抑制することができる。したがって、ラジアル方向におけるピン止め力を十分に確保しつつ、同心円状に配置される永久磁石の数を少なくでき、装置全体を小型化することができる。
【0047】
図3に示すように、インペラ30は、液体を吸引する吸引口30aと、当該液体を吐出する吐出口30bとを有している。本実施形態では、第1磁石部32の保持部材82とインペラ30とが一体的に形成されており、インペラ30の中央部に雌ねじ部材83が嵌り込む凹部30cが形成されている。
【0048】
固定体部12および回転体部14における各構成部分の材質は、特に限定されるものではないが、耐食性が要求される部分については、耐食性合成樹脂、耐食性金属およびセラミック等を用いることが望ましい。耐食性合成樹脂としては、PTFE(ポリ4フッ化エチレン)、PFA(4フッ化エチレンとパーフロロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、FEP(4フッ化エチレンと6フッ化プロピレンの共重合体)、PVdF(ポリフッ化ビニリデン:2フッ化樹脂)、ETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体)等のフッ素樹脂が好適である。
【0049】
図1に示すように、回転駆動部16は、回転力を発生させる動力源となる部分であり、本実施形態では、モータが回転駆動部16として用いられている。そして、回転駆動部16がハウジング22aに収容されており、回転駆動部16の出力軸16aがハウジング22aの上部に設けられた台座22bの上面から突出されており、この出力軸16aに磁石保持部材100を介して第2カップリング磁石102が取り付けられている。
【0050】
図5は、回転力伝達部18の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、回転力伝達部18は、回転駆動部16で発生した回転力を回転体部14に非接触で伝達する部分であり、いわゆるマグネットカップリングと称される部分である。回転力伝達部18は、回転軸38の下部に第2磁石部44と共に固定された少なくとも1つ(本実施形態では6個)の第1カップリング磁石46と、回転駆動部16の出力軸16aに磁石保持部材100を介して取り付けられた少なくとも1つ(本実施形態では6個)の第2カップリング磁石102とを有している。
図5に示すように、第1カップリング磁石46および第2カップリング磁石102は、軸方向において互いに対向する磁極面46aおよび102aを有しており、これらの磁極面46aおよび102aの極性は、互いに逆極性になっている。また、本実施形態では、隣り合う2つの第1カップリング磁石46間で磁極面46aの極性が逆になっており、また、隣り合う2つの第2カップリング磁石102間で磁極面102aの極性が逆になっている。したがって、第1カップリング磁石46と第2カップリング磁石102との間には、互いに引き合う吸引力が作用し、第2カップリング磁石102が回転されると、それに伴って第1カップリング磁石46が回転される。
【0051】
図6は、第1カップリング磁石46と第2カップリング磁石102との間隔を調整する方法を示す断面図である。
図6に示すように、超伝導ポンプ10を組み立てる際には、まず、第1連結部28の第1嵌合部28bと第2連結部52の第2嵌合部52bとを嵌合し、第1カップリング磁石46と第2カップリング磁石102との間隔を間隔調整機構23によって仮決めする。具体的には、第2連結部52における第2嵌合部52bの先端と第1連結部28における基部28aの下面との間隔Hを完成時の長さよりも長くなるように仮決めする。続いて、冷却部26の断熱容器60に冷媒を供給し、複数の超伝導体24のそれぞれを冷却して、これらにピン止め効果を発現させる。そして、第1カップリング磁石46と第2カップリング磁石102との間隔を間隔調整機構23で短くし、これらの間の吸引力を増大させる。すると、当該吸引力によって固定体部12に対して回転体部14が軸方向に移動し、超伝導体24に加わる外部磁場が変化してピン止め力が発生する。このピン止め力によって固定体部12と回転体部14との位置関係が保持される。
【0052】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、超伝導体24を直線状に貫通する磁束線が回転軸38に平行な方向に対して傾斜しているが、他の実施形態では、当該磁束線が傾斜していなくてもよい。この場合には、他の磁石部で発生する磁束線を超伝導体24または他の超伝導体で捕捉することによって、軸方向のピン止め力を作用させるようにしてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態では、本発明を超伝導ポンプ10に適用しているが、他の実施形態では、本発明を超伝導攪拌機等のような他の超伝導回転装置に適用してもよい。本発明を超伝導攪拌機に適用する場合には、インペラ30に代えて攪拌羽根が用いられる。
【0054】
そして、間隔調整機構23の構成は適宜変更可能であり、たとえば、間隔調整を自動で行う場合には、送りねじ(ボールねじ等)および駆動モータ等で間隔調整機構が構成されてもよい。