(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなシャッタにおいては、先幕及び後幕が開口から退避した状態を維持するために、先幕及び後幕をそれぞれ第1及び第2付勢部材により開口から退避するように付勢することが、特願2011−278798号によって本出願人から提案されている。このような場合、露出動作において、第1アクチュエータが先幕を開口から退避させる方向と第1付勢部材が先幕を付勢する方向とは同じである。しかしながら、第2アクチュエータが後幕を開口に進行させる方向と第2付勢部材が後幕を付勢する方向とは逆である。このため、第1アクチュエータへの負荷と第2アクチュエータへの負荷とに差が生じる。これにより、例えば所定期間連写撮影している場合には、第1及び第2アクチュエータの動作特性が変化してシャッタスピードが変化するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、シャッタスピードの変化が抑制されたフォーカルプレーンシャッタ、撮像装置、及びデジタルカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、開口を有した基板と、前記開口を開閉する先幕及び後幕と、前記先幕及び後幕が前記開口から退避するようにそれぞれ付勢する第1及び第2付勢部材と、露出動作において、前記先幕が前記開口を閉じた位置から前記開口から退避した位置まで前記第1付勢部材の付勢力に補助されながら前記先幕を移動させる第1アクチュエータと、前記露出動作において、前記後幕が前記開口から退避した位置から前記開口を閉じた位置まで前記第2付勢部材の付勢力に抗して前記後幕を移動させる第2アクチュエータと、を備え、前記第1アクチュエータの駆動トルクは、前記第2アクチュエータの駆動トルクよりも小さい、フォーカルプレーンシャッタによって達成できる。これにより、第1アクチュエータにより駆動される先幕と第2アクチュエータにより駆動される
後幕との移動速度の差が抑制される。
【0007】
上記目的は、上記のフォーカルプレーンシャッタを備えた撮像装置によっても達成できる。
【0008】
上記目的は、上記のフォーカルプレーンシャッタを備えたデジタルカメラによっても達成できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シャッタスピードの変化が抑制されたフォーカルプレーンシャッタ、撮像装置、及びデジタルカメラを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、フォーカルプレーンシャッタ1を備えたカメラ(撮像装置)Aのブロック図である。カメラAは、フォーカルプレーンシャッタ1、制御部110、撮像素子130、駆動制御部170を備えている。フォーカルプレーンシャッタ1は、詳しくは後述するが第1アクチュエータ(以下、アクチュエータと称する)70a、第2アクチュエータ(以下、アクチュエータと称する)70b、第1センサ(以下、センサと称する)60a、第2センサ(以下、センサと称する)60bを備えている。駆動制御部170は、制御部110からの指令に応じてアクチュエータ70a、70bの駆動を制御する。駆動制御部170は、CPU等を備えている。制御部110は、センサ60a、60bからの信号に応じて駆動制御部170に所定の指令を出す。駆動制御部170は、この指令を受けてアクチュエータ70a、70bの駆動を制御する。制御部110は、カメラ全体の動作を制御し、CPU、ROM、RAM等を備えている。撮像素子130は、CMOSである。撮像素子130は、被写体像を光電変換作用により電気的信号に変換する受光素子である。尚、カメラAは、
図1には図示していないが、焦点距離を調整するためのレンズ等を備えている。
【0012】
図2は、フォーカルプレーンシャッタ1の正面図である。
図2では、アクチュエータ70a、70bについては省略してある。フォーカルプレーンシャッタ1は、基板10、先幕20A、後幕20B、アーム31a、32a、31b、32b、アクチュエータ70a、70b等を有している。基板10には、矩形状の開口11を有している。先幕20A、後幕20Bは、それぞれ第1及び第2幕の一例である。また、アクチュエータ70a、70bは、それぞれ第1及び第2アクチュエータの一例である。
【0013】
先幕20Aは、3枚の羽根21a〜23aから構成され、後幕20Bは、3枚の羽根21b〜23bから構成される。
図2は、先幕20A、後幕20Bが重畳状態である場合を示している。
図2の場合には、先幕20A、後幕20Bは開口11から退避している。先幕20Aはアーム31a、32aに連結されている。後幕20Bは、アーム31b、32bに連結されている。これらアーム31a、32a、31b、32bは、それぞれ基板10に回転自在に支持されている。
【0014】
基板10には、アーム31a、31bをそれぞれ駆動するための第1駆動レバー(以下、駆動レバーと称する)55a、第2駆動レバー(以下、駆動レバーと称する)55bが設けられている。駆動レバー55a、55bは、それぞれ歯車50a、50bに連結されている。歯車50a、50bは、それぞれ歯車40a、40bと噛合している。歯車40a、40b、50a、50bは、それぞれ筒部41a、41b、51a、51bを有し、各筒部と嵌合する軸42a、42b、52a、52bを中心に基板10に回転可能に支持されている。尚、軸42a、42b、52a、52bは必ずしも開口11が形成された基板10に形成されていなくてもよく、開口11に対して定位置に設ければよい。
【0015】
歯車40a、40bは、それぞれ後述するアクチュエータ70a、70bのロータ72a、72bに連結されている。アクチュエータ70aが駆動することにより、歯車40a、50aが駆動し、これにより駆動レバー55aが駆動する。駆動レバー55aが駆動することにより、アーム31aが駆動する。これにより、先幕20Aが走行する。先幕20Aは、開口11から退避した退避位置及び開口11を閉鎖する閉鎖位置間を走行可能である。先幕20Aは、アクチュエータ70aにより退避位置及び閉鎖位置間を走行する。歯車40b、50b、駆動レバー55b、後幕20Bについても同様である。
【0016】
歯車40a、40bには、それぞれ薄板45a、45bが設けられている。薄板45a、45bはそれぞれ歯車40a、40bと共に回転する。薄板45a、45bはそれぞれ扇状である。センサ60a、60bは、それぞれ薄板45a、45bがセンサ60a、60bを通過したか否かを検出することにより、先幕20A、後幕20Bの位置を検出する。
【0017】
また、アーム31a、31bにはそれぞれバネSa、Sbが連結されている。詳細には、バネSaの一端はアーム31aに連結され他端は基板10に連結されている。バネSbの一端はアーム31bに連結され他端は基板10に連結されている。バネSa、Sbは、それぞれ先幕20A、後幕20Bが開口11から退避するようにアーム31a、31bを付勢する。バネSa、Sbはそれぞれ第1、第2付勢部材の一例である。
【0018】
次に、フォーカルプレーンシャッタ1の動作について説明する。
図2〜4は、フォーカルプレーンシャッタ1の動作の説明図である。待機状態においては、
図2に示すように先幕20A、後幕20Bは、退避位置に位置づけられ開口11は全開状態のままに維持される。尚、
図2に示す待機状態において、先幕20A、後幕20Bは、それぞれバネSa、Sbにより開口11から退避した位置で維持されている。
【0019】
カメラAは、撮像素子からの出力を液晶モニター等にリアルタイムに映し出すライブビューモードに対応可能である。即ち、カメラAはデジタルカメラである。従って、ライブビューモード時には
図2の状態が維持される。バネSa、Sbにより、アクチュエータ70a、70bが通電されていない状態においても、先幕20A、後幕20Bが開口11から退避した状態が維持できる。これにより、例えばライブビューモードでカメラAに衝撃が加わった場合であっても、先幕20A、後幕20Bが開口11に進行することが防止されている。
【0020】
カメラAのレリーズスイッチが押されると、チャージ動作が開始される。チャージ動作が開始されると、アクチュエータ70aのコイルに通電されて先幕20Aは開口11を閉じるように走行する。具体的には、歯車40aが反時計方向に回転して歯車50aが時計方向に回転してアーム31aが駆動する。この際、アーム31aは、バネSaの付勢力に抗するようにして移動する。
【0021】
その後、先幕20Aが開口11を閉鎖し後幕20Bが開口11から退避した状態でアクチュエータ70aのコイルへの通電が遮断される。このようにしてチャージ動作が完了する。
図3は、チャージ動作が完了した状態でのフォーカルプレーンシャッタ1の状態を示している。
図3では、先幕20Aが閉鎖位置にあり後幕20Bが退避位置にある。
【0022】
チャージ動作完了後、所定の休止期間を経て、露出動作が開始される。制御部110は駆動制御部170に指令を出してアクチュエータ70aのコイルを通電して先幕20Aが開口11を開くように走行させる。具体的には、歯車40aが時計方向に駆動し歯車50aが反時計方向に駆動する。この際、アーム31aは、バネSaの付勢方向と同じ方向に移動して、先幕20Aが走行する。制御部110は、センサ60aからの出力信号の切り替わりを検出することにより、先幕20Aが開口11から退避したことを検出することができる。先幕20Aが開口11から退避すると再び
図2の状態になる。
【0023】
制御部110はセンサ60aにより先幕20Aが開口11から退避したことを検出してから所定期間経過後にアクチュエータ70bのコイルに通電して後幕20Bの走行を開始する。アーム31bは、バネSbの付勢方向とは反対方向に移動して、後幕20Bが走行する。これにより、後幕20Bが開口11を閉じるように走行する。先幕20Aが開口11から完全に退避し後幕20Bが開口11を完全に閉鎖するとアクチュエータ70a、70bのコイルへの通電は遮断される。
図4は、先幕20Aが退避位置にあり後幕20Bが閉鎖位置にある状態を示している。このようにして、露出動作が終了する。
【0024】
露出動作終了後、制御部
110のRAMや又はカメラ側のメモリにデータが読み込まれる。次に、アクチュエータ70bのコイルが通電されて後幕20Bが開口11から退避し、開口11は全開状態が維持されて、
図2に示した待機状態に戻る。
【0025】
このように、制御部110は、走行している先幕20Aが所定位置を通過したことを検出してから所定期間経過後に、アクチュエータ70bのコイルに通電を開始して後幕20Bの走行を開始する。上記において、センサ60aにより先幕20Aが開口11から退避した位置を所定位置として説明したが、これに限定されない。
【0026】
このように露出動作においては、先幕20AはバネSaの付勢力に補助されながら、開口11から退避し、後幕20BはバネSbの付勢力に抗しながら開口11を閉鎖する。即ち、露出動作においては、アクチュエータ70aはバネSaに補助されながら先幕20Aを走行させるのに対し、アクチュエータ70bはバネSbの付勢力に抗しながら後幕20Bを走行させる。このため、アクチュエータ70aの負荷は、アクチュエータ70bの負荷よりも小さくなる。したがって、アクチュエータ70a、70bを同じ駆動条件、例えば、同じ値の電流値を印加して駆動した場合であっても、撮影を繰り返すとアクチュエータ70aと70bの発熱量の差が大きくなり、これがアクチュエータ70aと70bの動作特性の変化の要因となり先幕20Aと後幕20Bの動作速度が変化するおそれがある。このため、例えば、所定期間内で連続撮影した場合には、アクチュエータ70a、70bの動作特性の変化に伴うシャッタスピードの変化により、画質の低下などの不具合が生じるおそれがある。
【0027】
例えば、上記の場合にアクチュエータ70a、70bの動作特性の変化を抑制するために、アクチュエータ70aに供給される電力値とアクチュエータ70bに供給される電力値を異なるように設定することが考えられる。例えば、アクチュエータ70aに供給される電力値をアクチュエータ70bに供給される電力値よりも小さく設定することが考えられる。しかしながら、この場合には駆動制御部170による制御が複雑化して高コストになるおそれがある。本実施例では、アクチュエータ70aの駆動トルクはアクチュエータ70bの駆動トルクよりも小さく、かつ、駆動制御部170によるアクチュエータ70a、70bに供給される電力も略同じに設定されている。
【0028】
図5A、5Bは、それぞれアクチュエータ70a、70bの説明図である。アクチュエータ70aは、ロータ72a、励磁されることによりロータ72aとの間で磁力が作用するステータ74a、ステータ74aを励磁するためのコイル76aを備えている。ロータ72aは、周方向に異なる極性に着磁された永久磁石である。ロータ72aは、軸42aにより回転可能に支持されている。ロータ72aには歯車40aが固定されており、ロータ72aが回転することにより先幕20Aが駆動する。同様に、アクチュエータ70bも、ロータ72b、ステータ74b、コイル76bを備えている。ロータ72bは、軸42bにより回転可能に支持され、歯車40bが固定されている。ロータ72bが回転することにより後幕20Bが駆動する。
【0029】
ステータ74aは、所定方向に延びた基部74a1、基部74a1の両端からそれぞれ基部74a1に交差する方向に延びた脚部74a2、74a4、脚部74a2の先端に形成された磁極部74a3、脚部74a4の先端に形成された磁極部74a5、を含む。脚部74a4には、コイル76aが巻回されたコイルボビン78aが組み付けられている。磁極部74a3、74a5は、ロータ72aに対向する。詳細には、磁極部74a3、74a5はそれぞれ、ロータ72aの外周面に部分的に対向する曲面を有している。コイル76aの通電によって、磁極部74a3、74a5は互いに異なる極性に励磁される。これによって、磁極部74a3、74a5とロータ72aとの間に磁力が生じて、ロータ72aが回転する。同様に、ステータ74bは、基部74b1、脚部74b2、74b4、磁極部74b3、74b5を含み、コイル76bへの通電によってロータ72bが回転する。
【0030】
図5A、5Bに示すように、ステータ74a、74bの形状は異なっているが、ロータ72a、72bやコイル76a、76bは同じである。また、コイル76a、76bの巻数も同じである。
図5A、5Bに示すように、磁極部74a3の先端部と磁極部74a5の先端部との間の距離Waは、磁極部74b3の先端部と磁極部74b5の先端部との間の距離Wbよりも大きい。これにより、磁極部74a3、74a5がロータ72aに対向する曲面の面積は、磁極部74b3、74b5がロータ72bに対向する曲面の面積よりも小さい。これにより、コイル76a、76bに同一値の電流を印加した場合、ロータ72aの駆動トルクは、ロータ72bの駆動トルクよりも小さい。
【0031】
これにより、アクチュエータ70aの駆動トルクは、アクチュエータ70bの駆動トルクよりも小さく設定されている。よって、バネSa、Sbがそれぞれ先幕20A、後幕20Bを開口から退避するように付勢しアクチュエータ70a、70bに供給される電力値が同一であっても、シャッタスピードの変化を抑制できる。
【0032】
上記の方法以外のよってアクチュエータ70aの駆動トルクをアクチュエータ70bの駆動トルクよりも小さくしてもよい。例えば、アクチュエータ70bのステータの磁路の断面積が最小となる部分の面積を、アクチュエータ70bのステータ74bの磁路の断面積が最小となる部分の面積よりも小さくしてもよい。アクチュエータ70aのコイルの巻数をコイル76bの巻数よりも小さくしてもよい。アクチュエータ70aのコイルの線形や材質をコイル76bとは異なるものにしてもよい。アクチュエータ70aのロータの大きさや材質を、ロータ72bとは異なるものにしてもよい。
【0033】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0034】
制御部110と駆動制御部170は、単一のICチップにより実現されていてもよい。
【0035】
上記実施例において、先幕及び後幕は、それぞれ3枚の羽根から構成されるが、これに限定されず、例えば2枚の羽根から構成されるものであってもよいし、4枚以上の羽根から構成されるものであってもよい。