(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず複数のフィルタを用いるデバイスについて説明する。
図1(a)は分波器を例示するブロック図である。
【0021】
図1(a)に示すように、送信フィルタF1はアンテナ端子Ant(共通端子)と送信端子Txとの間に電気的に接続され、受信フィルタF2はアンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に電気的に接続されている。送信フィルタF1の通過帯域は例えば受信フィルタF2の通過帯域と異なる。送信フィルタF1は、送信端子Txから入力された送信信号のうち、周波数が送信フィルタF1の通過帯域内の信号を通過させ、周波数が通過帯域外の信号を抑圧する。送信フィルタF1によりフィルタリングされた送信信号はアンテナ端子Antに接続されたアンテナ(不図示)から外部に送信される。受信フィルタF2は、アンテナが受信した受信信号のうち、周波数が通過帯域内の信号を通過させ、周波数が通過帯域外の信号を抑圧する。受信フィルタF2によりフィルタリングされた受信信号は受信端子Rxを通じて、例えばIC(Integrated Circuit:集積回路)等の電子部品に入力される。送信信号及び受信信号は、周波数が例えばGHz帯に位置するような高周波信号である。
【0022】
図1(b)はデュアルフィルタを例示するブロック図である。フィルタF3は入力端子In1と出力端子Out1との間に電気的に接続されている。フィルタF4は入力端子In2と出力端子Out2との間に電気的に接続され、フィルタF3とは電気的に接続されていない。フィルタF3の通過帯域は例えばフィルタF4の通過帯域と重ならない。従って、出力端子Out1から出力される信号と、出力端子Out2から出力される信号とは異なる周波数を有する。例えばフィルタF3及びF4を送信フィルタとすることにより、デュアルフィルタは異なる通信方式に対応した2つの送信信号を送信することができる。またフィルタF3及びF4を受信フィルタとすることにより、デュアルフィルタは異なる通信方式に対応した2つの受信信号を受信することができる。
【0023】
次に比較例として、SAWフィルタを含む弾性波デバイス100Rについて説明する。
図2は比較例に係る弾性波デバイス100Rを例示する断面図である。
【0024】
図2に示すように、弾性波デバイス100Rは、チップ110及び120を含む。チップ110の圧電基板112の面112aにフィルタ114、並びにフィルタ114と電気的に接続された端子113a及び113bが形成されている。チップ120の圧電基板122の面122aに、フィルタ124、並びにフィルタ124と電気的に接続された端子123a及び123bが形成されている。フィルタ114及び124はIDT(Interdigtal Transducer)及び反射器を含むSAWフィルタである。端子113a、113b、123a及び123bは、例えば錫銀(Sn−Ag)等を主成分とする半田により形成され面112a及び122aから突出するバンプを含む。チップ110とチップ120とは、フィルタ114及び124が基板130と対向するように、基板130にフリップチップ実装され、かつ例えばエポキシ樹脂等の樹脂により形成された封止部131により封止されている。
【0025】
基板130は、絶縁層132及び134、並びに導体層146、148及び150を積層した積層基板である。導体層間は、絶縁層132及び134を貫通するビア配線151により接続されている。フィルタ114及び124は、端子を介して導体層146と接続されている。導体層146は、導体層148及びビア配線151を介して導体層150と接続されている。導体層150は信号の入力又は出力を行うフットパッドとして機能する。
【0026】
弾性波デバイス100Rが分波器である場合、フィルタ114は
図1(a)における送信フィルタF1として機能し、フィルタ124は受信フィルタF2として機能する。導体層150は
図1(a)における送信端子Tx、受信端子Rx、アンテナ端子Ant、及び不図示の接地端子を含む。また弾性波デバイス100Rをデュアルフィルタとすることもできる。この場合、フィルタ114は
図1(b)のフィルタF3として機能し、フィルタ124はフィルタF4として機能する。導体層150は、入力端子In1及びIn2、出力端子Out1及びOut2を含む。
【0027】
弾性波デバイス100Rを小型化するためには、チップ110とチップ120とを近付けることが有効である。しかし、フィルタ114とフィルタ124との距離が近付くことにより、フィルタ114に流れる信号がフィルタ124に漏洩しやすくなり、フィルタ124に流れる信号がフィルタ114に漏洩しやすくなる。信号の漏洩の結果、フィルタ114及びフィルタ124の抑圧度が劣化する。このように、フィルタ114とフィルタ124との間においてアイソレーションが低下する。
【実施例1】
【0028】
実施例1は2つのチップにおけるフィルタが形成された面を互いに反対向きにする例である。
図3は実施例1に係る弾性波デバイス100例示する断面図である。
【0029】
図3に示すように、基板30(第3基板)は、複数の絶縁層32、34、36、38、40、42及び44、並びに複数の導体層46、48、50、52、54、56及び58が積層された積層基板である。絶縁層は例えばエポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂等の樹脂、又はセラミックス等の絶縁体により形成される。導体層は例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の金属、又はこれらの金属を含む合金により形成される。チップ10及び20は絶縁層36、38及び40に埋め込まれ、絶縁層36、38及び40に形成された空隙31に配置されている。空隙31には例えばアルゴン(Ar)等の気体が封入されている。
【0030】
チップ10(第1チップ)は、圧電基板12(第1基板)、圧電基板12の面12a(第1面)に形成された端子13a及び13b(第1端子)、並びにフィルタ14(第1フィルタ)を含む。フィルタ14は例えばSAWフィルタを含み、端子13a及び13bと電気的に接続されている。端子13a及び13bは導体層54及び56、並びにビア配線51を介して、フットパッドとして機能する導体層58に接続されている。チップ20(第2チップ)は、圧電基板22(第2基板)、圧電基板22の面22a(第2面)に形成された端子23a及び23b(第2端子)、並びにフィルタ24(第2フィルタ)を含む。フィルタ24は例えばSAWフィルタを含み、端子23a及び23bと電気的に接続されている。端子23aは導体層46、48、50、52、54及び56、並びにビア配線51を介して導体層58に接続されている。端子23bは、導体層48、50、52、54及び56、並びにビア配線51を介して導体層58に接続されている。フィルタ14の通過帯域は、フィルタ24の通過帯域とは重なっていない。フィルタ14及び24は空隙31に露出しているため、弾性波の励振は妨げられない。
【0031】
面12aは絶縁層42と対向している。面22aは、面12aと反対の方向を向いており、絶縁層34と対向している。このため実施例1においては比較例と比べ、フィルタ14とフィルタ24との距離が大きくなる。従って、フィルタ14を流れる信号がフィルタ24に漏洩しにくくなり、フィルタ24を流れる信号がフィルタ14に漏洩しにくくなる。この結果、弾性波デバイス100を小型化した場合でも、フィルタ14とフィルタ24との間で高いアイソレーションが得られる。
【0032】
弾性波デバイス100が分波器である場合、フィルタ14は、例えば
図1(a)における送信フィルタF1として機能する。フィルタ24は、例えば受信フィルタF2として機能する。導体層58は
図1(a)における送信端子Tx、受信端子Rx、アンテナ端子Ant(共通端子)、及び接地端子を含む。端子13a及び13bは、送信端子Tx及びアンテナ端子Antのいずれかに接続されている。端子23a及び23bは、受信端子Rx及びアンテナ端子Antのいずれかに接続されている。この場合、送信フィルタF1と受信フィルタF2との間で高いアイソレーションが得られる。また、チップ10の外部と信号の入力又は出力を行う端子13a及び13bは面12aに設けられ、チップ20の外部と信号の入力又は出力を行う端子23a及び23bは面22aに設けられている。端子13a及び13bと、端子23a及び23bとの距離が大きくなるため、
図1(a)における送信端子Txと受信端子Rxとのアイソレーションが高くなる。送信フィルタF1として例えば後述のラダー型フィルタが用いられ、受信フィルタF2として例えば後述の縦接続型多重モードフィルタ(以下、多重モードフィルタ)が用いられる。またフィルタ14を受信フィルタF2、フィルタ24を送信フィルタF1として用いてもよい。
【0033】
また弾性波デバイス100をデュアルフィルタとすることもできる。この場合、フィルタ14は例えば
図1(b)のフィルタF3として機能し、フィルタ24は例えばフィルタF4として機能する。導体層58は、入力端子In1及びIn2及び出力端子Out1及びOut2を含む。端子13a及び13bは入力端子In1及び出力端子Out1のいずれかに接続され、端子23a及び23bは入力端子In2及び出力端子Out2のいずれかに接続されている。この場合、フィルタF3とフィルタF4との間で高いアイソレーションが得られる。また端子13a及び13bと、端子23a及び23bとの距離が大きくなるため、
図1(b)における入力端子In1及び出力端子Out1と、入力端子In2及び出力端子Out2との間のアイソレーションが高くなる。
【0034】
フィルタ14の通過帯域はフィルタ24の通過帯域と重ならなくてもよいし、一部が重なってもよい。またフィルタ14の通過帯域がフィルタ24の通過帯域と異なってもよいし、同じでもよい。チップ10とチップ20とを異なる絶縁層に埋め込んでもよいが、基板30が厚くなる恐れがある。
図3に示すように、チップ10及び20を同一の絶縁層36、38及び40に埋め込むことで、基板30の薄型化が可能である。また埋め込む工程も簡略化される。チップ10及び20の側面は絶縁層36、38及び40に接触しているが、離間していてもよい。また、絶縁層36、38及び40に空隙31を形成せず、チップ10及び20を絶縁層36、38及び40に埋め込んでもよい。この場合、チップ10及び20は、例えば後述するウェハレベルパッケージ(Wafer Level Package:WLP)である。また2つの空隙を形成し、チップ10をチップ20とは別の空隙に配置してもよい。なお基板30に含まれる絶縁層の数及び導体層の数は変更可能である。
【0035】
次にSAWフィルタの例について説明する。
図4(a)はラダー型フィルタを例示する平面図であり、フィルタ14がラダー型フィルタの例である。
【0036】
図4(a)に示すように、圧電基板12の面12a上に直列共振子S1〜S4、並列共振子P1〜P3が設けられている。直列共振子S1〜S4は入力端子Inと出力端子Outとの間に直列接続されている。並列共振子P1はS1〜S2間、並列共振子P2はS2〜S3間、並列共振子P3はS3〜S4間にそれぞれ接続されている。並列共振子P1〜P3は接地されている。共振子S1〜S4及びP1〜P3はIDT15及び反射器17を含むSAW共振子である。
図3の端子13a及び13bが、入力端子In及び出力端子Outとして機能する。
【0037】
図4(b)は多重モードフィルタを例示する平面図であり、フィルタ24が多重モードフィルタの例である。
図4(b)に示すように、圧電基板22の面22a上には、左から順にIDT25a、25b及び25cが弾性波の伝搬方向に沿って配置され、IDT25a〜25cを挟むように反射器27が配置されている。IDT25aの一方の櫛型電極、及びIDT25cの一方の櫛型電極はそれぞれ出力端子Outに接続されている。IDT25bの一方の櫛型電極は入力端子Inに接続されている。IDT25a〜25cの他方の櫛型電極は接地されている。2つの出力端子Outは平衡端子であり、1つの入力端子Inは不平衡端子である。なお出力端子Outは不平衡端子でもよい。
図3の端子23a及び23bが出力端子Out及び入力端子Inを含む。
【0038】
圧電基板12及び22は、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO
3)又はニオブ酸リチウム(LiNbO
3)等の圧電体を含む。各IDT及び反射器は、例えばAl等の金属により形成されている。なお電極指の本数は変更可能である。またチップ10及び20は、ラダー型フィルタ及び多重モードフィルタの少なくとも1つを含んでもよいし、これら以外の弾性波フィルタを含んでもよい。
【実施例2】
【0039】
実施例2は分波器を含むモジュールの例である。
図5(a)は実施例2に係るモジュール200を例示するブロック図である。
図5(b)はモジュール200を例示する平面図である。
図5(c)は
図5(b)のA−Aに沿った断面図である。
図5(b)においては導体層45の図示は省略した。
図1(a)及び
図2において既述した構成の説明は省略する。
【0040】
図5(a)に示すように、モジュール200の送信フィルタ60a及び受信フィルタ70aは分波器を形成する。送信端子Txと送信フィルタ60aとの間にパワーアンプ(Power Amplifier:PA)80が電気的に接続され、PA80と送信フィルタ60aとの間には整合回路82aが電気的に接続されている。送信フィルタ60aとアンテナ端子Antとの間には整合回路82bが、受信フィルタ70aとアンテナ端子Antとの間には整合回路82cが、それぞれ電気的に接続されている。整合回路82aは、送信フィルタ60aとPA80との間のインピーダンスを整合する。整合回路82bは、アンテナ端子Antに接続されるアンテナ(不図示)と送信フィルタ60aとの間のインピーダンスを整合する。整合回路82cはアンテナと受信フィルタ70aとの間のインピーダンスを整合する。送信フィルタ60aの通過帯域は、受信フィルタ70aの通過帯域と異なってもよいし、同じでもよい。送信フィルタ60aは例えば
図4(a)に示したラダー型フィルタである。受信フィルタ70aは例えば
図4(b)に示した多重モードフィルタである。
【0041】
図5(b)に示すように、PA80及びチップ部品82は、基板30(第3基板)の上面に実装され、導体層45と接続されている。
図5(c)に示すように、チップ60及びチップ70は、基板30の絶縁層36に埋め込まれている。
【0042】
チップ60は、圧電基板62、送信フィルタ(不図示)、端子63a及び63b、並びに封止部65を含むWLPである。送信フィルタ、端子63a及び63bは面62aに形成されている。送信フィルタは、例えば樹脂により形成された封止部65により封止され、面62aと封止部65との間の空隙に露出している。端子63a及び63bは、送信フィルタと電気的に接続され、封止部65を貫通している。チップ70は、圧電基板72、受信フィルタ(不図示)、端子73a及び73b、並びに封止部75を含むWLPである。チップ60に含まれる送信フィルタは
図5(a)の送信フィルタ60aとして機能し、チップ70に含まれる受信フィルタは受信フィルタ70aとして機能する。
【0043】
チップ60の側面及び上面、並びにチップ70の側面及び下面、封止部65及び75は絶縁層36に接触している。導体層45は配線45a〜45eを含む。導体層58は、アンテナ端子Ant、送信端子Tx、受信端子Rx、及び接地端子を含む。チップ部品82は、インダクタ及びキャパシタの少なくとも一方を含み、
図5(a)における整合回路82a、82b及び82cとして機能する。
【0044】
チップ60の端子63aは、導体層48、ビア配線51、及び配線45aを介してチップ部品82に電気的に接続されている。チップ70の端子73bは、導体層54及び48、ビア配線51、並びに配線45aを介して、端子63aと共通してチップ部品82に電気的に接続されている。チップ60の端子63bは、導体層48及び46、ビア配線51、並びに配線45bを介してチップ部品82と電気的に接続されている。チップ70の端子73aは、導体層54及び56、並びにビア配線51を介して、受信端子Rxと電気的に接続されている。チップ部品82は、配線45c、導体層46、48、54及び56、並びにビア配線51を介してアンテナ端子Antと接続され、また配線45bを介してPA80と接続されている。PA80は、配線45d、導体層46、48、54及び56、並びにビア配線51を介して送信端子Txに接続されている。PA80は能動素子であり、発熱する。PA80において発生した熱は、PA80と配線45e、導体層46、48、54及び56、並びにビア配線51を介して接続された接地端子GNDを通じてモジュール200の外部に放出される。
【0045】
面62aは絶縁層34と対向している。面72aは、面62aと反対の方向を向いており、絶縁層42と対向している。このため実施例2によれば、モジュールにおいても実施例1と同様に高いアイソレーションを得ることができる。
【実施例3】
【0046】
実施例3は、実施例2とは別のモジュールの例である。
図6(a)は実施例3に係るモジュール300を例示するブロック図である。
図6(b)はモジュール300を例示する平面図である。
図6(c)は
図6(b)のA−Aに沿った断面図である。
図1(b)、
図2及び
図6(c)において既述した構成の説明は省略する。
【0047】
図6(a)に示すように、モジュール300においては、受信端子Rxと受信フィルタ70aとの間に整合回路82dが接続されている。整合回路82dは、受信端子Rxに接続されるIC等の部品(不図示)と受信フィルタ70aとの間のインピーダンスを整合する。送信フィルタ60a及び受信フィルタ70aと、アンテナ端子Antとの間にはスイッチ84が接続されている。スイッチ84は、送信フィルタ60a及び受信フィルタ70aを含む分波器と、他の分波器(不図示)とのうちから分波器を選択し、アンテナ端子Antに接続する。例えば送信フィルタ60aの通過帯域が受信フィルタ70aの通過帯域と同じ場合、スイッチ84は送信フィルタ60a及び受信フィルタ70aのうち一方を選択してアンテナ端子Antに接続してもよい。
【0048】
図6(b)に示すように、基板30の上面にはチップ部品82及びスイッチ84が実装されている。チップ部品82は、
図6(a)の整合回路82dとして機能する。
図6(c)に示すように、導体層45は配線45f〜45iを含む。チップ60の端子63aは、導体層54及び56、並びにビア配線51を介して送信端子Txと接続されている。チップ60の端子63bは導体層54及び48、ビア配線51、並びに配線45fを介してスイッチ84に接続されている。チップ70の端子73aは導体層48、ビア配線51、及び配線45fを介して、端子63bと共通してスイッチ84に接続されている。スイッチ84は、配線45g、導体層46、48、54及び56、並びにビア配線51を介してアンテナ端子Antと接続されている。チップ70の端子73bは、導体層48及び46、ビア配線51、並びに配線45hを介してチップ部品82と接続されている。チップ部品82は、配線45i、導体層46、48、54及び56、並びにビア配線51を介して受信端子Rxと接続されている。実施例3によれば、実施例2と同様に面72aは面62aと反対の方向を向いているため、高いアイソレーションを得ることができる。
【0049】
実施例2及び3は、絶縁層36に空隙が形成されず、チップ60及びチップ70が絶縁層36に埋め込まれる例である。実施例2及び3において、例えば
図3の空隙31のように絶縁層36に空隙が形成され、空隙にチップ60及びチップ70が埋め込まれてもよい。またデュアルフィルタを含むモジュールに実施例2及び3を適用してもよい。この場合、導体層58は入力端子In1及びIn2、並びに出力端子Out1及びOut2を含む(
図1(b)参照)。基板30の上面に実装する部品としては、PA80、チップ部品82、及びスイッチ84以外に例えばIC等があり、これらの中から任意の部品を用いてよい。また積層基板以外に例えば一層構造の基板にフィルタが埋め込まれてもよい。部品及びフィルタの位置に応じて、フィルタと部品とを接続する配線(導体層及びビア配線51)の配置も変更可能である。
【実施例4】
【0050】
実施例4は、面12aと面22aとが異なる平面内に位置する例である。
図7は実施例4に係るモジュール400を例示する断面図である。
【0051】
図7に示すように、チップ10は絶縁層36、38及び40に埋め込まれている。チップ20は絶縁層32に埋め込まれ、空隙33内であってチップ10の上に配置されている。面12aと面12bとは同じ方向を向いている。面12aは絶縁層38を横断する平面内に位置し、絶縁層42と対向している。面22aは絶縁層32を横断する平面内に位置し、絶縁層34と対向している。つまり、チップ10が実装される絶縁層38の上面(第1実装面)と、チップ20が実装される絶縁層42の上面(第2実装面)とは異なる平面内に位置する。このため、フィルタ14とフィルタ24との距離が大きくなり、高いアイソレーションを得ることができる。
【0052】
端子23aは導体層46、絶縁層34中の導体層47、導体層48、52、54及び56、並びにビア配線51を介して導体層58に接続されている。端子23bは、例えば絶縁層34に設けられた不図示の導体層、導体層46、48、52、54及び56、並びにビア配線51を介して導体層58に接続されている。絶縁層32にはチップ部品82及びスイッチ84が埋め込まれているが、例えばチップ部品82及びスイッチ84は設けられなくてもよい。チップ10とチップ20とは基板30の厚さ方向に重なっているが、重ならなくてもよい。またチップ10をチップ20の上に設けてもよい。実施例4において、実施例2及び3と同様に、基板30の絶縁層に空隙31及び33を形成せず、チップ10及びチップ20を埋め込んでもよい。実施例1から4に示したように、面22aが面12aとは異なる平面内に位置することで、高いアイソレーションを得ることができる。
【0053】
送信フィルタは多重モードフィルタを含んでもよく、受信フィルタはラダー型フィルタを含んでもよい。またフィルタは、これら以外のSAWフィルタを含んでもよい。実施例1〜4において、フィルタはSAWフィルタを例としたが、例えば弾性境界波フィルタ、及びラブ波共振子等のようなIDTを含む他の弾性波フィルタを用いてもよい。またIDTを含む弾性波フィルタ以外に、圧電薄膜共振子を含む弾性波フィルタを適用してもよい。圧電薄膜共振子の例としてFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)について説明する。
【0054】
図8はFBAR90を例示する断面図である。基板92に空隙91が形成されている。基板92の面92a上に空隙91と重なるように下部電極94aが形成されている。下部電極94a上に圧電薄膜96が、圧電薄膜96上に上部電極94bが形成されている。下部電極94a、上部電極94b及び圧電薄膜96が重なる共振領域93は空隙91上に形成される。下部電極94a、上部電極94b及び圧電薄膜96の積層体が共振子として機能する。FBAR90を用いた弾性波フィルタを、実施例1〜3に適用してもよい。例えば実施例1においては、チップ20における面92aが、チップ10における面92aと反対方向を向けばよい。実施例4においては、例えばチップ10における面92aが絶縁層42と対向し、チップ20における面92aが絶縁層34と対向すればよい。またフィルタ14及び20の少なくとも一方がIDTを含む弾性波フィルタ、又はFBARを含む弾性波フィルタでもよい。
【0055】
基板92は例えばガラス、シリコン(Si)又はサファイア等の絶縁体により形成されている。圧電薄膜96は、例えば窒化アルミニウム(AlN)等の圧電体を含む。下部電極94a及び上部電極94bは、例えばルテニウム(Ru)等の金属により形成されている。下部電極94aは空隙91に露出しているが、下部電極94aが空隙91に露出しなくてもよい。空隙91は基板92を貫通してもよいし、貫通しなくてもよい。基板92に空隙91を形成せず、下部電極94aの共振領域93を形成する部分を、基板92の面92aから隆起して設けてもよい。この場合、面92aは平坦であり、面92aと下部電極94aとの間には隙間が生じる。またFBAR以外に、例えば面92aに音響反射膜を形成し、音響反射膜の上に下部電極94aを設けたSMR(Solid Mounted Resonator)等、他の圧電薄膜共振子を用いてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。