(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ゼロクロスタイミングの検出精度が低いために、実際のゼロクロスタイミングからずれたタイミングで通信が行われた場合、家電ノイズの影響を受ける可能性がある。
【0008】
また、ゼロクロスタイミングでは、スイッチング電源等から生じた位相ノイズと呼ばれる周期的な位相変更がゼロクロスタイミング付近で発生する可能性があり、このような位相変更が伝送信号の送信期間において発生した場合、受信側では、伝送信号を復調できなくなる可能性がある。
【0009】
また、電力線には、ゼロクロスタイミングと同期した周期的なパルスノイズが存在する可能性があり、ゼロクロス付近で通信を行うと、当該パルスノイズの影響を受ける虞がある。
【0010】
そこで、本発明は、電力線通信をゼロクロス付近において行う場合において、信頼性の高い通信を実現することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る通信システムの第1の態様は、第1通信装置と、前記第1通信装置との間で、電力線を伝送路とした電力線通信を行う第2通信装置とを備え、前記第1通信装置は、商用電源における一定間隔おきのゼロクロスタイミングを検出する検出手段と、誤り検出符号を付加した初期信号を
、ゼロクロスタイミング付近の前記一定間隔おきの各基準タイミングで複数回送信する送信手段とを有し、前記第2通信装置は、受信した各初期信号についての誤り検出を、各初期信号に付加された誤り検出符号に基づいてそれぞれ行う誤り検出手段と、前記各初期信号それぞれについての誤り検出の結果に基づいて、受信状態の良否を判定する判定手段と、前記判定手段により前記受信状態が良好と判定された場合、前記初期信号に対する確認応答信号を初期信号受信
から前記一定間隔後の基準タイミングで送信し、前記受信状態が不良と判定された場合、前記確認応答信号を、初期信号受信
から前記一定間隔後の基準タイミングから微小時間ずらしたタイミングで送信する送信手段とを有し、前記第1通信装置は、前記確認応答信号を受信する受信手段をさらに有し、前記第1通信装置の送信手段は、前記確認応答信号を受信した後は、当該確認応答信号の受信タイミングから前記一定間隔後のタイミングで実データを含む伝送信号を送信する。
【0012】
また、本発明に係る通信システムの第2の態様は、上記第1の態様であって、前記微小時間は、商用電源の周波数に基づいて設定される。
【0013】
また、本発明に係る通信システムの第3の態様は、上記第1の態様または上記第2の態様であって、前記第2通信装置の送信手段は、前記初期信号に対する確認応答信号を、初期信号受信
から前記一定間隔後の基準タイミングから微小時間ずらしたタイミングで送信し、前記第2通信装置の送信手段は、前記伝送信号から前記実データを取得できなかった場合、前記実データを取得できなかったことを示す否定応答信号を、前記確認応答信号に関するずらし方向とは反対の方向にずらしたタイミングで送信し、前記第1通信装置の送信手段は、前記否定応答信号を受信した後は、当該否定応答信号の受信タイミングから前記一定間隔後のタイミングで実データを含む伝送信号を再送する。
【0014】
また、本発明に係る通信装置の第1の態様は、受信側の通信装置との間で、電力線を伝送路とした電力線通信を行う送信側の通信装置であって、商用電源における一定間隔おきのゼロクロスタイミングを検出する検出手段と、誤り検出符号を付加した初期信号を
、ゼロクロスタイミング付近の前記一定間隔おきの各基準タイミングで複数回送信する送信手段とを備え、前記受信側の通信装置は、受信した各初期信号についての誤り検出を、各初期信号に付加された誤り検出符号に基づいてそれぞれ行う誤り検出手段と、前記各初期信号それぞれについての誤り検出の結果に基づいて、受信状態の良否を判定する判定手段と、前記判定手段により前記受信状態が良好と判定された場合、前記初期信号に対する確認応答信号を初期信号受信
から前記一定間隔後の基準タイミングで送信し、前記受信状態が不良と判定された場合、前記確認応答信号を、初期信号受信
から前記一定間隔後の基準タイミングから微小時間ずらしたタイミングで送信する送信手段とを有し、前記送信側の通信装置は、前記確認応答信号を受信する受信手段をさらに備え、前記送信側の通信装置の送信手段は、前記確認応答信号を受信した後は、当該確認応答信号の受信タイミングから前記一定間隔後のタイミングで実データを含む伝送信号を送信する。
【0015】
また、本発明に係る通信装置の第2の態様は、送信側の通信装置との間で、電力線を伝送路とした電力線通信を行う受信側の通信装置であって、前記送信側の通信装置は、商用電源における一定間隔おきのゼロクロスタイミングを検出する検出手段と、誤り検出符号を付加した初期信号を
、ゼロクロスタイミング付近の前記一定間隔おきの各基準タイミングで複数回送信する送信手段とを有し、前記受信側の通信装置は、受信した各初期信号についての誤り検出を、各初期信号に付加された誤り検出符号に基づいてそれぞれ行う誤り検出手段と、前記各初期信号それぞれについての誤り検出の結果に基づいて、受信状態の良否を判定する判定手段と、前記判定手段により前記受信状態が良好と判定された場合、前記初期信号に対する確認応答信号を初期信号受信
から前記一定間隔後の基準タイミングで送信し、前記受信状態が不良と判定された場合、前記確認応答信号を、初期信号受信
から前記一定間隔後の基準タイミングから微小時間ずらしたタイミングで送信する送信手段とを備える。
【0016】
また、本発明に係る通信システムの動作方法は、第1通信装置と、前記第1通信装置との間で、電力線を伝送路とした電力線通信を行う第2通信装置とを含む通信システムの動作方法であって、a)前記第1通信装置において、商用電源における一定間隔おきのゼロクロスタイミングを検出する工程と、b)前記第1通信装置において、誤り検出符号を付加した初期信号を
、ゼロクロスタイミング付近の前記一定間隔おきの各基準タイミングで複数回送信する工程と、c)前記第2通信装置において、受信した各初期信号についての誤り検出を、各初期信号に付加された誤り検出符号に基づいてそれぞれ行う工程と、d)前記第2通信装置において、前記各初期信号それぞれについての誤り検出の結果に基づいて、受信状態の良否を判定する工程と、e)前記第2通信装置において、前記判定手段により前記受信状態が良好と判定された場合、前記初期信号に対する確認応答信号を初期信号受信
から前記一定間隔後の基準タイミングで送信し、前記受信状態が不良と判定された場合、前記確認応答信号を、初期信号受信
から前記一定間隔後の基準タイミングから微小時間ずらしたタイミングで送信する工程と、f)前記第1通信装置において、前記確認応答信号を受信した後は、当該確認応答信号の受信タイミングから前記一定間隔後のタイミングで実データを含む伝送信号を送信する工程とを備える。
【0017】
また、本発明に係る通信システムの第4の態様は、第1通信装置と、前記第1通信装置との間で、電力線を伝送路とした電力線通信を行う第2通信装置とを備え、前記第1通信装置は、商用電源における一定間隔おきのゼロクロスタイミングを検出する検出手段と、誤り検出符号を付加した初期信号を
、ゼロクロスタイミング付近の前記一定間隔おきの各基準タイミングのうちの1の基準タイミングで送信する送信手段とを有し、前記第2通信装置は、受信した前記初期信号についての誤り検出を、当該初期信号に付加された誤り検出符号に基づいて行う誤り検出手段と、前記初期信号についての誤り検出の結果に基づいて、受信状態の良否を判定する判定手段と、前記判定手段により前記受信状態が良好と判定された場合、前記初期信号に対する応答信号を初期信号受信
から前記一定間隔後の基準タイミングで送信し、前記受信状態が不良と判定された場合、前記応答信号を、初期信号受信
から前記一定間隔後の基準タイミングから微小時間ずらしたタイミングで送信する送信手段とを有し、前記第1通信装置は、前記応答信号を受信する受信手段をさらに有し、前記第1通信装置の送信手段は、前記応答信号を受信した後は、当該応答信号の受信タイミングから前記一定間隔後のタイミングで実データを含む伝送信号を送信する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電力線通信をゼロクロス付近において行う場合において、信頼性の高い通信を実現することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一または相応する要素を示すものとする。
【0021】
<1.実施形態>
[1−1.通信システムの構成]
図1は、本実施形態に係る通信システム1の構成図である。
【0022】
図1に示されるように、通信システム1は、第1通信装置10と第2通信装置20とを有している。通信システム1における第1通信装置10および第2通信装置20はそれぞれ、電力線30に接続されている。そして、第1通信装置10および第2通信装置20は、電力線30を伝送路とした電力線通信(PLC:Power Line Communication)によって、互いに通信可能に構成されている。
【0023】
また、通信装置10,20間の電力線通信は、周波数軸上で互いに直交する複数のサブキャリアを合成して得られるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を用いて行われる。そして、当該OFDM信号は、一定の時間単位で区切ってパケット単位で伝送される。
【0024】
なお、以下では、第1通信装置10は主として送信装置として機能し、第2通信装置20は主として受信装置として機能する場合を例示するが、第1通信装置10および第2通信装置20とも同様の通信機能を有していてもよい。
【0025】
以下では、通信システム1を構成する第1通信装置10および第2通信装置20それぞれの構成について、この順序で説明する。
図2は、第1通信装置10および第2通信装置20の機能構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に示されるように、第1通信装置(送信装置)10は、結合部101、ゼロクロス検出部102、送信処理部103、受信処理部104、同期処理部105、および通信制御部106を備えている。
【0027】
結合部101は、電力線30に接続され、送信処理部103から入力されるOFDM信号を、電力線通信を行うための通信信号(PLC信号)に変換し、当該PLC信号を伝送信号(送信信号)として電力線30に出力する機能を有している。また、結合部101は、電力線30からPLC信号を取り出し、当該PLC信号を受信信号として受信処理部104に出力する機能を有している。
【0028】
ゼロクロス検出部(検出手段)102は、商用の交流電圧波形の振幅がゼロになるタイミング(「ゼロクロスタイミング」とも称する)を検出し、検出したゼロクロスタイミングに同期して検出信号を出力する。なお、隣接するゼロクロスタイミング間の間隔は一定間隔となり、「ゼロクロス間隔」とも称される。
【0029】
送信処理部103は、誤り検出符号付加部131と変調部132とパケット構成部133とを有し、通信制御部106から伝送対象のデータ(「伝送データ」とも称する)を取得し、当該伝送データを変調して、伝送データを含むOFDM信号を生成する。
【0030】
具体的には、誤り検出符号付加部131は、通信制御部106から入力される伝送データに、チェックサム (Check Sum)またはCRC(Cyclic Redundancy Check)符号(巡回冗長検査符号)等の誤り検出符号を付加して、付加後のデータを変調部132に出力する。
【0031】
変調部132は、誤り検出符号付加後の伝送データに一次変調および逆高速フーリエ変換を施して、OFDM信号を生成する。生成されたOFDM信号は、パケット構成部133に出力される。
【0032】
パケット構成部133は、変調部132から出力されるOFDM信号にプリアンブル信号を付加して、パケット単位の信号(「パケット信号」とも称する)を生成する。
【0033】
ここで、パケット構成部133で生成される、パケット(パケット信号)の構成について説明する。
図3は、パケットの構成を示す図である。
【0034】
図3に示されるように、パケット50は、プリアンブル(Preamble)51と、プリアンブル51に続くPHY(物理層)ヘッダー52と、PHYヘッダー52に続くPHYペイロード53とで構成されている。
【0035】
プリアンブル51は、受信側において送信側から送られてくるパケット信号の検出処理、シンボルタイミング同期等の各種同期処理に用いられる。
【0036】
PHYヘッダー52は、後続して送信される伝送データの伝送速度、データ長等の通信制御用のヘッダー情報を含んでいる。
【0037】
PHYペイロード53は、伝送対象の伝送データを含んでいる。
【0038】
このように、パケット構成部133は、プリアンブル51と、PHYヘッダー52と、PHYペイロード53とで構成されたパケット信号を生成し、当該パケット信号を結合部101に出力する。
【0039】
図2の第1通信装置10の説明に戻って、受信処理部104は、結合部101から入力される受信信号を復調して、受信データを生成する機能を有している。受信処理部104で生成された受信データは、通信制御部106に出力される。
【0040】
同期処理部105は、通信制御部106と協働して、周波数同期、およびシンボルタイミング同期(シンボル同期)等の各種同期処理を行う。
【0041】
通信制御部106は、第1通信装置10における通信動作を制御する。
【0042】
具体的には、通信制御部106は、伝送データを生成して、当該伝送データを送信処理部103の誤り検出符号付加部131へ出力する。また、通信制御部106は、伝送信号を第1通信装置10の外部に出力するタイミング(「送信タイミング」または「通信タイミング」とも称する)を制御する。
【0043】
より詳細には、通信制御部106は、ゼロクロス検出部102からの検出信号に基づいてゼロクロスタイミングを特定し、当該ゼロクロスタイミング付近のタイミング(基準タイミング)で、伝送信号を出力するように結合部101を制御する。このように、通信制御部106は、結合部101と協働して送信手段として機能する。またさらに、通信制御部106は、第2通信装置20から伝送信号を受信したことを示す確認応答信号(ACK(Acknowledgement)信号)を受信した場合は、当該ACK信号の受信タイミングに基づいて、次に送信する伝送信号の送信タイミングを調整する。
【0044】
次に、第2通信装置20(受信装置)の構成について詳述する。第2通信装置20は、第1通信装置10と同様の構成を有しているため、ここでは、受信装置としての特徴部分(受信処理部204の構成)をより詳細に説明する。
【0045】
図2に示されるように、第2通信装置20は、結合部201、ゼロクロス検出部202、送信処理部203、受信処理部204、同期処理部205、および通信制御部206を備えている。
【0046】
結合部201は、上述の結合部101と同様の機能を有している。すなわち、結合部201は、電力線30に接続され、送信処理部203から入力されるOFDM信号をPLC信号に変換し、当該PLC信号を電力線30に出力する機能を有している。また、結合部201は、電力線30からPLC信号を取り出し、当該PLC信号を受信信号として受信処理部204に出力する機能を有している。
【0047】
ゼロクロス検出部202は、商用の交流電圧波形の振幅がゼロになるゼロクロスタイミングを検出し、検出したゼロクロスタイミングに同期して検出信号を出力する。
【0048】
送信処理部203は、上述の送信処理部103と同様、通信制御部206から伝送データを取得し、当該伝送データを変調して、伝送データを含むOFDM信号を生成する。
【0049】
受信処理部(受信処理手段)204は、FFT部240と伝送路推定部241と等化処理部242と復調部243と誤り検出部244とを有し、結合部201から入力される受信信号を復調して、受信データを生成する機能を有している。
【0050】
具体的には、FFT部240は、受信信号に高速フーリエ変換を施して、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する、いわゆるマルチキャリア復調処理を実行する。FFT部240から出力されるマルチキャリア復調処理後の受信信号は、伝送路推定部241および等化処理部242に入力される。
【0051】
伝送路推定部241は、プリアンブル51を用いて、1パケット期間の伝送路特性を推定する。推定された伝送路特性(「推定伝送路特性」とも称する)は、等化処理部242に出力される。
【0052】
等化処理部242は、受信信号を推定伝送路特性で除算する等化処理を行う。等化処理部242から出力される等化処理後の受信信号は、復調部243に出力される。
【0053】
復調部243は、等化処理後の受信信号にデマッピング処理等のサブキャリア復調処理を施し、復調された受信データを出力する。復調部243から出力された復調後の受信データには、ビタビ復号による誤り訂正が施され、誤り訂正後の受信データが誤り検出部244および通信制御部206に入力される。
【0054】
誤り検出部244は、受信データに付加されている誤り検出符号に基づいて、受信データの誤り検出を行う。誤り検出の結果は、通信制御部206に出力される。
【0055】
同期処理部(同期処理手段)205は、通信制御部206と協働して、キャリア周波数の誤差を調整する周波数同期、および第2通信装置20に到来したOFDM信号を検出して、OFDMシンボルとマルチキャリア復調処理とのタイミングの同期をとるシンボルタイミング同期等の各種同期処理を行い、同期情報を取得する。
【0056】
通信制御部206は、第2通信装置20における通信動作を制御する。具体的には、通信制御部206は、受信処理部204で復調された受信データを取得する。そして、通信制御部206は、ACK信号を生成して送信処理部203へ出力する。
【0057】
また、通信制御部206は、誤り検出の結果に基づいて、受信状態の判定を行う受信状態判定部としての機能も有している。そして、通信制御部206は、受信状態の判定結果に応じて、ACK信号を第2通信装置20の外部に出力するタイミングを制御する。
【0058】
[1−2.電力線通信の通信態様]
次に、上述のような構成を有する通信装置10,20間で行われる電力線通信の通信態様について説明する。
図4は、通信システム1における通信態様の概要を示す図である。
図5は、通信システム1における通信態様を示す図である。
【0059】
通信装置10,20間で行われる電力線通信は、電力線30に接続された電気機器によって生じる家電ノイズの影響を避けるため、特定の期間において行われる。
【0060】
具体的には、
図4に示されるように、家電ノイズKNの影響は、商用の交流電圧波形の振幅がピークとなるピーク付近で大きくなるため、通信装置10,20間で行われる電力線通信は、交流電圧波形の振幅がゼロになる、いわゆるゼロクロス付近ZRの特定期間(「ゼロクロス期間」とも称する)で行われる。
【0061】
このように、通信システム1では、家電ノイズの影響を避けるために、商用の交流電圧波形の振幅がゼロになるゼロクロス点を含むゼロクロス期間において電力線通信を行うように構成されている。なお、ここでは、商用の交流電圧波形の振幅がゼロになるタイミングを「ゼロクロスタイミング」とも称する。
【0062】
そして、
図5に示されるように、第1通信装置10は、通信を確立する前の初期段階では、通信を確立するための初期パケット信号(初期信号)KSを伝送信号としてゼロクロスタイミング付近の基準タイミングで複数回送信する。なお、初期パケット信号KSは、プリアンブル51とPHYヘッダー52とで構成されるパケットである。
【0063】
一方、第2通信装置20は、複数の初期パケット信号KSを受信した後、ACK信号RSを第1通信装置10に対して送信する。
【0064】
第1通信装置10は、第2通信装置20から送信されたACK信号RSを受信した後、伝送データとしての実データ(伝送実データ)を含んだデータパケット信号DSを送信する。
【0065】
[1−3.通信システムの動作]
次に、通信システム1の動作について詳述する。
図6は、通信システム1の動作を示すフローチャートである。なお、
図6では、左側に送信装置としての第1通信装置10の動作、右側に受信装置としての第2通信装置20の動作がそれぞれ記載されているが、以下では、時系列に沿って通信システム1の動作を説明する。
図7は、通信システム1における他の通信態様を示す図である。
【0066】
図6に示されるように、まず、ステップSP11では、送信装置としての第1通信装置10において、ゼロクロス検出部102によって、ゼロクロスタイミングの検出が行われる。
【0067】
次のステップSP12では、第1通信装置10の通信制御部106によって、ゼロクロスタイミング付近の基準タイミングで初期パケット信号KSが複数回送信される。
図5では、初期パケット信号KS1〜KS4が一定間隔おきの基準タイミングBT1〜BT4で4回送信される態様が示されている。なお、各基準タイミング間の一定間隔は、隣接するゼロクロスタイミング間のゼロクロス間隔に等しい。
【0068】
そして、ステップSP13では、受信装置としての第2通信装置20において、初期パケット信号KSが受信される。初期パケット信号KSが受信されると、動作工程は、ステップSP14へと移行される。
【0069】
ステップSP14では、第2通信装置20の受信処理部204によって、初期パケット信号KSに対して復調処理が施され、復調処理後のデータに対して、誤り検出符号に基づいた誤り検出がさらに行われる。なお、ここでの復調処理は、マルチキャリア復調処理およびサブキャリア復調処理を含んでいる。
【0070】
このような誤り検出は、一定間隔おきの基準タイミングBT1〜BT4で送信されてくる、初期パケット信号KS1〜KS4それぞれに対して実行される。そして、誤り検出の結果は、通信制御部206に出力される。
【0071】
次のステップSP15では、通信制御部206によって、誤り検出の結果に基づいて、誤り回数がカウントされる。
【0072】
ステップSP16では、通信制御部206によって、誤り回数に基づいて、パケット信号の受信状態の良否が判定される。受信状態の良否判定は、例えば、誤り回数が所定の基準回数以上であるか否かに基づいて行われる。良否判定の指標に用いる誤りの基準回数は、例えば、初期パケット信号KSを4回受信する場合は、2回に設定すればよい。
【0073】
そして、誤り回数が基準回数より少なかった場合、受信状態は良好と判定され、動作工程はステップSP17に移行される。
【0074】
ステップSP17では、初期パケット信号KSを受信したタイミング、すなわち一定間隔おきの基準タイミングでACK信号RSが通信制御部206の制御に基づいて送信される。具体的には、
図5に示されるように、初期パケット信号KSを最後に受信した基準タイミングBT4から一定間隔後の基準タイミングBT5においてACK信号RSが送信される。
【0075】
このように、受信状態が良好であったときは、通信タイミングを変更することなく、初期パケット信号KSを受信した一定間隔おきの基準タイミングでACK信号RSが送信されることになる。
【0076】
一方、誤り回数が基準回数以上であった場合は、ステップSP16において受信状態は不良と判定されて、動作工程はステップSP18に移行される。
【0077】
ステップSP18では、ACK信号RSが、初期パケット信号KSを受信した基準タイミングから所定時間(微小時間)ずらしたタイミングで、通信制御部206の制御に基づいて送信される。具体的には、
図7に示されるように、初期パケット信号KSを最後に受信した基準タイミングBT4から一定間隔後の基準タイミングBT5を微小時間ずらしたタイミングDT1でACK信号RSが送信される。基準タイミングBT5からのずらし幅は、商用電源の周波数に応じて異なる値に設定され、当該ずらし幅は、ゼロクロス間隔の1/11〜1/13に設定されることが好ましい。ずらし幅が大きすぎるとゼロクロス期間を逸脱したタイミングで信号を送信することになって家電ノイズの影響を受け易くなり、ずらし幅が小さすぎると受信状態を改善することができないためである。なお、周波数50Hzの商用電源では、ゼロクロス間隔は10msとなり、周波数60Hzの商用電源では、ゼロクロス間隔は8.3msとなる。
【0078】
また、
図7では、ACK信号RSの送信タイミングを基準タイミングBT5から後方にずらす態様が示されているが、基準タイミングBT5から前方にずらしてもよい。
【0079】
このように、受信状態が不良であったときは、通信タイミングを変更してACK信号RSが送信されることになる。なお、ステップSP17およびステップSP18において、ACK信号RSの通信タイミングを決定する際に、ゼロクロスタイミングを利用する場合は、通信制御部206は、ゼロクロス検出部202からの検出信号に基づいてゼロクロスタイミングを特定する。
【0080】
ステップSP19では、第1通信装置10において、初期パケット信号KSを受信したことを示すACK信号RSを受信したか否かが判定される。ACK信号RSが受信された場合、動作工程は、ステップSP20に移行される。一方、ACK信号RSが受信されない場合、初期パケット信号KSを送信した後、所定時間経過後に動作工程がステップSP12に移行され、初期パケット信号KSが再送されることになる。
【0081】
ステップSP20では、ACK信号RSの受信タイミングに応じて、データパケット信号DSの送信タイミングが調整され、当該受信タイミングに応じた送信タイミングでデータパケット信号DSが送信される。
【0082】
具体的には、
図5に示されるように、初期パケット信号KSを送信したときの一定間隔おきの基準タイミングBT5でACK信号RSを受信した場合、受信タイミング(ここでは、基準タイミングBT5)から一定間隔後の基準タイミングBT6でデータパケット信号DSが送信される。また、
図7に示されるように、基準タイミングBT4から一定間隔後の基準タイミングBT5を微小時間ずらしたタイミングDT1でACK信号RSを受信した場合、受信タイミングDT1から一定間隔後のタイミングDT2でデータパケット信号DSが送信される。
【0083】
このように、通信システム1では、基準タイミングの通信状態が良好だった場合は、一定間隔おきの基準タイミングでデータパケット信号DSが送信され、基準タイミングの通信状態が不良だった場合は、基準タイミングから微小時間ずらしたタイミングでデータパケット信号DSが送信される。
【0084】
以上のように、通信システム1は、第1通信装置10と、当該第1通信装置10との間で、電力線30を伝送路とした電力線通信を行う第2通信装置20とを備え、第1通信装置10は、商用電源における一定間隔おきのゼロクロスタイミングを検出するゼロクロス検出部102と、誤り検出符号を付加した初期パケット信号KSを、それぞれがゼロクロスタイミング付近の一定間隔おきの各基準タイミングBT1〜BT4で複数回送信する送信手段とを有している。
【0085】
そして、第2通信装置20は、受信した各初期パケット信号KSについての誤り検出を、各初期パケット信号KSに付加された誤り検出符号に基づいてそれぞれ行う誤り検出部244と、各初期パケット信号KSそれぞれについての誤り検出の結果に基づいて、受信状態の良否を判定する判定手段と、当該判定手段により受信状態が良好と判定された場合、初期パケット信号KSに対するACK信号RSを、初期パケット信号KSを最後に受信した後の基準タイミングBT5で送信し、受信状態が不良と判定された場合、ACK信号RSを、初期パケット信号KSを最後に受信した後の基準タイミングBT5から微小時間ずらしたタイミングDT1で送信する送信手段とを有している。またさらに、第1通信装置10は、ACK信号RSを受信する受信手段をさらに有し、第1通信装置10の送信手段は、ACK信号RSを受信した後は、当該ACK信号RSの受信タイミングDT1から一定間隔後のタイミングDT2で実データを含むデータパケット信号DSを送信する。
【0086】
このように、通信システム1の第2通信装置20は、初期パケット信号KSの受信状態が不良であった場合、ACK信号RSを基準タイミングからずらしたタイミングで送信し、第1通信装置10は、当該ACK信号RSの受信タイミングからゼロクロス間隔後のタイミングでデータパケット信号DSを送信する。
【0087】
これによれば、受信状態が不良であった一定間隔おきの基準タイミングからずらしたタイミングでデータパケット信号DSを送信することになるので、位相ノイズまたはパルスノイズの影響を回避して、データパケット信号DSを送信できる可能性が高くなる。よって、通信システム1では、信頼性の高い電力線通信を実現することが可能になる。
【0088】
<2.変形例>
以上、通信システム1の実施形態について説明したが、この発明は、上記に説明した内容に限定されるものではない。
【0089】
例えば、上記実施形態では、初期パケット信号KSを複数回送信していたが、初期パケット信号KSの送信回数は1回であってもよい。この場合、通信制御部206によって、1回の誤り検出結果に基づいて受信状態が判定されることになる。
【0090】
ただし、誤り検出符号を用いた誤り検出の精度が低いため、初期パケット信号KSを複数回送信して、誤り検出を複数回行い、複数の誤り検出結果に基づいて受信状態を判定する方が好ましい。
【0091】
また、データパケット信号DSを送信した後の通信システム1の動作態様としては、次のような態様が考えられる。
図8および
図9は、変形例に係る通信システム1の通信態様を示す図である。
【0092】
具体的には、データパケット信号DSを受信できなかった場合、或いは復調処理によってデータパケット信号DSから実データを得られなかった場合等、実データを取得できなかった場合、
図8に示されるように、第2通信装置20は、実データを取得できなかったことを示す否定応答信号(NACK(Negative-Acknowledgement)信号)RSnを送信する態様としてもよい。この場合、当該NACK信号RSnを受信した第1通信装置10は、データパケット信号DSrを再送する。
【0093】
また、第2通信装置20は、NACK信号RSnを送信する際のタイミングをさらに変更してもよい。この場合、第1通信装置10は、当該NACK信号RSnを受信したタイミングから一定間隔後のタイミングでデータパケット信号DSrを再送する。
【0094】
例えば、
図9には、初期パケット信号KSに対するACK信号RSの送信タイミングを基準タイミングBT5からタイミングDT1に変更した後に、データパケット信号DSに対するNACK信号RSnの送信タイミングをタイミングDT3からタイミングFT1にさらに変更する態様が示されている。
【0095】
図9の当該態様では、一定間隔おきの基準タイミングBT5から微小時間後方にずらしたタイミングDT1でACK信号RSが送信されるとともに、基準タイミングBT7から微小時間前方にずらしたタイミングFT1でNACK信号RSnが送信されることになる。
【0096】
このように、応答信号を2回送信する場合において、2回とも送信タイミングを変更するとき、2回目に応答信号を送信する際には、最初の応答信号を送信する際にずらした方向とは反対の方向にタイミングをずらすことが好ましい。タイミングのずらし方向を反対にすることによれば、再送されたデータパケット信号DSrを受信できる可能性を高めることができる。なお、
図9の態様では、第1通信装置10は、NACK信号RSnを受信したタイミングFT1から一定間隔後のタイミングFT2でデータパケット信号DSrを再送することになる。