【実施例1】
【0022】
図面において、複合容器蓋1は、天板2とこの天板2の外周縁から垂下したスカート壁3からなり、このスカート壁3の内周面に雌ネジ3aを螺刻すると共に、天板2にシール筒4及び内筒5を順次スカート壁3と同心円状に設けた上蓋6と、この上蓋6の雌ネジ3aに螺合する雄ネジ7aを螺刻した注出筒7を有し、この注出筒7内に設けた閉鎖中板8に環状の脆弱ラインである周方向スコア9にて囲った開口予定部10を形成し、且つ閉鎖中板9の開口予定部10より内側の上面に切除筒11を立設した、容器12の開口部12aに固着する注出口栓13と、で構成され、上蓋6の内筒5の内周面及び注出口栓13の切除筒11の上部外周面に上下方向に係止可能な係止手段14を設けると共に、上蓋6を開栓方向に回した際のみ係合して、周方向スコア9を破断する係合手段15を内筒5の内周面と切除筒11の外周面とに設け、この係合手段15の切除筒11側の係合部位に隣接した閉鎖中板8に、周方向スコア9から切除筒11に向かって延びる放射状スコア16を、設けたものである。
【0023】
この複合容器蓋1は、主に紙製などの容器12用として、利用されるものであり、注出口栓13に鍔状取付部20が設けられ、この鍔状取付部20が紙製などの容器12の開口部12aの周縁部に固着される。
【0024】
前記上蓋6は、既述のとおり、天板2とスカート壁3とからなり、このスカート壁3内周面の雌ネジ3aと、後に詳述する注出口栓13の注出筒7外周面の雄ネジ7aとが相俟って、上蓋6が注出口栓13に対して螺着脱可能となるのである。上蓋6が注出口栓13に螺着した状態では、シール筒4の外周面が注出口栓13の注出筒7の内周面に液密に周接し、開栓後の容器12の内容液が外部に漏れないようになっている。そして、上蓋6のスカート壁3外周面にはすべり止め21が設けられ、上蓋6が注出口栓13に対し螺着脱する際容易となるようにしている。
【0025】
前記注出口栓13は、既述のとおり、注出筒7内の閉鎖中板8に、周方向スコア9にて囲った開口予定部10を有し、この開口予定部10内に切除筒11を立設してあって、この切除筒11は、周方向スコア9が破断されて開口予定部10が注出口栓13から除去された後、この除去後の開口予定部10が上蓋6と一体となるために必要となるものである。一体となるために、上蓋6の内筒5と注出口栓13の切除筒11との間に、上下方向に係止可能な係止手段14が介在して設けられている。すなわち、この係止手段14は、上蓋6の内筒5の内周面に設けた係止突起5aと、これに係止する、注出口栓13の切除筒11の上部外周面に設けた係止突起11aとでなる。
【0026】
したがって、上蓋6が開栓方向の旋回により上昇するに伴い、上蓋6の内筒5の係止突起5aに係止状態にある係止突起11aによって切除筒11も上昇し、これに連れて切除筒11が立設している開口予定部10も上蓋6と共に上昇する。
【0027】
そして、前記上蓋6を開栓方向に回した際のみ係合して周方向スコア9を破断し、上蓋6を閉栓方向に回した際係合しないで注出口栓に上蓋を螺着出来るようにするため、上蓋6の内筒5と注出口栓13の切除筒11との間に、周方向スコア9を破断する係合手段15が介在して設けられている。すなわち、この係合手段15は、上蓋6の下部内周面に段差部を介して薄肉部が形成され、この段差部と薄肉部内周面に連結された複数個のラチェット片5bと、閉鎖中板8の開口予定部10上面に連結されたラチェット爪11bと、からなり、ラチェット片5bとラチェット爪11bとは、周方向に間隔をおいて配設されている。
【0028】
したがって、上蓋6を閉栓方向に旋回せしめると、上蓋6における内筒5の内周面に周方向に間隔をおいて配設された複数個のラチェット片5bは、注出口栓13における切除筒11の外周面に周方向に間隔をおいて配設された複数個のラチェット爪11bに係合することなく乗り越え、注出口栓13に上蓋6を螺着出来る。一方、上蓋6を開栓方向に旋回させると、上蓋6の複数個のラチェット片5bと、注出口栓13の複数個のラチェット爪11bとが係合し、周方向スコア9を破断して、さらに、前記係止手段14により、注出口栓13から切除筒11を、上蓋6の内筒5に係止したまま除去し、注出口栓13を開栓する。
【0029】
しかしながら、注出口栓13における開口予定部10を除去するための周方向スコア9の径が大きいと、周方向スコア9を破断するトルクも大きくなるため、上蓋6を開栓方向に旋回させるのに大きな力を必要とする。
本発明においては、これを緩和するため、前記係合手段15の切除筒11側の係合部位に隣接した閉鎖中板8に、周方向スコア9から切除筒11に向かって延びる放射状スコア16を、所定の間隔をおいて複数個設け
ている。
なお、この実施例では放射状スコア16を角度60度ごとに6個設けている。
【0030】
上記放射状スコア16がある
ことにより、上蓋6を開栓方向に旋回させて、上蓋6のラチェット片5bと、注出口栓13のラチェット爪11bとでなる係合手段15を係合させ、周方向のせん断力が、係合手段15の切除筒11側の係合部位に隣接した放射状スコア16に集中してこれを破断し、さらに、この放射状スコア16の破断により周方向スコア9の破断トルクを下げて周方向スコア9を破断し、注出口栓13から切除筒11を上蓋6の内筒5に係止したままの状態で除去して、開栓することになる。そして、この放射状スコア16は、周方向に0.1ないし0.5mm幅をもっているのが良く、これにより周方向のせん断力が放射状スコア16と放射状スコア16に隣接した周方向スコア9に伝達されて、この部分から周方向スコア9の破断を促進させることが出来る。
【0031】
なお、上記放射状スコア16の効果を検証したので、その状況を説明する。
試験例1は、
図2に示す放射状スコアがある状態で、上蓋を開栓方向に旋回し、その旋回角度ごとのトルクを測定する。
試験例2は、
図2に示す放射状スコアが無い状態で、上蓋を開栓方向に旋回し、その旋回角度ごとのトルクを測定する。それらの結果を
図6に示す。
【0032】
図6によれば、放射状スコアがある状態の試験例1(A)は、上蓋を開栓方向に24度旋回した時点で、最高のトルク、すなわち、破断トルクを示し、そのトルクは86Ncmであった。これに対して、放射状スコアが無い状態の試験例2(B)は、上蓋を開栓方向に30度旋回した時点で、破断トルクを示し、そのトルクは104Ncmであった。したがって、放射状スコアがある状態の試験例1は、スコアのない試験例2よりも約2割の改善が見られた。
【0033】
次に、上記構成になる複合容器蓋1の利用状況について説明する。
別々に製造された上蓋6及び注出口栓13は、まず、注出口栓13に上蓋6をあてがい上蓋6を閉栓方向に旋回させると、上蓋6の複数個のラチェット片5bは、注出口栓13に配設された複数個のラチェット爪11bに係合することなく乗り越え、注出口栓13に上蓋6を螺着する。次いで、容器12の開口部12aの周縁部に、注出口栓13の鍔状取付部20を固着することで、容器12に複合容器蓋を取り付ける。
【0034】
容器12の内容液を利用したい場合は、上蓋6を開栓方向に旋回させ、上蓋6の複数個のラチェット片5bと、注出口栓13の複数個のラチェット爪11bとを係合させ、上蓋6による開栓方向の旋回力に起因して、周方向のせん断力が、切除筒11側の係合部位に隣接した放射状スコア16に集中して破断し、さらに、これらの放射状スコア16の破断により周方向スコア9の破断トルクを下げることになって、その結果、周方向スコア9を容易に破断し、注出口栓13から切除筒11、すなわち、開口予定部10を上蓋6の内筒5に係止したまま除去して、注出口栓13を開栓する。そして、容器12の内容液を利用し、内容液が残れば、注出口栓13に上蓋6を螺着して容器12を密封し、再利用に備えることができる。
【実施例2】
【0035】
図7、8は、本発明の他の実施形態を示す複合容器蓋1Aであり、この複合容器蓋1Aと
図1ないし6の複合容器蓋1との相違点は、主にプラスチックやガラス製のボトルタイプの容器12Aに利用され、上蓋6Aには内周面に雌ネジ31aが螺刻された中間筒31があり、注出口栓13Aには、頂板部32の外周縁から垂下した外筒33があり、頂板部32の下面には、外筒33と相俟って容器12Aの口部12bを装着出来る装着筒34があって、さらに、頂板部32の上面には、上蓋6の雌ネジ31aに螺合する雄ネジ35aを外周面に螺刻した螺合筒35があり、そして、係合手段15の切除筒11側の係合部位に隣接した頂板部32に周方向スコア9から切除筒11に向かって延びる放射状スコア16を設けた点にある。その他の構成、作用は、
図1乃至6の複合容器蓋1と同様なので、図面に符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0036】
以上、本発明の実施例1、2を説明したが、具体的な構成はこれらに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更は、適宜可能であることが理解されるべきである。