【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガスバリア性重合体と、熱分解性固体重合体と含有し、100℃で15分間加熱した後の重量減少率が1%以下であり、かつ、200℃で15分間加熱した後の重量減少率が5%以上であり、前記ガスバリア性重合体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及び塩化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種のガスバリア性モノマーを重合させて得られる重合体であり、かつ、前記ガスバリア性重合体を30重量%以上含有
し、前記ガスバリア性モノマーがメタクリロニトリルであり、前記熱分解性固体重合体は、メタクリル酸ターシャリーブチルを重合させて得られる重合体であり、ガスバリア性重合体と熱分解性固体重合体とが共重合しており、前記熱膨張性マイクロカプセル中のメタクリロニトリルとメタクリル酸ターシャリーブチルとからなる共重合体の含有量が70重量%以上である熱膨張性マイクロカプセルである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、ガスバリア性重合体と、熱分解性固体重合体と含有する。
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、液体成分を内包しないことから、貯蔵時に液体成分が抜けるという問題が生じず、貯蔵安定性を大幅に改善することができる。
また、液体成分が存在しないことで、機械的強度が向上し、例えば、射出成形等の高剪断が負荷される用途で特に好適に使用することができる。
更に、液体成分を内包する熱膨張性マイクロカプセルと比較して、製造工程を簡略化することができ、幅広い粒径範囲の熱膨張性マイクロカプセルを作製することが可能となる。
【0009】
上記ガスバリア性重合体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及び塩化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種のガスバリア性モノマーを重合させて得られる重合体である。
【0010】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、上記ガスバリア性重合体を30重量%以上含有する。
上記ガスバリア性重合体の含有量が30重量%未満であると、ガスバリア性やシェル弾性率が下がり、発泡倍率が低下することがある。より好ましい下限は60重量%、さらに好ましい下限は80重量%である。また、好ましい上限は90重量%である。
【0011】
上記ガスバリア性重合体の重量平均分子量の好ましい下限は1万、好ましい上限は200万である。重量平均分子量が1万未満であると、強度が低下することがあり、重量平均分子量が200万を超えると、強度が高くなりすぎ、発泡倍率が低下することがある。
【0012】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、熱分解性固体重合体を含有する。
上記熱分解性固体重合体は、加熱によって分解し、熱膨張性マイクロカプセルを膨張させる役割を果たす。
なお、「熱分解性固体重合体」とは、常温において固体であり、かつ、常温を超える温度で液体又は気体に分解する重合体のことをいう。また、上記熱分解性固体重合体を形成するモノマーを「熱分解性重合性モノマー」という。
【0013】
上記熱分解性固体重合体は、熱天秤を用いて測定した、200℃で15分間加熱した前後の重量減少率が30重量%以上であることが好ましい。30重量%よりも低いと、加熱発泡させたくても、熱分解しにくくなり、ガスの発生がわずかになるために膨張しにくくなる。より好ましくは、50重量%以上である。
【0014】
上記熱分解性固体重合体としては、ターシャリーブチル基又はイソブチル基を有する重合体を含有することが好ましい。上記ターシャリーブチル基又はイソブチル基を有する重合体を含有することで、加熱によってターシャリーブチル基又はイソブチル基が分解して、ブテンガスが発生して膨張剤となる。これにより、熱発泡性を付与することができる。
【0015】
上記ターシャリーブチル基又はイソブチル基を有する重合体は、例えば、ターシャリーブチル基又はイソブチル基を有する熱分解性重合性モノマーを重合させることで製造できる。
上記ターシャリーブチル基又はイソブチル基を有する熱分解性重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)クリル酸ターシャリーブチル、(メタ)クリル酸イソブチル等が挙げられる。
【0016】
本発明の熱膨張性マイクロカプセル中のターシャリーブチル基又はイソブチル基を有する重合体の含有量は、5〜70重量%であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であると、熱分解によるガスの発生量と、ガスバリア性重合体のガスバリア性のバランスが適切なために、高い熱膨張倍率が得られる。また、上記含有量は10〜40重量%がより好ましい。
【0017】
上記熱分解性固体重合体としては、ポリプロピレングリコール骨格を有する重合体を用いることもできる。これにより、ポリプロピレングリコール骨格が分解し、プロパンガスなどが発生して膨張剤となる。その結果、優れた熱発泡性を付与することができる。
上記ポリプロピレングリコール骨格を有する重合体を形成する熱分解性重合性モノマーとしては、ポリプロピレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。具体的には、ポリプロピレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0018】
本発明の熱膨張性マイクロカプセル中のポリプロピレングリコール骨格を有する重合体の含有量は、5〜70重量%であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であると、熱分解によるガスの発生量と、ガスバリア性重合体のガスバリア性のバランスが適切なために、高い熱膨張倍率が得られる。また、上記含有量は10〜40重量%がより好ましい。
【0019】
上記熱分解性固体重合体の重量平均分子量の好ましい下限は1万、好ましい上限は200万である。重量平均分子量が1万未満であると、強度が低下することがあり、重量平均分子量が200万を超えると、強度が高くなりすぎ、発泡倍率が低下することがある。
【0020】
本発明では、ガスバリア性重合体と熱分解性固体重合体とがそれぞれ単独で存在していてもよく、ガスバリア性重合体と熱分解性固体重合体とが共重合していてもよい。
この場合、上記共重合体としては、メタクリロニトリルとメタクリル酸ターシャリーブチルとからなる共重合体が好ましい。
このような共重合体を用いることで、加熱によって、メタクリルイミド化し、更に耐熱性を向上させることができる。
【0021】
また、上記メタクリロニトリルとメタクリル酸ターシャリーブチルとからなる共重合体は、メタクリロニトリルとメタクリル酸ターシャリーブチルとの重量比が30:70〜70:30であることが好ましい。
上記重量比を上記範囲内とすることで、高いガスバリア性と、高い熱分解性を有するために、高い熱膨張倍率を得ることが可能となる。さらに、メタクリル酸ターシャリーブチルが熱分解する際にイソブテンガスと共に生成されるメタクリル酸が、共重合しているメタクリロニトリルと反応して、耐熱性の高いメタクリルイミドを形成するために、非常に耐熱性の高い熱膨張性バルーンが得られる。その結果、高温でも優れた熱膨張倍率が得られる。
【0022】
本発明の熱膨張性マイクロカプセル中のメタクリロニトリルとメタクリル酸ターシャリーブチルとからなる共重合体の含有量は、70重量%以上であることが好ましい。上記含有量が70重量%未満であると、耐熱性が不足し、高い温度での膨張倍率が低下する可能性がある。
また、上記含有量は99.9重量%以下であることが好ましい。
【0023】
本発明では、上記ガスバリア性重合体、熱分解性固体重合体に加えて、その他の重合体を含有してもよい。上記その他の重合体を構成するモノマー[以下、その他の重合性モノマーともいう]としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレン等のビニルモノマー等が挙げられる。その他の重合性モノマーは、熱膨張性マイクロカプセルに必要な特性に応じて適宜選択されて使用され得るが、これらのなかでメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル等が好適に用いられる。
【0024】
上記その他の重合性モノマーとして、分子内に二重結合を2つ以上有するモノマー(以下、多官能モノマーともいう)を用いてもよい。
上記多官能モノマーは、架橋剤としての役割を有する。上記多官能モノマーを含有することにより、シェルの強度を強化することができ、熱膨張時にセル壁が破泡し難くなる。また、上記多官能モノマーの添加により、歪み回復率の低下を抑制することが可能となる。
【0025】
上記多官能モノマーとしては、ラジカル重合性二重結合を2以上有するモノマーが挙げられ、具体例には例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、重量平均分子量が200〜600であるポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、トリメチロールプロパントリメタアクリレート等の3官能性のものや、ポリエチレングリコールジメタアクリレート等の2官能性のアクリレートのもの等の2官能以上のアクリレートが、アクリロニトリルを主体としたシェルには比較的均一に架橋が施され、熱膨張したマイクロカプセルが収縮しにくく、膨張した状態を維持しやすいため、いわゆる「へたり」と呼ばれる現象を抑制することができ、好適に用いられる。
【0026】
本発明の熱膨張性マイクロカプセル中における、上記多官能モノマーからなる構成単位の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は3重量%である。上記多官能モノマーからなる構成単位の含有量が0.1重量%未満であると、架橋剤としての効果が発揮されないことがあり、上記多官能モノマーからなる構成単位が3重量%を超えると、熱膨張性マイクロカプセルの発泡倍率が低下する。上記多官能モノマーからなる構成単位の含有量のより好ましい下限は0.2重量%、より好ましい上限は2重量%である。
【0027】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルにおける、上記その他の重合体の含有量の好ましい上限は、熱膨張性マイクロカプセル100重量部に対して、5重量部である。上記その他の重合体の含有量が5重量部を超えると、セル壁のガスバリア性が低下し、熱膨張性が悪化しやすくなる。低温時における50%圧縮時の歪み回復率が低下することがある。
上記その他の重合体の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0028】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルにおけるガスバリア性重合体と熱分解性固体重合体の形態としては、ガスバリア性重合体からなるシェルと、熱分解性固体重合体からなるコアとを有する構造であってもよく、ガスバリア性重合体と、熱分解性固体重合体とが相溶していてもよい。また、ガスバリア性重合体と、熱分解性固体重合体とが共重合していてもよい。
【0029】
上記ガスバリア性重合体からなるシェルと、熱分解性固体重合体からなるコアとを有する構造である場合、加熱によって熱分解性固体重合体が分解することで、膨張剤として役割を果たす。また、熱分解性固体重合体がガスバリア性重合体に内包された構造をとることで、熱分解性固体重合体が抜けることなくシェルを膨張させることができる。
【0030】
上記コアシェル構造である場合、シェルの厚みは0.1〜20μmであることが好ましい。上記範囲内とすることで、内部で発生したガスが、外部に抜けることなくシェルを膨張させることが可能となるため、より高い膨張倍率を得ることが可能となる。
【0031】
上記ガスバリア性重合体と熱分解性固体重合体とが相溶している場合、熱が均等に熱分解性材料に加えられ、膨張する速度を速くすることが可能になるという利点がある。
このような形態とする場合、上記熱分解性固体重合体としては、ターシャリーブチル基又はイソブチル基を有する重合体もしくは、ポリプロピレングリコール骨格を有する重合体を用いることが好ましい。
【0032】
上記ガスバリア性重合体と熱分解性固体重合体とが共重合体である場合、ガスバリア性とガス発生量を共に高く保つことが可能となり、高い熱膨張倍率が得られる。特に、ガスバリア性重合体にメタクリロニトリル、熱分解性固体重合体としてメタクリル酸ターシャリーブチルを用いて共重合体を得ると、メタクリル酸ターシャリーブチルが熱分解する際にイソブテンガスと共に生成されるメタクリル酸が、共重合しているメタクリロニトリルと反応して、耐熱性の高いメタクリルイミドを形成するために、耐熱性が非常に高い熱膨張性マイクロカプセルが得られる。その結果、高温でも高い熱膨張倍率が得られる。
【0033】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、100℃で15分間加熱後の重量減少率が1重量%以下であり、かつ、200℃で15分間加熱後の重量減少率が5重量%以上である熱膨張性マイクロカプセルである。上記100℃で15分間加熱後の重量減少率が1重量%を超えると、熱膨張性マイクロカプセルが熱により軟化するよりも速くガスが発生してしまうため、熱膨張性マイクロカプセルが発生ガスの圧力により破裂してしまい、熱膨張倍率が低くなる可能性がある。
上記100℃で15分間加熱後の重量減少率の下限は特に限定されないが、0.01重量%が好ましい。好ましい上限は0.8重量%である。
【0034】
上記200℃で15分間加熱後の重量減少率が5重量%未満であると、加熱した際のガス発生量が少なく、熱膨張倍率が低くなる。上記200℃で15分間加熱後の重量減少率の上限は特に限定されないが99.9重量%が好ましい。好ましい下限は10重量%ある。
【0035】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、熱機械分析で測定した最大変位量(Dmax)の下限が10μmである。10μm未満であると、発泡倍率が低下し、所望の発泡性能が得られない。好ましい下限は20μmである。
なお、上記最大変位量は、所定量の熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、所定量全体の熱膨張性マイクロカプセルの径が最大となるときの値をいう。
【0036】
また、発泡開始温度(Ts)の好ましい上限は180℃である。180℃を超えると特に射出成形の場合、金型に樹脂材料をフル充填した後に金型を発泡させたいところまで開くコアバック発泡成形においては、コアバック発泡過程で樹脂温度が冷えてしまい発泡倍率が上がらないことがある。好ましい下限は130℃、より好ましい上限は160℃である。
なお、本明細書において、最大発泡温度は、熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、熱膨張性マイクロカプセルが最大変位量となったときにおける温度を意味する。
【0037】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度(Tmax)の好ましい下限が170℃である。170℃未満であると、耐熱性が低くなることから、高温領域や成形加工時において、熱膨張性マイクロカプセルが破裂、収縮することがある。また、マスターバッチペレット等として使用する場合、ペレット製造時に剪断により発泡していまい、未発泡のマスターバッチペレットを安定して製造することができない。より好ましい下限は210℃である。
【0038】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルの体積平均粒子径の好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は100μmである。0.01μm未満であると、発泡しないことがあり、100μmを超えると、得られる成形体の気泡が大きくなるため、意匠性や強度等の面で問題となることがある。より好ましい下限は0.1μm、より好ましい上限は50μmである。
【0039】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルには、更に必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シランカップリング剤、色剤等を含有していてもよい。
【0040】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法としては、ガスバリア性モノマーと熱分解性重合性モノマーと重合開始剤と水とを含有する混合体を作製する工程と、ガスバリア性重合性モノマー及び熱分解性重合性モノマーを重合させる工程を有する方法(A)や、ガスバリア性モノマーを重合する工程と、得られたガスバリア性重合体と熱分解性固体重合体を含む混合体を作製する工程を有する方法(B)等がある。例えば、ソープフリー重合法を用いて重合を行う方法、ミニエマルション重合法を用いて重合を行う方法、乳化重合法を用いて重合を行う方法、懸濁重合法を用いて重合を行う方法を用いることができる。
本発明の熱膨張性マイクロカプセルの製造方法では、液体成分を内包する熱膨張性マイクロカプセルを製造する場合のように粒子作製上の条件が少なく、幅広い粒径の熱膨張性マイクロカプセルを作製することができる。
【0041】
上記乳化重合による方法としては、例えば、ガスバリア性モノマーと、熱分解性重合性モノマーを含有するモノマー組成物、乳化剤、重合開始剤等を重合溶媒に添加した後、加熱、攪拌を行ってモノマーを重合させることにより製造する方法等を用いることができる。
上記乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が好適に用いられる。
具体例には、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の過酸化ジアルキル、イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の過酸化ジアシル、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α、α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等のパーオキシエステル、ジ−2−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピル−オキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0043】
懸濁重合による方法としては、例えば、水性媒体を調製する工程、ガスバリア性モノマーと、熱分解性重合性モノマーを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程、及び、上記ガスバリア性重合性モノマー及び熱分解性重合性モノマーを重合させる工程を行うことにより製造することができる。
【0044】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する場合、最初に水性媒体を調製する工程を行う。具体例には例えば、重合反応容器に、水と分散安定剤、必要に応じて補助安定剤を加えることにより、分散安定剤を含有する水性分散媒体を調製する。また、必要に応じて、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、重クロム酸カリウム等を添加してもよい。
【0045】
上記分散安定剤としては、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0046】
上記分散安定剤の添加量は特に限定されず、分散安定剤の種類、マイクロカプセルの粒子径等により適宜決定されるが、モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0047】
上記補助安定剤としては、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等が挙げられる。
【0048】
また、上記分散安定剤と補助安定剤との組み合わせとしては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせ、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物との組み合わせ、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせ等が挙げられる。これらの中では、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせが好ましい。
更に、上記縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸との縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸との縮合生成物が好ましい。
【0049】
上記水溶性窒素含有化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミン等が挙げられる。これらのなかでは、ポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
【0050】
上記コロイダルシリカの添加量は、熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、モノマー100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。更に好ましい下限は2重量部、更に好ましい上限は10重量部である。また、上記縮合生成物又は水溶性窒素含有化合物の量についても熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が2重量部である。
【0051】
上記分散安定剤及び補助安定剤に加えて、更に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加してもよい。無機塩を添加することで、より均一な粒子形状を有する熱膨張性マイクロカプセルが得ることができる。上記無機塩の添加量は、通常、モノマー100重量部に対して0〜100重量部が好ましい。
【0052】
上記分散安定剤を含有する水性分散媒体は、分散安定剤や補助安定剤を脱イオン水に配合して調製され、この際の水相のpHは、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカ等のシリカを使用する場合は、酸性媒体で重合がおこなわれ、水性媒体を酸性にするには、必要に応じて塩酸等の酸を加えて系のpHが3〜4に調製される。一方、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性媒体の中で重合させる。
【0053】
次いで、油性混合液を水性媒体中に分散させる工程を行う。なお、上記モノマーを重合するために、重合開始剤が使用されるが、上記重合開始剤は、予め上記油性混合液に添加してもよく、水性分散媒体と油性混合液とを重合反応容器内で攪拌混合した後に添加してもよい。
【0054】
上記油性混合液を水性分散媒体中に所定の粒子径で乳化分散させる方法としては、ホモミキサー(例えば、特殊機化工業社製)等により攪拌する方法や、ラインミキサーやエレメント式静止型分散器等の静止型分散装置を通過させる方法等が挙げられる。
なお、上記静止型分散装置には水系分散媒体と重合性混合物を別々に供給してもよいし、予め混合、攪拌した分散液を供給してもよい。
【0055】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルに、熱可塑性樹脂等のマトリックス樹脂を加えた樹脂組成物、又は、熱膨張性マイクロカプセルと熱可塑性樹脂等のベースレジンとを混合したマスターバッチペレットに熱可塑性樹脂等のマトリックス樹脂を加えた樹脂組成物を添加し、射出成形等の成形方法を用いて成形した後、成形時の加熱により、上記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより、発泡成形体を製造することができる。
【0056】
上記発泡成形体の成形方法としては、特に限定されず、例えば、混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等が挙げられる。射出成形の場合、工法は特に限定されず、金型に樹脂材料を一部入れて発泡させるショートショート法や金型に樹脂材料をフル充填した後に金型を発泡させたいところまで開くコアバック法等が挙げられる。