【文献】
J. Adhesion Sci. Technol., 2004, Vol.18, No.15-16, pp.1723-1737
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹枝状ポリマーが、3分岐した分岐部分および4分岐した分岐部分から選択される少なくとも1種の分岐部分と、当該分岐部分同士を接続する接続部分とを含む網目状構造を有するものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉液型歯科用接着材。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明が対象とする粉液型歯科用接着は、(A)低級アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有してなる液材、および(B)非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子を主成分として含有してなる粉材が組合されてなり、該(A)液材及び(B)粉材の少なくとも一方にはラジカル重合開始剤が配合されてなる材料である。以下、これら(A)液材及び(B)粉材を構成する各成分について、順次に説明する。
【0013】
(A)液材の主成分である低級アルキル(メタ)アクリレートは、アルキル鎖の炭素数が4以下のものであり、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が例示される。このような低級アルキル(メタ)アクリレートを使用した場合に、硬化体として高靭性なものが得られる。上記の低級アルキル(メタ)アクリレートは適宜複数種類を混合して使用して良いが、特に、高い靭性が得られることから、メチル(メタ)アクリレートを主成分とすることが最適である。このような低級アルキル(メタ)アクリレートの液材への配合量は、高い靭性が得られる観点から液材100質量%に対して50質量%以上が好ましく、特に60質量%以上が好ましい。
【0014】
前述したように、これら低級アルキル(メタ)アクリレートは単官能モノマーであり、その重合活性は低い。従来、こうした重合性の低い低級アルキル(メタ)アクリレートを、液材中に多量(50質量%以上、好ましくは60質量%以上)に含有させた場合、得られる粉液型歯科用接着材の硬化時間は長くなる。しかしながら、本発明においては、後述するように樹脂状ポリマーを含有させることで、上記低級アルキル(メタ)アクリレートの重合性が高まるため、粉液型歯科用接着材の硬化を短時間化することが可能となる。
【0015】
本発明において、(A)液材には、上記低級アルキル(メタ)アクリレート以外に、粉液型歯科用接着材の物性を損ねない範囲であれば、他のラジカル重合性単量体を含んでも良い。その含有量は、一般的には、液材100質量%に対して50質量%以下、好ましくは40質量%以下の範囲である。
【0016】
このような他のラジカル重合性単量体としては、分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和基を有するものであれば従来公知のものを使用でき、このようなエチレン性不飽和基としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、アクリルアミド基、メタアクリルアミド基、スチリル基等を例示できる。他のラジカル重合性単量体を具体的に示すと、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロキシエチルプロピオネート、2−メタクリロキシエチルアセトアセテート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の単官能性のもの、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の多官能性で脂肪族系のもの;2,2−ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシフェニル)]プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン等の多官能性で芳香族系のもの;11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその無水物、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート等の酸性基を含有しているもの;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の塩基性基を含有しているもの;ω−メタクリロイルオキシヘキシル2−チオウラシル−5−カルボキシレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の接着性(メタ)アクリレート;ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド基を含有しているもの;スチレン、α−メチルスチレン誘導体類;等が挙げられる。これらのラジカル重合性単量体は単独または二種類以上を混合して用いることができる。
【0017】
その他、(A)液材には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて様々な任意成分を含有させることができる。このような任意成分としては、pH調整剤等の重合開始剤等の安定化剤、無機粒子または有機粒子等の強度調節剤、粘度調節剤、各種塩類、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロパンジオール、アセトン等の有機溶剤、各種香料、各種抗菌剤、各種薬効成分、顔料、染料等が挙げられる。特に、保存安定性や環境光安定性を向上させるため、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジターシャリーブチルフェノール等の重合禁止剤を少量加えるのが好ましい。
【0018】
次に、粉液型歯科用接着材を構成する(B)粉材について説明する。(B)粉材は、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子を主成分として含有している。該ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子は、アルキル鎖の炭素数が4以下の低級アルキルメタアクリレートを単独重合または共重合して得られる非架橋重合体粒子であり、原料に使用する低級アルキル(メタ)アクリレートは具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0019】
該非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子は、上述した低級アルキル(メタ)アクリレートを原料としてバルク重合または懸濁重合法等により合成された従来公知の非架橋型のポリ低級アルキル(メタ)アクリレート合成樹脂粉末を何ら制限無く使用することができる。このような非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子を例示すれば、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリエチルメタクリレート粒子、ポリブチルメタクリレート粒子、メチルメタクリレートとエチルメタクリレートの共重合体粒子、メチルメタクリレートとブチルメタクリレートの共重合体粒子、エチルメタクリレートとブチルメタクリレートの共重合体粒子等が挙げられる。これらは、2種類以上を混合して使用しても良い。特に、高靭性の硬化体が得られることから、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリエチルメタクリレート粒子、およびメチルメタクリレートとエチルメタクリレートの共重合体粒子を使用することが好ましい。
【0020】
こうした非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の体積平均粒子径は、特に限定されるものではないが、粉材と液材のなじみが良い観点から大きすぎない方が好ましく、また粉材と液材を混合して得られるペースト性状が良好となる観点から小さすぎない方が好ましい。このような観点から、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の体積平均粒子径は0.1〜150μmであるのが好ましく、好適には5〜80μmが好ましい。被膜厚さを薄くする観点から、最も好適な体積平均粒子径は10〜50μmの範囲である。
【0021】
なお、本発明において、粒子の体積平均粒子径はレーザー回折・散乱法により測定したメジアン径である。具体的には、エタノールや水とエタノールの混合溶媒等の、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子が良好に分散し、且つ該粒子が溶解または膨潤しない分散媒を使用し、フランホーファー回折法により求めた値である。
【0022】
また、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の形状は特に限定されず、懸濁重合法等で作製した球状から略球状の粒子も使用できるし、例えば懸濁重合法で作製した球状から略球状の粒子等を従来公知の粉砕処理することで得られる異形化粒子または不定形状の粉砕粒子を使用しても良い。このような粉砕処理は、例えば懸濁重合法等で得られた球状非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子を加熱して融着させ、得られた融着粒子塊をボールミル等を用いて機械粉砕処理することにより容易に調製することができる。
【0023】
本発明において、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の比表面積は特に限定されない。しかしながら、比表面積が比較的大きいものを使用した場合には、(A)低級アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有してなる液材に対して該粒子の溶解性が高くなり、液材と粉材を混合して得られるペーストの初期粘度上昇を早めることができる。この結果、低級アルキル(メタ)アクリレートの重合活性が高まり硬化時間が短時間化できるため特に好ましい。
【0024】
このような観点から、(B)粉材に含有される、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の比表面積は、0.7〜5.5m
2/gの大きさであるのが好ましい。非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の比表面積が上記下限値より大きいことにより、(A)液材への溶解性が特に高くなり、液材と粉材を混合後の粘度上昇が速まり、より高い重合活性が得られるものになる。他方、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の比表面積が上記上限値より小さいことにより、液材への溶解性が過度に高まらず、液材と粉材の混合後の操作性が良い粘度のものに抑えることができる。この効果をより良好に発揮させる観点から、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の比表面積は0.9〜4.5m
2/gであるのが、より好ましい。
【0025】
本発明において、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子は、樹脂種、体積平均粒子径、形状の異なる複数種を混合して用いても良い。その場合、混合する原料粒子種の全てが上記比表面積の規定範囲内であるものを用いても良いが、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の混合物として比表面積が前記範囲内に調整されていれば、一部の原料粒子種は上記比表面積の規定範囲外のものを用いても良い。
【0026】
具体的には、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子を上記比表面積の範囲のものにするには、体積平均粒径が10μm以下、好ましくは5μm以下の小粒径の球状または略球状粒子を使用しても良いが、特に溶解性が高く粘度上昇が速いことから、異形化粒子または不定形状の粉砕粒子であることにより比表面積が大きいものを用いるのが好ましい。すなわち、前記比表面積の大きい形状の粒子を、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の少なくとも一部として用いて、比表面積を前記範囲に調整するのが好ましい。球状または略球状粒子と、異形化粒子または不定形状の粉砕粒子を適宜混合して使用しても良い。
【0027】
尚、本発明において、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の比表面積は、窒素吸着法によるBET比表面積値(m
2/g)をいう。具体的には、25℃にて4時間真空乾燥した、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子のBET比表面積値である。
【0028】
(B)粉材において、該非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の配合割合は、粉材の合計を100質量%とした場合に40質量%以上であり、60質量%以上であるのが特に好ましい。
【0029】
非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子は、その重量平均分子量が小さすぎると硬化体の靭性が低下してしまい、十分な硬化体物性が得られない。一方、重量平均分子量が大きすぎると、その遅溶解性の性状から、混合後の粘度上昇が不十分となって高い硬化活性が得られない。この効果をより良好に発揮させる観点から、重量平均分子量は10〜120万であるものが好ましく、特には、15〜100万が好ましい。このような重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用しポリスチレン換算の分子量として測定する。
【0030】
その他、(B)粉材中には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他のフィラー成分を含有させることができる。このようなその他のフィラー成分としては、ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート以外の非架橋性有機フィラー、架橋性有機フィラー、無機フィラー、有機無機複合フィラー等が挙げられる。ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート以外の非架橋性有機フィラーとしては、架橋構造を持たない構造の樹脂からなる有機フィラーであって、従来公知のポリ低級アルキル(メタ)アクリレート以外の非架橋性有機フィラーを何ら制限なく使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリスチレン類等のフィラーを例示できる。また、架橋フィラーとしては、架橋型ポリアルキル(メタ)アクリレート等やポリスチレン等の架橋性フィラーを使用することができる。無機フィラーとしては、石英、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、チタニア、アルミナ、ジルコニア、フルオロアルミノシリケートガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、フッ化ナトリウム等が挙げられ、これらは(B)非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子とのなじみをよくするために、その表面を従来公知のポリマーやシランカップリング剤等で被覆することができる。また、無機酸化物とポリマーの複合体を粉砕したような無機有機複合フィラーも使用可能である。
【0031】
その他のフィラー成分の形状は特に限定されず、通常の粉砕により得られるような粉砕型粒子、あるいは球状粒子でもよい。また、粒子径は特に限定されるものではないが、液材とのなじみの点から、体積平均粒径が150μm以下であるのが好ましく、特に80μm以下であるのが好ましい。
【0032】
(B)粉材中には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて様々な任意成分を含有させることができる。このような任意成分としては、重合促進剤、安定化剤、ヒュームドシリカ等の流動性調整剤、固体モノマー、顔料、染料等が挙げられる。尚、ヒュームドシリカの配合量は通常、(B)粉材100質量%に対して1質量%以下、好ましくは0.3質量%以下である。
【0033】
本発明の最大の特徴は、こうした粉液型歯科用接着材において、(A)液材及び(B)粉材の少なくとも一方に樹枝状ポリマーを配合した点にある。ここで、樹枝状ポリマーは、従来のポリマーが一般的に紐状(または線状)の形状であるのに対し、3次元的に枝分かれ構造を繰り返し、高度に分岐している高分子である。そのため樹枝状ポリマーは、1)球形に近い形状を有すること、2)ナノメートルオーダーのサイズを有すること、3)分子間の絡み合いが少なく微粒子的挙動を示すこと、4)紐状ポリマーに比べて溶媒や液状の重合性単量体と混合した際の分散性が高く、かつ、粘度の増加を低く抑えることができること、5)機能性基を導入可能な分子鎖末端を表面に多数有すること、6)分子内(各分岐枝間)に空隙を有していることなどの特徴を有している。これらから樹枝状ポリマーは、低級アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含む液状またはペースト状の組成物においても、組成物の著しい粘度上昇を伴うことなく、該樹枝状ポリマーを組成物中に容易に微分散させることができる。また、樹枝状ポリマーは低級アルキル(メタ)アクリレートとの親和性も高い。これらから樹枝状ポリマーを、粉液型歯科用接着材の前記液材か粉材のいずれか一方に一定量配合させた場合、これらを混合して得られるペースト全体に占める低級アルキル(メタ)アクリレートの量を実質的に減少させる効果と、該低級アルキル(メタ)アクリレートの硬化体と親和する効果とが相俟って、硬化時の重合収縮を低減でき、歯質や補綴物への高い接着性が発揮される。
【0034】
さらに、斯様な樹枝状ポリマーを配合した粉液型歯科用接着材では、低級アルキル(メタ)アクリレートの硬化速度も速まる。その原因は、明らかではないが、本発明者等は以下のような原理によると考察している。即ち、樹枝状ポリマーは、3次元的な枝分かれ構造の各分岐枝間に空隙を有しており、粉液型歯科用接着材において、前記(A)液材と(B)粉材とを混合したペーストでは、この空隙内に低分子化合物である低級アルキル(メタ)アクリレートが、ラジカル重合開始剤と共に浸入する。前述のとおり低級アルキル(メタ)アクリレートの重合活性は高いものではないが、斯様に分岐枝間空隙に浸入した分子同士は分子運動し難い状態に近接するため、この部分で該低級アルキル(メタ)アクリレートの重合性が高まり、これを起点に液材全体の低級アルキル(メタ)アクリレートの重合活性が高まるのではないかと推測される。斯くして低級アルキル(メタ)アクリレートの硬化速度が速まり、歯科医は次の処置にすばやく移ることができ、さらには、その硬化体の機械的強度も大きくなり、前記歯質や補綴物への接着性は一層に向上する。
【0035】
このような樹枝状ポリマーとしては、デンドリマー、リニア−デンドリティックポリマー、デンドリグラフトポリマー、ハイパーブランチポリマー、スターハイパーブランチポリマー、ハイパーグラフトポリマー等が挙げられる。この中でも前半の3種は分岐度が1であり、欠陥の無い構造を有しているのに対し、後半の3種は欠陥を含んでいても良いランダムな分岐構造を有している。
【0036】
デンドリマーの分岐構造は、多官能基を有するモノマーを一段階ずつ化学反応させることで形成される。デンドリマーの合成法には、中心から外に向かって合成するDivergent法と外から中心に向かって行うConvergent法とを挙げることが出来る。デンドリマーの例としては、アミドアミン系デンドリマー(米国特許第4,507,466号明細書ほか)、フェニルエーテル系デンドリマー(米国特許第5,041,516号明細書ほか)が挙げられる。アミドアミン系デンドリマーについては、末端アミノ基とカルボン酸メチルエステル基とを持つデンドリマーが、Aldrich社より「StarburstTM(PAMAM)」として市販されている。また、そのアミドアミン系デンドリマーの末端アミノ基を、種々のアクリル酸誘導体およびメタクリル酸誘導体と反応させることで合成された、対応する末端をもったアミドアミン系デンドリマーを使用することもできる。
【0037】
また、フェニルエーテル系デンドリマーについては、Journal of American Chemistry 112巻(1990年、7638〜 7647頁))に種々のものが記載されている。フェニルエーテル系デンドリマーについても、末端ベンジルエーテル結合の代わりに、末端を種々の化学構造を持つもので置換したものを使用することができる。
【0038】
ハイパーブランチポリマーは、多段階合成反応を精密に制御し分岐構造を形成させるデンドリマーとは異なり、一般に一段階重合法により得られる合成高分子である。一段階で大きな分子を合成するため、分子量分布や分岐不十分単位が存在するが、前記デンドリマーと比べると、製造が容易であり製造コストが安価であるという大きなメリットがある。また、合成条件を適宜選択すれば分岐度も制御でき、用途に応じた分子設計も実施できる。ハイパーブランチポリマーは、1分子内に、分岐部分に相当する2つ以上の第一反応点と、接続部分に相当し、第一反応点とは異なる種類のただ1つの第二反応点とを持つモノマーを用いて、1段階の合成プロセスを経て合成される(Macromolecules、29巻(1996)、3831− 3838頁)。
【0039】
このような合成プロセスとしては、例えば、1分子中に2種の官能基を持つABx型モノマーの自己縮合法、ビニル基「A」と、当該ビニル基「A」に対して重合開始可能な官能基「C」とを有するAC型モノマーの自己縮合ビニル重合法、A2型モノマーとB3型モノマーとを重縮合する方法などが知られている(デンドリティック高分子−多分岐構造が拡げる高機能化の世界、株式会社エヌ・ティー・エス(2005))。そして、これら方法により一気に分岐構造を形成する。なお、上記に説明した合成方法の説明において、大文字のアルファベットで示す“A”と“B”とは、互に異なる官能基を示し、“A”および“B”に組み合わせて示されるアラビア数字は、1分子内の官能基の数を示す。
【0040】
また、重合開始可能な官能基とビニル基とを1分子内に有する化合物の重合によってハイパーブランチポリマーを得る方法として、自己縮合性ビニル重合法(SCVP法)が知られている(Science、269、1080(1995))。また、多量の開始剤を用いて複数の重合性基を有する分子を重合させることにより、開始剤断片が生成重合体中に取り込まれたハイパーブランチポリマーを合成する方法として開始剤断片組込ラジカル重合法(IFIRP)が知られている(J.Polymer.Sci.:PartA:Polym.Chem.、42,3038(2003))。
【0041】
ハイパーブランチポリマーの構造は、用いるABx型モノマーや得られたポリマーの表面官能基の化学修飾よって様々な構造を有する。ハイパーブランチポリマーとしては、骨格構造の分類上の観点から、ハイパーブランチポリカーボネート、ハイパーブランチポリエーテル、ハイパーブランチポリエステル、ハイパーブランチポリフェニレン、ハイパーブランチポリアミド、ハイパーブランチポリイミド、ハイパーブランチポリアミドイミド、ハイパーブランチポリシロキサン、ハイパーブランチポリカルボシラン等が挙げられる。また、それらハイパーブランチポリマーが有する末端基としては、アルキル基、フェニル基、ヘテロ環状基、(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ハロゲノ基、エポキシ基、シリル基等が挙げられる。またこれら末端基をさらに化学修飾することにより、目的に応じた官能基をハイパーブランチポリマー表面に付与することも可能である。
【0042】
本発明の粉液型歯科用接着材では、これら樹枝状ポリマーのうち1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上の樹枝状ポリマーを組み合わせて用いてもよい。上記に挙げた樹枝状ポリマーのうち、デンドリマー、リニア−デンドリティックポリマーおよびデンドリグラフトポリマー等に代表される分岐度が1の樹枝状ポリマーは、欠陥の無い比較的緻密な構造を有していることから樹枝状ポリマーにおける各分岐枝間の空隙が小さい傾向にあり、該空隙中に、低級アルキル(メタ)アクリレートが浸入性が十分ではない。これに対し、樹枝状ポリマーが、ハイパーブランチポリマー、スターハイパーブランチポリマー、ハイパーグラフトポリマー等に代表されるような欠陥を含んでいても良いランダムな分岐構造を有する場合には、各分岐枝間の空隙が広い傾向にあり、該分岐枝間空隙中に、低級アルキル(メタ)アクリレートが浸入し易い。このため、これらの各分岐枝間の空隙が広い樹枝状ポリマーでは、粉液型歯科用接着材の重合性をより高めることができ、硬化時間をより速め、歯質や補綴物への接着性もより高まるため好ましい。特に、ハイパーブランチポリマーが好ましい。
【0043】
また、樹枝状ポリマーの分子量は、特に限定されるものではないが、GPC(Gel Permeation Chromatography)法による測定での重量平均分子量が1500以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、15000以上であることが最も好ましい。重量平均分子量が上記以上であることにより、分岐構造が発達して形成され各分岐枝間の空隙が広くなる。したがって、この空隙中に低級アルキル(メタ)アクリレートが浸入して、その重合活性が高まる効果が、より顕著に発揮されるため好ましい。他方、樹枝状ポリマーの重量平均分子量の上限も特に限定されるものではないが、200000以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましく、80000以下であることが最も好ましい。重量平均分子量が上記以下であることにより、低級アルキル(メタ)アクリレートに対する分散性が良好になる。
【0044】
また、分子量を上記範囲内とした場合、動的光散乱法にて測定したテトラヒドロフラン(THF)中での流体力学的平均直径が1nm〜40nm前後程度の球状の樹枝状ポリマーを得ることができる。なお、流体力学的平均直径は、3nm〜20nmの範囲内が好ましく、5nm〜15nmの範囲内がより好ましい。
【0045】
粉液型歯科用接着材中に含まれる樹枝状ポリマーの配合量は、特に限定されないが、液材と粉材を混合して得たペーストにおいて、ラジカル重合性単量体100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、5〜40質量部の範囲内であることがより好ましい。樹枝状ポリマー粒子の配合量を1質量部以上とすることにより、粉液型歯科用接着材を硬化させる際の重合収縮率をより小さくすることが容易となり、さらには、その硬化時間を速める効果もより顕著に発揮させることが可能になる。また、樹枝状ポリマーの配合量が100質量部を超えると、樹枝状ポリマーが過多となり過度の粘度上昇を生じる等して、操作性や接着性への悪影響が大きくなるため100質量部以下が望ましい。さらに、樹枝状ポリマーの配合量を40質量部以下とすることにより、上記操作性や接着性への悪影響を非常に小さくできるため好適である。
【0046】
粉液型歯科用接着材に用いられる樹枝状ポリマーは、上記に説明した各種の樹枝状ポリマーが利用できるが、3分岐した分岐部分および4分岐した分岐部分から選択される少なくとも1種の分岐部分と、分岐部分同士を接続する接続部分とを含む網目状構造(網目状の多分岐構造)を有していることが好ましい。このような網目状構造を有する樹枝状ポリマーとしては、代表的には、ハイパーブランチポリマーが挙げられる。なお、網目状構造中の分岐がより発達して形成されているほど、網目状構造を構成する分子鎖の動きが制限されて、分子鎖同士の絡み合いが少なくなるため、樹枝状ポリマーの配合割合を増やしても粘度の増加を抑制されるものになり、より好ましい。さらに、樹枝状ポリマーの各分岐枝間の空隙が広くなり、粉液型歯科用接着材の硬化時間をより速くでき、歯質や補綴物への接着性もより向上する。
【0047】
また、網目状構造の末端部分は、エチレン性不飽和基との反応性基や、酸性基、アミノ基、ヒドロキシル基などの反応性官能基を有していてもよく、反応性官能基を実質的に有していなくてもよい。なお、反応性官能基を実質的に有さない場合には、網目状構造の末端部分は、アルキル基などの非反応性官能基で占められることになる。ここで、「反応性官能基を実質的に有さない」とは、網目状構造の末端部分に反応性官能基を全く有さない場合のみならず、網目状構造を有する樹枝状ポリマーの合成時の副反応あるいは反応系中の不純物等に起因して、網目状構造の末端部分に、僅かながら反応性官能基が導入される場合も意味する。
【0048】
網目状構造の末端部分が、エチレン性不飽和基との反応性基を有しているときには、樹枝状ポリマー同士や樹枝状ポリマーとラジカル重合性単量体との結合の形成によって、硬化物の機械的強度がより向上させることが容易となる。ここで、エチレン性不飽和基との反応性基には、スチリル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基等のエチレン性不飽和基の他、ビドロシリル基等が挙げられる。また、網目状構造の末端部分が、親水性官能基を有している場合は、歯質への接着性が高くなる効果が得られるため好適である。ここで、親水性官能基には、カルボキシル基、リン酸基等の酸性基やヒドロキシル基が挙げられ、歯質への脱灰機能が発揮されて上記歯質への接着性が特に顕著に高くなることから、酸性基がより好ましく、リン酸基が最も好ましい。
【0049】
なお、網目状構造の内部部分も反応性官能基を有していてもよい。しかしながら、網目状構造の内部部分に位置する反応性官能基は、末端部分に位置する反応性官能基と比べて、他の樹枝状ポリマーと、あるいはラジカル重合性単量体と反応し難いため、硬化物の機械的強度の向上には寄与し難い点を考慮すると、網目状構造の内部部分は反応性官能基を実質的に有していないことが好ましい。親水性官能基の場合も同様である。
【0050】
ハイパーブランチポリマーを構成する網目状構造において、分岐部分の分岐数は、3分岐または4分岐が一般的である。3分岐した分岐部分(3分岐部分)は、窒素原子、3価の環状炭化水素基または3価の複素環基により形成されているのが好ましく、4分岐した分岐部分(4分岐部分)は、炭素原子、ケイ素原子、4価の環状炭化水素基または4価の複素環基により形成されているのが好ましい。なお、(3価または4価)の環状炭化水素基としては、大別すると、(3価または4価の)のベンゼン環などに例示される芳香族炭化水素基、および、(3価または4価の)シクロヘキサン環などに例示される脂環炭化水素基が挙げられる。また、(3価または4価の)複素環基としては、公知の複素環基が利用できる。なお、3価の複素環基としては、たとえば、下記構造式1に示すものを挙げることもできる。
【0052】
また、分岐部分同士を接続する接続部分は、下記構造式群Xから選択されるいずれか1種の2価の基または原子であるのが好ましい。ここで、構造式群X中、R
11は、芳香族炭化水素基または炭素数40以下のアルキレン基であり、nは、1〜9の範囲から選択される整数である。なお、1つの分岐部分に結合する複数の接続部分は、いずれか2つ以上が同一であってもよく、1つの分岐部分に結合する全ての接続部分が互に異なっていてもよい。
【0055】
こうした網目状構造の末端部分の一般例としては、水素原子、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、もしくは、−I)、スチリル基、エポキシ基、グリシジル基、下記構造式群Zから選択されるいずれか1種の1価の基、1価の環状炭化水素基、または、1価の複素環基などが挙げられる。ここで、末端部分のうち、水素原子およびハロゲン原子を除いた基については、さらに化学修飾されたものでもよい。また、1価の環状炭化水素基および1価の複素環基は、環に結合する水素原子が、ハロゲン原子、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、1価のカルボン酸エステルで置換されていてもよい。また、1価の環状炭化水素基としては、大別すると、1価のベンゼン環などに例示される芳香族炭化水素基、および、1価のシクロヘキサン環などに例示される脂環炭化水素基が挙げられる。
【0057】
なお、構造式群Z中、R
12は、1価の芳香族炭化水素基または炭素数40以下のアルキル基であり、R
13は、2価の芳香族炭化水素基または炭素数40以下のアルキレン基である。また、構造式群Z中に示される基において、R
12およびR
13の双方を含む場合、価数を除いて両者の構造は同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0058】
これら網目状構造の末端部分は、エチレン性不飽和基含有基、ビドロシリル基等のエチレン性不飽和基との反応性基や、カルボキシル基、リン酸基等の酸性基やヒドロキシル基を含有してなるのが特に好適であるのは前述したとおりである。
【0059】
本発明の粉液型歯科用接着材において、好適に使用できる樹枝状ポリマーの具体例としては、下記一般式(I)に示される単位構造が互いに結合して形成された網目状構造を有する樹枝状ポリマーが挙げられる。
【0061】
ここで、一般式(I)中、Aは、CとR
1とを結合する単結合(すなわち、CとR
1とが単にσ結合で結合している状態)、>C=O、−O−、−COO−、または、−COO−CH
2−であり、R
1は、2価の飽和脂肪族炭化水素基、または、2価の芳香族炭化水素基であり、R
2は、水素原子、または、メチル基であり、Yは、下記一般式(IIa)で示される基、または、下記一般式(IIb)で示される基である。末端部分を除いた網目状構造が、一般式(I)に示される単位構造から構成される場合、網目状構造を構成する一般式(I)に示される単位構造は、実質的に1種類のみから構成されていてもよく、2種類以上から構成されていてもよい。
【0064】
なお、下記一般式(IIa)で示される基、および、下記一般式(IIb)で示される基において、aは0または1である。ここで、一般式(I)に示される単位構造は、Yが一般式(IIa)で示される基の場合には4個の結合手を有する単位構造になり、Yが一般式(IIb)で示される基の場合には3個の結合手を有する単位構造になる。ハイパーブランチポリマーの粉液型歯科用接着材に対する配合割合を増やした際に粘度の増加を抑制し易いという観点から、Yは一般式(IIa)で示される基であるのが好ましい。
【0065】
また、一般式(I)に示される単位構造により形成された網目状構造の末端部分としては、既述した末端部分の一般例として例示した各種の原子あるいは各種の基が挙げられる。
【0066】
一般式(I)に示される単位構造を構成するR
1は、2価の飽和脂肪族炭化水素基、または、2価の芳香族炭化水素基である。ここで、2価の飽和脂肪族炭化水素基は、鎖状または環状のいずれであってもよい。また、炭素数は特に限定されないが、1〜5の範囲内が好ましく、1〜2の範囲内がより好ましい。炭素数を5以下とすることにより、R
1として示される分子鎖部分が短くなるため、液材を構成するラジカル重合性単量体と、ハイパーブランチポリマーとの絡みあいをより一層抑制し、ペースト粘度が増大するのをより一層抑制できる。2価の鎖状飽和脂肪族炭化水素基としては、たとえば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。また、2価の環状飽和脂肪族炭化水素基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基などが挙げられる。
【0067】
また、2価の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環を1つ含む単環状、ベンゼン環を2つ以上含みかつ縮環構造を有するもの、あるいは、ベンゼン環を2つ以上含みかつ縮環構造を有さないもの、のいずれであってもよい。2価の芳香族炭化水素基に含まれるベンゼン環の数は、特に限定されないが、1〜2の範囲内が好ましく、ベンゼン環の数は1であることが特に好ましい(言い換えれば2価の芳香族炭化水素基が、フェニレン基であることが特に好ましい)。2価の芳香族炭化水素基としては、たとえば、上述したフェニレン基以外にも、ナフチレン基やビフェニレン基などを例示できる。
【0068】
なお、以上に例示したR
1の中でも、特にフェニレン基が好ましい。R
1としてフェニレン基を用いた場合、粉液型歯科用接着材の硬化物の機械的強度を良好にすることができる。
【0069】
現時点において、樹枝状ポリマーとして好適に使用できるハイパーブランチポリマー、即ち、上述した構造を有する市販のハイパーブランチポリマーの例としては、日産化学工業株式会社の「HYPERTECH」(登録商標)シリーズ、DSM社の「Hybrane」(登録商標)、Perstop社の「Boltorn」(登録商標)などが挙げられる。なお、「HYPERTECH」、「Hybrane」、「Boltorn」は分子量、粘度、末端基の異なるグレードが販売されている。
【0070】
本発明の粉液型歯科用接着材において、上記樹枝状ポリマーは、(A)液材及び(B)粉材のいずれに配合されていても良いが、低級アルキル(メタ)アクリレートとの親和性が良いため、予め液材に溶解、膨潤または微分散させておいた方が、粉材との混合時に均一なペーストを得易く、硬化速度もより速めることができるため、特に好ましい。
【0071】
本発明の粉液型歯科用接着材の少なくとも一方にはラジカル重合開始剤も含有されている。粉液型歯科用接着材の硬化は化学重合によることが多いが、化学重合開始剤ではなく光重合開始剤を配合して、光重合により硬化させる形態としても良い。
【0072】
化学重合開始剤としては、有機過酸化物/アミン化合物、又は有機過酸化物/アミン化合物/スルフィン酸塩からなるレドックス型の重合開始剤;酸と反応して重合を開始する有機金属型の重合開始剤;有機ホウ素化合物または有機ホウ素化合物の部分酸化物からなる重合開始剤;及び(チオ)バルビツール酸誘導体/第二銅イオン/ハロゲン化合物からなる重合開始剤等が使用できる。このような重合開始剤の具体例としては、例えば特願2000−361150号公報に例示されているものを使用できる。
【0073】
特に、有機金属型の重合開始剤としてはトリブチルボラン、トリブチルボランの部分酸化物または後述する一般式(1)で例示されるアリールボレート塩を用いるのが審美性等の観点から好適である。この時、アリールボレート塩と組む酸としては従来公知の有機酸および無機酸が使用できる。反応性が高いことから強酸が好ましく、特にスルホン酸基含有化合物が扱いやすい。こうした酸は、酸性基を含有する重合性単量体を、上記(A)液材の一部として兼用してもよい。また、(A)液材の保存安定性を考慮すると、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の、常温で固体の酸性化合物を前記した(B)粉材の一部として含有させても良い。
【0074】
上記のアリールボレート塩としては、分子中に少なくとも1個のホウ素−アリール結合を有する4配位のホウ素化合物であれば特に限定されず公知の化合物が使用できる。ホウ素−アリール結合を全く有しないボレート化合物は安定性が極めて悪く、空気中の酸素と容易に反応して分解するため、事実上使用が不可能である。
【0075】
本発明で使用されるアリールボレート塩としては、保存安定性及び重合活性の点から、下記一般式(1)
【0077】
(上式中、R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアルケニル基であり、これらの基はいずれも置換基を有していてもよく;R
d及びR
eは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有してもよいアルキル基又はアルコキシ基、または置換基を有してもよいフェニル基であり;L
+は金属陽イオン、第3級または第4級アンモニウムイオン、第4級ピリジニウムイオン、第4級キノリニウムイオンまたは第4級ホスホニウムイオンを示す。)で示されるボレート化合物が好ましい。
【0078】
これらの中でも、保存安定性や入手の容易さから、ホウ素原子が4つのアリール基で置換されたアリールボレート塩が特に好ましい。
【0079】
他方、光重合開始剤としては、ジアセチル、アセチルベンゾイル、ベンジル、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−オキシベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等のα−ジケトン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン誘導体、ベンゾフェノン、p,p’−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、アシルホスフィンオキサイド誘導体、さらにはアリールボレート化合物/色素/光酸発生剤からなる系が挙げられる。これらは必要に応じ単独で、あるいは複数を組み合わせて添加することが可能である。
【0080】
また、α−ジケトン類及びアシルホスフィンオキサイド類はさらに高い活性を得るために、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ラウリル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミン化合物と併用してもよい。ただし、アミン化合物は硬化体の着色の原因となるため、重合性単量体100重量%に対して0.5重量%以下に抑えるが好ましい。
【0081】
これら光重合開始剤の中でも特に高い光重合活性が得られることから、アシルホスフィンオキサイド系の光重合開始剤が特に好ましい。アシルホスフィンオキサイド系重合開始剤は、>P(=O)−基にアシル基{−C(=O)−}が少なくとも一つ結合した骨格を有する化合物であれば特に制限なく、公知のモノアシルホスフィンオキサイド誘導体、ビスアシルホスフィンオキサイド誘導体が何ら制限なく用いられる。このようなものを例示すると、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドが上げられる。これらアシルホスフィンオキサイド系重合開始剤の中でも、活性が高いことから2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
【0082】
本発明の粉液型歯科用接着材におけるラジカル重合開始剤の配合量は、(A)液材に含まれる低級アルキル(メタ)アクリレートが重合するのに充分な量であれば特に限定されないが、硬化体の耐候性等の諸物性の観点から、(A)低級アルキル(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲であるのが好ましい。特に0.1〜10質量部であるのが好ましい。
【0083】
ラジカル重合開始剤が複数成分で構成される場合には、保存中に(A)液材中に含まれるラジカル重合性単量体の重合反応が開始されないように、また、ラジカル重合開始剤の安定性を考慮して、これらは(A)液材と(B)粉材のそれぞれに適宜分けて配合することが好ましい。なお、場合によっては、ラジカル重合開始剤は(A)液材と(B)粉材とは別に分包することもできる。
【0084】
さらに、化学重合開始剤と光重合開始剤を組み合わせてデュアルキュア型としても良い。デュアルキュア型とした場合、硬化体の機械的強度が特に高いものになる。また、光照射により短時間に粗方の重合を進行させ、続けて化学重合開始剤で重合を完遂すれば、硬化時間が、従来の化学重合開始剤のみを用いた場合に比較して大幅に短縮でき、操作性と機械的強度を高度に両立されたものにできるため、特に好ましい。
【0085】
本発明の粉液型歯科用接着材は、(A)液材と(B)粉材とを混合して得られるペーストやレジン泥を歯質面に塗布して使用すれば良いが、この歯質面を、予め、歯科用前処理材により前処理しておけば、より高い接着力が得られるため好適である。すなわち、(イ)前記粉液型歯科用接着材と、(ロ)酸性化合物の水溶液からなる歯科用前処理材とを含んでなる歯科用接着キットとしても良い。
【0086】
ここで、歯科用前処理材は、エッチング処理材やプライマーなどが挙げられる。エッチング処理材としては、リン酸、カルボン酸、クエン酸等の水溶液(酸水溶液)が挙げられる。他方、プライマーとしては、酸性基含有ラジカル重合性単量体および水を含む組成物が挙げられる。いずれにせよ酸性化合物の濃度は、1質量%以上、好適には3〜90質量%であるのが好ましい。斯様な歯科用前処理材としては、特開2008−222642号公報、特開平07−118116号公報、特開平08−310912号公報、特開平08−319209号公報、特開平09−025208号公報、特開平09−227325号公報、特開平10−251115号公報、特開2002−265312号公報、特開2003−096122号公報、特開2004−043427号公報、特開2004−026838号公報等に記載のものを適宜選択して使用することができる。
【0087】
本発明の粉液型歯科用接着材は、(A)液材と(B)粉材をヘラ等で混和してペースト状としてから用いる方法(混和法という)にて使用しても良いし、(A)液材と(B)粉材を別々に取り分けて用意し、小筆に液材を含ませ、次いで筆先を粉材に接触させることにより筆先に玉状のレジン泥を作製して用いる方法(筆積み法という)にて使用しても良い。これらの使用方法において、(A)液材と(B)粉材の混合比は、通常、質量比で1:3〜5:1である。
【0088】
粉液型歯科用接着材がデュアルキュア型の場合、ペーストやレジン泥に光照射を行うまでの時間は特に制限されないが、(A)液材と(B)粉材の混合を開始してから10〜120秒程度で光照射を開始するのが適当である。光照射時間は、通常、3〜90秒であり、好ましくは3〜50秒である。光源としては、光重合開始剤の光分解に有効な波長、即ち250〜500nmの範囲の波長光を放射するものであれば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハイドランプ、タングステンランプ、蛍光灯、アルゴンレーザー等が制限なく使用できる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0090】
尚、実施例および比較例で使用した化合物とその略称を(1)に、樹枝状ポリマーの性状を(2)に、非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子の性状を(3)に、歯科用プライマー組成を(4)に、粉液型歯科用接着材の評価方法を(5)に、夫々示した。
【0091】
(1)使用した化合物とその略称
MMA;メチルメタクリレート
PM;2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェートとビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートの混合物
TMPT;トリメチロールプロパントリメタクリレート
HEMA;2−ヒドロキシエチルメタクリレート
UDMA;1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルヘキサンと1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,4,4−トリメチルヘキサンの混合物
PhBTEOA;テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩
MMPS;2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
BTPO;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド
DMEM;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
BMOV;ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)
BHT;ジブチルヒドロキシトルエン
CQ;カンファーキノン
DMBE;p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
(2)樹枝状ポリマー
HPS−200;日産化学工業株式会社、GPC法による重量平均分子量23000であり、流体力学的平均直径が7.5nmであるハイパーブランチポリマー。末端官能基はスチリル基である。
HA−DVB−500;日産化学工業株式会社、GPC法による重量平均分子量48000であり、流体力学的平均直径が11.7nm(in THF)であるハイパーブランチポリマー。樹枝状ポリマーの末端部分に位置する官能基(末端官能基)はメチルエステル基である。
HA−DMA−200;日産化学工業株式会社、GPC法による重量平均分子量22000であり、流体力学的平均直径が5.2nm(in THF)であるハイパーブランチポリマー。末端官能基はメチルエステル基である。
PBP;末端官能基として水酸基を有するハイパーブランチポリマーであるPerstop社のBoltornH40(トリメチロールプロパンを核とするジメチロールプロパンの重縮合物、GPC法による重量平均分子量2100)に対し5酸化2リンを0℃で接触させ、末端官能基である水酸基の一部をリン酸基に変えたハイパーブランチポリマー。調整方法および構造解析は、特開2006−160789公報の実施例1と同様に行った。末端官能基の割合は水酸基/リン酸基=1/1である。
【0092】
(3)非架橋ポリ低級アルキル(メタ)アクリレート粒子
それぞれ表1に示したもの〔ポリメチルメタクリレート粒子(P1〜P4)、メチルメタクリレートとエチルメタクリレートとの共重合体粒子(P5)〕を用いた。なお、粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱法により測定したメジアン径であり、比表面積は、窒素吸着法によるBET比表面積値(m
2/g)であり、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用しポリスチレン換算の分子量として測定した値である。
【0093】
【表1】
【0094】
尚、不定形粒子は、懸濁重合法で合成した球状粒子を90〜120℃で解砕または粉砕が可能な程度に過熱融着し、振動ボールミル(ニューライトミル;中央化工機商事株式会社製、ポット;300mLアルミナポット)を使用して融着粒子100gとφ10mmのアルミナボール100gを混合して所望の比表面積を有するようになるまで解砕および粉砕し処理することにより得たものを使用した。
【0095】
(4)歯科用プライマー組成
20質量%のPMと30質量%の水と41質量%のアセトンと7質量%のUDMAと2質量%のDMEMと0.2質量%のBMOVと0.3質量%のBHTからなる組成とした。
【0096】
(5)粉液型歯科用接着材の評価方法
<硬化時間の評価方法>
化学硬化の評価を行う場合は、先端にアルミ箔を巻いた熱電対を差し込んだ6mmφ×2mm厚の孔の開いたワックスシート製モールドを用意し、本発明ならびに比較例の各歯科用接着性材料の粉材と液材とを、粉/液(質量比)を2として10秒間混合し、得られたレジン泥を孔の中に流し込み、ワックスシートの孔の開口部をPP製シートで蓋をした。混合開始から1分後、37℃の恒温水槽にレジン泥の入ったモールドを浸水し、混合開始から最大発熱点までの時間を測定し、硬化時間とした。
【0097】
光硬化の評価を行う場合は、23℃において、ダッペンディッシュに粉材と液材を別々に採取し、筆穂部の根元径が約2mmで吸液量が約10〜15mgである筆(トクヤマ筆積み用ディスポ筆N、株式会社トクヤマデンタル製)を使用して筆積み法にて、筆先にレジン泥の玉〔粉/液(質量比)はほぼ2になる〕を作製し、それをスライドガラスに塗布し、筆積み開始から30秒後に歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて光照射し、何秒光照射すれば50gの荷重をかけた場合に針(φ:0.5mm)が硬化体に侵入しなくなるかを評価した。化学硬化の評価を行う場合は、筆積み開始から何秒で50gの荷重をかけた針(φ:0.5mm)が硬化体に侵入しなくなるかを評価した。
【0098】
<エナメル質接着強さの測定法>
屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去し、注水下、#600の耐水研磨紙で唇面に平行になるようにエナメル質平面を削り出した。次にこれらの面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した後、この面に直径3mmの孔の開いた両面テープを固定して被着面の面積を規定した。この孔に、上記歯科用プライマーを塗布し、20秒間放置した後圧縮空気を約10秒間吹き付けた。なお、歯科用プライマーは、以下の組成のものを使用した。
【0099】
上記歯科用プライマーの塗布後、厚さ0.6mm直径8mmの孔の開いたワックスシートを上記円孔上に同一中心となるように固定した。その後、実施例または比較例の粉液型歯科用接着材の粉材と液材を用いて、トクヤマ筆積み用ディスポ筆N(株式会社トクヤマデンタル製)を使用して筆積み法にてレジン泥〔粉/液(質量比)はほぼ2になる〕を作製した。得られたレジン泥を上述したワックスシート孔内に移し、孔内を過不足なくレジン泥で満たした。次いで直ちに、ワックスシートの孔の開口部にポリプロピレン製シートを乗せて蓋をし(この際にポリプロピレン製シートを押し付けずに非圧接法とした)、直ちに37℃、湿度100%の恒温恒湿箱に移して1時間反応させて硬化した。
【0100】
1時間後にポリプロピレン製シートおよびワックスシートを除去した。レジン泥が硬化して得られた硬化体には、ワックスシートの開口部平面(レジン泥とポリプロピレン製シートの接触平面)に相当する直径8mmの円形の平面が被着面と水平に形成されており、硬化体の該平面に歯科接着用レジンセメントであるトクヤママルチボンドII(株式会社トクヤマデンタル製)を使用し、直径8mmφのステンレス製のアタッチメントを接着して、接着試験片を作製した。
【0101】
上記接着試験片を37℃の水中に24時間浸漬した後、引っ張り試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード1mm/minにて歯牙との引っ張り接着強さを測定した。1試験当たり、5本の引っ張り接着強さを上記方法で測定し、その平均値を接着強さとした。
【0102】
実施例1〜8、比較例1〜3
液材として、表2に示した組成のものを調整した。他方、粉材として、98質量%のP1と2質量%のMMPSからなる混合粉末を調整した。それぞれの液材と粉材とを組合せた粉液型歯科用接着材について、前記(5)に従い、硬化時間とエナメル質接着強さを各評価した。それぞれの評価結果を表2に示した。
【0103】
【表2】
【0104】
実施例1〜7のように、本発明の粉液型歯科用接着材は、短時間で硬化まで至った(240秒以下)。実施例1および2のように樹枝状ポリマーの含有量が多いものでは、エナメル質接着強さが高かった。さらに樹枝状ポリマーの含有量が多い実施例8(樹枝状ポリマーを液材に50質量%含む)では、短時間で硬化まで至った。しかしながら、液材と粉材の馴染みがやや悪かったため、エナメル質接着強さが他に比べ少し低くなった。
【0105】
これに対し、比較例1は樹枝状ポリマーなしの組成を評価した結果であるが、化学重合での最終硬化までは290秒かかった。
【0106】
また、比較例2および比較例3のように、使用する液材が、多官能性のラジカル重合性単量体が主成分のものの場合では、硬化時間は若干短縮できたものの、樹枝状ポリマーを含む組成には及ばなかった。
【0107】
実施例9〜14
液材として、75.5質量%のMMA、20質量%のHPS−200、5質量%のHEMA、3質量%のPhBTEOA、3.5質量%のCQ、1質量%のDMBEおよび0.1質量%のBHTからなる組成物を調整した。他方、粉材として、表3に示した組成のものを調整した。上記液材とそれぞれの粉材とを組合せた粉液型歯科用接着材について、前記(5)に従い、硬化時間とエナメル質接着強さを各評価した。それぞれの評価結果を表3に示した。
【0108】
【表3】
【0109】
実施例9〜12は、高い接着強さを示し、硬化時間も短かった。また、実施例13は粉材の比表面積が小さめのものを使用した結果であるが、硬化時間がやや長くなった。また、粉材の総比表面積が大きめのものを使用した実施例14では、粉材と液材の馴染みが悪化し、エナメル質接着強さが少し低い結果となった。